JP4658094B2 - 内燃機関用ピストンの表面改質方法及び内燃機関用ピストン - Google Patents

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Description

本発明は,内燃機関用ピストンの表面改質方法及び内燃機関用ピストンに関し,より詳細には,内燃機関用ピストンの表面に噴射粉体を噴射・衝突させることにより行う内燃機関用ピストンの表面改質方法,及び前記方法によって表面改質された内燃機関用ピストンに関する。
内燃機関用ピストンは,その機能から,高温環境で爆発圧力を受けながら高速で往復運動を繰り返す。そのため,高強度であることが要求される。
その一方,低燃費を実現するためには薄肉化等によって軽量化することが要求され,高強度と軽量化という,相反する特性が求められている。
特に,環境問題に対する社会の感覚が鋭敏化した今日にあっては,燃費の向上により消費するエネルギー量の減少と,CO2ガス等の発生低減とを実現するために,このような要求がより一層高まりつつある。
以上のような要求に対し,内燃機関用ピストンの機械的強度の改善や軽量化は,一例として以下のような方法により行われている。
鋳鍛造工程における機械的強度の改善
表面欠陥の発生防止
内燃機関用のピストンの強度を低下させる原因の1つとして,例えば,鋳造時に内燃機関用ピストンの鋳肌表面に発生する湯境等の微細な表面欠陥の存在が挙げられる。
このような表面欠陥が生ずると,該欠陥部分に生じた例えば凹部に応力が集中する,所謂「切欠き脆化」が生じ,内燃機関用ピストンの強度を減少させ,その結果,薄肉化による軽量化が困難となる。
このように,鋳造時に発生する湯境等の微細な表面欠陥の発生を防止するための対策として,例えば鋳込み温度を調整したり,湯の流動性を改善し,又は湯口方案を改良する等,鋳造時の工法・設備等の改善による対処が行われている。
材質(鋼種,組成)の変更による機械的強度の改善
また,内燃機関用ピストンの機械的強度を改善するための別の方法としては,内燃機関用ピストンの材質(例えばアルミ合金等)自体の組成を変更することによって高強度とする試みも成されており,合金成分,配合量等を調整することにより内燃機関用ピストンの高強度化を図ると共に,このような高強度化により内燃機関用ピストンの薄肉化等を可能として,内燃機関用ピストンの軽量化の達成が図られている。
鋳鍛造工程外における機械的強度の改善
なお,前述のような鋳造工程によることなく,アルミニウム合金製部材の機械的特性の改善を行う方法も提案されており,このような方法の一例として,アルミニウム合金製部材の表面にショットピーニング処理を施すことによりアルミニウム合金製部材の表面を改質する方法が提案されている。
このような方法として,ショット材と微粒子とを混合した状態で噴射することにより,ショット材がアルミニウム合金製部材の表面部をショットする時にショット材中に微粒子が伴われる状態でショットピーニングを行うことにより,上記微粒子をアルミニウム合金製部材の表面部に分散状態で埋め込ませる表面改質方法が提案されている(特許文献1の請求項1参照)。
この方法によれば,上記ショットにより埋め込まれる微粒子が持つ固有の特性により,耐摩耗性,耐食性が向上し,アルミニウム合金製部材の強度信頼性が増大するとしている(特許文献1の「0017」欄)。
高強度化に伴う軽量化以外の方法による燃費等の改善
なお,内燃機関における燃費向上と,これに伴うCO2ガスの発生低減という課題は,前述のようにピストンの高強度化に伴う軽量化によってのみ達成されるものではなく,例えば燃焼室内における燃料の燃焼効率を向上させることによっても達成することができる。
すなわち,燃焼室内における燃料の燃焼効率が向上して,完全燃焼に近付く程,少ない燃料の消費で多くの仕事量を得ることができ,また,完全燃焼に近付くに従って,排出ガス中のCO2ガスやNOX等の量についても低減することができる。
このような観点から,ガソリン・ディーゼルの内燃機関にあっては,燃焼効率を高めることが容易な,燃料の直噴化が進み,燃料消費量及び排出ガスの削減に大きな効果をもたらしている。
しかし,直噴式の内燃機関にあっては,エンジン始動初期段階では,ピストンの頂面温度が十分に上昇していないために,噴射された燃料が完全にガス化せず,完全燃焼が起こらずに排出ガス中に有害物質が含まれるという問題がある。
また,このような直噴式のエンジンにあっては,インジェクターがシリンダー内にあるためノズルに煤が付着し易い等,ポート式のものに比べてカーボンの堆積が比較的多く,このような煤等の付着によって生じるデポジットにより正確な燃料噴射を行うことができなかったり,現在進められているバイオ燃料の添加等もデポジットの原因となるおそれがあり,これにより出力,燃費の低下につながることが懸念されている。
このような問題点のうち,例えば燃焼室内における燃料の燃焼によって生じる煤や,燃焼室内に浸入した潤滑油,燃料の未燃焼分が燃焼室内面に付着して生成されるデポジットを除去することにより,デポジットの付着によって生じる燃焼室容積の変化による燃焼悪化,点火プラグによる点火以前の混合気着火に起因する燃焼の悪化,さらには,デポジットから発生排出される有害排出成分の増加などの問題を解消しようという試みもなされており,このようなデポジットの分解,除去を目的として燃焼室の内面を形成する部品の表面(例えばピストンの頂面)に,酸化チタンの微粒子を混入したシリカゾルを塗布してこれを焼成し,酸化チタン層を形成することが提案されている(特許文献2参照)。
なお,内燃機関の燃焼効率を向上させ,排気ガス中に含まれる有害物質の低減を目的として,内燃機関の燃料貯蔵層内に酸化チタン等の光触媒物質を配置して,燃料の改質を行うことも提案されている(特許文献3参照)。
この発明の先行技術文献情報としては,次のものがある。
特開平5−86443号公報 特許第3541665号公報 特開平10−176615号公報
以上説明した上記従来技術において,各方法は以下に示す問題点を有するものとなっている。
1.従来の強度改善方法の問題点
鋳鍛造工程における機械的強度改善における問題点
表面欠陥の発生防止について
鋳造の際に生じる湯境等の表面欠陥の発生を阻止するために,前述のように鋳造,設備等を変更する場合には,工法・設備の複雑化等を招き,これらが内燃機関用ピストンの製造コストを高める原因となっている。
また,現在の技術水準においては,前述のような工法・設備等の改善により,湯境等の表面欠陥の発生を減少させることはできても,これを完全に防止するまでには至っていない。
そのために,湯境等の表面欠陥が存在することによる切欠き脆化を改善しようとすれば,鋳鍛造工程後に別途,このような表面欠陥を修復するための処理を行う必要がある。
材質の変更による機械的強度の改善について
また,内燃機関用ピストンを構成する合金成分等の組成を変更することにより内燃機関用ピストンの強度を向上させる方法では,効果的に高強度化を図ることができるものの,鋳造時に合金成分を微細化・均一化等することが難しく,その結果,機械的性質の改善が不十分であったり,品質にばらつきが生じる等の問題がある。
また,材料強度の向上は,一方において鋳鍛造性や加工性の低下をもたらし,特に切削加工性は高強度化が進むにつれて大幅に低下し,強度向上と加工性の低下は背反事項として必ず起こる問題である。
そのため,このような材料の高強度化は,内燃機関用ピストンの生産性を低下させ,製造コストを高める一因となることから,安易に強度を向上する事が困難である。
ショットピーニングによる表面改質の問題点
これに対し,前掲の特許文献1に記載の表面改質方法を,内燃機関用ピストンの機械的強度の改善のために用いる場合,このような表面改質は,鋳鍛造工程を経た後の内燃機関用ピストンに対して行われるものであるために,ピストンの鋳鍛造自体は従来通りの方法によって行うことができる。そのため,鋳鍛造工程において,工法,設備,湯の組成等を変更することにより生じる前述のような問題点とは無関係である。
このような表面処理を行うために,特許文献1に記載の方法は,前述のようにアルミニウム合金製部材の表面部に分散状態で微粒子を『埋め込み』,このようにして埋め込んだ微粒子固有の特性により,耐摩耗性,耐食性を向上させてアルミニウム合金製部材の強度信頼性を増大させている。
そして,このような『埋め込み』を行うために,埋め込まれる微粒子を,この微粒子よりも大径のショット材中に混入してショットピーニングを行うものとしている(特許文献1の「0040」欄他)。
しかし,前記特許文献1に記載の方法による場合,前述の微粒子はアルミニウム合金製部材の表面部に『埋め込まれる』だけであり,微粒子はアルミニウム合金製部材との間に強固な結合状態を生じておらず,表面部より剥離,脱落等が生じやすく,このような剥離,脱落が生じれば,微粒子固有の特性による機械的特性の向上は期待できない。
