JP3285091B2 - 有機リン系組成物およびポリエステル組成物 - Google Patents

有機リン系組成物およびポリエステル組成物

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JP3285091B2 JP2000045469A JP2000045469A JP3285091B2 JP 3285091 B2 JP3285091 B2 JP 3285091B2 JP 2000045469 A JP2000045469 A JP 2000045469A JP 2000045469 A JP2000045469 A JP 2000045469A JP 3285091 B2 JP3285091 B2 JP 3285091B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般式(1):
【化4】 (式中、R1 及びR2 は有機基又はハロゲン原子を示
し、m及びnは0〜4の整数を示し、mまたはnが2〜
4の整数の場合にR1 及びR2 はそれぞれ同一又は異な
っていてもよい。)で表される有機リン系化合物および
所定量の二価金属化合物を含有してなる有機リン系組成
物に関する。
【0002】また本発明は、前記有機リン系組成物中の
前記一般式(1)で示される有機リン系化合物を、一般
式(2):
【化5】 (式中、R1 、R2 、m、nは前記と同じ。また、Aは
1 及びR2 と同一又は異なる有機基を示す。)で表さ
れる有機リン系化合物に誘導した所定量の二価金属化合
物を含有してなる有機リン系組成物に関する。
【0003】かかる一般式(1)または一般式(2)で
示される有機リン系化合物を含有してなる有機リン系組
成物は、たとえば、高分子化合物原料、潤滑油、有機化
合物の酸化防止剤、難燃剤、可塑剤、殺虫剤、着色防止
剤、重合開始剤などの各種の用途に使用される。特に、
一般式(2)中の有機基(A)がエステル形成性官能基
(B)を有するものは、ポリエステルの共重合成分とし
て有用であり、難燃性のポリエステルを製造しうる。
【0004】さらに本発明は、一般式(2)中の有機基
(A)がエステル形成性官能基(B)を有する有機リン
系化合物に係わるリン原子を所定量含有するポリエステ
ルに対し、二価金属化合物を所定量含有してなるポリエ
ステル組成物およびその製造方法に関する。
【0005】
【従来の技術】従来より、前記一般式(1)で表され
る、6−オキソ−(6H)−ジベンゾ−(c,e)
(1,2 )−オキサホスホリンに代表される有機リン系
化合物(以下、当該化合物をDOPともいう。)は、特
公昭47−1643号公報、特公昭49−45397号
公報、特公昭50−1799号公報、また最近では、特
開平10−1490号公報、特開平7−145185号
公報、特開平8−99983号公報、特表平10−51
0545号公報などに記載の製造方法により記載されて
いる。
【0006】すなわち、DOPは、一般式(4):
【化6】 (式中、R1 、R2 、m、nは前記と同じ。)で表され
るオルソフェニルフェノール系化合物(以下、当該化合
物をOPPともいう)に三ハロゲン化リン(PX 3 :X
はハロゲン原子を示す)等のリン化合物を反応させ、さ
らに塩化亜鉛等のフリーデル・クラフツ型触媒の存在下
に加熱縮合させて、一般式(5):
【化7】 (式中、R1 、R2 、m、nは前記と同じ。Xはハロゲ
ン原子を示す。)で表される化合物(以下、当該化合物
をDOP−Xともいう。)を製造し、次いでDOP−X
を加熱下に水により加水分解する方法により製造してい
る。
【0007】しかし、かかる方法においては、DOP−
Xを製造する際に用いるフリーデル・クラフツ型触媒で
ある塩化亜鉛等の亜鉛化合物が、得られるDOP中に残
存する。当該亜鉛化合物等の二価金属化合物は、DOP
を他の有機化合物と反応させる際にDOPとコンプレッ
クスを形成して、不溶物を形成するため、二価金属含有
量の少ないDOPが望まれている。
【0008】また、DOPから誘導された化合物を、難
燃剤成分として、ポリエステルの共重合成分に用いる場
合には、ポリエステルの重合触媒として用いる三酸化ア
ンチモン等のアンチモン系化合物がDOPによって還元
される結果、得られるポリエステルが黒味を帯びるとい
った問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、DOPを有
機化合物と反応させた際にコンプレックスを形成せず、
しかもDOPから誘導された化合物をポリエステルの共
重合成分に用いた場合にも、得られるポリエステルの色
調を良好に維持しうるDOPを含有する組成物、さらに
