JP3345589B2 - 餅様食感を有する発酵乳及びその製造方法 - Google Patents

餅様食感を有する発酵乳及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、餅様食感を有する
発酵乳及びその製造方法に関する。本発明の発酵乳は、
従来の発酵乳にないくず餅やわらび餅に似た餅様の食感
を有するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、デザート類であるゼリー、プリ
ン、アイスクリームをはじめとし、発酵乳に関しても嗜
好の多様化が進み、従来にないような味、食感又は機能
性を有するデザートの開発が盛んである。従来、ゼリー
と言えば、果汁等の風味を有する溶液にゲル化剤を添加
したゾル溶液(コロイド粒子が液体中に浮かんでいる状
態)を冷し固めた弾性を有するゲル状の食品のことを指
していた。最近では、ゾル溶液や、ゾルとゲルの中間の
物性のゼリーの様なデザート類も提供されている。
【0003】一方で、ヨーグルトのような発酵乳製品で
は、製造時に添加する安定剤の種類や添加量を調整する
ことにより、食感をある程度コントロールすることがで
きる。しかしながら、発酵乳の場合は乳酸菌を用いた発
酵工程を行わなければならず、その製造工程が複雑であ
るため、ゼリーの場合のように新規な物性を発酵乳に付
与することは容易でなく、新規な物性や食感を有する発
酵乳を提供するまでには至っていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の発酵
乳にはない新規な食感を有する発酵乳を提供することを
課題とする。すなわち、本発明は餅様食感を有する発酵
乳を提供することを課題とする。
【0005】本発明において餅様食感とは、くず餅やわ
らび餅のような食感をいい、TPA測定において、硬さ
50g以上、付着性−10g・mm以下、弾力性0.9
以上及び凝集性0.7以下の物性を示す発酵乳において
得られる食感である。TPA測定は、官能的な食感を数
値的に評価する方法であり、テクスチャーアナライザー
(Stable Micro Systems社製)を用いて行うことがで
き、アルミニウム製円柱プローブ(直径20mm)を用
いて、進入深度:20mm、進入速度:10mm/秒、
測定容器:上方開口内径55mm×底部内径40mm×
深さ55mm、中心軸を通る縦断面が台形形状、サンプ
ル充填:上記容器に底部から高さ40mmまで充填、測
定温度:5℃の条件により行なわれる。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上述した課
題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、(1)乳に、多糖産
生乳酸菌と、ゲル化剤又はトランスグルタミナーゼとを
添加して、発酵させることにより、又は(2)乳に多糖
産生乳酸菌を添加し、発酵させ、得られた発酵乳にゲル
化剤を添加することにより、餅様食感を有する発酵乳が
得られることを見出し本発明を完成させるに至った。
【0007】多糖産生乳酸菌は、発酵により多糖を生産
し、乳に極めて特徴的な粘性と曳糸性をもたらすことが
知られている(特開平3−229702号公報)。そこ
で、このような多糖産生乳酸菌の性質を利用して、従来
にない餅様食感を有する発酵乳の製造方法について検討
した。すると、原料乳に対して、多糖産生乳酸菌と、ゲ
ル化剤又はトランスグルタミナーゼとを併用することに
より、多糖産生乳酸菌が生成した粘性及び曵糸性を有す
る発酵乳中に、ゲル化剤によるゲルのネットワークの形
成、あるいはトランスグルタミナーゼによる乳のタンパ
ク質分子の架橋によるゲル構造の形成が行なわれ、粘性
による曳糸性だけが優勢であった多糖類含有発酵乳の組
織に、独特な弾性等が付与されて餅様の食感を呈する組
織が形成されることがわかった。また、多糖産生乳酸菌
によって原料乳を発酵させて得た粘性を有する発酵乳に