また,前掲の特許文献1には,アルミニウム合金製部材の表面に埋め込まれた微粒子を,アルミニウム合金製部材の表面に拡散させる方法についても開示するが,このような拡散を行うためには,微粒子の埋め込みが行われた後のアルミニウム合金製部材に対し,更に加熱処理等を施すものとしており(特許文献1の請求項3,「0038」「0039」欄等),工程数の増加による処理の長時間化とコスト増を招く。
また,このような熱処理を行えば,アルミニウム合金製部材のサイズが変化したり,歪みが生じるおそれもあり,熱処理における温度,処理時間等の厳格な管理が必要となる。
なお,前述したように,内燃機関用ピストンにあっては,湯境等の微細な表面欠陥が切欠き脆化を生じさせる等,表面欠陥の修復は強度の向上を得るための重要な要素である。
しかし,特許文献1に記載の方法では,このような表面欠陥を修復するための構成を備えていないだけでなく,前述のようなアルミニウム合金製部材に対する金属微粒子の埋め込みは,むしろ切欠き脆化を生じさせる原因となることが予想される。
また,前述のように,合金元素の微細化・均一化は,内燃機関用ピストンの機械的性質の改善,品質の均一化に貢献するものであるが,特許文献1に記載の発明にあっては,この課題に対応する構成についての開示はない。
従って,合金元素の微細化,均一化を得ようとすれば,鋳造段階での工程によってこれらを実現することが必要となる。
また,従来の技術は,ピストンで使用される高温域での強度向上については開示されておらず,従来のショットピーニングや熱処理等の表面処理は,残留応力・表面硬化等の効果によって常温域での強度向上は得られるものの,ピストン特有の使用温度域である高温度域では,応力が開放されて効果が消滅してしまう。
2.従来の酸化チタン層形成ピストンの問題点(特許文献2)
前述のように,燃焼室の内面を構成する壁面(例えばピストンの頂面)に酸化チタン層を形成した前掲の特許文献2に記載の発明にあっては,光触媒が持つ,有機物を分解する機能によってデポジットを分解することができ,このデポジットの分解除去による燃焼効率の向上が期待できる。
また,光触媒は,デポジット等の有機物を分解する作用のみならず,燃料そのものを分解,改質して燃焼効率を向上し,排出ガス中の有害物質を減少させる効果があることから(前掲の特許文献3),内燃機関の燃焼室内面に酸化チタン層を形成した特許文献2に記載の発明にあっても,条件によってはこのような燃料の改質が行われることも期待できる。
しかし,光触媒が前述のような有機物の分解や,燃料の改質を行うためには強い紫外線の照射,もしくは高い温度が必要である。そのため,前記特許文献2として示した従来技術にあっては,エンジンの燃焼室内が暖まって,酸化チタンが触媒機能を発揮するために必要となる温度が得られる状態では,デポジットの分解除去や,場合によっては燃料改質の効果が得られることも期待できるものの,始動初期の燃焼室内の温度が上昇していない状態では,この触媒作用を発揮するために必要な条件を満たすことができず,触媒作用を受けることができない。
そのため,特許文献2に記載の技術によっては,内燃機関の始動開始直後における有機物の分解も,燃料改質の効果共に発揮させることができず,従って,始動直後における燃焼効率を改善することができないと共に,不完全燃焼等に伴い排気ガスと共に有害物質が排出されることとなる。
ところで,自動車の燃費測定時の走行パターンは,2010年を目途に現行の10・15モードから,JC08モードの導入が予定されているが,これまでの10・15モードはエンジンが暖まった状態からのスタートで最高速は70km/h,また緩やかな減加速であったのに対しJC08モードでは,エンジンが常温(始動初期)時から発進したり,60km/hまで加速,減速を繰り返す走行パターンを盛り込む等,より実燃費に近い測定法となっており,同じ車両でもJC08モードでの測定のほうが10・15モードよりも燃費は悪くなる。
平成19年に経済産業省が発表した新しい燃費基準では,JC08モードでの数値が記載されており,今後,JC08法による規制が行われる予定であり,要求される性能を満たすためには,直噴エンジンの始動初期における燃焼効率を向上させることのできる技術の開発は,非常に重要な課題であると共に,各自動車メーカーでも対応技術の開発が行われている等,市場において切望されている技術である。
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するためになされたものであり,所定条件で噴射粉体を噴射して,鋳鍛造によって得た内燃機関用ピストンの表面に衝突させることにより,鋳鍛造性,加工性等の生産性に影響を与えることなく,低コストで容易に内燃機関用ピストンの機械的強度の向上,特に,高温域での強度向上を得ることができ,しかも,別途に熱処理等を行うことなく,内燃機関用ピストンの表面と一体化した強固な表面改質層を形成することができると共に,湯境等の微細な表面欠陥の修復や,ピストンの表面付近における合金元素の微細化等の処理についても併せて行うことができる内燃機関用ピストンの表面改質方法及び前記方法によって表面改質された内燃機関用のピストンを提供することを目的とする。
また,本発明の別の目的は,内燃機関用ピストンの強度向上を目的として形成した前記表面改質層に,紫外線の照射がなく,かつ,常温空間に置いた際にも触媒として作用する光触媒機能を付与することで,ピストンの強度向上に伴う軽量化等による燃焼効率の向上と共に,ピストン頂面の温度が低い状態にある内燃機関の燃焼室内においても燃料の改質を可能とし,この燃料の改質によって始動開始直後からの燃焼効率の向上と排出ガス中の有害物質の低減を達成することができる内燃機関用ピストンの表面改質方法,及び前記表面改質方法によって表面改質された内燃機関用のピストンを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために,本発明の内燃機関用ピストンの表面改質方法は,
アルミニウム−珪素合金の鋳鍛造により得た内燃機関用ピストンの表面に,前記ピストンを構成する合金中に拡散浸透することにより該合金の強度を向上させる強化元素を含む粒径20〜400μm,好ましくは20〜200μmの噴射粉体を,噴射速度80m/s以上,好ましくは100m/s以上,又は噴射圧力0.3MPa以上で噴射して衝突させ,前記噴射粉体の衝突により,前記鋳鍛造において前記ピストン表面に生じた表面欠陥部の酸化物を除去し,且つ,前記表面に生じた表面欠陥を修復すると共に,前記ピストンの表面付近において前記ピストンの前記合金中における合金元素を微細化し,かつ,前記噴射粉体中の前記強化元素を前記ピストンの表面付近に拡散浸透させて,前記合金元素と前記噴射粉体中の強化元素を含み,該強化元素は,酸化により光触媒機能を発揮する強化元素を含むと共に,表面から内部に入るに従って酸素との結合が欠乏する構造に,前記強化元素が酸化し,金属組織が均一・微細化された改質層を,前記ピストン表面に形成することを特徴とする(請求項1)。
前記方法の表面改質方法において,前記改質層を前記ピストンの頂面に形成することができ(請求項2),前記強化元素として,前記合金の強度向上に寄与するのみでなく,酸化により光触媒機能を発揮する元素,例えばTi,Sn, Zn,Zr,Wの中から選択されたいずれか一種又は二種以上の元素,より好ましくはTi,Snのいずれか一方,又は双方を選択すると共に,表面から内部に入るに従って酸素との結合が欠乏する構造に前記強化元素が酸化した前記改質層を前記ピストンの頂面に形成することができる(請求項9;請求項11)。
なお,前記構成では,合金の強度向上と,光触媒機能の発揮とを共通の元素によって得ているが,例えば,前記噴射粉体として,例えばFe,Ni,Cu,Cr,Mn,Si,C等の強化元素と共に,酸化により光触媒機能を発揮する例えばTi,Sn, Zn,Zr,W等の光触媒化元素中から選択されたいずれか一種又は二種以上の元素,より好ましくはTi,Snのいずれか一方,又は双方である光触媒化元素を含むものを使用し,前記ピストンの表面付近に前記光触媒化元素を拡散浸透させて,前記ピストンの頂面に,前記ピストンの合金中の合金元素と前記噴射粉体中の強化元素及び光触媒化元素を含む,金属組織が均一・微細化されていると共に,前記光触媒化元素が表面から内部に入るに従って酸素との結合が欠乏する構造に酸化した改質層を形成するものとしても良い(請求項3;請求項10;請求項12)。
