JP3365887B2 - 常温拡散・浸透メッキ方法 - Google Patents

常温拡散・浸透メッキ方法

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JP3365887B2
JP3365887B2 JP13703295A JP13703295A JP3365887B2 JP 3365887 B2 JP3365887 B2 JP 3365887B2 JP 13703295 A JP13703295 A JP 13703295A JP 13703295 A JP13703295 A JP 13703295A JP 3365887 B2 JP3365887 B2 JP 3365887B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属被覆処理法におけ
る常温拡散・浸透メッキ方法に関し、特に、鉄鋼、鋳
鉄、ハイス等の鉄系金属もしくはアルミニウム、真鍮等
の非鉄系金属、もしくは超硬合金、セラミック合金、サ
ーメット等の粉末合金などから成る金属成品又はセラミ
ックあるいはこれらの混合体から成る被処理成品をブラ
スト加工して前記被処理成品の表面に金属を被覆する常
温拡散・浸透メッキ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、金属被覆処理法には、溶融メッキ
法、拡散浸透メッキ法、電気メッキ法、その他の真空蒸
着法、溶射法などがある。
【0003】溶融メッキ法は溶融している金属浴に成品
を浸けて、所定時間後金属浴から引き上げる作業によっ
て行なうメッキ法であり、比較的融点が低い金属につい
て行われ、溶融亜鉛メッキ、溶融錫メッキ、溶融アルミ
ニウムメッキ、溶融鉛メッキ等がある。なお、カドミニ
ウムは融点が低いが有毒な蒸気を発生するから行えな
い。
【0004】拡散浸透メッキ法は通常金属セメンテーシ
ョンと総称しており、金属表面の効果、耐食性、耐熱性
を与えるなどの目的で金属に他の元素を拡散浸透させる
方法である。広義的には鋼の浸炭、窒化も含まれる。拡
散浸透させる元素がCrの場合をクロマイジング、Zn
の場合をシェラーダイジング、Alの場合をカロライジ
ングと称している。
【0005】電気メッキ法は電着法ともいい、電解槽の
電着液内に陰極の成品と陽極の金属を投入して通電し、
電解によって陽極の金属を陰極の成品の金属表面に析出
させて(電着という)金属被覆を施す方法であり、装
飾、防食、耐摩耗などの目的で行なう。一般に、銅メッ
キ、ニッケルメッキ、クロムメッキ、亜鉛メッキ、カド
ミウムメッキ、錫メッキなどがある。
【0006】真空蒸着法は高真空下で金属あるいは非金
属を物体面に蒸着させる方法である。金属、プラスチッ
ク、ガラスなどの成品と蒸着させる金属を真空タンクに
入れて回転ポンプ、油拡散ポンプにより高真空(10-3
mmHg以上)にし、蒸着させる金属を一般に融点以上に加
熱する。
【0007】溶射法は被覆となる材料を電弧または高熱
の火炎で溶融し、圧縮空気で吹き飛ばして、素地表面に
吹きつけて行なう金属被覆処理法である。金属溶射の他
にプラスチック溶射、セラミック溶射がある。
【0008】従来、上記のような金属被覆処理法におい
ては、工業界では防錆、耐摩耗等の目的により多層メッ
キが行われている。例えば、銅、ニッケル、クロムの三
層メッキやニッケル、クロムの二層メッキ等が行われて
いた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従来の金属被覆処理法
にあっては、以下の問題点があった。
【0010】(1)従来の金属被覆処理法は、以下のよ
うに設備費が高いという問題点があった。
【0011】例えば、真空蒸着では、真空タンクやタン
ク内を真空にするための回転ポンプや油拡散ポンプ等の
設備費が高いという問題点があった。
【0012】また、溶融メッキでは、固体金属の成品を
浸漬するための溶融した液体金属が必要であるので、液
体金属を常に溶融状態に維持するための加熱設備費が高
