JP3300427B2 - 亜酸化窒素の製造方法 - Google Patents

亜酸化窒素の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は亜酸化窒素の製造方法に
関する。詳しくは、アンモニアを水蒸気の存在下に酸素
で酸化して亜酸化窒素を製造する方法に関する。
【0002】亜酸化窒素は麻酔ガスやロケット燃料用支
燃剤あるいは半導体洗浄剤として有用な化合物である。
【0003】
【従来の技術】従来、亜酸化窒素の製造方法としては、
(1) アンモニア酸化法、(2) 硝酸アンモニウム分解法、
(3) スルファミン酸と硝酸との反応による方法等が知ら
れている。この内、アンモニア酸化法(1) は原料が安価
なアンモニアと酸素であり、また、高収率が得られるた
めに工業的には好ましい方法である。
【0004】この方法は酸素あるいは空気を使用して金
属酸化物触媒上でアンモニアを200〜500 ℃で酸化し、
亜酸化窒素を製造する方法であり、使用する触媒は劣化
することが知られている。この対策として、触媒の再生
方法(特公昭30-1225 号)が提案されている。また、触
媒調製時の硝酸アンモニウムを完全に洗浄して劣化しに
くい実用的な触媒調製方法(工業化学雑誌、64、11、18
79(1961))等が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】反応はアンモニア―酸
素あるいはアンモニア―酸素混合ガス(空気等)の爆発
領域を避けるためにアンモニアの濃度が10 vol%以下に
なるように酸素あるいは窒素で希釈して反応が行われ
る。この結果、80〜90%の収率が得られるが、反応器出
口の亜酸化窒素濃度は数%にすぎない。さらに酸素を80
vol %以上使用し、その反応生成ガスを循環し、アンモ
ニアだけを分割供給する方法(特公昭46-33210号)が提
案されているが、この場合における亜酸化窒素濃度も40
vol %程度が得られているにすぎない(触媒:(Mn2O3-
Bi2O3))。
【0006】また、−89℃以下に冷却して亜酸化窒素
と、酸素および窒素とを分離する冷却分離方法が知られ
ているが、このように公知のアンモニア酸化法では反応
ガス中の亜酸化窒素濃度が低いので、このような冷却分
離方法では窒素および酸素に同伴する亜酸化窒素が多
く、全く経済性がない。そこで、工業的にはこの反応生
成ガスは20Kg/cm2程度の高圧下において亜酸化窒素を水
に溶解し、さらに常圧下に放出してより高濃度の亜酸化
窒素を取り出す方法で濃縮される。この濃縮操作を繰り
返すことにより亜酸化窒素をさらに濃縮する方法(特公
昭36-10958号)がある。しかしこの方法では水への溶解
度が小さいので大量の水を循環し、また、パージする必
要があり好ましい方法とは言えない。
【0007】一方、硝酸を使用してシクロアルカノール
を酸化する時に副生する排ガスから亜酸化窒素を冷却分
離法で分離するにあたり、効率的な冷却方法(特開昭54
-20994号)が開示されている。しかし、この方法では冷
媒についての記載がないが、冷却に必要な熱量に相当す
る冷媒(一次冷媒)が気化し、その気化した冷媒は大気
に放出するかあるいは回収することが必要である。
【0008】このようにアンモニア酸化法において、高
濃度の亜酸化窒素を高収率で取得し、さらに、冷却分離
で使用する冷媒を極めて経済的に使用することができる
亜酸化窒素の製造方法が望まれていた。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らはアンモニア
酸化法において、水蒸気を共存させてアンモニアを酸化
することにより、(1) 活性の劣化がないこと、(2) 水蒸
気を水に凝縮するだけで80%以上の高濃度の亜酸化窒素
を得る事ができること、(3) 酸素あるいは窒素で爆発限
界を避ける方法に比べ安全領域が大きく、より安全に運
転できること、(4) 水蒸気の熱容量が窒素や酸素よりも
大きいため反応の温度制御が容易なこと、を本発明者ら
は既に見い出している。さらに、本発明者らは亜酸化窒
素の分離方法までを含めた効率的な製造方法を鋭意検討
し、亜酸化窒素を液体酸素を用いて分離することにより
気化する酸素が反応に供する酸素源として効率的に使用
できることを見い出し本発明を完成した。すなわち、本
発明は、水蒸気の存在下にアンモニアおよび酸素を反応
させて得られた反応生成ガスを、亜酸化窒素、窒素およ
び酸素等の非凝縮性ガスと水とに冷却分離し、次いで液
体酸素を冷媒として用いて該非凝縮性ガスを冷却して亜
