JP3320750B2 - 車両のスリップ制御装置 - Google Patents

車両のスリップ制御装置

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JP3320750B2
JP3320750B2 JP17136591A JP17136591A JP3320750B2 JP 3320750 B2 JP3320750 B2 JP 3320750B2 JP 17136591 A JP17136591 A JP 17136591A JP 17136591 A JP17136591 A JP 17136591A JP 3320750 B2 JP3320750 B2 JP 3320750B2
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和俊 信本
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、車両制動時に車輪の
ブレーキ圧を制御してそのスリップを制御する、所謂、
アンチスキッド制御機構を備えた車両のスリップ制御装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、車輪のスリップを制御するス
リップ制御装置として、車両制動時に、過大なブレーキ
圧によって車輪がロック状態となり制動性が損なわれる
ことを防止するために、車輪のスリップ率を別途設定さ
れる目標スリップ率(通常は、車輪と路面との間で最大
摩擦係数が得られるスリップ率)とすべく、車輪のブレ
ーキ圧を制御する、所謂、アンチスキッド制御機構を備
えたものは一般に良く知られている(例えば、特公昭6
0−42056号公報参照)。
【0003】かかるスリップ制御装置では、通常、車輪
が急激な制動力を受けた場合などにおいて、車輪がロッ
クしそうになるとブレーキ圧が減圧されて制動力を解除
する方向に制御され、車輪ロックの危険性がなくなると
ブレーキ圧が増圧されて制動力を付与する方向に制御さ
れる。そして、このような一連の車輪制動力の制御(以
下、これをABS制御と略称する)を、例えば車両が停
止するまで継続して行わせることにより、急制動時にお
ける車輪のロックないしスキッド状態が防止され、当該
車両を、方向安定性が損なわれることなく、短い制動距
離で停止させることが可能となる。
【0004】上記ABS制御において、ブレーキ圧を減
圧する減圧フェーズは、車輪がロックしそうになった場
合に、これを防止するため、ブレーキ圧を減圧すること
によって車輪に作用する制動力を解除するように制御す
るものであり、この減圧フェーズに移行する際の閾値を
適切に設定することは、車輪のロック状態の発生を防止
し、車両を安全かつ短い制動距離で停止させる上で重要
である。
【0005】すなわち、例えば、路面摩擦係数(以下、
路面μと略称する)が低く、かつ車速が低い場合を例に
とって説明すれば、この場合には、車両停止までに要す
る時間が長くなるので、その間ハンドル操作で車両姿勢
や進路を有効に制御できるように、車輪のロックを確実
に防止する必要がある。従って、この場合には、減圧フ
ェーズに入り易くなるように、減圧フェーズに移行する
際の閾値を、路面μが中程度あるいは比較的高い場合に
比べて、また、車速が中速以上の場合に比べて、小さく
設定しておく必要がある。従来、上記減圧フェーズへの
移行など、ABS制御における制御フェーズを移行させ
る際の閾値を設定する場合、車輪の挙動に大きな影響を
及ぼす路面μ及び車速等に基づいて、車両減速度や車輪
スリップ率などで設定することが知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、減圧フェー
ズに移行する際の閾値を、路面μと車速とに基づいて車
輪の減速度で設定する場合、路面μが同じであれば、通
常、車速が低いほど車輪の減速度が出にくくその値が小
さくなる。従って、上記閾値は、低車速域での減圧遅れ
を防止するために、車速が低いほど小さく設定されるの
が一般的である。
【0007】しかしながら、路面μが比較的高い、所
謂、高μ路では、例えば車両停止直前など、車速がある
程度低い(例えば7km/h以下)場合には、ABS制御の
減圧フェーズでスリップ制御して車輪のロック防止を図
るよりも、車輪が多少ロックぎみになっても制動力を十
分に作用させた方が、短い距離で停止することができる
ことが知られている。また、例えば、路面が圧雪状態で
路面μが中程度である、所謂、中μ路では、車輪が雪を
乗り越えようとするまでブレーキ圧が減圧され、過度に
減圧される結果、制動力不足を来すことがある。すなわ
ち、中μ路あるいは高μ路で車速が低い場合には、ブレ
ーキ圧を減圧制御して車輪のロック防止を確実に行おう
とすれば、却って、車両を停止させるまでに要する距離
や時間が長くなるという問題があった。
【0008】この発明は、上記問題点に鑑みてなされた
もので、路面摩擦係数が中μ以上で、かつ車速が低い場
合における車両の制動性を向上させることができる車両
のスリップ制御装置を提供することを主目的とする。
【0009】
【0010】
【0011】
【課題を解決するための手段】このため、本願の第1の
発明は、車輪の回転速度を検出する車輪速検出手段と、
該車輪速検出手段によって検出された車輪速に基づいて
上記車輪の減速度を算出する減速度算出手段と、車輪の
ブレーキ圧を調整する油圧調整手段と、上記車輪速検出
手段によって検出された車輪速に基づいて当該車両の疑
似車体速を算出する疑似車体速算出手段と、同じく車輪
速に基づいて路面摩擦係数を推定する路面摩擦係数推定
