JP3334684B2 - 電子部品及び無線端末装置 - Google Patents

電子部品及び無線端末装置

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JP3334684B2 JP18286999A JP18286999A JP3334684B2 JP 3334684 B2 JP3334684 B2 JP 3334684B2 JP 18286999 A JP18286999 A JP 18286999A JP 18286999 A JP18286999 A JP 18286999A JP 3334684 B2 JP3334684 B2 JP 3334684B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、移動体通信などの
電子機器に用いられ、特に高周波回路等に好適に用いら
れる電子部品及び製造方法及び無線端末装置に関するも
のである。特に、絶縁性の基体上に導電膜を設けた電子
部品及び無線端末装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図17は従来のインダクタンス素子を示
す側面図である。図17において、1は四角柱状また
は、円柱状の基台、2は基台1の上に形成された導電
膜、3は導電膜2に設けられた溝、4は導電膜2の上に
積層され、電着膜で構成された保護材である。
【0003】この様な電子部品は、溝3の間隔などを調
整することによって、所定の特性に調整する。
【0004】先行例としては、特開平7−307201
号公報,特開平7−297033号公報,特開平5−1
29133号公報,特開平1−238003号公報,実
開昭57−117636号公報,特開平5−29925
0号公報,特開平7−297033号公報等がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、保護材
4を電着膜のみで構成した場合に、電着膜自体の機械的
強度(硬度)が小さく、製造途中や実装の際に、コイル
状に形成された導電膜2に電着膜を介して力が加わり、
コイル状の導電膜2が曲がったりすることによって、シ
ョート等が発生したり、導電膜2が切断したりして、素
子としての特性が劣化するという問題点があった。
【0006】また、素子が小型化されていくとますま
す、前述の様な問題点は顕著に表れてくる。
【0007】本発明は、上記従来の課題を解決するもの
で、保護材の改良によって、素子特性の劣化の防止かも
しくは素子の実装の向上の少なくとも一方を実現できる
電子部品及び無線端末装置を提供することを目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、基台上に設け
られた導電膜に設けられた溝を設け、基台の端部に設け
られた一対の端子部と、溝を覆うように前記導電膜上に
設けられた保護材とを備えた電子部品であって、保護材
は、導電膜側に設けられた電着膜と、前記電着膜上に設
けられた絶縁層とを有し、絶縁層は塗布により構成さ
れ、しかも電着膜よりも絶縁層の方が硬度が高い構成と
した
【0009】
【発明の実施の形態】請求項1記載の発明は、基台と、
前記基台上に設けられた導電膜と、前記導電膜に設けら
れた溝と、前記基台の端部に設けられた一対の端子部
と、前記溝を覆うように前記導電膜上に設けられた保護
材とを備えた電子部品であって、保護材は、導電膜側に
設けられた電着膜と、前記電着膜上に設けられた絶縁層
とを有し、前記絶縁層は塗布により構成され、しかも前
記電着膜よりも前記絶縁層の方が硬度が高いことによっ
て、均一でしかも絶縁性の高い電着膜の上に更に絶縁層
を設けることによって、製造途中や実装の際に導電膜に
ダメージが加わることを防止でき、ショートや断線など
を防止できる。
【0010】請求項2記載の発明は、請求項1におい
て、電着膜の膜厚を10μm〜30μmとしたことによ
って、電着膜の膜厚を10μm以上とすることによっ
て、良好な絶縁性能を有し、しかも膜厚を30μm以下
とすることによって、保護材の表面形状を良好にし、実
装の際の吸着特性を向上させることができるとともに、
自己共振周波数f0を向上させるとともにQ値の劣化を
防止できる。
【0011】請求項3記載の発明は、請求項1におい
て、絶縁層の膜厚を5μmから20μmとしたことによ
って、保護材の強度と実装性の向上を行うことができ
る。
【0012】請求項4記載の発明は、請求項1におい
て、電着膜の厚みを1とした場合に絶縁層の厚みを0.
1〜1としたことによって、強度を保ちつつ実装性を向
上させる。
【0013】請求項5記載の発明は、請求項1におい
て、電着膜の構成材料はアクリル系樹脂、エポキシ系樹
脂、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂
の内少なくとも一つを用いたことによって、均一でしか
も十分な絶縁性能を有することができる。
【0014】請求項6記載の発明は、絶縁層の構成材料
はエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂の内少なくとも一つ
としたことによって、電着膜の補強を簡単に行え、しか
も十分な絶縁性能を得ることができる。
【0015】請求項7記載の発明は、請求項1におい
て、絶縁層の硬度を鉛筆硬度で4H〜9Hとしたこと
とによって、絶縁層にクラックが生じることを防止で
き、導電膜等の保護を確実に行える
【0016】請求項8記載の発明は、請求項1〜7にお
いて、基台を底面が略正方形状の角柱状とした事によっ
て、簡単な構成で、しかも素子の転がりを抑制できるの
で、コスト面で非常に有利になると共に、基台の作製が
容易になり、生産性が向上し、しかも実装性も向上す
る。
【0017】請求項9記載の発明は、請求項1〜8にお
いて、長さL1,幅L2,高さL3としたときに、 L1=0.2〜2.0mm(好ましくは0.3〜0.8
mm) L2=0.1〜1.0mm(好ましくは0.1〜0.4
mm) L3=0.1〜1.0mm(好ましくは0.1〜0.4
mm) のサイズを有することによって、小型で、しかも素子折
れ等が発生に難いので、実装性にも優れ、しかも非常に
小さな回路基板を構成できる。
【0018】請求項10記載の発明は、請求項1〜9に
おいて、基台の端面に導電膜を介して端子部を設けたこ
とによって、端子部の特性を良好にすることができ、電
気特性を向上させることができる。
【0019】請求項11記載の発明は、請求項1〜9に
おいて、導電膜と溝によって、インダクタンス成分を形
成することによって、コイル状の導電膜に製造途中や実
装の際にダメージが加わることを防止でき、断線やショ
ートによるコイル特性の悪化を防止できるチップインダ
クタを作製することができる。
【0020】請求項12記載の発明は、請求項1〜9に
おいて、導電膜の代わりに抵抗膜を用いた事によって、
製造途中や実装の際に抵抗膜にダメージが加わることを
防止できるので、抵抗の特性劣化を防止できるチップ抵
抗器を作製することができる。
