JP3300382B2 - βーBaB2O4薄膜の製造方法 - Google Patents

βーBaB2O4薄膜の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、β−BaB24薄膜の
製造方法に関し、詳しくはいわゆるゾルーゲル法を利用
したβ−BaB24薄膜の製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、レーザは、医学,加工,核融合等
に利用されており、その分野ではより高度な技術開発の
ために強力な紫外線が必要とされている。また、光化学
反応等では波長を調節する性能が要求され、更に、光情
報処理,光計測,オプトエレクトロニクス等の分野で
は、軽量で長寿命の紫外線が求められている。
【0003】そのため、従来の寿命が短い気体放電型レ
ーザや液体レーザに代えて、固体レーザを用い、非線形
光学材料で波長変換することで紫外域に到る光を得よう
とする技術が提案されている。そして、この目的に用い
るために、無機や有機の波長変換用非線形光学材料が研
究されており、最近では、2次高調波発生(SHG)特
性を有するβ−BaB24(BBOと称す)が注目され
ている。
【0004】このBBOは、高調波発生によって波長2
00nmを下回る紫外線を発生することができるSHG素
子として知られており、結晶相としてα相とβ相の二つ
の構造をもつ物質である。このうち、α相は高温にて生
成する安定した結晶相であり、一方β相は低温で生成す
る準安定の結晶相であって、このβ相のみが非線形光学
活性であることが知られている。
【0005】前記β相は低温にて形成されるので、その
製造方法として従来よりフラックス法が知られている。
フラックス法とは、BBO組成溶融溶液にフラックスを
添加することによって融点を下げ、その組成溶融溶液か
らβ相のBBOの結晶を育成するものである。
【0006】また、その他の方法として、チョクラルス
キー法があるが、これは、原料の選定,融液保持条件,
育成環境を最適化することにより、β相の単結晶を直接
引き上げて形成する方法である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記の
様な従来の方法では、高品質な結晶をBBO組成溶融溶
液から形成するためには、融液構造を考慮して精密に調
製して操作を行なわなければならず、必ずしも良質なB
BOを得ることは容易ではなかった。
【0008】つまり、BBO組成溶融溶液から準安定の
β相の結晶を生成するためには、β相の結晶性の良い原
料を厳選し、しかもβ相を安定して育成できる環境を設
定しなければならず、容易なことではなかった。また、
形成された結晶には不純物が含まれることがあり、結晶
構造も不均一になり易く、しかも熱歪みが生ずる等の問
題があった。
【0009】更に、従来の方法では単結晶は製造できる
が、集積回路に使用できる様なBBOの薄膜を形成する
ことができないという問題があった。本発明は、前記課
題を解決するためになされ、容易に良質なBBOを安定
して製造でき、しかも工業的に応用範囲の広い薄膜を製
造できるβ−BaB24薄膜の製造方法を提供すること
を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
の請求項1の発明は、ホウ素のアルコキシドと、金属バ
リウム又は金属バリウムのアルコキシドとを、溶剤で溶
解し混合して均一溶液を調製し、該均一溶液を濃縮して
或いはそのままコーティング溶液として用いて、基板上
に薄膜を形成し、その後酸素を含む雰囲気中で、前記薄
膜を400℃を上回る900℃未満の温度範囲で焼成す
ることを特徴とするβーBaB24薄膜の製造方法を要
旨とする。
【0011】また、請求項2の発明は、前記均一溶液を
調製する際に、安定化剤を添加することを特徴とする請
求項1記載のβーBaB24薄膜の製造方法を要旨とす
る。
【0012】請求項3の発明は、前記酸素を含む雰囲気
が、オゾン,純酸素,大気又は酸素中に水蒸気を含んだ
気体であることを特徴とする請求項1記載のβーBaB
24薄膜の製造方法を要旨とする。
【0013】ここで、ホウ素のアルコキシドとしては、
エトキシド,メトキシド,プロポキシド,ブトキシド,
エトキシエトキシド等を採用できる。金属バリウムのア
ルコキシドとしては、エトキシド,メトキシド,プロポ
キシド,ブトキシド,エトキシエトキシド等を採用でき
る。
【0014】また溶剤としては、エタノール,メタノー
ル,エトキシエタノール,メトキシエタノール,ブタノ
