JP3367941B2 - 脱墨剤 - Google Patents

脱墨剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は脱墨剤に関する。
【0002】
【従来の技術】古紙の再生は原料古紙からインクを剥離
し、剥離したインキを除去するいわゆる脱墨処理を施す
ことで、再生パルプを得て再生紙を製造することにより
行われる。
【0003】近年、美しく見栄えのよい印刷に対する需
要の増大とそれに伴う印刷技術の進展により、紙とイン
キの結合が強固になってきている。また、夏場には熱や
紫外線の影響で紙からインキが剥離しにくくなる現象
(難剥離化)がより顕著になる。このことから、インキ
剥離性に優れる高級アルコール系非イオン性脱墨剤の普
及が顕著となっている。
【0004】高級アルコール系非イオン性脱墨剤の機能
設計の考え方は、高級アルコール骨格に付加したアルキ
レンオキサイド基の種類、量、さらには付加形態をさま
ざまに変化させることで脱墨性能(凝集性、分散性、捕
集性、起泡性、消泡性)のバランスをとるのが基本であ
る。
【0005】これまでに再生紙の脱墨性能を向上するた
め、アルキレンオキサイドの付加順序を特定した各種非
イオン性界面活性剤が開発されている。例えば、オキシ
アルキレン基のブロック配列に着目すると、オキシプロ
ピレン基のブロックに続いてオキシエチレン基とオキシ
プロピレン基のランダムブロックを導入する化合物(特
開昭55−51892号)や、オキシエチレン基のブロ
ックの両側をブロック配列したオキシプロピレン基が挟
む構造をとる化合物(登録第2597953号)等が挙
げられる。
【0006】しかしながら、操業や古紙の条件によって
しばしば再生紙の品質悪化が見受けられる。具体的に
は、(a)既存の脱墨システムで生産量を増大させる目
的でフローテーションに導入されるパルプスラリーの濃
度を高めた際、フローテーションでの脱墨剤の起泡性が
減少しインキが系外に排出されないトラブルが生じる、
(b)夏場における熱や紫外線あるいは長期保存の影響
により難剥離化が進行し、インキ除去性が低下する、こ
とが挙げられる。これらの問題に対し、現在さまざまな
脱墨剤が設計されているが、十分満足できる性能を有す
る脱墨剤は未だ開発されていないのが実状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、通常
の操業条件のみならず、劣化した古紙の再生やフローテ
ーション時のパルプ濃度が高い場合においても、十分な
インキ剥離性および起泡性を示し、それにより高い脱イ
ンキ効果が得られる脱墨剤を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来技術
によるオキシアルキレン基の配列パターンの脱墨性能を
考察した結果、脱インキ効率の良いオキシエチレン基、
オキシプロピレン基のブロックを基本にして、このブロ
ックと疎水基(R−O−)との間に、強い起泡性を有す
るオキシエチレン基や消泡性・インキ親和性を有するオ
キシプロピレン基等のオキシアルキレン基がランダムに
配列した基を有する化合物が前記課題を解決するために
有効であることを見いだした。
【0009】すなわち、本発明は、下記一般式(1)で
表される化合物を含有する脱墨剤を提供する。 R−O−[MO]−(EO)n2−(PO)m2−H (1) 〔式中、Rは炭素数6〜24のアルキル基、アルケニル
基、アシル基或いはアリール基を表し、MOは[(EO)
n1/(PO)m1]で表される基であり、MOはEOとPO
がランダムに配列した基である。EOはオキシエチレン
基、POはオキシプロピレン基である。n1、n2、m
1、m2は、平均付加モル数であり、2≦n1≦10
0、2≦m1≦100、2≦n2≦50、2≦m2≦5
0である。〕
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の脱墨剤は、国内外から回
収される新聞古紙、雑誌古紙、OA古紙等をリサイクル
することによって再生紙を得る際に利用される。詳しく
は、フロテーション法、洗浄法もしくは、それらの折衷
法で脱墨処理する工程において用いられる。特にインキ
を気泡に付着させて泡沫ごと排出するフローテーション
法において良好な性能を有する。
【0011】一般式(1)で表される化合物において、
