JP3361189B2 - グルテンおよび小麦澱粉の分離回収方法 - Google Patents

グルテンおよび小麦澱粉の分離回収方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】 本発明は、薄力小麦粉、中力小
麦粉またはそれらの混合粉からグルテンおよび小麦澱粉
のそれぞれを分離回収する方法に関する
【0002】
【従来の技術】グルテンは小麦特有の蛋白質であって小
麦蛋白質の約80%を占めている。グルテンは通常小麦
粉から小麦澱澱を製造する際の副生物として得られ、そ
こで得られたグルテンは、焼麸および生麸用の原料やグ
ルタミン酸ソーダを製造する際の原料として、更には水
産練り製品、パン類、麺類などの食品を製造する際の添
加剤や原料として広く用いられている。
【0003】また、小麦澱粉は、植物体から分離されて
実用に供された最古の澱粉であると言われており、その
粒径は、他の澱粉とは異なり、粒径2〜8μmの小粒子
群と粒径20〜30μmの大粒径群の2つに分かれ、そ
の中間がほとんど存在しないという特徴を有している。
小麦澱粉から得られた糊は、馬鈴薯澱粉などの地下系澱
粉に比べて、高温での撹拌に対して比較的安定であるこ
とために、例えば繊維工業での経糸糊、仕上げ糊、染
色、捺染に用いられており、それ以外にも製麺用の原料
粉、水産練り製品用の添加剤、段ボールなどを製造する
際の接着剤などとして用いられている。
【0004】小麦粉からグルテンおよび小麦澱粉を得る
方法としては、小麦粉に水を加えて混捏して小麦粉中に
含まれるグルテンなどの蛋白質を水和膨潤させて、粘着
性でまとまりのあるドウ(dough)やバッター(batte
r)などの生地をつくり、この生地を水で洗滌して生地
中の澱粉を洗滌水中に洗い出して澱粉粒子が洗滌水中に
懸濁した乳濁液を形成させ、その澱粉含有乳濁液から塊
状で残留するグルテンを分離回収し、それと共に該澱粉
含有乳濁液から小麦澱粉を分離回収する方法が一般に採
用されている。
【0005】上記した方法によってグルテンおよび小麦
澱粉のそれぞれを収率よく且つ高純度で分離回収するに
は、生地中の澱粉を洗滌水でよく洗い出すことが必要で
あり、そのためにはかなり激しい洗滌処理を施す必要が
あり、場合によっては洗滌処理が複数段にわたって繰り
返し行われる。そのため、洗滌処理を施される加水し混
捏して得られた生地は、粘りがあってまとまりがよく、
洗滌処理中に生地自体が千切れて細片化したり微細化し
て澱粉含有乳濁液中にグルテンなどが混入してこないこ
とが求められる。
【0006】ところで、加水し混捏して得られる小麦粉
生地の粘りやまとまり具合は、使用する小麦粉の種類に
よって大幅に異なり、薄力小麦粉または中力小麦粉に加
水し混捏して得られる生地は、充分な粘性およびまとま
りを有しておらず、グルテンおよび小麦澱粉を分離回収
するための生地として適さない。すなわち、薄力小麦粉
または中力小麦粉から得られる生地を用いて上記した方
法によってグルテンおよび小麦澱粉の分離回収を行った
場合には、澱粉を洗い出すための洗滌処理に充分に耐え
ることができず、洗滌処理中に生地が千切れて細片化し
たり微細化して、生地中から小麦澱粉粒子を選択的に洗
い出すことが困難になりグルテンが混入した澱粉含有乳
濁液となるため、洗滌時の操作性が悪く、しかも小麦澱
粉とグルテンのそれぞれを互いに混ざらないように、効
率よく、高純度で分離回収することが困難である。
【0007】そのため、特許公報などの多くの文献で
は、小麦粉から上記した方法で小麦澱粉およびグルテン
