JP3306432B2 - スポンジシート - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、水分の拭き取り性
能を改善したポリビニルアセタール系スポンジシートに
関し、更に詳しくは、車体表面の水滴除去用、精密機械
や部品あるいは機器等の表面拭浄用のウェス、及び身体
拭浄用等に好適なポリビニルアセタール系スポンジシー
トに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、ポリビニルアセタール系多孔質弾
性体スポンジは、水分の拭き取り材として用いられてい
る。特に、ポリビニルアセタール系多孔質弾性体スポン
ジのシート状のもの、あるいはポリビニルアセタール系
多孔質体の間に補強用の布帛類を間挿し、複合一体化し
シート状となしたものは、水分の吸収力が良く、比較的
平滑度の高い物品の表面の水滴、塵埃等を拭き取り除去
する拭浄材として利用されている。即ち、洗車後の車体
の表面の水滴の除去用、精密機械や部品あるいは機器等
の表面拭浄用のウェス等として商品化されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが、近年、車体
の塗膜は美しいボディカラーを得るため、防錆塗装の上
に何層も重ねて塗装されている。特にメタリック塗装に
於いては上塗り層として、メタリック層の上にクリア塗
装がなされており、下塗りを含めると５層以上の塗膜構
成になっている。

【０００４】このクリア塗装は比較的軟質で傷つきやす
く、洗車後の水分の拭き取り作業の仕方によっては細か
い傷がつき、ひどい場合は塗膜の光沢を失うこともあ
る。たとえば、拭き取り布の吸水力が弱いと、一度では
完全に拭き取れず、何回も車体の表面を擦ることになり
傷をつけてしまうのである。又、塗装面に拭き残しの水
滴が残ると、夏場に太陽光線が当たった時、凸レンズと
同じ作用を引き起こし、その塗膜を焼いてしまい、シミ
をつくることもある。

【０００５】したがって、洗車後のボディの拭き取りに
は、傷を付けないために、表面がソフトで柔軟性に富ん
だものが好ましく、さらに、吸水性が良く一回の拭き取
りで拭き残しがないものが好ましい。更に一度吸い込ん
だ水を素材の中に保って再びボディを濡らさないこと即
ち保水性を高めることも大事である。

【０００６】ここで、前述のようにポリビニルアセター
ル系スポンジシートが水分の拭き取り用として用いられ
るのは、普通のタオルと比較して吸水力が強いだけでな
く、積極的に水分を吸い上げる能力があるため水滴の部
分に接触するだけで除去することが出来、タオルのよう
に強く擦る必要がない為である。

【０００７】そこで、吸水性および保水性を高めるため
に、スポンジ層を緻密にすることを考えた。ところが、
上述のポリビニルアセタール系スポンジシートは、予め
水に浸漬し、適度に絞ってから使用するのが一般的であ
るが、スポンジ層を緻密にすると、使用時における摩擦
抵抗や軋みが増し、作業性が悪いという問題が生じるこ
とがわかった。

【０００８】本発明者等は上述の問題点に鑑みて鋭意研
究を行った結果、特定の構造を備えたポリビニルアセタ
ール系スポンジシートが洗車の際の拭き取りの吸水性と
作業性を両立できることを見出し本発明を完成したもの
である。本発明の目的は洗車後の拭き取りの際に拭き残
しがなく且つ摩擦抵抗が少なくて作業性の良い、洗車用
拭き取り材等に適したスポンジシートを提供することに
ある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上述の目的は、ポリビニ
ルアセタール系スポンジの層でなる多孔質体の表面に、
ポリビニルアセタール系スポンジの層でなる皮膜を有す
るポリビニルアセタール系スポンジシートにおいて、前
記皮膜が、１０〜６０％の開口率を有することを特徴と
するポリビニルアセタール系スポンジシートによって達
成される。さらには、前記ポリビニルアセタール系スポ
ンジの層が、アセタール化度が５０〜８０％のポリビニ
ルアセタール系樹脂よりなり、平均気孔径が１０〜１６
０μｍで気孔率が８０〜９５％の微細連続気孔を有する
多孔質構造体からなるものであれば、なお好ましい。

