JP2003147555A - 耐陰極剥離性に優れた塗料組成物及び海洋鋼構造物及びその防食方法 - Google Patents
耐陰極剥離性に優れた塗料組成物及び海洋鋼構造物及びその防食方法Info
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- JP2003147555A JP2003147555A JP2001339723A JP2001339723A JP2003147555A JP 2003147555 A JP2003147555 A JP 2003147555A JP 2001339723 A JP2001339723 A JP 2001339723A JP 2001339723 A JP2001339723 A JP 2001339723A JP 2003147555 A JP2003147555 A JP 2003147555A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】電気防食に起因する塗装の剥離の拡大を防止す
るとともに、それに伴う防食電流の増加を防止して維持
管理費用の低減を図ることが可能な塗料組成物及び海洋
鋼構造物、さらに海洋鋼構造物の防食方法を提供する。 【解決手段】前記塗料組成物は、マイナスの固定電荷を
持つ樹脂を含有するものである。また、前記塗料組成物
は、さらに、カチオンを捕捉するアニオンからなる化合
物を含んでもよい。前記海洋鋼構造物は、前記塗料組成
物を単層の塗膜として又は複数塗膜のプライマーとして
塗装したものである。前記海洋鋼構造物の防食方法は、
前記塗料組成物を単層の塗膜として又は複数塗膜のプラ
イマーとして塗装した海洋鋼構造物に電気防食を行うも
のである。
るとともに、それに伴う防食電流の増加を防止して維持
管理費用の低減を図ることが可能な塗料組成物及び海洋
鋼構造物、さらに海洋鋼構造物の防食方法を提供する。 【解決手段】前記塗料組成物は、マイナスの固定電荷を
持つ樹脂を含有するものである。また、前記塗料組成物
は、さらに、カチオンを捕捉するアニオンからなる化合
物を含んでもよい。前記海洋鋼構造物は、前記塗料組成
物を単層の塗膜として又は複数塗膜のプライマーとして
塗装したものである。前記海洋鋼構造物の防食方法は、
前記塗料組成物を単層の塗膜として又は複数塗膜のプラ
イマーとして塗装した海洋鋼構造物に電気防食を行うも
のである。
Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】本発明は、海洋鋼構造物の防
食に用いる耐陰極剥離性に優れた塗料組成物、及び防食
の施された海洋鋼構造物、さらに海洋鋼構造物の防食方
法に関する。
食に用いる耐陰極剥離性に優れた塗料組成物、及び防食
の施された海洋鋼構造物、さらに海洋鋼構造物の防食方
法に関する。
【０００２】
【従来の技術】炭素鋼、低合金鋼などにより製造される
構造物に対しては、一般にエポキシ系塗料（タールエポ
キシ、超厚膜エポキシ、無溶剤エポキシなど）による塗
装やウレタン系塗料（タールウレタンなど）による塗装
により防食が施されている。
構造物に対しては、一般にエポキシ系塗料（タールエポ
キシ、超厚膜エポキシ、無溶剤エポキシなど）による塗
装やウレタン系塗料（タールウレタンなど）による塗装
により防食が施されている。
【０００３】また、電気防食を行う方法として、アルミ
ニウム合金などの犠牲陽極を防食対象の鋼材が海水に触
れる部位に溶接等により電気的に接続し、犠牲陽極と鋼
材間の電位差により発生する電流を防食電流として鋼材
を防食状態に保つ流電陽極法、不溶性電極を海中に浸
し、外部電流を介して防食対象鋼材と電気的に接続し
て、鋼材が防食電位に保たれるように外部電源により強
制的に電流を流す外部電源法がある。
ニウム合金などの犠牲陽極を防食対象の鋼材が海水に触
れる部位に溶接等により電気的に接続し、犠牲陽極と鋼
材間の電位差により発生する電流を防食電流として鋼材
を防食状態に保つ流電陽極法、不溶性電極を海中に浸
し、外部電流を介して防食対象鋼材と電気的に接続し
て、鋼材が防食電位に保たれるように外部電源により強
制的に電流を流す外部電源法がある。
【０００４】海洋鋼構造物に対しては、前記塗装による
防食或は電気防食、またはそれらの組み合わせにより防
食される。
