JP3255385B2 - ポリスルホン系中空糸膜およびその製造方法 - Google Patents

ポリスルホン系中空糸膜およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はポリスルホン系中空糸膜
およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、分離操作において選択透過性を有
する膜を用いる技術の進展はめざましく、各種用途で実
用化されている。特に、膜の形状が中空糸膜状である場
合には、平膜やチューブラー等の形状である場合と比較
して占有体積当たりの膜面積を圧倒的に多く取れるため
有利である。
【0003】中空糸膜を用いて液体の濾過を行う場合、
濾過処理を継続するにつれて膜表面にスケール、SS成
分等の濾滓が付着し、濾過速度が低下してくる。かかる
濾過速度の低下を防ぎ、長時間安定に濾過を行うため
に、一定時間おきに膜を透過した透過液を原液側に逆流
させて膜表面に付着した濾滓を剥離させ、濾過速度を回
復させるという透過液逆洗、または気体を透過液側から
原液側へと膜を透過させて上記と同様に膜表面に付着し
た濾滓を剥離させ、濾過速度を回復させるという気体逆
洗が行われている。
【0004】上記の透過液逆洗を行うためには、透過液
を逆流させるためのポンプ(以下これを逆洗ポンプとい
う)や透過液を貯溜しておくタンク(以下これをストッ
クタンクという)を必要とする。一方、気体逆洗を行う
場合には、透過液逆洗を行う場合に比較して以下の点で
有利である。 膜を透過した透過液が逆洗時に消費されることがない
ので、濾過効率がよい。 中空糸膜表面からの気体の噴出およびこれに伴う中空
糸膜の振動の相乗効果により膜表面に付着したスケール
やSS成分の剥離効果が大きくなり、逆洗効率が高い。 逆洗ポンプやストックタンクが不要であり、設備に要
するコストが低くなる。 しかしながら、気体逆洗を行うためには、中空糸膜の気
体透過性が良好であることが必要であり、全ての中空糸
膜が気体逆洗できるわけではない。従って、濾過に使用
する中空糸膜に応じて、上記の透過液逆洗または気体逆
洗を適宜選択して採用しているのが現状である。
【0005】一方、膜の素材としては、従来よりセルロ
ース系ポリマー、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポ
リイミド系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリビ
ニルアルコール系ポリマー、フッ素系ポリマー等の各種
の高分子素材が使用されている。これらの中でもポリス
ルホン系ポリマーは、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性、
耐酸化剤性等に優れた膜素材として知られている。
【0006】本発明者らは、気体逆洗が可能なポリスル
ホン系中空糸膜として、外表面に平均孔径0.1〜5μ
の微孔を開孔率10〜70%の割合で有し、内表面およ
び膜内部が微細多孔質構造であり、かつ透水率が200
0l/m↑2 ・hr・kg/cm↑2 以上を示し、ポリ
スチレン系ラテックス(粒径3800オングストロー
ム)の阻止率が90%以上であり、かつ通気圧が0.5
〜5kg/cm↑2 を示すポリスルホン系中空糸膜を提
案した(特開昭58−91822号公報参照)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】一般にポリスルホン系
中空糸膜は、疎水性の素材から構成されているので、膜
を乾燥させると透水性が著しく低下する、また、蛋白等
の吸着性が大きく汚染されやすい等の欠点を有してい
る。特に、膜を一旦完全に乾燥すると膜の透水性を回復
させるには、膜を単に水に浸漬しただけでは不十分であ
り、該膜をエタノール等の水と混合し得る溶媒、または
界面活性剤の水溶液に一旦浸漬して膜壁内の微細孔に水
を十分に満たすという操作が必要となる。従って、ポリ
スルホン系中空糸膜において気体逆洗を行うと、該膜が
乾燥状態におかれるため、透水性の低下が懸念される。
【0008】特開昭58−91822号公報に記載され
たポリスルホン系中空糸膜は、気体逆洗を行うことがで
きるものの、中空糸膜の透水性の低下が起こらないよう
にするためには、処理液中に中空糸膜を浸漬したままで
気体逆洗を行うか、あるいは密閉容器中、相対湿度が9
0%以上の雰囲気下、10分以内等の比較的短時間、か
つ過度の量の気体(例えば、2,000Nl/m↑2 ・
hr以上)を流すという限定された条件下で気体逆洗を
行うことが必要となる。また、従来のポリスルホン系中
空糸膜と同様、蛋白等の吸着性が大きく汚染されやすい
という欠点を有している。
【0009】本発明は、上記の間題点に鑑みてなされた
ものであって、特別な条件を設けずとも、中空糸膜の透
水性の低下を起こすことなく気体逆洗を行うことが可能
であり、しかも耐汚染性に優れたポリスルホン系中空糸
膜およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、上記目
的の一つは、親水性高分子を1〜10重量%含有するポ
リスルホン系中空糸膜であって、通気圧が0.3〜5k
g/cm↑2 であることを特徴とするポリスルホン系中
空糸膜を提供することによって達成される。また、上記
目的の他の一つは、ポリスルホン、親水性高分子、両者
