JP7319522B2 - 方向性電磁鋼板 - Google Patents
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Description
その結果、磁区の観察像をフーリエ変換により関数化することに思い至り、このパラメータによって、従来技術では明確に規定できなかった磁区構造の不均一性を含めて評価できることを知見した。磁区構造の不均一性を評価することによって、方向性電磁鋼板全体の還流磁区の総量(還流磁区の体積)が評価できる。つまり、磁区構造の不均一性を低減することによって、方向性電磁鋼板全体の還流磁区の総量(還流磁区の体積)が低減される。そして、この関数において、磁歪を改善し得る特徴について検討した。その結果、中磁場領域の磁歪として、従来からの磁歪の指標である1.7Tでの磁歪の最小値と最大値との差に加え、高磁場領域の磁歪として、特に2.0Tでの磁歪の最小値と最大値との差を改善できることを突き止めた。このパラメータを満足する方向性電磁鋼板によって、変圧器の無負荷損及び騒音が改善されることが判明した。さらにその特徴を好ましく制御する製造方法も検討した。
質量%で、Si:2.00~7.00%を含有し、残部がFe及び不純物である化学組成を有し、{110}<001>方位を主方位とする集合組織を有する方向性電磁鋼板であって、
消磁状態での磁区画像を二次元フーリエ変換により得られるピーク強度プロファイルであり、圧延直角方向(TD)のそれぞれの位置に対して、圧延方向(RD)にピーク強度を積分して得られる、圧延直角方向(TD)におけるピーク強度プロファイルF(x)において、
x>5.0の範囲における前記F(x)の最大ピーク値Maをとるxの位置Mp、前記圧延直角方向(TD)における前記磁区画像の観察領域L[m]の関係が、下記式(1)の関係を満足する方向性電磁鋼板。
Mp≦4000×L・・・・(1)
<2>
x>Mpの範囲における前記F(x)が、下記式(2)を満足する最小値となるxの位置をLxとしたとき、前記Lxと前記Mpとの差が下記式(3)を満足する、<1>に記載の方向性電磁鋼板。
F(x)<0.5×Ma・・・・(2)
Lx-Mp≦(2500×L)・・・・(3)
<3>
質量%で、Nb、V、Mo、Ta、及びWのうちの少なくとも1種の合計:0.030%以下を含有する、<1>又は<2>に記載の方向性電磁鋼板。
本発明に関連する特性として、2.0Tで励磁した際の磁歪(λp-p@2.0T)がある。以降の説明では、これを単に「高磁場(での)磁歪」と記述することがある。また、1.7Tで励磁した際の磁歪(λp-p@1.7T)がある。以降の説明では、これを単に「中磁場(での)磁歪」と記述することがある。
消磁状態での方向性電磁鋼板の磁区画像を二次元フーリエ変換により得られるピーク強度プロファイルであり、圧延直角方向(TD)のそれぞれの位置に対して、圧延方向(RD)にピーク強度を積分して得られる、圧延直角方向(TD)におけるピーク強度プロファイルF(x)において、下記式(1)を満足する。
Mp≦4000×L・・・・(1)
Mp:x>5.0の範囲における前記F(x)の最大ピーク値をとるxの位置Mp、
L :前記圧延直角方向(TD)における前記磁区画像の観察領域L[m]
x>Mpの範囲における前記F(x)が、下記式(2)を満足する最小値となるxの位置をLxとしたとき、前記Lx-前記Mpが、下記式(3)を満足する。
F(x)<0.5×Ma・・・・(2)
Lx-Mp≦(2500×L)・・・・(3)
まず、本発明の方向性電磁鋼板において、フーリエ変換により得られる強度プロファイルについて説明する。
方向性電磁鋼板の圧延直角方向(TD)と圧延方向(RD)がなす鋼板面について、磁場可視化装置(Matesy GmbH社製、CMOS-Magvie「Type:XL、センサータイプA」)により、磁区観察を行い、TD方向×RD方向について、領域の大きさがLmm×Mmm、解像度がNTDピクセル×NRDピクセルのグレースケールの磁区画像を得る。この際のNTD、NRDは偶数に限定し、解像度は、TD方向およびRD方向ともに、磁区画像の1画素当たりの空間分解能(L/NTDおよびM/NRD)が50μm以下となるように設定する。
