JP3323052B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

方向性電磁鋼板の製造方法

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JP3323052B2 JP06314696A JP6314696A JP3323052B2 JP 3323052 B2 JP3323052 B2 JP 3323052B2 JP 06314696 A JP06314696 A JP 06314696A JP 6314696 A JP6314696 A JP 6314696A JP 3323052 B2 JP3323052 B2 JP 3323052B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、結晶粒がミラー指
数で{110}<001>方位に集積した、いわゆる方
向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。この鋼板
は、軟磁性材料として変圧器等の電気機器の鉄芯として
用いられる。
【0002】
【従来の技術】方向性電磁鋼板は、{110}<001
>方位に集積した結晶粒により構成されたSiを4.8
%以下含有した鋼板である。この鋼板は磁気特性として
励磁特性と鉄損特性が要求される。励磁特性を表す指標
としては磁場の強さ800A/mにおける磁束密度:B
8が通常使用される。また、鉄損特性を表す指標として
は周波数50Hzで1.7Tまで磁化した時の鋼板1kgあ
たりの鉄損:W17/50 が用いられる。磁束密度:B8は
鉄損特性の最大の支配因子であり、このB8値が高いほ
ど鉄損特性が良好になる。磁束密度:B8を高めるため
には結晶方位を高度に整えることが重要である。この結
晶方位の制御は二次再結晶とよばれるカタストロフィッ
クな粒成長現象を利用して達成される。
【0003】この二次再結晶を制御するためには、二次
再結晶前の一次再結晶組織の調整と、インヒビターとよ
ばれる微細析出物の調整を行うことが必要である。この
インヒビターは、一次再結晶組織のなかで一般の粒の成
長を抑制し、特定の方位粒のみを優先成長させる機能を
持つ。析出物として代表的なものとしては、M.F.Littma
nn(特公昭30−3651号公報)及びJ.E.May & D.Tu
rnbull (Trans.Met.Soc. AIME212;1958年;p76
9)等はMnSを、田口ら(特公昭40−15644号
公報)はAlNを、今中ら(特公昭51−13469号
公報)はMnSeを提示している。これらの析出物は熱
間圧延前のスラブ加熱時に完全固溶させた後に、熱間圧
延及びその後の焼鈍工程で微細析出させる方法がとられ
ている。これらの析出物を完全固溶させるためには14
00℃以上の高温で加熱する必要があり、これは普通鋼
のスラブ加熱温度に比べて約200℃高く次の問題点が
ある。(1)専用の加熱炉が必要で、(2)加熱炉のエ
ネルギー原単位が高く、(3)溶融スケール量が多く、
いわゆるノロ出し等の操業管理が必要である等の問題が
ある。
【0004】低温スラブ加熱による製造方法としては小
松ら(特公昭62−45285号公報)は(Al,S
i)Nをインヒビターとして用いる方法を開示してい
る。一方、二次再結晶前の粒組織調整に関する知見はほ
とんどなく、本願発明者らは例えば特開平2−1828
66号公報にその重要性を開示している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】方向性電磁鋼板の製造
は各工程の種々の要因が二次再結晶挙動に影響を及ぼす
ために厳しい管理基準を設けて製造を行っている。本発
明は、工業的に安定して二次再結晶を行わせ優れた磁気
特性をもつ方向性電磁鋼板を製造する方法を提供するも