の共通溶媒、および該共通溶媒に不溶である微粉体から
なり、該微粉体が均一に分散した紡糸原液を2重環状ノ
ズルから押し出して、乾湿式紡糸法または湿式紡糸法に
よって中空糸膜を形成する工程と、紡糸後の中空糸膜
を、ポリスルホンを溶解せず上記微粉体を溶解する抽出
溶剤に浸漬して上記微粉体を抽出除去する工程とを有す
ることを特徴とするポリスルホン系中空糸膜の製造方法
を提供することによって達成される。
【0011】本発明でいうポリスルホンとは、次の一般
式(I)または(II)を繰り返しユニットとする重合
体をいうが、アルキル系のものも使用可能である。
【0012】
【化1】
【0013】
【化2】
【0014】また、本発明において使用される親水性高
分子は、ポリスルホンと相溶性があり、かつ親水性を有
する高分子であり、例えば、ポリビニルアルコール、エ
チレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・酢酸ビ
ニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンオキサイ
ド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、またはこ
れらの変性ポリマーなどが挙げられるが、中でもポリビ
ニルアルコールおよびエチレン・ビニルアルコール共重
合体が、得られる膜の耐汚染性が優れており、しかも後
述する架橋構造化が容易であるので好ましい。なお、必
要に応じて2種類以上の親水性高分子を同時に使用して
もよい。
【0015】本発明のポリスルホン系中空糸膜中の親水
性高分子の含有量は1〜20重量%であることが好まし
く、3〜10重量%であることがより好ましい。親水性
高分子の含有量が20重量%を越えると耐熱性、耐薬品
性等のポリスルホンの優れた特性が損なわれる可能性が
あり好ましくない。一方、親水性高分子の含有量が1重
量%未満であれば、中空糸膜に十分な親水性を付与する
ことが困難である。
【0016】親水性高分子は、分子内および/または分
子間で架橋した状態で中空糸膜中に存在させることが好
ましい。特に親水性高分子がポリビニルアルコール等の
水溶性高分子である場合には、かかる架橋構造化により
水に対して不溶性となるので、中空糸膜の使用時に膜中
の親水性高分子が該膜から徐々に溶出して膜の親水性が
損なわれることが防止される。
【0017】親水性高分子を架橋構造化する方法として
は、例えばアルデヒド、エポキシド等のいわゆる化学的
架橋剤を使用する方法、熱処理により架橋させる方法、
γ線等の放射線を照射して架橋させる方法などの公知の
方法を挙げることができるが、親水性高分子の種類に応
じて適宜選択すればよい。
【0018】なお、親水性高分子が架橋構造化している
か否かは、本発明のポリスルホン系中空糸膜を、例えば
ジメチルホルムアミド等のポリスルホンおよび親水性高
分子を溶解する溶媒にて処理し、架橋構造化した親水性
高分子が未溶解物として残存するかどうかを観察するこ
とによって確認できる。
【0019】本発明のポリスルホン系中空糸膜は、0.
3〜5kg/cm↑2 の通気圧を有している。本発明で
いう通気圧とは、気体逆洗時の気体透過速度の目安とな
るものであって、ポリスルホン系中空糸膜を1%ラウリ
ル硫酸ナトリウム水溶液に25℃にて24時間浸漬を行
なうか、または75%エタノール水溶液に25℃にて1
時間浸漬を行なった後、25℃にて60分以上流水洗し
て、該中空糸膜を膜壁および膜内部の細孔に水が十分満
たされたいわゆる水に完全に濡れた状態とし、次いで該
中空糸膜を水に浸漬したままで中空糸膜の内側を空気で
加圧してバブリングさせた時、400Nl/m↑2 ・h
rの空気透過速度を得るのに必要な空気圧力のことをい
う。中空糸膜の通気圧が0.3kg/cm↑2 未満であ
れば、該中空糸膜は膜内部に大きなボイドを有すること
が多く、膜強度が十分ではない。一方、中空糸膜の通気
圧が5kg/cm↑2 を越えると、気体逆洗時に気体の
圧力を高くする必要があり、中空糸膜や濾過装置に負担
がかかり実用的ではない。通気圧が1〜4kg/cm↑
2 の範囲にあればより好ましく、2〜3kg/cm↑2
の範囲にあれば、膜の強度、通気圧、膜寿命などのバラ
ンスの点で最も好ましい。
【0020】本発明のポリスルホン系中空糸膜は、少な
くとも一方の表面に平均孔径0.1〜10μの微孔を開
口率10〜70%の割合で有している。本発明でいう微
孔の平均孔径とは下記の式(1)によって定義されるも
のである。
【0021】
【数1】
【0022】上記式中、D(ave) は平均孔径を意味し、
D↓1 は1番目の微孔の実測径を意味し、D↓n はn番
目の微孔の実測径を意味する。なお、D↓1 ,D↓n の
実測径は微孔が円形に近い場合はその直径を示し、微孔
が円形でない場合にはその微孔と同一面積の円の直径を
示す。
【0023】上記微孔の平均孔径は通気圧と密接な関係
があり、微孔の平均孔径が0.1μ未満であると、通気
圧が高くなりすぎるため好ましくない。一方、微孔の平
均孔径が10μを越えると膜の強度が弱くなる傾向があ
るとともに、大きな濾滓が膜内部にまで侵入してくるこ
とになり、濾過速度の低下が早いばかりでなく、逆洗に
よって膜の再生が十分にできない傾向にあり、好ましく
ない。
【0024】なお、本発明の場合0.05μ以下の微細
孔は平均孔径の計算には含まれていない。ただし、0.