まず、Fn’(x)を得る。Fn(x)は観察した磁区画像のコントラスト等の観察条件によって値が大きく変わる。このため、以下の処理によって規格化したFn(x)であるFn’(x)を得る(下記式(B)及び下記式(C))。
Mp≦4000×L・・・・(1)
F(x)<0.5×Ma・・・・(2)
Lx-Mp≦(2500×L)・・・・(3)
TD方向(x)におけるフーリエプロファイルF(x)は、鋼板面内における180°磁区のマクロ的な幅と、結晶粒界での180°磁区の幅変化に起因して形成される還流磁区の総量(以降、単に「還流磁区総量」と表記する場合がある。)と関連していると考えられる。ここでいう180°磁区のマクロ的な幅とは、鋼板面全体を仮に完全な周期的180°磁区としたときに、仮想的な180°磁区の幅という意味を表す。つまり、フーリエ変換により得られたピーク強度プロファイルF(x)における最大ピーク強度位置は、仮に全面を完全に周期的な180°磁区としたとき、どの幅の要素が最も多いかを定量的に示すものとなる。フーリエ空間における最大ピーク値は実空間における180°磁区幅(間隔)の逆数の関係になるので、最大ピーク値の位置が原点に近いほど、180°磁区幅は細かいということを表す。
本発明に係る方向性電磁鋼板は、化学組成として、質量分率で、Si:2.00%~7.00%を含有し、残部がFe及び不純物である。
少々混乱しやすいのは、Nb群元素は、後述する仕上げ焼鈍における純化により系外に排出される傾向が比較的強い。そのため、素材(例えばスラブ)にNb群元素を含有させ、製造工程でこれを活用して還流磁区の発生頻度を抑制した場合でも、その後の純化により系外に排出されてしまうと、最終製品でのNb群元素の含有量としてはNb群元素を活用した痕跡を検出できない場合があることである。
質量%で、
C:0.005%以下
Mn:1.00%以下、
S及びSe:合計で0.015以下、
Al:0.065%以下、
N:0.005%以下
Cu:0.40%以下、
Bi:0.010%以下、
B:0.080%以下、
P:0.50%以下、
Ti:0.015%以下、
Sn:0.10%以下、
Sb:0.10%以下、
Cr:0.30%以下、
Ni:1.00%以下。
これら任意元素は、公知の目的に応じて含有させればよいため、任意元素の含有量の下限値を設ける必要はなく、下限値が0%でもよい。なお、S及びSeの合計とは、S及びSeの少なくとも一方を含み、その合計含有量であることを意味する。
本発明に係る方向性電磁鋼板の上記化学成分は、最終製品における化学組成であり、出発素材でもある後述するスラブの組成とは異なることを申し添えておく。
次に、本発明に係る方向性電磁鋼板の好ましい製造方法の一態様について説明する。
以下に示す工程及び各工程での定量的な条件は、本発明の実施可能性を示すために採用した一例であり、本発明は、これら工程及び定量値に限定されるものではない。本発明に係る方向性電磁鋼板の製造方法は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得る。
鋳造工程では、スラブを準備する。スラブの製造方法の一例は次のとおりである。溶鋼を製造(溶製)する。溶鋼を用いてスラブを製造する。連続鋳造法によりスラブを製造してもよい。溶鋼を用いてインゴットを製造し、インゴットを分塊圧延してスラブを製造してもよい。スラブの厚さは、特に限定されない。スラブの厚さは、例えば、150mm~350mmである。スラブの厚さは、好ましくは、220mm~280mmである。スラブとして、厚さが10mm~70mmの、いわゆる薄スラブを用いてもよい。薄スラブを用いる場合、熱間圧延工程において、仕上げ圧延前の粗圧延を省略できる。
Cは、製造工程においては一次再結晶組織の制御に有効な元素であるものの、最終製品への含有量が過剰であると磁気特性に悪影響を及ぼす。したがって、C含有量は0.085%以下である。C含有量の好ましい上限は0.075%である。Cは後述の脱炭焼鈍工程及び仕上げ焼鈍工程で純化され、仕上げ焼鈍工程後には0.005%以下となる。Cを含む場合、工業生産における生産性を考慮すると、C含有量の下限は0%超であってもよく、0.001%であってもよい。