は当該DOP誘導体組成物を用いたポリエステルおよび
その製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記問題
を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリエステルの共
重合成分に用いるDOP誘導化合物中に、二価金属化合
物が存在する場合には、アンチモン化合物の還元が抑制
されるとの知見を得、かかる知見からDOP中にコンプ
レックスを形成しない程度に二価金属化合物を含有させ
ることにより、前記目的を達成しうることを見出し、本
発明を完成するに到った。
【0011】すなわち、本発明は、一般式(1):
【化8】 (式中、R1 及びR2 は有機基又はハロゲン原子を示
し、m及びnは0〜4の整数を示し、mまたはnが2〜
4の整数の場合にR1 及びR2 はそれぞれ同一又は異な
っていてもよい。)で表される有機リン系化合物を主成
分として含有してなる有機リン系組成物であって、当該
有機リン系化合物以外の化合物として、当該有機リン系
化合物に対し、二価金属量として、30ppm<二価金
属量≦2300ppmの範囲の二価金属化合物を含有し
てなる有機リン系組成物、に関する。
【0012】このようにDOPに対する二価金属化合物
の量を調整することにより、前記目的が達成される。す
なわち、DOPに対する二価金属量を、30ppmを超
えて含有させることにより、DOPの誘導化合物を用い
たポリエステルの色調を良好に維持する。これらの観点
からDOPに対する二価金属量は50ppm以上とする
のが好ましい。なお、二価金属化合物が存在する場合
に、アンチモン化合物の還元が抑制されるのは、アンチ
モン化合物よりも還元性の高い二価金属化合物が優先的
に還元される結果であると推測される。一方、DOPに
対する二価金属量が多くなると、有機化合物と反応させ
た際にコンプレックスを形成して不溶解物を生成し易
く、たとえば、ポリエステルを紡糸する場合にはノズル
の背圧上昇の原因となり操業性を悪くする傾向があるた
め、DOPに対する二価金属量は500ppm以下、さ
らには300ppm以下とするのが好ましい。より好ま
しくは200ppm以下である。
【0013】さらには、二価金属含有量を上記所定範囲
に調整するのは、DOPの合成後に触媒残渣を完全に除
去精製するよりも容易であり、DOP合成後の精製工程
を簡略化するうえでも有利である。
【0014】前記二価金属としては、各種のものを使用
できるが、亜鉛が前記目的を達成するうえで、さらに
は、DOPの製造する触媒として賞用されており、前記
有機リン系組成物を調製する点からも好ましい。
【0015】また、前記DOPを主成分とする有機リン
系組成物中には、通常、製造で生じるハロゲン化合物が
残存するが、当該ハロゲン化合物の含有量は、DOPに
対し、ハロゲン原子量として、250ppm以下とする
のが好ましい。DOPに対する、ハロゲン原子量は少な
い程よく、150ppm以下とするのがより好ましい。
ハロゲン原子量を低減させることにより、たとえば、D
OPの誘導化合物を用いてポリエステルを製造する際
に、エチレングリコール等のジオール成分がジエチレン
グリコール等に二量化するなどの反応不純物の生成を抑
制でき、ポリエステルの融点低下を抑止して耐熱性を向
上できる。
【0016】また、前記DOPを主成分とする有機リン
系組成物に、DOPの原料であるOPP等のDOP以外
の有機化合物を実質的に除去したものは、高度に白色で
あり、減圧蒸留などの溶融精製工程を特に必要とせず、
精製工程の簡略化が可能である。また、かかる有機リン
系組成物は、通常、粉末状を呈し、粉末状物は取り扱い
が容易であり、有機溶媒への溶解性も良好であり生産性
に優れる。なお、DOP以外の有機化合物を実質的に含
有していないとは、有機リン系組成物が粉末状を呈する
程度に、有機リン系組成物中のDOPの純度が高いこと
をいい、たとえば、有機リン系組成物におけるDOP以
外の有機化合物の含有量が10000ppm以下の場合
をいう。
【0017】また本発明は、前記DOPを主成分とする
有機リン系組成物中の有機リン系化合物から誘導され
る、一般式(2):
【化9】 (式中、R1 及びR2 は有機基又はハロゲン原子を示
し、m及びnは0〜4の整数を示し、mまたはnが2〜
4の整数の場合にR1 及びR2 はそれぞれ同一又は異な
っていてもよい。また、AはR1 及びR2 と同一又は異
なる有機基を示す。)で表される有機リン系化合物およ
び前記所定量の二価金属化合物を含有してなる有機リン
系組成物、に関する。
【0018】かかる有機リン系組成物は、DOPに各種
の用途に応じて適宜に有機基(A)を導入したDOP誘