手段とを備えるとともに、少なくとも上記疑似車体速と
路面摩擦係数とに基づいて、上記ブレーキ圧が、少なく
とも増圧フェーズと減圧フェーズとを含むサイクルに従
って周期的に増減するように上記油圧調整手段を作動さ
せる制御手段を備えてなる車両のスリップ制御装置にお
いて、上記減圧フェーズに移行する際の閾値を、上記疑
似車体速と路面摩擦係数とに基づいて車輪の減速度で設
定するとともに、上記路面摩擦係数が所定値以上の場合
には、疑似車体速が所定疑似車体速よりも低いときの上
記閾値を、疑似車体速が上記所定疑似車体速以上のとき
に比べて大きく設定したものである。
【0012】また、本願の第2の発明は、上記第1の発
明において、上記路面摩擦係数が上記所定値未満の場合
には、疑似車体速が上記所定疑似車体速よりも低いとき
の上記閾値を、疑似車体速が上記所定疑似車体速以上の
ときに比べて小さく設定したものである。
【0013】更に、本願の第3の発明は、上記第1の発
明において、上記路面摩擦係数が上記所定値よりも大き
い第2の所定値以上の場合には、疑似車体速が上記所定
疑似車体速よりも低いときの上記閾値を、上記制御手段
による油圧調整手段の作動制御を開始する際の閾値より
も大きく設定したものである。
【0014】また、更に、本願の第4の発明は、車輪の
回転速度を検出する車輪速検出手段と、該車輪速検出手
段によって検出された車輪速に基づいて上記車輪の減速
度を算出する減速度算出手段と、車輪のブレーキ圧を調
整する油圧調整手段と、上記車輪速検出手段によって検
出された車輪速に基づいて当該車両の疑似車体速を算出
する疑似車体速算出手段と、同じく車輪速に基づいて路
面摩擦係数を推定する路面摩擦係数推定手段とを備える
とともに、少なくとも上記疑似車体速と路面摩擦係数と
に基づいて、上記ブレーキ圧が、少なくとも増圧フェー
ズと減圧フェーズとを含むサイクルに従って周期的に増
減するように上記油圧調整手段を作動させる制御手段を
備えてなる車両のスリップ制御装置において、減圧フェ
ーズを終了する際の閾値を、上記疑似車体速と路面摩擦
係数とに基づいて車輪の減速度で設定するとともに、上
記路面摩擦係数が所定値以上の場合には、疑似車体速が
所定疑似車体速よりも低いときの上記閾値を、疑似車体
速が上記所定疑似車体速以上のときに比べて大きく設定
したものである。
【0015】
【0016】
【0017】
【発明の効果】本願の第1の発明によれば、減圧フェー
ズに移行する際の閾値を、疑似車体速と路面μとに基づ
いて車輪の減速度で設定するとともに、路面μが所定値
以上の場合には、疑似車体速が所定疑似車体速よりも低
いときの上記閾値を、疑似車体速が上記所定疑似車体速
以上のときに比べて大きく設定したので、路面μが上記
所定値以上で、かつ、疑似車体速が上記所定疑似車体速
よりも低い状態では、疑似車体速が上記所定疑似車体速
以上のときと同様にブレーキ圧を減圧させて停止する場
合に比べ、減圧フェーズに移行しにくくし、車輪をロッ
ク傾向にすることができ、車両の制動性を向上させるこ
とができる。
【0018】また、本願の第2の発明によれば、基本的
には、上記第1の発明と同様の効果を奏することができ
る。特に、上記第1の発明において、路面μが上記所定
値以下の場合には、疑似車体速が所定疑似車体速よりも
低いときの上記閾値を、疑似車体速が所定疑似車体速以
上のときに比べて小さく設定したので、路面μが上記所
定値以下で、かつ、疑似車体速が上記所定疑似車体速よ
りも低いときには、車輪がロックされることを確実に防
止し、車両が停止するまでの間、ハンドル操作で車両の
姿勢及び進路等を制御することが可能になり、車両制動
時の安全性をより一層向上させることができる。
【0019】更に、本願の第3の発明によれば、基本的
には、上記第1の発明と同様の効果を奏することができ
る。特に、上記第1の発明において、路面μが上記所定
値よりも大きい第2の所定値以上の場合には、疑似車体
速が上記所定疑似車体速よりも低いときの上記閾値を、
ABS制御を開始する際の閾値よりも大きく設定したの
で、路面μが上記第2の所定値以上で、かつ、疑似車体
速が上記所定疑似車体速よりも低い領域では、ABS制
御が開始されても上記閾値を越えるまでは減圧フェーズ
に移行されることがなく、車輪は更にロック傾向とな
り、より早く停止することができるようになる。
【0020】また、更に、本願の第4の発明によれば、
減圧フェーズを終了する際の閾値を、疑似車体速と路面
μとに基づいて車輪の減速度で設定するとともに、路面
μが所定値以上の場合には、疑似車体速が所定疑似車体
速よりも低い状態における上記閾値を、疑似車体速が上
記所定疑似車体速以上のときに比べて大きく設定したの
で、路面μが上記所定値以上でかつ疑似車体速が上記所
定疑似車体速よりも低い場合には、疑似車体速が上記所
定疑似車体速以上の領域での減圧フェーズに比べて、減
圧フェーズが早く終了し、ブレーキ圧が減圧される時間
が短くなる結果、車輪をロック傾向にすることができ、
車両の制動力不足を防止して制動性を向上させることが
できる。
【0021】
【実施例】以下、本発明の実施例を、添付図面に基づい
て詳細に説明する。図1に示すように、本実施例に係る
車両は、左右の前輪1,2が従動輪、左右の後輪3,4が
駆動輪とされ、エンジン5の出力トルクが自動変速機6
からプロペラシャフト7、差動装置8および左右の駆動
軸9,10を介して左右の後輪3,4に伝達されるように
なっている。
【0022】上記各車輪1〜4には、これらの車輪1〜
4と一体的に回転するディスク11a〜14aと、制動圧
の供給を受けて該ディスク11a〜14aの回転を制動す
るキャリパ11b〜14bなどで構成されるブレーキ装置