シリコン(Si)は、方向性電磁鋼板の電気抵抗を高めて鉄損を低下させる。Si含有量が2.00%未満であれば、仕上げ焼鈍時にγ変態が生じて、方向性電磁鋼板の結晶方位が損なわれてしまう。一方、Si含有量が7.00%を超えれば、冷間加工性が低下して、冷間圧延時に割れが発生しやすくなる。Si含有量の好ましい下限は2.50%であり、さらに好ましくは3.00%である。Si含有量の好ましい上限は4.50%であり、さらに好ましくは4.00%である。
マンガン(Mn)はS又はSeと結合して、MnS、又は、MnSeを生成し、インヒビターとして機能する。Mnを含有させる場合、Mn含有量が0.05%~1.00%の範囲内にある場合に、二次再結晶が安定する。本発明では、インヒビターの機能の一部をNb群元素の窒化物によって担うことが可能である。この場合は、一般的なインヒビターとしてのMnS、又は、MnSe強度は弱めに制御する。このため、Mn含有量の好ましい上限は0.50%であり、さらに好ましくは0.20%である。
硫黄(S)及びセレン(Se)は、Mnと結合して、MnS又はMnSeを生成し、インヒビターとして機能する。S及びSeの少なくとも一方を含有させる場合、S及びSeの含有量が合計で0.003%~0.035%であれば、二次再結晶が安定する。本発明では、インヒビターの機能の一部をNb群元素の窒化物によって担うことが可能である。この場合は、一般的なインヒビターとしてのMnS、又は、MnSe強度は弱めに制御する。このため、S及びSe含有量の合計の好ましい上限は0.025%であり、さらに好ましくは0.010%である。S及びSeは仕上げ焼鈍後に残留すると化合物を形成し、鉄損を劣化させる。そのため、仕上げ焼鈍中の純化により、S及びSeをできるだけ少なくすることが好ましい。
アルミニウム(Al)は、Nと結合して(Al、Si)Nとして析出し、インヒビターとして機能する。Alを含有させる場合、Alの含有量が0.010%~0.065%の範囲内にある場合に、後述の窒化により形成されるインヒビターとしてのAlNは二次再結晶温度域を拡大し、特に高温域での二次再結晶が安定する。したがって、Alの含有量は0.010%~0.065%である。Al含有量の好ましい下限は0.020%であり、さらに好ましくは0.025%である。二次再結晶の安定性の観点から、Al含有量の好ましい上限は0.040%であり、さらに好ましくは0.030%である。
窒素(N)は、Alと結合してインヒビターとして機能する。Nは製造工程の途中で窒化により含有させることが可能であるため下限は規定しない。一方、Nを含有させる場合、N含有量が0.012%を超えれば、鋼板中に欠陥の一種であるブリスタが発生しやすくなる。N含有量の好ましい上限は0.010%であり、さらに好ましい上限は0.009%である。Nは仕上げ焼鈍工程で純化され、仕上げ焼鈍工程後には0.005%以下となる。
質量%で、
Cu:0.40%以下、
Bi:0.010%以下、
B:0.080%以下、
P:0.50%以下、
Ti:0.015%以下、
Sn:0.10%以下、
Sb:0.10%以下、
Cr:0.30%以下、
Ni:1.00%以下。
これら任意元素は、公知の目的に応じて含有させればよいため、任意元素の含有量の下限値を設ける必要はなく、下限値が0%でもよい。
熱間圧延工程は、所定の温度(例えば1100℃~1400℃)に加熱されたスラブの熱間圧延を行い、熱間圧延鋼板を得る工程である。熱間圧延工程では、例えば、加熱工程で加熱された珪素鋼素材(スラブ)の粗圧延を行った後、仕上げ圧延を行って所定厚さ、例えば、1.8mm~3.5mmの熱間圧延鋼板とする。仕上げ圧延終了後、熱間圧延鋼板を所定の温度で巻き取る。
熱延板焼鈍工程は、熱間圧延工程で得た熱間圧延鋼板を所定の温度条件(例えば750℃~1200℃で、30秒間~10分間)で焼鈍して、焼鈍鋼板を得る工程である。
熱延板焼鈍工程は、高温スラブ加熱プロセスにおいてはAlNなどの析出物の形態を最終的に制御する工程であり、均一かつ微細に析出するように条件調整するため、一次再結晶粒径は小径化する。したがって、前述の熱間圧延工程と同様に、後述する仕上げ焼鈍前の鋼板表面の性状制御及び仕上げ焼鈍中の雰囲気制御などとの組み合わせが有効となる。
冷間圧延工程は、焼鈍工程で得た焼鈍鋼板を、1回の冷間圧延、又は焼鈍(中間焼鈍)を介して複数回(2回以上)の冷間圧延により、例えば、0.10mm~0.50mmの厚さを有する冷間圧延鋼板を得る工程である。総冷延率は90%以上(好ましくは91%以上)である。総冷延率の上限は冷延可能な範囲であれば特に限定されず、例えば95%が挙げられる。
