JP3312566B2 - アクリル酸からの酢酸の分離方法 - Google Patents

アクリル酸からの酢酸の分離方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アクリル酸からの
酢酸の分離方法に係わり、更に詳細には、プロピレン及
び/またはアクロレインを分子状酸素で接触酸化して粗
アクリル酸水溶液を得、これを蒸留して精製アクリル酸
を製造するに於いて、該粗アクリル酸水溶液より、副生
した酢酸を効率よく分離する、アクリル酸からの酢酸の
分離方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】プロピレン及び/またはアクロレインを
水蒸気の存在下に固体触媒を用いて分子状酸素にて気相
接触酸化することによって得られる反応生成ガスは、通
常、冷却、洗浄されて粗アクリル酸水溶液として回収さ
れる。この水溶液には、主成分としてのアクリル酸のほ
かに、アクロレイン、酢酸、その他のアルデヒド類等が
含まれている。このうち、アクロレインはアクリル酸と
の沸点差が大きいために簡単に分離できる。また、その
他のアルデヒド類は生成量が極めて少なく、実用上の問
題となることは殆どない。しかし、酢酸はアクリル酸と
の沸点差が小さいため、これをアクリル酸溶液中より直
接蒸留により分離するには、蒸留塔の還流比や段数を大
幅に増加させねばならない。
【0003】それゆえ、粗アクリル酸水溶液から精製ア
クリル酸を得る方法として、第1蒸留塔に該水溶液と、
水および酢酸と共沸する溶媒(以下、共沸剤と称する場
合がある)を供給し、これを蒸留して、第1蒸留塔の塔
頂より第1蒸留塔に供給された粗アクリル酸水溶液と共
沸剤中に含まれる実質的に全ての水、およびこの水に同
伴する一部あるいは大半の酢酸を留去し、他方、塔底よ
り酢酸、アクリル酸および共沸剤を塔底液として抜き出
し、次いでこの塔底液を第2蒸留塔に供給して第2蒸留
塔にて蒸留し、塔頂より酢酸と共沸剤を留去し、塔底よ
り精製アクリル酸を回収する、所謂二塔蒸留法が最近で
は一般的に実施されている(特開昭56−90034号
公報、特開平3−181440号公報、特開平6−72
944号公報、特開平8−40974号公報等)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
た従来公知の二塔蒸留法に於いてもなおアクリル酸から
の酢酸の分離は不十分であり、製品としての第2蒸留塔
塔底から得られる精製アクリル酸中にも数百PPMの酢
酸が残存している。このため第1蒸留塔の塔底液におけ
る共沸剤の濃度を増加させたり、第2蒸留塔の供給段に
共沸剤を追加供給し、酢酸の除去効果を上げることが考
えられるが、かかる共沸剤の追加使用法は第2蒸留塔に
おいて共沸剤を分離するためのエネルギーコストが増大
するのみならず、塔底の精製アクリル酸中に共沸剤が混
入するとの不都合が生じる場合もある。
【0005】本発明者はかかる事情下に鑑み、共沸溶媒
を追加使用することなく、アクリル酸中の酢酸の分離効
率が優れたアクリル酸から酢酸の分離方法について鋭意
検討した結果、第1蒸留塔の塔底液を第2蒸留塔に供給
する際、共沸剤の沸点が酢酸の沸点(118.2℃)よ
りも低沸点であり、しかも、第1蒸留塔の塔底液の温度
が第2蒸留塔の供給部位の温度よりも高温である場合
に、第2蒸留塔における酢酸の分離効率が低下するこ
と、しかして第1蒸留塔塔底液温度を第2蒸留塔供給部
位の温度近傍、好ましくは第2蒸留塔給部位の温度以下
に冷却した後、第2蒸留塔へ供給する場合には、アクリ
ル酸から酢酸の分離効率が著しく向上するとの知見を
得、かかる知見を基礎として本発明を完成するに至っ
た。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、(1)
プロピレン及び/またはアクロレインを分子状酸素で接