05μ以下の微細孔が本発明の目的、効果を損なわない
程度に存在していてもよい。また、膜表面の微孔は均一
孔径であることが好ましいが、特に均一である必要はな
く、不均一であってもよい。
【0025】また、本発明でいう開口率とは、膜表面に
開口している微孔の全孔面積を、該微孔が存在する側の
膜の表面積で除し、百分率として示したものである。開
口率が10%未満であると膜の透水率が低いので好まし
くない。また、開口率が70%を越えると表面強度が小
さくなり、取扱い時に膜が損傷しやすいので好ましくな
い。開口率が20〜50%の範囲にあると、膜の透過性
能と機械的性能のバランスの点でより好ましい。
【0026】本発明のポリスルホン系中空糸膜は、上記
微孔が存在する側と反対側の表面に平均孔径0.1〜1
0μの微孔を開口率10〜70%の割合で有しているこ
とが好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではな
く、10μ以上の孔を有していてもよい。
【0027】本発明のポリスルホン系中空糸膜は、膜内
部が微細多孔質構造となっている。ここでいう微細多孔
質構造とは、網目状構造、ハニカム構造、微細間隙構造
などであり、膜の内表面および外表面を支持する機能を
有するとともに、阻止率、透水率、通気圧等を決定する
機能をも有している。また、膜内部にはフィンガーライ
ク状構造あるいはマクロボイド構造があってもよい。な
お、膜内部には外表面と同じ程度の微孔が存在するのが
よく、この孔径はより均一であることが好ましいが、特
に均一である必要はなく不均一であってもよい。
【0028】本発明のポリスルホン系中空糸膜は、膜表
面および膜内部が上述の構造をしていることから、3,
000l/m↑2 ・hr・kg/cm↑2 以上の透水率
を有しており、十分に高い透過性能を発揮する。
【0029】本発明のポリスルホン系中空糸膜は、分画
粒子径が0.2〜2μの範囲にある。分画粒子径が0.
2μ未満であれば、通気圧が高くなりすぎので好ましく
ない。また、分画粒子径が2μを越えると、膜強度の低
下の可能性があるので好ましくない。
【0030】本発明でいう分画粒子径とは、中空糸膜に
よる阻止率(R)が90%である粒子の粒子径(S)の
ことをいい、異なる粒子径を有する少なくとも2種類の
粒子の阻止率を測定し、その測定値をもとにして下記の
式(2)においてRが90となるSの値を求め、これを
分画粒子径とする。
【0031】
【数2】
【0032】上記式中、aおよびmは中空糸膜により定
まる定数であって、上記の測定値をもとにして算出され
る。
【0033】また、本発明のポリスルホン系中空糸膜は
内径が0.2〜3mmであり、外径が0.4〜5mmで
ある。
【0034】次に、本発明のポリスルホン系中空糸膜の
製造方法について説明する。
【0035】本発明のポリスルホン系中空糸膜は、ポリ
スルホン、親水性高分子、両者の共通溶媒、および該共
通溶媒に不溶である平均粒径0.01〜5μの微粉体の
4成分からなり、該微粉体が均一に分散した紡糸原液を
乾湿式紡糸法または湿式紡糸法によって製膜することに
よって製造される。
【0036】本発明でいう共通溶媒とは、ポリスルホン
に対して、0〜120℃の範囲の温度で10g(ポリス
ルホン)/100cc(溶媒)以上の溶解能力を有し、
かつ親水性高分子に対して0〜120℃の範囲の温度で
1g(親水性高分子)/100cc(溶媒)以上の溶解
能力を有するものをいう。かかる共通溶媒としては、例
えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチ
ルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ビニルピ
ロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホランなどを挙
げることができ、使用する親水性高分子に応じて選宜選
択すればよい。
【0037】また、上記共通溶媒に不溶である微粉体と
しては、例えば酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウ
ム等の金属酸化物、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、
リン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム
等の無機化合物などを例示することができる。なかで
も、粉体粒径が小さく、かつ各種の粒径のものが市販さ
れており、紡糸原液中に分散させ易い点で酸化ケイ素の
微粉体(シリカパウダー)いわゆるホワイトカーボンが
最良である。なお、本発明でいう「不溶」とは、紡糸原
液の溶解温度において、その溶解度が0.1g(微粉
体)/100cc(溶媒)以下であることをいう。
【0038】上記微粉体は、ポリスルホン系中空糸膜に
微孔を形成させる目的で添加される。本発明における微
粉体は、その平均粒径が0.01〜5μである必要があ
る。微粉体の平均粒径が0.01μ未満であれば、小さ
すぎて所望の通気性や膜構造を得ることができず、また
微粉体の平均粒径が5μを越えると、大きすぎてボイド
の大きい不均質な膜しか得ることができない。なお、微
粉体の平均粒径が0.1〜3μの範囲にあれば、得られ
る膜構造の均質性と通気性の点で優れているので好まし
い。
【0039】紡糸原液中のポリスルホンの濃度は、中空