11〜14がそれぞれ備えられていると共に、これらの
ブレーキ装置11〜14を制動操作するブレーキ制御シ
ステム15が設けられている。このブレーキ制御システ
ム15は、運転者によるブレーキペダル16の踏込力を
増大させる倍力装置17と、この倍力装置17によって
増大された踏込力に応じた制動圧を発生させるマスター
シリンダ18とを有する。
【0023】そして、このマスターシリンダ18から導
かれた前輪用制動圧供給ライン19が2経路に分岐され
て、これらの前輪用分岐制動圧ライン19a,19bが左
右の前輪1,2ににおけるブレーキ装置11,12のキャ
リパ11b,12bにそれぞれ接続されると共に、左前輪
1のブレーキ装置11に通じる一方の前輪用分岐制動圧
ライン19aには、電磁式の開閉弁20aと、同じく電磁
式のリリーフ弁20bとからなる第1バルブユニット2
0が設置され、また右前輪2のブレーキ装置12に通じ
る他方の前輪用分岐制動圧ライン19bにも、上記第1
バルブユニット20と同様に、電磁式の開閉弁21a
と、同じく電磁式のリリーフ弁21bとからなる第2バ
ルブユニット21が設置されている。
【0024】一方、上記マスターシリンダ18から導か
れた後輪用制動圧供給ライン22には、上記第1、第2
バルブユニット20,21と同様に、電磁式の開閉弁2
3aと、同じく電磁式のリリーフ弁23bとからなる第3
バルブユニット23が設置されていると共に、この後輪
用制動圧供給ライン22は、上記第3バルブユニット2
3の下流側で2経路に分岐されて、これらの後輪用分岐
制動圧ライン22a,22bが左右の後輪3,4におけるブ
レーキ装置13,14のキャリパ13b,14bにそれぞれ
接続されている。
【0025】すなわち、本実施例におけるブレーキ制御
システム15は、第1バルブユニット20の作動によっ
て左前輪1におけるブレーキ装置11の制動圧を可変制
御する第1チャンネルと、第2バルブユニット21の作
動によって右前輪2におけるブレーキ装置12の制動圧
を可変制御する第2チャンネルと、第3バルブユニット
23の作動によって左右の後輪3,4における両ブレー
キ装置13,14の制動圧を可変制御する第3チャンネ
ルとが設けられて、これら第1〜第3チャンネルが互い
に独立して制御されるようになっている。
【0026】そして、上記ブレーキ制御システム15に
は上記第1〜第3チャンネルを制御するコントロールユ
ニット24が備えられ、このコントロールユニット24
は、ブレーキペダル16のON/OFFを検出するブレ
ーキスイッチ25からのブレーキ信号と、各車輪の回転
速度をそれぞれ検出する車輪速センサ26〜29からの
車輪速信号とを入力し、これらの信号に応じた制動圧制
御信号を第1〜第3バルブユニット20,21,23にそ
れぞれ出力することにより、左右の前輪1,2および後
輪3,4のスリップに対する制動制御、すなわちABS
制御を第1〜第3チャンネルごとに並行して行うように
なっている。
【0027】すなわち、コントロールユニット24は、
上記各車輪速センサ26〜29からの車輪速信号が示す
車輪速に基づいて上記第1〜第3バルブユニット20,
21,23における開閉弁20a,21a,23aとリリーフ
弁20b,21b,23bとをそれぞれデューティ制御によ
って開閉制御することにより、スリップの状態に応じた
制動圧で前輪1,2および後輪3,4に制動力を付与する
ようになっている。なお、第1〜第3バルブユニット2
0,21,23における各リリーフ弁20b,21b,23b
から排出されたブレーキオイルは、図示しないドレンラ
インを介して上記マスターシリンダ18のリザーバタン
ク18aに戻されるようになっている。
【0028】そして、ABS非制御状態においては、上
記コントロールユニット24からは制動圧制御信号が出
力されず、したがって、図示のように第1〜第3バルブ
ユニット20,21,23におけるリリーフ弁20b,21
b,23bがそれぞれ閉保持され、かつ各ユニット20,2
1,23の開閉弁20a,21a,23aがそれぞれ開保持さ
れることになって、ブレーキペダル16の踏込力に応じ
てマスターシリンダ18で発生した制動圧が、前輪用制
動圧供給ライン19および後輪用制動圧供給ライン22
を介して左右の前輪1,2および後輪3,4におけるブレ
ーキ装置11〜14に対して供給され、これらの制動圧
に応じた制動力が前輪1,2および後輪3,4に対してダ
イレクトに付与されることになる。
【0029】次に、上記コントロールユニット24が行
うブレーキ制御の概略について説明する。すなわち、コ
ントロールユニット24は、上記センサ26〜29から
の信号が示す車輪速に基づいて各車輪ごとの加速度およ
び減速度をそれぞれ算出する。ここで、加速度ないし減
速度の算出方法を説明すると、コントロールユニット2
4は、車輪速の前回値に対する今回値の差分をサンプリ
ング周期Δt(例えば7ms)で除算した上で、その結果を
重力加速度に換算した値を今回の加速度ないし減速度と
して更新する。
【0030】また、コントロールユニット24は所定の
悪路判定処理を実行して、走行路面が悪路か否かを判定
する。この悪路判定処理は、例えば次のように実行され
る。つまり、コントロールユニット24は、例えば後輪
3,4の減速度ないし加速度が一定時間内に所定の上限
値もしくは下限値を超えた回数が設定値以内ならば悪路
フラグFakroを0に維持すると共に、加速度および減速
度を示す値が、一定時間内に上記上限値および下限値を
超えた回数が上記設定値以上ならば走行路面が悪路であ
ると判定して悪路フラグFakroを1にセットする。
【0031】更に、コントロールユニット24は、上記