を分離回収する際には原料小麦粉としてどの小麦粉も使
用できると記載されていて小麦粉の種類については触れ
ていない場合が多いが、工業的には、薄力小麦粉および
中力小麦粉は小麦澱粉およびグルテンを分離回収するた
めの原料粉として実際には使用されておらず、粘性に富
み且つまとまりに優れる強力小麦粉が専ら使用されてい
るのが現状である。その結果、現在市販されているグル
テンおよび小麦澱粉の大半は強力小麦粉から得られたも
のである。そして、かかる市販のグルテンおよび小麦澱
粉は、強力小麦粉に由来するため、薄力小麦粉または中
力小麦粉中に元々含まれているグルテンおよび小麦澱粉
とその組成や性質などがかなり異なるものとなってい
る。
【0008】一方、多くの麺類、例えば、手打ひら麺、
手打うどん、手打中華麺、手打そばなどの手打麺類、ゆ
で麺、生麺、むし中華麺、即席麺、乾麺類、手延素麺な
どの麺類では、原料小麦粉として中力小麦粉、または中
力小麦粉と薄力小麦粉が多く用いられており、強力小麦
粉はほとんど用いられない。そして、これらの麺類の製
造に当たっては、麺に腰、粘り、歯ごたえなどを付与す
るためにグルテンを添加することがよく行われている
が、市販されているグルテンは、上記したように強力小
麦粉から得られたものであるために、麺類の主原料であ
る中力小麦粉や薄力小麦粉中に含まれているグルテンと
はその組成や性質が異なっており、麺類の食感や食味な
どに違和感を生ずる場合が少なくない。
【0009】また、上記した麺類の製造に際して、麺の
口当たりなどを良くするために、中力小麦粉や薄力小麦
粉と共に小麦澱粉を用いることがしばしば行われている
が、上記したように市販されている小麦澱粉のほとんど
が強力小麦粉から得られたものであるため、やはり中力
小麦粉や薄力小麦粉とのなじみが足りず、麺類の食感や
食味などに違和感を与える原因になることが少なくな
い。
【0010】よって、上記した点から、中力小麦粉また
は薄力小麦粉を使用して麺類を製造するに当たっては、
中力小麦粉または薄力小麦粉から得られたグルテンや小
麦澱粉を使用することが望まれているが、上記したよう
に中力小麦粉や薄力小麦粉からはグルテンおよび小麦澱
粉が円滑に且つ高収率で製造できないところから、実際
にはその実現が困難であり、強力小麦粉から得られたグ
ルテンや小麦澱粉が用いられている。
【0011】また、パン類は通常強力小麦粉を使用して
製造されているが、近年、中力小麦粉や薄力小麦粉を使
用してパン類を製造することも行われるようになってお
り、その場合には生地の粘性を増加させてパンの膨らみ
を良くするために、グルテンが添加する場合が多い。そ
してこの場合にも、中力小麦粉または薄力小麦粉の特性
を活かしたパン類を得るには、強力小麦粉から得られた
グルテンではなく、中力小麦粉や薄力小麦粉から得られ
たグルテンを用いるのが望ましいとされているが、中力
小麦粉または薄力小麦粉を原料とするグルテンはほとん
ど市販されておらず簡単に且つ安価に入手できないこと
から、強力小麦粉から得られた市販のグルテンが用いら
れている。したがって、上記したような理由から、薄力
小麦粉または中力小麦粉から小麦澱粉およびグルテンの
それぞれを円滑に且つ高収率で分離回収する方法が求め
られている。
【0012】また、我が国で栽培されている国内産小麦
は、気候、風土、地形、土壌の性質、耕作面積などの種
々の要因から、その大半が中力系小麦である。そして国
内産の中力系小麦は、主に製麺原料として用いられてお
り、製パン用や、小麦澱粉およびグルテンを製造するた