いという問題点があった。
【0013】さらに、カドミニウムメッキや銅メッキの
ように液体金属の種類によっては公害の問題があるの
で、廃液処理の設備費が高いという問題点があった。
【0014】(2)従来の金属被覆処理法は、有害な化
学薬品を使用し、金属被覆処理の時に発生する有害な蒸
気による環境汚染などの公害の問題点があった。
【0015】(3)上記の(2)項の理由で、例えば、
カドミニウムメッキや銅メッキのように公害の問題のた
めに汚染処理設備費が高いので処理業者も少ないために
コスト高であるという問題点があった。
【0016】(4)高温加工や焼なましによって金属材
料の表面に生じたスケール(酸化物)を除くには普通酸
洗が行われており、この酸洗によって生じる水素は、鋼
に吸収され、金属内の水素圧は106 〜107 気圧にも
達するため材料が脆くなる。この現象を水素脆性とい
う。したがって、従来の金属被覆処理法において、成品
の前処理として酸洗をする場合、水素脆性という問題点
があった。
【0017】(5)溶融メッキは密着力不足による不良
率が高いためにコスト高であるという問題点があった。
例えば、鉄鋳物のクロムメッキやアルミダイカスト成品
の溶融ニッケルメッキは密着力不足による不良率が高
く、メッキが安定しないという問題点があった。
【0018】(6)また、真空蒸着では真空タンク内を
真空にするに要する時間が多くかかり、また成品を多量
に処理できないので作業効率が悪いという問題点があっ
た。
【0019】本発明は叙上の問題点を解決するために開
発されたもので、金属被覆処理、特に拡散・浸透メッキ
をブラスト加工で行うことを可能にし、公害が少なく且
つ安価な金属被覆処理法を提供し、成品に対する水素脆
性やメッキ不良を減少又はなくすことを可能にする常温
拡散・浸透メッキ方法を提供することを提供することを
目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の常温拡散・浸透メッキ方法は、金属成品又
はセラミック又はこれらの混合体から成りる被処理成品
の表面に、被覆金属粉体を噴射速度80m/sec以上又は
噴射圧力3kg/cm以上で噴射して前記被処理成品に衝
突させ該衝突時に前記被処理成品の表面の衝突部が変
形することにより生じる内部摩擦により前記被覆金属粉
体が衝突した変形部分で熱交換を行わしめて前記被覆金
属粉体を前記被処理成品の表面で高温に加熱させ、前記
加熱された被覆金属粉体の組成物中の元素を前記被処理
成品の表面に活性化吸着させて拡散浸透させることを特
徴とする。
【0021】また、金属成品又はセラミック又はこれら
の混合体から成る被処理成品の表面に、被覆金属粉体及
びこの被覆金属粉体と同一粒径の同種又は多種の組成か
ら成る金属研磨材を混合して噴射速度80m/sec以上又
は噴射圧力3kg/cm以上で噴射して前記被処理成品に
衝突させ該衝突時に前記被処理成品の表面の衝突部が
変形することにより生じる内部摩擦により前記被覆金属
粉体が衝突した変形部分で熱交換を行わしめて前記被覆
金属粉体を前記被処理成品の表面で高温に加熱させ、
加熱された被覆金属粉体の組成物中の元素を前記被処
理成品の表面に活性化吸着させて拡散浸透させることも
できる。
【0022】さらに、前記被覆金属粉体が低融点金属の
ときは、該被覆金属粉体が多角形状を成すことが、被処
理成品に衝突時の被覆金属粉体の温度上昇を効率よくす
るという点で望ましい。
【0023】なお、被覆金属粉体とは、金属の粉末をい
い、本願発明方法における研磨材を成す、この中には、
平均粒径300μ以下の金属粉末を含み、例えば、平均
粒径が80μ以下の微粉及び平均粒径が80μより大き
く且つ平均粒径300μ以下の金属粉末を含むものであ
る。
【0024】また、平均粒径とは、最大粒子の平均径
と、最大粒子から30番目の粒子の平均径との平均で表
示するものである。
【0025】例えば、平均粒径80μの微粉は、「最大
粒子の平均径が171μ以下で、最大粒子から30番目
の粒子の平均径が120μ以下で、平均径の平均が8