第3チャンネル用の車輪速および加減速度を代表させる
後輪3,4を選択する。本実施例においては、例えば、
スリップ時における後輪3,4の両車輪速センサ28,2
9の検出誤差を考慮して両車輪速のうちの小さい方の車
輪速が後輪車輪速として選択され、また、該車輪速から
求めた加速度および減速度が後輪減速度および後輪加速
度として選択されることになる。
【0032】また、更に、コントロールユニット24
は、上記各チャンネルごとの路面摩擦係数を推定すると
共に、それと平行して当該車両の疑似車体速を算出す
る。コントロールユニット24は、上記車輪速センサ2
8,29からの信号から求めた後輪車輪速および車輪速
センサ26,27からの信号が示す左右の各前輪1,2の
車輪速と疑似車体速とから第1〜第3チャンネルについ
ての非スリップ率をそれぞれ算出するのであるが、その
場合に、次の関係式、 非スリップ率=(車輪速/疑似車体速)×100 を用いて非スリップ率が算出される。つまり、疑似車体
速に対する車輪速の偏差が大きくなるほど非スリップ率
が小さくなって、当該車輪のスリップ傾向が大きくな
る。
【0033】続いて、コントロールユニット24は上記
第1〜第3チャンネルの制御に用いる各種の制御閾値を
それぞれ設定すると共に、これらの制御閾値を用いて各
チャンネルごとのロック判定処理と、上記第1〜第3バ
ルブユニット20,21,23に対する制御量を規定する
ためのフェーズ決定処理と、カスケード判定処理とを行
うようになっている。
【0034】ここで、上記ロック判定処理について説明
すると、概略次のようなものとなる。例えば、左前輪用
の第1チャンネルに対するロック判定処理においては、
コントロールユニット24は、まず、第1チャンネル用
の継続フラグFcon1の今回値を前回値としてセットした
上で、次に疑似車体速Vrと車輪速W1と所定の条件(例
えば、V<5Km/hr., W1<7.5Km/hr.)を満足す
るか否かを判定し、これらの条件を満足するときに継続
フラグFcon1およびロックフラグFlok1をそれぞれ0に
リセットする一方、満足していなければロックフラグF
lok1が1にセットされているか否かを判定する。ロック
フラグFlok1が1にセットされていなければ、所定の条
件のとき(例えば、疑似車体速Vrが車輪速W1より大き
いとき)にロックフラグFlok1に1をセットする。一
方、コントロールユニット24は、ロックフラグFlok1
が1にセットされていると判定したときには、例えば、
第1チャンネルのフェーズ値P1がフェーズ1を示す5
にセットされ、かつ非スリップ率S1が90%より大き
いときに継続フラグFcon1に1をセットする。尚、第
2、第3チャンネルに対しても上記と同様にしてロック
判定処理が行われる。
【0035】また、上記フェーズ決定処理の概略を説明
すると、コントロールユニット24は、当該車両の運転
状態に応じて設定したそれぞれの制御閾値と、車輪加減
速度や非スリップ率との比較によって、ABS非制御状
態を示すフェーズ0、ABS制御時における増圧状態を
示すフェーズ1、増圧後の保持状態を示すフェーズ2、
減圧状態を示すフェーズ3、急減圧状態を示すフェーズ
4および減圧後の保持状態を示すフェーズ5を選択する
ようになっている。
【0036】さらに、上記カスケード判定処理は、特に
アイスバーンのような低摩擦路面においては、小さな制
動圧でも車輪がロックしやすいことから、車輪のロック
状態が短時間に連続して発生するカスケードロック状態
を判定するものであり、カスケードロックの生じやすい
所定の条件を満たしたときにカスケードフラグFcasが
1にセットされるようになっている。
【0037】そして、コントロールユニット24は、各
チャンネルごとに設定されたフェーズ値に応じた制御量
を設定した上で、その制御量に従った制動圧制御信号を
第1〜第3バルブユニット20,21,23に対してそれ
ぞれ出力する。これにより、第1〜第3バルブユニット
20,21,23の下流側における前輪用分岐制動圧ライ
ン19a,19bおよび後輪用分岐制動圧ライン22a,2
2bの制動圧が、増圧あるいは減圧したり、増圧もしく
は減圧後の圧力レベルに保持されたりする。
【0038】上記路面摩擦係数の推定処理は、例えば、
第1チャンネルについては図2のフローチャートに従っ
て次のように行われる。すなわち、コントロールユニッ
ト24は、ステップ#1で各種データを読み込んだ上
で、ステップ#2でABSフラグFabsが1にセットさ
れているか否かを判定する。つまり、ABS制御中かど
うか判定するのである。このABSフラグFabsは、例
えば、上記第1〜第3チャンネルのロックフラグFlo
k1,Flok2,Flok3のどれかが1にセットされたときに1
にセットされ、また、ブレーキスイッチ25がONから
OFF状態に切り変わったときなどには0にリセットさ
れるようになっている。
【0039】そして、コントロールユニット24は、A
BSフラグFabsが1にセットされていないとき判定(ス
テップ#2:NO)したときには、ステップ#3に進んで
摩擦係数値MU1として高摩擦路面を示す3をセットす
る。また、コントロールユニット24は、上記ステップ
#2においてABSフラグFabsが1にセットされてい
ると判定(ステップ#2:YES)したとき、すなわち、
ABS制御中と判定したときには、ステップ#4に進ん
で前サイクル中の減速度DW1が−20Gより小さいか
否かを判定すると共に、YESと判定したときにはステ
ップ#5に進んで同じく前サイクル中の加速度AW1
10Gより大きいか否かを判定した上で、NOと判定し
たときにステップ#6を実行して摩擦係数値MU1とし