脱炭焼鈍工程は、冷間圧延工程で得た冷間圧延鋼板に脱炭焼鈍(例えば700℃~900℃で1分間~3分間)を行い、一次再結晶が生じた脱炭焼鈍鋼板を得る工程である。冷間圧延鋼板に脱炭焼鈍を行うことで、冷間圧延鋼板中に含まれるCが除去される。脱炭焼鈍は、冷間圧延鋼板中に含まれる「C」を除去するために、湿潤雰囲気中で行うことが好ましい。
また、脱炭酸化量及び表面酸化層の状態は、グラス被膜の形成に影響を及ぼすため、本発明の効果を発現するためには従来の方法を使って適宜調整してもよい。
窒化処理は、二次再結晶におけるインヒビターの強度を調整するため、実施する重要な工程である。窒化処理は、脱炭処理の開始から、仕上げ焼鈍における二次再結晶の開始までの間に、鋼板の窒素量を40ppm~200ppm程度増加させる。窒化処理としては、例えば、アンモニア等の窒化能のあるガスを含有する雰囲気中で焼鈍する処理、MnN等の窒化能を有する粉末を含む焼鈍分離剤を塗布した脱炭焼鈍鋼板を仕上げ焼鈍する処理等が例示される。
焼鈍分離剤塗布工程は、脱炭焼鈍鋼板に焼鈍分離剤を塗布する工程である。焼鈍分離剤としては、例えば、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を用いることができる。焼鈍分離剤を塗布後の脱炭焼鈍鋼板は、コイル状に巻取った状態で、次の仕上げ焼鈍工程で仕上げ焼鈍される。
仕上げ焼鈍工程は、焼鈍分離剤が塗布された脱炭焼鈍鋼板に仕上げ焼鈍を施し、二次再結晶を生じさせる工程である。この工程は、一次再結晶粒の成長をインヒビターにより抑制した状態で二次再結晶を進行させることによって、{100}<001>方位粒を優先成長させ、磁束密度を飛躍的に向上させる。
PA:0.050~0.300
(B)仕上げ焼鈍の加熱過程において、950℃~1000℃の温度域での雰囲気についてのPH2O/PH2をPBとし、
PB:0.010~0.070
(C)仕上げ焼鈍の加熱過程において、850℃~950℃の温度域での保持時間をTCとする。
TC:180分~480分
PBについては、好ましくは、0.020~0.050である。
TCについては、好ましくは、240分~360分である。より好ましくは、250分~340分である。
鋼板に、コーティング溶液(例えば、りん酸又はりん酸塩、無水クロム酸又はクロム酸塩、及びコロイド状シリカを含むコーティング溶液)を塗布して焼き付けて(例えば、350℃~1150℃で、5秒間~300秒間)、絶縁被膜を形成する。
方向性電磁鋼板には、必要に応じて、レーザー、プラズマ、機械的方法、エッチングなど、公知の手法により、局所的な微小歪領域又は溝を形成する磁区細分化処理を施してもよい。本発明に係る方向性電磁鋼板は、磁区構造に着目した規定であるため、磁区制御後の製品が、本発明規定を満たす磁区構造を備えていれば、顕著な磁歪の低減効果を発揮する。
本発明の効果を発現させる根本要因と考えている還流磁区の抑制効果は、二次再結晶粒が成長する過程で起きる亜粒界の形成に起因したものである。この亜粒界の形成は、素材(スラブ)の化学組成及び二次再結晶の成長に至るまででのインヒビターの造り込み、一次再結晶粒の粒径の制御など、多岐の工程の条件に影響される。このため、一概に条件を決定することは適切ではない。
(1):二次再結晶をより低温から開始させるため、一次再結晶粒径を小さめに制御した上で、脱炭焼鈍後、仕上げ焼鈍前の鋼板表面での元素偏析に起因するグラス被膜との反応を考慮して二次再結晶を制御すること。
(2):さらに、必要に応じて、Nb群元素を、粒界移動を抑制する効果が比較的低温で消失するインヒビターとして活用すること。
(3):さらに、比較的低温で長時間保持するとともに、AlNなどの比較的高温まで粒界移動を抑制する効果が継続するインヒビターを併用し、二次再結晶粒の発生よりも成長を優先させて高温まで二次再結晶を進行させる条件を決定すること。
粒界エネルギーについては、角度差を有する2つの結晶粒が隣接していると、その粒界のエネルギーが大きくなるため、結晶粒が成長する過程でこれを解消する方向に、つまり特定の同一方位に近づくように亜粒界の形成が起きることが考えられる。
