JP3300174B2 - 調質圧延方法 - Google Patents

調質圧延方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、冷延鋼板またはメッキ
鋼板用原板、特にブリキ用原板の製造において、冷間圧
延、焼鈍等の後に行われる調質圧延で、圧下率が3%以
上という、調質圧延としては圧下率が高い場合に、平坦
度の高い鋼板を圧延しうる調質圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】冷延鋼板又はメッキ用原板は平坦度が良
好であることが求められる。平坦度不良としては、圧延
方向の伸び差に起因する波状の不良の他、反りと呼ばれ
る湾曲状の不良がある。反りは、鋼板をカットして使用
する際、ハンドリングのトラブルの発生原因となるた
め、反りの小さい鋼板を製造することが必要である。
【0003】調質圧延は、鋼板の平坦度を大きく左右す
る製造工程である。特に圧延潤滑液を使用して、高圧下
を行う調質圧延では反りの発生が顕著であり、これを防
止する技術は非常に重要である。なお、特にブリキ等の
板厚の小さい鋼板については、平坦度を向上させる目的
でテンションレベラーが使用されることもあるが、高価
な設備を設置しなければならず必然的にコストアップを
伴うことになる。
【0004】調質圧延を行う際に反りを発生させない技
術として、本発明者らは、特願平5−216617号に
おいて、鋼板のエッジ部のクーラントをエッジ以外の部
分より多量に供給する技術を発明し、出願した。しか
し、この技術においても、特に累積圧延量が多くなった
時のC反り量が劣化することを十分に防止されていると
は云えず更なるC反り防止向上技術の開発が待望されて
いる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
要望を充足すべく反りを軽減する調質圧延方法を提供す
ることにあり、更に、同一のロールにおける累積圧延量
を多くして、反り発生によるロール交換の頻度を少なく
する方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】まず、本発明の端緒とな
った事実について述べる。製造における反りの防止につ
いては幅方向の不均一性の除去が最も重要である。即
ち、鋼板は調質圧延後、最終的に材料として使用される
前にレベラーを通過するのが通常であり、もし、鋼板の
残留応力が幅方向で均一であれば、レベラーによって反
りは軽減され、製品としての使用上問題がないのに対
し、不均一性がある場合には、レベリングをしてもカッ
ティングライン等に装備されたレベラーでは反りを解消
できず、カットされた鋼板のハンドリングトラブル等が
発生する。なおここでいうレベラーとは、小径ロールで
繰り返し曲げを与える装置を指し、高張力を付与する駆
動装置を備えて高張力下で伸びを与えながらレベリング
を行うテンションレベラーとは異なる、比較的簡易な装
置である。
【0007】図1のデータAは、伸び率6%の調質圧延
を行ったのち、カットサンプルをレベリングしてから圧
延方向にスリットしてL方向に反りを測定したものであ
るが、レベリングによって反りがゼロとなっている幅方
向部位は一部のみで、幅方向に不均一性が存在してい
る。図1のデータBは、データAと同一のコイルの一部
に、高張力を付与してレベリングを行うテンションレベ
ラーを伸び率0.3%で適用して、カットサンプルをレ
ベリングしてから圧延方向にスリットしてL方向に反り
を測定したものである。データAと比較して、テンショ
ンレベラーの適用によって幅方向の不均一性が縮小して
おり製品として問題のない状態になっているが、テンシ
ョンレベラーの使用は製造工程の追加を必要とし、製造
費用の上昇を招く。
【0008】図2は、伸び率6%の調質圧延を行った鋼
板を複数サンプリングして、図1と同様に反りを測定し
たものである。従来の反り防止技術は、レベリング、上
下のロール周速度差管理など、上下の非対称性に着目し
ていたが、図2のデータが調質圧延した鋼板の幅方向で
の反りに関する不均一性を示し、またその分布が鋼板に
よってばらついていることから、上下対称性に対する着
目では反り防止に関して十分でないことがわかる。発明
者らは、以上のような考察に基づき、幅方向の不均一性