て低摩擦路面を示す1をセットする。
【0040】一方、コントロールユニット24は、上記
ステップ#4において減速度DW1が−20Gより小さ
くないと判定したときには、ステップ#5をスキップし
てステップ#7に移り、加速度AW1が20Gより大き
いか否かを判定し、YESと判定したときにはステップ
#8を実行して摩擦係数値MU1として3をセットする
一方、NOと判定したときにはステップ#9を実行して
摩擦係数値MU1として中摩擦路面を示す2をセットす
る。なお、第2、第3チャンネルについても、同様にし
て路面摩擦係数が推定されるようになっている。
【0041】一方、上記疑似車体速の算出処理は、具体
的には図3のフローチャートに従って次のように行われ
る。すなわち、コントロールユニット24は、ステップ
#21で各種データを読み込んだ上で、ステップ#22
で上記センサ26〜29からの信号が示す車輪速W1
4の中から最高車輪速Wmxを決定すると共に、ステッ
プ#23で該車輪速Wmxのサンプリング周期Δtあたり
の車輪速変化量ΔWmxを算出する。
【0042】次いで、コントロールユニット24は、ス
テップ#24を実行し、例えば図4に示すようなマップ
から代表摩擦係数値MU(第1〜第3チャンネルの最小
値)に対応する車体速補正値Cvrを読み出すと共に、ス
テップ#25でこの車体速補正値Cvrより上記車輪速変
化量ΔMmxが小さいか否かを判定する。そして、車輪速
変化量ΔWmxが上記車体速補正値Cvrより小さいと判定
したときには、ステップ#26を実行して疑似車体速V
rの前回値から上記車体速補正値Cvrを減算した値を今
回値に置き換える。したがって、疑似車体速Vrが上記
車体速補正値Cvrに応じた所定の勾配で減少することに
なる。
【0043】一方、コントロールユニット24は、上記
ステップ#25において車輪速変化量ΔWmxが車体速補
正値Cvrより大きいと判定したとき、すなわち、上記最
高車輪速Wmxが過大な変化を示したときには、ステップ
#27に移って疑似車体速Vrから最高車輪速Wmxを減
算した値が所定値V0より大きいか否かを判定する。つ
まり、最高車輪速Wmxと疑似車体速Vrとの間に大きな
開きがないかどうかを判定するのである。そして、大き
な開きがないときには、上記ステップ#26を実行して
疑似車体速Vrの前回値から上記車体速補正値Cvrを減
算した値を今回値に置き換える。また、コントロールユ
ニット24は、最高車輪速Wmxと疑似車体速Vrとの間
に大きな開きが生じたときには、ステップ#28を実行
して最高車輪速Wmxを疑似車体速Vrに置き換える。こ
のようにして、当該車両の疑似車体速Vrが各車輪速W1
〜W4に応じてサンプリング周期Δtごとに更新されてい
く。
【0044】次に、上記制御閾値の設定処理について、
図5のフローチャートを参照しながら説明する。なお、
この制御閾値の設定処理は、各チャンネルごとに独立し
て行われることになるが、ここでは左前輪用の第1チャ
ンネルに対する設定処理について説明する。すなわち、
コントロールユニット24は、まずステップ#41で各
種データを読み込んだ上で、ステップ#42を実行し
て、表1に示すように車速域と路面摩擦係数とをパラメ
ータとして予め設定したパラメータ選択テーブルより、
車輪速W1〜W4から求めた代表摩擦係数値MUと疑似車
体速Vrとに応じたパラメータを選択する。
【0045】
【表1】
【0046】ここで、代表摩擦係数値MUとしては、上
記したように第1〜第3チャンネルの各摩擦係数値MU
1〜MU3の最小値が使用されるようになっている。した
がって、例えば、代表摩擦係数値MUが低摩擦路面を示
す1で、疑似車体速Vrが中速域に属するときには、上
記パラメータとして中速低摩擦路面用のLM2が選択さ
れることになる。
【0047】また、コントロールユニット24は、上記
悪路フラグFakroが悪路状態を示す1にセットされてい
るときには、表1に示すように、疑似車体速Vrに応じ
たパラメータを選択する。この場合、例えば、疑似車体
速Vrが中速域に属するときには、上記パラメータとし
て中速摩擦路面用のHM2が強制的に選択されることに
なる。これは、悪路走行時においては車輪速の変動が大
きいために、路面摩擦係数が小さく推定される傾向があ
るからである。更に、本実施例では、低速域から中速域
に至る閾値を例えば7km/hに、また、中速域から高速
域に至る閾値を例えば40km/hに、それぞれ設定し
た。
【0048】パラメータの選択が終了すると、コントロ
ールユニット24はステップ#43に進んで表2に示す
制御閾値テーブルをルックアップすることにより、疑似
車体速Vrおよび代表摩擦係数値MUに対応する制御閾
値をそれぞれ読み出す。
【0049】
【表2】
【0050】ここで、制御閾値としては、表2に示すよ
うに、フェーズ1とフェーズ2との切替判定用の1−2
中間減速度閾値B'12、フェーズ2とフェーズ3との切
替判定用の2−3中間減速度閾値B'23、フェーズ3と
フェーズ5との切替判定用の3−5中間減速度閾値B'
35、フェーズ5とフェーズ1との切替判定用の5−1非
スリップ率閾値B'szなどが、上記パラメータ選択テー
ブルにおけるラベルごとにそれぞれ設定されている。
【0051】そして、コントロールユニット24は、例
えば、上記パラメータとして中速低摩擦路面用のLM2
を選択しているときには、表2の制御閾値テーブルにお
けるLM2の欄に示すように、1−2中間減速度閾値
B'12、2−3中間減速度閾値B'23、3−5中間減速度
閾値B'35、5−1非スリップ率閾値B'szとして、−
0.3G、−0.4G、−0.3G、90%の各値をそれ