めの原料粉には適さないとされていて、従来これらの用
途にはほとんど使用されてこなかった。しかしながら、
国内産の中力系小麦の有効利用の点からは、国内産の中
力系小麦を製麺用としてだけではなく、小麦澱粉やグル
テンを製造する際の原料、製パン原料などとしても有効
に使用できることが望ましく、かかる点からも薄力小麦
粉または中力小麦粉を原料として用いてグルテンおよび
小麦澱粉を円滑に製造し得る方法の開発が望まれてい
る。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、薄力
小麦粉、中力小麦粉またはそれらの混合物を原料小麦粉
として用いて、グルテンおよび小麦澱粉を、良好な操作
性で、円滑に且つ高収率で分離回収し得る方法を提供す
ることである。そして、本発明の目的は、薄力小麦粉、
中力小麦粉またはそれらの混合粉に由来するグルテンお
よび小麦澱粉を提供することであり、更にそれらのグル
テンおよび/または小麦澱粉を使用した食品を提供する
ことである。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成すべく
本発明者らが検討を重ねてきた。その結果、小麦粉とし
て薄力小麦粉、中力小麦粉またはこれらの混合粉を使用
する場合には、小麦粉に単に加水し混捏して澱粉の洗い
出し用の生地を形成し、この生地からグルテンと小麦澱
粉を分離回収する上記した従来法に代えて、薄力小麦
粉、中力小麦粉またはこれらの混合粉に水およびグルテ
ンを添加して生地を形成すると、粘りがあり且つまとま
りに優れ苛酷な洗滌処理に充分に耐え得る生地が得られ
ること、そしてこの生地を使用して澱粉の洗い出しを行
った場合には生地が千切れて細片化したり微細化したり
せず、生地から澱粉を選択的に洗い出すことができてグ
ルテンの混入のない澱粉含有乳濁液が得られ、小麦澱粉
およびグルテンのそれぞれを極めて簡単に効率よく且つ
高純度で分離回収できることを見いだして本発明を完成
した。更に、本発明者らは、上記により得られた薄力小
麦粉、中力小麦粉またはそれらの混合粉に由来するグル
テンや小麦澱粉を、中力小麦粉や薄力小麦粉を主原料と
する麺類やパン類などの食品の製造時に添加してこれら
の食品を製造した場合には、中力小麦粉や薄力小麦粉本
来の特性を活かして、違和感のない良好な食感および食
味を有する食品が得られることを見いだした。
【0015】すなわち、本発明は、薄力小麦粉、中力小
麦粉またはこれらの混合物からなる原料粉に対して、生
地形成前または生地形成時に水およびグルテンを添加し
て、混捏して生地を形成した後、この生地を水で洗滌し
て澱粉を生地から洗い流して澱粉含有乳濁液を形成さ
せ、該澱粉含有乳濁液から塊状で残留するグルテンを分
離回収し、それと共に該澱粉含有乳濁液から小麦澱粉を
分離回収することを特徴とする、グルテンおよび小麦澱
粉の分離回収方法である。
【0016】 そして、薄力小麦粉および/または中力
小麦粉を原料としてなる上記本発明の方法により得られ
るグルテンおよび小麦澱粉は、食品をはじめとして種々
の用途に有効に使用することができる
【0017】本発明では、薄力小麦粉および中力小麦粉
として、通常“薄力小麦粉”および“中力小麦粉”と称
されている小麦粉のいずれもが使用でき、特に制限され
ない。一般に、薄力小麦粉はその蛋白質含有量によって
一等粉(7.0%)、準一等粉7.5%)、二等粉
(8.5%)および三等粉(9.5%)等に分類されて
おり、また中力小麦粉はその蛋白質含有量によって一等
粉(8.0%)、準一等粉(8.5%)、二等粉(9.