7.5〜73.5μで」ある(JIS R6001)。
【0026】
【作用】被処理成品の表面に、被覆金属粉体を噴射速度
を高速で噴射すると、被覆金属粉体の衝突前と衝突後の
速度の変化は、被処理成品及び被覆金属粉体の反発係数
により異なるが、衝突後の速度は低下する。この速度の
変化はエネルギー不変の法則により、その大部分は熱エ
ネルギーに変換され、被覆金属粉体が衝突した変形部分
のみで熱交換が行われるので、温度上昇は被覆金属粉体
と被処理成品の表面付近に局部的に生ずる。
【0027】また、温度上昇は被覆金属粉体の衝突前の
速度に比例するので、被覆金属粉体の噴射速度を高速に
すると、被覆金属粉体又は被覆金属粉体及び被処理成品
の表面の温度を上昇させることができる。このとき被覆
金属粉体が被処理成品の表面で加熱されるために被覆金
属粉体内の元素が被処理成品の表面に活性化吸着して拡
散・浸透すると考えられ、被処理成品及び被覆金属粉体
の上昇温度によって格子拡散、或いは被処理成品に温度
上昇がみられなくても少なくとも被覆金属粉体が加熱さ
れることによって表面拡散、粒界拡散のうち一つ或いは
二つの拡散がなされ、本発明の常温拡散・浸透メッキが
行われるものと考えられる。
【0028】したがって、本発明の常温拡散・浸透メッ
キ方法は、従来の拡散浸透メッキとは異なり、被覆金属
粉体が衝突したときに被覆金属粉体又は金属成品が部分
的に温度が上昇するとはいえ、実際は常温で処理を行う
ので、本発明の金属被覆処理を本明細書では「常温拡散
・浸透メッキ」という。
【0029】より詳細に説明すると、一般に行われる拡
散浸透メッキは、例えば金属成品Aを金属粉末Bに埋め
て温度tで拡散させると、浸炭が主としてCOガスから
行われるように、金属粉末Bから発生する金属蒸気、又
は金属粉末と添加剤との反応によって生ずる金属ハロゲ
ン化物蒸気から主として行われる。本発明の拡散・浸透
メッキについて考慮するために浸炭を例にして考える
と、鉄系の金属成品の表面に、COガスが単に外力や加
熱その他の物理的方法によって簡単に除去できるような
物理的な付着をしただけでは、成品のFeとCOが反応
を起こすことはできないが、さらに熱その他のエネルギ
ーをある一定以上与えるとCOガスはFe表面に活性化
吸着をする。この活性化吸着をしたCOガスは二酸化炭
素と炭素に熱解離をする。この反応によりできた炭素は
Feの格子内に拡散して浸炭現象を起こすものと考えら
れている。炭素の拡散に限らず、一般に一つの元素があ
る金属の中を拡散していく形態に、表面拡散(表面に沿
って行われる拡散)、粒界拡散(結晶粒界に沿って進行
する拡散)、格子拡散(結晶格子内を縫いつつ進行する
拡散)がある。格子拡散は元素と金属の両者が固溶体を
作る場合だけである。元素と金属の両者が固溶体を作ら
ない場合は表面拡散又は粒界拡散が行われているだけで
ある。
【0030】上記の従来の拡散浸透の現象を考慮する
と、本発明の拡散・浸透メッキにおいては金属成品に以
下に示すような拡散・浸透が行われると考えられる。
【0031】例えば、金属成品Aの表面に被覆金属粉体
Bを噴射速度80m/sec以上又は噴射圧力3kg/cm2 で噴
射し、金属成品の表面に衝突させると跳ね返るが、衝突
後は速度が遅くなる。衝突前と衝突後の速度の比、すな
わち反発係数は金属成品の材質硬度により異なるが、衝
突前の速度をV1 、衝突後の速度をV2 とすると、失わ
れた運動エネルギーつまり減少エネルギーEeは被覆金
属粉体の重量をWとすると、Ee=〔W/2g〕×(V
1 2−V2 2) となる。
【0032】反発係数をeとすると、V2 =V1 ×eと
なるので、 Ee=〔W/2g〕×V1 2(1−e2 ) 0<e<1 上記減少エネルギーEeは、エネルギー不変の法則か
ら、音以外にその大部分は熱エネルギーに変換される。
熱エネルギーは衝突時に金属成品の衝突部が変形するこ
とによる内部摩擦と考えられるが、被覆金属粉体が衝突
した変形部分のみで熱交換が行われるので部分的には高
温になる。このとき被覆金属粉体が金属成品の表面で加