防食或は電気防食、またはそれらの組み合わせにより防
食される。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】しかし、海洋構造物は
流木等の衝突など物理的要因、また経年的な塗装の劣化
等により塗装の剥離が生じる。このとき電気防食を使用
していないと塗装の剥離部分から腐食が進行し、構造物
に強度的な問題が生じる。そのため海洋構造物において
は電気防食は不可欠となるが、電気防食に伴う化学反応
により生じる水酸化物イオンにより塗装の剥離した鋼材
表面近傍はアルカリ性となり、このアルカリ性が原因と
なりさらなる塗装の剥離を生じるという問題があった。
また、防食電流は塗装が剥離した面積が大きくなる程大
電流が必要となり、大型鋼構造物になるほど経年的に防
食に必要な電流が大きくなるといった問題があった。
流木等の衝突など物理的要因、また経年的な塗装の劣化
等により塗装の剥離が生じる。このとき電気防食を使用
していないと塗装の剥離部分から腐食が進行し、構造物
に強度的な問題が生じる。そのため海洋構造物において
は電気防食は不可欠となるが、電気防食に伴う化学反応
により生じる水酸化物イオンにより塗装の剥離した鋼材
表面近傍はアルカリ性となり、このアルカリ性が原因と
なりさらなる塗装の剥離を生じるという問題があった。
また、防食電流は塗装が剥離した面積が大きくなる程大
電流が必要となり、大型鋼構造物になるほど経年的に防
食に必要な電流が大きくなるといった問題があった。
【０００６】本発明はこのような問題を解決するために
なされたもので、電気防食に起因する塗装の剥離の拡大
を防止するとともに、それに伴う防食電流の増加を防止
して維持管理費用の低減を図ることが可能な塗料組成物
及び海洋鋼構造物、さらに海洋鋼構造物の防食方法の提
供を目的とする。
なされたもので、電気防食に起因する塗装の剥離の拡大
を防止するとともに、それに伴う防食電流の増加を防止
して維持管理費用の低減を図ることが可能な塗料組成物
及び海洋鋼構造物、さらに海洋鋼構造物の防食方法の提
供を目的とする。
【０００７】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明は以下のような構成を有する。 ［１］マイナスの固定電荷を持つ樹脂を含有することを
特徴とする耐陰極剥離性に優れた塗料組成物。 ［２］上記［１］において、さらに、カチオンを捕捉す
るアニオンからなる化合物を含むことを特徴とする耐陰
極剥離性に優れた塗料組成物。 ［３］上記［２］において、カチオンを捕捉するアニオ
ンからなる化合物の塗料組成物中での含有量が塗料組成
物全体に対して１〜１０ｗｔ％であることを特徴とする
耐陰極剥離性に優れた塗料組成物。 ［４］上記［１］乃至［３］のいずれかにおいて、マイ
ナスの固定電荷を持つ樹脂の塗料組成物中での含有量が
塗料組成物全体に対して３０〜９０ｗｔ％であることを
特徴とする耐陰極剥離性に優れた塗料組成物。 ［５］請求項１乃至請求４のいずれかに記載の塗料組成
物を単層の塗膜として又は複数塗膜のプライマーとして
塗装した海洋鋼構造物。 ［６］請求項１乃至請求項４のいずれかに記載の塗料組
成物を単層の塗膜として又は複数塗膜のプライマーとし
て塗装した海洋鋼構造物に電気防食を行うことを特徴と
する海洋鋼構造物の防食方法。
に本発明は以下のような構成を有する。 ［１］マイナスの固定電荷を持つ樹脂を含有することを
特徴とする耐陰極剥離性に優れた塗料組成物。 ［２］上記［１］において、さらに、カチオンを捕捉す
るアニオンからなる化合物を含むことを特徴とする耐陰
極剥離性に優れた塗料組成物。 ［３］上記［２］において、カチオンを捕捉するアニオ
ンからなる化合物の塗料組成物中での含有量が塗料組成
物全体に対して１〜１０ｗｔ％であることを特徴とする
耐陰極剥離性に優れた塗料組成物。 ［４］上記［１］乃至［３］のいずれかにおいて、マイ
ナスの固定電荷を持つ樹脂の塗料組成物中での含有量が
塗料組成物全体に対して３０〜９０ｗｔ％であることを
特徴とする耐陰極剥離性に優れた塗料組成物。 ［５］請求項１乃至請求４のいずれかに記載の塗料組成
物を単層の塗膜として又は複数塗膜のプライマーとして
塗装した海洋鋼構造物。 ［６］請求項１乃至請求項４のいずれかに記載の塗料組
成物を単層の塗膜として又は複数塗膜のプライマーとし