0%)および三等粉(10.0%)等に分類されてい
る。したがって、本発明では、蛋白質含有量が上記した
7.0〜10.0%の範囲にある薄力小麦粉、中力小麦
粉またはそれらの混合小麦粉が、グルテンおよび小麦澱
粉を分離回収するための原料粉として好ましく用いられ
る。
【0018】上記したように、本発明では原料粉として
薄力小麦粉および中力小麦粉のそれぞれを単独で用いて
も、または薄力小麦粉と中力小麦粉とを混合して用いて
もよく、混合して用いる場合は両者の混合割合は特に制
限されず、任意の割合で混合すればよい。また、薄力小
麦粉および中力小麦粉の原料である小麦の産地や収穫時
期、製粉方法などは特に制限されず、いずれのものを用
いてもよい。国内産の小麦から得られる中力小麦粉また
は薄力小麦粉を使用する場合は、国内産小麦の有効利用
および多面的な利用を図ることができる。
【0019】薄力小麦粉、中力小麦粉またはそれらの混
合粉(以下これらを総称して「薄/中力小麦粉」とい
う)に添加するグルテンは、その物性が著しく低下して
いたり変性を受けていないものであればいずれでもよ
く、その製造方法、種類などは特に制限されず、例えば
強力小麦粉から得られたグルテン、または薄/中力小麦
粉から得られたグルテンのいずれもが使用できる。その
うちでも、薄/中力小麦粉から得られたグルテンを添加
すると、本発明の分離回収方法によって得られるグルテ
ン中における薄/中力小麦粉に由来するグルテンの割合
が一層高くなり、薄/中力小麦粉に由来するグルテンを
得るという本発明の目的に一層合致したものとなる。か
かる点で、本発明の分離回収方法により得られた薄/中
力小麦粉に由来するグルテンを、薄/中力小麦粉からグ
ルテンおよび小麦澱粉のそれぞれを分離回収する際の生
地添加用のグルテンとして用いるのが一層好ましい。
【0020】薄/中力小麦粉に添加するグルテンは、例
えば乾燥した粉末グルテン、ウエットグルテン、水に分
散させたグルテンなどのいずれでもよくその形態は特に
制限されない。また、グルテンの添加時期は、生地形成
前(薄/中力小麦粉に水を加える前)、生地形成時(薄
/中力小麦粉に水を添加するのと同時または水を添加し
た後の生地の混捏時)のいずれであってもよい。特に、
グルテンを生地中に均一に混合・分散させることができ
て粘性およびまとまりの点で斑のない均一な生地を得る
ためには、生地形成前に添加する場合は原料粉である薄
/中力小麦粉と同じような粉末グルテンを用いるのがよ
く、加水と同時に添加する場合は粉末グルテン、ウエッ
トグルテンまたは水に分散させたグルテンのいずれでも
よく、また加水後の生地の混捏時に添加する場合は生地
と同じようなウエットグルテンを用いるのが好ましい。
【0021】グルテンの添加量は、薄/中力小麦粉の種
類などに応じて適宜調節し得るが、一般に原料粉として
薄力小麦粉を用いる場合は、乾燥した薄力小麦粉の重量
に基づいて、乾物換算でグルテンの添加量を約4〜12
%、好ましくは5〜7%とし、また原料粉として中力小
麦粉を用いる場合は、乾燥した中力小麦粉の重量に基づ
いて、乾物換算でグルテンの添加量を約3〜10% 好
ましくは4〜6%とするのが好ましい。また、原料粉と
して薄力小麦粉と中力小麦粉の混合物を用いる場合は、
薄力小麦粉と中力小麦粉との混合割合に応じて、上記し
た薄力小麦粉および中力小麦粉の添加量に基づいて計算
を行ってその添加量を決めるのがよい。
【0022】原料粉として薄力小麦粉を用いる場合にグ
ルテンの添加量が4%未満であると、また中力小麦粉を
用いる場合にグルテンの添加量が3%未満であると、原
料粉に加水して混捏しても粘性およびまとまりに優れる
生地が得られず、澱粉を洗い出すための洗滌処理工程で
生地の千切れ、細片化、微細化などを生じて澱粉含有乳
濁液中にグルテンが多く分散含有されるようになり、小
麦澱粉とグルテンのそれぞれを効率よく高純度で分離回
収することができにくくなる。一方、原料粉として薄力
小麦粉を用いる場合にグルテンの添加量が12%を超え
ると、また中力小麦粉を用いる場合にグルテンの添加量