熱されるために被覆金属粉体内の元素が金属成品に活性
化吸着し、拡散・浸透するものと考えられる。この場
合、被覆金属粉体及び金属成品の上昇する温度によって
は格子拡散が行われ、あるいは被覆金属粉体が加熱され
て金属成品に表面拡散又は表面拡散及び粒界拡散するも
のと考えられる。
【0033】なお、減少エネルギーEe(熱エネルギ
ー)は重量Wおよび速度V1 2に比例するので、重量Wお
よび速度V1 が大きい方が減少エネルギーEeが大きく
なるが、本発明の場合は金属成品の表面を加熱して熱処
理することではなく、むしろ被覆金属粉体が加熱されて
金属成品の表面に活性化吸着することを目的とするの
で、被覆金属粉体が前記熱エネルギーで瞬時に加熱され
るためには重量の大きなショットではなく粒径300μ
〜30μの粉末状のショットつまり被覆金属粉体である
必要がある。したがって、金属成品の表面を加熱して熱
処理するためには被処理成品の表面硬度より高い硬度を
有するショットを使用する必要があるが、上記の理由か
ら被覆金属粉体が加熱されればよいので、被覆金属粉体
は必ずしも被処理成品の表面硬度より高い硬度を有する
必要はない。したがって、被覆金属粉体が低硬度で低融
点金属の銅(実施例1)であっても本発明の常温拡散・
浸透メッキ方法に適用される。
【0034】尚、被処理成品の表面に、被覆金属粉体及
びこの被覆金属粉体と同一粒径の同種又は多種の組成か
ら成る金属研磨材を混合して噴射した場合、被覆金属粉
体による常温拡散・浸透メッキと、金属研磨材によるピ
ーニング効果を図れる。
【0035】
【実施例】以下に、実施例について図面を参照して説明
する。
【0036】〔ブラスト装置〕なお、実施例のブラスト
装置はエア式の直圧式のブラスト装置であるが、エア式
であれば吸込式の重力式、サイホン式、あるいは他のブ
ラスト装置でも良い。
【0037】図1及び図2において、51はブラスト装
置50のキャビネットで、被処理成品を投入する投入口
53を備え、この投入口53から投入した被処理成品に
研磨材を噴射する噴射ノズル52をキャビネット51内
にを設けている。
【0038】また、前記キャビネット51の下部にはホ
ッパ58が設けられ、ホッパ58の最下端は導管55を
介してキャビネット51の近くに設置された研磨材回収
用の回収タンク40の上部に連通する。
【0039】回収タンク40はいわゆるサイクロンで、
粉塵を研磨材から分離する装置であり、図1に示すよう
に、上部に円筒形状を成す円筒部41と、下部に下方に
向けて徐々に狭くなる円錐形状を成す円錐部42とから
成るタンクで、回収タンク40の円筒部41の上部の側
壁に流入口43を設け、この流入口43に連通管45を
介して導管55を連結する。なお、前記連通管45の軸
線方向は円筒部41の横断面円形を成す内壁面の接線方
向に位置しているので、連通管45を経て回収タンク4
0内に流入した気流は円筒部41の内壁に沿って回りな
がら降下してゆくのである。
【0040】また、回収タンク40の円錐部42の下端
は、ダンプバルブ46を介して研磨材圧送用のタンク4
7に開閉自在に連通しており、このタンク47の下端に
は噴射ノズル52から噴射する研磨材の噴射量を調整す
る研磨材調整器48を備え、該研磨材調整器48から管
54を介して前記噴射ノズル52に連通している。
【0041】直圧式ブラスト装置の特徴は、前記タンク
47内に圧縮空気を送り込むと、タンク47の下部の研
磨材調整器48より前記圧縮空気によって研磨材が圧縮
空気と共に圧送され、管54内を噴射ノズル52の方向
に向けて送給され、噴射ノズル52から研磨材が圧縮空
気と共にキャビネット51内の被処理成品へ噴射され
る。
【0042】前記ダンプバルブ46は、図示せざるフッ
トスイッチ又はマイクロスイッチに連動する電磁弁の作
動により上下動し、このダンプバルブ46の上下動によ
り回収タンク40とタンク47間を開閉するよう構成し
ている。前記フットスイッチ又はマイクロスイッチを作
動すると、前記ダンプバルブ46が上がり、回収タンク
40とタンク47間を遮断すると同時にタンク47内に