ゲル化剤を添加することによっても餅様の食感を有する
発酵乳が得られることもわかった。
【0008】すなわち、本発明にかかる餅様食感を有す
る発酵乳は、以下の条件: プローブ:直径20mmのアルミニウム製円柱プロー
ブ 進入深度:20mm 進入速度:10mm/秒 測定容器の測定用試料が充填される中空部分の形状お
よびサイズ: 上方開口内径:55mm 深さ:55mm 底部内径:40mm 中心軸を通る縦断面形状:台形 測定用試料の充填:上記測定容器内中空部の底部から
40mmまでの高さまで充填 測定温度:5℃ によるTPA測定において、硬さ50g以上、付着性−
10g・mm以下、弾力性0.9以上及び凝集性0.7
以下を示すことを特徴とする。
【0009】また、本発明にかかる餅様食感を有する発
酵乳の第1の製造方法は、ゲル化剤の存在下で、原料乳
を多糖産生乳酸菌により発酵させた後、冷却する工程を
有することを特徴とするものである。また、第2の製造
方法は、トランスグルタミナーゼの存在下で、原料乳を
多糖産生乳酸菌により発酵させた後、冷却する工程を有
することを特徴とするものである。また、第3の製造方
法は、原料乳に多糖産生乳酸菌を添加し、発酵させて得
られる粘性発酵乳にゲル化剤を添加撹拌して、冷却させ
る工程を有することを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の餅様食感を有する発酵乳
は、ゲル化用材料の添加時期を基準として(1)乳に多
糖産生乳酸菌と、ゲル化剤又はトランスグルタミナーゼ
とを添加して、発酵させる後発酵方式、又は(2)乳に
多糖産生乳酸菌を添加し、発酵させ、得られた粘性を有
する発酵乳にゲル化剤を添加する前発酵方式の2つの方
式に基づく製造方法により製造することができる。
【0011】(1)の後発酵方式よる製造方法には、ゲ
ル化用材料の種類により、ゲル化剤を用いる第1の製造
方法とトランスグルタミナーゼを用いる第2の製造方法
が含まれる。ゲル化剤を用いる第1の製造方法の場合
は、例えば原料乳にゲル化剤を添加し、予め還元脱脂乳
で継代培養した多糖産生乳酸菌のスターターを添加、混
合して、容器に充填した後、発酵させることにより餅様
食感を有する発酵乳が得られる。また、トランスグルタ
ミナーゼを用いる第2の製造方法の場合は、原料乳に、
予め還元脱脂乳で継代培養した多糖産生乳酸菌のスター
ター及びトランスグルタミナーゼを添加、混合して、容
器に充填した後、発酵させることにより、餅様食感の発
酵乳が得られる。
【0012】本発明において原料乳としては、発酵乳の
製造に通常用いられる乳で、多糖産生乳酸菌が生育で
き、多糖産生発酵を行うことができるものであればいず
れの乳を使用してもよく、例えば、生乳、脱脂乳又は脱
脂粉乳等を還元した還元乳等を挙げることができる。な
お、原料乳の固形分濃度は10重量%以上とすることが
好ましく、また、固形分濃度の上限は30〜35重量%
の範囲にあることが好ましい。
【0013】脱脂乳や脱脂粉乳を用いてゲル化剤による
後発酵方式を採用する場合には、還元前にゲル剤を混合
してから還元して発酵工程に供することもできる。ま
た、原料乳には、甘味付与のためにショ糖等の糖類、風
味付与のためにバターミルク、クリーム等、更には各種
香料等を添加してもよい。
【0014】本発明における乳酸菌スターターとして
は、粘性を示す多糖を産生し、食品用として用いられる
乳酸菌であればいずれの乳酸菌を使用してもよい。この
多糖産生乳酸菌には、例えば、ホエー分離を抑制する効
果を有するもの(J. Food Microbiol. (1990) 11: 313-
320; 特願平8−224060号公報)、製品に脂肪を
配合しても脂肪の乳化状態を安定化させる効果を有する
もの(特願平9−175号公報)等もあり、これらも本
発明に好適に利用できる。更に、この多糖産生乳酸菌と
しては、発酵乳に20〜500cP程度の粘性を付与で
きるものが好ましい。多糖産生乳酸菌としての具体例と