が10%を超えると、生地を形成する際の混捏操作が行
いにくくなり、しかも得られる生地が硬くなり過ぎて、
生地からの澱粉の洗い出しが円滑に行われにくくなる。
【0023】生地を形成する際の加水量は、一般に、薄
/中力小麦粉の重量に基づいて50〜80%とするのが
よく、60〜75%が好ましい。特に、原料粉として薄
力小麦粉を使用する場合は、薄力小麦粉の重量に基づい
て加水量を60〜70%とするのが好ましく、また中力
小麦粉を使用する場合は、中力小麦粉の重量に基づいて
加水量を65〜75%とするのが好ましい。加える水の
温度は特に制限されないが、一般に20〜25℃である
のが好ましい。
【0024】生地を形成する際の混捏方法、混捏装置、
混捏時間、混捏温度などは特に制限されず、小麦粉から
小麦澱粉およびグルテンを分離回収する従来法で使用さ
れている方法、装置、時間、温度などを本発明でも採用
できる。一般に、上記した加水量で約15〜30分間混
捏を行うのが好ましい。更に、生地の粘りやまとまりを
良好にするために、生地形成時にグルテンと共に、必要
に応じて消石灰などのpH調節剤、食塩などを適宜添加
してもよい。
【0025】上記によって通常ドウ(dough)やバッター
(batter)などと称されている生地が形成されるので、
この生地を水で洗滌して生地中の澱粉を洗い流して澱粉
含有乳濁液を調製して、塊状で残留するグルテンを澱粉
含有乳濁液から分離回収し、それと共に澱粉含有乳濁液
から小麦澱粉を分離回収する。かかるグルテンおよび小
麦澱粉の分離回収法としては、従来から多くの方法が知
られ、提案されており、本発明では従来既知のいずれの
方法で行ってもよく、生地の洗滌方式、洗滌条件、澱粉
含有乳濁液から澱粉を回収する方式、澱粉含有乳濁液中
に残留したグルテン塊を回収する方式などは特に制限さ
れない。
【0026】小麦粉生地を洗滌して小麦澱粉およびグル
テンを分離回収するための代表的な方法としては、Mart
in法と称されるMartin 社によって開発された方法、お
よび連続バッター法と称されるアメリカ農務省の北部地
域研究所(NRRL)で開発された方法を挙げることが
でき、これらの方法に関しては、例えば「総合食料工」
第174〜177頁(株式会社 恒星社厚生閣)(昭和
45年9月15日)などに記載されているが、本発明で
はこれらの方法のいずれで行っても、またはこれら以外
の方法で行ってもよい。
【0027】限定されるものではないが、Martin 法に
準じて薄/中力小麦粉から小麦澱粉およびグルテンを分
離回収する場合は、例えば以下のようにして行うことが
できる。 (1) 薄/中力小麦粉に、生地形成前または生地形成
時にグルテンを添加し、加水し、混捏機でよく捏ねて生
地を形成する。 (2) 上記(1)で形成した生地を、場合によってし
ばらく放置して小麦粉中に含まれる蛋白質を充分に水和
膨潤させた後、洗滌機に移して澱粉を洗い出す。洗滌機
として例えば底部にスクリューのあるものを使用する場
合は原料小麦粉に対して約5〜8倍の水を使って洗滌す
る。その結果、洗滌水中に澱粉粒子がその細胞膜の破片
やその他の成分と共に懸濁している粗澱粉含有乳濁液が
得られ、一方グルテンは洗滌残留物として塊状で残る。 (3) 上記(3)の洗滌処理により澱粉含有乳濁液中
に塊状で残留したグルテンを適当な方法で粗澱粉含有乳
濁液から分離して回収する。場合によっては、粗澱粉含
有乳濁液中に小塊状になったグルテンが含まれることが
あるので、その場合には篩などを使用してグルテンの小
塊を分離して前記で分離回収したグルテンと一緒にす
る。このようにして得られたグルテンは通常約65〜7
0%の水分を含んでおり、その用途や使用目的などに応
じて、例えば生グルテンとして凍結したり、または乾燥
して粉末グルテンにする。
【0028】(4) 一方、上記(2)で得られた粗澱
粉含有乳濁液中には、通常約5〜40μの澱粉粒子と他
の不純物が含まれているので粒径が40μ以上の大きい
不純物(赤粕、白粕など)を篩などを使用して除去す
る。また、澱粉粒子と同じような粒径を有する不純物は