【００１０】本発明におけるポリビニルアセタール系ス
ポンジとは、ポリビニルアルコールを気孔形成材と共に
触媒の存在下でアルデヒド類と架橋反応させたのち、気
孔生成材を除去して連続気孔を有する多孔質体としたも
のである。

【００１１】本発明の請求項１に係る発明によれば、ス
ポンジの表面に皮膜を形成することにより、スポンジの
保水力を増すことができる。

【００１２】また、皮膜の開口率が１０％〜６０％で軋
み感がなく、且つ保水力の高いスポンジシートが得られ
る。即ち、開口率が１０％未満の場合は、作業の場合の
軋み感が強くなり、６０％を超える場合は保水力が低下
し、一端保水した水を塗膜面にこぼしやすくなり、拭き
残しが生じる。

【００１３】本発明における皮膜の開口率とは、スポン
ジの層の表面皮膜層に、下層の多孔質体の構造である気
孔が露出している割合を面積比で表したものである。開
口率（％）＝気孔が露出している面積÷多孔質体の全表
面積×１００開口率１００％とは多孔質体の表面に皮膜
が無い状態であり、０％とは全表面積が皮膜で覆われて
いることを示す。

【００１４】また、請求項２に係る発明によれば、より
柔軟性に富み、且つ吸水性の高いスポンジシートが得ら
れる。即ち、本発明におけるポリビニルアセタール系ス
ポンジは、アセタール化度が５０〜８０％である。８０
％を超えると水に湿潤した時も硬く使用に適さない。

【００１５】また、本発明のスポンジシートの平均気孔
径は１０〜１６０μｍで、１０μｍ未満の場合は、作業
の場合の軋み感が強くなり、１６０μｍを超える場合は
吸水性が悪くなり、かつ保水力が低下し、一端保水した
水を塗膜面にこぼしやすくなり、結果として作業性が低
下する。

【００１６】また、本発明のスポンジシートの気孔率
は、８０〜９５％である。気孔率が８０％未満の場合
は、上述の保水力が低下し、９５％を超えるとシートし
ての強度が低下し好ましくない。

【００１７】ここで、本発明のスポンジシートは、次の
ような方法で製造することができる。

【００１８】ポリビニルアルコール、アルデヒド類、酸
類、及び澱粉類微粉末を混合した原液を、紙で層状に仕
切った状態で反応させ、反応完了後、水洗にて未反応の
アルデヒド類、酸類、及び澱粉類微粉末を除去するとと
もに、前記セパレータとしての紙の部分で剥離すること
によって得ることが出来る。

【００１９】本発明に用いられるポリビニルアルコール
とは、重合度３００ないし２０００の完全または部分鹸
化のもので、水酸基の一部が他の官能基で置換されてい
るものであってもよく、これらを単独又は混合して用い
ることができる。

【００２０】本発明に用いられるアルデヒド類とは、ポ
リビニルアルコールをポリビニルアセタールにする架橋
剤であって、脂肪族系あるいは芳香族系のものであり、
一価のものでも多価のものでもよい。特にホルムアルデ
ヒド、アセトアルデヒドがポリビニルアセタール系多孔
質体としての物性を発現するのに好適である。

【００２１】本発明に用いられる塩類とは、触媒として
働くものであり、例えば塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸類、
シュウ酸、クエン酸、マイレン酸等の有機酸類、あるい
は強酸と弱塩基よりなり水溶液中で酸性を呈する塩類も
用いることが出来る。

【００２２】本発明に用いられる澱粉類微粉末とは、植
物より分離抽出される粒状物( 澱粉粒) のことであり、
由来となる植物としては、たとえば米、麦、トウモロコ
シ等の穀類、馬鈴薯、甘薯、タロイモ等の芋類等が挙げ
られる。また、これら澱粉粒の持つ水酸基に疎水性の官
能基を導入して変性した、いわゆる変性澱粉を用いても
良い。この澱粉類微粉末は、ポリビニルアセタール系多
孔質体を製造する際に、気孔形成材としての役割を果た
すものであり、澱粉の種類や添加量を変えることによっ
て、気孔径、気孔率を調整することができる。