て塗装した海洋鋼構造物に電気防食を行うことを特徴と
する海洋鋼構造物の防食方法。
【０００８】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を説明
する。
する。
【０００９】本発明に係る耐陰極剥離性に優れた塗料組
成物は、マイナスの固定電荷を持つ樹脂を含有するもの
である。前記塗料組成物中にバインダーとして含有され
るマイナスの固定電荷を持つ樹脂としては、一部官能基
としてマイナスの固定電荷を有し、プラスの電荷を有す
る物質を捕捉するもの、例えばＨ+、Ｎａ+、Ｍｇ2+、Ｃ
ａ2+、ＮＨ4 +などに対して捕捉機能を示すカルボキシル
基、アクリル基、アルキッド基、エポキシエステル基を
含む樹脂、或いはイオン交換樹脂などを用いることがで
きる。
成物は、マイナスの固定電荷を持つ樹脂を含有するもの
である。前記塗料組成物中にバインダーとして含有され
るマイナスの固定電荷を持つ樹脂としては、一部官能基
としてマイナスの固定電荷を有し、プラスの電荷を有す
る物質を捕捉するもの、例えばＨ+、Ｎａ+、Ｍｇ2+、Ｃ
ａ2+、ＮＨ4 +などに対して捕捉機能を示すカルボキシル
基、アクリル基、アルキッド基、エポキシエステル基を
含む樹脂、或いはイオン交換樹脂などを用いることがで
きる。
【００１０】ここで、前記マイナスの固定電荷を持つ樹
脂の塗料組成物中での含有量としては、塗料組成物全体
に対して３０〜９０ｗｔ％の範囲であることが好まし
い。含有量が３０ｗｔ％より少ないとプラスの電荷を有
する物質の捕捉機能が十分ではなく、塗膜としてもバイ
ンダー（基質）の比率が低いと塗膜の遮蔽性が不十分で
あり、９０ｗｔ％を超えると他の顔料等の添加量を十分
に確保することができず防食塗膜としての機能が十分に
発揮されない場合があるからである。
脂の塗料組成物中での含有量としては、塗料組成物全体
に対して３０〜９０ｗｔ％の範囲であることが好まし
い。含有量が３０ｗｔ％より少ないとプラスの電荷を有
する物質の捕捉機能が十分ではなく、塗膜としてもバイ
ンダー（基質）の比率が低いと塗膜の遮蔽性が不十分で
あり、９０ｗｔ％を超えると他の顔料等の添加量を十分
に確保することができず防食塗膜としての機能が十分に
発揮されない場合があるからである。
【００１１】さらに、前記塗料組成物はカチオンを捕捉
するアニオンからなる化合物を含むことが好ましい。前
記カチオンを捕捉するアニオンからなる化合物は、塗料
組成物中に顔料または添加物として加えられ、イオン化
してカチオンを捕捉沈着しうるアニオンとなる物質、例
えばＨ+、Ｎａ+、Ｍｇ2+、Ｃａ2+、ＮＨ4 +などに対して
捕捉機能を示すリン酸、モリブンデン酸、ポリスルフォ
ンフミン酸、タンニン酸、イオン交換樹脂等を用いるこ
とができる。これにより、プラスの電荷を有する物質の
捕捉機能がより効果的に発揮されることとなる。
するアニオンからなる化合物を含むことが好ましい。前
記カチオンを捕捉するアニオンからなる化合物は、塗料
組成物中に顔料または添加物として加えられ、イオン化
してカチオンを捕捉沈着しうるアニオンとなる物質、例
えばＨ+、Ｎａ+、Ｍｇ2+、Ｃａ2+、ＮＨ4 +などに対して
捕捉機能を示すリン酸、モリブンデン酸、ポリスルフォ
ンフミン酸、タンニン酸、イオン交換樹脂等を用いるこ
とができる。これにより、プラスの電荷を有する物質の
捕捉機能がより効果的に発揮されることとなる。
【００１２】ここで、前記カチオンを捕捉するアニオン
からなる化合物の塗料組成物中での含有量としては、塗
料組成物全体に対して１〜１０ｗｔ％の範囲であること
が好ましい。含有量が１ｗｔ％より少ないとプラスの電
荷を有する物質の捕捉機能が十分ではなく、１０ｗｔ％
を超えると塗膜中のバインダー成分の比率が低くなって
健全な塗膜形成に支障が生じる場合があるからである。
からなる化合物の塗料組成物中での含有量としては、塗
料組成物全体に対して１〜１０ｗｔ％の範囲であること
が好ましい。含有量が１ｗｔ％より少ないとプラスの電
荷を有する物質の捕捉機能が十分ではなく、１０ｗｔ％
を超えると塗膜中のバインダー成分の比率が低くなって
健全な塗膜形成に支障が生じる場合があるからである。
【００１３】なお、本実施形態に係る塗料組成物は、使
用時には粘度の調整等のために溶剤を追加して用いても
良い。この場合、前記マイナスの固定電荷を持つ樹脂及