圧縮空気が充満し、タンク47内の研磨材が圧縮空気に
押圧されて研磨材調整器48内に流入し、この研磨材調
整器48内で圧縮空気と研磨材とが適当に混合され研磨
材供給口49を経て図示せざる管を介して噴射ノズル5
2から噴射される。
【0043】次に、前記スイッチを元に戻すと、ダンプ
バルブ46が下がり回収タンク40とタンク47間を開
放しタンク47内の圧縮空気が回収タンク40内に逃げ
出しタンク47内の圧力が大気圧になる。タンク47内
が大気圧になる直前に、ダンプバルブ46が下がると直
ちに噴射ノズル52から研磨材の噴射が止まり、同時に
回収タンク40の底部に集積されている研磨材が一気に
タンク47内へ落下する。
【0044】一方、回収タンク40の上端壁面の略中央
には連結管44が設けられ、この連結管44は排出管5
7を介してダストコレクタ56に連通している。
【0045】ダストコレクタ56は排風機59を回転し
ダストコレクタ56内の空気を外気へ放出している。こ
の排風機59によりブラスト装置50のキャビネット5
1、導管55、回収タンク40内がそれぞれ負圧にな
り、また図示せざる圧縮機から供給された圧縮空気が研
磨材と共に噴射ノズル52から噴射されるので、キャビ
ネット51から順に導管55、回収タンク40、ダスト
コレクタ56へ気流が流れる。
【0046】〔実施例1〕上記のブラスト装置50を用
いて、被処理成品であるフクロナット10Kgを投入口5
3からキャビネット51内のバレル64へ投入し、表1
に示す加工条件で、研磨材を噴射ノズル52より被処理
成品の表面へ噴射してブラスト加工をおこなった。
【0047】研磨材は多角形状を成し、平均粒径50μ
の銅の金属成分から成る被覆金属粉体であり、回収タン
ク40内へ投入し、該被覆金属粉体はタンク47内へ落
下している。バレル64は開口を有するカゴ状の容器
で、キャビネット51内に前記バレル64の開口を斜め
上向きにして回転可能に設けており、減速モータ67に
より毎分4回転の速さで回転する。図示せざる圧縮空気
供給源から圧縮空気を前記タンク47内に送り込むと、
前述したようにタンク47の下部の研磨材調整器48よ
り前記圧縮空気によって銅の被覆金属粉体が圧縮空気と
共に圧送され、管54を介してノズル径5mmの噴射ノズ
ル52へ送給され、噴射ノズル52から銅の被覆金属粉
体が圧縮空気と共にバレル64内のフクロナットへ噴射
される。
【0048】銅の被覆金属粉体がフクロナットの表面に
衝突すると、フクロナットの表面に被覆金属粉体の銅が
付着し、銅がフクロナット内部へ浸透拡散する。
【0049】
【表1】
【0050】次いで、実施例1の常温拡散・浸透メッキ
で得られたフクロナットの表面に、電気メッキでニッケ
ルメッキを行い、このニッケルメッキをしたフクロナッ
トにクロムメッキをおこなった。なお、本実施例では前
加工として粒径#220のアランダムでブラストし被処
理成品の表面スケール除去を行っている。
【0051】その結果、本実施例の常温拡散・浸透メッ
キ方法で得られたフクロナットは、従来の電気メッキで
銅メッキ、ニッケルメッキ、クロムメッキの三層メッキ
を施したフクロナットに比較すると、従来の電気メッキ
における銅メッキが不要になり、又従来の不良率は5%
前後であったが、本実施例では0%近い不良率で品質が
安定したので、総合して30%のコストダウンが図られ
た。ちなみに、従来はフクロナットのフクロの部分を摩
擦溶接しているので、酸洗いをすると前記溶接部が脆く
なってくるのでピンホールが出たり、又フクロナットの
フクロの中に酸が残るためにナットが腐食するという不
良が発生していた。
【0052】なお、本実施例のフクロナットは従来のフ
クロナットに比較して疲れ強さが向上した。
【0053】〔実施例2〕
【0054】
【表2】
【0055】次いで、実施例2の常温拡散・浸透メッキ
で得られたアルミダイカスト成品の表面に、無電解メッ
キのニッケルメッキをおこなった。前記ニッケルメッキ
の不良率は0%であった。
【0056】ちなみに、アルミダイカスト成品に対し