糸膜として成形できる範囲の濃度とする必要があり、通
常10〜40重量%、好ましくは15〜25重量%の範
囲に設定される。紡糸原液中のポリスルホンの濃度が1
0重量%未満であれば、得られる中空糸膜の強度が十分
ではなく、実際の使用に当たり何らかの支持体を必要と
するので好ましくない。一方、紡糸原液中のポリスルホ
ンの濃度が40重量%を越えると紡糸原液の粘度が高く
なりすぎて中空糸膜として成形することが困難となるの
で好ましくない。
【0040】親水性高分子は、ポリスルホンに対して1
〜100重量%、好ましくは5〜30重量%となるよう
に添加される。なお、親水性高分子の添加量は上記の範
囲で適宜選択すればよいが、親水性高分子としてポリビ
ニルアルコールのような水溶性の高分子を使用する場合
には、製膜時における凝固や洗浄工程で該親水性高分子
の一部が成形された中空糸膜から抽出されるので、紡糸
原液中に多めに添加しておくことが好ましい。また、親
水性高分子の添加量は、該親水性高分子の分子量に応じ
ても適宜調節される。
【0041】また、上記微粉体は、ポリスルホンに対し
て15〜400重量%、好ましくは30〜100重量%
となるように添加される。なお、これらの微粉体の添加
量を調節することにより、得られるポリスルホン系中空
糸膜の通気性や孔径を制御することができる。
【0042】本発明における紡糸原液の調製法として
は、上記共通溶媒に微粉体を添加混合した後撹拌し、微
粉体の分散液としてからポリスルホンおよび親水性高分
子を溶解する微粉体前添加法、微粉体、ポリスルホンお
よび親水性高分子を同時に上記共通溶媒に添加、撹拌す
る同時添加法、さらにポリスルホンおよび親水性高分子
を上記共通溶媒に溶解した後に微粉体を添加混合し、次
いで撹拌する後添加法のいずれでもよいが、前添加法が
微粉体の分散性の点で好ましい。
【0043】微粉体を紡糸原液中に均一に分散させる方
法としては、撹拌機で撹拌するだけでもよいが、微粉体
の分散性を向上させるためには、高速撹拌、ホモミキサ
ー、超音波分散、パイプラインアジター、スタチックミ
キサーなどのより高度な混合分散手段を用いることが好
ましい。
【0044】このようにして調製された紡糸原液は、驚
くべきことに、ポリスルホン、親水性高分子および共通
溶媒の3成分が相分離を起こして中空糸膜として製膜で
きないような組成で紡糸原液中に存在する場合であって
も、上記微粉体が紡糸原液中に分散していることによっ
て、紡糸原液の相分離が抑制されて均一溶液の状態が保
たれるので、中空糸膜として製膜することが可能とな
り、しかも、透水性および膜表面の開口率がともに高
く、かつ通気性、分画性、透水性および膜の親水性の点
でバランスのとれたポリスルホン系中空糸膜を製造する
ことができる。従って、本発明のポリスルホン系中空糸
膜の製造方法にあっては、例えばポリビニルアルコ−
ル、エチレン・ビニルアルコ−ル共重合体等、ポリスル
ホンとの相溶性が悪く、従来では紡糸原液に添加するこ
とが困難とされていた親水性高分子をも使用することが
可能である。
【0045】上記のようにして調製された紡糸原液は、
通常脱泡したのち、2重環構造のノズルより注入液とと
もに吐出され、次いで凝固液に浸漬されて、中空糸膜と
して製膜される。製膜に際しては、ノズルより吐出され
た紡糸原液を一旦一定長の空気中(以下これをドライゾ
ーンと略称する)に通し、しかる後に凝固液中に導入す
るいわゆる乾湿式紡糸法、あるいはノズルより吐出され
た紡糸原液を直接凝固液中に導入するいわゆる湿式紡糸
法のいずれを採用してもよいが、乾湿式紡糸法であれば
中空糸膜の外表面構造の制御が容易であり、また透水性
の高い中空糸膜を製造することが可能であるのでより好
適である。
【0046】乾湿式紡糸法では、ドライゾーンの長さ、
温度および湿度により得られる中空糸膜の外表面構造が
決定される。ドライゾーンの長さを長くするか、あるい
はドライゾ−ンの温度または湿度を高くすると中空糸膜
の外表面に形成される微孔の孔径は一般に大きくなる傾
向がある。ドライゾーンの長さは、たとえ0.1cmで
あっても、ドライゾーンの長さが0cmの湿式紡糸法と
は、得られる中空糸膜の外表面構造が全く異なっている
点で明確な違いを示す。なお、ドライゾーンを長くしす
ぎると紡糸性に影響を与えるので、通常0.1〜200
cm、好ましくは0.1〜50cmの範囲に設定され
る。
【0047】2重環状ノズルの内側には、該ノズルから
吐出された紡糸原液の形状を中空糸状に保持する目的で
通常注入液が導入される。かかる注入液は、得られる中
空糸膜の内表面構造を制御するという働きをも併せ有し
ている。本発明においては、注入液として、水、上記共
通溶媒と水の混合液、アルコール類やグリコ−ル類等の
ポリスルホンに対して非相溶性の液体、またはこれらの
混合物を用いることができる。なお、所望により、上記
注入液に代えて、2重環状ノズルの内側に気体を導入す
ることも可能である
【0048】注入液として、例えば水のように凝固性の
よい液体を使用した場合には、中空糸膜の内表面には緻
密層が形成されやすく、これとは逆に、注入液として、
例えば上記共通溶媒と水の混合液のように凝固性の低い
液体を使用した場合には、膜の内表面に大きな孔径の微
孔を有する中空糸膜を製造することができる。また、2
重環状ノズルの内側に気体を導入した場合にも、中空糸
膜の内表面には大きな孔径の微孔が形成される。このよ
うに、2重環状ノズルの内側に導入する注入液または気
体は、目的とする中空糸膜の構造、孔径等に応じて、そ