びカチオンを捕捉するアニオンからなる化合物の塗料組
成物全体に対する含有量には後から加える粘度調整用の
溶剤の量は考慮しないものとする。
用時には粘度の調整等のために溶剤を追加して用いても
良い。この場合、前記マイナスの固定電荷を持つ樹脂及
びカチオンを捕捉するアニオンからなる化合物の塗料組
成物全体に対する含有量には後から加える粘度調整用の
溶剤の量は考慮しないものとする。
【００１４】また、上述の塗料組成物は、特に電気防食
を施す海洋鋼構造物の耐陰極剥離性に優れた塗料として
用いることが好ましい。この場合、前記塗料組成物は、
海洋鋼構造物の単層の塗膜として又は複数塗膜のプライ
マーとして用いることができる。
を施す海洋鋼構造物の耐陰極剥離性に優れた塗料として
用いることが好ましい。この場合、前記塗料組成物は、
海洋鋼構造物の単層の塗膜として又は複数塗膜のプライ
マーとして用いることができる。
【００１５】海洋鋼構造物における陰極剥離は、一般に
塗装・塗覆装を用いた防食下で電気防食を併用した際に
塗装欠陥部において生じる。従来技術で説明したように
電気防食には外部電源法と流電陽極法による方法が知ら
れており、外部電源或いは犠牲陽極（アノード）から防
食電流を鋼材に流入して鋼材を電気化学的に陰極側（カ
ソード）とすることで、鋼材が陽極（アノード）として
溶解、腐食しないようにするものである。
塗装・塗覆装を用いた防食下で電気防食を併用した際に
塗装欠陥部において生じる。従来技術で説明したように
電気防食には外部電源法と流電陽極法による方法が知ら
れており、外部電源或いは犠牲陽極（アノード）から防
食電流を鋼材に流入して鋼材を電気化学的に陰極側（カ
ソード）とすることで、鋼材が陽極（アノード）として
溶解、腐食しないようにするものである。
【００１６】例えば、電気防食として犠牲陽極にＺｎ陽
極を用いた流電陽極法を用いた場合、Ｚｎ陽極表面と鋼
材表面では、以下のような反応が起こっている。
極を用いた流電陽極法を用いた場合、Ｚｎ陽極表面と鋼
材表面では、以下のような反応が起こっている。
【００１７】アノード Ｚｎ→Ｚｎ2+ ＋２ｅ-
カソード ２Ｈ2Ｏ＋２ｅ-→ ２ＯＨ- ＋ Ｈ2
これによりカソードとなっている鋼材表面近傍では、表
面に水酸化物イオンと水素ガスが生成する。この水酸化
物イオンにより鋼材表面、つまり塗装・塗覆装欠陥部で
鋼材露出部近傍はアルカリ性になり、塗装の鋼材に対す
る付着力が低下して塗膜剥離が生じやすくなる。
面に水酸化物イオンと水素ガスが生成する。この水酸化
物イオンにより鋼材表面、つまり塗装・塗覆装欠陥部で
鋼材露出部近傍はアルカリ性になり、塗装の鋼材に対す
る付着力が低下して塗膜剥離が生じやすくなる。
【００１８】そこで、本発明においては、塗料組成物中
にマイナスの固定電荷を持つ樹脂、又はマイナスの固定
電荷を持つ樹脂及びカチオンを捕捉するアニオンからな
る化合物を含有させプラスの電荷を有する物質を捕捉す
ることによって、塗膜中から水素（Ｈ+）イオンが放出
され、鋼材表面の水酸化物イオンと水素イオンで中和反
応が起こり、塗膜近傍は中性に保たれる。この結果、ア
ルカリ性に起因する塗膜の陰極剥離を防止することがで
き、経時変化による塗膜の剥離面積の拡大が防止され電
気防食費用の増大を防ぐことが可能となる。前記塗料組
成物による塗膜を単層として用いる場合には、塗膜の厚
さは５０〜２００μｍ程度になるような塗布量とするこ
とが好ましい。
にマイナスの固定電荷を持つ樹脂、又はマイナスの固定
電荷を持つ樹脂及びカチオンを捕捉するアニオンからな
る化合物を含有させプラスの電荷を有する物質を捕捉す
ることによって、塗膜中から水素（Ｈ+）イオンが放出
され、鋼材表面の水酸化物イオンと水素イオンで中和反
応が起こり、塗膜近傍は中性に保たれる。この結果、ア
ルカリ性に起因する塗膜の陰極剥離を防止することがで
き、経時変化による塗膜の剥離面積の拡大が防止され電
気防食費用の増大を防ぐことが可能となる。前記塗料組
成物による塗膜を単層として用いる場合には、塗膜の厚
さは５０〜２００μｍ程度になるような塗布量とするこ
とが好ましい。
【００１９】なお、プライマーとして前記塗料組成物を
適用する場合、例えば夕ールエポキシ等の比較的安価な
塗料と併用することにより、塗料組成物に対するイオン
種侵入速度が穏やかになり、水酸化物イオンの中和反応