比重差を利用する沈降槽、テーブル、遠心分離機などを
使用して除去して、精製澱粉含有乳濁液(通常固形分約
35〜38%)を得る。 (5) 上記(4)で得た精製澱粉含有乳濁液を遠心分
離機、濾過機などを使用して脱水して生ケーキを得て、
これを乾燥して小麦澱粉粉末を得る。
【0029】 上記によって、薄/中力小麦粉に由来す
るグルテンおよび小麦澱粉が得られる。薄/中力小麦粉
を原料としてなる本発明の方法により得られたグルテン
は、強力小麦粉から得られた従来市販のグルテンと同様
に、焼麸や生麸用の原料、グルタミン酸ソーダの製造原
料、水産練り製品用の添加剤、パン類や麺類などの食品
を製造する際の添加剤や原料成分として用いることがで
きる。特に、薄/中力小麦粉を主原料として使用しこれ
にグルテンを加えて麺類を製造する際に、薄/中力小麦
粉を原料としてなる本発明の方法により得られたグルテ
ンを使用すると、主原料である薄/中力小麦粉中に元々
含まれているグルテンと組成や物性が同じであるため、
違和感のない食感および食味に優れる麺類を得ることが
できる。また、薄/中力小麦粉を用い、これにグルテン
を加えてパン類を製造する際に、薄/中力小麦粉を原料
としてなる本発明の方法により得られたグルテンを使用
した場合にも、同様に食感や食味などに違和感のないパ
ン類を得ることができる。
【0030】 また、薄/中力小麦を原料としてなる本
発明の方法により得られた小麦澱粉も、強力小麦粉から
得られた従来市販の小麦澱粉と同様に、例えば繊維工業
での経糸糊、仕上げ糊、染色、捺染などに、また製麺用
の原料粉、水産練り製品用の添加剤、段ボールなどを製
造する際の接着剤などとして用いることができる。特
に、薄/中力小麦粉を主原料として使用しこれに小麦澱
粉を加えて麺類を製造する場合に、薄/中力小麦粉を原
料としてなる本発明の方法により得られた小麦澱粉を使
用すると、主原料である薄/中力小麦粉中に元々含まれ
ている小麦澱粉と組成や物性が同じであるので、食感や
食味に違和感のない良好な麺類を得ることができる。
【0031】以下に実施例などにより本発明について具
体的に説明するが、本発明はそれにより限定されない。
以下の例中、特に断らない限り、部は重量部を、%は重
量%を表す。
【0032】《実施例 1》 (1) 中力小麦粉(日清製粉株式会社製「特雀」;粗
蛋白質含有量9%)100部に、グルテン(長田産業株
式会社製「フメリットA」)5部を加え、約20℃の水
67部を加えて、約5分間よく混捏して生地を得た。 (2) 上記(1)で得た生地を室温下に約20分間熟
成させた後、洗滌機(水洗分離機)に移して、生地10
0部当たり温度約20℃の水900部を流して生地を約
60分間繰り返して揉んで洗って生地から澱粉を洗い出
した。その結果、生地中のグルテンは不溶固形物として
塊状で澱粉含有乳濁液中に残留するので、澱粉含有乳濁
液を32メッシュ篩で濾別して、グルテン(水分含量約
65%)45部を回収した。このグルテンを温度130
℃、圧力10torrの減圧下に乾燥して、粉末グルテン
(水分含量8%)17部を得た。原料として用いた中力
小麦粉に対する粉末グルテンの収率(生地形成時に添加
したグルテンを差し引いた収率)は12%であった。
【0033】(3) 上記(2)においてグルテンを分
離した後の澱粉含有乳濁液900部を300メッシュ振
動篩を使用して粗大な不純物を除去した後、ノズルセパ
レーターやデカンター等の遠心分離機を用いて比重差を
利用して微細不純物を除去して、精製澱粉含有乳濁液
(固形分約30%)を得た。 (4) 上記(3)で得た精製澱粉含有乳濁液を真空脱
水機を使用して脱水して生ケーキを得て、温度約55℃
で熱風乾燥機により乾燥して小麦澱粉粉末(水分含量1
3%)67部を得た。得られた小麦澱粉の原料として用
いた中力小麦粉に対する収率は67%であった。
【0034】《比較例 1》実施例1における(1)の
工程(生地形成工程)でグルテンを添加しなかった以外
は、実施例1と同様の処理を行って、グルテンおよび小
麦澱粉のそれぞれの分離回収を試みた。その結果、生地
の粘りおよびまとまりが充分でなく、生地を水で洗滌処