MOは、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とがラ
ンダムに配列した基で、エチレンオキサイドの平均付加
モル数(n1)とプロピレンオキサイドの平均付加モル
数(m1)は、脱インキ性能の観点から、いずれも2以
上100以下が好ましく、2以上50以下が更に好まし
く、3以上50以下が特に好ましい。また、エチレンオ
キサイドとプロピレンオキサイドの平均付加モル数の比
率は、必要量以上のフローテーション起泡性を確保する
観点から、n1/m1=0.1以上が好ましく、0.3
以上が特に好ましい。また、余分なフローテーションの
泡立ちを抑える観点から、10以下が好ましく、8以下
が特に好ましい。
【0012】一般式(1)で表される化合物において、
(EO)n2はオキシエチレン基のブロックであり、平均付
加モル数(n2)は、インキ除去性の観点から、2以上
50以下が好ましく、10以上30以下が特に好まし
い。
【0013】一般式(1)で表される化合物において、
(PO)m2はオキシプロピレン基のブロックであり、平均
付加モル数(m2)は2以上50以下が好ましく、10
以上50以下が特に好ましい。
【0014】オキシエチレン基のブロックとオキシプロ
ピレン基のブロックの平均付加モル数の比率は、インキ
剥離性の観点から、n2/m2=0.1以上10以下が
好ましく、0.3以上8以下が特に好ましい。
【0015】一般式(1)で表される化合物において、
Rは直鎖または分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、ア
シル基或いはアリール基が好ましく、インキ捕集性の観
点から炭素数6以上、インキ剥離性の観点から24以下
のものが好ましく、捕集性・剥離性・フローテーション
起泡性の観点から、炭素数14〜22のものが特に好ま
しい。Rがアルキル基の化合物の場合、原料の高級アル
コールとしては、オクタノール、ノナノール、デカノー
ル、ウンデカノール、ドデカノール、テトラデカノー
ル、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコシア
ルコール、ドコシルアルコール、2−エチルヘキサノー
ル、2−エチルウンデカノール等が挙げられる。
【0016】一般式(1)で表される化合物の製造は、
従来一般に行われているアルキレンオキサイドの重合付
加反応方法で行うことができる。例えば、オートクレー
ブ釜を用い窒素雰囲気下、高級アルコールに触媒量のア
ルカリ性物質を加え、初めにプロピレンオキサイドとエ
チレンオキサイドとの所定比率の混合物を所定量付加反
応させ、次に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサ
イドを順次所定量付加重合反応させる。
【0017】一般式(1)で表される化合物の脱墨剤中
の含有量は、45重量%以上が好ましく、インキ剥離性
と起泡力の観点から60重量%以上含有するのがより好
ましく、80重量%以上含有するのが特に好ましい。ま
た、市場のさまざまな個別の脱墨システムへのマッチン
グの観点から、他の公知の脱墨剤や発泡剤、消泡剤を配
合してもよいが、その場合も配合物中に一般式(1)で
表される化合物を45重量%以上、インキ剥離性と起泡
力の観点から好ましくは60重量%以上含有するのがよ
い。
【0018】発泡剤の例として、ポリオキシアルキルエ
ーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩等が挙
げられ、消泡剤としては、鉱物油、オレイン酸やステア
リン酸等の脂肪酸、シリコン油等が挙げられる。
【0019】本発明の脱墨剤の使用場所は、インキ剥離
工程、インキ除去工程、パルプ洗浄工程において一括あ
るいは、分割して使用できる。具体的には、パルパー、
ニーダー、ケミカルミキサー等のインキ剥離工程、フロ
ーテーター等のインキ除去工程、シックナー、ウオッシ
ャー、エキスト等の洗浄工程の前あるいは最中に添加す
る。その他の工程は従来公知の脱墨方法に準じて行なう
ことができ、各工程は複数回行なうこともできる。
【0020】さらに、本発明の脱墨剤の添加量は、操業
性の安定化とインキ剥離性の観点から古紙100重量部
に対し、0.01〜5重量部添加するのがよく、起泡力
や作業性・コストの観点から好ましくは0.01〜1.
