JP3366947B2 - タイプ1 インターフェロン由来の新規変異体、それらの製造方法及びそれらの適用 - Google Patents

タイプ1 インターフェロン由来の新規変異体、それらの製造方法及びそれらの適用

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Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、組換えDNA技術によって、酵母から得られ
るタイプIインターフェロン(type I interferons)
由来の新規な変異体(varients)に関する。
インターフェロンは、当初、それらのウィルスの複製
を阻害する能力によって同定された。それらは種々のグ
ループに分類される蛋白質のファミリーを構成する。現
在インターフェロンに提案されている分類は2種の主な
タイプに分けられる: −α、ω及びβインターフェロン並びにトロホブラスチ
ン類(trophoblastins)からなるタイプI −γインターフェロンを含むタイプII α及びωインターフェロンは、以前それぞれα−Iイ
ンターフェロン(クラスIα)及びα−IIインターフェ
ロン(クラスIIα)という名称で知られており、トロホ
ブラスチン類はα−IIIインターフェロンに分類され得
たものである。
それらの抗ウィルス活性とは別に、インターフェロン
は他の機能も保有し得る。例えば、ウシやヒツジの様な
ある種の哺乳動物において、トロホブラスチンが妊娠の
母体認識(maternal recognition)の現象に関与してい
ることが確立されている。
ヒツジのトロホブラスチン又はoTPは、それぞれマー
タルら(Martal et al)[J.Reprod.Fert.,56,63−73
(1979);Pro.10th intern.Congerss on Anim.Reprod.
及びA.I.,Urbana−Champaign(USA),11,509(ショート
コミュニケーション)1984]及びゴッドキンら(Godkin
et al)[J.Reprod.Fert.,65,141−150(1982)]によ
って発表されており、ヒツジについてはそれは妊娠12日
目と21日目の間に胎児(embryo)により多量産生され、
ウシにおいては、それは16日目と24日目の間に産生され
る。それは、異なる対立遺伝子に対応して少なくとも5
種のアイソフォーム(isoform)で存在する。これらア
イソフォームは、出願人がアンスティテュ ナシオナル
ド ラ ルシェルシュ アグロノミクである国際PCT
出願公開WO89/08,706中に記載されている。トロホブラ
スチンの分子量は20kDaであり、その等電点は5.3から5.
5の間であり、各アイソフォームに依存する。トロホブ
ラスチン類は或る種の反芻動物において最も特徴的なも
のである。しかしながら、最近の研究により、トロホブ
ラスチン様分子(trophoblastin−like molecules)が
他の哺乳動物(ウマ、ウサギ)及びヒトにおいて存在し
ている可能性があることが判明している。
胎児によって産生されるトロホブラスチンは、他のイ
ンターフェロンの様に、多方面の生物学的活性を保有し
ている。
トロホブラスチン類は、母体による胎児の認識の機構
に特に関与している。
ほとんどの場合、妊娠期間の長さは、卵巣周期の黄体
期のそれをはるかに超える。受精が行われると、ある機
構が、黄体の寿命を延ばすため及び卵巣周期のもどりを
防ぐために、起こる。反芻動物において、胎児はトロホ
ブラスチン(oTP)の形態で生化学的信号を発する。こ
の物質によって体が、正常な胚発育に必須であるホルモ
ン、即ちプロゲステロンを分泌し続けるようになる。
ゴッドキンら(Godkin et al)[J.Reprod.Fert.,71,
57−64(1984)]によって、精製されたoTPの子宮内注
射は、レシピエントサイクル中の雌ヒツジにおいて黄体
のプロゲステロンの分泌を数日間長くすることが判明し
た。フィンチャーら(Fincher et al)[J.Reprod.Fer
t.,76,425−433(1986)]は、天然のoTPの子宮への注
射がオキシトシン−またはエストラジオール−誘導黄体
融解を数日間遅らせ、またプロスタグランジンF2α
泌の減少を伴うものであることを見出した。同様の観察
が、組換えクラスIαインターフェロン類[プランテら
(Plante et al)、エンドクリノロジー(Endocrinolog
y)122,2342−2344(1988);スチュワートら(Stewart
et al)(1989)J.Repr.Fert.Supp.p.127−138]によ
ってもなされた。
トロホブラスチンは、比較的短期間にのみ胎児によっ
て分泌される:即ち、ウシについては妊娠16日目から24
日目、ヒツジについては、妊娠12日目から22日目であ
る。
もし、母親と胎児が非同期性であるならば、即ち、母
親が生理学的にトロホブラスチンに感受的になって、そ
のような刺激に対応できる前に、胎児がトロホブラスチ
ンを分泌するならば、黄体が退行し胎児は死亡する。こ
の可能性は、受精卵移植(embryo transfer)が企図さ
れているとき特に臨界的である。現在まで、受精卵移植
における失敗の割合は、30%以上である。これは、経済
学的見地から損害が大きく、この状況は体外受精の場合
において更に著しいものである。
多くの胎児死亡は、胎児の発達の状態及び母体の生理
学的な状態が、母体の子宮内への受精卵の移植の時に、
“同期性(in phase)”ではないと思われる事実による
ものと考えられる。加えて、受精卵は移植する前にしば
しば凍結され、その結果受精卵によって産生されるトロ
ホブラスチン産生のいくらかの能力が失われる。
トロホブラスチンの抗ウィルス活性は、また例えば上
述のPCT出願89/08,706や、マータルら(MARTAL et al)
[J.Reprod.Fert.Abs.series,2,3,(1988)]及びポン
ツァーら(Pontzer et al)[Biochem.Biophys.Res.Co
m,152,801−807(1988)]によって発表されている。こ
の出願はまた器官の移植の拒絶を防ぐためのトロホブラ
スチンの使用を提案している。
これらの性質により、トロホブラスチンの多くの治療
用途が想像できる。しかしながらそのような適用の開発
は、トロホブラスチンが受胎産物からのみ産生され、そ
れはインビボでの使用に十分な量を産生するものではな
いという事実に直面する。
上述の見地から、妊娠の最初に動物を治療するために
大量のトロホブラスチンを入手可能とすることが非常に