導体であり、前記DOPを主成分とする有機リン系組成
物と同様に所定量の二価金属化合物を含有してなるもの
である。かかる有機基(A)としては、エステル形成性
官能基(B)を含有する有機基がその代表としてあげら
れ、当該有機基を有する一般式(2)で表されるDOP
誘導体化合物は、ポリエステルの共重合成分として用い
られ、ポリエステルに難燃性を付与する。
【0019】さらに、本発明は、ジカルボン酸成分およ
びジオール成分を含むエステル形成成分から得られるポ
リエステルを主成分とするポリエステル組成物であっ
て、当該ポリエステルが、エステル形成成分として、一
般式(3):
【化10】 (式中、R1 及びR2 は有機基又はハロゲン原子を示
し、m及びnは0〜4の整数を示し、mまたはnが2〜
4の整数の場合にR1 及びR2 はそれぞれ同一又は異な
っていてもよい。また、Bはエステル形成性官能基を示
す。)で表される有機リン系化合物を含み、かつ当該ポ
リエステルに対して、二価金属化合物を、二価金属量と
して1〜150ppm含有してなるポリエステル組成
物、に関する。
【0020】前記一般式(3)で表される有機リン系化
合物をエステル形成成分とするポリエステルは良好な耐
熱性、難燃性を示す。また、ポリエステルに対して、二
価金属化合物を、二価金属量として1〜150ppm含
有させたものは、ポリエステルの色調が改善されてお
り、安定性も良好である。
【0021】ポリエステルに対する、前記二価金属量が
1ppm未満ではポリエステルの重合触媒としてアンチ
モン系化合物が用いられた場合に、アンチモン系化合物
の還元が十分に抑制されず、ポリエステルの色調が十分
に改善されない。一方、前記二価金属量が150ppm
を超えるとポリエステルの熱安定性が悪化するほか、ポ
リエステルの染色時に二価金属が染料と錯体を形成し、
カメレオン変色と呼ばれる変色を引き起こし好ましくな
いことから、前記二価金属量は50ppm以下、さらに
は30ppm以下とするのが好ましい。
【0022】前記二価金属としては、亜鉛がポリエステ
ルの色調が改善に優れており好ましい。
【0023】またポリエステルのエステル形成成分であ
る一般式(3)で表される有機リン系化合物は、リン原
子含有量として500〜50000ppm含むのが耐熱
性、難燃性の点から好ましい。前記リン原子含有量が多
いほど難燃性に優れるため、前記リン原子含有量は20
00ppm以上、さらには3000ppm以上とするの
が好ましい。一方、前記リン原子含有量が多くなると、
ポリエステルの物理的性質が低下したり、ポリエステル
を製造する際の操業性が低下する傾向があるため、前記
リン原子含有量は15000ppm以下、さらには65
00ppm以下とするのがより好ましい。
【0024】本発明のポリエステル組成物は、各種方法
で製造できるが、ジカルボン酸成分およびジオール成分
を含むエステル形成成分からポリエステルを製造する方
法にあたり、前記ジカルボン酸成分および/またはジオ
ール成分として、前記所定量の二価金属を含む一般式
(3)で表される化合物(一般式(2)で表される化合
物(DOP誘導体化合物)の有機基(A)がエステル形
成性官能基(B)のもの)を用いるのが好ましい。特
に、ポリエステルの重合触媒として、アンチモン系化合
物を用いた場合には、有機リン系組成物中の所定量の二
価金属化合物により、アンチモン系化合物の還元が抑制
され、好ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明の一般式(1):
【化11】 (式中、R1 及びR2 は有機基又はハロゲン原子を示
し、m及びnは0〜4の整数を示し、mまたはnが2〜
4の整数の場合にR1 及びR2 はそれぞれ同一又は異な
っていてもよい。)で表される有機リン系化合物(DO
P)と前記所定量の二価金属化合物を含有してなる有機
リン系組成物は、有機リン系組成物中に、DOPに対し
二価金属化合物が前記所定量含まれているものであれ
ば、その調製法は特に制限されず、DOPを製造した結
果、DOPの不純物として前記所定量の二価金属化合物
を含むものであっても、DOPに二価金属化合物が前記
所定量になるように別途二価金属化合物を配合すること
により調製したものであってもよい。
【0026】二価金属化合物としては、各種の亜鉛化合
物、マンガン化合物、マグネシウム化合物、カルシウム
化合物、バリウム化合物、銅化合物、鉄化合物、コバル
ト化合物などがあげられる。
【0027】なお、前記一般式(1)中のR1 、R2
有機基としては、たとえば、直鎖もしくは分岐鎖の炭素
数1〜4程度のアルキル基、フェニル基等のアリール
基、ベンジル基等のアラルキル基、シクロアルキル基等