のである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、質量%で
i:0.8〜4.8%、C:0.085%以下、酸可溶
性Al:0.01〜0.06%、N:0.012%以
下、残部Fe及び不可避的不純物からなる珪素鋼スラブ
を1280℃以下の温度で加熱し熱間圧延した後、焼鈍
し一回もしくは焼鈍をはさむ二回以上の冷間圧延により
最終板厚とし、脱炭焼鈍後の一次再結晶集合組織の{1
11}/{411}の比を3.0以下、かつ一次再結晶
粒組織の変動係数を0.6以下となるように、脱炭焼鈍
温度までの加熱速度を14℃/sec 以上に制御し、その
後窒化処理を行うことを特徴とする方向性電磁鋼板の製
造方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明者らは、二次再結晶前の一
次再結晶粒組織調整に関する研究の結果、特開平2−1
82866号公報に変動係数が0.6より大きくなり粒
組織が不均一になると二次再結晶が不安定になることを
開示している。その後、更に二次再結晶の制御因子であ
る一次再結晶組織とインヒビターに関する研究を行った
結果、二次再結晶前の粒組織として脱炭焼鈍後の集合組
織;{111}/{411}の比を調整し、その後、窒
化処理を行いインヒビターを強化することにより磁束密
度の高い二次再結晶が安定して製造できることを見いだ
した。ここで、変動係数とは、平均直径dで規格化した
直径分布の標準偏差である。以下、実験結果をもとに説
明する。
【0008】図1は脱炭焼鈍の一次再結晶組織の集合組
織(表面層;板厚の1/10層)と二次再結晶焼鈍後の
製品の磁束密度:B8の関係を示した図である。ここで
は、重量%でSi:3.2%、C:0.05%、酸可溶
性Al:0.027%、N:0.07%、Mn:0.1
%、S:0.007%、Cr:0.1%含有するスラブ
を1150〜1350℃の温度で加熱した後、1.4mm
厚に熱間圧延した。その後、1150℃で焼鈍し0.1
5mm厚まで冷間圧延後、加熱速度15℃/秒で770〜
950℃の温度で脱炭焼鈍し、一部はそのまま、一部は
アンモニア含有雰囲気で焼鈍し窒素を0.02〜0.0
3%とした。ついでMgOを主成分とする焼鈍分離剤を
塗布した後、仕上げ焼鈍を行った。
【0009】図1から明らかなように、脱炭焼鈍後の
{111}/{411}の比と磁束密度B8は密接な関
係があり、{111}/{411}の比を3.0以下
かつ一次再結晶粒組織の変動係数を0.6以下に調整
し、窒化処理によりインヒビターを強化した場合に1.
88以上の高い磁束密度が得られることが分かる。この
理由に関しては必ずしも明らかでないが、本発明者らは
次のように考えている。二次再結晶粒の粒成長は駆動力
となるマトリックス粒の粒界エネルギー密度と粒成長を
抑制するインヒビターのバランスによって決まる。一次
再結晶組織のなかで{111}方位粒が{110}<0
01>二次再結晶粒の成長を促進する方位粒であること
が知られている。本発明者らは新たに{411}方位粒
が{110}<001>二次再結晶粒の優先成長に影響
を及ぼすことを見いだした。
【0010】これらの{111}方位粒と{411}方
位粒は80%以上の高い冷間圧延率で発達する。これら
の方位分布をみると、図2に示すように{411}方位
粒は{111}方位粒と比較すると方位分散が小さいの
で先鋭な{110}<001>方位粒を優先成長させ
る。従って、{110}<001>二次再結晶粒を優先
成長させるうえで、一次再結晶組織のなかで、{11
1}方位粒よりも{411}方位粒を増加させることに
より先鋭な{110}<001>方位粒のみが成長し、
高い磁束密度を持つ製品が安定して製造できるものと推
定される。
【0011】次に、本発明に使用する鋼成分について述
べる。本発明において、Si:0.8〜4.8%、C:
0.085%以下、酸可溶性Al:0.01〜0.06
5%、N:0.012%以下が必要である。Siは添加