触酸化して生成するガスを冷却及び/または水に吸収し
て得られる粗アクリル酸水溶液又は該水溶液中のアルデ
ヒド類を予めストリッピングにより除去した水溶液、お
よび酢酸と水のそれぞれと共沸し得る溶媒(以下、共沸
剤と称する)を第1蒸留塔に供給し、(2)第1蒸留塔
の塔頂より供給液に含まれる実質的に全ての水とこれに
同伴する一部あるいは大半の酢酸とともに留去し、酢
酸、アクリル酸および共沸剤を塔底液として抜き出して
第2蒸留塔に供給し、(3)第2蒸留塔にて残り全ての
共沸剤を塔頂より留去し、塔底より、精製アクリル酸を
回収するアクリル酸からの酢酸の分離方法に於いて、第
2蒸留塔に供給する第1蒸留塔からの塔底液を冷却した
後、該第2蒸留塔の供給部位に供給することを特徴とす
るアクリル酸からの酢酸の分離方法を提供するにある。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明は、プロピレン及び/また
はアクロレインを水蒸気の存在下に固体触媒を用いて分
子状酸素にて気相接触酸化し、反応生成ガスを冷却及び
/または水に吸収して得られる粗アクリル酸水溶液の処
理に適用される。該粗アクリル酸水溶液にはアクリル酸
の他、酢酸、(ギ酸、ホルマリン、)アルデヒド等の副
生物を含有する。酸化反応の転化率が低い場合には、上
記副生物の他に未反応物であるアクロレインが少量含ま
れているので、ストリッピング等によりアルデヒド類や
アクロレインを除去した後、アクリル酸の精製に供す
る。
【0008】本発明のアクリル酸より効率よく酢酸を分
離する方法の実施に際しては、共沸脱水蒸留塔および酢
酸分離蒸留塔よりなる、通常公知の二塔蒸留法を適用す
る。先ず共沸脱水蒸留塔に於いては粗アクリル酸水溶液
に共沸剤を加え蒸留処理することにより、塔頂より水、
ホルマリンの実質的全量とこれに同伴する一部あるいは
大半のギ酸及び酢酸を留出除去せしめると共に、塔底よ
り微量の酢酸を含むアクリル酸が得られる。該塔底液は
次いで酢酸分離蒸留塔に供給され、蒸留処理されること
により、塔頂より酢酸および共沸剤が、塔底より精製さ
れたアクリル酸が得られる。通常公知の該方法に於いて
は、粗アクリル酸水溶液中にアクリル酸40〜80重量
%、水20〜60重量%、酢酸1〜5重量%を含有して
おり、処理後の精製アクリル酸中に含有される酢酸は5
00ppm以下、通常100ppm〜250ppmであ
る。
【0009】本発明に於いて共沸剤としては、酢酸およ
び水のそれぞれと共沸する溶媒が適用される。このよう
な溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチ
ルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、
ヘプタン、オクタンおよびこれらの混合物が用いられ
る。共沸剤の使用量は酢酸および水等の共沸せしめるも
のよりも若干多くもちいればよい。
【0010】本発明に適用する蒸留塔は通常公知のもの
であればよく棚段塔、或いは充填塔等の蒸留塔が挙げら
れる。棚段塔に於けるトレー数も特に制限されるもので
はなく10〜50段、普通には30〜40段のものが使
用される。また、操業条件も共沸脱水蒸留塔および酢酸
分離蒸留塔により若干の相違はあるが、通常、塔底温度
約80℃〜約100℃、塔頂圧力約50〜約300mm
Hgの減圧下で実施される。
【0011】本発明は、通常公知の二塔蒸留法を適用す
ることによりアクリル酸水溶液中より酢酸を効率良く分
離除去するものであるが、従来の二塔蒸留法に於いて第
2蒸留塔に供給する第1蒸留塔からの塔底液を冷却した
後、該第2蒸留塔の供給部位に供給することを必須とす
るものである。通常、工業的アクリル酸の製造プロセス
においては第1蒸留塔、第2蒸留塔の蒸留処理温度は約
100℃以下で実施されており、第1蒸留塔と第2蒸留
塔の塔底での液温は略同一であり、第1蒸留塔からの酢