理して得られる澱粉含有乳濁液中にはグルテンが32メ
ッシュ篩を通過する微細な粒状で多数分散しており、グ
ルテンおよび小麦澱粉のそれぞれを分離して回収するこ
とができなかった。
【0035】《実施例 2》原料小麦粉として薄力小麦
粉(日清製粉株式会社製「フラワー」)を用いて、この
薄力小麦粉100部に対して、生地形成の加水前にグル
テン7部を添加した以外は実施例1と同様の処理を行っ
て、グルテンおよび小麦澱粉のそれぞれを分離回収し
た。その結果、粉末グルテン(水分含量8%)が得られ
た。原料として用いた薄力小麦粉に対する粉末グルテン
の収率(生地形成時に添加したグルテンを差し引いた後
の収率)は11%であり、粉末グルテンが高収率で得ら
れた。 また、グルテン塊を分離回収した後の澱粉含有乳濁液9
00部を実施例1の(3)および(4)と同様にして処
理して、小麦澱粉粉末(水分含量13%)69部を得
た。得られた小麦澱粉の原料として用いた中力小麦粉に
対する収率は69%であった。
【0036】《比較例 2》生地形成時にでグルテンを
添加しなかった以外は、実施例2と同様の処理を行っ
て、グルテンおよび小麦澱粉のそれぞれの分離回収を試
みた。その結果、生地の粘りおよびまとまりが充分でな
く、生地を水で洗滌処理して得られる澱粉含有乳濁液中
にはグルテンが32メッシュ篩を通過する微細な小片状
で多数分散しており、グルテンおよび小麦澱粉のそれぞ
れを分離して回収することができなかった。
【0037】《実施例 3》市販の中力小麦粉[日清製
粉(株)製「白椿」;水分含量14.5%)100部
に、上記の実施例1で得られた粉末グルテン2部を混合
した後、中力小麦粉とグルテンの合計重量に対して2%
の食塩を溶解した食塩水40部を加えて10分間混練し
てうどん生地をつくった(生地中の水分含量37.5
%)。このうどん生地を製麺ロールで成形し、生地表面
が乾かないようにして約1時間寝かせた後、約2.5m
m厚の麺帯にし、No.10の切刃を用いて切断して生
うどんを製造した。この生うどんを充分量の沸騰した茹
湯に入れて14分間茹でて、茹でうどんの食感および食
味を下記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパ
ネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったとこ
ろ、下記の表2に示すとおりであった。
【0038】《比較例 3》実施例1で得られた粉末グ
ルテンの代わりに、市販の粉末グルテン(グリコ栄養食
品株式会社製「AグルーSS」;強力小麦粉使用)を用
いた以外は実施例4と同様にして生うどんを製造し、同
様に茹でてその食感および食味を実施例1と同様にして
10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を
採ったところ、表2に示すとおりであった。
【0039】《比較例 4》グルテンを添加しなかった
以外は実施例4と同様にして生うどんを製造し、同様に
茹でてその食感および食味を実施例1と同様にして10
名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採っ
たところ、表2に示すとおりであった。
【0040】
【表1】 評 価 基 準 食 感 : 5:弾力性に富み、違和感が全くなく、非常に良好 4:少し弾力性があり、違和感がほとんどなく、良好 3:やや弾力性があり、違和感が少しあるが、ほぼ良好 2:少し弾力性に欠け、違和感がかなりあり、不良 1:弾力性に欠け、違和感が大きく、非常に不良 食 味 : 5:非常に好ましい風味で、旨味があり、違和感が全くなく、非常に良好 4:好ましい風味で、旨味がややあり、違和感がなく、良好 3:やや好ましい風味で、旨味が少しあり、違和感が少しある 2:やや風味に欠け、旨味があまりなく、違和感がかなりある 1:風味に欠け、旨味が全くなく、違和感が非常にある
【0041】