て、粒径が200μで材質がステンレスSUS304の
ステンレスショットを用いてインペラショットピーニン
グでブラスト加工し、この成品表面に無電解メッキのニ
ッケルメッキをおこなったところ、前記ニッケルメッキ
の不良率は30%であった。ちなみに、従来、自動車部
品のアルミホイールにクロムメッキを行ったものは剥が
れやすいので、無電解メッキでニッケルメッキを行った
後、クロムメッキを施していた。アルミニウムの成品は
電気メッキでニッケルメッキを行うことができず、従来
の無電解メッキでは上述したように不良率が高かった
が、本発明の常温拡散・浸透メッキ方法により本実施例
では不良率が0%になった。
【0057】〔実施例3〕
【0058】
【表3】
【0059】次いで、実施例3の常温拡散・浸透メッキ
で得られた鉄鋳物ロール成品の表面に、電気メッキのク
ロムメッキをおこなった。前記クロムメッキの不良率は
0%であった。なお、本実施例ではややピーニング効果
が認められた。
【0060】ちなみに、鉄鋳物ロール成品 (φ100 ×80
0L) に対して、液体ホーニング処理し、次いで電気メッ
キのクロムメッキをおこなったところ、前記クロムメッ
キの不良が多く、手直し等でコストがかかった。
【0061】〔実施例4〕
【0062】
【表4】
【0063】実施例4の常温拡散・浸透メッキで得られ
たSCM浸炭ギヤー成品 (φ60) は、防錆処理の必要が
ない。本実施例ではピーニング効果及び被覆効果が認め
られた。本実施例の被覆金属粉体は上述の所謂ステライ
ト、高速度工具鋼、合金工具鋼など合金ショットでクロ
ムの含有量が多いので耐蝕性が高く、そのため酸化抑制
の効果があるので発火性がない。したがって、火災等の
危険が減少した。しかも上記ショットの破片が作業者の
作業服等の衣類に付着しても破片自体に耐蝕性が有るの
で衣類は錆びない。また、さらに、実施例4の噴射圧力
は従来に比して低いのでコストダウンになる。
【0064】図4に、EPMA表面成分分光器による上
記実施例における被処理成品を試験片として、表面の略
半分に上記本発明処理を行った写真を見ると、処理面に
は、(実際には、黄色で表れるが、)同図において白く
表れているように多量のクロームの拡散・浸透が認めら
れるが、(実際には、濃いブルーで表れるが、)同図に
おいて黒く表れている未処理部分には、クロームの拡散
・浸透は、認められない。尚、SCM420の化学成分
中 Cr は0.90〜1.20%である(JIS G
4105)。
【0065】ちなみに、SCM浸炭ギヤー成品(φ60)
に対して、SCMギヤー成品を浸炭処理後、直圧式のブ
ラスト装置を用いて粒径が55μのスチールショットを
ノズル径5mmの噴射ノズルから噴射圧力5 kg/cm2 で6
0秒間噴射してのブラスト加工を試みたが、スチールシ
ョットが破砕しやすくなり、スチールショットの破砕し
た細かい破片は酸化が激しいためにこの破片が飛散する
と火災の危険が生じる。さらに前記スチールショットの
破片が作業者の衣服に付着すると破片で衣服に錆びが発
生した。
【0066】〔実施例5〕
【0067】
【表5】
【0068】実施例5の被処理成品の超硬金型V5パン
チ (φ50×100L) は、金属成品とセラミックの混合体で
あり、本実施例のブラスト加工により被処理成品の表面
の温度が局部的に上昇し表面熱処理によるピーニング効
果及び被処理成品の表面のコバルト析出層の修正が行わ
れ、さらに、被覆金属粉体の組成物中の元素が被処理成
品の表面に拡散・浸透している。
【0069】〔実施例6〕
【0070】
【表6】
【0071】実施例6の常温拡散・浸透メッキで得られ
たプレス成形品 (φ100 × 0.8t )は、その表面金属組
成が処理前の成品の表面金属組成と比較すると、表6に
示すように炭素が0.05%増加し、クロム0.5%が
新たに加わっており、被覆金属粉体の炭素およびクロム
が成品の表面に付着し浸透拡散していることが確認され
た。また、成品の表面硬度が約1.8倍に増加してい
た。ちなみに、被処理成品の材質SPCCは炭素量が少
