JP3357325B2 - 反応性オレフィン系重合体 - Google Patents

反応性オレフィン系重合体

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JP3357325B2
JP3357325B2 JP31065499A JP31065499A JP3357325B2 JP 3357325 B2 JP3357325 B2 JP 3357325B2 JP 31065499 A JP31065499 A JP 31065499A JP 31065499 A JP31065499 A JP 31065499A JP 3357325 B2 JP3357325 B2 JP 3357325B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高い反応性を有するオ
レフィン系重合体に関し、特に各種重合体の相溶性改良
剤として有用である。
【0002】
【従来技術】一般にポリオレフィンにエチレン−ビニル
アルコール系共重合体をブレンドするとポリオレフィン
のガスバリアー性、耐溶剤性等の性能が改善され、また
エチレン−ビニルアルコール系共重合体にオレフィン系
エラストマーをブレンドすると、エチレン−ビニルアル
コール系共重合体の柔軟性、耐衝撃性等の性能が改善さ
れ、ポリプロピレン等の高融点のオレフィン系重合体を
添加すると、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の
耐熱水性の改善される。しかし、ポリオレフィンとエチ
レンビニルアルコール系共重合体は一般に相溶性が悪い
ため、この組成物は上記の性能が十分に発揮されなかっ
たり、透明性および均一性が損なわれ、その結果、フィ
ルムの外観が不良になることが多い。一方、放射線によ
りポリプロピレンにビニルフェニルボロン酸をグラフト
重合させた樹脂が接着剤と有用であることは公知であ
る。(US3291861)また、USP388765
0号公報(特開昭49−132186号公報)には、ブ
ロック共重合体を合成する反応中間体として、末端二重
結合を有するポリオレフィンとボラン類のハイドロボレ
ーション反応による生成物について記載されている。こ
こで例示されている多数のボラン類の中にジエトキシモ
ノボランの記載があり、これを用いてハイドロボレーシ
ョンを行った反応生成物は、ボロン酸基のジエチルエス
テルを末端に有するポリオレフィンとなる。しかしなが
ら、本反応中間体は、ブロック共重合体を得るための反
応中間体にすぎず、それ単独で用いられるものではな
く、他の樹脂に配合する用途に使うことについて記載さ
れているわけではない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、一般的
にフェニルボロン酸基は100℃以上の高温では水やア
ルコール類等の水酸基を有する化合物により比較的容易
にホウ素−炭素結合が切断されるため、後述する比較例
から明かなようにフェニルボロン酸基を有するポリオレ
フィンをエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体等の水
酸基を有する重合体と溶融混練する場合、十分な相溶性
が得られなかった。本発明の目的は、エチレン−ビニル
アルコール系重合体等の多価水酸基を有する熱可塑性樹
脂との良好な反応性および相溶性を有するホウ素含有基
を有するオレフィン系重合体を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、ボロン酸
基または水の存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含
有基を有し、下記式(I)で示される繰り返し構成単位
を有するオレフィン系重合体であり、かつ前記ボロン酸
基またはホウ素含有基は、前記重合体中のsp 3炭素原
子に結合しているオレフィン系重合体を提供することに
よって達成される。
【0005】
【化11】
【0006】(式中、R1は水素原子または炭素数1〜
20のアルキル基を示す。)
【0007】本発明においてボロン酸基とは下記式(I
I)で示されるものである。
【0008】
【化12】
【0009】また水の存在下でボロン酸基に転化しうる
ホウ素含有基(以下ホウ素含有基と略記する)として
は、水の存在下で加水分解を受けて上記式(II)で示