量を多くすると電気抵抗が高くなり、鉄損特性が改善さ
れる。しかしながら、4.8%を超えると圧延時に割れ
やすくなってしまう。また、0.8%より少ないと仕上
げ焼鈍時にγ変態が生じ結晶方位が損なわれてしまう。
【0012】Cは一次再結晶組織を制御するうえで有効
な元素であるが、磁気特性に悪影響を及ぼすので仕上げ
焼鈍前に脱炭する必要がある。Cが0.085%より多
いと脱炭焼鈍時間が長くなり生産性が損なわれてしま
う。酸可溶性Alは、本願発明においてNと結合して
(Al,Si)Nとしてインヒビターとしての機能をは
たすために必須の元素である。二次再結晶が安定する
0.01〜0.065%を限定範囲とする。
【0013】Nは0.012%をこえるとブリスターと
よばれる鋼板中の空孔を生じる。その他、Sは磁気特性
に悪影響を及ぼすので0.015%以下とすることが望
ましい。Snは脱炭焼鈍後の集合組織を改善し、二次再
結晶を安定化する。0.02〜0.15%添加すること
が望ましい。Crは脱炭焼鈍の酸化層を改善し、グラス
被膜形成に有効な元素である。0.03〜0.2%添加
することが望ましい。その他、微量のCu,Sb,M
o,Bi,Ti等を鋼中に含有することは、本発明の主
旨を損なうものではない。
【0014】上記、珪素鋼スラブは転炉、または電気炉
等により鋼を溶性し、必要に応じて溶鋼を真空脱ガス処
理し、ついで連続鋳造もしくは造塊後分塊圧延すること
によって得られる。その後、熱間圧延に先だってスラブ
加熱がなされる。本発明においては、スラブ加熱温度は
1280℃以下として、高温スラブ加熱の諸問題を回避
する。
【0015】上記、熱間圧延板は、900〜1200℃
で30秒〜30分間短時間焼鈍した後、一回もしくは焼
鈍を挟んだ二回以上に冷間圧延により最終板厚とする。
冷間圧延としては、特公昭40−15644号公報に示
されるように最終冷間圧延率を80%以上とすること
が、{411},{111}一次再結晶方位を発達させ
るうえで必要である。
【0016】冷間圧延後の鋼板は、鋼中に含まれるCを
除去するために湿潤雰囲気中で脱炭焼鈍を施す。その際
に、脱炭焼鈍後の{111}及び{411}の強度を測
定し、{111}/{411}の比を3.0以下にし
て、脱炭焼鈍の加熱速度、均熱温度、均熱時間等の焼鈍
サイクルを調整することが本発明の特徴である。実際的
に、{111}/{411}の比を3.0以下にするに
は、脱炭焼鈍の熱サイクルを制御することによって行わ
れるが、特に脱炭焼鈍の昇温速度を高めることや、また
均熱温度を高めることにより{111}/{411}の
比を低めることができる。これ等の制御条件は実機設備
の能力に応じて熱サイクルが決定される。{111},
{411}の強度を測定する方法としては、従来用いら
れているX線回折等の方法を用いれば良い。一次再結晶
集合組織は板厚方向で変化しているので、用いるX線の
波長、及び計測システムに応じて強度比を校正する必要
がある。オンラインで測定する場合には、鋼板の振動等
の影響をうけるので{111}/{411}の強度比率
を制御因子とすることが特に有効である。
【0017】このように、一次再結晶集合組織を制御さ
れた鋼板は、その後窒化処理を施し粒成長を抑制し二次
再結晶までその集合組織を凍結される。窒化処理として
は、アンモニア等の窒化能のあるガスを含有する雰囲気
中で焼鈍する方法、MnN等の窒化能のある粉末を焼鈍
分離剤中に添加して仕上げ焼鈍中に行う方法等がある。
窒化処理後の窒素量としては二次再結晶を安定的に行わ
せるためには鋼中のAl量に対してN/Alが重量比と
して0.5以上、好ましくは0.67以上とする必要が
ある。
【0018】その後、仕上げ焼鈍を行い{110}<0
01>方位粒を二次再結晶により優先成長させる。
【0019】
【実施例】
(実施例1)Si:3.2%、C:0.05%、酸可溶
性Al:0.028%、N:0.008%、Mn:0.