【0021】請求項13記載の発明は、請求項1〜9に
おいて、導電膜を少なくとも2分する溝を設け、容量成
分を有する事によって、製造途中や実装の際に導電膜に
ダメージが加わることを防止できるので、容量の特性劣
化を防止できる、チップコンデンサを作製することがで
きる。
【0022】請求項14記載の発明は、表示手段と、デ
ータ信号もしくは音声信号の少なくとも一方を送信信号
に変換するか受信信号をデータ信号もしくは音声信号の
少なくとも一方に変換する変換手段と、前記送信信号及
び前記受信信号を送受信するアンテナと、各部を制御す
る制御手段を備えた無線端末装置であって、発信回路,
フィルタ回路,アンテナ部及び各段とのマッチング回路
周辺部等の少なくとも一つに請求項1〜13いずれか1
記載の電子部品を用いたことによって、製造の途中や実
装の際に特性が劣化を用いることができるので、端末の
特性劣化や製造上における不良率を低減でき、生産性を
向上させることができる。
【0023】以下、本発明における電子部品及び無線端
末装置の実施の形態についてインダクタンス素子を例に
挙げて具体的に説明する。
【0024】図1,図2はそれぞれ本発明の一実施の形
態におけるインダクタンス素子を示す斜視図及び側断面
図である。
【0025】図1において、11は絶縁材料などをプレ
ス加工,押し出し法等を施して構成されている基台、1
2は基台11の上に設けられている導電膜で、導電膜1
2は、メッキ法やスパッタリング法等の蒸着法等によっ
て基台11上に形成される。
【0026】13は基台11及び導電膜12に設けられ
た溝で、溝13は、レーザ光線等を導電膜12に照射す
ることによって形成したり、導電膜12に砥石等を当て
て機械的に形成されたり、レジストなどを用いた選択的
エッチングによって形成されている。
【0027】14は基台11及び導電膜12の溝13を
設けた部分に塗布された保護材、15,16はそれぞれ
基台11の端部にそれぞれ取り付けられた端子部で、端
子部15と端子部16の間には、基台11が挟み込まれ
ている。すなわち、基台11における端子部15,16
との接合部位は、基台11の端部となり、基台11の側
面と端子部15,16は非接触とすることが基本であ
る。
【0028】また、本実施の形態のインダクタンス素子
は、実用周波数帯域が1〜6GHzと高周波数域に対応
し、しかも非常に高いQ値(35以上)を有しており、
そのインダクタンス素子の長さL1,幅L2,高さL3
は以下の通りとなっていることが好ましい。
【0029】L1=0.2〜2.0mm(好ましくは
0.3〜0.8mm) L2=0.1〜1.0mm(好ましくは0.1〜0.4
mm) L3=0.1〜1.0mm(好ましくは0.1〜0.4
mm) (なお、L1,L2,L3のそれぞれの寸法誤差は0.
02mm以下が好ましい。)L1が0.2mm以下であ
ると、必要とするインダクタンスを得ることができな
い。また、L1が2.0mmを超えてしまうと、素子自
体が大きくなってしまい、電子回路等が形成された基板
など(以下回路基板等と略す)回路基板等の小型化がで
きず、ひいてはその回路基板等を搭載した電子機器等の
小型化を行うことができない。また、L2,L3それぞ
れが0.1mm以下であると、素子自体の機械的強度が
弱くなりすぎてしまい、実装装置などで、回路基板等に
実装する場合に、素子折れ等が発生することがある。ま
た、L2,L3が1.0mm以上となると、素子が大き
くなりすぎて、回路基板等の小型化、ひいては装置の小
型化を行うことができない。
【0030】以上の様に構成されたインダクタンス素子
について、以下各部の詳細な説明をする。
【0031】まず、基台11の形状について説明する。
【0032】基台11は角柱状もしくは円柱状とするこ
とが好ましく、図1,2に示す様に基台11を角柱状と
することによって、実装性を向上させることができ、素
子の転がり等を防止できる等の効果を有する。また、基
台11を角柱状とする中でも特に四角柱状とすることが
非常に実装性や、素子の回路基板上での位置決めを容易
にする。なお、更に好ましくは底面が正方形の直方体と
することが更に実装性等を向上させることができる。更
に、基台11を角柱状とすることによって構造が非常に
簡単になるので、生産性がよく、しかもコスト面が非常
に有利になる。
【0033】また、基台11の形状を円柱状とすること
によって、後述するように基台11上に導電膜12を形
成し、その導電膜12にレーザ加工等によって溝を形成
する場合、その溝の深さなどを精度よく形成することが
でき、特性のばらつきを抑えることができる。
【0034】次に基台11の面取りについて図3を用い
て説明する。
【0035】図3は基台11を示す斜視図である。
【0036】基台11の角部11b,11cには面取り
が施されており、その面取りした角部11b,11cの
それぞれの曲率半径R1及び角部11aの曲率半径R2
は以下の通りに形成されることが好ましい。
【0037】0.03<R1<0.15(mm) 0.01<R2(mm) R1が0.03mm以下であると、角部11b,11c
が尖った形状となっているので、ちょっとした衝撃など
によって角部11b,11cに欠けなどが生じることが
あり、その欠けによって、特性の劣化等が発生したりす
る。また、R1が0.15mm以上であると、角部11
b,11cが丸くなりすぎて、前述のマンハッタン現象
を起こしやすくなり、不具合が生じる。更にR2が0.
01mm以下であると、角部11aにバリなどが発生し
やすく、素子の特性を大きく左右する導電膜12の厚み
が角部11fと平坦な部分で大きく異なることがあり、
素子特性のばらつきが大きくなる。
【0038】次に基台11の構成材料について説明す
る。基台11の構成材料として下記の特性を満足してお
くことが好ましい。
【0039】体積固有抵抗:1013Ωm以上(好ましく
は1014Ωm以上) 熱膨張係数:5×10-4m/℃以下(好ましくは2×1
-5/℃以下)[20℃〜500℃における熱膨張係
数] 比誘電率:1MHzにおいて12以下(好ましくは10
以下) 曲げ強度:1300kg/cm2以上(好ましくは20
00kg/cm2以上) 密度:2〜5g/cm3(好ましくは3〜4g/cm3) 基台11の構成材料が体積固有抵抗が1013Ωm以下で
あると、導電膜12とともに基台11にも所定に電流が
流れ始めるので、並列回路が形成された状態となり、自
己共振周波数f0及びQ値が低くなってしまい、高周波
用の素子としては不向きである。
【0040】また熱膨張係数が5×10-4/℃以上であ
ると、基台11にヒートショック等でクラックなどが入
ることがある。すなわち熱膨張係数が5×10-4/℃以
上であると、上述の様に溝13を形成する際にレーザ光
線や砥石等を用いるので、基台11が局部的に高温にな
り、基台11にクラックなどが生じることあるが、上述
の様な熱膨張係数を有することによって、大幅にクラッ
ク等の発生を抑止できる。
【0041】また、誘電率が1MHzにおいて12以上
であると、自己共振周波数f0及びQ値が低くなってし
まい、高周波用の素子としては不向きである。