の凝固性を考慮して適宜選択すればよい。
【0049】凝固液としては、上記共通溶媒と混和性が
あり、かつポリスルホンを溶解しないものであれば特に
制限なく使用でき、通常、水、上記共通溶媒と水の混合
液、アルコール類やグリコール類等のポリスルホンに対
して非相溶性の液体、あるいはこれらの混合物などが使
用される。得られる膜の外表面構造も、内表面構造と同
様に、凝固液の組成により選宜制御することができる。
【0050】このようにして製膜された中空糸膜は、膜
中に共通溶媒および過剰の親水性高分子、並びに多量の
微粉体を含有している。これらは、紡糸工程中、あるい
は一旦巻き取られた後、以下の操作によって中空糸膜か
ら除去される。
【0051】まず、膜中に残存する共通溶媒および過剰
の親水性高分子が、水洗または40〜90℃の温水洗に
よって抽出除去される。かかる洗浄操作において抽出除
去する親水性高分子の量を制御することにより、中空糸
膜中の親水性高分子の含有量を適宜調節することができ
る。
【0052】上記の洗浄操作の後、膜中に残存する親水
性高分子は必要に応じて物理的または化学的に架橋構造
化される。かかる架橋構造化の方法としては、前述のと
おり、親水性高分子の種類に応じて公知の方法を通宜選
択すればよい。例えば、親水性高分子がポリビニルアル
コールまたはエチレン・ビニルアルコール共重合体であ
る場合には、硫酸触媒の存在下に、グルタルアルデヒド
等のアルデヒド類によってアセタール化する方法が簡便
である。
【0053】次いで、上記微粉体を溶解し、かつポリス
ルホンを溶解しない抽出溶剤によって膜中に残存する微
粉体が抽出除去され、該粉体が抽出除去された跡に微孔
が形成される。微粉体の抽出条件としては、微粉体の9
5%以上、好ましくは100%が抽出除去されるように
設定する必要があり、微粉体の種類と抽出溶剤の溶解性
によって異なるが、微粉体はポリスルホンのマトリック
ス中に存在しているため、微粉体単独での溶解条件より
かなり厳しく設定され、抽出温度および溶剤濃度を高く
し、しかも抽出時間を長くすることが必要となる。例え
ばシリカ微粉体を抽出除去する場合であれば、抽出溶剤
として5〜20重量%の水酸化ナトリウム水溶液を使用
し、抽出温度は60℃以上、かつ抽出時間は30分以上
という条件で中空糸膜を処理することが必要である。
【0054】なお、上述した親水性高分子の架橋構造化
は、必ずしも微粉体の抽出除去に先立って行う必要はな
く、微粉体の抽出除去の後に行ってもよい。また、これ
らの操作は洗浄された中空糸膜をモジュ一ルとして成形
した後に、該モジュ一ルの状態で行うことも可能であ
る。
【0055】上記のようにして製造されたポリスルホン
系中空糸膜は、例えば枠やカセに捲き取られた後乾燥さ
れる。乾燥後の中空糸膜は所定の本数ずつ束ねられ、所
定形状のケースに収納されたのち、ウレタン樹脂やエポ
キシ樹脂等で端部を固定化することによって中空糸膜モ
ジュ−ルとして成形される。中空糸膜モジュールとして
は、中空糸膜の両端が開口固定されているタイプのも
の、中空糸膜の一端が開口固定されており、他端は密封
されているが固定されていないタイプのもの等、従来よ
り種々の形態のものが公知である。かかる中空糸膜モジ
ュールは、従来より公知の濾過装置に装着され、水の精
製など、液体の分離・精製等において使用される。
【0056】本発明のポリスルホン系中空糸膜を使用し
て液体の濾過を行う場合、中空糸膜の外側に被処理液を
流し、該被処理液を中空糸膜の外側から内側へと透過さ
せる外圧方式、あるいは中空糸膜の内側に被処理液を流
し、該被処理液を中空糸膜の内側から外側へと透過させ
る内圧方式のいずれの方式を採用してもよく、また、被
処理液の全量が膜を透過する全濾過方式、あるいは被処
理液の一部が膜を透過し、残りは循環する循環方式のい
ずれの方式を採用してもよい。これらの方式は、被処理
液の性状に応じて適宜選択すればよい。
【0057】上記各方式は、中空糸膜の構造、形状等に
よっても適宜選択され、中空糸膜が内表面に前述の平均
孔径0.1〜10μの微孔を開口率10〜70%の割合
で有している場合には、被処理液を中空糸膜の内側に流
す内圧方式が好ましく、また中空糸膜が、外表面に上記
孔径の微孔を上記開口率で有している場合には、被処理
液を中空糸膜の外側に流す外圧方式が好ましい。また、
中空糸膜の内径が1mm以下であれば、通常外圧方式が
採用され、一方中空糸膜の内径が1mm以上であれば、
通常内圧方式が採用されるが、被処理原液の性状をも考
慮して適宜選択される。
【0058】本発明のポリスルホン系中空糸膜を使用し
て、一定時間液体の濾過を行うと、やがて中空糸膜表面
にスケ−ル、SS成分等の濾滓が付着し、濾過速度が低
下してくる。そこで、中空糸膜表面に付着した濾滓を除
去し、濾過速度を回復させる目的で気体逆洗が行なわれ
る。
【0059】気体逆洗においては、気体を、被処理液の
透過方向とは逆方向に中空糸膜を透過させる。すなわ
ち、外圧方式の濾過を行なう場合には、中空糸膜の内側
から外側へと気体を透過させ、また外圧方式の濾過を行
なう場合には、中空糸膜の外側から内側へと気体を透過
させる。
【0060】気体逆洗を行う場合の気体の流量は、20
〜5,000Nl/m↑2 ・hr、好ましくは100〜
1,000Nl/m↑2 ・hrである。気体としては、
例えば空気、窒素などを挙げることができるが、通常空
気が用いられる。なお、被処理液中に酸化されやすい物