酸化窒素を分離した後、さらに、気化した該冷媒は、水
蒸気およびアンモニアとの反応に供する酸素源として反
応器へ供給することを特徴とする亜酸化窒素の製造方法
である。
【0010】本発明で使用する触媒は、アンモニア酸化
用触媒として知られている公知の触媒を使用することが
できる。驚くべきことに、水を添加すると、今まで触媒
の劣化が認められた触媒においても、その劣化はないか
あるいは極めて少ない。おそらく触媒上の硝酸痕のよう
な被毒物質の洗浄効果あるいは触媒の酸化状態の保持効
果のためと推測される。このような触媒の例としては、
CuO-MnO2系、Bi2O3 系、Fe2O3-Bi2O3-MnO2系、MnO-CoO-
NiO 系、Ba2O-CuO系、MnO2系、Pr2O3-Nd2O3-CeO3系、Pt
系が挙げられる。この中でもMn含有触媒が高活性であり
好ましい。さらに調製が容易なCuO-MnO2系が特に好まし
い。これらの触媒は通常管型反応器へ充填され、水蒸
気、アンモニアおよび酸素等の混合ガスが供給され、反
応が行われる。
【0011】本発明の水蒸気の存在下にアンモニアを酸
素で酸化反応せしめるに際し、反応器入り口での組成
は、水蒸気濃度が50vol %以上にすることで特に触媒活
性の劣化を抑制する効果があり望ましい。また、このア
ンモニアの酸化反応においてはアンモニアの濃度いかん
では爆発の危険性があり、そのアンモニアの爆発下限界
は約15vol %で、この爆発領域を避けるために酸素ある
いは窒素などで希釈して反応ガス中のアンモニア濃度を
約15vol %以下にする必要があり、安全性の面からは10
vol %以下が好ましい。このように酸素あるいは窒素な
どで希釈した場合には、アンモニア濃度が小さいため反
応効率が悪く、さらには得られる反応生成ガス中の余分
な酸素および窒素を亜酸化窒素と分離する必要がある。
【0012】しかしながら、本願発明における水蒸気濃
度を少なくとも60vol %以上にすればアンモニアあるい
は酸素のモル比にかかわらず爆発領域を回避できること
も見出している。このように反応器入り口において、水
蒸気濃度が60vol %以上であれば前記した希釈用として
の余分な酸素や窒素は必要がなく、容易に高濃度の亜酸
化窒素を分離することができる。したがって、好ましい
水蒸気の使用量は反応器入り口濃度で50vol %以上、さ
らに好ましくは60vol %以上である。
【0013】本発明の方法で使用するアンモニアは純粋
なアンモニアは勿論のこと、アンモニア水溶液としても
用いることができる。アンモニアの反応器入り口の濃度
は上記したように、爆発領域を避けるために10vol %以
下が好ましいが、水蒸気の使用量を60vol %以上にする
ことでその制限はなく、反応器入り口におけるアンモニ
アの濃度は1〜30vol %であり、好ましくは1〜20vol
%の範囲である。
【0014】本発明で使用する酸化源としての酸素は純
粋な酸素は勿論のこと、窒素を含んだ酸素や空気を用い
ることもできるが、上述したように、これ以上の窒素な
どで希釈された酸素を用いることは反応生成ガス中の亜
酸化窒素濃度がさらに低くなるため避けるべきであり、
好ましい酸素の使用量はアンモニア1モルに対し 0.3〜
3モルである。
【0015】これらの水蒸気、アンモニアおよび酸素等
の混合ガスの供給速度は、亜酸化窒素の選択率には影響
を与えないが、供給速度が小さすぎると反応器が大きく
なって不経済であり、また大きすぎるとアンモニアの転
化率が低下する。したがってこれら混合ガスの供給速度
は、0℃、1気圧の状態に換算した空間速度で 100〜10
0,000 /hr、好ましくは 1,000〜50,000/hrの範囲であ
る。
【0016】反応温度は 200〜500 ℃が好ましいが、高
すぎると窒素酸化物(主に、NO,NO2 )の副生量が
増加し好ましくない。さらに好ましくは 250〜450 ℃で
ある。また、反応圧力は高圧の方が反応速度が早くなる
が、反応器が高価になり不経済であり、通常は20Kg/cm2
-G以下である。
【0017】このようにして反応を行って得た反応生成
ガスは水の沸点以下に冷却され、亜酸化窒素、酸素およ
び窒素等の非凝縮性ガスと水とに分離され、さらに必要
に応じて精製工程を経て非凝縮性ガスから微量の窒素酸
化物が除去される。ついで、この窒素酸化物が除去され
た非凝縮性ガスから公知の冷却分離法で高純度の亜酸化
窒素が分離される。この冷却分離における圧力と温度は
亜酸化窒素の物性に基づき決定されるが、一般に、酸素
および窒素はそれぞれ−118.6 ℃、−147.0 ℃以上では