の防止に着眼し、これを防止する方法を見出した。
【0009】次に、本発明の方法について説明するが、
反りの指標としては、圧延方向スリットサンプルのL反
り分布よりも、簡便に評価しうるカットサンプルでのレ
ベリング後のC反り量を用いている。調質圧延鋼板の幅
方向にL反り分布における不均一性が存在するとカット
サンプルにおけるC反りとして計測されるので、レベリ
ング後のC反り量は反り不良の検査のために有用な指標
であり、かつ、スリットせずに計測できることから簡便
性に優れた指標である。
【0010】発明者らは調査の結果、反り発生時には幅
方向部位によるロール粗度変化が発生していることを見
出した。ロールは研削、加工時にはほぼ均一な粗度を有
しており、研削、加工したロールで調質圧延を開始した
初期には、反り量は小さいが、調質圧延の進行による累
積圧延量によって粗度差が拡大し、反り量が増加する。
なお、粗度差により反り量が異なるのはワークロールと
鋼板の間の摩擦係数が異なるためである。この場合のロ
ール粗度の指標としてはRaを用いる。
【0011】図3は反り発生時と反りが発生しなかった
場合とで、ワークロール表面粗度の分布を計測したもの
である。ワークロール表面粗度は、上ロール、下ロール
別に、また中央部と板両端部別に計測している。データ
Aではワークロールの部位による粗度の差が大きく、鋼
板には20mmの反りが発生している。データBではワー
クロールの部位による粗度差はデータAより小さく、鋼
板の反りも小さい。この図から、反り20mm以下になる
ワークロールの部位による粗度差は0.15μmRa以
下であり、これはワークロール粗度の20%にあたる。
【0012】なお、上ワークロールの粗度の平均と下ワ
ークロールの粗度の平均の差は、データAとデータBで
大きく異なっておらず、上下ワークロールの粗度の平均
値の差は、本発明において解決しようとするレベラー矯
正後の反りの原因となっていないことがわかる。上下ワ
ークロールの粗度の平均値の差は、調質圧延直後にはL
方向に鋼板の大きな反りを形成しているはずであるが、
圧延後、デフレクターロールを通過し、またコイルとし
て巻き取られ、更にレベラーにより矯正されており、幅
方向の不均一性に起因する反りが残存しているものと考
えられる。図3では、両端部での粗度低下が顕著である
が、別の例では中央部の粗度が低下しているものもあ
り、粗度低下が生じる部位は一定していない。
【0013】発明者らはさらに調査した結果、調質圧延
の潤滑液中に鉄粉が混入した場合に、ワークロールの粗
度変化が大きくなり、また鋼板の反りが大きくなること
を見出した。図4に潤滑液中の鉄粉濃度と、ワークロー
ル交換後30Tトン以上圧延した状態で圧延した鋼板の
反りとの関係を示す。図4より鉄粉濃度が増加すると反
りが増加しており、特に鉄粉濃度が20ppm を超えると
反りが著しく大きくなることがわかる。図4の反り20
mm以上の各点で、ワークロールの部位による粗度差は
0.15μmRa以上であった。
【0014】発明者らは、このような潤滑液中の異物と
反りの関係を次のように推定している。すなわち潤滑液
中の鉄粉等の異物により、潤滑液の潤滑性、付着性が不
均一となり、幅方向での摩擦係数差が生じ、この摩擦係
数差によりワークロール表面の摩耗が不均一となって、
部位による粗度差が形成される。一度大きな粗度差が形
成されると、低粗度部は潤滑液のロールバイトへの捕捉
量が低下し、粗度差は次第に拡大される。このようにし
て形成された部位による大きな粗度差が反りの原因とな
るというものである。潤滑液中に異物があっても、ワー
クロール交換直後には鋼板の反りが発生しないため、潤
滑性の不均一性によって直接的に反りが発生するのでは
なく、ワークロールの部位による粗度差が反り発生の直
接的な要因とみられる。
【0015】
【実施例】潤滑液中の鉄粉濃度を一定以下に保つととも
に、ワークロールの部位による大きな粗度差を防止する
ためワークロールに耐摩耗性表面処理を施すことで反り
を防止できるとの上記知見に基づき、ワークロールの耐
摩耗性表面処理としてCrメッキを用いて上記技術の有
効性を検証した。使用したCrメッキ法は、ワークロー
ルを前処理したのち、Crメッキ浴中で電気メッキを行
ったもので、Crメッキ層の厚みは10〜15μmであ