しては、例えば、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピ
ーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cre
moris) SBT0495 (FERM P-10053) 又はストレプトコッカ
ス・クレモリス(Streptococcus cremoris) SBT 1209 (F
ERM P-8308)を挙げることができる。また、乳酸菌は予
め、10重量%還元脱脂乳で継代培養し、これを原料乳
に対して0.5〜5重量%添加することが好ましい。
【0015】本発明においてゲル化剤としては、pH4
〜5においてゲル構造を形成又は維持できるゲル化剤で
あればいずれのゲル化剤を使用してもよく、例えば、寒
天、ゼラチン、ペクチン、デンプン、カラギーナン、ジ
ェランガム、カードラン、アルギン酸又はマンナンを例
示することができる。これらのゲル化剤は本発明の効果
を損なわない範囲内で2種以上を組み合わせて用いるこ
とができる。2種の組合せを用いた場合は、カラギーナ
ンとローカストビーンガムの組合せ、又はキサンタンと
ローカストビーンガムの組合せが好ましい。ゲル化剤の
種類により得られる餅様の物性が異なるので、その添加
量は、多糖産生乳酸菌によって得られる発酵乳の物性と
の組合せも考慮して所望とする物性、すなわち先に挙げ
た測定条件を採用したTPA測定において、硬さ50g
以上、付着性−10g・mm以下、弾力性0.9以上及
び凝集性0.7以下の物性が得られるように設定され
る。また本発明においては、トランスグルタミナーゼを
使用しても餅様食感の発酵乳を調製することができ、そ
の添加量は、少なくとも50units/kgの割合で添加
することが好ましい。
【0016】次いで、本発明における餅様食感を有する
発酵乳の3通りの製造方法(第1〜第3の製造方法)に
ついて、その一例を説明する。
【0017】(1)第1の製造方法(後発酵方式) 原料乳に多糖産生乳酸菌及びゲル化剤を添加して、発酵
させることによって調製する前発酵方式を用いた第1の
製造方法について説明する。脱脂粉乳を固形分濃度が1
6重量%になるように還元して原料乳を調製し、カラギ
ーナンとローカストビーンガムを2:1(重量比)で配
合したゲル化剤を0.1〜0.2重量%添加し、90〜
100℃で加熱殺菌してゲル化剤を溶解した後、37〜
40℃まで冷却する。乳酸菌スターターとしてラクトコ
ッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lac
tococcus lactis subsp. cremoris) SBT 0495 (FERM P-
10053)を予め10重量%の還元脱脂乳で培養しておく。
これを乳酸菌スターターとして1〜3重量%添加、撹拌
し、温度を37〜40℃に保持したまま適当な大きさの
容器に充填し、充填後16〜20℃まで冷却し、pH5
以下になるまで、約20時間発酵させる。なお、この方
法では乳酸菌スターターによる発酵の時点で、ゲル化剤
によるゲルの網目構造の中に包含されて乳酸菌が固定さ
れるため、局部的に多糖が生産されることはない。
【0018】(2)第2の製造方法(後発酵方式) 原料乳に多糖産生乳酸菌及びトランスグルタミナーゼを
添加して、発酵させることによって調製する方法につい
て説明する。脱脂粉乳を固形分濃度が16重量%になる
ように還元して原料乳を調製し、これを90〜100℃
で加熱殺菌した後、37〜40℃まで冷却する。乳酸菌
スターターとしてラクトコッカス・ラクチス・サブスピ
ーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cre
moris) SBT 0495 (FERM P-10053) を予め10重量%の
還元脱脂乳で培養してスターターを調製しておく。原料
乳に、このスターターを1〜3重量%、トランスグルタ
ミナーゼを100units/kg添加し、温度を37〜4