が十分に行われ、鋼材表面における耐陰極剥離機能がよ
り効果的に発揮される。また、塗料の重ね塗りにより流
木等による物理的因子に対する強度の向上も図ることが
できる。前記塗料組成物による塗膜をプライマーとして
用いる場合には、例えば前記塗料組成物による塗膜の厚
さを５０μｍ程度となるような塗布量とし、さらにその
上に夕ールエポキシ等の塗料を１５０〜２５０μｍ程度
塗布することが好ましい。
適用する場合、例えば夕ールエポキシ等の比較的安価な
塗料と併用することにより、塗料組成物に対するイオン
種侵入速度が穏やかになり、水酸化物イオンの中和反応
が十分に行われ、鋼材表面における耐陰極剥離機能がよ
り効果的に発揮される。また、塗料の重ね塗りにより流
木等による物理的因子に対する強度の向上も図ることが
できる。前記塗料組成物による塗膜をプライマーとして
用いる場合には、例えば前記塗料組成物による塗膜の厚
さを５０μｍ程度となるような塗布量とし、さらにその
上に夕ールエポキシ等の塗料を１５０〜２５０μｍ程度
塗布することが好ましい。
【００２０】図１は、本発明に係る実施形態の一例を示
したもので、海洋鋼構造物における鋼管杭に前記塗料組
成物を適用した場合の一例を示した図である。
したもので、海洋鋼構造物における鋼管杭に前記塗料組
成物を適用した場合の一例を示した図である。
【００２１】海洋鋼構造物は通常その腐食性の違いか
ら、海上大気部、飛沫干満帯部、海中没水部の３部位に
分類される。ここで、前記海洋鋼構造物には図１で示す
鋼管杭の他に鋼矢板、海上浮体、海上橋梁、海上施設等
が含まれる。
ら、海上大気部、飛沫干満帯部、海中没水部の３部位に
分類される。ここで、前記海洋鋼構造物には図１で示す
鋼管杭の他に鋼矢板、海上浮体、海上橋梁、海上施設等
が含まれる。
【００２２】このとき、海上大気部には、超厚膜ウレタ
ン塗料や超厚膜エポキシ塗料が使用できる。また飛沫干
満帯部では、前記３部位でもっとも腐食性が高いためチ
タンやステンレス等の金属クラッド鋼やそれら金属によ
り機械的または化学的に被覆された構造をとることが望
ましい。なお、飛沫干満帯部においては前記金属クラッ
ド鋼以外にも超厚膜ウレタン塗料、超厚膜エポキシ塗料
の使用も可能である。海中没水部では本発明に係る塗料
組成物による塗装を施すことが好ましい。この場合、タ
ールエポキシ塗料などを前記塗料組成物による塗装の上
塗りとして使用することによりさらなる耐久性の向上が
得られるのでより好ましい。
ン塗料や超厚膜エポキシ塗料が使用できる。また飛沫干
満帯部では、前記３部位でもっとも腐食性が高いためチ
タンやステンレス等の金属クラッド鋼やそれら金属によ
り機械的または化学的に被覆された構造をとることが望
ましい。なお、飛沫干満帯部においては前記金属クラッ
ド鋼以外にも超厚膜ウレタン塗料、超厚膜エポキシ塗料
の使用も可能である。海中没水部では本発明に係る塗料
組成物による塗装を施すことが好ましい。この場合、タ
ールエポキシ塗料などを前記塗料組成物による塗装の上
塗りとして使用することによりさらなる耐久性の向上が
得られるのでより好ましい。
【００２３】なお、本発明に係る塗料組成物が適用され
る海洋鋼構造物における鋼材としては、一般炭素鋼が使
用可能であるが、その他低合金鋼として、Ｃｒを含有す
るいわゆる耐海水鋼と呼ばれるものが使用可能である。
またニッケルを含有する低合金鋼も使用可能であり、使
用可能な鋼種に特に制限は無い。
る海洋鋼構造物における鋼材としては、一般炭素鋼が使
用可能であるが、その他低合金鋼として、Ｃｒを含有す
るいわゆる耐海水鋼と呼ばれるものが使用可能である。
またニッケルを含有する低合金鋼も使用可能であり、使
用可能な鋼種に特に制限は無い。
【００２４】また、本発明に係る塗料組成物が適用され
る海洋鋼構造物に用いられる電気防食方法としては、一
般的に用いられる流電陽極法、外部電源法が使用可能で
ある。例えば流電陽極法の犠牲陽極として一般に使用さ
れるマグネシウム合金を犠牲陽極として用いた場合、本
発明に係る塗料組成物を塗膜として適用することによ
り、マグネシウム合金の消費量を大幅に減らすことが可
能となる。
る海洋鋼構造物に用いられる電気防食方法としては、一
般的に用いられる流電陽極法、外部電源法が使用可能で
ある。例えば流電陽極法の犠牲陽極として一般に使用さ
れるマグネシウム合金を犠牲陽極として用いた場合、本
