JP3485409B2 - 一方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

一方向性電磁鋼板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軟磁性材料として
変圧器等の電気機器の鉄芯として用いられる結晶粒がミ
ラー指数で{110}<001>方位に集積した、いわ
ゆる方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】方向性電磁鋼板は、{110}<001
>方位に集積した結晶粒により構成された通常4.8%
以下のSiを含有する鋼板である。この鋼板は、磁気特
性として励磁特性と鉄損特性が要求され、この要求に答
えるためには、結晶方位を高度に揃えることが重要であ
る。この結晶方位の集積化は二次再結晶とよばれるカタ
ストロフィックな粒成長現象を利用して達成される。
【0003】この二次再結晶を制御するためには、
(1)二次再結晶前の一次再結晶組織の調整と、(2)
インヒビターとよばれる微細析出物もしくは粒界偏析元
素の調整を行うことが必要である。このインヒビター
は、一次再結晶組織のなかで、一般の粒の成長を抑制
し、特定の方位数のみを優先的に成長させる機能を持
つ。
【0004】インヒビターに関しては従来数多くの研究
がなされており、代表的な析出物としては、M.F.L
ittmann(特公昭30−3651号公報)及び
J.E.Turnbull(Trans.Met.So
c.AIME212(1958年)p769/781)
はMnSを、田口等(特公昭40−15644号公報)
はAlNを、今中等(特公昭51−13469号公報)
はMnSeを提示している。これらの析出物はその微細
析出制御として熱延前のスラブ加熱を1300℃以上の
高温でおこない、これらの析出物を一旦容体化し、その
後の熱延及び熱延板焼鈍工程で微細析出処理を行ってい
る。例えば、高磁束密度方向性電磁鋼板を製造するため
に重要なAlNは特公昭46−23820に開示される
ように、熱延板の熱サイクルを詳細に制御することによ
り達成されている。
【0005】しかしながら、熱延板焼鈍を行うことは製
造コストの増加を招くため、近年熱延板焼鈍を省略する
ことが検討されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記の製造方法では、
二次再結晶に必須のインヒビターの制御を熱延板焼鈍工
程で行っているために、熱延板焼鈍を省略することは極
めて困難である。そこで、小松等(特公昭62−452
85号公報)、特開平1−91956号公報が開示する
脱炭焼鈍後に窒化処理を行い(Al,Si)Nを微細析
出させる技術を基に検討を行った。その結果、熱延板焼
鈍工程ではAlNインヒビターを形成していないので二
次再結晶は安定的に達成するが、コイル長手方向での磁
気特性(磁束密度;B8 )が大きく変動してしまうこと
が分かった。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等はその原因の
調査を行い、コイル長手方向の磁気特性が大きく変動す
るのは、一次再結晶の粒組織が大きく変動することに起
因することを見いだした。二次再結晶に及ぼす二次再結
晶前の粒組織の影響に関しての研究は殆どなく、本発明
者等の一部は特開平2−182866号公報にその重要
性を指摘している。
【0008】この一次再結晶組織の変動は熱延工程で不
可避的に析出するAlN等の析出物が、コイル長手方向
において熱延時の熱履歴が異なるためにその析出状況が
異なるためであると推察される。そこで、熱延工程の検
討を行い、重量でSi:0.8〜4.8%、酸可溶性A
l:0.010〜0.065%、N:0.004〜0.