【００２３】本発明に用いられる紙は、セパレータとし
て用いられるもので、反応後は完全にほぐれて分散する
ものが好ましく、バインダー、添加物等を含まないもの
が好適であるが、所定の開口率のスポンジシートを得る
ためには、通水性が一定の範囲のものを用いる。即ち、
一定面積の紙を５００ｍｌの水が通過する通水時間が適
切な範囲のものを用いる。通水時間が長いとスポンジシ
ートの開口率は小さくなり、短いと開口率は大きくな
る。

【００２４】

【発明の実施の形態】本発明の実施の一形態としてのス
ポンジシートについて、以下に説明する。

【００２５】本発明のスポンジシートの具体的な製造方
法を以下に示す。

【００２６】まずポリビニルアルコールを温水に溶解
し、５〜１５重量％程度のポリビニルアルコール水溶液
を調整する。そこへ気孔生成材たる澱粉を水に分散した
液を投入する。この液を澱粉のα（アルファ）化温度周
辺まで昇温した後、更に硫酸とホルムアルデヒドの水溶
液を加えた後、十分に攪拌混合し均一スラリー状原液と
なす。

【００２７】この原液を、所定の型枠中に一定量注型す
る。その上に紙を載置し、次にまた一定量の原液を注ぎ
込む。更に同様にして紙・原液を交互に注型するという
作業を繰り返し行うと、セパレータ用の紙に隔離された
層が幾重にも重ねられることとなる。

【００２８】そのまま約６０°Ｃで１０時間以上反応さ
せ、反応完結後、圧搾、水洗すると、未反応のアルデヒ
ド類、酸類、及び澱粉類微粉末が除去されるとともに、
紙の部分で剥離して、本発明のポリビニルアセタール系
多孔質体からなるスポンジシートが得られる。

【００２９】また、原液を注型後、布帛類を載置し、再
び原液を注ぎ込むようにして製造すると、布帛類を補強
材として挟持したスポンジシートを得ることができる。

【００３０】この際用いられる布帛類としては、寒冷紗
等のように、目が粗く、両側のポリビニルアセタール系
多孔質体が一体化できる様なものが好ましい。

【００３１】

【実施例】（実施例１）クラレ（株）製の完全鹸化ポリ
ビニルアルコール１１７を用い、その７５０ｇを温水に
溶解し、全量を８ｌとした。気孔生成材としてトウモロ
コシ澱粉粒子を選定し、この７００ｇを水に分散した
後、上記ポリビニルアルコール水溶液に加え攪拌混合し
全量を１０ｌとした。

【００３２】架橋剤として、ホルムアルデヒド、触媒と
して硫酸を選定。３５％ホルマリン１ｌと５０％硫酸１
ｌの混合溶液を上記のポリビニルアルコールと澱粉の混
合液に加えて均質混合液を調製し、これを反応原液とし
た。

【００３３】縦７８０ｍｍ×横４９０ｍｍ×深さ１００
ｍｍの樹脂製の容器を準備し、この中に反応原液とセパ
レータ用の紙を交互に入れ層を形成せしめた。この時に
一層に注加する反応原液量を６００ｍｌとし、セパレー
タ用の紙としては通水時間が１７０秒のものを用いた。
即ち、紙のサイズを前述の容器とほぼ同じか若干小さめ
とし、反応原液の層を完全に隔離せしめ、複数層を形成
するように積層していった。

【００３４】積層が完了した後、容器を、６０°Ｃに調
節した熱処理機中に入れ、約一昼夜反応を行った。

【００３５】反応終了後、内容物を容器より取り出し、
十分なる水洗を行い、未反応のホルムアルデヒド及び硫
酸、澱粉を除去し、更に前記紙の部分で反応生成物を分
割したところ、厚み約１．５ｍｍのスポンジシートを得
た。このスポンジシートは表面に皮膜を有していた。得
られたスポンジシートの性状及び各種特性は表２に示す
通りであった。

【００３６】得られたスポンジシートで車の塗装面と同
等の平滑性を有する板の表面に水滴を散布して拭き取っ
たところ、摩擦抵抗も少なく、軋みもなくて作業性が良
く、且つ、水滴のふき残しもなかった。