酸を含有するアクリル酸溶液は通常、該溶液よりも塔内
温度の低い第2蒸留塔の供給部位に供給されている。本
発明に於いては、先ず第2蒸留塔に供給する前処理とし
て第1蒸留塔塔底液を第2蒸留塔の供給部位の温度近
傍、通常第2蒸留塔の供給部位の温度+5℃以下、好ま
しくは第2蒸留塔の供給部位の温度+3℃以下、より好
ましくは第2蒸留塔の供給部位温度〜該供給部温度より
も−5℃以内の温度、例えば第2蒸留塔の供給部位の温
度が75℃の場合には約70℃〜75℃の温度に冷却し
た後、供給すればよい。冷却方法としては特に制限され
ないが、第1蒸留塔の底部にシェル&チューブ式、プレ
ート式、スパイラル式等、公知の熱交換器を設置し冷却
すればよい。冷却下限は特に制限されないが、投入した
溶液を蒸留するための加熱エネルギーの点から、第2蒸
留塔供給部位温度−10℃以内、好ましくは第2蒸留塔
供給部位温度−5℃以内である。
【0012】本発明に於いては他の公知の二塔蒸留法と
同様に、第1蒸留塔である共沸脱水蒸留塔塔頂よりの酢
酸を含む留出液は前記反応生成ガスを水に吸収して粗ア
クリル酸水溶液とするための吸収水として循環使用する
ことができる。
【0013】以下本発明を図面を用いて更に詳細に説明
するが、図面は本発明方法の一実施態様を示すものであ
り、何ら本発明方法を制限するものではない。図1は本
発明方法を適用した粗アクリル酸水溶液から高度に酢酸
を分離除去する二塔蒸留法の概略図を示すものであり、
図に於いて1は第1蒸留塔、2は第2蒸留塔、3は第1
蒸留塔塔底液冷却用クーラー、4は第1蒸留塔への供給
ライン、5は共沸剤供給ライン、6は第1蒸留塔塔底
液、7は第2蒸留塔への供給ライン、および8は精製ア
クリル酸、9は水の排出ライン、10は酢酸と共沸剤の
排出ラインである。
【0014】プロピレン及び/またはアクロレインを水
蒸気の存在下に固体触媒を用いて分子状酸素にて気相接
触酸化し、得られた反応生成ガスを冷却及び/または水
に吸収して得られた粗アクリル酸水溶液をライン4か
ら、水と酢酸のそれぞれと共沸する溶媒をライン5から
第1蒸留塔1に供給し、真空下で共沸脱水蒸留を行う。
塔頂より供給液に含まれる実質的にすべての水、一部の
酢酸及び溶媒、さらには少量のアクリル酸が同伴して留
出する。留出液の溶媒層は蒸留塔に還流し、水層はライ
ン9から廃棄する。留出した酢酸は水層に入り廃棄され
る。
【0015】他方、塔底にはアクリル酸、酢酸および共
沸剤を含む液が得られる。この塔底液をライン6より導
出し、熱交換器3に供給し、冷却後、第2蒸留塔2にラ
イン7より供給する。塔底液の熱交換器3での冷却温度
は第2蒸留塔への第1蒸留塔塔底液の供給部位の温度以
下、好ましくは第2蒸留塔の供給部位温度〜該供給部温
度よりも−5℃以内の温度とするのがよく、冷却しすぎ
ると第2蒸留塔でのリボイラースチーム量を増加する必
要が生ずる。ライン7より供給された第1蒸留塔塔底液
は減圧下、留出液を一部還流しながら蒸留し、塔頂から
第2蒸留塔に供給した酢酸および溶媒の実質的全量をア
クリル酸の一部とともに留出させる。他方、第2蒸留塔
の塔底ラインからは酢酸および溶媒を殆ど含まない精製
アクリル酸8が得られる。本方法により得られた精製ア
クリル酸中の酢酸濃度は通常200ppm以下である。
【0016】
【発明の効果】本発明の方法により、廉価かつ簡便に、
アクリル酸溶液中より高次に酢酸を分離除去することが
できる。
【0017】
【実施例】以下、本発明を実施例で詳細に説明するが、
本発明はこの実施例に限定されない。
【0018】実施例1 図1に示すフローで粗アクリル酸水溶液より酢酸の分離
除去を行う。粗アクリル酸水溶液を共沸剤としてトルエ
ンを用い、第1蒸留塔で共沸脱水蒸留し、第1蒸留塔の
塔底液としてトルエン17重量%、酢酸2重量%を含む
アクリル酸溶液( 温度82℃) を得た。このアクリル酸
溶液を75℃に冷却後、理論段22段の第2蒸留塔の3