されるボロン酸基に転化しうるホウ素含有基であればど
のようなものでもよいが、代表例として下記一般式(I
II)で示されるボロン酸エステル基、下記一般式(I
V)で示されるボロン酸無水物基、下記一般式(V)ボ
ロン酸塩基が挙げられる。
【0010】
【化13】
【0011】
【化14】
【0012】
【化15】
【0013】{式中、X,Yは水素原子、脂肪族炭化水
素基(炭素数1〜20の直鎖状、または分岐状アルキル
基、またはアルケニル基など)、脂環式炭化水素基(シ
クロアルキル基、シクロアルケニル基など)、芳香族炭
化水素基(フェニル基、ビフェニル基など)を表わし、
X,Yは同じ基でもよいし、異なっていてもよい。ま
た、XとYは結合していてもよい。ただしX,Yがとも
に水素原子である場合は除かれる。またR2,R3,R4
は上記X,Yと同様の水素原子、脂肪族炭化水素原子、
脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基を表わし、R2
3,R4は同じ基でもよいし、異なっていてもよい。ま
たMはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表わす。
また上記のX,Y,R2,R3,R4には他の基、例え
ば、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子などを有し
ていてもよい。}
【0014】一般式(III)〜(V)で示される、ボ
ロン酸エステル基、ボロン酸無水物基、ボロン酸塩基の
具体例としてはボロン酸ジメチルエステル基、ボロン酸
ジエチルエステル基、ボロン酸ジブチルエステル基、ボ
ロン酸ジシクロヘキシル基、ボロン酸エチレングリコー
ルエステル基、ボロン酸プロピレングリコールエステル
基(ボロン酸1,2−プロパンジオ−ルエステル基、ボ
ロン酸1,3−プロパンジオ−ルエステル基)、ボロン
酸ネオペンチルグリコ−ルエステル基、ボロン酸カテコ
−ルエステル基、ボロン酸グリセリンエステル基、ボロ
ン酸トリメチロールエタンエステル基、ボロン酸ジエタ
ノ−ルアミンエステル基等のボロン酸エステル基;ボロ
ン酸無水物基;ボロン酸のアルカリ金属塩基、ボロン酸
のアルカリ土類金属塩基等が挙げられる。なお前記の水
存在下でボロン酸基に転化しうるホウ素含有基とは、本
発明のオレフィン系重合体を、水または水と有機溶媒
(トルエン、キシレン、アセトンなど)との混合液体中
で、反応時間10〜2時間、反応温度室温〜150℃の
条件下に加水分解した場合に、ボロン酸基に転化しうる
基を意味する。
【0015】前記のsp3炭素原子とは、参考文献{例
えば、有機化合物のスペクトルによる同定法(第4版)
189ページ、244ページ}から明かなように、sp
3混成軌道を有する炭素原子、すなわち四つの一重結合
が結合した四価の炭素原子である。例えば、本発明のオ
レフィン系重合体の式(I)で示される繰り返し構成単
位中の炭素原子はすべてsp3炭素原子である。従っ
て、本発明においては、式(I)で示される繰り返し構
成単位中の任意の水素原子をボロン酸またはホウ素含有
基で置換したオレフィン系重合体が包含される。
【0016】本発明のsp3炭素原子に結合するボロン
酸基または水の存在下でボロン酸基に転化しうるsp3
炭素原子に結合するホウ素含有基を有するオレフィン系
重合体中のボロン酸基またはボロン酸基に転化しうるホ
ウ素含有基はオレフィン系重合体の末端、側鎖、主鎖の
いずれのsp3炭素原子に結合していてもよい。好適な
ボロン酸基またはボロン酸基に転化しうるホウ素含有基
のオレフィン系重合体への結合形態としては、下記式
(VI)〜(IX)の例が挙げられる。
【0017】
【化16】
【0018】
【化17】
【0019】
【化18】
【0020】
【化19】
【0021】(式中、上記式(II)〜(V)で示され
るZはボロン酸基または水の存在下でボロン酸基に転化
しうるホウ素含有基を表わす。Wはエーテル結合、チオ
エーテル結合、アミド結合、エステル結合等の酸素原
子、窒素原子、硫黄原子等の炭素以外の原子を含む結合
によって中断されてもよく、また分岐を有していてもよ
い二価の飽和炭化水素基を表わす。Pは式(I)で示さ
れる繰り返し構成単位を有するオレフィン系重合体を表
わす。式(VI)および式(VII)中のP−はオレフ
ィン系重合体の末端部位への結合を意味し、式(VII
I)および式(IX)中の/P/−はオレフィン系重合
体の側鎖への結合を意味する。)