更に,前記強化元素を含む噴射粉体と,酸化により光触媒機能を発揮するTi,Sn, Zn,Zr,W等の光触媒化元素を含む粒径20〜400μmの噴射粉体をそれぞれ別のものとして構成し,これらを混ぜ合わせて共通のブラスト加工装置によって噴射等することにより,又は,強化元素を含む噴射粉体と,光触媒化元素を含む噴射粉体とをそれぞれ異なるブラスト加工装置によって同一対象に噴射する等することにより,前記光触媒化元素を含む噴射粉体を噴射速度80m/s以上,又は噴射圧力0.3MPa以上で噴射して,前記ピストンの表面付近に前記光触媒化元素を拡散浸透させて,前記ピストンの頂面に,前記ピストンの合金中の合金元素と前記噴射粉体中の強化元素及び光触媒化元素を含む,金属組織が均一・微細化されていると共に,表面から内部に入るに従って酸素との結合が欠乏する構造に前記光触媒化元素が酸化した改質層を形成しても良い(請求項4)。
さらには,強化元素を含む噴射粉体による表面改質(請求項1)を行った後のピストン頂面に,酸化により光触媒機能を発揮する光触媒化元素を含む粒径20〜400μmの噴射粉体を,噴射速度80m/s以上,又は噴射圧力0.3MPa以上で衝突させて,前記ピストンの表面付近に前記光触媒化元素を拡散浸透させて,前記改質層を,前記合金元素と前記強化元素及び光触媒化元素を含む,金属組織が均一・微細化されていると共に,表面から内部に入るに従って酸素との結合が欠乏する構造に前記光触媒化元素が酸化した構造に変化させるものとしても良い(請求項5)。
このように,内燃機関用ピストンの表面に形成する改質層に,光触媒化元素を拡散浸透させて光触媒機能を付与する場合には,前記強化元素及び/又は前記光触媒化元素を含む噴射粉体に,更に貴金属元素を含め,これにより,前記改質層に前記貴金属元素を担持させるものとしても良い(請求項6)。
なお,上記方法では,前記強化元素及び/又は前記光触媒化元素を含む噴射粉体に貴金属元素を含めることで,強化元素及び光触媒化元素の拡散浸透と共に,貴金属元素の担持を同時に行うことができるようにしたものであるが,例えば,前述した改質層を形成した後,この改質層に対して,貴金属元素を含む更に別の噴射粉体を噴射して,前記改質層に貴金属元素を担持させるように構成することもできる(請求項7)。
前記噴射粉体が,前記合金の強度を向上させる強化元素としてFe,Mn,Zn,Ti,C,Si,Ni,Cr,W,Cu,Sn, Zrの中から選択されたいずれか1種,又は2種以上の元素を含み,前記内燃機関用ピストンの前記改質層中に,合金元素である前記珪素と,前記噴射強化元素とを含む,金属組織が均一・微細化された前記改質層とすることができる(請求項8)。
なお,ピストンの表面に形成された改質層に光触媒機能をもたせる場合において,前記強化元素として酸化により光触媒機能を発揮する機能をもたないFe,Ni,Cu,Cr,Mn,Si,C,から1種,又は2種以上の元素を選択した場合には,前記光触媒化元素としてTi,Sn, Zn,Zr,W中からいずれか1種,又は2種以上の元素を選択するものとしても良い(請求項13)。
また,前記ピストンは,珪素を9%〜23%含むアルミニウム−珪素合金が好適である(請求項14)。
前記噴射粉体と窒素ガスから成る混合流体を,前記ピストンの表面に噴射し,前記ピストンの珪素,アルミニウム又は鉄成分と前記窒素ガスの化学反応より生じた窒素化合物をピストンの表面に拡散浸透させることにより,窒化化合物層を生成することが出来る(請求項15)。
前記窒素ガスは,0℃以下の低温圧縮窒素ガスであり,該低温圧縮窒素ガスを用いて,前記ピストンを再結晶温度以上に上昇させると共に,前記低温圧縮窒素ガスにより瞬時に常温以下に急冷させることが好適である(請求項16)。
前記拡散浸透により,前記ピストン表面に,窒化アルミ及び窒化珪素の層を形成することができる(請求項17)。
また,本発明の内燃機関用ピストンは,前記ピストンの表面に,前記ピストンを構成する合金中に拡散浸透することにより該合金の強度を向上させる強化元素を含む粒径20〜400μm,好ましくは20〜200μmの噴射粉体を,噴射速度80m/s以上,好ましくは100m/s以上,又は噴射圧力0.3MPa以上で噴射して衝突させる表面処理により,前記鋳鍛造において前記ピストン表面の酸化物を除去し,且つ,前記表面に生じた表面欠陥が修復された表面状態を有すると共に,前記ピストンの表面付近に拡散浸透した前記噴射粉体中の前記強化元素と,前記ピストンを構成する前記合金中における合金元素前記強化元素は,酸化により光触媒機能を発揮する元素を含む噴射粉体を使用した前記表面処理により,前記ピストン表面に,表面から内部に入るに従って酸素との結合が欠乏する構造に前記強化元素が酸化した金属組織が均一・微細化されて成る改質層を有することを特徴とする(請求項18)。
前記内燃機関用のピストンでは,前記改質層を前記ピストンの頂面に有するものとしても良い(請求項19)。
または,前記強化元素と共に,又は前記強化元素とは別に酸化により光触媒機能を発揮する光触媒化元素を含む噴射粉体を噴射することにより,前記ピストンの表面付近に前記光触媒化元素を拡散浸透させて,前記ピストン頂面に,前記合金元素と前記噴射粉体中の強化元素及び光触媒化元素を含む,金属組織が均一・微細化されていると共に,表面から内部に入るに従って酸素との結合が欠乏する構造に前記光触媒化元素が酸化した改質層を頂面に有する内燃機関用のピストンとしても良い(請求項20)。
さらに,酸化により光触媒機能を発揮する元素が拡散浸透された前記改質層には,銀(Ag),白金(Pt),パラジウム(Pd),金(Au)等の貴金属元素を担持させることが好ましい(請求項21)。
なお,前記内燃機関用ピストンを,アルミニウム−珪素合金により構成すると共に,前記噴射粉体に前記合金の強度を向上させる元素としてFe元素を含み,前記改質層中に,合金元素である前記珪素と,前記噴射粉体中のFe元素とを含む,金属組織が均一・微細化したものとすることができる(請求項22)。
なお,前記アルミニウム−珪素合金は,Fe;0.8%以下,Mg;0.5〜1.5%,Ni;0.1〜4.0%,Ti;0.05〜1.20%, Si;9〜23%,Cu;1〜6%,残部のAlから成るものとすれば,前記噴射粉体成分及び窒素ガスの処理を好適に行うことができる(請求項23)。
そして,本発明の内燃機関用ピストンは,その改質層が,Fe;1〜10%,Si;11〜25%,N;0.1〜10%,残部のAlから成ることを特徴とする(請求項24)。
以上に説明した本発明の構成により,本発明の内燃機関用ピストンの表面改質方法,及び前記方法により表面改質された内燃機関用ピストンによれば,所定粒径の噴射粉体を,所定の噴射速度乃至は噴射圧力で処理対象とする内燃機関用ピストンの表面に噴射するという比較的簡単な方法により,ピストン表面の酸化物を除去し,且つ,鋳鍛造時に生じた湯境等の前記表面欠陥をピストン表面から修復すると共に,ピストンの表面に合金元素及び前記ピストン表面の合金元素中に拡散浸透した前記金属粉体中の元素を含む,金属組織が均一・微細化された表面改質層を形成することができ,これにより内燃機関用ピストンの機械的強度を大幅に向上させることができた。
このように,内燃機関用ピストンを製造した後に,事後的に行われる噴射粉体の噴射によってピストンの機械的強度を向上させることができたことから,鋳鍛造設備や工法等の変更を伴うことなく,既存の整備等を使用して鋳鍛造された内燃機関用ピストンの機械的強度を向上させることができ,また,鋳造時において合金成分等の変更を伴うものではないことから,鋳鍛造性,加工性等の生産性に影響を与えることなく,内燃機関用ピストンの機械的強度を向上させることができた。
さらに,噴射粉体の噴射後,内燃機関用ピストンを熱処理等することなく,内燃機関用ピストンの表面改質を行うことができたことから,内燃機関用ピストンの表面処理を噴射粉体の噴射という一工程のみで行うことができると共に,熱処理に伴うピストンの寸法変化や歪み,機械的特性の変化等を考慮する必要が無くなった。
しかも,従来にあっては鋳鍛造工程において改善が成されており,しかも完全に修復することのできなかった湯境等の表面欠陥の修復や,合金成分の組織の微細化,均一化を,噴射粉体を噴射することによる表面改質により同時に行うことができ,特に,表面欠陥についてはこれを完全に修復することができた。
また,本発明は,高温域での強度を向上させる元素,特にピストン材料に多く含有する珪素と,併せて高温強度を向上する粉体元素が理想的に微細・均一化状態になっており,さらに,破壊が発生伸展する表面における強度が向上することから,ピストン使用環境である高温度域でも強度向上効果が持続する。
また,前記表面改質層に光触媒としての機能を付与する本発明の表面改質法によって得られたピストンによれば,表面改質層中において,酸化により光触媒として機能する元素の酸化状態が,ピストンの表面から内部に入るに従って,徐々に酸素の結合が欠乏する構造に形成されており,紫外線の照射も,熱の供給のない状況でも有機物の分解,燃料改質等を行うことができる表面改質層を得ることができた。