【表2】 中力小麦粉 グルテン 生麺の品質 配合量(部) 由 来 配合量(部) 食感(点) 食味(点) 実施例3 100 中力小麦粉 2 4.4 4.2 比較例3 100 強力小麦粉 2 2.5 3.2 比較例4 100 − − 3.6 3.0
【0042】上記表2の結果から、中力小麦粉から製造
される生麺の製造に際して、中力小麦粉から得られた実
施例1の粉末グルテンを配合した実施例3の場合は、強
力小麦粉から得られた市販の粉末グルテンを配合した比
較例3および粉末グルテンを配合しなかった比較例4に
比べて、違和感がなく、食感および食味に優れる生麺が
得られることがわかる。
【0043】
【発明の効果】 本発明の方法による場合は、従来グル
テンおよび小麦澱粉を得るための原料粉として適してお
らずグルテンおよび小麦澱粉を円滑に且つ高収率で得る
ことができないとされてきた薄/中力小麦粉を用いて、
グルテンおよび小麦澱粉のそれぞれを良好な操作性で、
円滑に且つ高収率で分離回収することができる。薄/中
力小麦粉を原料としてなる本発明の方法により得られる
グルテンおよび小麦澱粉は、強力小麦粉から得られる従
来市販のグルテンと同様に、種々の用途に有効に使用す
ることができ、特に薄/中力小麦粉を主原料として製造
される麺類、パン類およびその他食品に使用した場合に
は、主原料である薄/中力小麦粉中に元々含まれている
グルテンと組成や性質がほとんど同じであり、違和感の
ない良好な食感および食味などを有する食品を製造する
ことができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竹内 幸孝 大阪府大阪市北区西天満3−14−16 日 清製粉株式会社 大阪営業部内 (72)発明者 山崎 久明 東京都中央区日本橋小網町19−12 日清 製粉株式会社内 (56)参考文献 特開 昭54−64655(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23L 1/10 - 1/16 A23J 1/12 A23J 3/18

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 薄力小麦粉、中力小麦粉またはこれらの
    混合物からなる原料粉に対して、生地形成前または生地
    形成時に水およびグルテンを添加して、混捏して生地を
    形成した後、この生地を水で洗滌して澱粉を生地から洗
    い流して澱粉含有乳濁液を形成させ、該澱粉含有乳濁液
    から塊状で残留するグルテンを分離回収し、それと共に
    該澱粉含有乳濁液から小麦澱粉を分離回収することを特
    徴とする、グルテンおよび小麦澱粉の分離回収方法。
  2. 【請求項2】 原料粉が薄力小麦粉であり、グルテンの
    添加量が薄力小麦粉の重量に基づいて4〜12重量%で
    ある請求項1のグルテンおよび小麦澱粉の分離回収方
    法。
  3. 【請求項3】 原料粉が中力小麦粉であり、グルテンの
    添加量が中力小麦粉の重量に基づいて4〜12重量%で
    ある請求項1のグルテンおよび小麦澱粉の分離回収方
    法。
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ES2193890B1 (es) * 2002-04-26 2004-11-01 Pedro Barbarin Larripa Proceso para la obtencion de gluten.
NL1024760C2 (nl) * 2003-11-11 2005-05-12 Tno Inrichting en werkwijze voor het verwerken van meel en water tot beslag voor het daaruit winnen van zetmeel en/of eiwit, alsmede met deze inrichting en/of werkwijze geproduceerd beslag.

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