【0022】ここで連結基Wとしては、炭素数1〜30
の分岐を有してもよい二価の飽和炭化水素基が好まし
い。この具体例としては、下記式(X)で示される連結
基が挙げられる。
【0023】
【化20】
【0024】(式中、R5およびR6は水素原子または低
級アルキル基、nは1〜30の整数)
【0025】上記式(VI)〜(IX)の結合形態の中
で、式(VI)および式(VIII)の結合形態および
式(VII)および式(IX)の結合形態で連結基が官
能基を有しない飽和炭化水素基の場合の結合形態が好ま
しく、オレフィン系重合体あるいはホウ素含有基が直接
結合している式(VII)の場合が特に好ましい。
【0026】本発明のオレフィン系重合体中のボロン酸
基およびホウ素含有基の総量の範囲は特に制限はない
が、0.00001〜1ミリ等量/g(オレフィン系重
合体1gあたりの構成単位のミリ等量)の範囲が好まし
く、0.0001〜0.3ミリ等量/gの範囲がより好
ましく、0.001〜0.1ミリ等量/gの範囲がさら
により好ましい。
【0027】式(I)中のR2は水素原子または炭素数
1〜20のアルキル基を示すが、R2は水素原子または
炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。このような構成
単位は出発原料としてオレフィン系単量体を使用するこ
とによって得られる。ここでオレフィン系単量体の具体
例としてはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペ
ンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1
−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等
が挙げられる。本発明のオレフィン系重合体は上記のオ
レフィン系単量体から選ばれる一つの単量体の単独の重
合体あるいは上記のオレフィン系単量体の共重合体(ラ
ンダム共重合体、ブロック共重合体)あるいは上記の単
量体以外の単量体を共重合成分として含む共重合体(ラ
ンダム共重合体、ブロック共重合体)が挙げられ、好適
なオレフィン系重合体としては、ポリエチレン(超低密
度、低密度、中密度、高密度)、ポリプロピレン、エチ
レン−プロピレン共重合体が挙げられる。オレフィン系
単量体の重合体中に占める含有率は50重量%以上が好
ましく、80重量%以上がさらに好ましい。オレフィン
単量体以外の共重合成分としては、ノルボルネン等の上
記の単量体以外のオレフィン系単量体、アクリル酸メチ
ル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル
酸エステル系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル
酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステ
ル系単量体;酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のビニル
エステル系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ
化ビニル等が挙げられる。
【0028】本発明のボロン酸基およびホウ素含有基を
有するオレフィン系重合体の分子量としては、測定温度
140℃で溶媒としてオルトジクロロベンゼンを用い、
ゲル浸透クロマトグラフィ(以後GPCと略記する)に
より測定したポリスチレン換算重量平均分子量で200
0以上が好ましく、さらに2000〜3000000の
範囲が好ましく、10000〜1000000の範囲が
より好ましい。
【0029】次に本発明に用いるボロン酸基およびホウ
素含有基を有するオレフィン系重合体の代表的製法につ
いて述べる。ボロン酸基あるいは水の存在によりボロン
酸基に転化しうるホウ素含有基を有するオレフィン系重
合体は、窒素雰囲気下で炭素−炭素二重結合を有するオ
レフィン系重合体にボラン錯体およびホウ酸トリアルキ
ルエステルを反応させることによって、ボロン酸ジアル
キルエステル基を有するオレフィン系重合体を得た後、
水あるいはアルコール類を反応させることによって得ら
れる。この製法において原料として末端に二重結合を有
するオレフィン系重合体を使用すれば、末端にボロン酸
基あるいは水の存在によりボロン酸基に転化しうるホウ