る。また、磁気フィルターを用いて潤滑液中の鉄粉濃度
を減少させ、20ppm 以下に保つようにした。
【0016】なおCrメッキは、従来、圧延ロール表面
の耐摩耗性表面処理法として広範に使用されており、従
来の使用目的は、圧延に伴う鋼板粗度変化の低減、疵の
防止などであるが、本発明においては、反り防止の目的
で、潤滑液中の鉄粉濃度低下と組み合わせて使用した。
【0017】図5に反りが発生するまでの鋼板圧延量を
示す。Crメッキを施したワークロールを使用するのみ
では効果は十分でなく、また潤滑液中の鉄粉濃度を小さ
くしただけでも効果は十分でないが、Crメッキを施
し、かつ鉄粉濃度を小さくした場合に、反り発生までの
圧延量が大幅に増加していることがわかる。なお、図5
において、反りが発生したとする反り量は20mmであ
り、鋼板板厚は0.2〜0.22mm、鋼板幅は900〜
1000mmの範囲である。
【0018】図6に本発明の方法を適用した場合のワー
クロールの使用後の粗度分布を示す。本発明の方法を適
用していない図3のAのデータと比較して、圧延量が増
加しているにも関わらず、ワークロールの幅方向の部位
による粗度差は小さくなっていることがわかる。
【0019】図7にCrメッキをしないワークロールの
場合とCrメッキを施したワークロールの場合の調質圧
延における反り発生率を比較して示す。Crメッキを施
すことにより、実用上、反りの発生を防止できることが
わかる。
【0020】
【発明の効果】図5〜図7に示したように、本発明の方
法により、反りを防止することができる。また、本発明
の方法を用いない場合には、反りによる不良品の発生を
最小限に止めるため、頻繁にワークロールを交換しなけ
ればならない。頻繁なワークロールの交換は、ワークロ
ールの使用本数を増加させるとともに、調質圧延設備の
生産性を大幅に低下させる。特に、焼鈍設備と調質圧延
設備をつないだ連続焼鈍設備においては、調質圧延部で
の生産性の低下は全体の生産性を低下させるが、本発明
の方法を用いれば、このような弊害を防止することがで
きる。
【0021】なお、本発明の方法は、大きな圧下率にお
ける湿式調質圧延の場合に有効である。圧下率が小さい
場合には、調質圧延における鋼板の歪みが小さいため、
反りの発生は軽減される。また、湿式圧延でない場合に
は、ワークロール部位による大きな粗度差の形成に影響
する潤滑液を使用しないため、やはり反りの発生は軽減
される。上述したような反りが問題となる調質圧延は、
圧下率は3%以上の領域である。
【図面の簡単な説明】
【図1】板幅方向位置による反り分布をテンションレベ
ラーによる矯正の有無によって比較した図。
【図2】板幅方向位置による反り分布が非一様性を示す
図。
【図3】ワークロールの部位による粗度と反りを示す
図。
【図4】調質圧延の潤滑液中の鉄粉濃度と反りの関係を
示す図。
【図5】使用するワークロールの表面処理の有無による
圧延量と反り発生防止効果を示す図。
【図6】ワークロールの部位による粗度差を本発明の方
法を適用した場合とそうでない場合とで比較した図。
【図7】ワークロール表面処理(Crメッキ)をした本
発明方法の場合と表面処理なしの本発明適用前のロール
を使用した場合における反り発生率を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−30305(JP,A) 特開 平3−138012(JP,A) 特開 平2−117708(JP,A) 特開 平5−237504(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21B 1/00 - 11/00 B21B 45/02 310

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 耐摩耗性表面処理を施したワークロール
    を使用して、板幅内に対応する部位でのワークロールの
    板幅方向での表面粗度Ra差をワークロール粗度Raの
    20%以下とするとともに、潤滑液中の鉄粉濃度を20
    ppm 以下として、圧下率が3%以上の湿式圧延を行うこ
    とを特徴とする調質圧延方法。
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