気体であり、亜酸化窒素は、例えば0℃の蒸気圧が30.3
Kg/cm2-Gと高く、言い換えればこの蒸気圧に相当する亜
酸化窒素が酸素および窒素と共に同伴されて失われる。
したがって、この冷却分離における温度は亜酸化窒素の
凝固点に近い温度が好ましいが、亜酸化窒素の凍結によ
る装置の閉塞が起こらないような−10〜−90℃、好まし
くは−50〜−90℃の温度で行えばよい。また、圧力につ
いては、高い方が気相における酸素および窒素の分圧を
高くできるために、それらに同伴される亜酸化窒素の量
が少なくなり好ましいが、装置がコスト高になる。した
がって、1〜40Kg/cm2-G、好ましくは10〜30Kg/cm2-Gで
ある。
【0018】ここで冷却分離法における冷媒として液体
酸素を用いることが本発明において重要であり、上記し
た条件下に冷却分離塔へ導入される室温〜80℃の非凝縮
性ガスから亜酸化窒素を分離するに必要な液体酸素量
は、取得される亜酸化窒素1モルに対して2モル以上で
ある。このようにして気化した酸素は、水蒸気の存在下
にアンモニアの酸化源として反応器へ供給する。この
際、気化した酸素はそのまま反応器へ供給してもよい
が、冷却分離塔に導入される前段の非凝縮性ガスと熱交
換して用いることにより、非凝縮性ガスの予冷、さらに
は反応器へ導入する気化した酸素の予熱にも利用でき、
エネルギーの経済的活用の面からも好ましい結果が得ら
れる。
【0019】
【実施例】以下、本発明を実施例により詳細に説明す
る。
【0020】実施例1 Cuo-MnO2触媒500gを充填した内径2.8cm の管型反応器
へ、アンモニア3vol %、酸素3.1vol%、水蒸気93.9vo
l %の割合で各ガスを供給した。反応における温度は30
0 ℃、空間速度は3,000 /hr、圧力は0.5Kg/cm2-G であ
った。このようにして反応器出口より得られた反応生成
ガスを30℃に冷却し、分離したその気相部を分析した結
果、亜酸化窒素75.2vol %、窒素13.5vol %、酸素11.3
vol %であり、アンモニアは検出されなかった。一方、
液相部を分析したところアンモニアは痕跡量であり、ア
ンモニアの転化率は99%以上であった。
【0021】この反応生成ガスを過マンガン酸カリウム
を含むアルカリ水溶液に通してNOXを除去した。次いで1
0Kg/cm2-Gで、液体酸素を用いて約−80℃に冷却して亜
酸化窒素を液化させ、気体として酸素および窒素を分離
した。このようにして得られた亜酸化窒素の純度は99%
以上であり、満足すべき品質であった。
【0022】この冷却時に気化した酸素量は反応に必要
な量の95%に相当したので、新たに供給する酸素を今ま
での5%に減らし、残りの95%をこの気化した酸素に置
き換えて反応器へ供給した。このように亜酸化窒素を液
化せしめるに用いた液体酸素を連続的に反応器へ供給し
て反応を継続した結果、同様の反応成績得られ、また得
られた亜酸化窒素の品質も充分満足できるものであっ
た。
【0023】
【発明の効果】アンモニア酸化法において、酸素および
窒素等から亜酸化窒素を分離する際の冷媒として用いた
液体酸素を、廃棄あるいは処理することなく水蒸気の存
在下にアンモニアの酸化源として全量利用でき、分離・
精製までを含め多くの面で総合的に亜酸化窒素を工業的
に有利に製造し得る方法である。
フロントページの続き (72)発明者 下岡 政司 大阪府高石市高砂1丁目6番地 三井東 圧化学株式会社内 審査官 大工原 大二 (56)参考文献 特開 昭47−34092(JP,A) 特開 平5−58607(JP,A) 特公 昭46−33210(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01B 21/22

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】水蒸気の存在下にアンモニアおよび酸素を
    反応させて得られた反応生成ガスを、亜酸化窒素、窒素
    および酸素等の非凝縮性ガスと水とに冷却分離し、次い
    で液体酸素を冷媒として用いて該非凝縮性ガスを冷却し
    て亜酸化窒素を分離した後、さらに気化した該冷媒は、
    水蒸気およびアンモニアとの反応に供する酸素源として
    反応器へ供給することを特徴とする亜酸化窒素の製造方
    法。
  2. 【請求項2】請求項1記載の水蒸気が、反応器入り口濃
    度で 50vol%以上である亜酸化窒素の製造方法。
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