素含有基を有するオレフィン系重合体が得られ、側鎖ま
たは主鎖に二重結合を有するオレフィン系重合体を原料
として使用すれば、側鎖にボロン酸基あるいは水の存在
によりボロン酸基に転化しうるホウ素含有基を有するオ
レフィン系重合体を得られる。
【0030】原料の二重結合を有するオレフィン系重合
体の代表的製法としては、1)通常のオレフィン系重合
体の末端に微量に存在する二重結合を利用する方法;
2)通常のオレフィン系重合体を無酸素条件下、熱分解
し、末端に二重結合を有するオレフィン系重合体を得る
製法;3)オレフィン系単量体とジエン系重合体の共重
合によりオレフィン系単量体とジエン系単量体との共重
合体を得る製法;が挙げられる。1)については、公知
のオレフィン系重合体の製法を用いることができるが、
特に、連鎖移動剤として水素を用いず、重合触媒として
メタロセン系重合触媒を用いる製法(例えば、DE40
30399)が好ましい。2)については、公知の方法
(例えばUS2835659,3087922)により
オレフィン系重合体を窒素雰囲気下や真空条件下等の無
酸素条件下で300℃〜500℃の温度で熱分解するこ
とによって得られる。3)については公知のチーグラー
系触媒を用いたオレフィン−ジエン系共重合体の製法
(例えば特開昭50−44281、DE302127
3)を用いることができる。
【0031】ボラン錯体としては、ボラン−テトラヒド
ロフラン錯体、ボラン−ジメチルスルフィド錯体、ボラ
ン−ピリジン錯体、ボラン−トリメチルアミン錯体、ボ
ラン−トリエチルアミン等が好ましい。これらのなか
で、ボラン−トリエチルアミン錯体およびボラン−トリ
メチルアミン錯体がより好ましい。ボラン錯体の仕込み
量はオレフィン系重合体の二重結合に対し、1/3当量
から10当量の範囲が好ましい。ホウ酸トリアルキルエ
ステルとしては、トリメチルボレ−ト、トリエチルボレ
−ト、トリプロピルボレ−ト、トリブチルボレ−ト等の
ホウ酸低級アルキルエステルが好ましい。ホウ酸トリア
ルキルエステルの仕込み量はオレフィン系重合体の二重
結合に対し1から100当量の範囲が好ましい。溶媒は
特に使用する必要はないが、使用する場合は、ヘキサ
ン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、シクロヘ
キサン、エチルシクロヘキサン、デカリン等の飽和炭化
水素系溶媒が好ましい。
【0032】ボロン酸ジアルキルエステル基を二重結合
を有するオレフィン系重合体へ導入する反応は、反応温
度室温〜300℃、好ましくは100〜250℃、反応
時間1〜10時間、好ましくは5〜5時間行うのがよ
い。
【0033】水あるいはアルコール類を反応させる条件
としては通常、トルエン、キシレン、アセトン、酢酸エ
チル等の有機溶媒を反応溶媒として用い、水またはメタ
ノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類;エ
チレングリコ−ル、1,2−プロパンジオ−ル、1,3
−プロパンジオ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセ
リン、トリメチロ−ルエタン、ペンタエリスリト−ル、
ジペンタエリスリトール等の多価アルコール類をボロン
酸基に対し、1から100等量以上の大過剰量を用い、
室温〜150℃の温度で1分〜1日程度反応を行うこと
によって得られる。なお、前記の官能基の中でボロン酸
基に転化しうるホウ素含有基とは、水または水と有機溶
媒(トルエン、キシレン、アセトンなど)との混合溶媒
中で、反応時間10分〜2時間、反応温度室温〜150
℃の条件下に加水分解した場合に、ボロン酸基に転化し
うる基を意味する。
【0034】本発明の反応性オレフィン系重合体は、水
酸基を含有する熱可塑性樹脂、特にエチレン−ビニルア
ルコール系共重合体との相溶性に優れ、ポリオレフィン
とエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体の組成物の相
溶性改良剤として有用である。また、本発明の反応性オ
レフィン系重合体は、エチレン−ビニルアルコール共重
合体の改質剤として有用である。特に、本発明の反応性
オレフィン系重合体のベースポリマーが低密度ポリエチ
レン、超低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共
重合体等のエチレン系重合体の場合、これらのベースポ