有利である。組換えDNA技術のみがこの目的を達成する
ことができる。
ヒツジトロホブラスチン(ovine trophoblastin)を
コードするメッセンジャーRNA(mRNA)の相補的DNA(cD
NA)の大腸菌でのクローニングは、上述のPCT出願89/0
8,706に記載されている。従って、トロホブラスチンを
微生物中で産生させることができるキメラな遺伝子をこ
のcDNAから構築することを、想像することができる。
にもかかわらず、ヒツジトロホブラスチンをコードす
るcDNAの発現における最初の試みは、確定的ではないこ
とが証明された。これら最初の試みは、バクテリア(大
腸菌)または酵母(エス.セレビシアエ(S.cerevisia
e))を用いた。特に、酵母でのヒツジトロホブラスチ
ンの産生を目的とする発現カセットであって、且つ成熟
ヒツジトロホブラスチンをコードするcDNAの5′末端に
シグナルペプチドをコードするDNAフラグメントを含む
発現カセットでは、合成が十分なレベルで、得ることが
できなかった。
さらに、ツェセボら(Zsebo et al)[J.Biol.Chem.2
61,(13);5858,(1986)]は、αインターフェロン
を、良い条件下で、且つα因子の“プレプロ”システム
(“prepro"system)を用いて大量に分泌することがで
きないことを報告している。
加えて、一般的にいえば、タイプIインターフェロン
は、互いにジスルフィド橋cys1−cys99及びcys29−cys1
39を形成して結合している1、29、99及び139位の4つ
のシステイン残基の存在によって特徴付けられ、N末端
のシステイン残基は、正確なコンフォメーション構造の
維持に必須であると考えられている。
驚くべきことに、本発明者らは、N末端にシステイン
を保有するインターフェロンのcDNAの5′末端に、付加
的なアミノ酸をコードする、或いは例えばジペプチドAl
a−Pro又はAla−Glyの様なジ又はトリペプチドをコード
するDNAフラグメントを付加すると有利であることを発
見した。事実上、コーディング構造の全体が、酵母中で
十分に発現され、それによって産生される変異体(vari
ents)は、このフラグメントを欠く構造によってコード
されるものよりも多量に分泌される。更に、この方法に
よって得られる変異体が、天然のインターフェロンと同
様の生物学的活性を保持することを確立した。例えば、
ヒツジトロホブラスチンのN末端にジペプチドを付加す
ると、天然のトロホブラスチンの抗ウィルス活性、免疫
学的活性及び抗黄体融解活性を保持する変異体が得られ
る。
従って、本発明は、以下の式のいずれかに対応するタ
イプIインターフェロンの新規変異体(varients)を提
供する: X1−R0 (I) 或いは X1−X2−R0 (II) 或いは X1−X2−X3−R0 (III) 但し、X1、X2及びX3は、同一又は相異なってアミノ酸
を示し、 R0は、タイプIインターフェロンの成熟形態のアミノ
酸配列を示す。
好ましくは、X1、X2及びX3は、それぞれ酸性アミノ
酸、塩基性アミノ酸又はアラニン、バリン、プロリン、
グリシン、セリン、トレオニン、システイン、アスパラ
ギン及びグルタミンからなる群から選ばれたアミノ酸を
示すのが良く、 X1はプロリン以外のアミノ酸を示す。
タイプIインターフェロンは、特にαインターフェロ
ン(IFN−αI)又はωインターフェロン(IFN−αII)
又はトロホブラスチン(trophoblastin)を意味するも
のと理解される。αインターフェロンは、166アミノ酸
の配列で特徴付けられ、一方ωインターフェロンは、6
アミノ酸のC末端延長を有している。
与えられた種において、インターフェロン類は一般に
ある程度の天然の対立種(allelic variety)を示す。
例えば、ヒト由来のαインターフェロン類に関しては、
少なくとも約15種の遺伝子が知られており、そのコーデ
ィング配列はお互い85%以上のホモロジーを示す。
有利に、本発明の変異体は、以下の式のいずれかに対
応する: Ala−Pro−R0′ (IV) 又は Ala−Gly−R0′ (V) 但し、R0′は、ωインターフェロン又はトロホブラス
チンの成熟形態のアミノ酸配列を示す。好ましくは、本
発明の変異体は、以下の式のいずれかに対応する: Ala−Pro−R0″ (VI) 又は Ala−Gly−R0″ (VII) 但し、R0″は、ωインターフェロン或いはウシ又はヒ
ツジ由来のトロホブラスチンの成熟形態のアミノ酸配列
を示す。
絶対的な選択として、本発明の変異体は、次の式で表
される: Ala−Pro−R0 (VIII) 又は Ala−Gly−R0 (IX) 但し、R0は、ヒツジ トロホブラスチンのいずれか
のアイソフォーム(isoform)の成熟形態のアミノ酸配
列を示す。
それぞれT1、T2、T3、T4及びT5と名付けられたヒツジ
トロホブラスチンのアイソフォームは、PCT出願89/0
8,706に記載されている。
本発明において、式(VIII)又は(IX)の好ましい変
異体は、R0がヒツジ トロホブラスチンのアイソフォ
ームT1からT5のいずれかの成熟形態のアミノ酸配列を示
す。
第1図には、一例として、1位がシステイン残基で始
まり、172位のプロリン残基で終わる(−23から−1の
シグナルペプチド)トロホブラスチンのアイソフォーム
のアミノ酸配列を示す。その中で: ・R5はグルタミン酸、グルタミン又はアルギニン残基、 ・R6はアルギニン又はリジン残基、 ・R35はリジン又はアスパラギン酸残基、 ・R44はグルタミン酸又はアスパラギン酸残基、 ・R48はロイシン又はアスパラギン酸残基及び ・R49はロイシン又はグルタミン残基である。
式(VIII)又は(IX)の定義内にある好ましい変異体
は次の変異体を含む。
−R5がアルギニン残基、R6がリジン残基、R35がアスパ
ラギン酸残基、R44がグルタミン酸残基、R48がロイシン
残基及びR49がグルタミン残基である式(X a)の変異
体、 −R5がグルタミン酸残基、R6がアルギニン残基、R35
リジン残基、R44がグルタミン酸残基、R48がアスパラギ
ン酸残基及びR49がロイシン残基である式(X b)の変異
体、 −R5がグルタミン残基、R6がアルギニン残基、R35がア
スパラギン酸残基及びR44がアスパラギン酸残基である
式(X c)の変異体及び −R5がグルタミン残基、R6がアルギニン残基、R35がア
スパラギン酸残基、R44がグルタミン酸残基、R48がロイ
シン残基及びR49がグルタミン残基である式(X d)の変
異体。
更に本発明の主題は、本発明の変異体の発現用カセッ
トにもあり、それは、少なくとも: −本発明の変異体をコードする第1のDNAフラグメン