【００３７】以下にスポンジシートの特性の評価法を示
す。

【００３８】（摩擦抵抗値の測定）本発明において摩擦
抵抗値とは拭き取り作業の容易さを定量化したものであ
る。具体的には次のような方法で求める。１００ｍｍ×
１００ｍｍのスポンジシートを同サイズの底面を持つプ
ラスチックケースの底面に両面テープで貼りつけ、ケー
スに１．２ｋｇの重りを均一に乗せる。平滑な板の上に
スポンジシートを下にして置き、ケースの側面をバネ秤
に固定して水平に引っ張った際に、動きだした時のバネ
秤の荷重を読む。荷重が３．０ｋｇ以下なら作業時の抵
抗が少なく、それ以上では抵抗が大きく、軋み感があ
る。

【００３９】（吸水力/ 拭き残し）ホワイトボードに青
色顔料で着色した水をスプレーし、１００ｍｍ×１００
ｍｍのスポンジシートを二つ折りにして置き、その上か
らプラスチックの定規でスポンジシートを静かに引いた
時に、ホワイトボードに残る水滴の多寡を判定する。

【００４０】（実施例２、３）実施例１において使用し
た紙の通水時間を１００秒、８０秒に変えた以外は実施
例１と同様にして厚さ１．５ｍｍのスポンジシートを得
た。

【００４１】（実施例４）実施例１において使用した澱
粉を米澱粉に代えた以外は実施例１と同様にして厚さ
１．５ｍｍのスポンジシートを得た。

【００４２】（実施例５）実施例１において使用した澱
粉を馬鈴薯澱粉に代えた以外は実施例１と同様にして厚
さ１．５ｍｍのスポンジシートを得た。

【００４３】（比較例１）実施例１において使用した紙
の通水時間を５００秒に変えた以外は実施例１と同様に
して厚さ１．５ｍｍのスポンジシートを得た。

【００４４】（比較例２、３）比較例１において使用し
た澱粉を米澱粉、馬鈴薯澱粉に代えた以外は比較例１と
同様にして厚さ１．５ｍｍのスポンジシートを得た。

【００４５】（比較例４）比較例１において使用した紙
の通水時間を５０秒に変えた以外は比較例１と同様にし
て厚さ１．５ｍｍのスポンジシートを得た。

【００４６】実施例１〜５及び比較例１〜４について、
上記評価法の結果を表２に示す。なお、表１に製造条件
をまとめた。

【００４７】また、得られたスポンジシートの一例につ
いて、表面形状を示す電子顕微鏡写真を図１に示し、内
部の三次元網目構造の電子顕微鏡写真を図２に示した。

【００４８】

【表１】

【００４９】

【表２】

【００５０】表２から、スポンジシート表面の皮膜の開
口率が６０％を超えると拭き残しが生じ、開口率が１０
％以下になると、摩擦抵抗値が大きくなり作業性が悪く
なることがわかる。

【００５１】

【発明の効果】本発明によれば、スポンジシート表面の
皮膜の開口率が１０％〜６０％であるため、作業性が良
く、かつ、拭き残しの無い洗車用拭き取り材を得ること
が出来る。又、このスポンジシートは、水泳後の身体の
水分拭き取りにも使用できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明のスポンジシートの皮膜の表面形状を
示す走査型電子顕微鏡写真である。

【図２】 本発明のスポンジシートの内部の三次元網目
構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ポリビニルアセタール系スポンジの層で
   なる多孔質体の表面に、ポリビニルアセタール系スポン
   ジの層でなる皮膜を有するポリビニルアセタール系スポ
   ンジシートにおいて、 前記皮膜が、１０〜６０％の開口率を有することを特徴
   とするポリビニルアセタール系スポンジシート。
2. 【請求項２】 前記ポリビニルアセタール系スポンジの
   層でなる多孔質体が、アセタール化度が５０〜８０％の
   ポリビニルアセタール系樹脂よりなり、平均気孔径が１
   ０〜１６０μｍで気孔率が８０〜９５％の微細連続気孔
   を有する多孔質構造体からなることを特徴とする請求項
   １記載のスポンジシート。