さらに,後述するように,窒素ガスの噴射で,ピストン表面において,微量であるが窒化状態となっていることにより(図7(C)),特に,ピストン合金元素である珪素と窒素ガスが反応した窒化珪素が,ピストン表面において生成され,組織を微細化,均一化し,高温強度,高温耐食性に優れ,耐摩耗性の高い耐熱性構造材料として,特に,高温域における飛躍的な強度向上をもたらす。
その結果,このような表面改質層が頂面に形成されたピストンにあっては,紫外線の照射の無い,常温環境下にあっても光触媒機能を発揮するものであることから,前記表面改質層が形成されたピストンを備えたエンジンにあっては,該エンジンの始動直後であり,ピストンが常温又はそれに近い温度にある場合であっても,光触媒の機能を発揮させることができ,始動直後より燃焼効率の向上と,これに伴う排ガス中の有害物質の低減を達成することができた。
このように,特殊な構造をもった酸化金属を含む前記表面改質層が頂面に形成されたピストンは,内燃機関の燃焼室内に噴射された燃料のクラッキングが促進されて小分子化するため,酸素との接触が高まり燃焼性を向上させることができ,これにより燃料消費率を改善することができた。また,この燃焼性の向上に伴って,CO2の排出を削減することができた。
さらに,ガソリン・軽油等の炭化水素は,クラッキングの促進によりNOXの還元作用に影響する炭化水素数が増加し,この炭化水素数が増加することによる還元作用によってNOXの排出量を低減させることができた。
さらに,カーボン等の付着により生じるデポジットについては,上記表面改質層の有する触媒効果により,燃料の燃焼効率が向上して完全燃焼に近付くために減少させることができた。
また,仮にすす等の発生や,焼き付いたオイル等のカスによってデポジットが生じた場合であっても,触媒作用による分解が期待できデポジットを低減することができ,長期にわたって高性能を発揮することができるエンジン用のピストンを提供することができた。
次に,本発明の実施形態につき以下説明する。
表面処理方法
処理対象(内燃機関用ピストン)
本発明で処理対象とする内燃機関用ピストンは,内燃機関用のものであれば特に限定されず,ガソリンエンジン用,ディーゼルエンジン用,その他,如何なるものであっても良い。
処理対象とする内燃機関用ピストンの材質は,アルミニウム−珪素合金の鋳鍛造により得たピストンを対象としている。
前述の内燃機関用ピストンは,その表面全体を処理対象としても良いが,必ずしも内燃機関用ピストンの表面全体を処理対象とする必要はなく,表面の一部に対して本発明の方法による処理を行うことも可能である。
なお,内燃機関用ピストンの表面の一部に対し,本発明の方法による処理を行う場合には,以下の部分のいずれか1箇所,若しくは複数箇所に対して,本発明の方法による表面処理を行うことが好ましい。
・ 表面に鋳造時,湯境等の欠陥が発生している部位
・ 応力が高く強度が必要な部位
・ 軽量化の必要な部位
・ 製品時鋳肌状態の面
・ 耐摩耗性・耐熱性が必要な部位
・ 光触媒機能を付与する場合にはピストンの頂面(燃料、排出ガスが接触する部位)
噴射粉体
噴射粉体としては,内燃機関用ピストンを構成する合金中に拡散浸透することによって,前記合金の機械的強度を向上させる特性を有する元素(本発明において「強化元素」という。)を含む噴射粉体を使用する。
内燃機関用ピストンの材質がアルミニウム合金である本発明の表面改質方法にあっては,前記噴射粉体に含める強化元素としては,Fe,Mn,Zn,Ti,C,Si,Ni,Cr,W,Cu,Sn, Zr等を挙げることができ,内燃機関用ピストンに付与すべき特性に応じて,これらの元素中から選択した1種,又は2種以上を噴射粉体に含めることができる。
表面改質層に対して,光触媒機能を付与することも目的として,前記強化元素として酸化によって光触媒機能を発揮する元素を選択するか,又は酸化によって光触媒機能を発揮する元素(本明細書において「光触媒化元素」という。)を前記強化元素とは別に含む粉体を使用する。
このように,酸化によって光触媒機能を発揮する元素として代表的なものとしては,Ti,Sn, Zn,Zr,W等の元素を挙げることができ,これらの元素中から選択した1種,又は2種以上を噴射粉体に含めることができる。
さらに,形成する表面改質層に光触媒機能をもたせる場合には,前記光触媒化元素に対して0.1〜10wt%程度の貴金属元素(例えばPt,Pd,Ag,Au等)を担持させることにより光触媒機能を向上させることができ,これらの元素を含んだ噴射粉体を使用しても良く,又は表面改質層の形成されたピストンに対し,前記貴金属元素を含む別個の噴射粉体を噴射する等して,この貴金属元素を担持させるものとしても良い。
一例として,噴射粉体中に含まれる元素と,該元素を処理対象の表面に拡散浸透させた際に生じる効果についての対応関係を示せば,下表1に示す通りである。
機械的強度の向上と,前記光触媒機能の付与とを1回のブラスト加工によって同時に付与する場合には,前述した強化元素と光触媒化元素とを共に含む噴射粉体を使用しても良く,又は前記ピストン合金の機械的強度を向上させる特性と酸化により光触媒機能を発揮する特性を兼ね備えた元素,例えばTi,Sn, Zn,Zr,W等の元素を含む噴射粉体を使用しても良く,さらには,前記強化元素を含む噴射粉体と,前記光触媒化元素を含む噴射粉体と混合しても良い。
また,酸化により光触媒機能を発揮しない,又は発揮しても効果の薄い鉄(Fe),ニッケル(Ni),銅(Cu),クロム(Cr),マンガン(Mn),ケイ素(Si),炭素(C)を強化元素として含む噴射粉体によって高強度化を目的とした表面改質層を形成し,その後,この表面改質層に更にチタン(Ti),スズ(Sn),亜鉛(Zn),ジルコニウム(Zr),タングステン(W)等を光触媒化元素として含む噴射粉体を噴射して,前記表面改質層に光触媒機能を付与する。
これらの噴射粉体は,例えば前記強化元素及び光触媒化元素が金属である場合には,この元素から成る純金属であっても良く,又は前記金属を含む合金によって構成されるものであっても良い。
使用する噴射粉体の粒径は,平均粒径20〜400μmのものを使用する。噴射粉体の粒径を上記の範囲に限定する理由は,この噴射粉体の粒径が20μm未満,又は400μmを越える場合には,噴射粉体を内燃機関用ピストンの表面に噴射して衝突させても,ピストン表面に噴射粉体中の元素を拡散浸透させることができないためである。
このように,前記粒径範囲外の噴射粉体を使用する場合に,噴射粉体中の元素をピストン表面に拡散浸透させることができない理由については明らかではないが,粒径が20μm未満の場合には質量が小さ過ぎて衝突部分に必要な発熱が得られず,また,粒径が400μmを越える場合には,所定の噴射速度が得られず,また,衝突時に生じた熱が広範囲に拡散して,いずれも噴射粉体中の改質成分を拡散浸透するに必要となる,局部的な温度上昇が得られないためであると考えられる。
なお,このような噴射粉体は,例えば前掲の従来技術として説明した特許文献1に記載の発明のように,ショットブラスト用のショット(例えば粒径400μmの鋼球)等の,他の粒体等と混合することなく,これを単独で噴射する。
噴射条件
以上の噴射粉体は,処理対象である前述の内燃機関用ピストンに対し,噴射速度80m/s以上,又は噴射圧力0.3MPa以上,アークハイト量0.1N以上で噴射する。
この噴射に使用する装置としては,既知の各種のブラスト加工装置,ショットピーニング装置を使用することができる。
なお,噴射装置としては,直圧式,サクション式,その他のいずれの噴射方式のものを使用しても良いが,本実施形態にあっては一例として直圧式の噴射装置を使用した。
噴射に使用する加速流体としては,圧縮気体を使用し,このような圧縮気体の一例として,圧縮空気や圧縮窒素を使用することができる。
たとえば,直圧式では,研磨材としてのここでは粉体の回収タンクにおいて噴射後の研磨材とダストを分離して,ダストは排風機を備えるダストコレクタへダクトを介して送られ,研磨材は回収タンクの下方に落ちて前記回収タンクの下部に溜まる。回収タンクの下部にはダンプバルブを介して加圧タンクが設けられ,加圧タンクに研磨材が無くなるとダンプバルブが下がり回収タンクにある粉体研磨材が加圧タンクに入る。加圧タンクに粉体が入ると圧縮気体がこのタンクに入り,同時にダンプバルブが閉まり加圧タンク内の圧力が高くなり,粉体がタンク下部の供給口から押し出される。供給口には,別途反応性噴射ガスとしての圧縮気体として,例えば,ガスボンベに収納された圧縮窒素ガスが導入され,粉体はホースによりノズルまで運ばれ,ノズルチップより粉体が前記ガスと共に高速で噴射される。
