JP3360907B2 - 超重防食被覆鋼材 - Google Patents

超重防食被覆鋼材

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富夫 若松
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、苛酷な腐食環境である
海洋、港湾、河川、土壌中に設置される施設、構造物、
浚渫工事に使用される土木用鋼材に関し、さらに詳しく
は、長期耐久性を要求される超重防食被覆鋼材に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】市販の重防食鋼材には、鋼矢板、鋼管
(杭)、鋼管矢板、コルゲートパイプ等に約1〜2mm
の厚膜のポリエチレン樹脂あるいはポリウレタン樹脂塗
料を被覆したものがコストパフォーマンスが良好なため
に重用されている。これらの製品の耐久寿命は実績では
15年程度となっているが、約40年と推定されてい
る。今後、社会資本施設の増強・ストックが多くなり、
同時に労働人口の高齢化、劣悪環境職場の忌避傾向の増
大が促進される中でこれらの社会資本施設の維持管理が
重要となることを考慮すると、これらには50〜100
年の耐久寿命を持つ超重防食鋼材が要望されている。
【0003】従来の重防食鋼材は、有機被覆層の膜厚を
増加させることによって環境側から浸入する水、酸素、
塩分等の腐食因子が鋼材表面に拡散到達する速度を遅延
させて、鋼材の腐食を防止する技術を採用している。例
えば、図4に示すような、被膜層から構成されている。
すなわち、鋼材1の表面をクロメート2処理し、エポキ
シプライマー3層を介して接着性ポリエチレン4(0.
2〜0.4mm)を塗布し、この上から防食ポリエチレ
ン5層(1.6〜2mm)を塗布したものである。
【0004】最近では0.03〜1mm厚の耐食性金属
をマレイン酸変性ポリエチレン等によって接着被覆させ
て鋼材の腐食を防止する方法(特公平2−221513
号公報)が開示されている。これらの手段は、耐食性材
料が環境に直接触れるために、接着層が薄い場合や劣化
した場合、また端面においては被覆耐食性金属と防食す
べき鋼材間には異種金属接触腐食が発生し、鋼材の腐食
損傷を起こしたり、被覆金属板が剥離する傾向があると
いった問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の鋼材
被覆技術を改善し、鋼材腐食性物質を環境から完全に遮
断することにより、長期間にわたり耐久性を保持するこ
とを可能とする超重防食被覆鋼材を提供することを課題
とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は従来技術の問題
点を解決するもので、その技術手段は、ポリオレフィン
被覆層、接着性ポリオレフィン層、耐食性金属箔層、接
着性ポリオレフィン層、及びプライマー層を順次積層し
た防食被覆層を鋼材表面に接着してなることを特徴とす
る超重防食被覆鋼材である。また、ポリオレフィン被覆
層、接着性ポリオレフィン層、耐食性金属箔層及びプラ
イマー層を順次積層した防食被覆層を鋼材表面に接着し
てなることを特徴とする超重防食被覆鋼材である。さら
に、ポリウレタン層、耐食性金属箔層、及びプライマー
層を順次積層してなる防食被覆層を鋼材表面に接着して
なることを特徴とする超重防食被覆鋼材を提供する
【0007】耐食性金属箔はステンレス、チタン、銅及
びその合金、ニッケル及びその合金から選ばれた金属箔
を使用することができる。
【0008】
【作用】十分な厚膜を有する有機被覆層中に耐食性金属
箔を内包することによって環境からの腐食因子を完全に
遮断することができるので、従来の重防食よりも耐久性
が増大し、また金属箔を有機樹脂層でサンドイッチする
ので接着力はアップし、接着耐久性が強化され、異種金
属接触腐食が生じないので、従来技術に比較して長期耐
久性を保持することができる。
【0009】
【実施例】本実施例は、ポリオレフィン系被覆とポリウ
レタン被覆について行なったものである。 実施例 1 ポリオレフィン系被覆 ポリオレフィン系被覆の実施例について図1により各層
の構成を説明する。本発明の特徴は、図1に示すよう
に、変性ポリオレフィン6(接着層)層の間に耐食性金
属箔9(0.02〜1mm)を挿着することにある。す
なわち、ポリオレフィン6層は、2層に分離されること
になるが、下側のポリオレフィン層はなくてもよい。
【0010】耐食性金属箔9はステンレス、チタン、鋼
及びNiとそれら合金予備成形またはインライン成形し
たものを用いる。ポリオレフィン8(防食層)の種類は
低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチ
レン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDP
E)、超高分子量ポリエチレン(PE)、ポリプロピレ
ン(PP)等であり、膜厚は0.5〜3mmである。
【0011】変性ポリオレフィン6(接着層)は無水マ
レイン酸変性等で、膜厚は0.1〜1mmである。変性
ポリオレフィン6を使用しない場合、接着性は不飽和ジ
カルボン酸+エチレン・ビニールアセテート共重合体
(EVA)又はエチレン・エチルアクリレート共重合体
(EEA)により保持することができる。
【0012】金属箔9の接着性を向上させるために、ク
ロメート処理及びプライマー塗布の予備処理を行なって