発明に係る塗料組成物を塗膜として適用することによ
り、マグネシウム合金の消費量を大幅に減らすことが可
能となる。
【００２５】
【実施例】本発明に係る塗料組成物による塗膜の耐陰極
剥離性を確認するため、以下の試験を行い評価した。
剥離性を確認するため、以下の試験を行い評価した。
【００２６】本発明に係る塗料組成物として、以下の２
種類（塗料Ａ及び塗料Ｂ）の塗料を用いて、本発明の実
施例として以下に示す試験片１及び試験片２を作成し
た。また、比較例として以下に示す試験片３を作成し
た。 ［塗料Ａ］ マイナスの固定電荷を持つ樹脂：変性エポキシ樹脂 ４
０ｗｔ％ その他：ベンガラ ２５ｗｔ％，鉄黒 ３２ｗｔ％，ナ
フテン酸鉛 ０．１ｗｔ％，ナフテン酸コバルト ０．
１ｗｔ％，残 溶剤 ［塗料Ｂ］ マイナスの固定電荷を持つ樹脂：アクリル樹脂 ５０ｗ
ｔ％ カチオンを捕捉するアニオンからなる化合物：陽イオン
交換樹脂 ５ｗｔ％，Ｈ3ＰＯ4 １ｗｔ％ その他：クロム酸亜鉛 ５ｗｔ％，ＭｎＯ2 ３ｗｔ
％，ベンガラ ３０ｗｔ％，ＮｉＯ １ｗｔ％，残 溶
剤 ［試験片１（実施例１〜４）］ブラストにより下地処理
した一般炭素鋼及び耐海水鋼（商品名「ＮＫマリン」日本
鋼管（株）製）に前記塗料Ａ及び塗料Ｂを１５０μｍ塗
布した後、２４時間常温で乾燥させた。 ［試験片２（実施例５〜８）］ブラストにより下地処理
した一般炭素鋼及び耐海水鋼（商品名「ＮＫマリン」日本
鋼管（株）製）に前記塗料Ａ及び塗料Ｂを５０μｍ塗布
した後、２４時間常温で乾燥させ、さらにタールエポキ
シ塗料を１００μｍ塗布し２４時間常温で乾燥させた。 ［試験片３（比較例１〜２）］ブラストにより下地処理
した一般炭素鋼及び耐海水鋼（商品名「ＮＫマリン」日本
鋼管（株）製）にタールエポキシ塗料を１５０μｍ塗布
し２４時間常温で乾燥させた。
種類（塗料Ａ及び塗料Ｂ）の塗料を用いて、本発明の実
施例として以下に示す試験片１及び試験片２を作成し
た。また、比較例として以下に示す試験片３を作成し
た。 ［塗料Ａ］ マイナスの固定電荷を持つ樹脂：変性エポキシ樹脂 ４
０ｗｔ％ その他：ベンガラ ２５ｗｔ％，鉄黒 ３２ｗｔ％，ナ
フテン酸鉛 ０．１ｗｔ％，ナフテン酸コバルト ０．
１ｗｔ％，残 溶剤 ［塗料Ｂ］ マイナスの固定電荷を持つ樹脂：アクリル樹脂 ５０ｗ
ｔ％ カチオンを捕捉するアニオンからなる化合物：陽イオン
交換樹脂 ５ｗｔ％，Ｈ3ＰＯ4 １ｗｔ％ その他：クロム酸亜鉛 ５ｗｔ％，ＭｎＯ2 ３ｗｔ
％，ベンガラ ３０ｗｔ％，ＮｉＯ １ｗｔ％，残 溶
剤 ［試験片１（実施例１〜４）］ブラストにより下地処理
した一般炭素鋼及び耐海水鋼（商品名「ＮＫマリン」日本
鋼管（株）製）に前記塗料Ａ及び塗料Ｂを１５０μｍ塗
布した後、２４時間常温で乾燥させた。 ［試験片２（実施例５〜８）］ブラストにより下地処理
した一般炭素鋼及び耐海水鋼（商品名「ＮＫマリン」日本
鋼管（株）製）に前記塗料Ａ及び塗料Ｂを５０μｍ塗布
した後、２４時間常温で乾燥させ、さらにタールエポキ
シ塗料を１００μｍ塗布し２４時間常温で乾燥させた。 ［試験片３（比較例１〜２）］ブラストにより下地処理
した一般炭素鋼及び耐海水鋼（商品名「ＮＫマリン」日本
鋼管（株）製）にタールエポキシ塗料を１５０μｍ塗布
し２４時間常温で乾燥させた。
【００２７】図２は塗膜の耐陰極剥離性を確認するため
に用いた試験装置の概略構成を示した図である。試験
は、作成した試験片１に５０ｍｍの長さで３０°のクロ
スカット２をＪＩＳ Ｋ−５４００に準拠した方法で施
した。カット部に図２に示すセル３を設置し、人工海水
４を用いてＡｇ／ＡｇＣｌ電極を照合電極５として、電
極６の電位をＡｇ／ＡｇＣｌ電極に対し−１．２Ｖに保
持し、３ヶ月間試験を実施した。試験はＡＳＴＭ Ｇ−
８に準拠した方法でおこなった。試験終了後、ＪＩＳ
Ｋ−５４００に準拠し、クロスカット部にセロハン粘着
テープを貼り付け、充分に密着したのを確認した後一気
にはがし、それに伴って剥離した面積の大きさを測定し
評価した。評価結果を表１に示す。
に用いた試験装置の概略構成を示した図である。試験
は、作成した試験片１に５０ｍｍの長さで３０°のクロ
スカット２をＪＩＳ Ｋ−５４００に準拠した方法で施
した。カット部に図２に示すセル３を設置し、人工海水
４を用いてＡｇ／ＡｇＣｌ電極を照合電極５として、電