ぞれ読み出すことになる。
【0052】本実施例では、路面が中摩擦(中μ)または
高摩擦(高μ)であり、かつ車速(つまり疑似車体速V
r)が低い場合における車両の制動性を向上させるため
に、減圧フェーズ(フェーズ3)に移行する際の閾値B'
23を、低速域での値が中速以上での値よりも大きく(つ
まりマイナス値が大きく)なるように設定している。こ
のように設定することにより、路面摩擦係数が中μ以上
でかつ車速が低い場合には、減圧フェーズに移行しにく
くして車輪をロック傾向にすることができる。すなわ
ち、ABS制御における減圧フェーズでブレーキ圧を減
圧させて車両を停止させる場合に比べて、より早く停止
させることができ、車両の制動性を高めることができる
のである。
【0053】一方、路面が低摩擦(低μ)の場合には、低
速では車両停止までに要する時間が長くかかる。つま
り、この場合には、車両が停止するまでの間、ハンドル
操作で車両の姿勢及び進路等を制御することができるよ
うに、車輪のロック発生を確実に防止する必要がある。
従って、この低μ路では、減圧フェーズに移行する際の
閾値B'23の値は、車速が低いほど小さく(つまり0に近
付くように)設定されている。
【0054】また、本実施例では、路面が高μの場合に
は、低速域において車輪を更にロック傾向とするため
に、減圧フェーズに移行する際の閾値B'23(−5.0G)
が、ABS制御を開始するための閾値(−3.0G)より
も大きく設定されている。このように設定することによ
り、ABS制御が開始されても上記閾値B'23を越える
までは減圧フェーズに移行することがなく、車輪は更に
ロック傾向となり、より早く停止することができるよう
になる。
【0055】更に、本実施例では、路面が中μの場合に
は、減圧フェーズ(フェーズ3)から減圧後の圧力保持フ
ェーズ(フェーズ5)に移行する際の閾値B'35が、低速
域の方が中速以上の場合よりも高く設定されており、路
面が中μかつ低速時には、減圧フェーズが早く終了し、
ブレーキ圧が減圧される時間が短くなる結果、車輪をロ
ック傾向にして、車両の制動性をより一層向上させるこ
とができるようになっている。尚、路面が高μの場合に
も、上記と同様に、減圧フェーズが早く終了するように
設定しても良い。
【0056】次に、コントロールユニット24は、ステ
ップ#44で代表摩擦係数値MUが高摩擦路面を示す3
にセットされているか否かを判定し、YESと判定した
場合には、ステップ#45で、悪路フラグFakroが1に
セットされているか否かが判定される。そして、この判
定結果がYESの場合(悪路と判定した場合)には、ステ
ップ#46で閾値の補正が行なわれる。
【0057】すなわち、表3に示すように、悪路判定時
(Fakro=1)には、各制御閾値B12,B23,B35,Bszと
して、1−2減速度閾値B12および2−3減速度閾値B
23は、各々の中間減速度閾値B'12,B'23からそれぞれ
1.0Gを減じた値が、また、3−5減速度閾値B35
その中間減速度閾値B'35そのままの値が、更に、5−
1非スリップ率閾値Bszは、その中間非スリップ率閾値
B'szから10%を減じた値が、それぞれ採用される。
【0058】
【表3】
【0059】次に、制御フェーズを決定するフェーズ決
定処理について説明する。該処理は、例えば第1チャン
ネルについては図6のフローチャートに従って次のよう
に行われる。すなわち、コントロールユニット24は、
まずステップ#61で各種データを読み込んだ上で、ス
テップ#62でABSフラグFabsがABS非制御状態
を示す0になっているか否かを判定し、YESと判定す
るとステップ#63に進んで車輪減速度DW1が−3.0
Gより小さいか否か(つまりマイナス値が大きいか否か)
を判定する。YESと判定すると、ステップ#64を実
行してフェーズ値P1の値を増圧後の保持状態(フェーズ
2)を示す2にセットする。
【0060】これにより、第1チャンネルがABS制御
に移行することになる。この制御開始直後の第1サイク
ルにおいては、コントロールユニット24は、ステップ
#65を実行して車輪減速度DW1が2−3減速度閾値
23より大きいか否か(つまりマイナス値が大きいか否
か)を判定し、YESと判定したときにステップ#66
を実行してフェーズ値P1の値を減圧状態(フェーズ3)
を示す3にセットする。次いで、コントロールユニット
24は、ステップ#67で車輪減速度DW1が3−5減
速度閾値B35より大きいか否かを判定し、YESと判定
したときにステップ#68を実行してフェーズ値P1
値を減圧後の保持状態(フェーズ5)を示す5にセットす
ると共に、ステップ#69で車輪の非スリップ率S1
90%を超えたと判定するまでフェーズ値P1を5に維
持する。そして、上記非スリップ率S1が90%を超え
た時点で、ステップ#70に進んでフェーズ値P1の値
を増圧状態(フェーズ1)を示す1にセットすると共に、
ステップ#71で継続フラグFcon1の値を1にセットす
る。これにより、制御サイクルが第2サイクルに移行す
ることになる。
【0061】一方、コントロールユニット24は、上記
ステップ#62においてABSフラグFabsの値が0で
はないと判定したとき、すなわち、ABS制御状態を示
す1であると判定したときには、ステップ#72に移っ
て車輪減速度DW1が1−2減速度閾値B12より小さい
か否かを判定し、YESと判定したときにステップ#7
3に進んでフェーズ値P1の値を2にセットする。次い
で、コントロールユニット24は、ステップ#74を実
行して車輪減速度DW1が2−3減速度閾値B23より大
きいか否かを判定し、YESと判定したときにステップ