リマーを使用して得た本発明の反応性オレフィン系重合
体をエチレン−ビニルアルコール系共重合体に配合する
ことにより、エチレンービニルアルコール共重合体の特
性、特に柔軟性、耐衝撃性、耐ストレスクラック性を改
善することができる。本発明のベ−スポリマ−がポリプ
ロピレンやポリ(4−メチル−1−ペンテン)等の高融
点のポリオレフィンの場合は、エチレン−ビニルアルコ
ール共重合体の耐熱水性を改善することができる。
【0035】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳しく説
明するが、これらの実施例によって本発明は何ら限定さ
れるものではない。なお、以下の合成例および実施例に
おいて特に断りのない限り、比率は重量比を、「%」は
「重量%」を意味する。ポリオレフィンの分子量はWa
ters社製GPCを用い、測定溶媒としてオルトジク
ロロベンゼンを用い、140℃で測定したポリスチレン
換算の重量平均分子量である。ポリオレフィン中の二重
結合量は、重パラキシレンを溶媒として用い、270M
Hz1H−NMRにより定量した。実施例1および実施
例3のポリプロピレンおよびポリエチレン中のボロン酸
基量は重パラキシレン:重クロロホルム:エチレングリ
コ−ル=8:2:0.01の重量比の混合液を溶媒とし
て用い、270MHz1H−NMRにより定量し、実施
例2のエチレン−プロピレン共重合体中の重クロロホル
ム:エチレングリコ−ル=10:0.01の重量比の混
合液を溶媒として用い、270MHz1H−NMRによ
り定量した。実施例4〜6のポリプロピレン中のホウ素
含有基の量は重パラキシレンを溶媒として用い270M
Hz1H−NMRにより定量した。実施例7および8の
エチレン−プロピレン共重合体中のホウ素含有基の量は
重クロロホルムを溶媒として用い、270MHz1H−
NMRにより定量した。ヘイズの測定法JISK710
5により行なった。
【0036】合成例1 二重結合を末端に有するポリプロピレンの合成:セパラ
ブルフラスコにポリプロピレン(ポリスチレン換算重量
平均分子量78万)200gを仕込み、真空下でバス温
を250℃で1時間加熱後、さらにバス温を330℃に
昇温後2時間加熱を行なった。冷却後、ポリプロピレン
を取り出し、粉砕することにより、ポリスチレン換算重
量平均分子量18万の、末端に二重結合を0.018m
eq/g有するポリプロピレンを得た。
【0037】合成例2 二重結合を末端に有するエチレン−プロピレン共重合体
の合成:セパラブルフラスコにプロピレン含量26%、
ポリスチレン換算重量平均分子量26万のエチレン−プ
ロピレン共重合体250g仕込み、真空下バス温を28
0℃で30分加熱後、さらにバス温を320℃に昇温し
2時間10分加熱を行なうことにより、プロピレン含量
26%、ポリスチレン換算重量平均分子量13万の、末
端に二重結合を0.035meq/g有するエチレン−
プロピレン共重合体を得た。
【0038】合成例3 二重結合を末端に有する低密度ポリエチレンの合成:セ
パラブルフラスコにポリスチレン換算重量平均分子量2
3万の低密度ポリエチレン200gを仕込み、真空下、
バス温260℃で30分加熱後、さらにバス温を340
℃に昇温し2時間加熱を行なうことにより、ポリスチレ
ン換算重量平均分子量8万の、末端に二重結合を0.0
6meq/g有する低密度ポリエチレンを得た。
【0039】合成例4 フェニルボロン酸エチレングリコールエステル基を有す
るポリプロピレンの合成:撹拌機および冷却器を有する
セパラブルフラスコに公知の方法により合成した無水マ
レイン酸変性ポリプロピレン(無水マレイン酸量0.0
14meq/g、ポリスチレン換算重量平均分子量19
万)20g、キシレン50gをセパラブルフラスコに仕
込み、さらに別途、キシレン10g、3−アミノフェニ
ルボロン酸一水和物155mg、エチレングリコール6
2mgを脱水蒸留することによって調製した3−アミノ
フェニルボロン酸エチレングリコ−ルエステル/キシレ
ン溶液を添加し、140℃3時間加熱した。冷却後、ア
セトンで再沈精製後、乾燥することにより、ポリスチレ
ン換算重量平均分子量19万の、フェニルボロン酸エチ
レングリコールエステル基を0.013meq/g有
し、かつボロン酸基はsp2原子に結合しているポリプ
ロピレンを得た。
【0040】実施例1 ボロン酸基を末端に有するポリプロピレンの合成:冷却
器および撹拌機付きのセパラブルフラスコに合成例1で