の炭化水素基、当該アルキル基、アリール基、アラルキ
ル基等の炭化水素基に対応するアルコキシル基、アリー
ルオキシ基等、カルボキシル基またはそのエステル基等
の各種のものを例示でき、ハロゲン原子としては塩素原
子、臭素原子等を例示できる。
【0028】DOPの調製は、たとえば、一般式
(4):
【化12】 (式中、R1 、R2 、n、mは前記と同じ。)で表され
るオルソフェニルフェノール誘導体(OPP)に三ハロ
ゲン化リン(PX3 :Xは塩素原子または臭素原子等の
ハロゲン原子を示す)等のリン化合物を反応させ、さら
にフリーデル・クラフツ型触媒の存在下に加熱縮合させ
て、一般式(5):
【化13】 (式中、R1 、R2 、n、mは前記と同じ。Xはハロゲ
ン原子を示す。)で表される化合物(DOP−X)を製
造する。
【0029】前記OPPと三ハロゲン化リンのモル比
(OPP:三ハロゲン化リン)は、通常1:1〜2程
度、好ましくは1:1.1〜1.5程度である。
【0030】三ハロゲン化リンとしては三塩化リン、三
臭化リンがあげられるが、通常、三ハロゲン化リンとし
ては、三塩化リンが用いられる。なお、本発明の有機リ
ン系組成物に残存するハロゲン化合物の殆どは、三ハロ
ゲン化リンに由来するため、三ハロゲン化リンとして三
塩化リンを用いた場合のハロゲン化合物含有量は、塩素
化合物含有量である。
【0031】フリーデル・クラフツ型触媒としては、通
常、塩化亜鉛を用いるのが好ましいが、塩化亜鉛以外に
も塩化第一銅、塩化第二銅、塩化スズ、塩化水銀、塩化
鉄などの金属ハロゲン化物、そのほかに、金属亜鉛、金
属アルミニュウム、金属銅またはこれらの金属酸化物で
反応系内においてハロゲン化物に変化しうるものを用い
ることができる。
【0032】前記触媒の使用量は、本発明の有機リン系
組成物が少なくとも前記所定量の二価金属化合物を含む
ように用いるが、通常は、OPP100重量部に対し
0.05〜3部程度、好ましくは0.1〜1部程度であ
る。
【0033】反応温度は、通常、30〜250℃程度、
好ましくは50〜230℃程度で、あり、反応時間は反
応温度、触媒使用量等他の反応条件によるが、通常3〜
35時間程度、好ましくは5〜15時間である。反応の
終了は、反応進行に伴なって発生するハロゲン化水素ガ
スがなくなった時点とする。
【0034】次いで、DOP−Xを加熱下に水により加
水分解することによりDOPを製造する。加水分解の反
応温度は、50〜250℃程度、反応時間は1〜10時
間程度である。
【0035】水の使用割合は、DOP−Xの等モル相当
量以上であれば特に制限はないが、DOP−Xと水を等
モル相当比で反応させた場合には、ハロゲン化水素ガス
を含む廃液(たとえば、塩酸廃液等)の生成がなく、し
かもハロゲン化水素ガスを定量的に分離でき、好まし
い。DOP−Xと水を等モル比で反応させる方法では、
DOP−Xと水をモル比で1:1の割合で反応させ、反
応により生成するハロゲン化水素ガスをその生成速度に
合わせて除去しながら反応させる。加水分解反応の終了
は、反応進行に伴なって発生するハロゲン化水素ガスが
なくなった時点とする。
【0036】一方、加水分解に過剰量の水を用いた場合
には、DOPはさらに加水分解されるため、DOPの加
水分解物を単離した後に、DOPの加水分解物を加熱脱
水環化してDOPにする。加熱脱水環化は、通常10〜
15kPa程度の減圧下、110〜180℃程度で行
う。
【0037】また、前記加水分解は、有機溶媒の存在下
に行うこともできる。有機溶媒としては、トルエン、o
−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベン
ゼン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等の芳香族系
溶媒等があげられる。有機溶媒の使用量は原料OPP1
00重量部に対し1000重量部程度以下、好ましくは
500重量部以下である。
【0038】このようにして、通常、DOPが製造され
るが、本発明の有機リン系組成物は、かかかるDOPの
製造工程において、得られるDOP中に前記所定量の二
価金属化合物が含まれるように、またハロゲン化合物、
DOP以外の有機化合物の含有率が少なくなるように調
製される。
【0039】また、有機リン系組成物の形状は、塊状、
フロック状、フレーク状、粉末状のいずれでもよいが、
粉末状とするのが好ましい。有機リン系組成物を粉末状
にする手段は、粉砕等の各種の手段により適宜に行うこ
とができるが、以下に示す方法により、有機リン系組成
物中の不純物を除去することにより、有機リン系組成物
を粉末状物で収得しうる。
【0040】たとえば、前記DOPの製造方法におい