#75を実行してフェーズ値P1の値を3にセットす
る。
【0062】そして、コントロールユニット24は、ス
テップ#76で車輪減速度DW1が3−5減速度閾値B
35より大きいか否かを判定し、YESと判定したときに
ステップ#77を実行してフェーズ値P1の値を5にセ
ットする。さらに、コントロールユニット24は、ステ
ップ#78で、上記非スリップ率S1が5−1非スリッ
プ率閾値Bszを超えたか否かを判定し、YESと判定し
た時点でステップ#79を実行してフェーズ値P1の値
を1にセットすると共に、ステップ#80で終了判定を
行ってYESと判定したときにはステップ#81を実行
してABSフラグFabsの値をクリヤする。
【0063】次に、第1チャンネルに対するABS制御
を例にとって、本実施例の作用を説明する。すなわち、
減速時のABS非制御状態において、ブレーキペダル1
6の踏込操作によってマスターシリンダ18で発生した
制動圧が徐々に増圧し、例えば図7(c)に示すように、
左前輪1の車輪速W1の変化量、すなわち車輪減速度D
1が−3Gに達したときには、同図(a)に示すように、
第1チャンネルにおけるロックフラグFlok1が1にセッ
トされ、当該時刻TaからABS制御に移行することに
なる。
【0064】この制御開始直後の第1サイクルにおいて
は、上記したように摩擦係数値MU1は高摩擦路面を示
す3にセットされていることから(図5のステップ#4
2,#43参照)、コントロールユニット24は、悪路フ
ラグFakroが1にセットされておらず、かつ上記車輪速
1から算出した疑似車体速Vrが、例えば中速域に属す
るときには、制御パラメータとして表1に示すパラメー
タ選択テーブルから中速高摩擦路面用のHM2を選択す
ると共に、このパラメータに従って表2に示した制御閾
値設定テーブルから各種の制御閾値を読み出し、必要な
補正を加えて最終的な制御閾値を設定することになる。
【0065】そして、コントロールユニット24は、上
記車輪速W1から算出した非スリップ率S1、減速度DW
1、加速度AW1と上記各種の制御閾値とを比較する。こ
の場合、減速度DW1が減速度閾値B12を越えたときに
は、コントロールユニット24は、同図(d)に示すよう
に、フェーズ値P1を0から2に変更する。その後、上
記減速度DW1が2−3減速度閾値B23を越えた場合に
は、フェーズ値P1は2から3に変更され、ブレーキ圧
の減圧が行なわれる。
【0066】このとき、本実施例においては、路面が高
μまたは中μで、かつ車速が低速域であれば、上記2−
3減速度閾値B23は、中速以上の場合よりも大きく設定
されているので、この減圧フェーズに移行しにくくなっ
ており、車輪はロック傾向に制御され、より早く停止す
ることができる。特に、高μ路で低速の場合には、上記
2−3減速度閾値B23はABS制御開始の閾値(−3.0
G)よりも大きく設定されており、ABS制御が開始さ
れ、フェーズ値P1が2に設定された後においても、車
輪減速度DW1が上記2−3減速度閾値B23を越えない
限りは、減圧フェーズに入ることはなく、車輪は更にロ
ック傾向となる。尚、路面が低μの場合には、低速域に
おける上記2−3減速度閾値B23が、中速以上の場合よ
りも小さく設定されており、車輪のロック状態の発生が
確実に防止される。
【0067】その後、減速度DW1が3−5減速度閾値
35を下回ると、フェーズ値P1が3から5に変更さ
れ、減圧後の圧力保持フェーズに移行する。本実施例で
は、路面が中μの場合には、低速域における3−5減速
度閾値B35の値が、中速以上の場合よりも大きく設定さ
れており、この保持フェーズに移行し易くなっている。
すなわち、減圧フェーズの時間が短くなり、やはり車輪
がロック傾向に維持される。
【0068】そして、このフェーズ5の状態において、
非スリップ率S1が5−1非スリップ率閾値Bszより大
きいと判定したときには、図7(b)に示すように、継続
フラグFcon1を1にセットする。これにより、第1チャ
ンネルにおけるABS制御は、当該時刻Tbから第2サ
イクルに移行することになる。その場合に、コントロー
ルユニット24は、フェーズ値P1を強制的に1にする
ようになっている。
【0069】そして、このフェーズ1への移行直後に
は、より好ましくは、第1バルブユニット20の開閉弁
20bが、第1サイクルにおけるフェーズ5の持続時間
に基づいて設定された初期急増圧時間Tpzに応じて10
0%のデューティ率で開閉されることになって、同図
(e)に示すように、制動圧が急勾配で増圧されることに
なる。また、初期急増圧時間Tpzが終了してからは、上
記開閉弁20aが所定のデューティ率に従ってON/O
FFされることになって、制動圧が上記勾配よりも緩や
かな勾配に従って徐々に上昇することになる。このよう
に、第2サイクルへの移行直後においては、制動圧が確
実に増圧されることになるので、良好な制動力が確保さ
れることになる。
【0070】一方、第2サイクル以降においては、図2
のフローチャートに示すように、前サイクルにおける車
輪減速度DW1や車輪加速度AW1などに応じて適切な摩
擦係数値MU1が決定されると共に、これらの摩擦係数
値MU1に応じた制御閾値が上記表2に示した制御閾値
設定テーブルから選択されることになるので、走行状態
に応じた緻密な制動圧の制御が行われることになる。そ
して、コントロールユニット24は、第2サイクルにお
けるフェーズ5の状態において、例えば、非スリップ率
1が5−1非スリップ率閾値Bszより大きいと判定し
たときには、フェーズ値P1を1にセットして第3サイ
クルに移行する。尚、この実施例においては、図5のフ
ローチャートに示すように、摩擦係数値MU1が高摩擦