1%、S:0.007%、Cr:0.1%、Sn:0.
05%含有する珪素鋼スラブを1150℃に加熱し、
2.0mm厚とした。この熱間圧延板を1120℃で焼鈍
し、冷間圧延し最終板厚0.2mmとした。その後、図3
に示すように、加熱速度5℃/秒〜40℃/秒で830
℃で2分間脱炭焼鈍した後、アンモニア含有雰囲気中で
750℃で30秒焼鈍し、窒素量を0.02%とした。
次いで、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した
後、1200℃で20時間仕上げ焼鈍を施した。
【0020】図3に示すように、脱炭焼鈍の際の加熱速
度を12℃/秒以上とすることにより{111}/{4
11}の比を3.0以下とすることができた。製品の特
性を表1に示す。表1より、{111}/{411}の
比を3.0以下に調整した場合に1.88以上の高い磁
束密度が得られることが分かる。
【0021】
【表1】
【0022】(実施例2)Si:3.2%、C:0.0
5%、酸可溶性Al:0.024%、N:0.007
%、Cr:0.1%、Sn:0.05%、Mn:0.1
%、S:0.008%含有する珪素鋼スラブを1150
℃加熱し、板厚2.3mmに熱間圧延した。この熱間圧延
板を1100℃で2分間焼鈍し、その後、0.23mm厚
に冷間圧延し、810℃で3分間脱炭焼鈍した。その
後、更に図4に示すように、810℃〜950℃で0.
5分間焼鈍しアンモニア含有雰囲気中で焼鈍し、窒素量
を0.025%とした。MgOを主成分とする焼鈍分離
剤を塗布した後、1200℃で20時間仕上げ焼鈍を施
した。
【0023】図4に示すように、脱炭焼鈍の際の均熱温
度を830℃以上とすることにより{111}/{41
1}の比を3.0以下にすることができた。製品の特性
値を表2に示す。表2より、{111}/{411}の
比を3.0以下に調整した場合に高い磁束密度が得られ
ることが分かる。
【0024】
【表2】
【0025】
【発明の効果】以上述べたように、本発明は脱炭焼鈍後
の一次再結晶集合組織の{111}/{411}の比を
適切に調整することにより優れた磁気特性を有する方向
性電磁鋼板を工業的に安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、脱炭焼鈍の一次再結晶集合組織(表面
層の{111}と{411}の比率)と二次再結晶焼鈍
後の製品の磁束密度:B8の関係を示した図である。
【図2】図2は、一次再結晶組織における{411}と
{111}方位粒の方位分布を示す図であり、(a)は
{111}<112> 方位粒の方位分布を示し、
(b)は{411}<148>方位粒の方位分布を示す
図である。方位分布は磁束密度に影響を及ぼす板面法線
軸(ND軸)周り、と圧延垂直方向軸(TD軸)周りの
解析結果を示す。
【図3】図3は、本発明の実施例1において、脱炭焼鈍
の加熱速度と{111}/{411}の比との関係を示
す図である。
【図4】図4は、本発明の実施例2において、脱炭焼鈍
の均熱温度と{111}/{411}の比との関係を示
す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/12 C22C 38/00 303 C22C 38/06

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%でSi:0.8〜4.8%、
    C:0.085%以下、酸可溶性Al:0.01〜0.
    06%、N:0.012%以下、残部Fe及び不可避的
    不純物からなる珪素鋼スラブを1280℃以下の温度で
    加熱し熱間圧延した後、焼鈍し一回もしくは焼鈍をはさ
    む二回以上の冷間圧延により最終板厚とし、脱炭焼鈍後
    の一次再結晶集合組織の{111}/{411}の比を
    3.0以下、かつ一次再結晶粒組織の変動係数を0.6
    以下となるように、脱炭焼鈍温度までの加熱速度を14
    ℃/sec 以上に制御し、その後窒化処理を行うことを特
    徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
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