【0042】曲げ強度が1300kg/cm2以下であ
ると、実装装置で回路基板等に実装する際に素子折れ等
が発生することがある。
【0043】密度が2g/cm3以下であると、基台1
1の吸水率が高くなり、基台11の特性が著しく劣化
し、素子としての特性が悪くなる。また密度が5g/c
3以上になると、基台の重量が重くなり、実装性など
に問題が発生する。特に密度を上述の範囲内に設定する
と、吸水率も小さく基台11への水の進入もほとんどな
く、しかも重量も軽くなり、チップマウンタなどで基板
に実装する際にも問題は発生しない。
【0044】この様に基台11の体積固有抵抗,熱膨張
係数,誘電率,曲げ強度,密度を規定することによっ
て、自己共振周波数f0やQが低下しないので、高周波
用の素子として用いることができ、ヒートショック等で
基台11にクラック等が発生することを抑制できるの
で、不良率を低減することができ、更には、機械的強度
を向上させることができるので、実装装置などを用いて
回路基板等に実装できるので、生産性が向上する等の優
れた効果を得ることができる。
【0045】上記の諸特性を得る材料としては、アルミ
ナを主成分とするセラミック材料が挙げられる。しかし
ながら、単にアルミナを主成分とするセラミック材料を
用いても上記諸特性を得ることはできない。すなわち、
上記諸特性は、基台11を作製する際のプレス圧力や焼
成温度及び添加物によって異なるので、作製条件などを
適宜調整しなければならない。具体的な作製条件とし
て、基台11の加工時のプレス圧力を2〜5t,焼成温
度を1500〜1600℃,焼成時間1〜3時間等の条
件が挙げられる。また、アルミナ材料の具体的な材料と
しては、Al23が92重量%以上,SiO2が6重量
%以下,MgOが1.5重量%以下,Fe23が0.1
%以下,Na2Oが0.3重量%以下等が挙げられる。
【0046】また、基台11の構成材料として、フェラ
イト等の磁性材料で構成してもよい。基台11をフェラ
イト等の磁性材料で構成すると、高いインダクタンス
(大体18nH〜50nH)を有する素子を形成するこ
とができる。
【0047】次に基台11の表面粗さについて説明す
る。なお、以下の説明で出てくる表面粗さとは、全て中
心線平均粗さを意味するものであり、導電膜12の説明
等に出てくる粗さも中心線平均粗さである。
【0048】基台11の表面粗さは0.15〜0.5μ
m程度、好ましくは0.2〜0.3μm程度がよい。図
4は基台11の表面粗さと剥がれ発生率を示したグラフ
である。図4は下記に示すような実験の結果である。基
台11及び導電膜12はそれぞれアルミナ,銅で構成
し、基台11の表面粗さをいろいろ変えたサンプルを作
製し、その各サンプルの上に同じ条件で導電膜12を形
成した。それぞれのサンプルに超音波洗浄を行い、その
後に導電膜12の表面を観察して、導電膜12の剥がれ
の有無を測定した。基台11の表面粗さは、表面粗さ測
定器(東京精密サーフコム社製 574A)を用いて、
先端Rが5μmのものを用いた。この結果から判るよう
に平均表面粗さが0.15μm以下であると、基台11
の上に形成された導電膜12の剥がれの発生率が5%程
度であり、良好な基台11と導電膜12の接合強度を得
ることができる。更に、表面粗さが0.2μm以上であ
れば導電膜12の剥がれがほとんど発生していないの
で、できれば、基台11の表面粗さは0.2μm以上が
好ましい。導電膜12の剥がれは、素子の特性劣化の大
きな要因となるので、歩留まり等の面から発生率は5%
以下が好ましい。
【0049】図5は本発明の一実施の形態におけるイン
ダクタンス素子に用いられる基台の表面粗さに対する周
波数とQ値の関係を示すグラフである。図5は以下のよ
うな実験の結果である。まず、表面粗さが0.1μm以
下の基台11と、表面粗さが0.2〜0.3μmの基台
11と、表面粗さが0.5μm以上の基台11のそれぞ
れのサンプルを作製し、それぞれのサンプルに同じ材料
(銅)で同じ厚さの導電膜を形成した。そして、各サン
プルにおいて、所定の周波数FにおけるQ値を測定し
た。図5から判るように基台11の表面粗さが0.5μ
m以上であると、導電膜12の膜構造が悪くなることが
原因と考えられるQ値の低下が見られる。特に高周波領
域で顕著にQ値の劣化が見られる。また、自己共振周波
数f0(各線の極大値)も基台11の表面粗さが0.5
μmのものは、低周波側にシフトしている。従ってQ値
の面及び自己共振周波数f0の面から見れば基台11の
表面粗さは0.5μm以下とすることが好ましい。
【0050】以上の様に、導電膜12と基台11との密
着強度,導電膜のQ値及び自己共振周波数f0の双方の
結果から判断すると、基台11の表面粗さは、0.15
μm〜0.5μmが好ましく、さらに好ましくは0.2
〜0.3μmが良い。
【0051】なお、本実施の形態では、導電膜12と基
台11の接合強度を基台11の表面粗さを調整すること
によって、向上させたが、例えば、基台11と導電膜1
2の間にCr単体またはCrと他の金属の合金の少なく
とも一方で構成された中間層を設けることによって、表
面粗さを調整せずとも導電膜12と基台11の密着強度
を向上させることができる。もちろん基台11の表面粗
さを調整し、その上その基台11の上に中間層及び導電
膜12を積層する場合では、より強力な導電膜12と基
台11の密着強度を得ることができる。
【0052】次に導電膜12について説明する。
【0053】導電膜12としては、800MHz以上の
高周波信号に対してQ値が35以上であり、しかも自己
共振周波数が1〜6GHz程度のものが好ましい。この
様な特性の導電膜12を得るためには、材料及び製法等
を選択しなければならない。
【0054】以下具体的に導電膜12について説明す
る。
【0055】導電膜12の構成材料としては、銅,銀,
金,ニッケルなどの導電材料が挙げられる。この銅,
銀,金,ニッケル等の材料には、耐候性等を向上させた
ために所定の元素を添加してもよい。また、導電材料と
非金属材料等の合金を用いてもよい。構成材料としてコ
スト面や耐食性の面及び作り易さの面から銅及びその合
金がよく用いられる。導電膜12の材料として、銅等を
用いる場合には、まず、基台11上に無電解メッキによ
って下地膜を形成し、その下地膜の上に電解メッキにて
所定の銅膜を形成して導電膜12が形成される。更に、
合金等で導電膜12を形成する場合には、スパッタリン
グ法や蒸着法で構成することが好ましい。
【0056】更に、本実施の形態の様に、導電膜12を
例えば銅などで構成し、その膜厚を厚くして自己発熱を
抑える場合、導電膜12に形成される溝13の幅K1と
溝13と溝13の間の導電膜12の幅K2は以下の関係
を有する事が好ましい。
【0057】20μm>K1>15μm 200μm>K2>100μm 特に前述の様に長さL1,幅L2,高さL3を、 L1=0.2〜2.0mm(好ましくは0.3〜0.8
mm) L2=0.1〜1.0mm(好ましくは0.1〜0.4
mm) L3=0.1〜1.0mm(好ましくは0.1〜0.4
mm) (なお、L1,L2,L3のそれぞれの寸法誤差は0.
