JP3287921B2 - 気相成長用マグネシウム原料およびこれを用いた気相成長法 - Google Patents

気相成長用マグネシウム原料およびこれを用いた気相成長法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ZnMgSSeなどの
マグネシウムを含む化合物半導体を気相成長させるため
の気相成長用マグネシウム原料およびこのマグネシウム
原料を用いた気相成長法に関する。
【0002】
【従来の技術】II-VI 族化合物半導体を材料とする発光
デバイスのクラッド層として盛んに用いられているZn
MgSSe膜のマグネシウム原料として、またIII-V族
化合物半導体を材料とする発光デバイス(特にGaNを
主とした窒素化合物)における重要なp型ドーパントの
マグネシウム原料として、MOCVD(有機金属化学気
相成長)法において、従来はビス(シクロペンタジエニ
ル)マグネシウム〔(C 5 5 2 Mg〕が広く用いら
れている。
【0003】しかし、このマグネシウム原料は、室温で
固体であり(融点約176℃)、MOCVD法のための
マグネシウム原料として、例えば以下の短所を有してい
る。
【0004】 蒸気圧が低いので、成長に必要な蒸気
圧を得るためには、ある程度高温(約120℃以上)に
する必要がある。
【0005】 室温で固体であるため、原料容器から
反応管までのラインを高温に保持する必要がある。
【0006】 また同じ理由により、原料容器から基
板までの距離をできる限り短くする必要がある。
【0007】 室温で固体であるため、コールドウォ
ールの反応管の場合、反応管の上流に原料が析出し、成
長に悪影響を与えることがある。
【0008】 室温で固体であるため、キャリアガス
中に固体粉末が混入し、固体のままで基板上に輸送さ
れ、成長に悪影響を与えることがある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、室温にて液体である気相成長用マグネシウム原
料およびこのマグネシウム原料を用いた気相成長法を提
供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の気相成長用マグ
ネシウム原料は、ビス(エチルシクロペンタジエニル)
マグネシウムを主成分とすることを特徴とする。
【0011】また、本発明の気相成長法は、上記気相成
長用マグネシウム原料をキャリアガスにより気体状態に
し、気体状態の他の元素を含む有機金属原料とともに、
加熱された基板上に化合物半導体を成長させることを特
徴とする。
【0012】特に、マグネシウムを含むII-VI 族化合物
半導体、またはマグネシウムをp型ドーパントとして含
むIII-V族化合物半導体を気相成長するための気相成長
用マグネシウム原料および気相成長法である。
【0013】ビス(エチルシクロペンタジエニル)マグ
ネシウムは、室温(25〜27℃)において液体であ
る。
【0014】上記のビス(エチルシクロペンタジエニ
ル)マグネシウムは、一般的に公知の化合物であり、公
知の方法にて製造される。
【0015】本発明の気相成長法によれば、ZnMgS
Se、MgS、MgSeなどのマグネシウムを含むII-V
I 族化合物半導体が基板上に成長される。また、p型ド
ーパントとしてのマグネシウムを含むIII-V族化合物半
導体を材料とする発光デバイス(特にGaNを主とした
窒素化合物)が基板上に成長される。II-VI 族化合物半
導体またはIII-V族化合物半導体を構成するマグネシウ
ム以外の元素(Zn、S、Se、Ga、Al、In、
P、As、Sbなど)を含む有機金属原料としては、上
記のアルキル基またはアルコキシ基を有する液状の化合
物が、ガス化容易性などの点から好適に用いられるが、
例えばキレート化合物などの固体物をも用いることがで
きる。具体的な有機金属原料としては、ジメチル亜鉛、
ジエチル亜鉛、ジメチルセレン、ジエチルセレン、ジメ
チル硫黄、ジエチル硫黄、トリメチルガリウム、トリエ
チルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルア
ルミニウム、トリメチルインジウム、トリエチルインジ
ウムなどが例示される。
【0016】本発明のマグネシウム原料をガス化するに
際しては、マグネシウム原料を−20〜180℃、好ま
しくは5〜100℃に昇温して、キャリアガスを用いて