サクション式ブラスト装置の概略を簡単に説明すると,ここでは反応性噴射ガスとしての圧縮気体供給源に連通するホースからサクション用噴射ノズル内へ圧縮気体を噴射すると,前記ノズル内が負圧となり,この負圧によりタンクの粉体が研磨材ホースを介してノズル内へ吸引されノズルチップより噴射される。
また,前記圧縮空気や圧縮窒素に換えて,圧縮した低温窒素ガスを使用するものとしても良く,このように窒素ガスを使用する場合には,低温窒素ガスとしては,冷媒中を通過させた,窒素ガス,液体窒素を気化させて得た窒素ガスの0℃以下の低温気体を使用する。本実施形態にあっては,液化空気から酸素を取り除くことにより安価に入手できる窒素,特に気化させることにより容易に0℃以下の低温の気体を得ることのできる液体窒素の気化ガスを使用している。
ブラスト処理により前記噴射粉体と窒素ガスから成る混合流体を,ピストンの表面に噴射し,アルミニウム,珪素,鉄など窒素反応成分を有するピストンと噴射粉体が前記窒素ガスの化学反応より生じた窒素化合物をピストンの表面に拡散浸透させることができると共に,噴射粉体の噴射,ピストンに対する衝突等によって粉塵が生じている場合であっても,粉塵爆発等が生じる危険性を低減することができる。
作用
以上のようにして,噴射粉体を噴射速度80m/s以上,又は噴射圧力0.3MPa以上で噴射して,処理対象である内燃機関用ピストンの表面に衝突させると,噴射粉体の速度はこの衝突の前後で変化する。
エネルギー不変の法則を考慮すると,この衝突時における速度変化に対応したエネルギーの一部は,ピストン表面に対する研削力として作用し,鋳造時に生じた湯境部等における酸化物である表面酸化物を除去する。
また衝突時のエネルギーの他の部分は,金属製品表面の衝突部を変形させ,この変形による内部摩擦により熱エネルギーを生じさせる。
この熱エネルギーによるピストン表面の局部的な加熱と冷却の繰り返しにより,ピストン表面に生じた前述の湯境部等の微細な表面欠陥が修復,再生されると共に,ピストンの表面付近における合金成分が再結晶して微細化される。
さらに,前述の熱エネルギーによるピストン表面の局部的な温度上昇と共に,噴射粉体についても同様の温度上昇が生じ,このようにして加熱された噴射粉体中の元素が,局部的に加熱されたピストン表面に活性化吸着され,微細化された状態でピストン表面に拡散,浸透する。
このようにして,本発明の方法によって表面処理が施された内燃機関用ピストンにあっては,その表面より湯境等の微細な表面欠陥が修復されていると共に,表面から約20μm以内の範囲内において前記ピストン表面に前記噴射粉体中の元素が拡散浸透しピストンを構成する合金の合金元素中に微細に分散され,これら元素を含む,金属組織が均一・微細化された表面改質層が形成される。
以上のような表面欠陥の修復及び再生により,表面欠陥部分に応力集中が生じることがなく,また,表面改質層が処理部分の表面に形成されることにより,内燃機関用ピストンの高強度化が実現される。
また,一般に,鋳造アルミ合金において,鉄は,Al-Fe-Si等の化合物を粗大化し,靱性と耐食性を劣化させることが知られているが,前記組織の微細化を伴うことによって,耐摩耗性,高温強度が向上する。そして,銅合金において,Niは,Al-Cu-Niを形成し,高温強度が向上する。
低温窒素ガスを圧縮気体とするときは,窒素ボンベを圧縮ガス供給源とし,圧縮ガスとして窒素を送り込むと,前述したように噴射粉体が窒素と共に圧送され,噴射ノズルへ送給され,キャビネットの前記ピストンへ噴射される。
例えば,0.6MPaの圧力,0℃の低温窒素ガスに圧送される噴射粉体と前記窒素ガスとが適当に混合されてノズルから圧力0.6MPa,圧縮気体の温度0℃,噴射距離200mmで前記ピストン表面に噴射される。
かようにして,ショットピーニングによる表面強化熱処理の際に,ピストン表面を常温以下まで急冷することで,再結晶温度が低い非鉄金属であるピストンに対しても硬さの向上や時効変形,経年変形の防止等の効果を付与する表面強化を施すことができる。また,前記噴射粉体の噴射により再結晶温度以上の高温に加熱されたピストン表面に噴射粉体と共に前記低温圧縮窒素ガスが吹きつけられると,この窒素ガスの吹き付けられた金属成品の局部的表面は,噴射粉体との衝突により再結晶温度以上の高温に加熱された状態から常温以下の温度に急速に冷却され,金属成品の表面部分の組織が好適に微細となり機械的強度の向上や時効変形や経年変形等を好適に防止し得る。すなわち,本願発明の実施形態では,低温のため,金属が変形されにくく,粒界の滑りも発生しにくく,従って衝撃エネルギーが吸収されずに,高熱となり,結果的に急熱・急冷作用が得られ組織の微細化,高密度化が達成される。
Alの他,Cr,Moを始めとする窒素反応成分を噴射粉体に含むとき,ピストン表面が窒化し,特に,ピストン合金元素である珪素と窒素ガス,特に,高含有量の珪素が反応した窒化珪素が,ピストン表面において,生成され,組織を微細化,均一化する。
窒化珪素が,非酸化物セラミックスとして,高温強度が高く,高温耐食性に優れ,耐摩耗性の高い耐熱性構造材料であることは,既知のところであり,本願発明ピストンの使用温度である高温域における飛躍的な強度向上をもたらす。
前記噴射粉体の噴射が,ピストンの機械的強度の向上のみを目的とするものではなく,形成された表面改質層に対して光触媒機能を発揮させることをも目的として行っている場合には,前述の強化元素と共に光触媒化元素を含む噴射粉体を使用しても良く,又は,強化元素であると共に,光触媒化元素でもある,例えばTi,Sn, Zn,Zr,W等の元素を含むものとしても良く,更には,強化元素を含む噴射粉体と,前記光触媒化元素を含む噴射粉体とを混合したものを前記エンジン用のピストンに噴射するものとしても良い。
または,強化元素を含む噴射粉体を処理対象とする内燃機関用ピストンに噴射する前に,又は噴射した後に,前記光触媒化元素を含む噴射粉体を噴射するものとしても良く,更には例えば2台のブラストマシンを使用して,強化元素を含む噴射粉体と,光触媒化元素を含む噴射粉体とを同時に噴射するものとしても良い。
噴射粉体中に含まれるこれらの光触媒化元素は,前述のようにピストン表面に拡散,浸透する際に例えば噴射に使用した圧縮空気中の酸素や,周辺に存在する空気中の酸素と反応して酸化してピストンの表面付近に拡散,浸透する。
この光触媒化元素の酸化状態は,形成される表面改質層中において均一ではなく,形成された改質層の表面から内部に入るに従って,酸素との結合が欠乏する構造となる。
このように不安定な状態で酸素と結合した光触媒化元素を備えた改質層は,紫外線の照射がなく,常温化においても触媒機能を発揮するものとなっている。
次に,本発明の方法による表面処理を行った試験例について以下説明する。
表面欠陥の修復及び改質層の形成確認試験
実験の目的
本発明の方法による表面処理を施すことにより,内燃機関用ピストンの表面欠陥が修復できると共に,表面から所定の深さにおいて表面改質層を形成できることを確認する。
試験方法
以下の表4の材料において,表2に示すAl-Si組成物(内燃機関用ピストン)に対し,表3に示す処理条件で,噴射粉体の噴射を行った。
試験結果
表面欠陥の修復状態の確認
(a) 染色浸透探傷評価
検査対象としたガソリンエンジン用ピストンの表面に染料を塗布した後,これを洗浄除去し,ピストン表面の欠陥(湯境の窪み)内に除去できずに残った染料の発色状態を確認することで,ピストン表面における欠陥の有無を確認する染色浸透探傷評価を行った。
図1(A)に示すように,未処理のピストン表面では,染料の発色による微小な傷(湯境)の存在が確認されたのに対し,本発明の表面処理方法を実施した後再度同様の染色浸透試験によって評価した結果,ピストン表面では,図1(B)に示すように,染料の発色は確認できず,表面に存在した微小な傷(湯境)が完全に修復されていることが確認された。
(b) 走査顕微鏡(SEM)による確認
また,同様に,本発明の表面処理の前後におけるピストン表面の状態をSEM像で確認した結果,未処理のピストン表面には,図2(A)に示すように無数の微細な傷(湯境)の存在が確認されたのに対し,本発明の表面処理方法を実施した後のピストンにあっては,図2(B)に示すように,微細な欠陥(湯境)は消失していた。
表面改質層の形成確認
本発明の方法による表面改質後,ピストンの表面改質部分を切断し,その断面を金属顕微鏡により観察した結果を図3に,SEM像を図4に,走査型電子顕微鏡にてエネルギー分散定性面分析を行った結果を図5(A)〜(D)にそれぞれ示す。
いずれの観察結果によっても,ピストンの表面から約20μm以下の表面層部分に表面改質層が形成されていることが確認された。