02mm以下が好ましい。)としたインダクタンス素子
とした場合、上述のK1,K2は上述の範囲とすること
によって、電気抵抗を小さくすることができ、しかも導
電膜12に形成される溝13を精度良く形成することが
でき、更に導電膜12の膜厚を厚くした場合に確実に溝
13を形成することができる。
【0058】導電膜12は単層で構成してもよいが、多
層構造としてもよい。すなわち、構成材料の異なる導電
膜を複数積層して構成しても良い。例えば、基台11の
上に先ず銅膜を形成し、その上に耐候性の良い金属膜
(ニッケル等)を積層する事によって、やや耐候性に問
題がある銅の腐食を防止することができる。
【0059】導電膜12の形成方法としては、メッキ法
(電解メッキ法や無電解メッキ法など),スパッタリン
グ法,蒸着法等が挙げられる。この形成方法の中でも、
量産性がよく、しかも膜厚のばらつきが小さなメッキ法
がよく用いられる。
【0060】導電膜12の表面粗さは1μm以下が好ま
しく、更に好ましくは0.2μm以下が好ましい。導電
膜12の表面粗さが1μmを超えると、表皮効果によっ
て高周波でのQ値が低下する。図6は本発明の一実施の
形態におけるインダクタンス素子に用いられる導電膜の
表面粗さに対する周波数とQ値の関係を示すグラフであ
る。図6は下記の様な実験を通して導き出された。ま
ず、同じ大きさ同じ材料同じ表面粗さで構成された基台
11の上に銅を構成材料とする導電膜12の表面粗さを
変えて形成し、それぞれのサンプルにて各周波数におけ
るQ値を測定した。図6から判るように、導電膜12の
表面粗さが1μm以上であれば高周波領域におけるQ値
が低くなっていることが判る。更に導電膜12の表面粗
さが0.2μm以下であれば特に高周波領域におけるQ
値が、非常に高くなっていることがわかる。
【0061】以上の様に導電膜12の表面粗さは、1.
0μm以下が良く、更に好ましくは、0.2μm以下と
することによって、導電膜12の表皮効果を低減させる
ことができ、特に高周波におけるQ値を向上させる事が
できる。
【0062】更に導電膜12と基台11の密着強度は、
導電膜12を形成した基台11を400℃の温度下に数
秒間放置した後に基台11から導電膜12がはがれない
程度以上であることが好ましい。素子を基板等に実装し
た際に、素子には自己発熱や他の部材からの熱が加わる
ことによって、素子に200℃以上の温度が加わること
がある。従って、400℃で基台11からの導電膜12
のはがれが発生しない程度の密着強度であれば、たとえ
素子に熱が加わっても、素子の特性劣化等は発生しな
い。
【0063】次に保護材14について説明する。
【0064】保護材14としては、複数の絶縁層を積層
して構成することが好ましい。
【0065】例えば、導電膜12上に直接電着膜14a
を形成した後に、電着膜14aの上に他の絶縁層14b
(エポキシ樹脂等)を形成することが好ましい。この構
成によって、電着膜14aは、導電膜12における溝1
3との境界部に形成される角部12pを確実に覆うこと
ができ、しかも比較的均一に形成できるので、角部と角
部間の放電,ショート等による電気的特性等の劣化は生
じ可能性は少ない。しかしながら電着膜14aでは、電
着膜14a自体の硬度や耐久性などが問題になることが
あり、この問題を解決するために、硬度や耐久性の大き
な絶縁層14b電着膜14aの上に設けることによっ
て、電気的特性及び耐久性の双方を向上させることがで
きる。
【0066】電着膜14aの膜厚は10〜30μmとす
ることが好ましく、膜厚が10μmを下回るとたとえ
ば、実装した際の近接した部品などとの絶縁性が低下
し、インダクタンス値などの変動などが生じるという点
で不具合が生じ、膜厚が30μmを上回ると、保護材1
4表面の平坦の度合いが悪くなり、自己共振周波数f0
の低下とQ値の低下を生じるという点で不具合が生じ
る。
【0067】電着膜14aの具体的構成材料としては、
アクリル系樹脂,エポキシ系樹脂,フッ素系樹脂,ウレ
タン系樹脂,ポリイミド系樹脂などの樹脂材料の少なく
とも1つで構成されている。また、電着膜14aとし
て、カチオン系,アニオン系のどちらかを選択する場合
には、導電膜12の構成材料、電着膜の構成材料、イン
ダクタンス素子の使用用途などを考慮して決定すること
が好ましい。電着膜14aは異なる材料で構成された電
着膜を積層して構成しても良いし、同一材料を積層して
も良く、更には、複数の電着膜を溝部13の上に並列し
て設けてもよい。
【0068】また、電着膜14aとしては、厚さが数十
ミクロンで20V以上の耐圧を有することが好ましく、
しかもハンダの融点である183℃で、燃焼したり、蒸
発しない特性を有するものが好ましい。なお、183℃
で電着膜14aが軟化する程度のものは不具合は生じな
い。
【0069】また、図7(a)に示す様に電着膜で構成
された電着膜14aは、導電膜12と基台11の少なく
とも一部の双方を覆うように設けることが好ましい。こ
の様に保護材14を設けることによって、導電膜12を
ほぼ覆うことができ、しかも導電膜12と外気などとの
接触確率を極めて小さくすることができるので、導電膜
12の腐食や電流の漏洩等を防止することができる。図
7(b)に示す様に電着膜14aを導電膜12のみに設
ける場合では、導電膜12の角部12zがむき出しにな
る可能性が高く、導電膜12の腐食の原因となることが
ある。
【0070】従って、図7(a)に示す様に、導電膜1
2の角部12zをオバーして基台11の少なくとも一部
も電着膜14aで覆うように構成することによって、確
実な導電膜12の保護を覆うことができる。
【0071】また、図7(a)に示す様に導電膜12の
外方の角部12p上に形成される保護材14の一部14
zは他の部分よりも膜厚を厚くすることが好ましい。一
部14zを厚くすることによって、角部12pが他の部
分との間で放電することなどを防止でき、インダクタン
ス素子としての特性の劣化を防止できる。
【0072】また、特殊用途などに用いられるインダク
タンス素子には、導電膜12と電着膜14aの密着強度
を持たせることが重要になってくる場合がある。この場
合には、導電膜12の表面を化学的エッチングすること
によって粗面化し、その粗面化した表面に電着膜で構成
した電着膜14aを設けることが好ましい。前述したよ
うに、導電膜12の表面の粗面化を行うとQ値の低下を
招く危険はあるが、特殊用途等の場合、Q値よりも電着
膜14aと導電膜12の密着強度を向上することが重要