質が含有される場合などには窒素等の不活性気体を使用
する必要がある。
【0061】また、気体逆洗は、被処理液の透過速度が
濾過開始時の初期透過速度の5〜50%に低下したと
き、好ましくは10〜30%に低下したときに行なわれ
る。
【0062】このように、気体を、被処理液の透過方向
とは逆方向に中空糸膜を透過させると、中空糸膜の表面
に付着した濾滓が膜表面より噴出する気体によって剥離
される。この際、中空糸膜自体も振動するので、中空糸
膜から濾滓がふるい落とされることとなる。このよう
に、膜表面からの気体の噴出および中空糸膜の振動の相
乗効果により、中空糸膜表面から濾滓を十分に除去する
ことができる。
【0063】本発明のポリスルホン系中空糸膜は、膜中
に親水性高分子を含有しているので、たとえ乾燥状態に
おかれても親水性を失うことがなく、特別な処理を行な
わなくとも水に濡らすことが可能である。したがって、
本発明のポリスルホン系中空糸膜にあっては、気体逆洗
を行なった後に通水するだけで濾過速度を回復させるこ
とができる。
【0064】また、本発明のポリスルホン系中空糸膜
は、膜が親水性を有しているので、蛋白の吸着等が少な
く耐汚染性も向上している。さらに、気体逆洗時の濾滓
の剥離性も向上しており、これらが相俟って、目詰まり
も少なく長期間安定に液体の濾過を行なうことが可能で
ある。
【0065】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明する
が、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
なお、各実施例における膜性能の評価は以下の方法で行
った。
【0066】A.透水率 有効長20cmのポリスルホン系中空糸膜を20本束ね
て、片端開放型の中空糸膜モジュールを作製し、25
℃、濾過圧力1kg/cm↑2 で外圧方式にて純水の濾
過を行い、単位膜面積、単位時間、単位圧力当たりの透
過量を測定した。
【0067】B.分画粒子径 粒径0.1μのポリスチレンラテックス(ダウケミカル
(株)社製)を水に0.1重量%添加し、均一に分散さ
せた。かかる分散液を、上記Aで作製した中空糸膜モジ
ュールを用いて濾過圧力0.5kg/cm↑2 、外圧方
式にて濾過を行い透過液中のポリスチレンラテックスの
濃度を濁度計により測定し、阻止率(R)を求めた。同
様の操作により、粒径0.2μ、0.5μおよび1μの
ポリスチレンラテックス(ダウケミカル(株)社製)に
対する阻止率を測定した。これらの測定値に基づいて、
前述の式(2)における定数aおよびmの値を最小自乗
法によって計算し、しかる後に式(2)におけるRが9
0となるSの値を求め、これを分画粒子径とした。
【0068】C.通気圧 上記Aにおいて作製した中空糸膜モジュ−ルを75%エ
タノール水溶液に1時間浸漬した後、25℃にて60分
間流水洗し、膜を完全に湿潤化した。該湿潤化した中空
糸膜を、水に浸漬した状態で、空気圧を膜の内表面側か
ら徐々にかけていき、外表面側に透過してくる空気の量
が400Nl/m↑2 ・hrになったときの空気圧を測
定した。
【0069】実施例1 ポリスルホン(アモコジャパン(株)社製、UDEL−
P1800、以下これをPSと略称する)20重量部、
エチレン・ビニルアルコール共重合体(クラレ(株)社
製、EVAL−H、以下これをEVOHと略称する)4
重量部、シリカパウダー(徳山曹達(株)社製、ファイ
ンシール#B、平均粒径3μ、以下これをシリカパウダ
ーと略称する)10重量部、N,N−ジメチルアセトア
ミド(以下これをDMAcと略称する)66重量部から
なる紡糸原液を以下の手順により作製した。すなわち、
シリカパウダーをホモジェッターを用いてDMAc中に
均一に分散させ、得られた分散液にPSとEVOHを添
加し、次いで60℃にて6時間撹拌することによってP
SとEVOHを溶解させ、シリカパウダーが均一に分散
した白色のスラリー状の紡糸原液を得た。
【0070】上記で得られた紡糸原液を脱泡した後、4
0℃に保ち、外径1.6mm、内径0.8mmの2重環
状ノズルより、DMAc80重量%、水20重量%から
なる注入液とともに40℃にて吐出し、40℃、相対湿
度100%に調整した空気中に押し出した。ドライゾー
ン長10cmの空中走行後、凝固液である40℃の水中
に導入して中空糸膜を形成させた。
【0071】得られた中空糸膜を60℃の温水で30分
間洗浄して膜中に残存するDMAcを抽出除去した後、
60℃にて、グルタルアルデヒドを1.5g/lの割合
で含有し、かつ硫酸を30g/lの割合で含有する水溶
液に浸漬して、膜中のEVOHを架橋構造化させた。次
に、かかる架橋構造化後の中空糸膜を、60℃にて、1
5重量%の水酸化ナトリウム水溶液に2時間浸漬して膜
中のシリカパウダーを抽出除去した。さらに該中空糸膜
を90℃の温水にて2時間洗浄し、次いで50℃で10
時間乾燥することにより外径1mm、内径0.6mmの
中空糸膜を得た。
【0072】得られた中空糸膜は、膜中にEVOHを2
0重量%含有しており、透水率が11,200l/m↑
2 ・hr・kg/cm↑2 、分画粒子径が1μ、通気圧
が1.2kg/cm↑2 であった。また、図1〜3に示
す500倍の電子顕微鏡写真(以下これをSEM写真と
略称する)から明らかなように、膜の外表面は平均孔径
6μの微細孔を開口率20%で有しており(図1)、膜
の内表面は孔径1〜20μの網目状構造であり、その開
口率は50%であった(図2)。また、膜の断面構造は