012%、残部Fe及び不可避的不純物からなる珪素鋼
スラブを熱間圧延した後、一回もしくは焼鈍をはさむ二
回以上の冷間圧延により最終板厚として脱炭焼鈍、窒化
処理、仕上げ焼鈍を行う方向性電磁鋼板の製造方法にお
いて、熱延工程のスラブ加熱を1280℃以下で行い粗
圧延後、曲率半径1.5m以下の曲げ加工を行い、コイ
ル状に鋼板を巻取り、以下に示す温度域、保持時間で保
持した後、巻戻し、仕上熱延を行うことにより、長手方
向の磁気特性の安定した方向性電磁鋼板を製造できるこ
とを見いだした。
【0009】 t[sec ]≧−0.15T[℃]+195 900≦T[℃]≦1100 また、脱炭焼鈍の500℃〜800℃までの昇温速度を
9℃/sec 以上とすることで窒化物の再析出を容易にす
ることを見いだした。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
熱延前のスラブ加熱温度としてはAlNの完全溶体化し
ない1280℃以下で行うことが有効である。これは1
280℃以上の温度でAlNを完全に溶体化した場合に
は熱延工程での析出サイズが全体的に小さくなるので鋼
板長手方向の熱履歴の違いによるインヒビターとしての
強度差が大きくなり、その後の脱炭焼鈍後の窒化処理に
より形成された(Al,Si)Nインヒビターでは均一
化できないためと推測される。スラブ加熱温度の下限
は、AlNの観点からは低めたほうがよいが熱間圧延時
の変形抵抗の観点より1000℃以上が望ましい。
【0011】析出を促進させるためには、析出ノーズ温
度で一定時間以上保持することが有効であるが、シート
バーのまま保持すると温度低下が速くその時間を確保す
ることができない。また、保熱炉に再挿入して保持する
と生産性に支障をきたす。そこでコイル状で巻取ること
により温度低下を抑制することを前提に実験を行った。
【0012】以下、具体的に実験結果を示す。重量でS
i:3.0%、酸可溶性Al:0.03%、N:0.0
6%、C:0.05%、残部Fe及び不可避的不純物か
らなる珪素鋼スラブを1100〜1350℃で加熱した
後、粗圧延し40mm厚とし、曲げ加工を施した。その後
1150〜800℃の温度で保持し、仕上げ圧延を施し
2.3mm厚とした後水冷して550℃でコイル状に巻取
った。その後、板厚0.3mm厚に冷間圧延し840℃で
150秒脱炭焼鈍しその粒組織の調査を行った。また、
脱炭板に窒化処理を行い窒素量を0.02%とした後、
仕上げ焼鈍を行った。
【0013】その結果を表1に示す。
【0014】
【表1】
【0015】表1より、曲率半径1.5m以下の曲げ加
工を行い、1100℃以下900℃以上の温度域でコイ
ル状に鋼板を巻取り前記の温度域で一定時間以上保持す
ることが磁束密度(B8 )の向上に極めて有効であると
いう知見を得た。保持温度が1100℃より高いと、一
次再結晶粒径が大きく混粒組織となるのは析出物の析出
量が少ないためであると考えられる。
【0016】また、保持温度が900℃より低いと、一
次再結晶粒径が大きく混粒組織となるのは低温で析出し
た析出物の粒径が小さいので、脱炭焼鈍中で析出物が変
化したためであると考えられる。曲率半径が大きい場合
にAlN挙動の析出挙動は若干おくれるが同様な析出挙
動を示すにもかかわらず磁気特性が落ちるのは、ある程
度の曲げ加工が他の金属学的因子、例えば再結晶挙動等
に影響したためであると考えられる。
【0017】次に本発明で用いられる鋼成分組成と製造
条件を説明する。本発明においてスラブが含有する成分
としては、重量でSi:0.8〜4.8%、酸可溶性A
l:0.010〜0.065%、N:0.004〜0.
012%が必要である。Siは添加量を多くすると電気
抵抗が高くなり、鉄損特性が改善されるが4.8%を超
えると冷間圧延時に材料が割れ易くなり、圧延が困難に
なってしまう。一方0.8%以下になると仕上げ焼鈍時
にγ変態が生じ結晶方位が損なわれてしまい、鉄損特性
の向上が望めない。
【0018】酸可溶Alは、本発明においてNと結合し
てAlNとして析出し、インヒビターとしての機能をは
たすために必須の元素である。磁束密度が高くなる0.