ト、 −シグナルペプチドをコードする第2のDNAフラグメン
ト(該第2のDNAフラグメントは、第1のDNAフラグメン
トの5′末端に結合している)、 −これらDNAフラグメントが酵母中で発現するのを可能
にするプロモーター を含有する。
そのようなカセットは、N末端側のシグナルペプチド
及びC末端側の本発明の変異体からなるペプチドプレカ
ーサーの発現を促進することができる。小胞体を通過す
る間に、シグナルペプチドは、切断によって除去され、
成熟形態で変異体を放出する。
本発明の発現カセットに使用するに際して、該第2の
DNAフラグメントは、任意のシグナルペプチドをコード
することができるものであり、該シグナルペプチドのC
末端は、発現カセットを収容する宿主生物のシグナルペ
プチダーゼによって認識されることができる蛋白質分解
部位(proteolysis site)を構成している。該シグナル
ペプチダーゼはシグナルペプチドのC末端を切断する必
要がある。
本発明において、有利なシグナルペプチドは例えば: −アミノ酸配列 を有するα因子(α factor)のプレカーサーのシグナ
ルペプチド、 −アミノ酸配列 を有する酵母β−1,3−グルカナーゼのプレカーサーの
シグナルペプチド及び これらペプチドの機能的誘導体(functional deriverti
ves)を含む。
例えば、β−1,3−グルカナーゼのプレカーサーのシ
グナルペプチドの機能的誘導体は、90年4月27日のPCT
出願番号FR90/00,306に記載されている。
一般的に言えば、本発明の変異体のプレカーサーの発
現のためのプロモーターは、酵母中で機能するいかなる
プロモーターであってもよく、好ましくは、任意のコー
ディング配列の良いレベルでの発現を誘導することがで
きるプロモーターがよい。有利なプロモーターとして
は、例えば、α因子をコードするMFα1遺伝子のプロモ
ーター又はこのプロモーターの機能的誘導体がある。
最後に、本発明の主題は、また: −本発明の発現カセットによって形質転換された酵母細
胞及び −本発明の発現カセットによって形質転換された酵母細
胞を培養し、培養上清から本発明の変異体をハーベスト
することを含む本発明の変異体の産生方法 である。
形質転換された酵母細胞中に存在する本発明の発現カ
セットは、酵母のゲノム中に組み込まれても、又は酵母
中で複製することができるプラスミドによって保持され
ても良い。後者の場合、プラスミドを選択圧(selectio
n pressure)によって酵母内に維持できるようなプラス
ミド/酵母宿主系を選択することが適当である。有利な
選択は、一方は細胞増殖に必須である代謝物に対して栄
養要求性である酵母宿主であり、他方はこの栄養要求性
を補充できるプラスミドである。
本発明のインターフェロン変異体は、天然のインター
フェロンの適用すべてに使用することができ、例えば、
抗ウィルス薬、免疫調節薬、抗炎症薬及び抗腫瘍薬の製
造が挙げられる。それらはまた、抗タイプIインターフ
ェロン抗体の産生を誘導する免疫原としても使用するこ
とができる。
加えて、本発明によって得られるトロホブラスチン変
異体(これら変異体は、以下一般語APrTと呼ぶ)は、上
述のタイプIインターフェロンの一般的な適用の他に、
特に、胎児乃至受精卵(embryo)の移植時の生存率を改
善するのを目的とする産物の製造及び抗黄体融解剤の製
造に使用でき、更に胎児(embryo)の発生の初期の段階
における生存の診断試薬の製造に使用される。
本発明の好ましい態様としては、APrTは群れ(troupe
aux;herds and flocks)を治療して、その受精率を改良
するために使用される。
本発明の他の好ましい態様によれば、APrTは、受精卵
移植を含む育種動物(breeding animals)を生殖の種々
の技術、特に、凍結保存、体外受精、胎児クローニング
(embryo cloning)及び胎児のトランスジェネシス(em
bryo transgenesis)に関する技術において、胎児(emb
ryo)が移植される時の胎児の治療に使用される。
本発明の他の好ましい態様によれば、APrTは、発生の
初期の段階における胎児の生存を診断する試薬及びキッ
トの製造に使用される。
そのような診断は、胎児によって産生されるトロホブ
ラスチンのアッセイに基づく。このアッセイは、例え
ば、免疫学的方法によって行われる。この場合、競合的
なタイプの方法において、APrTは抗体産生の免疫原とし
て、又は抗原として使用される。胎児によって産生され
るトロホブラスチンは、その抗ウィルス活性によって定
量され、APrTはそのようなアッセイにおいて抗ウィルス
活性のスタンダードとして使用される。
APrTの免疫的性質は、不妊性が望まれる動物において
抗トロホブラスチン抗体の出現を誘導するために利用さ
れる。
本発明の主題は、またAPrTを産生する酵母の培養培地
からAPrTを精製する方法にも関し、該方法では、APrT
は、陰イオン交換カラムクロマトグラフィー(例えばDE
AEタイプ)で3段階溶出: ・0から0.135MのKCl勾配 ・約0.135MのKClの無勾配相(isocratic phase) ・0.135Mから0.5MのKCl勾配 によって精製され、APrTは0.135と0.3M KClとの間で集
められる。
APrTは、また、逆相クロマトグラフィー又は抗トロホ
ブラスチン抗体を使用してアフィニティクロマトグラフ
ィーによっても精製することができる。
本発明のより良い理解が、以下の本発明のタイプIイ
ンターフェロンの変異体の調製例に関する更なる記載に
よって得られるであろう。
しかしながら、これら実施例は本発明の主題の例示で
あって、それを限定するものではないことは自明であ
る。
実施例 1:ヒツジ トロホブラスチンのAla−Pro変異体
の酵母中での発現のためのプラスミドの構築 (pTG7908) PCT出願WO89/08,706に記載されている、ヒツジ トロ
ホブラスチンのプレカーサーをコードするDNA配列(第
1図をも参照)を、EcoR Iフラグメントの形態で、エ
ム.ピー.キーニーら(M.P.Kieny et al)、ジーン(G
ene)(1983)26:91によって文献記載されたベクターM1
3TG131にクローニングする。それにより、ベクターM13T
G771が得られる。成熟蛋白をコードするフラグメント、
即ち、シグナル配列のないDNAフラグメントを単離する
ことができるために、アマシャムキット(Amersham ki
t)及び配列が以下の通りであるオリゴヌクレオチドOTG
2102 GAGGATCTCAAGCTTGTTACCTAT を使用して、Hind III部位を、定方向突然変異(direct