得られたポリプロピレン100g、デカリン200g、
を仕込み、窒素置換を行なった。これにホウ酸トリメチ
ル2.3gおよびトリエチルアミンボラン380ミリグ
ラム(mg)を加え180℃で4時間反応を行なった
後、室温に冷却した。得られたゲル状ポリプロピレンを
メタノ−ル:アセトン=1:1混合液により良く洗浄
後、水:アセトン=1:1混合液で洗浄、乾燥すること
によってポリスチレン換算重量平均分子量18万の、末
端にボロン酸基量を0.013meq/g有し、かつボ
ロン酸基はsp3炭素原子に結合しているポリプロピレ
ン{下記式(XI)}を得た。
【0041】
【化21】
【0042】得られたポリマ−の270MHz1H−N
MRチャ−トを図1に示すが、3.8ppmのピ−クは
ポリマ−中のボロン酸と溶媒中のエチレングリコ−ルと
反応することによって生成したボロン酸エチレングリコ
−ルエステルの存在を示している。
【0043】実施例2 ボロン酸基を末端に有するエチレン−プロピレン共重合
体の合成:冷却器付きのセパラブルフラスコに合成例2
で得られたエチレン−プロピレン共重合体30g、ボラ
ン−ピリジン錯体145mg、ホウ酸トリブチル1.1
2gを仕込み、窒素置換を行なった。170℃で40分
間反応を行なった後、220℃に昇温し、1時間反応を
行なった。室温に冷却し、得られたポリマ−をトルエン
に溶解し、メタノ−ル:アセトン=1:1の混合溶媒で
再沈後、再びトルエンに溶液とし、これをアセトン:水
=9:1の混合溶媒により再沈し、さらに80℃で12
時間真空乾燥することによって、ポリスチレン換算の重
量平均分子量13万の、末端にボロン酸基を0.018
meq/g有し、かつボロン酸基はsp3炭素原子に結
合しているエチレン−プロピレン共重合体を得た。
【0044】実施例3 ボロン酸基を末端に有する低密度ポリエチレンの合成:
冷却器付きのセパラブルフラスコに合成例3で得られた
低密度ポリエチレン30g、ボラン−ピリジン錯体30
0mg、ホウ酸トリブチル2.25g、デカリン50g
を仕込み、窒素置換後、190℃で3時間反応を行なっ
た。室温に冷却し、得られたゲル状ポリエチレンをメタ
ノ−ル:アセトン=1:1の混合溶媒で良く洗浄後、さ
らに、アセトン:水=1:1の混合溶媒により洗浄、乾
燥することにより、ポリスチレン換算重量平均分子量8
万の、末端にボロン酸基を0.035meq/g有し、
かつボロン酸基はsp3炭素原子に結合しているポリエ
チレンを得た。
【0045】実施例4 ボロン酸エチレングリコールエステル基を末端に有する
ポリプロピレンの合成:実施例1により得られたボロン
酸基を末端に有するポリプロピレン2gをフラスコに仕
込み窒素置換を行った。エチレングリコール124m
g、アセトン20mlを添加し、室温で24時間反応
後、アセトンで洗浄し、真空乾燥することにより、ポリ
スチレン換算重量平均分子量18万の、末端にボロン酸
エチレングリコールエステル基を0.012meq/g
有し、かつ前記ボロン酸エステル基はsp3炭素原子に
結合しているポリプロピレンを得た。
【0046】実施例5 ボロン酸1,3−プロパンジオールエステル基を末端に
有するポリプロピレンの合成:エチレングリコ−ル12
4mgの代わりに1,3−プロパンジオール152mg
を用い、その他は実施例4と同様な反応を行ったとこ
ろ、ポリスチレン換算重量平均分子量18万の、末端に
ボロン酸1,3−プロパンジオールエステル基を0.0
12meq/g有し、かつ前記ボロン酸エステル基はs
3炭素原子に結合しているポリプロピレンを得た。
【0047】実施例6 ボロン酸グリセリンエステル基を末端に有するポリプロ
ピレンの合成:エチレングリコ−ル124mgの代わり
にグリセリン184mgを用い、その他は実施例4と同
様な反応を行ったところ、ポリスチレン換算重量平均分
子量18万の、末端にボロン酸グリセリンエステル基を
0.013meq/g有し、かつ前記ボロン酸エステル
基はsp3炭素原子に結合しているポリプロピレンを得
た。
【0048】実施例7 ボロン酸エチレングリコ−ルエステル基を側鎖に有する
エチレン−プロピレン共重合体の合成:撹拌基および冷
却器を有するセパラブルフラスコに公知の方法により合
成した、エチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネ
ン共重合体(プロピレン含量28%、エチリデンノルボ
ルネン含量1%、ポリスチレン換算重量平均分子量8