な場合があるので、このときは、用途などを考慮して導
電膜12の粗さを適宜決定する必要がある。
【0073】また、導電膜12を銅を含む材料で構成し
た場合、電着膜14aは不均一な膜厚で形成されること
があるので、この場合には、導電膜12の上にNi等の
金属膜を形成し、その金属膜の上に電着膜14aを形成
しても良い。
【0074】次に、電着膜14aの形成方法について説
明する。
【0075】図8に示す様に100は容器で、容器10
0中には、水,電着樹脂,pH調整剤などの調整剤及び
他の添加剤などを混合した溶液101が収納されてい
る。102は電極板、103はインダクタンス素子、1
04,105はそれぞれ保持部材で、保持部材104,
105は、インダクタンス素子103の両端がはまりこ
む孔が設けられている。保持部材105には通電部10
6が設けられており、この通電部106はインダクタン
ス素子103に接触している。
【0076】電極板102及び通電部106に所定の電
圧を加えると、インダクタンス素子103の両端部を除
く部分に電着膜が形成される。これは、インダクタンス
素子103の端子部15,16は、保持部材104,1
05に入り込んでおり、溶液101とは余り接触してい
ないからである。なお、本実施の形態では、保持部材1
04,105に端子部15,16を入り込ませたが、フ
ォトレジスト等の他のマスク部材を端子部15,16に
設ける構成にしてもよい。
【0077】以上の様に、電着膜14aを有するインダ
クタンス素子を作製した後に、素子に熱処理を加えるこ
とが好ましい。この熱処理によって、電着膜14aの表
面がなだらかになって、表面粗さが小さくなり、確実に
導電膜12を覆うようになる。また、熱処理を加える
と、導電膜12の角部の電着膜14aの厚さが薄くなる
ことがあるが、この場合には、溶液101の中に絶縁性
の粒子(例えば金属酸化物など)を混入させて、電着膜
14aの中にこの絶縁性の粒子を保持させることによっ
て、導電膜12の角部の電着膜14aの厚さが薄くなる
ことを防止できる。
【0078】以上の様に構成された電着膜14aの上
に、絶縁層14bを再度塗布する。この絶縁層14bは
好ましくは、電着膜14aよりも機械的強度の大きな
(特に硬度の大きな)材料で構成することが好ましく、
この様な構成によって、電気的絶縁性に優れた電着膜1
4aが例え、機械的強度の弱い材料で構成されていたと
しても、十分な機械的強度を得ることができる。
【0079】このとき、絶縁層14bの膜厚は5μm〜
20μmとすることが好ましく、膜厚が5μmを下回る
と、保護材14の強度が悪く、実装の際などに、コイル
状の導電膜13にダメージを与え、コイル状導電膜13
の断線などが生じ、特性の劣化を生じるという問題点が
あり、膜厚が20μmを上回ると保護材14の表面に丸
みが生じ易くなり、実装した際の安定性が悪くなる事が
あるとともに、実装などの際に吸着ミス等が発生しやす
いという問題点がある。
【0080】上記絶縁層14bの膜厚限定の根拠につい
て、図14〜図16を用いて詳細に説明する。
【0081】まず、図14に示すように先端がR0.0
5mmのピン100を電子部品101に加圧力0.5k
gで押し付けたときの特性不良発生率を求めた。この時
電子部品の電着膜14aは20μmとし、絶縁層14b
の膜厚を変化させて、上記実験を行った結果は図15の
とおりである。図15からわかるように、絶縁層14b
の厚さが5μm以上であると、ほとんど不良品が発生し
ていないことがわかる。この時の電子部品の不良の原因
としては、断線やショートなどが発生している事が分か
った。
【0082】次に、図16からわかるように、素子の長
さが0.6mm、高さ及び幅を0.3mmとした電子部
品の場合、絶縁層14bの膜厚が20μm以上である
と、湾曲度が0.15に近づき、ほとんど円筒状になっ
てしまい、吸着特性が非常に悪くなることがわかった。
【0083】絶縁層14bの具体的構成材料としては、
例えば、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂等が挙げられ
る。この様な材料は比較的硬度が大きく、コイル状の導
電膜13の保護を確実に実現できる。
【0084】また、電着膜14aと絶縁層14bの膜厚
比率は、電着膜14aを1とした場合に、絶縁層14b
は0.1〜1.0としたほうが好ましい。比率が0.1
より小さいと絶縁層14bの膜厚が薄すぎて、所定の強
度を得ることができず、さらに、絶縁層14bが1より
大きいと、表面形状が悪くなり、吸着ミスや実装性が悪
くなる。
【0085】また、絶縁層14bの表面粗さは中心線平
均粗さで2μm以下とすることが好ましい。表面粗さが
2μmを超えてしまうと、吸着特性などが悪くなる。
【0086】更に、絶縁層14bの硬度は、鉛筆硬度4
〜9Hとなるようにすることが好ましい。絶縁層14b
の硬度が4Hを下回ると、前述のように、導電膜12等
の保護を確実に行うことができない。また、硬度が9H
を超えると、絶縁層14bに吸着の際にクラックなどが
生じることがある。
【0087】また、絶縁層14bの絶縁抵抗は1010Ω
m以上(さらに好ましくは1012Ωm以上)とすること
が好ましく、この絶縁抵抗よりも小さいと、Q値の劣化
などを生じる。
【0088】また、基体11の角部における保護材14
の厚みは少なくとも5μm以上好ましくは10μm以上
とし、50μm以下とすることが好ましい。
【0089】次に端子部15,16について説明する。
【0090】端子部15,16は、図2に示すように、
基台11がむき出しになった端面に及び保護材14上に
設けられており、この様に、基台11上に直接端子部1
5,16を形成するようにする事によって、端子部1
5,16と基台11間の接合強度を向上させることがで
きる。なお、導電膜12を基台11の端面まで形成し、
その端面上に形成された導電膜12上に端子部15,1
6を設けても良く、この様な構成の場合には、導電膜1
2は比較的良好な表面を有するので、その導電膜12の
上に設けられる端子部15,16は良好な特性を得るこ
とができる。
【0091】基台11の長手方向における端子部15,
16それぞれの長さP5,P6は以下の関係を満たすこ
とが好ましい。なお、L1は前述したように素子の全長
を表す。
【0092】 0.1<P5÷L1<0.3 0.1<P6÷L1<0.3 P5÷L1及びP6÷L1が0.1以下の場合には、素
