JP3358343B2 - 親水化膜とその製造方法 - Google Patents

親水化膜とその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、疎水性多孔質膜に、ポ
リビニルアセタールジエチルアミノアセテートと添加成
分との混合物を付着保持させることによる親水化膜に関
する。
【0002】
【従来の技術】ポリオレフィンに代表される疎水性多孔
質膜は、化学的安定性が高いことなどの利点を有し、水
または水溶液の分離精製、処理等の分野や医療分野で利
用されている。しかし、そのままでは水との親和性が乏
しいので、水または水溶液を処理する用途に用いる場合
には、予め親水化する必要がある。疎水性多孔質膜の親
水化処理のための方法としては、例えば、アルコール、
ケトン等の有機溶剤によって、疎水性多孔質膜の外表
面、微細孔内表面を湿潤処理した後、有機溶剤を水で置
換する方法がある。また、水可溶性親水性高分子や界面
活性剤等の親水化剤を疎水性多孔質膜表面に保持させる
ことによる親水化方法もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、有機溶
剤による親水化方法は、疎水性多孔質膜を常に湿潤状態
に保持する必要があり、その維持管理が煩雑となってい
る。また、水可溶性親水性高分子による親水化方法は微
細孔表面に保持させた親水化剤が水に溶けだし、そのよ
うな状態の多孔質膜は一旦乾燥すると、親水性を失って
しまうので、このような用途では好ましくない。界面活
性剤による親水化方法も水への溶出が懸念される他、雑
菌による資化を受けやすいといった問題がある。本発明
はこれらの問題を解決することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らはこれらの問
題点を改良する方法として、親水性部分を有する高分子
であって、かつ膜成分樹脂に対して親和性があり、疎水
性多孔質膜に保持させた際の被処理水中への溶出が生じ
にくい化合物を、親水性−疎水性のバランスを考慮して
選定し、多孔質膜微細孔表面上に付着保持させる方法を
鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0005】本発明は、片面から他の面に連通している
微細孔を少なくとも一部に有する熱可塑性樹脂からなる
膜において、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセ
テートと、その他の一種類以上の添加成分との混合物を
該微細孔を有する膜の少なくとも一部に付着保持させて
親水性を付与したことを特徴とする親水化膜に関する。
また、該熱可塑性樹脂が疎水性熱可塑性樹脂のポリエチ
レン、ポリプロピレン、ポリフロロエチレン、ポリアク
リロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスル
ホン、ポリアミド及びポリイミドから選ばれた少なくと
も1種の物質または2種以上の共重合体または2種以上
の混合物であり、また、である親水化膜の製法に関す
る。本発明はポリビニルアセタールジエチルアミノアセ
テートの単独コーティングで通水性能が十分に得られな
かった場合に有効な手段となる。
【0006】本発明における疎水性多孔質膜としては、
中空糸膜、平膜、管状膜等の任意の形態を用いることが
できる。疎水性多孔質膜の素材は、ポリエチレン等前記
記載の単量体または共重合体である。本発明で用いるポ
リビニルアセタールジエチルアミノアセテートは、下記
一般式で示され、
【0007】
【化1】
【0008】式中、R=CH3 であり、窒素含有量が1
〜4重量%、平均分子量が10,000〜75,000
のものが好ましい。
【0009】本発明に使用する添加成分は、例えば、シ
ョ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソル
ビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン
脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステ
ル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロ
ピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン
脂肪族アルコール、及びポリオキシプロピレンポリオキ
シエチレンブロックポリマー等の非イオン性界面活性
剤、あるいは、ポリアミド、ポリアクリル酸、エチルセ
ルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコー
ル、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ビニルピロ
リドン−酢酸ビニル共重合体、マレイン酸樹脂等の親水
性高分子が挙げられる。
【0010】本発明の親水化膜の製造方法は、ポリビニ
ルアセタールジエチルアミノアセテートと添加成分をア
ルコール系、ケトン系、芳香族系等の溶媒の単独または
混合溶媒、あるいはその含水溶媒、好ましくは、メチル
アルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコー
ルまたはアセトンの1種または2種以上の混合物、ある
いはその含水物に溶解し、浸漬液を調製する。浸漬液の
濃度は、ビニルアセタール系共重合体と添加成分を合計
して1〜5wt/vol%が好ましい。次いで、疎水性
多孔質膜を浸漬し、膜の貫通微細孔内にも十分溶液を行
き渡らせた後、乾燥して溶媒を除去する。乾燥手段は、
溶媒の種類により風乾、減圧乾燥、加熱乾燥など通常の
方法を適宜用いることができる。また、ポリビニルアセ
タールジエチルアミノアセテートと添加成分についての
溶液をそれぞれ別々に調製し、1つの溶液に浸漬するご
とに疎水性多孔質膜を乾燥し、次々に浸漬処理を行う多
段浸漬処理を行ってもよい。溶媒種、及び浸漬の順序は
適宜選んでよい。膜上の親水化剤の量を示す担持率は次
式であらわされ、本発明における親水化剤の担持率は5
〜40重量%が好ましい。 担持率(重量%)=親水化剤量(g)/疎水糸重量
(g)×100
【0011】
【実施例】以下に実施例及び比較例によって本発明を更
に詳細に説明する。
【0012】実施例1 ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート〔商品
名:AEA三共、三共(株)製〕1重量部とビニルピロ
リドン−酢酸ビニル共重合体〔商品名:VA−64、B
ASF(株)製〕1重量部をエタノール100容量部に
溶解し浸漬液とし、その中へポリプロピレン多孔質中空