0℃に保持したまま適当な大きさの容器に充填し、充填
後16〜20℃まで冷却し、pH5以下になるまで、約
20時間発酵させる。なお、トランスグルタミナーゼと
しては、粉末を水に溶解し、フィルターを用いて濾過滅
菌して予め調製した溶解液を用いた。なお、この方法で
は乳酸菌スターターによる発酵の進行と併行して、トラ
ンスグルタミナーゼによるタンパク質の架橋形成が進行
して乳酸菌が固定されるため、局部的に多糖が生産され
ることはない。
【0019】(3)第3の製造方法(前発酵方式) 次に、乳に多糖産生乳酸菌を添加し、発酵させて粘性発
酵物を得、これにゲル化剤を添加して餅様食感を有する
発酵乳を製造する方法について説明する。脱脂粉乳を固
形分濃度が16重量%になるように還元して原料乳を調
製し、90〜100℃で殺菌し、その後、16〜20℃
まで冷却する。乳酸菌スターターとして、ラクトコッカ
ス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactoco
ccus lactis subsp. cremoris) SBT 0495 (FERM P-1005
3) を予め10重量%の還元脱脂乳で培養してスタータ
ーを調製しておく。原料乳にこのスターターを1〜3重
量%添加し、16〜20℃でpHが5以下になるまで、
約20時間発酵を行い、発酵物として粘性を有する発酵
乳を得る。なお、原料乳の固形分濃度が10重量%以上
で静置発酵を行った場合、発酵が局部的に進行すること
があるので、20〜30rpmの低速で撹拌しながら発
酵を進行させることが好ましい。
【0020】次いで、カラギーナンとローカストビーン
ガムを2:1(重量比)で配合したゲル化剤を0.1〜
0.2重量%添加し、80℃以上の温度で完全に溶解さ
せ、約37〜40℃で保持してゲル化剤溶液を調製す
る。先に調製した粘性を有する発酵乳を約37〜40℃
まで加温した後、このゲル化剤溶液と混合するが、この
際、撹拌速度が速すぎると粘性発酵物特有の組織が破壊
されてしまうため、20〜30rpmの低速で撹拌する
ことが好ましい。この混合物を温度を保持したまま適当
な大きさの容器に充填して冷却し、ゲル化剤をゲル化さ
せ、餅様食感を有する発酵乳を得る。
【0021】この第3の方法における各工程の操作条件
や原料等の物性は、最終的に得られる餅様食感を有する
発酵乳の物性が、TPA測定において先に規定される範
囲にあるように適宜設定される。例えば、ゲル化剤添加
前の粘性発酵乳は、先に述べた条件でのテクスチャーア
ナライザー(Stable Micro Systems社製)を用いたTP
A測定による物性が、硬さ10g以上、付着性−10g
・mm以下、弾力性0.9以上、凝集性0.9以下を示
すものであることが望ましい。
【0022】以上のような各種の方法を用いて得られる
本発明の餅様食感を有する発酵乳は、先に規定された条
件におけるTPA測定において、硬さ50g以上、付着
性−10g・mm以下、弾力性0.9以上及び凝集性
0.7以下を示すものである。なお、硬さの上限は50
0g、付着性の下限は−200g・mm、弾力性の上限
は1.0、凝集性の下限は0.2程度が目安である。
【0023】
【実施例】以下に実施例及び試験例を示して本発明をよ
り詳しく説明する。
【0024】試験例1 多糖産生乳酸菌を用いて粘性発酵乳を調製し、TPA
(テクスチャー・プロファイル・アナリシス)測定によ
り、得られた各発酵乳の物性の測定を行った。
【0025】粘性発酵乳の調製は、脱脂粉乳を10重量
%又は16重量%に還元した還元脱脂乳を95℃で加熱
殺菌した後、18℃まで冷却し、これに乳酸菌スタータ
ーとして多糖産生乳酸菌であるラクトコッカス・ラクチ
ス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lacti
s subsp. cremoris) SBT 0495 (FERM P-10053)を2%