子を回路基板上に実装した場合に、回路基板上に設けら
れた電極などとの接合面積が小さくなり、接合強度が劣
化したり、マンハッタン現象などが生じる可能性があ
り、0.3以上の場合には、端子部15,16間が近接
してしまい、回路基板上などに実装した際に、端子部1
5,16間が回路基板上などで短絡してしまう可能性が
ある。
【0093】次に、端子部15,16の表面粗さは1μ
m〜10μm(好ましくは1μm〜5μm)とする事が
好ましい。すなわち、端子部15,16の表面粗さが1
μm以下であると、回路基板などに設けられた電極との
接合面積が小さくなってしまい、接合強度が小さくなっ
てしまい、表面粗さが10μm以上であると、端子部1
5,16上に他の導電膜などを形成する際に、その導電
膜の特性が劣化してしまう。
【0094】また、端子部15,16の比抵抗値は1×
10-4Ωcm以上(好ましくは5×10-4Ωcm以上)
とする事が電気的特性を向上させるために有効である。
【0095】更に、端子部15,16の結晶粒径は、フ
レーク状体である場合には1〜5μm(好ましくは2〜
3μm)であることが結晶性上あるいは電気的特性上有
効であり、球状体の場合には、0.1μm〜0.8μm
(好ましくは0.2μm〜0.5μm)であることが、
結晶性上あるいは電気的特性上有効である。
【0096】また、基台11の端面上に形成される端子
部15,16の最大厚みP1,P2はそれぞれ10μm
〜30μm(好ましくは18μm〜25μm)とする事
が好ましい。P1,P2が10μm以下であると端子部
15,16の電極食われ時間が短くなってしまうという
問題が生じる可能性がある。これは回路基板などに素子
を実装してリフロー等を行う際に、短時間でリフローを
行わなければ、端子部15,16に電極食われ現象が発
生して、素子と回路の接合に不具合が生じる。従って、
リフロー等の加熱時間を短くしなければならないが、加
熱時間が短くなってしまうと、素子と回路基板を接合す
る接合材が十分に融解せず接合強度等に問題が生じる。
【0097】半田ディップ試験(350℃)において、
電極喰われ時間TとP1,P2(t)の関係は、図10
に示すようになっている。図10から判るように、P
1,P2の膜厚が10μm以下であれば、7.5sec
以下で半田食われ現象が発生するので、前述のように、
十分に接合材が融解しないので、十分な接合強度を得る
ことはできないので、P1,P2の膜厚は10μm以上
とすることが好ましい。また、P1、P2が30μm以
上であると、基台11の長さが短くなってしまい、Q値
が劣化してしまうことになる。図11に示すように、P
1,P2の厚さをtaとした場合に、taが大きくなる
と、必然的に基台11の長さが短くなっていくので、Q
値の劣化を生じることになる。従って、P1,P2は3
0μmを超えると、基台11自体の長さが短くなり、Q
値劣化を招くことになるので、P1,P2は30μm以
下とすることが好ましい。
【0098】更に、基台11の側面上であって、保護材
14上に形成される端子部15,16の最大厚みP3,
P4はそれぞれ10μm〜25μm(好ましくは15μ
m〜20μm)とする事が好ましい。P3,P4が10
μmより小さいと、図10に示すように、電極食われ現
象が発生する時間が短くなるので、P3,P4は10μ
m以上であることが好ましい。更に、図11に示すよう
に、P3,P4(図11のtb)を大きくすることによ
って、基台11の太さが、細くなり、Q値劣化が生じる
ので、P3,P4は25μm以下であることが好まし
い。また、図11から判るように、tbが大きくなると
taよりもQ値劣化が著しく生じる事になるので、P
3,P4それぞれの厚みはP1,P2よりも薄くするこ
とが、Q値劣化を防止する上で好ましい。具体的に説明
すると、P1,P2の厚みをそれぞれ30μmとした場
合に、P3,P4それぞれの厚みは30μmよりも小さ
く、しかも10μm以上の膜厚で構成することが好まし
い。
【0099】基台11の端面側の角部上に形成される端
子部15,16の厚みP7,P8は10μm〜20μm
とする事が好ましく、P7,P8が10μmより小さい
と、電極食われ現象が発生する時間が短くなるので好ま
しくなく、膜厚P1〜P4よりも薄くすることが、角部
上に設けられた端子部15,16が突出しないので、実
装性を向上させることができる。具体的には、P7,P
8は20μm以下とすることが好ましい。
【0100】また、端子部15,16は全面的に曲面状
となっており端子部15,16にエッジが存在しないよ
うに構成することによって、屑の発生などを抑えるよう
に構成することが好ましい。
【0101】また、端子部15,16の耐候性を向上さ
せる様にするには、端子部15,16の上に、Ti,N
i,W,Cr等の腐食しにくい金属膜や、それら金属材
料の合金膜(Ni−Cr等)等の耐食膜を膜厚0.5〜
3μmの膜厚で構成することが良い。特に、Ni単体か
若しくはNi合金を用いることが、特性面やコスト面等
で優れている。
【0102】更に、端子部15,16と回路基板などと
の接合性を向上させるためには、端子部15,16或い
は耐食膜の上に半田や鉛フリーの接合材(Sn単体もし
くはSnにAg,Cu,Zn,Bi,Inの少なくとも
一つを含ませた鉛フリー半田等)で構成された接合膜を
5〜10μmの膜厚で形成しても良い。
【0103】上記耐食膜及び接合膜を端子部15,16
上に形成する事を前提として、端子部15,16に関係
する長さP1〜P8が決められており、端子部15,1
6のみの場合には、前述のP1〜P8の長さで形成さ
れ、耐食膜か接合膜の少なくとも一つを端子部15,1
6上に形成する場合には、そのP1〜P8に示される長
さに、耐食膜,接合膜の厚みがP1〜P8に加わること
になる。
【0104】以上の様な端子部15,16を構成する一
つの手段として、導電ペーストを基台11の端面に塗布
し、加熱処理などを施して端子部15,16を形成する
方法がある。以下塗布型端子部の形成方法について、説
明する。
【0105】まず、導電ペーストについては、少なくと
も導電材料、樹脂材料、溶剤を有しており、導電材料と
しては例えば金,銀,銅等の導電性を示す金属粒子を用
いることができ、特に銀粒子は特性面、加工性の面、コ
ストの面等で特に優れている。金属粒子としてフレーク
状のものを用いる場合には1〜5μm(好ましくは2〜
3μm)であることが有効であり、球状体の場合には、
0.1μm〜0.8μm(好ましくは0.2μm〜0.