ed mutagenesis)によって蛋白の成熟配列の5′末端に
作成する。
一本鎖ベクターM13TG771に保有されるトロホブラスチ
ンのアンチセンス鎖を以下のラインI中に示し、オリゴ
ヌクレオチドOTG2102をラインII中に示す;星印(★)
は所望の変異を起こすミスマッチを表す。
それによってベクターM13TG7720が得られる。コーデ
ィング配列中に導入された点突然変異は、トロホブラス
チンのプレカーサーの−2位のロイシン及び−1位のグ
リシンをそれぞれグルタミン及びアラニンに置き換える
ように誘導する。M13TG7720を、その後EcoR Iで消化
し、トロホブラスチンの突然変異されたプレカーサーを
コードするEcoR I DNAフラグメントを、あらかじめEcoR
Iで切断したベクターpTG769(特許出願EP 0,258,118
に記載されている)に挿入する。それによってベクター
pTG7901が得られる。
更に、酵母中でトロホブラスチンを産生するために、
トロホブラスチンをコードするDNAフラグメントを酵母
プロモーターの支配下におかなければならない。この目
的のために、ベクターM13TG3841を用いる。このベクタ
ーは、1990年4月28日に出願された出願番号FR90/00,30
6のPCT出願に記載され、特に: −α1因子をコードする遺伝子のプロモーター(MFalph
a1); −α1因子のプレカーサーのシグナルペプチドをコード
するMFalpha1のプレ配列(pre sequence)及び −MFalpha1のプロ配列(pro sequence) が含まれている。
アマシャムキット及び配列が以下の通りであるオリゴ
ヌクレオチドOTG2072 を使用して、Sma I制限部位を、定方向突然変異によっ
てMFalpha1のプロ配列の第2及び第3コドンの間に作成
する。
ベクターM13TG3841によって保有されるMFalpha1のプ
レプロ配列のアンチセンス鎖を以下のラインI中に示
し、オリゴヌクレオチドOTG2072をラインII中に示す;
星印(★)は所望の変異を起こすミスマッチを表す。
それによってベクターM13TG3869を得る。コーディン
グ配列中に導入された点突然変異は、グリシンをバリン
に置き換えるように誘導する。
ベクターpTG7901をHind IIIで消化して成熟トロホブ
ラスチンをコードするHind III DNAフラグメントを遊離
させ、その後ムングビーンヌクレアーゼ(mung bean nu
clease)で処理する。このフラグメントをあらかじめSm
a Iで消化されたベクターM13TG3869に挿入する。それに
よってベクターM13TG7740が得られ、該ベクターは配列
中及びフレーム中に: −MFalpha1プロモーター −MFalpha1のプレ配列、これに続くプロ配列の最初の2
つのコドン、即ち、アミノ酸アラニン及びプロリンをコ
ードするコドン −ヒツジ トロホブラスチンをコードするDNAフラグメ
ント を含む。
MFalpha1プロモーター、プレ配列に続くアラニン及び
プロリンコドン及び成熟トロホブラスチンをコードする
DNA配列を含むベクターM13TG7740由来のSph I DNAフラ
グメントを、あらかじめでSph Iで消化した酵母ベクタ
ーpTG3828(PCT特許出願FR90/00,306に記載されてい
る)に挿入する。それによってプラスミドpTG7908が得
られる。
上述のアマシャムキットベクター及びオリゴヌクレオ
チドOTG2643を使用し、M13TG7740の定方向突然変異を行
うことによって、N末端延長Ala−Proをコードする配列
をAla−Glyをコードする配列に置換したものが得られ
る。この方法によって得られるベクターM13TG7745のSph
Iフラグメントを、上述のように、プラスミドpTG3828
に挿入し、その結果得られるプラスミドをpTG7941と名
付ける。
ジペプチドAla−Proをコードする配列を欠くpTG7904
と名付けられたプラスミドを、M13TG7740の定方向突然
変異によって、即ち、オリゴヌクレオチドOTG2299を使
用してpTG3828へのSph I制限フラグメントの挿入によっ
て構築した。第2図にpTG7908、pTG7904及びpTG7941を
得るためのプロトコールをまとめる。
実施例 2:酵母による変異体Ala−Pro−トロホブラスチ
ンの産生 ゲノタイプ MATalpha、ura3−251、−373、−328、leu
2−3、−112、his3、pep4−3のサッカロミセス セレ
ビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)種の酵母株を、
酢酸リチウム法[エッチ.イトウら(H.ITO et al)J.B
acteriol.(1983)153]によって、プラスミドpTG7908
で形質転換し、ウラシル原栄養株(Ura+)を、10g/lの
カザミノ酸を加えたYNBG培地(14g/l酵母窒素ベース(Y
east Nitrogen Base)、10g/lグルコース)上で選択す
る。
実施例1に記載した各種プラスミドによってコードさ
れる異なる変異株の発現レベルを比較するために、これ
らプラスミドによって形質転換された細胞のクローン
を、OD600が8から10単位になるまで、フラスコ内で30
℃で培養し、細胞上清中のトロホブラスチンの産生量を
決定した。
プラスミドpTG7904、pTG7908及びpTG7941によってそ
れぞれ形質転換された酵母による組換えトロホブラスチ
ンの産生量を、アクリルアミドゲル電気泳動を用い、ク
マシーブルーによる染色及び標準蛋白調製物(ファルマ
シア)との比較によって評価した。
結果を以下に示す。
これら結果により、2アミノ酸のN末端延長の存在
が、酵母による組換えトロホブラスチンの産生量におい
て、実質的な増加(4から10倍)をもたらすことが判明
する。
変異体Ala−Pro−トロホブラスチンは、バイオラッフ
ィト(BIOLAFFITE)の20−L発酵槽中“フェド−バッチ
(Fed−Batch)”によって産生される。1.5倍に濃縮さ
れ、10g/lのグルコース及びHYケースSF(HY case SF)
(シェフィールド(SHEFFIELD)により販売)を含有す
るケッペル(Kppeli)培地D[エー.フィチターら
(A.FICCHTER et al)Adv.Microbial.Physiol.(1981)
22,123−183]121を、pTG9708で形質転換された酵母ク
ローンの前培養(preculture)400mlで接種する。この
前培養はエルレンマイヤー(Erlenmeyer)中、YNBG選択
培地上30℃で調製させる。発酵が始まる前、接種された