この表面改質層は,図5(A)〜(D)から明らかなようにアルミニウム成分中に,噴射粉体中の元素であるFeと,ピストンを構成する合金中に合金元素として含まれているSiとが,微細化し,これら元素を含む,金属組織が均一・微細化された状態を示すものであった。
図6に示すように,図5(A)に示す本発明による処理後のピストン断面部の表面方向よりラインスキャンを行いSi・Fe・Alの分析を実施した結果,改質層部分はSi・Feが高濃度になり,Alが減少している。改質部は,Siが凝集し均一に分散し微細化した状態を示す。また,Feは,母材量より増加して均一に分散し微細化した状態である。
圧縮窒素ガスを用いて混合流体を噴射するとき,ピストンが窒素反応成分であるAlを常に含むが,他にSi,Cr,Ti等を含む金属材料であり,噴射粉体が同様の金属の時は,ピストン表面には,Si3N4,TiN,VN,AlN,CrN等の窒化層が拡散浸透により生成し,同時に噴射粉体により被覆された表面被膜にも窒化物が生成されることになる。ピストン表面が上記と同一であり,噴射粉体がセラミックスであるなど窒素反応成分が無いときは,ピストン表面にのみ窒化物が生成される。ピストン,噴射粉体,共に窒素反応成分があれば,ピストン表面および被膜に窒化物が生成される。特に,窒化珪素は,耐熱性構造材料として,高温耐食性にすぐれ,高温強度が高い上に,耐摩耗性に優れた改質層を生成する。
また,この場合にも,噴射粉体による被膜形成が行われ得る。付言すると,ピストンがTi,Al,Cr等を含む金属材料又はこれとセラミックスとの混合体のとき,噴射粉体がピストン材料と同一であれば,ピストン,被膜共に窒化物が生成される。
すなわち,ピストンにのみ窒素反応成分があれば,ピストン表面に窒化物が生成される。
図7に示すように,窒素ガスを用いた噴射による表面改質効果として,表面内部の改質部に窒素が検出された。よって,窒化アルミニウム,窒化珪素等の合金元素,特にFe成分の窒化が認められる。
疲労強度及び引張強度確認試験
実験の目的
本発明の方法によって表面処理を施すことにより,処理対象とした金属製品において疲労強度及び引張強度の向上が得られることを確認する。
試験方法
試験方法及び試験条件は以下の通りである。
試験片
疲労試験に使用した試験片の形状及びサイズを図11に,引張試験に使用した試験片の形状及びサイズを図12にそれぞれ示す。
試験条件
疲労試験
図11中に矢印で示す処理範囲に対して本発明の方法による表面処理を行った試験片(実施例)と,未処理の試験片(比較例)のそれぞれに対し,疲労試験を行った。
実施例における表面改質に使用した噴射粉体及び噴射方法については,前掲の表3に示す通りであり,図11に示す試験片を軸芯を中心に回転させながら,30秒間,噴射粉体の噴射を行った。
このようにして,本発明の方法により表面処理が完了した試験片と,未処理の試験片のそれぞれに対し,常温(25℃)及び高温(250℃)それぞれの条件下で,疲労強度の測定を行った。
引張試験
図12中に矢印で示す処理範囲に対し本発明の方法による表面処理を行った試験片(実施例)と,未処理の試験片(比較例)それぞれに対し,引っ張り試験を行った。
実施例における表面改質に使用した噴射粉体及び噴射流体については,前掲の表3に示す通りであり,図12に示す試験片をその軸を中心に回転させながら,30秒間,噴射粉体の噴射を行った。
このようにして,本発明の方法により表面処理が完了した試験片と,未処理の試験片に対し,常温(25℃)及び高温(250℃)下でそれぞれ引張強度の測定を行った。
試験結果
疲労試験
以上の疲労試験の結果,本発明の表面処理方法による処理後の試験片では,未処理の試験片に対して,常温で12%,高温で11%,振幅応力(振幅回数10の8乗回・−3σ値)が向上していることが確認できた(図8参照)。
これは,ピストンが使用される高温域での10%以上の強度向上をもたらすものである。
引張試験
また,前記方法による引張試験の結果,本発明の方法により表面処理を行った試験片にあっては,未処理の試験片に対し常温で4%,高温で7%,引張強度(−3σ値)が向上していることが確認できた(図9参照)。
改質層成分
窒素ガスによるハイス鋼粉体の噴射による改質層の成分分布は以下のとおりであった。
光触媒効果の確認試験
実験の目的
酸化により光触媒機能を発揮する元素を含む噴射粉体を噴射することにより形成された表面改質層が,紫外線の照射のない常温の環境において燃料改質効果を発揮することを確認する。
実験方法
前述した強化元素であると共に,酸化により光触媒機能を発揮する元素でもあるチタン,スズ,亜鉛を含む噴射粉体を,それぞれ表6に示す内燃機関用ピストンの頂面に噴射して,表面改質層を形成した。
本実験で使用した噴射粉体のそれぞれは表7に示す通りであり,これを表8に示す条件で処理を行った。
試験結果
表面改質層の形成状態の確認
(1)チタン系噴射粉体よる結果
上記チタン系噴射粉体を噴射したガソリンエンジン用ピストンを切断して得た断面部をSEM −EDX にて面分析した結果を図14に,ライン分析した結果を図15にそれぞれ示す。
上記分析結果から,ピストン(Al)表面より内部側にチタン成分が拡散浸透してできた,均一に微細な層である表面改質層の形成が確認出来た。
この表面改質層では,アルミ母材中のSi成分も微細な状態で存在している組成となっており〔図14(C)〕,高強度化されている。
SEM −EDX による検証結果から,チタン元素が拡散浸透してできた表面改質層には酸素が検出されており,酸化状態となっていること,すなわち,光触媒物質として知られる酸化チタンが生成されている事が確認できた。この表面改質層の酸化は,表面から内部に入るにつれて酸素濃度が減少するものとなっていることが確認できた〔図14(E),図15(E)〕。
(2)スズ系噴射粉体よる結果
上記スズ系噴射粉体を噴射したガソリンエンジン用ピストンを切断して断面部をSEM −EDX にて面分析した結果を図16,ライン分析した結果を図17にそれぞれ示す。
上記分析結果から,ピストン表面にスズ成分による被膜が形成されており,均一に微細な層である表面改質層の形成が確認出来た。
この表面改質層は,母材であるピストン中のアルミ及びSi成分が分布し微細な状態で存在する組織となっている。
さらに,SEM −EDX による検証結果から,表面改質層には酸素が検出されており,酸化状態となっていること,すなわち,光触媒物質として知られる酸化スズが生成されている事が確認できた。この表面改質層の酸化は,表面から内部に入るにつれて酸素濃度が減少していることが確認された〔図16(E),図17(E)〕。
(3)亜鉛系噴射粉体よる結果
上記亜鉛系噴射粉体を噴射したガソリンエンジン用ピストンを切断して断面部をSEM −EDX にて面分析した結果を図18に,ライン分析した結果を図19にそれぞれ示す。
上記分析結果から,ピストン(Al)表面より内部側に亜鉛成分が拡散浸透してできた,均一に微細な層である表面改質層の形成が確認出来た。
この表面改質層は,アルミ母材中のSi成分も微細な状態で存在している組成となっている。
SEM −EDX による検証結果から,表面改質層には酸素が検出されており,酸化状態となっていること,すなわち,光触媒物質として知られる酸化亜鉛が生成されている事が確認できた。この表面改質層の酸化は,表面から内部に入るにつれて酸素濃度が減少していることが確認できた〔図18(E),図19(E)〕。
燃料改質効果の確認
以上のようにして表面改質層が形成されたガソリンエンジン用ピストンのうち,チタン系噴射粉体,及びスズ系噴粉体を噴射して得たものに対し,常温,暗環境内で燃料(軽油)を接触させた後,熱分解GC−MS測定による成分分析を行った。
比較例として,平均粒径50μmのハイス鋼製の噴射粉体を同条件で同様の内燃機関用ピストンに対して噴射して表面改質層を形成したピストンに接触させた燃料を熱分解GC−MS測定による成分分析を行い,また,未処理の軽油に対してGC−MS測定による分析を行って,これらの結果と比較した。
強化元素として鉄(Fe)を含むハイス鋼の粉体を噴射して表面改質を行ったピストンと接触させた比較例の軽油試料において得られた熱分解GC−MS解析結果のグラフは,未処理の軽油試料について得られた熱分解GC−MS解析結果のグラフに現れた波形との間に変化が見られず,燃料の改質は行われていないか,行われていたとしても僅かであることが確認された。
これに対し,酸化によって光触媒機能を発揮する元素であるチタン(Ti)及びスズ(Sn)を含む噴射粉体を噴射することにより,表面から内部に入るに従い酸素結合量が減少する不安定状態の化合物層が形成されたピストンに接触させた軽油試料は,熱分解挙動変化の結果から,軽油主成分である鎖状の脂肪族炭化水素に分解が生じていることが判り,これにより軽油の分解が促進したことが確認できる。