ール,プロパノール,トルエン,ベンゼン等の有機溶媒
を採用できるが、前記ホウ素がエトキシドの場合はエタ
ノールを使用する様に、その種類を一致させることが好
ましい。
【0015】安定化剤としては、ジエタノールアミン,
トリエタノールアミン,モノエタノールアミン等が好適
である。コーティング溶液を用いて基板をコーティング
する方法としては、ドリップコーティング法やディップ
コーティング法等を採用できる。
【0016】基板としては、白金,シリカ,マグネシア
等を採用できる。酸素を含む雰囲気としては、オゾン,
純酸素,大気或いは酸素中に水蒸気を含んだ気体等を採
用できるが、特に雰囲気の気体を適度に流動させて提供
することが望ましい。
【0017】仮焼成の温度としては、250〜400℃
の範囲の温度が望ましく、特に300〜350℃が好適
である。その加熱方法としては、徐加熱徐冷法等を採用
できる。
【0018】本焼成の温度としては、400℃を上回り
かつ900℃未満の範囲の温度を採用できるが、特に6
00℃前後が好適である。その加熱方法としては、急加
熱徐冷法や徐加熱徐冷法等を採用できる。
【0019】
【作用】本発明のβーBaB24薄膜の製造方法では、
まず、BaB24の成分であるBa及びBを供給する原
料として、ホウ素のアルコキシドと、金属バリウム又は
金属バリウムのアルコキシドとが用いられる。そして、
この原料が溶剤で溶解されて混合されることによって、
均一溶液が調製される。更に、この均一溶液が濃縮され
て或いはそのままコーティング溶液とされ、該コーティ
ング溶液が、基板上に付着されることによってBaB2
4の薄膜が形成される。その後、酸素を含む雰囲気中
で、前記薄膜が400℃を上回りかつ900℃未満の範
囲で焼成されることによって、結晶相がβ相であるβー
BaB24の薄膜が完成することになる。
【0020】ここで、特に、前記均一溶液を調製する
際に安定化剤を添加する場合、或は、前記酸素を含む
雰囲気として、オゾン,純酸素,大気又は酸素中に水蒸
気を含んだ気体を使用する場合には、形成されるβーB
aB24の薄膜が良質でしかも安定して得られるので好
適である。
【0021】
【実施例】以下、本発明の実施例のβーBaB24(B
BOと称す)の製造方法について説明する。
【0022】まず、BBOの主要な材料として、ホウ素
のエトキシドと金属バリウムとを、2:1のモル比で使
用する。そして、溶剤としてエタノールを用いて、この
BBOの材料を0.3モル/lの割合で溶解して混合す
る。次に、この混合液に、安定化剤としてジエタノール
アミンを加えて均一溶液とする。そして、この均一溶液
を例えば0.5mol/lまで濃縮してコーティング溶液を
調製する。
【0023】次に、このコーティング溶液を用い、ディ
ップコーティング法によって、コーティング溶液をPt
基板上につけて、図1に示す様に、Pt基板1の表面を
覆う薄膜2を形成する。この薄膜2として、亀裂を生じ
ることなく結晶化できる厚さは、1回のディップコーテ
ィングでは、最大2000Å程度であるが、コーティン
グを繰り返すことによって所望の厚さの薄膜2にするこ
とが可能である。
【0024】そして、この薄膜2を、酸素気流中で35
0℃で仮焼成する。仮焼成は、温度の変化が2℃/min
の徐加熱徐冷法にて行ない、350℃にて1時間保持し
た。その後、400℃を上回りかつ900℃未満の温度
範囲の例えば600℃で、前記仮焼成した薄膜2の本焼
成を行なった。本焼成は、急加熱徐冷(2℃/min)法
にて行ない、600℃にて1時間保持した。これによっ
て、β相のBBOの薄膜2を得た。
【0025】次に本実施例の効果を確認するために行っ
た実験例について説明する。 (実験例1)この実験では、本焼成の温度を、400〜
900℃の範囲で100℃毎に変更して薄膜を形成し、
その時の薄膜の成分のXRDを行った。その結果を、図
2及び図3に記す。尚、図3は、比較のために600℃
と900℃のグラフを並べて、拡大して示したものであ
る。
【0026】この図2から明らかな様に、焼成温度が5
00〜900℃の場合には、薄膜の結晶相としてβ相が
形成されていることが分かる。また、図3から明らかな
様に、例えば焼成温度が600℃の場合には、薄膜はβ
相のBBOのみから形成されているが、900℃の場合
には、α相とβ相とが混在していることが分かる。つま
り、本実施例の方法で、適切な焼成温度を設定すること
によって、BBOの薄膜を製造できることが分かる。
【0027】上述した様に、本実施例では、ホウ素のエ
トキシドと金属バリウムとを、エタノールで溶解して混
合するとともに、安定化剤としてジエタノールアミンを