培地のOD600は0.2である。発酵は、10%アンモニア溶液
の添加で調節されるpH4.5において、攪拌の調節により
一定に保持された飽和圧力の30%に相当する酸素分圧
で、30℃で行う。グルコース全てが消費された時、OD
600を測定し(栄養補給の開始のOD)、3時間の指数段
階におけるグルコースの栄養補給を始める。その際、比
増殖速度(μ)は0.1時間-1であり、加えられたグルコ
ースの量(QS)は、0.045g/h/ODである。発酵をOD600
100の時に終了し、5000gの遠心でハーベスティングを行
う。これによって、変異体Ala−Pro−トロホブラスチン
を大量に含有する培養上清131を得る。
実施例 3:培養上清からの変異体Ala−Pro−トロホブラ
スチンの精製 −セミ−プレパラティブスケールの場合 酵母培養上清を、遠心し濃縮後、ウルトラフィルトレ
ーション セル(アミコン(AMICON))中、10kDa以上
の分子を保持するフィルトロン(FILTRON)膜を通し
て、0.05Mトリス−塩酸バッファー(pH8.2)に対して透
析する。APrTの同定は、セミ−プレパラティブスケール
では、0.05Mトリス−塩酸バッファー pH8.2で平衡化さ
れたセミ−プレパラティブTSK DEAE−5PW陰イオン交換
カラム(150mm×21.5mm)を用いた高速液体クロマトグ
ラフィー(HPLC)によって行われる。流速は4ml/分であ
る。試料を注入後、90分間で0から0.135M(0.05Mトリ
ス−塩酸バッファー pH8.2)のKCl勾配の溶出を行い、
0.135MのKClの無勾配の平坦相(isocratic plateau pha
se)を30分間行い、その後80分間かけて第2の0.5Mまで
のKCl勾配で溶出を行った。溶出は280nmでの吸光度を測
定することにより、モニターされる。APrTに対応するピ
ークは、抗(天然トロホブラスチン)免疫血清(APrTと
天然のトロホブラスチンの免疫学的特性の類似性を、以
下の実施例4で示す。)を使用して同定し、その後相当
する画分を集める。APrTは無勾配の平坦相の終りに出現
し、0.135Mと0.25Mの間に現れる。
第3図(a)に、得られた溶出プロフィールを示す。
APrTに相当するピークに、斜線を施す。
SDSの存在下、ポリアクリドアミドゲル電気泳動にお
ける見掛けの分子量は、約21kDaである。第4図に、得
られた電気泳動プロフィールを示す(ウェル a:APrT;
ウェル b:分子量マーカー)。
−製造精製(Prepatative purification) プレパラティブTSK DEAE−5PWカラム(200×55mm)
で精製を行う。溶出は、以下の条件下、流速25ml/分
で、0.05Mトリス−塩酸バッファー pH8.3中のKCl勾配
にて行う。
−80分間の0から0.135MのKCl勾配 −40分間の0.135Mの無勾配相 −120分間の0.135Mから0.5MのKCl勾配 溶出プロフィールを、第3図(b)に示す。斜線のピ
ークが、APrTに相当する。
実施例 4:APrTの免疫学的特性と天然のトロホブラスチ
ンのそれらとの比較 APrTと天然のトロホブラスチンの免疫学的交差反応の
存在を、抗−トロホブラスチンポリクローナル抗血清及
びヨウ素−125−標識したトロホブラスチン調製物を用
いて、PCT出願89/08,706に記載のプロトコールに従っ
て、ラジオイミノアッセイ(RIA)によって評価する。
この様な条件下で得られるRIA阻害カーブ(inhibitio
n curves)を第5図に示す;希釈のLogを横座標に示
し、対応するlogit=Log(Bo/1Bo)を縦座標に示す(Bo
は、一定の濃度の抗−トロホブラスチン抗血清における
結合したトロホブラスチンの最大濃度を示す。) −(●)コントロール:天然のトロホブラスチンの精製
した調製物; Y=−0.9572X−0.2341 直線回帰係数=0.9957 −(×)APrTを分泌する酵母の培養培地(1から1/100
希釈); Y=−0.9372X−0.921 直線回帰係数=0.9996 −(*)実施例1に記載したようにして得られたAPrTの
調製物(1から1/4000希釈); Y=−0.9341X−2.41 直清回帰係数=0.9955 これらカーブは相互に平行であり、それによって、AP
rTの免疫学的特性が天然のトロホブラスチンのそれに類
似することを示している。
実施例 5:抗ウィルス活性の試験 APrTの抗ウィルス活性を、ラ ボンナロディーレ及び
ローデ(LA BONNARDIERE and LAUDE)[インフェクショ
ン アンド イミニティ(Infection and Immunity),
32,28−31,(1981)]によって記載されたプロトコール
に従って、水疱性口炎ウィルスの存在下、MDBK(マジン
ダービィ ボビノ キドニィ(Madin Darby Bobino K
idney))細胞、ウシ腎臓細胞株を用いて測定する。
得られる結果を、ヒトの参照スタンダードに換算し
て、タイターが1000IUのブタαインターフェロンを参照
のインターフェロンとして用いた結果と比較する。
抗ウィルス活性についてのこの試験の結果により、酵
母培養培地上清(0.8×108IU/mg)、精製したAPrT(0.5
5×108IU/mg)及び天然のトロホブラスチン(0.7×108I
U/mg)(トロホブラスチンの量はラジオイミノアッセイ
によって決定される。)については、均等的な活性であ
ることが明らかとなる。
実施例 6:インビボでのAPrTの抗黄体融解活性の証明 動物及びホルモン処理 30頭のプレアルペス−デュ−スッド ブレッド 雌ヒ
ツジ(Pralpes−du−Sud breed ewes)について実験
を行った。発情周期を、300mgの17α−アセトキシ−9
α−フルオロ−11β−ヒドロキシプロゲステロン(サー
ル インターベット(SEARLE,INTERVET))を含浸した
膣海綿によって、同期性化した。これら海綿を14日間静
置し、取り外した日(14日)に、雌ヒツジに、500IUのP
MSG(妊娠雌馬血清ゴナドトロピン)を筋肉内に注射
し、48時間後に雌ヒツジは新しい周期を始める(0
日)。
子宮内カテーテルの挿入 雌ヒツジを麻酔にかけ、その後白線で開腹し、オペレ
ーターは子宮に接近して、インディアンインキ(Indian
ink)を使用して、黄体にマークする。内径が0.076m
m、外径が0.165mm、長さが70cmの滅菌カテーテル(シラ
スティック(SILASTIIC)ダウ コーニング(DOW CORNI
NG))の一方の末端に短いスリーブを取り付け、カテー
テルが子宮の角、実質的には、子宮卵管の接合点にとど
まれることが可能なようにする。開いたところを腸線糸