0重量部がよい。
【0021】本発明の脱墨剤は、苛性ソーダやケイ酸ソ
ーダ等の公知のアルカリ薬剤、過酸化水素、次亜塩素酸
塩、次亜硫酸塩等の漂白剤、アルキルベンゼンスルホン
酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩等の起泡剤、ピッ
チコントロール剤、EDTA、DTPA等の金属封鎖剤
等を併用することもできる。
【0022】
【実施例】〔脱墨処理〕古紙原料(新聞紙/チラシ比=
6/4を80℃24時間強制熱劣化させ、夏場の劣化古
紙とした。)100重量部(絶乾重量)を卓上離解機に
入れ、苛性ソーダ0.5重量部、表1に示す脱墨剤を
0.3重量部、40℃の温水2000重量部を加え、1
0分間、3000rpmで離解処理を行った。次いで、
パルプ濃度を15%まで80メッシュのステンレスワイ
ヤーを用いて濃縮後、苛性ソーダ、3号珪酸ソーダ、過
酸化水素を、それぞれ0.5重量部、1.5重量部、
0.5重量部加え、55℃で120分間漂白処理を行っ
た。その後、40℃の温工業用水でパルプ濃度5%に希
釈し、3000rpm、1分間で再離解し、パルプスラ
リーを得た。続いて、スラリーを40℃の工業用水でパ
ルプ濃度1.4%まで希釈し、容量5Lのセルに4.5
L仕込んだ。パルプスラリー表面の面積は12.5cm
×26cmである、そして、液1L当たり1.50L毎
分の送気量でフローテーションを6分間行なった。その
間、1分間毎にフローテーションセル上に蓄積したイン
キを含んだ泡沫を除去する操作を実施した。その後、パ
ルプスラリーをパルプ濃度13%に濃縮し、再度工業用
水で1%に希釈し、JIS P8209−1976に従
い、150メッシュワイヤーで坪量150g/m2の手
すきシートを作製し、サンプル1とした。また、フロー
テーション処理後パルプ濃度13%に濃縮されたスラリ
ーを、200倍量の工業用水で希釈後、パルプ濃度を1
3%に濃縮する操作を4回繰り返し、上記と同様にシー
トを作製し、サンプル2とした。
【0023】
【表1】
【0024】〔性能評価〕上記の脱墨方法において、下
記(1)〜(3)の評価を行った。結果を表2に示す。
【0025】(1)白色度 JIS P8123−1961により、サンプル1の白
色度を評価した。白色度(%)の値が大きいほど紙が白
く、脱墨が効果的になされていることを示しており、5
5%以上で新聞原料由来の再生紙として問題ないレベル
である。
【0026】(2)未剥離インキ面積率 サンプル2について、画像解析装置(ニレコ社製、ルー
ゼックスF)にて20倍の倍率で測定し、下記式により
算出した。
【0027】 未剥離インキ面積率(%)=(S/F)×100 S;100視野中に計測されたインキ面積(mm2) F;100視野の合計面積15000mm2(1視野の
面積150mm2) 未剥離インキ面積率が0.30%以下であれば注意深く
観察しても未剥離インキが確認されないレベルにあり、
0.30%超0.40%以下ではわずかに未剥離インキ
が目視で確認できるレベルとなり、0.40%超では
0.5〜1mm程度の未剥離インキが目視でハッキリ確
認され、印刷に影響を及ぼすレベルとなる。
【0028】(3)フローテーション処理での泡の挙動 フローテーション開始2分後のスラリー表面からフロス
層上層までの高さを計測した。フローテーション上に蓄
積した泡沫が2cmを超えないと、インキを含んだ泡沫
層がまったく排出されずインキが除去されない。2cm
を超え3cm以下の場合、わずかに排出されるが排出フ
ロスの絶対量が少なくインキ除去効率が低下する。3c
mを超え5cm未満の場合、適度な起泡性として良好な
インキ除去性を示す。5cmを超えると排出される泡沫
量に含まれるパルプ分が増加し、再生紙を得る効率(収
率)が低下する。
【0029】
【表2】
【0030】
【発明の効果】本発明により、特に劣化古紙使用時やフ
ローテーション時のパルプ濃度が高い時においてもイン
キ除去効果が高く、適度な起泡性を有する脱墨剤が提供
される。また、本発明の脱墨剤を通常の古紙、フローテ
ーションパルプ濃度で脱墨処理した際においても実施例
記載の性能評価結果同様、従来品より良好な脱インキ効
果を示すことが確認されている。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−284087(JP,A) 特開 平7−324292(JP,A) 特開 平5−186985(JP,A) 特開 平8−109588(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D21C 5/02

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(1)で表される化合物を含
    有する脱墨剤。 R−O−[MO]−(EO)n2−(PO)m2−H (1) 〔式中、Rは炭素数6〜24のアルキル基、アルケニル
    基、アシル基或いはアリール基を表し、MOは[(EO)
    n1/(PO)m1]で表される基であり、MOはEOとPO
    がランダムに配列した基である。EOはオキシエチレン
    基、POはオキシプロピレン基である。n1、n2、m
    1、m2は、平均付加モル数であり、2≦n1≦10
    0、2≦m1≦100、2≦n2≦50、2≦m2≦5
    0である。〕
  2. 【請求項2】 一般式(1)中のn1、n2、m1、m
    2が、0.1≦(n1/m1)≦10、0.1≦(n2
    /m2)≦10を満たす請求項1記載の脱墨剤。
  3. 【請求項3】 一般式(1)で表される化合物を45重
    量%以上含有する請求項1または2記載の脱墨剤。
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