加えて均一溶液とし、この均一溶液を濃縮してコーティ
ング溶液を調製した。そして、ディップコーティング法
によって、コーティング溶液をPt基板1上に滴下して
薄膜2を形成し、この薄膜2を酸素気流中で仮焼成し、
更に所定温度範囲で本焼成を行なった。
【0028】これによって、いわゆるゾルーゲル法によ
って、基板1上に良質のβ相のBBO薄膜2を製造する
ことができた。この薄膜2は、不純物を含まずまた不均
一な構造となることもなく、熱歪みも生じ難いという利
点があり、特に焼成温度を選ぶことによって、α相を全
く含まない純粋なβ相のBBOを形成できるという特長
がある。
【0029】そのため、この様にして製造されたβ相の
BBOの薄膜2は、集積回路等の各種の用途に適用で
き、工業的な応用範囲が広く優れたものである。次に他
の実施例について説明する。
【0030】この実施例では、基板の材料として、Pt
に代えてシリカ(SiO2)を使用した。尚、他の製造
条件は前記実施例とほぼ同様としたので、説明は省略す
る。そして、前記実験例と同様にして、本焼成の焼成温
度を600〜800 ℃の範囲で100℃毎に変えて薄
膜を製造し、その薄膜の成分のXRDを行った。その結
果を図4に記す。
【0031】図4から明らかな様に、基板がシリカの場
合でも、700℃でβ相のBBOが形成されていること
が分かる。以上各実施例について説明したが、本発明は
前記実施例に何等限定されるものではなく、本発明の趣
旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得
る。
【0032】例えば上述した様に、材料組成のモル比,
溶剤の種類,溶剤の割合,安定化剤の種類,安定化剤の
割合,均一溶液の濃度,基板の種類,薄膜の付着方法,
仮焼成の有無,仮焼成の温度,雰囲気の種類,雰囲気の
濃度等を、本発明の範囲内で変更して実施できることは
勿論である。
【0033】
【発明の効果】以上の様に、本発明の製造方法によれ
ば、容易な操作で、安定して不純物の少ない良質なβ−
BaB24薄膜を製造することができるという顕著な効
果がある。しかも基板上に均質な厚さを有する薄膜を形
成できるので、それによってβ−BaB24の集積回路
等への応用が促進されるという利点がある。
【0034】特に、安定化剤の添加や焼成雰囲気の選択
を行なうことによって、より良質のβ−BaB24薄膜
を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Pt基板に形成された薄膜を示す斜視図であ
る。
【図2】Pt基板に形成された薄膜の成分の測定結果を
示すグラフである。
【図3】Pt基板に形成された薄膜の成分の測定結果を
比較して示すグラフである。
【図4】SiO2基板に形成された薄膜の成分の測定結
果を示すグラフである。
【符号の説明】
1…基板 2…薄膜
フロントページの続き (56)参考文献 O.YAMAGUCHI et a l,Characterization of Alkoxy−Derived Barium Metaborat e,旭硝子工業技術奨励会研究報告 (1980年),日本,vol.36,p. 323−330 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01B 35/00 - 35/18 CA(STN)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ホウ素のアルコキシドと、金属バリウム
    又は金属バリウムのアルコキシドとを、溶剤で溶解し混
    合して均一溶液を調製し、該均一溶液を濃縮して或いは
    そのままコーティング溶液として用いて、基板上に薄膜
    を形成し、その後酸素を含む雰囲気中で、前記薄膜を4
    00℃を上回る900℃未満の温度範囲で焼成すること
    を特徴とするβーBaB24薄膜の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記均一溶液を調製する際に、安定化剤
    を添加することを特徴とする請求項1記載のβーBaB
    24薄膜の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記酸素を含む雰囲気が、オゾン,純酸
    素,大気又は酸素中に水蒸気を含んだ気体であることを
    特徴とする請求項1記載のβーBaB24薄膜の製造方
    法。
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