(v/v)添加し、18℃で20時間発酵させた。
【0026】得られた粘性発酵乳の物性と、比較のため
の市販のわらび餅及びくず餅の物性をTPA測定により
測定した。結果を表1に示す。
【0027】TPA測定は、Stable Micro Systems社製
のテクスチャーアナライザーを用い、以下の条件で行っ
た。 ・プローブ:アルミニウム製円柱プローブ (直径20m
m) ・進入深度と速度:20mm、10mm/秒 ・測定容器:サンプルが充填される中空部分のサイズが
上方開口内径55mm×底部内径40mm×深さ55m
mであり、中心軸を通る縦断面が台形形状である。 ・サンプル充填:上記容器を上方開口を上にして垂直に
立て、底部から高さ40mmまで充填した。 ・測定温度:5℃
【0028】
【表1】 表1の結果から、多糖産生乳酸菌による粘性発酵乳とわ
らび餅及びくず餅とでは、硬さ、付着性及び凝集性の値
に大きな差があったが、弾力性についてほぼ同等の値を
示した。
【0029】本発明において餅様食感とは、わらび餅又
はくず餅の食感を目標とすることから、上記の測定条件
におけるTPA測定での硬さ、付着性、弾力性及び凝集
性を指標とすると、硬さ50g以上、付着性−10g・
mm以下、弾力性0.9以上及び凝集性0.7以下の値
を示すものを餅様食感とした。
【0030】試験例2 粘性発酵乳にゲル化剤を配合する前発酵方式による製造
法において、原料乳の固形分濃度とゲル化剤の配合率が
もたらす餅様食感の関係について検討した。
【0031】脱脂粉乳を最終濃度5、10、15、2
0、25重量%となるように還元し、95℃で加熱殺菌
してから18℃まで冷却した。この原料乳に、10重量
%還元脱脂乳で継代培養した多糖産生乳酸菌のラクトコ
ッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lac
tococcus lactis subsp. cremoris)SBT0495(FERM P-100
53)を乳酸菌スターターとして2%(v/v) 添加し、18
℃で20時間発酵を行い、pHが5以下であることを確
認してから、約38℃まで加温し、粘性発酵乳を得た。
【0032】なお、原料乳の固形分濃度が15%以上で
は、乳酸菌が産生する多糖により発酵が局部的に進行す
ることがあるため、低速(20〜30rpm)で撹拌し
ながら発酵を行った。
【0033】得られた粘性発酵乳を38℃で保持しなが
ら、カラギーナンとローカストビーンガムを2:1で含
有するゲル化剤(ゲルアップPI-H:三栄源FFI社製)
を0、0.05、0.10、0.15、0.20重量%
添加、撹拌して100mlの容器に充填し、5℃に冷却
した。
【0034】試験例1に示した測定条件でTPA測定を
行い、硬さ、付着性、弾力性及び凝集性の値を測定し
た。そして、試験例1で規定した餅様食感を示す数値と
比較して、全ての数値を満たすものを○、満たさないも
のを×とした。結果を表2に示す。
【0035】
【表2】 表2に示した結果から、ゲル化剤を配合しない場合、又
は原料の還元脱脂乳の濃度が5重量%の場合、試験例1
で規定した餅様食感は発現しなかった。一方で、ゲル化
剤の濃度が0.05重量%の場合、還元脱脂乳の濃度が
25重量%で餅様食感が発現し、ゲル化剤の濃度が0.
10重量%の場合、還元脱脂乳の濃度が15重量%以上
で餅様食感が発現し、ゲル化剤の濃度が0.15重量%
及び0.20重量%の場合、還元脱脂乳濃度が10重量
%以上で餅様食感が発現することが確認された。
【0036】試験例3 ゲル化剤を配合した原料乳を発酵させる後発酵方式によ
る製造方法において、原料乳の固形分濃度とゲル化剤の
配合率がもたらす食感との関係について検討した。
【0037】脱脂粉乳を最終濃度5、10、15、2
0、25重量%となるように還元し、それぞれの濃度の
還元脱脂乳に、カラギーナンとローカストビーンガムを
2:1で含有するゲル化剤(ゲルアップPI-H:三栄源F
FI社製)を0、0.05、0.10、0.15、0.