(ラボラトリエ ブルウニュ(Laboratoire BRUNEAU)
にクリンプした針で閉じる。巾着縫合をカテーテルの挿
入開口の周囲に行い、装置が恒久的に配置されるように
する。シルク(ラボラトリエ ブルウニュ(Laboratoir
e BRUNEAU))にクリンプされた針でなされた安全縫合
で、カテーテルを広いじん帯に取り付ける。他方の末端
を、アマ糸で閉じ、ループを作成して、右側の腹部の壁
に穴を開けた後、オペレーターがループを引いてカテー
テルを取り出せるようにする。シラスティック チェッ
ク リング(SILASTIC check ring)を、カテーテルの
突出を制限し、腹部の壁内停止として機能すべく、子宮
内端(intrauterine end)から30cmのところに配置す
る。約40cmの長さが子宮内注射をするオペレーターに自
由に使用できる。カテーテルの腹部出現開口(abdomina
l emergence orifice)の回りになされた縫合によって
装置の丈夫さが増強される。カテーテルの挿入は周期の
第9日から第11日になされる。
子宮内注射 雌ヒツジを3グループに分ける。子宮内注射を周期の
第10日から第12日の間に始め、8日間にわたり一日二度
行う。APrTを50,000IU/mlのペニシリンG及び0.2%のBS
A(ウシ血清アルブミン)を含有する生理食塩水中に溶
解する。注射される溶液の容量は1mlである。
・グループA:これは10匹の雌ヒツジからなるコントロー
ル群であり、一日2回、50,000IU/mlのペニシリンGを
含有する生理食塩水(0.9%のNaCl)に溶解した0.2%BS
A(フラクションV シグマ(Sigma))溶液1mlを与え
る。
・グループB:このグループは8匹の雌ヒツジからなり、
一日2回170μgのAPrTを投与された。
・グループC:このグループは4匹の雌ヒツジからなり、
一日2回80μgのAPrTを投与された。
・グループD:5匹の雌ヒツジが一日2回340μgのAPrTを
与えられる。
実験の最後に、雌ヒツジ全てを、一方ではカテーテル
が所定位置にとどまっているかどうか確認するため及び
他方では各グループにおいてインディアンインキでマー
クした黄体(corpus luteum)(又は黄体(corpora lut
ea))の有無をモニターするために診査の開腹を行う。
プロゲステロンのラジオイミノアッセイ 動物の血液を、抗凝固剤を使用せず、バキュティナー
チューブ(ベクトン−デッキンソン(BECTON−DICKINSO
N))を使用して頸静脈から取る。血清のプロゲステロ
ン濃度を、ヘイマンら(Heyman et al)[J.Reprod.Fer
t.,70,533−540,(1984)]によって記載されたプロト
コールに従って、抽出すること無く直接ラジオイミノア
ッセイによって決定する。トリチウム−標識プロゲステ
ロン及び特異的抗プロゲステロン免疫血清(パスツール
アンステュチュート(PASTEUR INSTITUTE)をこのア
ッセイで使用する。
コントロールグループAでは、末梢血中のプロゲステ
ロン濃度は、第14日から全ての雌ヒツジにおいて突然減
少し、発情後第15日と第17日の間では、0.5ng/ml以下に
までレベルが下がる。このグループの周期の平均期間
は、15.2±0.3日である。一日当たり80μgのAPrTの投
与は(グループC)、この期間を延長しない。
グループB(170μg/日)では、グループAに比べ、
血中のプロゲステロン濃度がゆっくり下がるのが、周期
の14日目に見られる。8匹の内7匹が、この段階でプロ
ゲステロンレベルが、1ng/ml以上を示し(これに対し、
グループAでは10匹の内4匹であった)、周期の第15日
では、8匹のうち5匹が、まだプロゲステロンレベル1n
g/ml以上を示す(これに対しグループAでは10匹の内2
匹であった)。
このグループにおいて、黄体融解はグループAに比べ
て平均2日遅れる。
グループDでは、340μg/日の投与量でのAPrTの子宮
内投与が、5匹のうち4匹が、正常周期の期間を越えて
黄体の機能を良く維持する(雌ヒツジ番号.9037、943
1、9458及び9053でそれぞれ25、32、45及び64日)。
異なるグループ間のプロゲステロン分泌の比較平均プ
ロファイルを第6図に示し、これにより、明らかにグル
ープDでは黄体活性の著しい持久性を示すことが判明す
る。
加えて、開腹による外科的なモニタリングの間、新し
く形成された黄体は、上述のグループDの4匹のヒツジ
の中で観察されなかったことより、測定された血液プロ
ゲステロンレベルは、APrT注射の前の周期的な黄体の持
続に対応することが判る。
APrTの可能な副作用を探すために、試験グループの雌
ヒツジの平均温度を毎日測定した。
グループAのコントロールの動物の温度と他のグルー
プの動物の温度の間には差が認められなかった。
より一般的にいえば、行動妨害(食欲減退等)は、コ
ントロールに比べ、APrTで処理した動物には観察されな
かった。同様のことが血液の状況(picture)(赤血
球、白血球、血小板)および血清トランスアミナーゼ
(SGPT)レベルについてもあてはまる。
−筋肉内注射 同様な実験を、筋肉内にAPrTを注射して行った。
一つの雌ヒツジグループ(E)には、一日2回APrT溶
液注射を行った(2mgのAPrT/日、朝1mg、夜1mg)。
コントロールの雌ヒツジグループ(F)には、BSA溶
液注射を行った(2mg/日、朝1mg、夜1mg)。
グループEの動物の黄体活性の持続は、(子宮内注射
により処置を受けた)グループDの動物で観察されるも
のと同じである。
観察される唯一の副作用は、グループFに比べグルー
プEの動物の平均温度がわずかに上昇したことのみであ
る。対照的に、行動の修飾(behavioral modificatio
n)は観察されず、血液の状況および血清トランスアミ
ナーゼ(SGPT)レベルの修飾は行われない。
以前行った実験により、天然のトロホブラスチンの抗
黄体融解活性が示されたが、トロホブラスチンがそれ自
身で黄体融解を阻害するのに十分であることを断言する
ことはできず、トロホブラスチンの異なるアイソフォー
ム(isoforms)の役割を決定できなかった。今、記載し
た実験によって、一種類のアイソフォームから得られる
APrTは、N末端に2つのアミノ酸を付加するにも拘ら
ず、適当な投与量で、黄体融解を阻害するのに十分であ
ることが示される。最後にプロリン毒性を示す徴候は観
察されない。
実施例 7:APrTの免疫抑制特性の証明 これら特性を、4つのタイプの試験によって、証明さ
れる作用の異なる様式を証明する: −マウス、ヒト、またはヒツジリンパ球の増殖に対する