ないので単にブラスト加工しても硬度が高くならないの
であるが、本実施例のように炭素を含有する被覆金属粉
体でブラストしたので炭素が被処理成品に拡散・浸透し
て硬度が高くなり、又ピーニング効果も得られ上記のよ
うに良好な結果を得たのである。
【0072】したがって、表面の硬度が増大したことに
よって成品の耐摩耗性、寿命(耐久性)が大幅に向上
し、浸炭焼入れの効果が得られた。
【0073】〔実施例7〕
【0074】
【表7】
【0075】実施例7の常温拡散・浸透メッキで得られ
た調質ギヤ成品 (φ50) は、その表面金属組成が処理前
の成品の表面金属組成と比較すると、表7に示すように
炭素が0.05%増加し、クロムが0.5%が増加して
いる。すなわち、被覆金属粉体の炭素およびクロムが成
品の表面に付着し浸透拡散していることが確認された。
また、成品の表面硬度が約1.56倍に増加していた。
これは被覆金属粉体の組成物中の飛び出した炭素がクロ
ムと結合して炭化物を生成したために硬度が高くなった
ものと考えられる。さらにピーニング効果も得られたも
のと考えられる。
【0076】したがって、表面の硬度が増大したことに
よって成品の耐摩耗性、寿命(耐久性)が大幅に向上
し、浸炭焼入れを行なう必要がなくなった。
【0077】実施例7では、SCM435の調質ギヤ成
品の表面に、Fe-2.3%C-4%Cr-6.5%V-6.5%W-10%Co 合金の
粒径55μの被覆金属粉体を噴射した結果、金属成品の
表面金属組成は炭素が0.35%から0.40%に増加
し、クロムが1.00%から1.50%に増加し、炭素
とクロムの拡散・浸透がなされている。これは上述した
ように被覆金属粉体が金属成品の表面に衝突時に発生す
る熱エネルギーで被覆金属粉体が瞬時に加熱され金属成
品の表面に活性化吸着し、拡散・浸透したすなわち常温
拡散・浸透メッキされたものと考えられる。
【0078】〔実施例8〕
【0079】
【表8】
【0080】実施例8の常温拡散・浸透メッキで得られ
たセラミックノズルは電気メッキでクロムメッキを行う
ことができ、従来に比して安価に又耐久性を向上でき
た。
【0081】被処理成品の表面の清浄及びメッキの付着
性を高くするために前処理としてセラミックの表面に粒
径#220のアランダムでブラスト加工を行った後、被
処理成品に真空蒸着メッキを行ったが、被処理成品のコ
ストが高く又寿命が短いものであった。
【0082】なお、他の例として、表面金属組成の炭素
量が1.7%である粉末ハイス刃物(1.7%C-4.0%Cr-2.0
%Mo-15.0%W-5.0%V-8.0%Co)の金属成品の表面に、合金ビ
ーズで成る被覆金属粉体(2.5%C-30.0%Cr-13.0%W-54.5%
Co)を噴射してブラスト加工すると、ハイス刃物の表面
金属組成の炭化物等の炭素量が2.3%となり35%ほ
どの増加がみられ、ハイス刃物の表面硬度がHv300
位からHv400程増大した。
【0083】なお、金属成品の表面をエッチングして顕
微鏡写真をとっても炭素が拡散・浸透した表面層が薄い
ために顕微鏡写真に表れないが、X線写真で観ると色が
変化しており炭素が金属成品の表面に拡散・浸透し、
「常温浸炭」されていることが認められる。
【0084】なお、亜鉛、鉛、錫等の低融点金属で成る
被覆金属粉体を用いて本発明の常温拡散・浸透メッキを
行なうと、これらの被覆金属粉体は金属成品の表面に容
易に拡散・浸透が行われる。
【0085】また、本発明のブラストによる常温拡散・
浸透メッキは、実施例5に示すように、超硬合金などの
粉末合金に対しても有効である。
【0086】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成され
ているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0087】(1)安価な機械設備のブラスト装置で金
属被覆処理を行えた。
【0088】(2)公害が少ない。従来の金属被覆処理
では有害な化学薬品を使用し、金属被覆処理の時に発生
する有害な蒸気による環境汚染の問題があった。