糸膜〔宇部興産(株)製、平均孔径0.3μm,空孔率
70%〕を30秒間浸漬した。その後、風乾により溶剤
の除去を行い、担持率20%の親水化膜を得た。この親
水化処理した中空糸膜を100本束ねて末端をウレタン
樹脂で固め、有効面積100cm2 の膜モジュールを作
成した。この膜モジュールに水圧1kg/cm2 で5リ
ットルの水を濾過したところ、透水量は52cc/m2
・minであり、優れた透水性を示した。また、水圧1
kg/cm2 で5リットルの水を濾過した後、完全に乾
燥させた後も透水性の低下はみられなかった。
【0013】比較例1 ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート〔商品
名:AEA三共、三共(株)製〕1重量部をエタノール
100容量部に溶解した浸漬液を用いた以外は実施例1
と同様の操作をし、膜モジュールの性能を評価した結
果、40cc/m 2 ・minの透水量を得た。
【0014】実施例2 4重量部のポリビニルピロリドンK30〔BASF
(株)製〕をエタノール100容量部に溶解したものを
第1浸漬液とし、その中へ実施例1で用いたのと同じポ
リプロピレン中空糸膜を30秒間浸漬した。その後、5
分間風乾し、80℃の熱風を5分間当てた後、ポリビニ
ルアセタールジエチルアミノアセテート〔商品名:AE
A三共、三共(株)製〕1重量部をアセトンに溶解した
第2浸漬液中へ30秒間浸漬した。その後、風乾し、実
施例1と同様の膜モジュールによる透水性能評価の結
果、50cc/m2 ・minの透水量を得た。
【0015】比較例2 ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート〔商品
名:AEA三共、三共(株)製〕1重量部をアセトン1
00容量部に溶解した浸漬液を用いた以外は実施例1と
同様の操作をし、膜モジュールの性能を評価した結果、
20cc/m2・minの透水量を得た。
【0016】比較例3 4重量部のポリビニルピロリドンK30〔BASF
(株)製〕をエタノール100容量部に溶解した浸漬液
を用いた以外は実施例1と同様の操作をし、膜モジュー
ルの性能を評価したところ、全く透水性がみられなかっ
た。
【0017】
【発明の効果】本発明の親水化ポリオレフィン多孔質膜
は濾過後に多孔質膜が乾燥されても透水性能の低下が認
められず、耐久性のある親水性が付与された多孔質膜で
ある。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭48−36080(JP,A) 特開 昭54−117380(JP,A) 特開 昭62−23403(JP,A) 特開 昭62−201939(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01D 61/00 - 71/82 510 C02F 1/44

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 片面から他の面に連通している微細孔を
    少なくとも一部に有する熱可塑性樹脂からなる膜におい
    て、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート
    と、その他の1種類以上の添加成分との混合物を該微細
    孔を有する膜の少なくとも一部に付着保持させて親水性
    を付与したことを特徴とする親水化膜。
  2. 【請求項2】 添加成分がショ糖脂肪酸エステル、グリ
    セリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポ
    リオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレ
    ングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール
    脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エス
    テル、ポリオキシエチレン脂肪族アルコール、及びポリ
    オキシプロピレンポリオキシエチレンブロックポリマー
    等の非イオン性界面活性剤、あるいは、ポリアミド、ポ
    リアクリル酸、エチルセルロース、ポリビニルピロリド
    ン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコー
    ル共重合体、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体及
    びマレイン酸樹脂よりなる群から選ばれた一種以上であ
    る請求項1記載の親水化膜。
  3. 【請求項3】 熱可塑性樹脂が疎水性樹脂のポリエチレ
    ン、ポリプロピレン、ポリフロロエチレン、ポリアクリ
    ロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホ
    ン、ポリアミド及びポリイミドから選ばれた少なくとも
    1種の物質または2種以上の共重合体または2種以上の
    混合物であることを特徴とする請求項1記載の親水化
    膜。
  4. 【請求項4】 ポリビニルアセタールジエチルアミノア
    セテートとその他の1種類以上の添加成分をアルコール
    系、ケトン系、芳香族系溶媒、またはそれらの混合溶
    媒、あるいはその含水溶媒に溶解したものを浸漬液と
    し、片面から他の面に連通している微細孔を少なくとも
    一部に有する熱可塑性樹脂からなる膜を浸漬し、微細孔
    の少なくとも一部に該ポリビニルアセタールジエチルア
    ミノアセテートと添加成分を付着保持させることを特徴
    とする親水化膜の製造方法。
  5. 【請求項5】 ポリビニルアセタールジエチルアミノア
    セテートをアルコール系、ケトン系、芳香族系溶媒に溶
    解したものを第1浸漬液として、片面から他の面に連通
    している微細孔を少なくとも一部に有する熱可塑性樹脂
    からなる膜を浸漬し、引き続いて、あるいは乾燥後、そ
    の他の添加成分をアルコール系、ケトン系、芳香族系溶
    媒、またはそれらの混合溶媒、あるいはその含水溶媒に
    溶解した第2浸漬液に浸漬し、微細孔の少なくとも一部
    に該ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートと
    添加成分を付着保持させることを特徴とする親水化膜の
    製造方法。
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