また、表面エネルギーについては、対称性がそれなりに高い{110}面からのわずかな方位のずれは、表面エネルギーを増大させることになる。このため、結晶粒が成長する過程でこれを解消する方向に、つまり{110}面方位に近づき、ずれ角が小さくなるように亜粒界の形成が起きることが考えられる。
二次再結晶が低温で開始するため、転位の消滅が遅れ、成長する二次再結晶粒の成長方向前面の粒界に転位が掃き溜められるような形で密度が増す。このため成長する二次再結晶粒の前面で原子の再配列が起き易くなり、隣接する二次再結晶粒との角度差を小さくするように、又は表面エネルギーを小さくするように亜粒界の形成を起こすものと考えられる。
表1及び表2において、「-」は含有量を意識した制御及び製造をしておらず含有量の測定を実施していない元素である。また、「<***」は含有量を意識した制御及び製造を実施し、含有量の測定を実施したが、精度の信憑性として十分な測定値が得られなかった(検出限界以下)元素である。
表2に示す化学組成を有する素材に、熱間圧延、熱延板焼鈍、冷間圧延を実施した。一部については、脱炭焼鈍後の冷延鋼板に、水素-窒素-アンモニアの混合雰囲気で窒化処理(窒化焼鈍)を施した。
さらに、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍を施し、その最終工程では、水素雰囲気において1200℃で20時間保持する純化工程を経た後、自然冷却し、二次再結晶が完了した仕上げ焼鈍鋼板を製造した。製造条件を表3~表8に示す。
得られた方向性電磁鋼板について、以下の手法により各種特性を測定した。
方向性電磁鋼板の磁区構造は、磁場可視化装置(Matesy GmbH社製、CMOS-Magvie「Type:XL、センサータイプA」)を用い、前述の方法で測定し、これをフーリエ変換して、最大ピーク強度位置Mp及び最小位置Lxを得た。
なお、観察視野は、40mm×40mm(L:40mm、M:40mm)であるので、式(1)および式(3)の右辺はそれぞれ160、100となる。
磁気特性は、一般的な特性値として、交流周波数:50Hz、励磁磁束密度:1.7Tの条件で、鋼板の単位重量(1kg)あたりの電力損失として定義される鉄損(W17/50)を測定した。また、800A/mで励磁したときの鋼板の磁束密度B8(T)を測定した。
△λp-p@1.7T=λp-p@1.7T-(16.94-8.50×B8)
△λp-p@2.0T=λp-p@2.0T-(14.90-7.00×B8)
Claims (3)
- 質量%で、Si:2.00~7.00%及びMn:1.00%以下を含有し、
C、S、Al及びNがそれぞれC:0.001~0.006%、S:0.002%未満、Al:0.010%未満及びN:0.002%未満であり、
任意に、Cu:0.2%以下、Nb:0.048%以下、V:0.006%以下、Mo:0.020%以下、Ta:0.010%以下、及びW:0.010%以下を含有し、
残部がFe及び不可避的不純物である化学組成を有し、{110}<001>方位を主方位とする集合組織を有する方向性電磁鋼板であって、
消磁状態での磁区画像の、黒と白とを含め、連続的なc階調で表現された情報を数値処理したものを二次元フーリエ変換により得られるピーク強度プロファイルであり、圧延直角方向(TD)のそれぞれの位置に対して、圧延方向(RD)にピーク強度を積分して得られる、圧延直角方向(TD)におけるピーク強度プロファイルF(x)において、
x>5.0の範囲における前記F(x)の最大ピーク値Maをとるxの位置Mp、前記圧延直角方向(TD)における前記磁区画像の観察領域L[m]の関係が、下記式(1)の関係を満足する方向性電磁鋼板。
Mp≦4000×L・・・・(1) - x>Mpの範囲における前記F(x)が、下記式(2)を満足する最小値となるxの位置をLxとしたとき、前記Lxと前記Mpとの差が下記式(3)を満足する、請求項1に記載の方向性電磁鋼板。
F(x)<0.5×Ma・・・・(2)
Lx-Mp≦(2500×L)・・・・(3) - 質量%で、Nb、V、Mo、Ta、及びWのうちの少なくとも1種の合計:0.030%以下を含有する、請求項1又は2に記載の方向性電磁鋼板。
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