【0089】(3)本発明の金属被覆処理は酸洗い等の
化学的な清浄工程をする必要がないので、成品に対する
水素脆性の問題が生じない。
【0090】(4)金属被覆処理の被覆層は薄いのであ
るが密着性が高いため、多層メッキ等の下地処理に効果
的であるので、コストダウンを図ることができた。ま
た、本発明の方法で電気メッキ等の他の金属被覆処理の
下地処理をすることにより、従来の方法ではメッキが困
難であった成品のメッキを可能にし、また成品のメッキ
の不良率を低下できた。
【0091】(5)特に、高クロム合金等の被覆金属粉
体を用いて本発明の金属被覆処理を行なうと、ピーニン
グ効果、表面硬度を高めると同時に、防錆効果が得られ
るため防錆油処理が不要になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に用いるブラスト装置を示す正
面図である。
【図2】本発明の実施例に用いるブラスト装置を示す平
面図である。
【図3】本発明の実施例に用いるブラスト装置のキャビ
ネットの内部を示す詳細図である。
【図4】本発明の実施例4における被処理成品を試験片
としたX線写真。
【符号の説明】
40 回収タンク 41 円筒部 42 円錐部 43 流入口 44 連結管 45 連通管 46 ダンプバルブ 47 タンク 48 研磨材調整器 50 ブラスト装置 51 キャビネット 52 噴射ノズル 53 投入口 54 管 55 導管 56 ダストコレクタ 57 排出管 58 ホッパ 59 排風機 64 バレル 67 減速モータ
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−108266(JP,A) 特開 昭57−140872(JP,A) 特開 昭58−48666(JP,A) 特開 昭64−280(JP,A) 特開 平6−173032(JP,A) 特開 昭48−47912(JP,A) 米国特許3754976(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 10/00 - 10/60 C23C 24/00 - 30/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属成品又はセラミック又はこれらの混
    合体から成る被処理成品の表面に、被覆金属粉体を噴射
    速度80m/sec以上又は噴射圧力3kg/cm以上で噴射し
    て前記被処理成品に衝突させ該衝突時に前記被処理成
    品の表面の衝突部が変形することにより生じる内部摩擦
    により前記被覆金属粉体が衝突した変形部分で熱交換を
    行わしめて前記被覆金属粉体を前記被処理成品の表面で
    高温に加熱させ、前記加熱された被覆金属粉体の組成物
    中の元素を前記被処理成品の表面に活性化吸着させて
    浸透させることを特徴とする常温拡散・浸透メッキ方
    法。
  2. 【請求項2】 金属成品又はセラミック又はこれらの混
    合体から成る被処理成品の表面に、被覆金属粉体及びこ
    の被覆金属粉体と同一粒径の同種又は多種の組成から成
    る金属研磨材を混合して噴射速度80m/sec以上又は噴
    射圧力3kg/cm以上で噴射して前記被処理成品に衝突
    させ該衝突時に前記被処理成品の表面の衝突部が変形
    することにより生じる内部摩擦により前記被覆金属粉体
    が衝突した変形部分で熱交換を行わしめて前記被覆金属
    粉体を前記被処理成品の表面で高温に加熱させ、前記
    熱された被覆金属粉体の組成物中の元素を前記被処理成
    の表面に活性化吸着させて拡散浸透させることを特徴
    とする常温拡散・浸透メッキ方法。
  3. 【請求項3】 前記被覆金属粉体が低融点金属のとき
    は、該被覆金属粉体が多角形状を成す請求項1又は2記
    載の常温拡散・浸透メッキ方法。
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