スポンジ構造であった(図3)。なお、この膜は通気圧
を測定した後であっても、また乾燥状態としても透水性
が低下することはなかった。
【0073】実施例2 PS20重量部、ポリビニルアルコール(クラレ(株)
社製、PVA−217、以下これをPVAと略称する)
2重量部、シリカパウダー10重量部、DMAc68重
量部からなり、シリカパウダーが均一に分散した白色の
スラリー状の紡糸原液を、実施例1と同様の手順により
調製した。
【0074】上記で得られた紡糸原液を脱泡した後、5
0℃に保ち、外径1.6mm、内径0.8mmの2重管
状ノズルより、DMAc80重量%、水20重量%から
なる注入液とともに50℃にて吐出し、50℃、相対湿
度100%に調整した空気中に押し出した。ドライゾー
ン長1cmの空中走行後、凝固液である50℃の水中に
導入して中空糸膜を形成させた。
【0075】得られた中空糸膜を60℃の温水で30分
間洗浄して膜中に残存するDMAcおよび過剰のPVA
を抽出除去した後、60℃にて、グルタルアルデヒドを
1.5g/lの割合で含有し、かつ硫酸を30g/lの
割合で含有する水溶液に浸漬して、膜中のPVAを架橋
構造化させた。次に、かかる架橋構造化後の中空糸膜
を、60℃にて、15重量%の水酸化ナトリウム水溶液
に2時間浸漬して膜中のシリカパウダーを抽出除去し
た。さらに該中空糸膜を90℃の温水にて2時間洗浄
し、次いで50℃で10時間乾燥することにより外径1
mm、内径0.6mmの中空糸膜を得た。
【0076】得られた中空糸膜は、膜中にPVAを5重
量%含有しており、透水率が6,000l/m↑2 ・h
r・kg/cm↑2 、分画粒子径が0.35μ、通気圧
が2.2kg/cm↑2 であった。また、実施例1と同
様に電子顕微鏡で膜の内外表面および膜の断面構造を観
察した結果、膜の外表面は平均孔径3μの微細孔を開口
率30%で有しており、膜の内表面は孔径1〜20μの
網目状構造であり、その開口率は40%であった。ま
た、膜の断面構造はスポンジ構造であった。なお、この
膜は通気圧を測定した後であっても、また乾燥状態とし
ても透水性が低下することはなかった。
【0077】実施例3 実施例2において使用したのと同じ紡糸原液を使用し
た。該紡糸原液を40℃に保ち、外径2.5mm、内径
1.1mmの2重環状ノズルより、注入液である水とと
もに40℃にて吐出し、40℃、相対湿度100%に調
整した空気中に押し出した。ドライゾーン長10cmの
空中走行後、凝固液である40℃の水中に導入して中空
糸膜を形成させた。
【0078】得られた中空糸膜を60℃の温水で80分
間洗浄して膜中に残存するDMAcおよび過剰のPVA
を抽出除去した後、60℃にて、グルタルアルデヒドを
1.5g/lの割合で含有し、かつ硫酸を30g/lの
割合で含有する水溶液に浸漬して、膜中のPVAを架橋
構造化させた。次に、かかる架橋構造化後の中空糸膜
を、60℃にて、15重量%の水酸化ナトリウム水溶液
に2時間浸漬して膜中のシリカパウダーを抽出除去し
た。さらに該中空糸膜を90℃の温水にて2時問洗浄
し、次いで50℃で10時間乾燥することにより外径2
mm、内径1.2mmの中空糸膜を得た。
【0079】得られた中空糸膜は、膜中にPVAを6重
量%含有しており、透水率が4,500l/m↑2 ・h
r・kg/cm↑2 、分画粒子径が0.25μ、通気圧
が3.2kg/cm↑2 であった。また、実施例1と同
様に電子顕微鏡で膜の内外表面および膜の断面構造を観
察した結果、膜の内表面は平均孔径0.5μの微細孔を
開口率15%で有しており、膜の外表面は平均孔径2μ
の微細孔を開口率20%で有していた。また、膜の断面
構造はスポンジ構造であった。なお、この膜は通気圧を
測定した後であっても、また乾燥状態としても透水性が
低下することはなかった。
【0080】比較例1 PS20重量部、PVA2重量部およびDMAc78重
量部を混合し、60℃にて6時間撹拌したが、白濁して
おり、得られた溶液は相分離したままであった。この溶
液を紡糸して中空糸膜に成形することはできなかった。
【0081】比較例2 PS20重量部、シリカパウダー15重量部および、
N,N−ジメチルホルムアミド(以下これをDMFと略
称する)65重量部からなる紡糸原液を以下の手順によ
り作製した。すなわち、シリカパウダーをホモジェッタ
ーを用いてDMF中に均一に分散させ、得られた分散液
にPSを添加し、次いで60℃にて6時間撹拌すること
によってPSを溶解させ、シリカパウダーが均一に分散
した白色のスラリー状の紡糸原液を得た。
【0082】上記で得られた紡糸原液を脱泡した後、5
0℃に保ち、外径1.6mm、内径0.8mmの2重管
状ノズルより、DMF80重量%、水20重量%からな
る注入液とともに50℃にて吐出し、50℃、相対湿度
100%に調整した空気中に押し出した。ドライゾーン
長1cmの空中走行後、凝固液である50℃の水中に導
入して中空糸膜を形成させた。
【0083】得られた中空糸膜を60℃の温水で80分
間洗浄して膜中に残存するDMFを抽出除去した後、6
0℃にて、15重量%の水酸化ナトリウム水溶液に2時
間浸漬して膜中のシリカパウダーを抽出除去した。さら
に該中空糸膜を90℃の温水にて2時間洗浄し、次いで
50℃で10時間乾燥することにより外径1mm、内径
0.6mmの中空糸膜を得た。
【0084】得られた中空糸膜は、透水率が5,500
l/m↑2 ・hr・kg/cm↑2、分画粒子径が0.