て、(a)DOP−Xを製造した後に精製する方法、
(b)DOP−Xを加水分解した後に精製する方法の1
種または2種の方法により、前記本発明の有機リン系組
成物を調製する。
【0041】(a)DOP−Xを製造した後に精製する
方法では、触媒残渣およびハロゲン化合物を除去可能で
あり、得られる有機リン系組成物中の二価金属化合物の
含有量を調整できる。またOPPに含まれる不純物も除
去できる。
【0042】(a)の精製方法としては、具体的には得
られたDOP−Xを、(a1 )有機溶媒で洗浄する方
法、(a2 )減圧蒸留する方法、(a3 )再結晶する方
法等があげられる。(a1 )有機溶媒で洗浄する方法に
用いる有機溶媒としては、トルエン、o−キシレン、m
−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クロルベ
ンゼン、ジクロルベンゼン等の芳香族系溶媒等があげら
れる。これらのなかでも、トルエンがOPP中の不純物
をよく溶解し好ましい。有機溶媒の使用量は、通常、D
OP−Xに対して0.05重量%以上であり、少量の有
機溶媒によりDOP−Xを洗浄できる。有機溶媒の使用
量の上限に制限はないが、通常、DOP−Xに対して5
0重量%以下とするのが適当である。洗浄精製はDOP
−Xに有機溶媒を所定量添加して攪拌溶解してした後
に、上澄みを除去することにより行う。(a2 )減圧蒸
留する方法は、133Pa程度の減圧下、220〜25
0℃程度で行う。(a3 )再結晶する方法は、アルコー
ル等で再結晶することにより行う。これら精製(a)の
なかでも、(a1 )の操作が簡易であり好ましい。
【0043】(b)DOPを加水分解した後に精製する
方法では、触媒残渣、ハロゲン化合物、OPPに含まれ
る不純物を除去して、DOPの純度を向上させる。こう
して得られたDOPは、高純度白色で微粉末状を呈す
る。
【0044】(b)の精製は、DOP−Xの加水分解に
過剰量の水を用いた場合には、DOPの加水分解物を単
離した後に、これを加熱脱水環化するため、DOPの加
水分解物に精製を(b1)施す。精製したDOPの加水
分解物は白色結晶になる。
【0045】また、DOPの加水分解物の精製(b1)
は、加水分解時の有機溶剤の存在の有無により、それに
応じた精製を適宜に行う。たとえば、加水分解時に有機
溶剤が存在しない場合(b1−1)には、DOPの加水
分解物を蒸留する方法、再結晶する方法、アルカリ金属
水酸化物を添加して加熱した後、脱色処理して、さらに
酸析する方法等によりDOPの加水分解物の精製を行
う。蒸留する方法、再結晶する方法は、精製(a)と同
様の方法を採用できる。アルカリ金属水酸化物として
は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシ
ウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等があ
げられ、脱色処理には活性炭、活性白土等が用いられ、
酸析には硫酸、塩酸等が用いられる。
【0046】加水分解時に有機溶剤が存在する場合(b
1−2 )には、水層を分離した後、必要に応じて加圧加
熱下に油層を水で数回洗浄し、さらに油層から残留水分
を除去した後、脱色処理することにより精製を行う。さ
らに必要により、水洗浄、有機溶媒洗浄、ろ過を行い、
DOPの加水分解物の精製を行う。なお、脱色処理は上
記同様の方法を採用できる。
【0047】一方、DOP−Xと等モル相当量の水を用
いて加水分解反応を行った場合には、反応生成物として
DOPが得られるため、反応終了後、得られたDOPに
精製(b2)を施す。DOPの精製(b2)は、DOP
に有機溶媒を加えて冷却した後、生成物をろ過し、さら
に有機溶媒で洗浄する方法、蒸留する方法、再結晶する
方法などにより行うことができる(b2−1)。また、
DOP−Xと等モル相当量の水を用いた加水分解反応に
より得られたDOPは、前記DOPの精製(b2−1)
を施すことができる他に、得られたDOPに、さらに温
水を添加して加水分解し、DOPを加水分解物に変換し
て(b1:b1−1、b1−2 のいずれも)と同様の精
製を施すことができる(b2−2)。この場合には、D
OPの加水分解物は、精製(b2−2)の後、脱水環化
する。なお、DOPの精製(b2)は、DOPに精製
(b1)を施した後に、さらに施すこともできる。
【0048】これら精製(b)のなかでも、得られたD
OPを、さらに加水分解した後、DOPの加水分解物に
精製を施してから脱水環化する方法が好ましい(b2−
2)。(b2−2)における精製手段としては(b1−
1)と同様の操作が好ましい。特に、かかる精製を、D