5μm)が好ましい。樹脂材料としては、フェノール,
エポキシ樹脂等の少なくとも一つが用いられ、溶剤とし
ては、ブチルカルビトール等が好適に用いられる。
【0106】導電ペーストの配合割合としては、導電材
料50〜70重量%、樹脂材料10〜20重量%、溶剤
20〜30重量%とする事が好ましい。なお、この導電
ペーストに外割で、粘度調整材等の調整材料を含ませて
も良い。
【0107】以上の様に構成された導電ペーストをディ
ップ法により基台11の端部に付着させたり、導電ペー
ストをローラなどを介して基台11の端部に付着させ
る。この時、ディップ法の場合には、導電ペーストの粘
度を10〜30PaS程度に調整し、ローラを用いる場
合には、20〜50PaS程度の調整する。
【0108】基台11に導電ペーストを塗布した後に、
150℃〜230℃程度の温度で30〜60分間熱処理
を行って、端子部15,16を形成する。この時の端子
部15,16のP1〜P8の寸法等は、前述の説明の通
りであり、これに耐食膜や接合膜などが必要に応じて設
けられる。
【0109】また、図2に示す様に端子部15,16の
高さZ1及びZ2は下記の条件を満たすことが好まし
い。
【0110】 |Z1−Z2|≦80μm(好ましくは50μm) Z1とZ2の高さの違いが80μm(好ましくは50μ
m以下)を超えると、素子を基板に実装し、半田等で回
路基板等に取り付ける場合、半田等の表面張力によって
素子が一方の端部に引っ張られて、素子が立ってしまう
というマンハッタン現象の発生する確率が非常に高くな
る。このマンハッタン現象を図9に示す。図9に示すよ
うに、基板200の上にインダクタンス素子を配置し、
端子部15,16それぞれと基板200の間に半田20
1,202が設けられているが、リフローなどによって
半田201,202を溶かすと、半田201,202の
それぞれの塗布量の違いや、材質が異なることによる融
点の違いによって、溶融した半田201,202の表面
張力が端子部15と端子部16で異なり、その結果、図
9に示すように一方の端子部を中心に回転し、インダク
タンス素子が立ち上がってしまう。Z1とZ2の高さの
違いが80μm(好ましくは50μm以下)を超える
と、素子が傾いた状態で基板200に配置されることと
なり、素子立ちを促進する。また、マンハッタン現象は
特に小型軽量のチップ型の電子部品(チップ型インダク
タンス素子を含む)において顕著に発生し、しかもこの
マンハッタン現象の発生要因の一つとして、端子部1
5,16の高さの違いによって素子が傾いて基板200
に配置されることを着目した。この結果、Z1とZ2の
高さの差を80μm以下(好ましくは50μm以下)と
なるように、基台11を成形などで加工することによっ
て、このマンハッタン現象の発生を大幅に抑えることが
できた。Z1とZ2の高さの差を50μm以下とするこ
とによって、ほぼ、マンハッタン現象の発生を抑えるこ
とができる。
【0111】以上の様に構成されたインダクタンス素子
について、以下その製造方法について説明する。
【0112】まず、アルミナ等の絶縁材料をプレス成形
や押し出し法によって、数素子から数十素子分の基台を
作製し次にその基台11全体にメッキ法やスパッタリン
グ法などによって導電膜12をほぼ全面に形成する。次
に導電膜12を形成した基台11にスパイラル状の溝1
3を所定間隔で複数個設け、そのスパイラル状の溝13
を挟むように基台を切断し、基台11に導電膜12と溝
13を形成した半完成素子を作製する。溝13はレーザ
加工や切削加工によって作製される。レーザ加工は、非
常に生産性が良いので、以下レーザ加工について説明す
る。まず、基台11を回転装置に取り付け、基台11を
回転させ、そして基台11にレーザを照射して導電膜1
2及び基台11の双方を取り除き、スパイラル状の溝を
形成する。このときのレーザは、YAGレーザ,エキシ
マレーザ,炭酸ガスレーザなどを用いることができ、レ
ーザ光をレンズなどで絞り込むことによって、基台11
に照射する。更に、溝13の深さ等は、レーザのパワー
を調整し、溝13の幅等は、レーザ光を絞り込む際のレ
ンズを交換することによって行える。また、導電膜12
の構成材料等によって、レーザの吸収率が異なるので、
レーザの種類(レーザの波長)は、導電膜12の構成材
料によって、適宜選択することが好ましい。なお、砥石
などを用いて溝13を形成しても良い。
【0113】溝13を形成した後に、電着法などを用い
て、まず導電膜12上に電着膜14aを形成し、その上
に絶縁層14bを形成することによって、基台11の両
端面を除いた部分(基台11の側面部分)に保護材14
を形成する。
【0114】次に、基台11の両端面に導電ペーストを
塗布して、熱処理などを施すか、メッキ法などによっ
て、端子部15,16を形成する。
【0115】この時点でも、製品は完成するが、前述の
様に、仕様等によって、耐食膜や接合膜を設ける。
【0116】なお、本実施の形態は、インダクタンス素
子について説明したが、絶縁材料によって構成された基
台の上に導電膜を形成する電子部品でも同様な効果を得
ることができる。
【0117】また、導電膜12を抵抗膜とすることによ
って、小型のチップ抵抗器を作製することができ、導電
膜12にスパイラル状の溝13を設けるのではなく、環
状の溝等を設けることによって、導電膜12を少なくと
も2分する事によって、チップコンデンサとしても使用
することができる。
【0118】図12及び図13はそれぞれ本発明の一実
施の形態における無線端末装置を示す斜視図及びブロッ
ク図である。図12及び図13において、29は音声を
音声信号に変換するマイク、30は音声信号を音声に変
換するスピーカー、31はダイヤルボタン等から構成さ
れる操作部、32は着信等を表示する表示部、33はア
ンテナ、34はマイク29からの音声信号を復調して送
信信号に変換する送信部で、送信部34で作製された送
信信号は、アンテナ33を通して外部に放出される。3
5はアンテナ33で受信した受信信号を音声信号に変換
する受信部で、受信部35で作成された音声信号はスピ
ーカー30にて音声に変換される。36は送信部34,
受信部35,操作部31,表示部32を制御する制御部
である。
【0119】以下その動作の一例について説明する。
【0120】先ず、着信があった場合には、受信部35
から制御部36に着信信号を送出し、制御部36は、そ
の着信信号に基づいて、表示部32に所定のキャラクタ
等を表示させ、更に操作部31から着信を受ける旨のボ
タン等が押されると、信号が制御部36に送出されて、
制御部36は、着信モードに各部を設定する。即ちアン
テナ33で受信した信号は、受信部35で音声信号に変
換され、音声信号はスピーカー30から音声として出力
されると共に、マイク29から入力された音声は、音声
信号に変換され、送信部34を介し、アンテナ33を通
して外部に送出される。
【0121】次に、発信する場合について説明する。
【0122】まず、発信する場合には、操作部31から
発信する旨の信号が、制御部36に入力される。続いて
電話番号に相当する信号が操作部31から制御部36に
送られてくると、制御部36は送信部34を介して、電
話番号に対応する信号をアンテナ33から送出する。そ
の送出信号によって、相手方との通信が確立されたら、
その旨の信号がアンテナ33を介し受信部35を通して
制御部36に送られると、制御部36は発信モードに各
部を設定する。即ちアンテナ33で受信した信号は、受
信部35で音声信号に変換され、音声信号はスピーカー
30から音声として出力されると共に、マイク29から
入力された音声は、音声信号に変換され、送信部34を
介し、アンテナ33を通して外部に送出される。
【0123】なお、本実施の形態では、音声を送信受信