010〜0.050%を限定範囲とする。Nは0.01
2%をこえるとブリスターとよばれる鋼板中の空孔を生
じるので、0.12%を上限とする。また、AlNの量
的な観点より、0.004%を下限とする。
【0019】その他、インヒビター構成元素として、S
b,Sn,Cu,Cr,Mo,V,Se,Bi,Nb,
Ti等を補助的に添加することもできる。珪素鋼スラブ
は、転炉または電気炉等により鋼を溶製し、必要に応じ
て溶鋼を真空脱ガス処理し、次いで連続鋳造もしくは造
塊後、分塊圧延することによって得られる。
【0020】このスラブを本願発明に従う方法で熱延し
た後に、一回もしくは中間焼鈍を含む二回以上の冷間圧
延を組み合わせて最終板厚とする。その際、集合組織を
調整するために、最終冷間圧延率を80%超にすること
が必要である。その後、鋼中のCの除去も兼ね湿潤雰囲
気ガス中で一次再結晶焼鈍をおこなう。
【0021】この、一次再結晶前の段階で、先の熱延工
程で析出制御できなかった窒素もしくは熱的不安定なS
3 4 等の窒化物は一次再結晶焼鈍の昇温過程で分解
し、AlNとして再析出する。この再析出が一次再結晶
完了前に行われると粒組織の調整に悪影響を及ぼすの
で、熱的不安定窒化物が分解を開始する500℃から一
次再結晶が完了する700℃までの昇温速度を高め、好
ましくは9℃/秒以上で昇温することが有効である。
【0022】その後、二次再結晶を行ううえで必要なイ
ンヒビター量を確保するうえで、二次再結晶が発現する
前に窒化処理を行う必要がある。該鋼板に焼鈍分離剤を
塗布した後、仕上げ焼鈍を行う。
【0023】
【実施例】
<実施例>Si:3.0%、C:0.05%、酸可溶性
Al:0.03%、N:0.006%、Mn:0.1
%、S:0.01%を含む珪素鋼スラブを1100℃に
加熱し、40mm厚に粗圧延したのち、一部はそのまま
2.3mm厚に仕上げ圧延し、一部は1.5mmの曲率で加
工を施して1000℃で3分間保持したのちし仕上げ圧
延を施した。この熱延板を0.3mmに冷間圧延し、5〜
28℃/sの昇温速度で昇温し850℃で3分間脱炭焼
鈍を施した。更に窒化処置を行い窒素量を0.02%と
した後、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、1
200℃で20時間仕上げ焼鈍を施した。
【0024】製品の特性値を表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
【発明の効果】本発明により、熱延板焼鈍工程を省略し
てもコイル長手方向で磁気特性の安定した製品を工業的
に安定して製造することができる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−92643(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/12 C22C 38/00 303 C22C 38/06 H01F 1/16

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量でSi:0.8〜4.8%、酸可溶
    性Al:0.010〜0.065%、N:0.004〜
    0.012%、残部Fe及び不可避的不純物からなる珪
    素鋼スラブを熱間圧延した後、一回もしくは焼鈍をはさ
    む二回以上の冷間圧延により最終板厚として脱炭焼鈍、
    窒化処理、仕上げ焼鈍を行う方向性電磁鋼板の製造方法
    において、 熱延工程のスラブ加熱を1280℃以下で行い粗圧延
    後、曲率半径1.5m以下の曲げ加工を行い、コイル状
    に鋼板を巻取り、以下に示す温度域、保持時間で保持し
    た後、巻戻し、仕上熱延を行うことを特徴とする板厚長
    手方向の磁気特性の安定した方向性電磁鋼板の製造方
    法。 t[sec ]≧−0.15T[℃]+195 900≦T[℃]≦1100
  2. 【請求項2】 脱炭焼鈍の500℃〜800℃までの昇
    温速度を9℃/sec以上とすることを特徴とする請求項
    1記載の板厚長手方向の磁気特性の安定した方向性電磁
    鋼板の製造方法。
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