なお,図20はスズを含む噴射粉体の噴射により表面改質層を形成したピストンと接触させた軽油試料の熱分解GC−MS分析結果のグラフであり,図21は,未処理の軽油試料に対する熱分解GC−MS分析結果のグラフである。
これらの熱分解GC−MS解析結果のグラフにおいて,一般的にC13〜C25は,軽油の主成分である脂肪族炭化水素であり,グラフ中のC13以降,規則的に認められた脂肪族炭化水素は,元々,軽油に含まれていた構成成分である。
本測定で用いた熱分解装置は,装置特性上,1秒以下の瞬時に700℃以上にまで昇温し,それによって熱分解・揮発した成分が瞬時分析ラインへ導入されるため,空気中加熱であるが,完全燃焼まで至らない。
この脂肪族炭化水素(C13〜C25)の周辺ピークや,C13以下で認められる低分子量成分は,軽油からの熱分解生成物である。従って,図中に示す(1)〜(7)の分解生成物の差異により,熱分解性の検証が可能となる。
図20に示すスズを含む噴射粉体で処理されたピストンと接触された軽油試料について得られた熱分解GC−MS解析結果のグラフでは,(1)〜(7)の分解生成物の発生状態,特に(5),(6)で示す分解生成物の発生状態において,未処理の軽油試料に基づいて得られた熱分解GC−MS解析結果のグラフと顕著な相違を有し,このような熱分解挙動変化の結果から,軽油主成分である鎖状の脂肪族炭化水素に分解が生じていることが判り,これにより軽油の分解が促進したことが確認できる(なお,同図中,上記(1)〜(7)に対応する符号は,丸数字である)。
軽油の熱分解が促進されれば,燃焼が促進されて,かつ,NOXの還元剤となる炭化水素の分子量が増加することになるので,上記変化が燃焼改善(CO2排出削減),NOX排出削減に寄与することは明らかである。
また,熱分解性向上によって火炎伝播速度(シリンダー内の燃焼)が向上し高回転域における着火遅れを防ぎ,ノッキングを抑えると共に,燃焼室温度を下げ高回転域でのトルクもアップする効果がある。
よって,前述した表面処理が施されたピストンにより,燃料改質が行われることにより燃費が向上すると共に,完全燃焼若しくはそれに近い燃焼状態によって排出されるCO2量が減少し,さらに,燃焼室内の温度が下がることで,NOXの生成を抑えて排出ガスの低減に繋がる。
しかもこのような燃料の改質は,常温の暗所において本発明の方法により表面改質層が形成されたピストンとの接触によって生じていることから,燃料改質を行うために光の照射も,高温条件であることも必要とせず,従って,エンジンの始動初期等において,ピストンの温度が上昇していない状態においても燃料改質を行うことが可能であり,エンジンの始動直後より燃料改質による燃焼性の向上と,CO2ガスやNOX等の発生を低減できることが予測される。
内燃機関に対する実装試験
前記方法により,チタン(Ti)又はスズ(Sn)を含む噴射粉体をそれぞれ噴射して表面改質層頂面に形成したピストンと,未処理のピストンを直列4気筒エンジンに合い組みし,20時間このエンジンを運転して,排気温度及び頂面部のカーボン付着性を確認した。
本試験例では,2−4気筒に未処理のピストンを取り付けると共に,第1気筒にチタン粉体を噴射処理したピストンを,第3気筒にスズ粉体を噴射処理したピストンをそれぞれ取り付けた。
なお,実験に使用したエンジン,その他の実験条件は,表9に示す通りである。
実験結果
(1)カーボンの付着状況
各ピストンに対するカーボンの付着状況を確認した結果を,表10に示す。
(2)排気温度
各気筒から排気される排気温度(60秒間の平均値)を測定した結果,未処理のピストンを装着した2−4気筒からの排気温度が約670℃であったのに対し,スズの噴射粉体を噴射して処理したピストンを装着した1番気筒,及びチタンの噴射粉体を噴射して処理したピストンを装着した3番気筒からの排気温度は,いずれもこれよりも約20℃低い(未処理のピストンを装着した気筒からの排気温度を100とした場合における約3%)ことが確認された(図22参照)。
実験結果に対する考察
以上の結果から,本発明の方法により表面改質層が形成されたピストンにあっては,その光触媒機能による燃料改質により,シリンダー内での燃焼性が向上した結果,カーボン自体の発生が減少し,又は,カーボンが発生した場合であっても,光触媒機能によって分解されているものと考えられる。従って,これらの体積に伴う燃費の悪化等が生じず,長期に亘り安定して燃焼効率の向上が得られることが確認できた。
また,本発明の方法によって表面改質層が形成されたピストンを装着したシリンダからの排気温度の低下は,触媒機能によって燃料改質が行われた結果,シリンダー内で燃料が完全燃焼し,又は完全燃焼に近い状態で燃焼することにより,排気管での後燃えが無くなり排気温度が低下したものと考えられる。
以上の結果から,本発明の方法によりピストンの頂面に光触媒機能を発揮する表面改質層を形成したピストンを装着することにより,シリンダー内における燃焼を完全燃焼,若しくはこれに近い状態に近付けることができ,これにより燃費が向上して消費燃料を減少させることができると共に,これに伴いCO2ガスの排出量の低下や,燃焼温度の低下や,燃料改質によりNOXの還元剤となる炭化水素の分子量が増加したことに伴うNOXの発生についても低減できることが期待される。
染色浸透探傷試験結果を示す内燃機関用ピストンの表面写真であり,(A)は未処理品,(B)は本発明の方法による処理後の状態をそれぞれ示す。 表面欠陥の発生状態を示す走査型電子顕微鏡写真であり,(A)は未処理品,(B)は本発明による処理後の状態をそれぞれ示す。 本発明による処理後のピストン断面部の金属顕微鏡写真。 本発明による処理後のピストン断面部の走査型電子顕微鏡写真。 本発明による処理後のピストン断面部の走査型電子顕微鏡写真におけるエネルギー分散型X線分光分析像であり,(A)は面分析観察部組成像,(B)はAl成分面分析像,(C)はSi成分面分析像,(D)はFe成分面分析像。 図5(A)に示す本発明による処理後のピストン断面部のラインスキャンによるSi,Fe,Alの分析結果を示す,(A)は,分析位置を,(B)は,Siライン分析グラフ,(C)は,Alライン分析グラフ,(D)は,Feライン分析グラフである。 本発明による窒素ガスを用いた噴射による表面改質効果を示し,(A)は,分析位置を,(B)は,Siライン分析グラフ,(C)は,Nライン分析グラフである。 疲労強度試験における試験結果を示すグラフ。 引張試験における試験結果を示すグラフ。 表面欠陥の修復及び改質層の形成確認試験における噴射粉体の噴射方法説明図。 疲労試験における試験片の説明図。 引張試験における試験片の説明図。 光触媒効果の確認試験に関する説明図であり,(A)は噴射粉体の噴射方法説明図,(B)は処理部位の説明図。 本発明によるチタン含有粉体噴射後のピストン断面部の走査型電子顕微鏡写真におけるエネルギー分散型X線分光分析像であり,(A)は面分析観察部組成像,(B)はAl成分面分析像,(C)はSi成分面分析像,(D)はTi成分面分析像,(E)はO成分面分析像。 図14に示す本発明による処理後のピストン断面部のラインスキャンによるSi,Ti,Al,Oの分析結果を示す,(A)は,分析位置を,(B)は,Alライン分析グラフ,(C)は,Siライン分析グラフ,(D)はTiライン分析グラフ,(E)はOライン分析グラフである。 本発明によるスズ含有粉体噴射後のピストン断面部の走査型電子顕微鏡写真におけるエネルギー分散型X線分光分析像であり,(A)は面分析観察部組成像,(B)はAl成分面分析像,(C)はSi成分面分析像,(D)はSn成分面分析像,(E)はO成分面分析像。 図16に示す本発明による処理後のピストン断面部のラインスキャンによるSi,Sn,Al,Oの分析結果を示す,(A)は,分析位置を,(B)は,Alライン分析グラフ,(C)は,Siライン分析グラフ,(D)はSnライン分析グラフ,(E)はOライン分析グラフである。 本発明による亜鉛含有粉体噴射後のピストン断面部の走査型電子顕微鏡写真におけるエネルギー分散型X線分光分析像であり,(A)は面分析観察部組成像,(B)はAl成分面分析像,(C)はSi成分面分析像,(D)はZn成分面分析像,(E)はO成分面分析像。 図18に示す本発明による処理後のピストン断面部のラインスキャンによるSi,Zn,Al,Oの分析結果を示す,(A)は,分析位置を,(B)は,Alライン分析グラフ,(C)は,Siライン分析グラフ,(D)はZnライン分析グラフ,(E)はOライン分析グラフである。 スズ含有噴射粉体噴射後のピストンと接触させた軽油試料の熱分解GC−MS解析結果のグラフ。 未処理の軽油試料の熱分解GC−MS解析結果のグラフ。 実験例に記載の内燃機関に対する実装試験において,本発明の方法により表面処理したピストンを装着した気筒からの排気温度と,未処理のピストンを装着した気筒からの排気温度の測定結果を示すグラフ。