段目(当該段付近の塔内温度74℃)に供給し、塔頂圧
50torr、還流比3.7で真空蒸留を行った。得ら
れた塔底液(精製アクリル酸)中の酢酸の濃度を測定し
たところ113ppmであった。
【0019】実施例2 第1蒸留塔の塔底液の冷却温度を71℃にした以外は実
施例1と同条件で実験を行った。得られた塔底液中の酢
酸の濃度を測定したところ110ppmであった。
【0020】比較例1 実施例1において、第1蒸留塔の塔底液を冷却すること
なく、実施例1と同条件で酢酸分離蒸留を行った。得ら
れた塔底液中の酢酸の濃度を測定したところ318pp
mであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法のアクリル酸より酢酸を分離除去す
る二塔蒸留法を用いた概略工程図である。
【符号の説明】
1:第1蒸留塔 2:第2蒸留塔 3:第1蒸留塔塔底液冷却用クーラー 4:第1蒸留塔への供給ライン 5:共沸剤供給ライン 6:第1蒸留塔塔底液 7:第2蒸留塔への供給ライン 8:精製アクリル酸 9:水の排出ライン 10:酢酸と共沸剤の排出ライン
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−72944(JP,A) 特開 昭56−90034(JP,A) 特開 平8−40974(JP,A) 特開 平3−181440(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 51/46 C07C 57/07

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (1) プロピレン及び/またはアクロレイ
    ンを分子状酸素で接触酸化して生成するガスを冷却及び
    /または水に吸収して得られる粗アクリル酸水溶液又は
    該水溶液中のアルデヒド類を予めストリッピングにより
    除去した水溶液、および酢酸と水のそれぞれと共沸し得
    る溶媒(以下、共沸剤と称する)を第1蒸留塔に供給
    し、(2)第1蒸留塔の塔頂より供給液に含まれる実質
    的に全ての水を同伴する一部あるいは大半の酢酸ととも
    に留去し、酢酸、アクリル酸および共沸剤を塔底液とし
    て抜き出して第2蒸留塔に供給し、(3)第2蒸留塔に
    て残り全ての共沸剤を塔頂より留去し、塔底より、精製
    アクリル酸を回収するアクリル酸からの酢酸の分離方法
    に於いて、第2蒸留塔に供給する第1蒸留塔からの塔底
    液を冷却した後、該第2蒸留塔の供給部位に供給するこ
    とを特徴とするアクリル酸からの酢酸の分離方法。
  2. 【請求項2】 第1蒸留塔からの塔底液を冷却し、該第
    2蒸留塔に供給する温度が、第2蒸留塔の供給部位温度
    ±5℃であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 該第2蒸留塔の供給部位に供給する第1
    蒸留塔からの塔底液の温度が、第2蒸留塔の供給部位温
    度±5℃であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】 該第2蒸留塔の供給部位に供給する第1
    蒸留塔からの塔底液の温度が、第2蒸留塔の供給部位温
    度〜該温度より−5℃以内であることを特徴とする請求
    項1記載の方法。
  5. 【請求項5】 第1蒸留塔に供給する共沸剤の沸点が酢
    酸の沸点よりも低沸点の溶媒であることを特徴とする請
    求項1記載の方法。
  6. 【請求項6】 第1蒸留塔に供給する共沸剤がベンゼ
    ン、トルエン、ヘプタンであることを特徴とする請求項
    1記載の方法。
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