作用によって評価される抗有糸分裂活性、 −混合リンパ球反応(MLR)のインビトロでの試験によ
って評価される、細胞融解の移植片拒絶反応に関する阻
害活性 −インビボでの局所の移植片拒絶反応(宿主反応に対す
る局所の移植片)に関する阻害活性、 −主要組織適合性複合体(MHC)の抗原に独立なNKキラ
ーリンパ球の群(population)に関する免疫調節活性 1)フィトヘマグルチニンによって活性化されたマウス
リンパ球の増殖に対するAPrTの作用 マウスリンパ球を、C3H/HeまたはBalb/cマウスの脾臓
から、ポッター(Potter)中で混合し、RPM I1640培養
培地中で1500rpm,10分間2回洗浄することにより得る。
最後に、単離されたリンパ球を、10%ウシ胎児血清(FC
S)が加えられた同培養培地中で混合し、終濃度5×106
細胞/mlとした。細胞培地は、500mlのRPM I1640(ギブ
コ(GIBCO))+5mlのペニシリンG/ストレプトマイシン
(ギブコ)+5mlの7.5%重炭酸ナトリウム(ギブコ)+
5mlのグルタミンで構成されている。
ウエルあたり、5μg/mlのフィトヘマグルチニン(PH
A)(ウエルカム(WELLCOME))で活性化された6×105
リンパ球を含有する培養培地100μlを、3μg/ml(1
08IU/mg)の濃度のAPrT溶液100μlまたは培養培地100
μl(コントロール)と共に、96−ウエル マイクロテ
スト プレート中、37℃で48時間、空気/CO2(95%/5
%)の雰囲気下、インキュベートする。
リンパ球増殖を、トリチウム化チミジン(tritiated
thymidine)の取り込みを測定することによって評価す
る。25μlの[3H]チミジン(0.04mCi/ml)を各ウエル
に加え、細胞を24時間後にハーベストし、フィルター
(グラス マイクロファイバー フィルターズ(Glass
Microfibre Filters)−GFM−ワットマン(WHATMAN))
上に置く。乾燥後、フィルターを1mlのシンチレーショ
ン液(エコンフロアー(ECONFLUOR))を加えたチュー
ブ内に入れる。放射能活性をβ−ラジエーションカウン
ター(ベックマン(BECKMAN))で測定する。
結果を第7図に示す。これによって、APrTは、かなり
顕著に(55%)PHA処理マウスリンパ球の増殖を抑制す
ることが判る。
A:コントロール B:APrT cpmでの放射能活性を縦座標にプロットする。フィト
ヘマグルチニンA(PHA)で活性化されたヒトまたはヒ
ツジリンパ球の存在下、APrTは、同様にリンパ球の複製
を抑制する。この阻害は、APrTの細胞毒性によるもので
はない。なぜなら、細胞の生存度はAPrTによって影響を
受けないからである。このことは、トリパンブルー又は
51Crの存在下、リンパ球をインキュベートすることによ
って示される。
2)混合リンパ球反応でのAPrTの作用 混合リンパ球反応を、ウエルあたり、5×108個/mlの
C3H/He応答細胞(responsing cells)を含む150μlの
培養培地を、1,800rads/mlで放射線照射された5×106
の同質遺伝子(isogeneic)又は同種異系(allogenei
c)の刺激細胞とインキュベートすることよによって行
った。
C3H/Heマウス細胞を同質遺伝子の反応(isogeneic re
action)に使用し、Balb/cマウス細胞を同種異系(allo
geneic reaction)の反応に使用する。3μg/ml(108IU
/mg)の濃度のAPrT又は培養培地(コントロール)100μ
lを、37℃で96ウエルマイクロテスロプレート(ファル
コン(FALCON)3072)のウエル毎に加え、培養物を空気
/CO2(95%/5%)気体雰囲気下、4日間放置した。
混合リンパ球反応の間に産生される細胞毒性のあるリ
ンパ球によるリンパ球溶離を、トリチウム化チミジンの
取り込みを測定することによって評価する。リンパ球を
サンプリングしフィルター上に置く前に、25μlの
3H]チミジンを加える。フィルターの放射能活性を、
シンチレーションカウンターで測定する。
結果を第8図に示す。
A:コントロール B:天然トロホブラスチン C:APrT cpmでの放射能活性を縦座標にプロットする。
2種のマウス株(Balb/c及びC3H/He)起源のリンパ球
の2種の方法の培養において、APrTは、産生された細胞
毒性細胞(CTL)によるマウスリンパ球の溶解を90%程
度阻害する。
3)局所の移植片拒絶反応 2μg/mlの割合のAPrTを、Balb/cマウス起源の同種異
系の脾臓細胞の懸濁液に加え、それをF1(Balb/c×B6
レシピエントマウスの後ろ足の足底のパッドに注射す
る。
他方の後ろ足を、コントロールとして使用し、APrTを
含まない脾臓細胞を注射する。膝窩のリンパ球の神経節
を(マウスのグループに依存して)4〜6日後に取りだ
し、重量を測定する。これら神経節の細胞を取りだし、
PHAで活性化し、これら細胞の[3H]チミジンの取り込
みを測定する。
結果を第9図(a)及び第9図(b)に示すが、これ
により、APrTで処理した細胞中の小リンパ管(lymphati
c)の神経節の重量が、コントロールの細胞に比べ減少
し、APrTで処理した足の膝窩の神経節由来の細胞のトリ
チウム化チミジンの取り込みは、コントロールの細胞の
場合よりも低いことが判る。
この結果により、APrTは、ヒツジ種から非常に離れた
種(マウス)においてさえも、インビボでの移植片拒絶
反応を阻害することが示される。
4)NK細胞による細胞溶解に対するAPrTの作用 K562細胞(ヒト赤白血症株)を10分間1,800rpmで遠心
し、0.5mlの51Crをペレットに加えた。5%CO2/95%空
気中、37℃で1時間インキュベート後、細胞をRPM I培
養培地で3回洗浄し、2×105細胞/mlの濃度で同培養培
地に再懸濁する。
平行して、空気/CO2(95%/5%)中、37℃でマイクロ
タイトレーションプレートで、3タイプのインキュベー
ションを行う:即ち、 −100μlの標識されたK562細胞+100μlの50〜100倍
以上濃縮されたヒトリンパ球+濃度が3μg/ml(108IU/
mg)のAPrT又は培養培地(コントロール)100μl、こ
れにより実験培地の放射能活性のある蛋白質(exp.rad.
prot.)が決定できる、 −100μlの標識されたK562細胞+200μlの4N HCl、
これにより培地総量の放射能活性のある蛋白質(tot.ra
d.prot.)が決定できる、 −100μlの標識されたK562細胞+200μlの培養培地、
これにより天然の培地の放射能活性のある蛋白質(nat.