3μ、通気圧が2.4kg/cm↑2 であった。また、
実施例1と同様に電子顕微鏡で膜の内外表面を観察した
結果、膜の内表面は平均孔径1μの微細孔を開口率10
%で有しており、膜の外表面は平均孔径3μの微細孔を
開口率15%で有していた。この膜を乾燥状態とした
後、その透水率を測定すると500l/m↑2 ・hr・
kg/cm↑2 であり、湿潤状態である場合と比較する
と透水率は約10%に低下していた。
【0085】試験例 実施例1および比較例2で得られたポリスルホン系中空
糸膜を使用して、有効長25cm、有効膜面積0.1m
↑2 の片端開放型の中空糸膜モジュールを作製した。該
中空糸膜モジュールを使用して、菌体溶液の濾過を実施
し、気体逆洗前後の透過速度を測定した。
【0086】なお、濾過条件、気体逆洗条件等は以下の
とおりである。 被処理液: 菌体(Seratia narcescens)溶液、菌体濃
度 10↑9 個/m↑3 濾過条件: 外圧全濾過、濾過圧1kg/cm↑2 逆洗条件: 空気逆洗(1000Nl/hr・m↑2 に
相当する空気量)、被処理液に中空糸膜を浸潰した状熊
で行なう、透過速度が50l/m↑2 ・hr・kg/c
m↑2 に低下した時点で実施、逆洗時間 30秒
【0087】表1に、逆洗回数と気体逆洗前後の透過係
数を示す。なお、本試験例における透過係数とは、気体
逆洗前後の透過速度の実測値を、濾過開始時の初期透過
速度で除した値をいう。
【0088】
【表1】
【0089】表1から明らかなように、実施例1で得ら
れたポリスルホン系中空糸膜は、比較例2で得られたポ
リスルホン系中空糸膜と比較して、気体逆洗時の透過速
度の回復が優れていた。
【0090】
【発明の効果】本発明によれば、透水性の低下を起こす
ことなく気体逆洗を行うことが可能であり、かつ耐汚染
性に優れたポリスルホン系中空糸膜およびその製造方法
が提供される。本発明のポリスルホン系中空糸膜を使用
すると、長時間安定して液体の濾過を行うことが可能で
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得られた中空糸膜の外表面構造を
示す500倍のSEM写真である。
【図2】 実施例1で得られた中空糸膜の内表面構造を
示す500倍のSEM写真である。
【図3】 実施例1で得られた中空糸膜の断面構造を示
す500倍のSEM写真である。

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 親水性高分子を1〜10重量%含有する
    ポリスルホン系中空糸膜であって、通気圧が0.3〜5
    kg/cm2であり、分画粒子径が0.2〜2μであ
    ことを特徴とするポリスルホン系中空糸膜。
  2. 【請求項2】 親水性高分子がポリビニルアルコールま
    たはエチレン・ビニルアルコール共重合体である請求項
    1に記載のポリスルホン系中空糸膜。
  3. 【請求項3】 ポリスルホン、親水性高分子、両者の共
    通溶媒および該共通溶媒に不溶である平均粒径0.01
    〜5μの微粉体より構成され、該微粉体が均一に分散し
    た紡糸原液を、2重環状ノズルから押し出して、乾湿式
    紡糸法または湿式紡糸法によって中空糸膜を形成させる
    工程と、紡糸後の中空糸膜をポリスルホンを溶解せず上
    記微粉体を溶解する抽出溶剤に浸漬して上記微粉体を抽
    出除去する工程とを有することを特徴とするポリスルホ
    ン系中空糸膜の製造方法。
  4. 【請求項4】 膜中の親水性高分子を架橋構造化するこ
    とを特徴とする請求項に記載のポリスルホン系中空糸
    膜の製造方法。
  5. 【請求項5】 親水性高分子がポリビニルアルコールま
    たはエチレン・ビニルアルコール共重合体である請求項
    または請求項に記載のポリスルホン系中空糸膜の製
    造方法。
  6. 【請求項6】 微粉体がシリカ微粉体である請求項
    に記載のポリスルホン系中空糸膜の製造方法。
  7. 【請求項7】 紡糸原液中に、ポリスルホン、親水性高
    分子および共通溶媒が相分離を起こす組成で存在してい
    ることを特徴とする請求項に記載のポリスルホン
    系中空糸膜の製造方法。
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