路面を示す3のときには、悪路判定時に制御閾値が補正
されることになるので、制動圧が走行状態に応じてより
緻密に制御されることになる。
【0071】以上、説明したように、本実施例によれ
ば、路面摩擦係数が中μ以上の場合には、低速時におけ
る車輪のブレーキ圧に対する制御特性を、中速以上のと
きに比べて、車輪がロック傾向となるようにしたので、
路面摩擦係数が中μ以上でかつ車速が低い場合には、A
BS制御でブレーキ圧を減圧させて停止する場合に比べ
て早く停車することができ、車両の制動性を向上させる
ことができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例に係るスリップ制御装置が装
備された車両の全体概略構成図である。
【図2】 路面摩擦係数の推定処理を示すフローチャー
トである。
【図3】 疑似車体速の算出処理を示すフローチャート
である。
【図4】 該算出処理で用いるマップの説明図である。
【図5】 制御閾値設定処理を示すフローチャートであ
る。
【図6】 フェーズ決定処理を示すフローチャートであ
る。
【図7】 上記実施例の作用を示すタイムチャート図で
ある。
【符号の説明】
1,2…前輪 3,4…後輪 20,21,23…バルブユニット(油圧調整手段) 24… コントロールユニット B23…2−3減速度閾値 B35…3−5減速度閾値
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 栗原 洋治 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツ ダ株式会社内 (56)参考文献 特開 昭50−144892(JP,A) 特開 昭60−191861(JP,A) 特開 昭48−41173(JP,A) 特開 昭60−209355(JP,A) 特開 昭57−932(JP,A) 特開 昭62−299465(JP,A) 特開 昭63−287655(JP,A) 特開 昭47−31067(JP,A) 特公 昭60−42056(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60T 8/58

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車輪の回転速度を検出する車輪速検出手
    段と、該車輪速検出手段によって検出された車輪速に基
    づいて上記車輪の減速度を算出する減速度算出手段と、
    車輪のブレーキ圧を調整する油圧調整手段と、上記車輪
    速検出手段によって検出された車輪速に基づいて当該車
    両の疑似車体速を算出する疑似車体速算出手段と、同じ
    く車輪速に基づいて路面摩擦係数を推定する路面摩擦係
    数推定手段とを備えるとともに、少なくとも上記疑似車
    体速と路面摩擦係数とに基づいて、上記ブレーキ圧が、
    少なくとも増圧フェーズと減圧フェーズとを含むサイク
    ルに従って周期的に増減するように上記油圧調整手段を
    作動させる制御手段を備えてなる車両のスリップ制御装
    置において、 上記減圧フェーズに移行する際の閾値を、上記疑似車体
    速と路面摩擦係数とに基づいて車輪の減速度で設定する
    とともに、上記路面摩擦係数が所定値以上の場合には、
    疑似車体速が所定疑似車体速よりも低いときの上記閾値
    を、疑似車体速が上記所定疑似車体速以上のときに比べ
    て大きく設定したことを特徴とする車両のスリップ制御
    装置。
  2. 【請求項2】 上記路面摩擦係数が上記所定値未満の場
    合には、疑似車体速が上記所定疑似車体速よりも低いと
    きの上記閾値を、疑似車体速が上記所定疑似車体速以上
    のときに比べて小さく設定したことを特徴とする請求項
    1記載の車両のスリップ制御装置。
  3. 【請求項3】 上記路面摩擦係数が上記所定値よりも大
    きい第2の所定値以上の場合には、疑似車体速が上記所
    定疑似車体速よりも低いときの上記閾値を、上記制御手
    段による油圧調整手段の作動制御を開始する際の閾値よ
    りも大きく設定したことを特徴とする請求項1記載の車
    両のスリップ制御装置。
  4. 【請求項4】 車輪の回転速度を検出する車輪速検出手
    段と、該車輪速検出手段によって検出された車輪速に基
    づいて上記車輪の減速度を算出する減速度算出手段と、
    車輪のブレーキ圧を調整する油圧調整手段と、上記車輪
    速検出手段によって検出された車輪速に基づいて当該車
    両の疑似車体速を算出する疑似車体速算出手段と、同じ
    く車輪速に基づいて路面摩擦係数を推定する路面摩擦係
    数推定手段とを備えるとともに、少なくとも上記疑似車
    体速と路面摩擦係数とに基づいて、上記ブレーキ圧が、
    少なくとも増圧フェーズと減圧フェーズとを含むサイク
    ルに従って周期的に増減するように上記油圧調整手段を
    作動させる制御手段を備えてなる車両のスリップ制御装
    置において、 減圧フェーズを終了する際の閾値を、上記疑似車体速と
    路面摩擦係数とに基づいて車輪の減速度で設定するとと
    もに、上記路面摩擦係数が所定値以上の場合には、疑似
    車体速が所定疑似車体速よりも低いときの上記閾値を、
    疑似車体速が上記所定疑似車体速以上のときに比べて大
    きく設定したことを特徴とする車両のスリップ制御装
    置。
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