rad.prot.)が決定できる、 である。
4時間のインキュベーション後、100μlの上清を各
ウエルから取り、51Cr−標識蛋白質の遊離による放射能
活性を、cpmでガンマ−ラジエーションカウンターを用
いてカウントする。
結果を、試料の細胞溶解の平均パーセントとして表
し、以下の式によって計算する: 第10図に、得られた結果を示す。
A:コントロール B:APrT C:IFN−アルファ D:IFN−ガンマ これにより、明らかにAPrTは、NK細胞によるK562標的
細胞の細胞溶解を活性化することが判る。
このNK細胞による細胞溶解の活性化は、クラスIのヒ
トαインターフェロンを使用して観察されるものと同様
であり、参照ヒトγインターフェロンのそれよりも低
い。
上述より明らかなように、本発明は、より明確に記載
されたこれら実施の方法、態様及び出願方法に限定され
ず、それどころか、本発明の視野または範囲から外れる
こと無く、この分野の専門家が考えるすべての変異体を
カバーする。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI A61P 35/00 A61P 37/02 37/02 C12N 1/19 C12N 1/19 C12P 21/02 F 15/09 A61K 37/66 F C12P 21/02 C12N 15/00 A (72)発明者 ガイ ピエール フランス国 75018 パリ リュ コラ ンクール 51 (72)発明者 シャルリェ マディア フランス国 75014 パリ リュ サレ ット 44 (72)発明者 シャルピニィ ジル フランス国 45000 オルレアン リュ ド ブルゴーニュ 155 (72)発明者 レノー ピエレット フランス国 92320 シャティロン ア ヴニュ ド ラ レパブリック 25 (72)発明者 シャウア ジェラール フランス国 75020 パリ リュ ド シン アー 442 ― 11―17 (56)参考文献 欧州特許出願公開220958(EP,A 1) 欧州特許出願公開88632(EP,A1) 国際公開84/776(WO,A1) 国際公開89/8706(WO,A1) 国際公開90/13646(WO,A1) Gene,Vol.22,1983,p. 229−235

Claims (14)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】式: Ala−Pro−R0′ (IV) 又は Ala−Gly−R0′ (V) (但し、R0′は、トロホブラスチンクラスのIFNであ
    る。) で表されるタイプIインターフェロンの変異体。
  2. 【請求項2】式: Ala−Pro−R0′′ (VI) 又は Ala−Gly−R0′′ (VII) (但し、R0′′は、ヒツジ トロホブラスチンのアイソ
    フォームのいずれかの成熟形態のアミノ酸配列を示
    す。) で表される請求項1に記載の変異体。
  3. 【請求項3】式: Ala−Pro−R0′′′ (VIII) 又は Ala−Gly−R0′′′ (IX) (但し、R0′′′は、ヒツジ トロホブラスチンのアイ
    ソフォームT1からT5のいずれかの成熟形態を示す。) で表される請求項2に記載の変異体。
  4. 【請求項4】R0′′が、1位がシステイン残基で始ま
    り、172位のプロリン残基で終わる、ヒツジ トロホブ
    ラスチンのアイソフォームの一般的なアミノ酸配列を示
    し、その中で: ・R5はグルタミン酸、グルタミン又はアルギニン残基 ・R6はアルギニン又はリジン残基 ・R35はリジン又はアスパラギン酸残基 ・R44はグルタミン酸又はアスパラギン酸残基 ・R48はロイシン又はアスパラギン酸残基及び ・R49はロイシン又はグルタミン残基 である請求項2に記載の変異体。
  5. 【請求項5】−R5がアルギニン残基、R6がリジン残基、
    R35がアスパラギン酸残基、R44がグルタミン酸残基、R
    48がロイシン残基及びR49がグルタミン残基である式(X
    a)の変異体、 −R5がグルタミン酸残基、R6がアルギニン残基、R35
    リジン残基、R44がグルタミン酸残基、R48がアスパラギ
    ン酸残基及びR49がロイシン残基である式(X b)の変異
    体、 −R5がグルタミン残基、R6がアルギニン残基、R35がア
    スパラギン酸残基及びR44がアスパラギン酸残基である
    式(X c)の変異体及び −R5がグルタミン残基、R6がアルギニン残基、R35がア
    スパラギン酸残基、R44がグルタミン酸残基、R48がロイ
    シン残基及びR49がグルタミン残基である式(X d)の変
    異体 から選ばれる請求項4に記載の変異体。
  6. 【請求項6】請求項1から5のいずれかに記載の変異体
    の発現用カセットであって、少なくとも: −該変異体をコードする第1のDNAフラグメント、 −シグナルペプチドをコードする第2のDNAフラグメン
    ト(該第2のDNAフラグメントは、第1のDNAフラグメン
    トの5′末端に結合している)、 −これらDNAフラグメントが酵母中で発現するのを可能
    にするプロモーターを含有する発現用カセット。
  7. 【請求項7】第2のDNAフラグメントが、α因子のプレ
    カーサーのシグナルペプチド又は酵母β−1,3−グルカ
    ナーゼのプレカーサーのシグナルペプチドをコードする
    ことを特徴とする請求項6に記載の発現カセット。
  8. 【請求項8】該プロモーターが、MFα1遺伝子のプロモ
    ーター又はこのプロモーターの機能的な誘導体である請
    求項6又は7のいずれかに記載の発現カセット。
  9. 【請求項9】請求項6から8のいずれかの記載の発現カ
    セットによって形質転換された酵母細胞。
  10. 【請求項10】請求項9の酵母細胞を培養し、培養上清
    から該変異体を回収することを含む、請求項1から5の
    いずれかに記載の変異体の産生方法。
  11. 【請求項11】請求項10の方法であって、 ・0から0.135MのKCl勾配での溶離 ・0.135MのKClの無勾配相 ・0.135Mから0.5MのKCl勾配での溶離からなる陰イオン
    交換クロマトグラフィー技術により、0.135Mから0.3Mの
    KClの間で該変異体を集めることによって、該変異体を
    培養上清から精製する方法。
  12. 【請求項12】抗炎症、抗ウィルス、抗腫瘍、免疫調
    節、又は抗黄体融解薬の製造に使用するための、請求項
    1から5のいずれかに記載のタイプIインターフェロン
    変異体調製物。
  13. 【請求項13】使用されるタイプIインターフェロン
    が、請求項3から5のいずれかに記載のトロホブラスチ
    ン変異体(APrT)である請求項12に記載の調製物。
  14. 【請求項14】受精卵の移植時の生存率を改善するため
    の、請求項3から5のいずれかに記載のトロホブラスチ
    ン変異体(APrT)調製物。
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