した例を示したが、音声に限らず、文字データ等の音声
以外のデータの送信もしくは受信の少なくとも一方を行
う装置についても同様な効果を得ることができる。
【0124】上記で説明した電子部品(図1〜図11に
示すもの)は、発信回路,フィルタ回路,アンテナ部及
び各段とのマッチング回路周辺部等の高いQを必要とす
る箇所の少なくとも一つに用いられ、その数は、一つの
無線端末装置に数個〜40個程度用いられている。上述
の様な電子部品を用いることによって、装置内部の基板
等を小型化でき、しかも回路基板などの上に上記電子部
品を実装しても、電子部品の特性劣化等が生じることは
ないので回路基板などの不良率が極めて小さくなり、生
産性が非常によくなる。
【0125】
【発明の効果】本発明は、基台上に設けられた導電膜に
設けられた溝を設け、基台の端部に設けられた一対の端
子部と、溝を覆うように前記導電膜上に設けられた保護
材とを備えた電子部品であって、保護材は、導電膜側に
設けられた電着膜と、前記電着膜上に設けられた絶縁層
とを有し、絶縁層は塗布により構成され、しかも電着膜
よりも絶縁層の方が硬度が高い構成としたことで、素子
特性の劣化の防止かもしくは素子の実装の向上の少なく
とも一方を実現できる。
【0126】また、無線端末装置において、上記電子部
品を搭載したことによって、装置内部の基板等を小型化
でき、しかも回路基板などの上に上記電子部品を実装し
ても、電子部品の特性劣化等が生じることはないので回
路基板などの不良率が極めて小さくなり、生産性が非常
によくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態における電子部品の一例
として挙げたインダクタンス素子を示す図
【図2】本発明の一実施の形態における電子部品の一例
として挙げたインダクタンス素子を示す側断面図
【図3】本発明の一実施の形態における電子部品の一例
として挙げたインダクタンス素子に用いられる基台の斜
視図
【図4】本発明の一実施の形態における電子部品の一例
として挙げたインダクタンス素子に用いられる基台の表
面粗さと剥がれ発生率を示したグラフ
【図5】本発明の一実施の形態におけ電子部品の一例と
して挙げたるインダクタンス素子に用いられる基台の表
面粗さに対する周波数とQ値の関係を示すグラフ
【図6】本発明の一実施の形態における電子部品の一例
として挙げたインダクタンス素子に用いられる導電膜の
表面粗さに対する周波数とQ値の関係を示すグラフ
【図7】本発明の一実施の形態における電子部品の一例
として挙げたインダクタンス素子の保護材を設けた部分
の拡大断面図
【図8】本発明の一実施の形態における電子部品の一例
として挙げたインダクタンス素子の保護材を設ける工程
を示した図
【図9】マンハッタン現象を示す図
【図10】本発明の一実施の形態における電子部品の端
子部の膜厚と電極食われ現象が発生する時間の関係を示
したグラフ
【図11】本発明の一実施の形態における電子部品の端
子部の膜厚と素子のQ値の関係を示したグラフ
【図12】本発明の一実施の形態における無線端末装置
を示す斜視図
【図13】本発明の一実施の形態における無線端末装置
を示すブロック図
【図14】電子部品の応力測定方法を示す概略図
【図15】本発明の一実施の形態における電子部品の絶
縁層の膜厚と特性不良発生率の関係を示すグラフ
【図16】本発明の一実施の形態における電子部品の絶
縁層の膜厚と表面形状の関係を示したグラフ
【図17】従来のインダクタンス素子を示す側面図
【符号の説明】
11 基台 12 導電膜 13 溝 14 保護材 14a 電着膜 14b 絶縁層 15,16 端子部 30 スピーカー 31 操作部 32 表示部 33 アンテナ 34 送信部 35 受信部 36 制御部
フロントページの続き 審査官 重田 尚郎 (56)参考文献 特開 平11−3820(JP,A) 特開 平10−116739(JP,A) 特開 平10−12421(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 17/04 H01C 7/00

Claims (14)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基台と、前記基台上に設けられた導電膜
    と、前記導電膜に設けられた溝と、前記基台の端部に設
    けられた一対の端子部と、前記溝を覆うように前記導電
    膜上に設けられた保護材とを備えた電子部品であって、
    保護材は、導電膜側に設けられた電着膜と、前記電着膜
    上に設けられた絶縁層とを有し、前記絶縁層は塗布によ
    り構成され、しかも前記電着膜よりも前記絶縁層の方が
    硬度が高いことを特徴とする電子部品。
  2. 【請求項2】電着膜の膜厚を10〜30μmとしたこと
    を特徴とする請求項1記載の電子部品。
  3. 【請求項3】絶縁層の膜厚を5〜20μmとしたことを
    特徴とする請求項1記載の電子部品。
  4. 【請求項4】電着膜の厚みを1とした場合に絶縁層の厚
    みを0.1〜1.0としたことを特徴とする請求項1記
    載の電子部品。
  5. 【請求項5】電着膜の構成材料はアクリル系樹脂、エポ
    キシ系樹脂、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイミ
    ド系樹脂の内少なくとも一つを用いたことを特徴とする
    請求項1記載の電子部品。
  6. 【請求項6】絶縁層の構成材料はエポキシ系樹脂、アク
    リル系樹脂の内少なくとも一つとしたことを特徴とする
    請求項1記載の電子部品。
  7. 【請求項7】絶縁層の硬度を鉛筆硬度で4H〜9Hとし
    たことを特徴とする請求項1記載の電子部品。
  8. 【請求項8】基台を底面が略正方形状の角柱状とした事
    を特徴とする請求項1〜7いずれか1記載の電子部品。
  9. 【請求項9】長さL1,幅L2,高さL3としたとき
    に、 L1=0.2〜2.0mm(好ましくは0.3〜0.8
    mm) L2=0.1〜1.0mm(好ましくは0.1〜0.4
    mm) L3=0.1〜1.0mm(好ましくは0.1〜0.4
    mm) のサイズを有する事を特徴とする請求項1〜8いずれか
    1記載のインダクタンス素子。
  10. 【請求項10】基台の端面に導電膜を介して端子部を設
    けたことを特徴とする請求項1〜9いずれか1記載の電
    子部品。
  11. 【請求項11】導電膜と溝によって、インダクタンス成
    分を形成することを特徴とする請求項1〜9いずれか1
    記載の電子部品。
  12. 【請求項12】導電膜の代わりに抵抗膜を用いた事を特
    徴とする請求項1〜9いずれか1記載の電子部品。
  13. 【請求項13】導電膜を少なくとも2分する溝を設け、
    容量成分を有する事を特徴とする請求項1〜9いずれか
    1記載の電子部品。
  14. 【請求項14】表示手段と、データ信号もしくは音声信
    号の少なくとも一方を送信信号に変換するか受信信号を
    データ信号もしくは音声信号の少なくとも一方に変換す
    る変換手段と、前記送信信号及び前記受信信号を送受信
    するアンテナと、各部を制御する制御手段を備えた無線
    端末装置であって、発信回路,フィルタ回路,アンテナ
    部及び各段とのマッチング回路周辺部等の少なくとも一
    つに請求項1〜13いずれか1記載の電子部品を用いた
    ことを特徴とする無線端末装置。
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