万)20g、デカリン150mlをセパラブルフラスコ
に仕込み窒素置換を行ない、これにボラン−トリエチル
アミン錯体0.21g、トリメチルボレート4.6gを
添加した。200℃で3時間反応を行なった後、室温に
冷却し、得られたポリマ−溶液を、メタノ−ル:アセト
ン=1:1の混合溶媒で再沈後、トルエン100mlに
溶かし、さらにエチレングリコール1mlを添加して室
温で5時間撹拌した。この溶液をアセトンで再沈し、さ
らに100℃で12時間真空乾燥することにより、ポリ
スチレン換算重量平均分子量10万の、側鎖にボロン酸
エチレングリコールエステル0.07meq/g有し、
かつ前記ボロン酸エステル基はsp3炭素原子に結合し
ているエチレン−プロピレン共重合体を得た。
【0049】実施例8 末端にボロン酸エチレングリコールエステル基を有する
エチレンープロピレン共重合体の合成:撹拌機および冷
却器を有するセパラブルフラスコに実施例2で得られた
エチレンープロピレン共重合体20g、トルエン100
mlおよびエチレングリコール1gを仕込み窒素置換を
行った。撹拌しながら80℃に加熱溶解後、さらに30
分間加熱した。得られた溶液をアセトンで再沈後、真空
乾燥することによりポリスチレン換算の重量平均分子量
13万の、末端にボロン酸エチレングリコールエステル
基を0.018meq/g有し、かつ前記ボロン酸エス
テル基はsp3炭素原子に結合しているエチレン−プロ
ピレン共重合体を得た。
【0050】実施例9 実施例4の末端にボロン酸エチレングリコールエステル
基を有するポリプロピレン5gとクラレ製エバール(登
録商標)−F101(エチレン含有量32モル%、ケン
化度99.5%、含水フェノール中30℃における極限
粘度1.1dl/gのエチレン−ビニルアルコール共重
合体)45gを用い、以下の条件で溶融混練を行った。 使用機械 :プラストグラフ ローター形状:ローラー型 回転数 :80rpm 混練温度 :220℃ 混練時間 :10分 上記の方法によって得られた樹脂組成物を、220℃で
熱プレスすることにより厚さ100μmのフィルムにし
た。このフィルムを液体窒素中で破断し、破断面を14
0℃キシレンにより抽出後、走査電子顕微鏡により破断
面を観察した。その結果、ポリプロピレンの平均粒径は
0.3μmで、このプレスフィルムのヘイズは13%で
あった。このフィルム片を加圧条件下で110℃の熱水
で30分処理したがフィルムの形状はほとんど変化しな
かった。
【0051】比較例1 末端にボロン酸エチレングリコールエステル基を有する
ポリプロピレン5gの代わりに、合成例4のフェニルボ
ロン酸エチレングリコールエステル基を有するポリプロ
ピレン5gを用いた他は、実施例8と同様にしてフィル
ムを得たところ、ポリプロピレンの平均分散粒径は0.
6μm、ヘイズは22%であった。また110℃熱水で
30分処理したがフィルムの形状はほとんど変化しなか
った。
【0052】比較例2 末端にボロン酸エチレングリコールエステル基を有する
ポリプロピレン5gの代わりに、合成例1の末端に二重
結合を有するポリプロピレン5gを用いた他は、実施例
8と同様にしてフィルムを得たところ、ポリプロピレン
の平均分散粒径は5μm、フィルムのヘイズは38%で
あり、相溶性、透明性共に不良であった。また110℃
の熱水処理により一部変形した。
【0053】比較例3 クラレ性エバール(登録商標)−F101のみを220
℃で熱プレスした後、実施例8と同様な条件で熱水処理
を行なった結果、完全に原形をとどめない状態になっ
た。
【0054】実施例10 末端にボロン酸エチレングリコールエステル基を有する
ポリプロピレンの代わりに実施例2の末端にボロン酸基
を有するエチレン−プロピレン共重合体10gを使用
し、さらにクラレ製エバール(登録商標)−F101
(エチレン含量32モル%、含水フェノ−ル中30℃に
おける極限粘度1.1dl/g)45gの代わりに同エ
バール(登録商標)40gを用いた他は、実施例9と同
様にしてフィルムを得たところ、フィルム中のエチレン
−プロピレン共重合体の平均分散粒径は0.3μm、フ
ィルムのヘイズは40%であった。さらに上記組成物を
小型射出成形機により成形した試料片のノッチ付きIz
od衝撃強度をJISK7120の方法に従って測定し
たところ破断しなかった。
【0055】比較例4 末端にボロン酸基を有するエチレン−プロピレン共重合
体10gの代わりに合成例2の末端に二重結合を有する