極６の電位をＡｇ／ＡｇＣｌ電極に対し−１．２Ｖに保
持し、３ヶ月間試験を実施した。試験はＡＳＴＭ Ｇ−
８に準拠した方法でおこなった。試験終了後、ＪＩＳ
Ｋ−５４００に準拠し、クロスカット部にセロハン粘着
テープを貼り付け、充分に密着したのを確認した後一気
にはがし、それに伴って剥離した面積の大きさを測定し
評価した。評価結果を表１に示す。
【００２８】
【表１】
【００２９】本発明に係る実施例１〜８では従来技術に
係る比較例１〜２に比べて、全てにおいて剥離面積が小
さく、本発明の効果が確認された。
係る比較例１〜２に比べて、全てにおいて剥離面積が小
さく、本発明の効果が確認された。
【００３０】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、電
気防食に起因する塗装の剥離の拡大を防止するととも
に、それに伴う防食電流の増加を防止して維持管理費用
の低減を図ることが可能な耐陰極剥離性に優れた塗料組
成物及び海洋鋼構造物、さらに海洋鋼構造物の防食方法
が提供される。
気防食に起因する塗装の剥離の拡大を防止するととも
に、それに伴う防食電流の増加を防止して維持管理費用
の低減を図ることが可能な耐陰極剥離性に優れた塗料組
成物及び海洋鋼構造物、さらに海洋鋼構造物の防食方法
が提供される。
【図１】本発明に係る実施形態の一例を示したもので、
海洋鋼構造物における鋼管杭に前記塗料組成物を適用し
た場合の一例を示した図である。
海洋鋼構造物における鋼管杭に前記塗料組成物を適用し
た場合の一例を示した図である。
【図２】塗膜の耐陰極剥離性を確認するために用いた試
験装置の概略構成を示した図である。
験装置の概略構成を示した図である。
１ 試験片
２ クロスカット
３ セル
４ 人工海水
５ 照合電極
６ 電極
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 ＦＩ テーマコート゛(参考）
Ｃ２３Ｆ 11/18 Ｃ２３Ｆ 11/18
13/00 13/00 Ｃ
Ｆ
Ｅ０２Ｄ 31/06 Ｅ０２Ｄ 31/06 Ｂ
Ｆターム(参考） 4D075 AE07 CA33 DA23 DA37 DB02
DC06 EB09 EB22 EB33 EB35
EB36 EB38 EB56 EC01 EC07
EC54
4J038 EA011 GA01 GA02 GA06
GA16 HA236 HA416 NA03
PB09 PC02
4K060 AA02 AA03 BA02 BA13 BA39
CA02 DA07 EA01 EA19 EB01
FA03
4K062 AA01 BA08 BA10 BA14 BB01
BB03 BB21 BC11 BC12 BC26
CA05 DA10 FA01 GA01
Claims (6)
- 【請求項１】マイナスの固定電荷を持つ樹脂を含有する
ことを特徴とする耐陰極剥離性に優れた塗料組成物。 - 【請求項２】さらに、カチオンを捕捉するアニオンから
なる化合物を含むことを特徴とする請求項１に記載の耐
陰極剥離性に優れた塗料組成物。 - 【請求項３】カチオンを捕捉するアニオンからなる化合
物の塗料組成物中での含有量が塗料組成物全体に対して
１〜１０ｗｔ％であることを特徴とする請求項２に記載
の耐陰極剥離性に優れた塗料組成物。 - 【請求項４】マイナスの固定電荷を持つ樹脂の塗料組成
物中での含有量が塗料組成物全体に対して３０〜９０ｗ
ｔ％であることを特徴とする請求項１乃至請求項３のい
ずれかに記載の耐陰極剥離性に優れた塗料組成物。 - 【請求項５】請求項１乃至請求４のいずれかに記載の塗
料組成物を単層の塗膜として又は複数塗膜のプライマー
として塗装した海洋鋼構造物。 - 【請求項６】請求項１乃至請求項４のいずれかに記載の
塗料組成物を単層の塗膜として又は複数塗膜のプライマ
ーとして塗装した海洋鋼構造物に電気防食を行うことを
特徴とする海洋鋼構造物の防食方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2001339723A JP2003147555A (ja) | 2001-11-05 | 2001-11-05 | 耐陰極剥離性に優れた塗料組成物及び海洋鋼構造物及びその防食方法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2001339723A JP2003147555A (ja) | 2001-11-05 | 2001-11-05 | 耐陰極剥離性に優れた塗料組成物及び海洋鋼構造物及びその防食方法 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2003147555A true JP2003147555A (ja) | 2003-05-21 |