OP−Xと等モル相当量の水を用いて、加水分解反応を
行うと塩酸廃水がなく、また効果的にDOPの加水分解
精製を行うことができDOPの純度を向上できる。
【0049】上記方法の他、(c)原料として高純度の
OPPを用いる方法によれば、DOP以外の有機化合物
の含有率を低減できる。高純度のOPPの調製は、通
常、純度80%以上のOPPを、有機溶媒で洗浄するこ
とにより行う。有機溶媒としては、トルエン、o−キシ
レン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、
クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等の芳香族系溶媒等
があげられる。これらのなかでも、トルエンがOPP中
の不純物を最もよく溶解し好ましい。有機溶媒の使用量
は、通常、OPPに対して0.05重量%以上であり、
少量の有機溶媒によりOPPを洗浄できる。有機溶媒の
使用量の上限に制限はないが、通常、OPPに対して5
0重量%以下とするのが適当である。洗浄精製はOPP
に有機溶媒を所定量添加して攪拌溶解してした後に、上
澄みを除去することにより行う。
【0050】なお、OPPの合成方法は、特開昭50−
18444号公報、特開昭55−33417号公報、特
開昭56−20533号公報、特開昭62−4442号
公報、特開平5−201904号公報などに記載されて
いるが、これらの方法では、OPPの出発原料であるジ
ベンゾフラン、o−シクロヘキセニルシクロヘキサン、
2−シクロヘキシルフェノールなどが得られるOPP中
に不純物として残存している。
【0051】DOPを主成分としてなる本発明の有機リ
ン系組成物は、上述のような製法により調製できるが、
DOPに、別途、二価金属化合物を配合して調製するこ
ともできる。別途配合する二価金属化合物の具体例とし
ては、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸マグネシウム、酢
酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸銅、酢酸鉄、酢酸コ
バルト等の酢酸塩、さらには塩化物、水酸化物等があげ
られる。
【0052】このようにして得られる所定量の二価金属
化合物を含有してなる本発明の有機リン系組成物中のD
OPは、一般式(2):
【化14】 (式中、R1 及びR2 は有機基又はハロゲン原子を示
し、m及びnは0〜4の整数を示し、mまたはnが2〜
4の整数の場合にR1 及びR2 はそれぞれ同一又は異な
っていてもよい。また、AはR1 及びR2 と同一又は異
なる有機基を示す。)で表される有機リン系化合物に誘
導される。得られた一般式(2)で表される有機リン系
化合物も前記所定量の二価金属化合物を含有している。
【0053】DOPの一般式(2)で表される有機リン
系化合物への誘導は、たとえば、DOPを、α,βー不
飽和カルボン酸系化合物にマイケル付加反応させる方
法、アルデヒド化合物、カルボニル化合物等に付加させ
る方法、オキシラン化合物に付加する方法、DOPとフ
リーデル・クラフツ反応しうるフェノール系化合物等の
芳香族系化合物を反応させる方法、DOPと脱水縮合し
うる水酸基等を有する化合物を反応させる方法により合
成できる。
【0054】なお、一般式(2)において有機基(A)
は、特に制限されず、また有機基(A)は誘導体に直接
導入されるものに限らず、有機基(A)が官能基を有す
る場合には、DOPに官能基を有する有機基(A)を導
入する際にまたは導入した後に、当該官能基にさらに有
機化合物等を反応させたものを含む。
【0055】かかる有機基(A)としては、各種のもの
を例示できるが、有機基(A)のなかで、水酸基、カル
ボキシル基、カルボン酸エステル基等のエステル形成性
官能基(B)を含有する有機基を有する一般式(3)で
表される有機リン系化合物はポリエステル形成成分とし
て使用され、ポリエステルに耐熱性、難燃性を付与す
る。かかるエステル形成性官能基(B)を有する一般式
(3)で表される有機リン系化合物としては、具体的に
は、下記化学式(a)〜(z)、(α)〜(δ)で表さ
れるものを例示できる。
【0056】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】 前記一般式(3)で表される有機リン系化合物をポリエ
ステルのエステル形成成分として所定量含み、かつ当該
ポリエステルに対して、二価金属化合物を所定量含有し
てなる本発明のポリエステル組成物は、たとえば、ジカ
ルボン酸成分およびジオール成分を含有してなるエステ
ル形成成分からポリエステルを製造する方法において、