バブリングを行う。キャリアガスとしては、通例の水素
ガスの他に、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスの
如き不活性ガスなどが単体で、あるいは混合系として一
般に用いられる。不活性ガスの使用は、得られる半導体
への水素取り込み抑制に有利である。また、他の元素を
含む有機金属原料についても、必要に応じて、キャリア
ガスによるバブリングを行う。
【0017】気体状態のマグネシウム原料および他の有
機金属原料(以下「混合ガス」という。)を、例えば供
給管を介して、支持台を有する減圧または常圧状態の反
応室に供給し、支持台上に載置された高温の基板上にて
熱分解させて、目的の化合物半導体を成長させる。な
お、混合ガスは、目的とする化合物半導体を構成する元
素に基づいて、その組成に準じた組成とされる。
【0018】反応温度は、目的の化合物半導体に応じて
適宜に決定されるが、一般には400〜1500℃程度
である。したがって、基板としては、反応温度に耐える
セラミックまたは半導体などからなる耐熱性のものが用
いられる。反応室の真空度についても目的の化合物半導
体に応じて適宜に決定され、通常は、760Torr以
下、好ましくは760Torrとする。
【0019】
【作用】本発明の気相成長用マグネシウム原料は、ビス
エチルシクロペンタジエニル)マグネシウムを主成分
とするので、室温で液体であり、従来から用いられてい
るビス(シクロペンタジエニル)マグネシウムよりも高
い蒸気圧を有している。
【0020】本発明の気相成長法は、本発明の気相成長
用マグネシウム原料をキャリアガスにより気体状態に
し、気体状態の他の元素を含む有機金属原料とともに、
ZnMgSSe、MgS、MgSeなどのマグネシウム
を含むII-VI 族化合物半導体、またはマグネシウムをp
型ドーパントとして含むIII-V族化合物半導体(Ga
N、GaP、GaAs、InP、AlGaP、AlGa
As、InGaP、InGaAs、AlGaInP、I
nGaAsP、AlGaAsSb、InGaAsSbな
ど)を加熱された基板上に成長させるので、従来法に比
して成長の制御が容易となり、得られる化合物半導体の
品質が安定する。また、気相成長装置の設計が制限を受
けず、設計の自由度が向上する。
【0021】
【実施例】以下、本発明を詳細に説明するため実施例お
よび比較例を挙げるが、本発明はこれら実施例によって
何ら限定されるものではない。
【0022】実施例1 充分清浄化したGaAs基板を試料室内のサセプター
(支持台)上に載置し、室内を高真空引きした後、約7
60Torrの高純度水素雰囲気として反応室内に搬送
した。GaAs基板を約500℃に高周波加熱し、その
温度に所定時間保持して熱アニールした。GaAs基板
を降温させて約470℃になった際、ジチル亜鉛(D
Zn)2.5μmol/min、ビス(エチルシクロ
ペンタジエニル)マグネシウム(Cp2Mg:株式会
社トリケミカル研究所製、以下同じ)3μmol/mi
n、ジチルセレン(DSe)12μmol/mi
n、ジチル硫黄(DS)60μmol/minの割
合の混合ガスを反応室内に約1時間供給した。ガスの供
給を止めて基板を室温に冷却させ、ついで試料室に搬送
し、窒素雰囲気として室外に取り出した。なお、混合ガ
スの調製は、液体であるDZn、Cp2Mg、D
Se、DSをそれぞれキャリアガス(水素)でバブリ
ングし、そのガスの混合で行った。Cp2Mgをバブ
リングする際、Cp2Mgを70℃に昇温させた。
【0023】以上の工程により、GaAs基板上に厚さ
0.8μmに成長したZnMgSSe混晶を得た。この
膜のマグネシウム組成は約%であった。
【0024】
【0025】
【0026】比較例1 DMZn2.5μmol/min、ビス(シクロペンタ
ジニエル)マグネシウム(Cp2 Mg)3.5μmol
/min、DMSe12μmol/min、DMS60
μmol/minの割合の混合ガスを供給した他は、実
施例1に準じてGaAs基板上に厚さ0.8μmに成長
したZnMgSSe混晶を得た。この膜のマグネシウム
組成は約3%であった。なお、Cp2 Mgをバブリング
する際、Cp2 Mgを約150℃に昇温させた。
【0027】実施例 充分清浄化したサファイア基板を試料室内のサセプター
(支持台)上に載置し、室内を高真空引きした後、約7
60Torrの高純度水素雰囲気として反応室内に搬送