20重量%添加した。これを95℃で加熱殺菌した後、
18℃まで冷却し、乳酸菌スターターとして10重量%
還元脱脂乳で継代培養した多糖産生乳酸菌のラクトコッ
カス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス(Lacto
coccus lactis subsp. cremoris) SBT 0495 (FERM P-10
053) を2%(v/v)添加し、18℃で20時間発酵を行
い、pHが5以下であることを確認してから、約38℃
まで加温し、粘性発酵乳を得た。
【0038】試験例1に示した測定条件でTPA測定を
行い、硬さ、付着性、弾力性及び凝集性の値を測定し
た。そして、試験例1で規定した餅様食感を示す数値と
比較して、全ての数値を満たすものを○、満たさないも
のを×とした。結果を表3に示す。
【0039】
【表3】 表3に示した結果から、ゲル化剤を配合しない場合、原
料の還元脱脂乳の濃度にかかわらず、試験例1で規定し
た餅様食感は発現しなかった。一方で、ゲル化剤の濃度
が0.05重量%の場合、還元脱脂乳の濃度が15重量
%以上で餅様食感が発現し、ゲル化剤の濃度が0.10
重量%、0.15重量%及び0.20重量%の場合、還
元脱脂乳の濃度が5重量%以上で餅様食感が発現するこ
とが確認された。
【0040】試験例4 トランスグルタミナーゼによるゲル化と発酵を同時に進
行させる後発酵方式による製造方法において、原料乳の
固形分濃度とトランスグルタミナーゼの配合率がもたら
す食感との関係について検討した。
【0041】脱脂粉乳を最終濃度5、10、15、2
0、25重量%となるように還元し、95℃で加熱殺菌
した後、18℃まで冷却した。この温度で保持した原料
乳に、10重量%還元脱脂乳で継代培養した多糖産生乳
酸菌のラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・
クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris) SBT
0495 (FERM P-10053)を2%(v/v) 添加した。次いで、
トランスグルタミナーゼ製剤 (アクティバTG-S:味の素
社製) を酵素活性で0、50、100、150、200
units/kg添加、撹拌して100mlの容器に充填し、
18℃で20時間発酵を行い、pHが5以下であること
を確認してから、約38℃まで加温し、粘性発酵乳を得
た。
【0042】なお、トランスグルタミナーゼを添加する
際は、酵素粉末を水に溶解した後フィルターを用いて濾
過滅菌して得た濾液を添加した。
【0043】試験例1に示した測定条件でTPA測定を
行い、硬さ、付着性、弾力性及び凝集性の値を測定し
た。そして、試験例1で規定した餅様食感を示す数値と
比較して、全ての数値を満たすものを○、満たさないも
のを×とした。結果を表4に示す。
【0044】
【表4】 表4に示した結果から、トランスグルタミナーゼ製剤を
配合しない場合、又は原料の還元脱脂乳の濃度が5重量
%の場合、試験例1で規定した餅様食感は発現しなかっ
た。一方で、トランスグルタミナーゼ活性が50units
/kgの場合、還元脱脂乳の濃度が25重量%で餅様食感
が発現し、トランスグルタミナーゼ活性が100units
/kgの場合、還元脱脂乳の濃度が15重量%以上で餅様
食感が発現し、トランスグルタミナーゼ活性が150un
its/kg及び200units/kgの場合、還元脱脂乳の濃度
が10重量%以上で餅様食感が発現することが確認され
た。
【0045】実施例1 脱脂粉乳40kgを50℃の温湯160kgに溶解し、
20重量%の還元脱脂乳200kgを調製して、95℃
で15分間加熱殺菌した後、18℃まで冷却し原料乳と
した。この原料乳に、10重量%還元脱脂乳で継代培養
しておいた多糖産生乳酸菌のラクトコッカス・ラクチス
・サブスピーシーズ・クレモリス(Lactococcus lactis
subsp. cremoris) SBT 0495 (FERM P-10053) を乳酸菌
スターターとして4kg添加し、発酵タンクの撹拌羽根
を30rpmで撹拌しながら18℃で20時間発酵後、
pHが5以下であることを確認し、約38℃まで加温し
て粘性発酵乳を得た。また、カラギーナンとローカスト
ビーンガムを2:1で含有するゲル化剤(ゲルアップPI
-H、三栄源FFI社製)400g及び砂糖20kgを、
25kgの冷水中に加え、十分に混合してから90℃ま
で加熱してゲル化剤と砂糖を完全に溶解した後、38℃
まで冷却してゲル化剤溶液を調製した。先に調製した粘
性発酵乳200kgにこのゲル化剤溶液を加え、温度3
8℃を保持しながら100mlの容器に充填し、5℃ま
で冷却した。
【0046】なお、試験例1に示した測定条件でTPA
測定を行い、硬さ、付着性、弾力性及び凝集性の値を測
定した。結果を表5に示す。