エステル形成成分として、前記一般式(3)で表される
有機リン系化合物および所定量の二価金属化合物を含有
する本発明の有機リン系組成物を用いることにより製造
できる。一般式(3)で表される有機リン系化合物の使
用量は、ポリエステル中のリン原子の含有量が500〜
50000ppmとなるような範囲で用いるのが好まし
い。かかるポリエステルは、たとえば、特公昭55−4
1610号公報に記載されている。
【0057】なお、ジカルボン酸成分としてはテレフタ
ル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン
酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ジフ
ェニルジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)
エーテル、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、
1,2−ビス(4−カルボキシフェノキシ)エタン、5
−ナトリウムスルホイソフタル酸、2, 5−ジブロムテ
レフタル酸、テトラブロムテレフタル酸等の芳香族ジカ
ルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の
脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸等の脂
環族ジカルボン酸およびその低級アルコールエステル等
があげられ、ジオール成分としては、エチレングリコー
ル、1,2−プロピレングリコール、トリメチレングリ
コール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリ
コール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シ
クロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、
ビスフェノールA、ビスフェノールS等があげられる。
また重合方法、重合触媒としては、従来よりポリエステ
ルの製造に使用されているものを特に制限なく使用で
き、また安定剤などの各種添加剤、つや消し剤などを添
加するのも任意である。
【0058】かかるポリエステルの製造において、前記
エステル形成性官能基の有機基を有する一般式(3)で
表される有機リン系化合物および所定量の二価金属化合
物を含有する本発明の有機リン系組成物は、エステル交
換法、直接エステル化法のいずれの方法を採用する場合
にも適用でき、いずれの方法を採用する場合にもアンチ
モン系化合物を重合触媒として重合反応をさせる際に存
在させるのが好ましい。有機リン系組成物中の所定量の
二価金属化合物により、アンチモン触媒の還元が抑制さ
れる。
【0059】アンチモン触媒としては、三酸化アンチモ
ン、五酸化アンチモン、アンチモングリコレート、アン
チモングリコラート、酢酸アンチモン、アンチモンフェ
ノラートなどアンチモン化合物があげられる。
【0060】なお、本発明のポリエステル組成物の製造
には、前記のように、一般式(3)で表される有機リン
系化合物および所定量の二価金属化合物を含有する有機
リン系組成物を用いることができる他に、一般式(3)
で表される有機リン系化合物を用いてポリエステルを製
造する際における、エステル化もしくはエステル交換の
前または後、または重合前等に、二価金属化合物を添加
することにより本発明のポリエステル組成物を製造する
こともできる。
【0061】
【実施例】次に本発明の実施例について説明するが、本
発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。な
お、各例中「部」「%」はいずれも重量基準である。
【0062】実施例1−1(DOP組成物の合成) 純度95%の粗オルソフェニルフェノール(OPP)1
000部にトルエン4.9部を添加して室温で約1時間
攪拌し、上澄み液を除去した。次いで、オルソフェニル
フェノール1000部と三塩化リン1009部を、モル
比1:1.25の割合で反応釜に添加し、室温で1時間
混合後、5時間かけて150℃まで昇温させると塩化水
素が発生した。これに塩化亜鉛5.9部を添加し、20
0℃で4時間反応させて、6−クロロ−(6H)−ジベ
ンゾ−(c,e)(1,2 )−オキサホスホリン(DO
P−X)を得た。
【0063】得られたDOP−Xにトルエン500部を
添加して室温で約1時間攪拌し、上澄み液を除去して、
DOP−Xの精製を行った。
【0064】さらに、これにオルソフェニルフェノール
とのモル比で1:1となるように水77部を添加し、ま