Claims (24)

  1. アルミニウム−珪素合金の鋳鍛造により得た内燃機関用ピストンの表面に,前記ピストンを構成する合金中に拡散浸透することにより該合金の強度を向上させる強化元素を含む粒径20〜400μmの噴射粉体を,噴射速度80m/s以上,又は噴射圧力0.3MPa以上で噴射して衝突させ,
    前記噴射粉体の衝突により,前記鋳鍛造において前記ピストン表面に生じた表面欠陥部の酸化物を除去し,且つ,前記表面に生じた表面欠陥を修復すると共に,前記ピストンの表面付近において前記ピストンの前記合金中における合金元素を微細化し,かつ,前記噴射粉体中の前記強化元素を前記ピストンの表面付近に拡散浸透させて,前記ピストン表面に,前記合金元素と前記噴射粉体中の強化元素を含み,該強化元素は,酸化により光触媒機能を発揮する元素を含むと共に,表面から内部に入るに従って酸素との結合が欠乏する構造に,前記強化元素が酸化し,金属組織が均質・微細化された改質層を形成することを特徴とする内燃機関用ピストンの表面改質方法。
  2. 記改質層を前記ピストンの頂面に形成することを特徴とする請求項1記載の内燃機関用ピストンの表面改質方法。
  3. 前記噴射粉体が,酸化により光触媒機能を発揮する光触媒化元素を含み,前記ピストンの表面付近に前記光触媒化元素を拡散浸透させて,前記ピストン頂面に,前記ピストンの合金中の合金元素と前記噴射粉体中の強化元素及び光触媒化元素を含む,金属組織が均一・微細化されていると共に,表面から内部に入るに従って酸素との結合が欠乏する構造に前記光触媒化元素が酸化した改質層を形成することを特徴とする請求項1記載の内燃機関用ピストンの表面改質方法。
  4. 前記強化元素を含む噴射粉体と共に,酸化により光触媒機能を発揮する光触媒化元素を含む粒径20〜400μmの噴射粉体を,噴射速度80m/s以上,又は噴射圧力0.3MPa以上で噴射して,前記ピストンの表面付近に前記光触媒化元素を拡散浸透させて,前記ピストン頂面に,前記ピストンの合金中の合金元素と前記噴射粉体中の前記強化元素及び光触媒化元素を含む,金属組織が均一・微細化されていると共に,表面から内部に入るに従って酸素との結合が欠乏する構造に前記光触媒化元素が酸化した改質層を形成することを特徴とする請求項記載の内燃機関用ピストンの表面改質方法。
  5. 請求項1及び2に記載の方法により頂面に対して表面改質を行った後の内燃機関用ピストンの前記改質層に,酸化により光触媒機能を発揮する光触媒化元素を含む粒径20〜400μmの噴射粉体を,噴射速度80m/s以上,又は噴射圧力0.3MPa以上で衝突させて,前記ピストンの表面付近に前記光触媒化元素を拡散浸透させて,前記改質層を,前記合金元素と前記強化元素及び光触媒化元素を含む金属組織が均一・微細化されていると共に,表面から内部に入るに従って酸素との結合が欠乏する構造に前記光触媒化元素が酸化した構造に変化させたことを特徴とする内燃機関用ピストンの表面改質方法。
  6. 前記強化元素及び前記光触媒化元素を含む前記噴射粉体に,更に貴金属元素を含め,前記改質層に前記貴金属元素を担持させたことを特徴とする請求項〜5いずれか1項記載の内燃機関用ピストンの表面改質方法。
  7. 請求項〜5いずれか1項記載の処理を行った後に,貴金属元素を含む噴射粉体を前記改質層に対して噴射して,前記改質層に前記貴金属元素を担持させたことを特徴とする内燃機関用ピストンの表面改質方法。
  8. 前記噴射粉体が,前記合金の強度を向上させる前記強化元素としてFe,Mn,Zn,Ti,C,Si,Ni,Cr,W,Cu,Sn, Zr中から選択されたいずれか1種,又は2種以上の元素を含み,
    前記内燃機関用ピストンの前記改質層中に,合金元素である前記珪素と,前記強化元素とを含み,金属組織が均一・微細化されて成ることを特徴とする請求項1記載の内燃機関用ピストンの表面改質方法。
  9. 前記強化元素が,Ti,Sn, Zn,Zr,W中から選択されたいずれか1種,又は2種以上の元素であることを特徴とする請求項記載の内燃機関用ピストンの表面改質方法。
  10. 前記噴射粉体に含まれる光触媒化元素が,Ti,Sn, Zn,Zr,W中から選択されたいずれか1種,又は2種以上の元素であることを特徴とする請求項3〜5いずれか1項記載の内燃機関用ピストンの表面改質方法。
  11. 前記強化元素が,Ti,Snいずれか一方,又は双方であることを特徴とする請求項記載の内燃機関用ピストンの表面改質方法。
  12. 前記光触媒化元素がTi,Snいずれか一方,又は双方であることを特徴とする請求項〜5いずれか1項記載の内燃機関用ピストンの表面改質方法。
  13. 前記強化元素がFe,Ni,Cu,Cr,Mn,Si,C,中から選択されたいずれか1種,又は2種以上の元素であり,前記光触媒化元素が,Ti,Sn, Zn,Zr,W中から選択されたいずれか1種,又は2種以上の元素である請求項〜5いずれか1項記載の内燃機関用ピストンの表面改質方法。
  14. 前記ピストンは,珪素を9%〜23%含むアルミニウム−珪素合金である請求項1記載の内燃機関用ピストンの表面改質方法。
  15. 前記噴射粉体と窒素ガスから成る混合流体を,前記ピストンの表面に噴射し,前記ピストンの珪素,アルミニウム又は鉄成分と前記窒素ガスの化学反応より生じた窒素化合物を含む前記改質層を形成することを特徴とする請求項1記載の内燃機関用ピストンの表面改質方法。
  16. 前記窒素ガスは,0℃以下の低温圧縮窒素ガスであり,該低温圧縮窒素ガスを用いて,前記ピストンを再結晶温度以上に上昇させると共に,前記低温窒素ガスにより瞬時に常温以下に急冷させることを特徴とする請求項15記載の内燃機関用ピストンの表面改質方法。
  17. 前記拡散浸透により,前記ピストン表面に,窒化アルミ及び窒化珪素を含む前記改質層を形成することを特徴とする請求項15又は16記載の内燃機関用ピストンの表面改質方法。
  18. 鋳鍛造により得た内燃機関用ピストンの表面に,前記ピストンを構成する合金中に拡散浸透することにより該合金の強度を向上させる強化元素を含む粒径20〜400μmの噴射粉体を,噴射速度80m/s以上,又は噴射圧力0.3MPa以上で噴射して衝突させる表面処理により,
    前記鋳鍛造において前記ピストン表面の酸化物を除去し,且つ,前記表面に生じた表面欠陥が修復された表面状態を有すると共に,
    前記ピストンの表面付近に拡散浸透した前記噴射粉体中の前記強化元素と,前記ピストンを構成する前記合金中における合金元素を含前記強化元素は,酸化により光触媒機能を発揮する元素を含む噴射粉体を使用した前記表面処理により,前記ピストン表面に,表面から内部に入るに従って酸素との結合が欠乏する構造に前記強化元素が酸化した金属組織が均一・微細化されて成る改質層を有することを特徴とする内燃機関用ピストン。
  19. 記ピストン頂面に,前記改質層を有することを特徴とする請求項18記載の内燃機関用ピストン。
  20. 酸化により光触媒機能を発揮する光触媒化元素を含む噴射粉体の噴射により,前記ピストンの表面付近に前記光触媒化元素を拡散浸透させて,前記ピストン頂面に,前記合金元素と前記噴射粉体中の強化元素及び光触媒化元素を含む,金属組織が均一・微細化されていると共に,表面から内部に入るに従って酸素との結合が欠乏する構造に前記光触媒化元素が酸化した改質層を有することを特徴とする請求項18記載の内燃機関用ピストン。
  21. 前記改質層に,貴金属元素を担持させたことを特徴とする請求項19又は20記載の内燃機関用ピストン。
  22. 前記内燃機関用ピストンを,アルミニウム−珪素合金により構成すると共に,前記噴射粉体に前記合金の強度を向上させる元素としてFe元素を含み,
    前記改質層中に,合金元素である前記珪素と,前記噴射粉体中のFe元素とを含む,金属組織が均一・微細化されたことを特徴とする請求項18記載の内燃機関用ピストン。
  23. 前記アルミニウム−珪素合金は,Fe;0.8%以下,Mg;0.5〜1.5%,Ni;0.1〜4.0%,Ti;0.05〜1.20%, Si;9〜23%,Cu;1〜6%,残部のAlから成ることを特徴とする請求項18記載の内燃機関用ピストン。
  24. 前記内燃機関用ピストンを前記噴射粉体に前記合金の強度を向上させる元素としてFeを主成分とし,前記改質層が,Fe;1〜10%, Si;11〜25%,N:0.1〜10%,残部のAlから成ることを特徴とする請求項15〜17いずれか1項記載の内燃機関用ピストン表面改質方法により生成される内燃機関用ピストン。
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