Family
ID=19154032
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP2001339723A Pending JP2003147555A (ja) | 2001-11-05 | 2001-11-05 | 耐陰極剥離性に優れた塗料組成物及び海洋鋼構造物及びその防食方法 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2003147555A (ja) |
Cited By (6)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2006218699A (ja) * | 2005-02-09 | 2006-08-24 | Kansai Paint Co Ltd | 防食被覆構造 |
| JP2008508429A (ja) * | 2004-08-03 | 2008-03-21 | ヒェメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング | 腐蝕抑制被覆での金属表面の保護法 |
| CN106868514A (zh) * | 2016-12-31 | 2017-06-20 | 马鞍山市川金属科技有限公司 | 一种提升汽车发动机盖支撑杆防腐性能的处理方法 |
| CN106868487A (zh) * | 2016-12-31 | 2017-06-20 | 马鞍山市川金属科技有限公司 | 一种耐腐蚀汽车蓄电池支撑 |
| CN106868489A (zh) * | 2016-12-31 | 2017-06-20 | 马鞍山市川金属科技有限公司 | 一种防脱漆的汽车轮毂的表面处理方法 |
| CN113685424A (zh) * | 2021-10-27 | 2021-11-23 | 光之星工业科技(江苏)有限公司 | 一种自剥离式船舶用射钉紧固系统保护装置 |
-
2001
- 2001-11-05 JP JP2001339723A patent/JP2003147555A/ja active Pending
Cited By (7)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2008508429A (ja) * | 2004-08-03 | 2008-03-21 | ヒェメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング | 腐蝕抑制被覆での金属表面の保護法 |
| JP2006218699A (ja) * | 2005-02-09 | 2006-08-24 | Kansai Paint Co Ltd | 防食被覆構造 |
| CN106868514A (zh) * | 2016-12-31 | 2017-06-20 | 马鞍山市川金属科技有限公司 | 一种提升汽车发动机盖支撑杆防腐性能的处理方法 |
| CN106868487A (zh) * | 2016-12-31 | 2017-06-20 | 马鞍山市川金属科技有限公司 | 一种耐腐蚀汽车蓄电池支撑 |
| CN106868489A (zh) * | 2016-12-31 | 2017-06-20 | 马鞍山市川金属科技有限公司 | 一种防脱漆的汽车轮毂的表面处理方法 |
| CN113685424A (zh) * | 2021-10-27 | 2021-11-23 | 光之星工业科技(江苏)有限公司 | 一种自剥离式船舶用射钉紧固系统保护装置 |
| CN113685424B (zh) * | 2021-10-27 | 2021-12-17 | 光之星工业科技(江苏)有限公司 | 一种自剥离式船舶用射钉紧固系统保护装置 |
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