した。サファイア基板を約1050℃に高周波加熱し、
その温度に所定時間保持して熱アニールした。サファイ
ア基板を降温させて約510℃になった際、GaNバッ
ファ層を成長させた。その後、再びサファイア基板を1
020℃に昇温させて、アンモニア(NH3)4.5リ
ットル/min、トリメチルガリウム(TMG)40μ
mol/min、Cp2Mg0.5μmol/min
の割合の混合ガスを反応室内に約1時間供給した。ガス
の供給を止めて基板を室温に冷却させ、ついで試料室に
搬送し、窒素雰囲気として室外に取り出した。なお、混
合ガスの調製は、液体であるTMG、Cp2Mgをそ
れぞれキャリアガス(水素)でバブリングし、そのガス
の混合で行った。Cp2Mgをバブリングする際、
Cp2Mgを70℃に昇温させた。
【0028】以上の工程により、サファイア基板上に厚
さ3μmに成長したMgドープGaN膜を得た。この膜
は、成長後にキャリアを活性化するための後処理を行っ
た結果、p型の導電特性を示し、そのキャリア濃度は約
0.7×1018/cm3であった。
【0029】
【0030】
【0031】比較例2 NH3 4.5リットル/min、TMG40μmol/
min、Cp2 Mg3.6μmol/minの割合の混
合ガスを供給した以外は、実施例4に準じてサファイア
基板上に厚さ3μmに成長したMgドープGaN膜を得
た。この膜は、成長後にキャリアを活性化するための後
処理を行った結果、p型の導電特性を示し、そのキャリ
ア濃度は約5×1018/cm3 であった。なお、Cp2
Mgをバブリングする際、Cp2 Mgを約150℃に昇
温させた。
【0032】
【発明の効果】本発明の気相成長用マグネシウム原料
は、室温で液体であるので、従来のマグネシウム原料よ
りも蒸気圧が高い。したがって、他のII-VI 族原料(例
えばDEZn、DESe、DESなど)またはIII-V族
原料(例えばTMG、トリメチルアルミニウム、トリメ
チルインジウムなど)と同様に室温付近の温度で蒸気圧
を制御できる。
【0033】また、本発明の気相成長法は、本発明の気
相成長用マグネシウム原料を用いるので、以下の効果を
奏する。
【0034】 従来のマグネシウム原料の場合よりも
低温(5〜100℃)の加熱により、成長に必要な蒸気
圧を得ることができる。
【0035】 原料容器から反応管までのラインを高
温に保持する必要がない。
【0036】 原料容器から基板までの距離を短くす
る必要がなく、気相成長装置の設計が制限を受けず、設
計の自由度が向上する。
【0037】 コールドウォールの反応管の場合、反
応管の上流に原料が析出せず、成長に悪影響を与えな
い。
【0038】 キャリアガス中に固体粉末が混入せ
ず、成長に悪影響を与えない。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−188821(JP,A) 特開 平2−221192(JP,A) 特開 平7−58043(JP,A) 特開 平2−257678(JP,A) 特開 平2−257679(JP,A) 特開 平2−67230(JP,A) 特開 昭61−104079(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 21/205 C30B 29/26 H01L 21/31 H01L 21/365

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ビス(エチルシクロペンタジエニル)マ
    グネシウムを主成分とする気相成長用マグネシウム原
    料。
  2. 【請求項2】 マグネシウムを含むII−VI族化合物
    半導体を気相成長するための請求項1記載のマグネシウ
    ム原料。
  3. 【請求項3】 マグネシウムをp型ドーパントとして含
    むIII−V族化合物半導体を気相成長するための請求
    項1記載のマグネシウム原料。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載のマグネ
    シウム原料をキャリアガスにより気体状態にし、気体状
    態の他の元素を含む有機金属原料とともに、加熱された
    基板上に化合物半導体を成長させることを特徴とする気
    相成長法。
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