もよい。 実施例 2 ポリウレタン被覆 ポリウレタン被覆の実施例について図2により各層の構
成を説明する。ポリウレタン7の層間に上記耐食性金属
箔9を挿着する。下側のポリウレタン層はなくてもよ
い。
【0013】耐食性金属箔9の接着性を向上させるため
に、クロメート2処理及びプライマー3塗布の予備処理
を行なう。ポリウレタン7被覆層の膜厚は0.5〜3m
mとする。 その他の実施例 ポリウレタン7被覆に代えて、タールエポキシ、膜厚エ
ポキシ、ポリエステル、アクリル等の通常の膜厚塗装を
使用することができる。
【0014】本発明は、上述のように、耐食性金属箔9
をポリオレフィン系或はポリウレタン系の厚膜有機被覆
層に内包することにより、耐食性金属箔9は環境からの
腐食因子から完全に遮断される。また耐食性金属箔9は
有機樹脂層でサンドイッチされるので、接着力は向上
し、接着耐久性が強化され異種金属接触が生じないの
で、単に金属板のみを接触させた、従来技術の特公平2
−221513号公報よりも長期耐久性は大幅に向上す
る。
【0015】次に、本発明の1実施例と比較例の試験結
果を表1に示す。なお、試験は、図3に示す試験片を用
い、陰極剥離試験(*1)、温塩水浸漬試験(*2)に
ついて実施したものであり、各試験の実施条件は次の通
りである。なお、試験片は厚さ3.2mmの鋼板に、厚
さ2mmのp−ジクロロベンゼン(PDB)を被覆し、
p−ジクロロベンゼンにより厚さ0.03〜0.3mm
のステンレス板(SUS 316L)をサンドイッチし
たものである。また、p−ジクロロベンゼンの両端部は
端面シールされている。なお、これらの試験結果と耐久
寿命との関係には相関があることが確認されている。
【0016】*1:陰極剥離試験条件 100×100mmの試験片の被覆層の中心に、初期孔
径5mmφを穿孔し、該穿孔を含むその周辺を65℃の
NaCl液中に浸漬するよう構成する。NaCl液と試
験片の鋼板との間を−1.5Vの飽和甘汞電極(SC
E)電位に設定し、浸漬は60日間継続する。試験後外
周端面からの剥離距離で評価した。
【0017】*2:温塩水浸漬試験条件 50×100mmの試験片を65℃のNaCl液中に1
00日間浸漬しておく。試験後被覆層の引張り強度保持
率で評価した。また、層構成の基本被覆条件は以下の通
りである。 クロメート処理:コスマー100(関西ペイント) 3
00mgクロム/m2 エポキシ:主剤 エピコート 828と、プライマー:
硬化剤を2:1に配合する。厚さ30μm。
【0018】変性ポリエチレン(PE) :無水マレイン酸変性線状低密度ポリエチレン(LLD
PE) ポリエチレン(PE) :線状低密度ポリエチレン(LLDPE) メルトインデックス(MI)0.6 密度 0.92
2 表1から明らかなように、本発明は比較例と比べ、各試
験項目に対し耐久性において優れていることが分かる。
なお、表1に示す、0mm、100%は剥離がないこと
を示している。これらの試験により本発明は耐久寿命が
50年以上保たれる結果が得られた。
【0019】
【表1】
【0020】
【発明の効果】本発明は長期耐久性において極めて優れ
た効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の断面の拡大説明図であ
る。
【図2】本発明の第2の実施例の断面の拡大説明図であ
る。
【図3】本発明の試験に使用した試験片の断面の説明図
である。
【図4】従来例の断面の拡大説明図である。
【符合の説明】
1 鋼材 2 クロメート 3 プライマー 4 接着性ポリエチレン 5 防食ポリエチレン 6 変性ポリオレフィン 7 ポリウレタン 8 ポリオレフィン 9 金属箔
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 若松 富夫 千葉市中央区川崎町1番地 川崎製鉄株 式会社 技術研究本部内 (72)発明者 村瀬 正次 千葉市中央区川崎町1番地 川崎製鉄株 式会社 技術研究本部内 (56)参考文献 特開 平2−20344(JP,A) 特開 平3−187134(JP,A) 実開 平1−14144(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) E02D 31/06 C23F 11/00 E02D 5/04

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリオレフィン被覆層、接着性ポリオレ
    フィン層、耐食性金属箔層、接着性ポリオレフィン層、
    及びプライマー層を順次積層した防食被覆層を鋼材表面
    に接してなることを特徴とする超重防食被覆鋼材。
  2. 【請求項2】 ポリオレフィン被覆層、接着性ポリオレ
    フィン層、耐食性金属箔層及びプライマー層を順次積層
    した防食被覆層を鋼材表面に接着してなることを特徴と
    する超重防食被覆鋼材。
  3. 【請求項3】 ポリウレタン層、耐食性金属箔層、及び
    プライマー層を順次積層してなる防食被覆層を鋼材表面
    に接着してなることを特徴とする超重防食被覆鋼材。
  4. 【請求項4】 前記耐食性金属箔層がステンレス、チタ
    ン、銅及びその合金、ニッケル及びその合金から選ばれ
    た金属箔である請求項1〜3のいずれかに記載の超重防
    食被覆鋼材。
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