エチレン−プロピレン共重合体10gを用いた他は実施
例10と同様にしてフィルムを得たところ、フィルム中
のエチレン−プロピレン共重合体の平均分散粒径は6μ
m、フィルムのヘイズは78%であり、さらに射出成形
した試料片のノッチ付きIzod衝撃強度は8Kgfc
m/cm 2であった。
【0056】比較例5 クラレ製エバール(登録商標)−F101のみを用い実
施例10と同様に射出成形した試料片のノッチ付きIz
od衝撃強度は2.1Kgfcm/cm2であった。
【0057】実施例11 末端にボロン酸エチレングリコールエステル基を有する
エチレン−プロピレン共重合体10gの代わりに実施例
3の末端にボロン酸基を有する低密度ポリエチレン5g
を用い、さらにクラレ製エバール(登録商標)−F10
1(エチレン含量32モル%、含水フェノ−ル中30℃
における極限粘度1.1dl/g)40gの代わりにク
ラレ製エバール(登録商標)−F101を45g用いた
他は実施例3と同様にしてフィルムを得たところ、フィ
ルム中のポリエチレンの平均分散粒径は0.4μm、フ
ィルムのヘイズは12%、試料片のノッチ付きIzod
衝撃強度は12Kgfcm/cm2であった。
【0058】比較例6 末端にボロン酸基を有する低密度ポリエチレン5gの代
わりに低密度ポリエチレン(ポリスチレン換算重量平均
分子量16万)5gを用いた他は実施例11と同様にし
てフィルムを得たところ、フィルム中のポリエチレンの
平均分散粒径は4μm、フィルムのヘイズは20%、さ
らに射出成形した試料片のノッチ付きIzod衝撃強度
は3.5Kgfcm/cm2であった。
【0059】
【発明の効果】本発明によれば、各種熱可塑性樹脂、特
にエチレン−ビニルアルコール系共重合体などの多価水
酸基を有する重合体との良好な相溶性を有するオレフィ
ン系重合体が得られる。また、本発明のオレフィン系重
合体は、エチレン−ビニルアルコール共重合体の耐衝撃
性、耐熱水性等の性能の向上に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1により得た末端にボロン酸基を有す
るポリプロピレンの270MHz1H−NMRチャ−ト
を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08F 8/00 - 8/50

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(II)で示されるボロン酸基; 【化1】 または下記一般式(III)で示されるボロン酸エステ
    ル基、下記一般式(IV)で示されるボロン酸無水物
    基、下記一般式(V)で示されるボロン酸塩基からなる
    群より選ばれる少なくとも一種のホウ素含有基; 【化2】 【化3】 【化4】 {式中、X,Yは水素原子、脂肪族炭化水素基(炭素数
    1〜20の直鎖状、または分岐状アルキル基、またはア
    ルケニル基など)、脂環式炭化水素基(シクロアルキル
    基、シクロアルケニル基など)、芳香族炭化水素基(フ
    ェニル基、ビフェニル基など)を表わし、X,Yは同じ
    基でもよいし、異なっていてもよい。また、XとYは結
    合していてもよい。ただしX,Yがともに水素原子であ
    る場合は除かれる。またR,R,Rは上記X,Y
    と同様の水素原子、脂肪族炭化水素原子、脂環式炭化水
    素基、芳香族炭化水素基を表わし、R,R,R
    同じ基でもよいし、異なっていてもよい。またMはアル
    カリ金属またはアルカリ土類金属を表わす。また上記の
    X,Y,R,R,Rには他の基、例えば、水酸
    基、カルボキシル基、ハロゲン原子などを有していても
    よい。ただし、X、Yがともに脂肪族炭化水素基である
    場合には、XとYは互いに結合していなければならな
    い。}の少なくとも一種の官能基を有し、下記式
    (I); 【化5】 (式中、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキ
    ル基を示す。)で示される繰り返し構成単位を有するオ
    レフィン系重合体であり、かつ前記ボロン酸基またはホ
    ウ素含有基は、前記重合体中のsp炭素原子に結合し
    ているオレフィン系重合体。
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