【0047】実施例2 脱脂粉乳80kgと甘味料としての砂糖40kg及びゲ
ル化剤(ゲルアップPI-H、三栄源FFI社製)1kgを
粉末の状態で混合し、これに50℃の温湯370kgを
加え、粉体物を溶解して原料乳とした。この原料乳を9
5℃で15分間加熱殺菌した後、38℃まで冷却し、1
0重量%還元脱脂乳で継代培養しておいた多糖産生乳酸
菌のラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ク
レモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris) SBT 0
495 (FERM P-10053) を乳酸菌スターターとして10k
g添加、混合し、温度を38℃に保持しながら100m
lの容器に充填し、18℃で20時間発酵させ、pHが
5以下になったことを確認して発酵を終了させた。
【0048】なお、試験例1に示した測定条件でTPA
測定を行い、硬さ、付着性、弾力性及び凝集性の値を測
定した。結果を表5に示す。
【0049】実施例3 脱脂粉乳20kg及び甘味料としての砂糖10kgを粉
末の状態で混合し、これに50℃の温湯60kgを加
え、粉体物を溶解して原料乳とした。この原料乳を95
℃で15分間加熱殺菌してから18℃まで冷却し、10
重量%還元脱脂乳で継代培養しておいた多糖産生乳酸菌
のラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレ
モリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris) SBT 049
5 (FERM P-10053) を乳酸菌スターターとして2kg添
加した。次いで、冷水10kgに溶解したトランスグル
タミナーゼ製剤(アクティバTG-S:味の素社製)1kg
を、0.2μmの孔径を有する濾過膜を通して濾過滅菌
しながら、原料乳に100units/kg添加し、乳酸菌ス
ターターとトランスグルタミナーゼを十分に混合した
後、温度を18℃に保持しながら100mlの容器に充
填し、18℃で約20時間発酵させ、pHが5以下にな
ったことを確認して発酵を終了させた。
【0050】なお、試験例1に示した測定条件でTPA
測定を行い、硬さ、付着性、弾力性及び凝集性の値を測
定した。結果を表5に示す。
【0051】
【表5】
【0052】
【発明の効果】本発明によれば、多糖産生乳酸菌により
産生される特有の粘性や糸曳性を有する発酵乳にゲル化
剤又はトランスグルタミナーゼにより形成されるゲル構
造を付与することにより、発酵乳に餅様食感を発現させ
ることができ、従来にはない新規な餅様食感を有する発
酵乳を提供することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 谷本 守正 北海道札幌市厚別区厚別北4条3丁目9 −5 (72)発明者 上保 健一 東京都国立市東4−1−4 (72)発明者 佐藤 麻子 埼玉県所沢市北秋津778−6サンドリエ 第6所沢202 (72)発明者 守田 未来絵 埼玉県朝霞市三原3−23−5−107 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23C 9/00 - 9/156 A23L 1/054

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の条件: プローブ:直径20mmのアルミニウム製円柱プロー
    ブ 進入深度:20mm 進入速度:10mm/秒 測定容器の測定用試料が充填される中空部分の形状お
    よびサイズ: 上方開口内径:55mm 深さ:55mm 底部内径:40mm 中心軸を通る縦断面形状:台形 測定用試料の充填:上記測定容器内中空部の底部から
    40mmまでの高さまで充填 測定温度:5℃ によるTPA測定において、硬さ50g以上、付着性−
    10g・mm以下、弾力性0.9以上及び凝集性0.7
    以下を示すことを特徴とする餅様食感を有する発酵乳。
  2. 【請求項2】 ゲル化剤の存在下で、原料乳を多糖産生
    乳酸菌により発酵させた後、冷却する工程を有すること
    を特徴とする餅様食感を有する発酵乳の製造方法。
  3. 【請求項3】 トランスグルタミナーゼの存在下で、原
    料乳を多糖産生乳酸菌により発酵させた後、冷却する工
    程を有することを特徴とする餅様食感を有する発酵乳の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 原料乳に多糖産生乳酸菌を添加し、発酵
    させて得られる粘性発酵乳にゲル化剤を添加撹拌して、
    冷却する工程を有することを特徴とする餅様食感を有す
    る発酵乳の製造方法。
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