たトルエン1000部を添加して加水分解を還流状態下
に行うとともに、発生する塩化水素ガスを除去した。
【0065】次いで50〜60℃の温水1000部を添
加し、攪拌した後、水層を分離し、さらに水500部で
水洗浄を3回行った。その後、油層中の水分を共沸脱水
した後、活性炭処理を行い、次いで、これに水2000
部を添加し溶解して冷却した後に、固形物を取り出し、
さらに水1000部で洗浄した。これを130℃で、1
3.3kPaの減圧下で、脱水して粉末状の6−オキソ
−(6H)−ジベンゾ−(c,e)(1,2 )−オキサ
ホスホリン(DOP)を得た。なお、ろ液からもさらに
DOPを回収できた。
【0066】DOP組成物が含む亜鉛金属含有量、塩素
原子含有量は、原子吸光分析およびイオンクロマト測定
法により測定した。不純物の有機化合物の含有量は、N
MR分析、IR分析により定量した。結果を表1に示
す。
【0067】実施例2−1 実施例1−1において、DOP−Xを製造した後にトル
エンによる処理を施すことなく加水分解反応まで実施例
1−1と同様の操作を行った。その後、生成物を冷却し
て白色粒状物を分離した。次いで、8%水酸化ナトリウ
ム水溶液8000部を加え、しかもこの液を中性になる
ようにした。これを活性炭でろ過し、ろ液にさらに20
%硫酸水溶液を徐々に添加して白色結晶を得た。これを
130℃で、13.3kPaの減圧下で、脱水して粉末
状のDOP組成物を得た。DOP組成物が含む亜鉛金属
含有量、塩素原子含有量、不純物の有機化合物の含有量
を表1に示す。
【0068】実施例3−1 実施例1−1において、DOP−Xを製造した後にトル
エンによる処理を施さないこと以外は実施例1−1と同
様にして粉末状のDOP組成物を得た。DOP組成物が
含む亜鉛金属含有量、塩素原子含有量、不純物の有機化
合物の含有量を表1に示す。
【0069】実施例4−1 実施例1−1において、DOP−Xを製造した後にトル
エンによる処理を施すことなく加水分解反応まで実施例
1−1と同様の操作を行い、しかもその後の水洗浄の回
数を2回に変更した以外は実施例1−1と同様にして粉
末状のDOP組成物を得た。DOP組成物が含む亜鉛金
属含有量、塩素原子含有量、不純物の有機化合物の含有
量を表1に示す。
【0070】実施例5−1 実施例1−1において、OPPにトルエンによる処理を
施すことなく、しかもDOP−Xを製造した後にトルエ
ンによる処理を施さないこと以外は実施例1−1と同様
の加水分解反応を行った。その後、生成物を冷却して白
色粒状物を分離した。次いで、8%水酸化ナトリウム水
溶液8000部を加え、しかもこの液を中性になるよう
にした。これを活性炭でろ過し、ろ液にさらに20%硫
酸水溶液を徐々に添加して白色結晶を得た。これを13
0℃で、13.3kPaの減圧下で、脱水して塊状のD
OP組成物を得た。DOP組成物が含む亜鉛金属含有
量、塩素原子含有量、不純物の有機化合物の含有量を表
1に示す。
【0071】実施例6−1 実施例1−1において、OPPにトルエンによる処理を
施さないこと以外は実施例1−1と同様の加水分解反応
を行った。その後、生成物を冷却して白色粒状物を分離
した。次いで、8%水酸化ナトリウム水溶液8000部
を加え、しかもこの液を中性になるようにした。これを
活性炭でろ過し、ろ液にさらに20%硫酸水溶液を徐々
に添加して白色結晶を得た。これを130℃で、13.
3kPaの減圧下で、脱水して粉末状のDOP組成物を
得た。DOP組成物が含む亜鉛金属含有量、塩素原子含
有量、不純物の有機化合物の含有量を表1に示す。
【0072】比較例1−1 実施例1−1において、DOP−Xを製造した後にトル
エンによる精製を行わなかったこと以外は実施例1−1
と同様の加水分解反応を行った。その後、生成物にトル
エン1000部を添加して冷却した。次いで生成物を冷
却して固形生成物をろ過して取り出した後、トルエン3
00部で洗浄し、粉末状のDOP組成物を得た。DOP
組成物が含む亜鉛金属含有量、塩素原子含有量、不純物
の有機化合物の含有量を表1に示す。
【0073】比較例2−1 実施例1−1において、DOP−Xの製造までは同様の
操作を行った。次いで、水8000部を加え、過剰の水
の存在下に加水分解を還流状態下に行った。その後、生
成物を冷却して、白色粒状物をろ過した。次いで、8%
水酸化ナトリウム水溶液8000部を加え、しかもこの
液を中性になるようにした。これを活性炭でろ過し、ろ
液にさらに20%硫酸水溶液を徐々に添加して白色結晶
を得た。これを130℃で、13.3kPaの減圧下
で、脱水して塊状のDOP組成物を得た。DOP組成物
が含む亜鉛金属含有量、塩素原子含有量、不純物の有機
化合物の含有量を表1に示す。
【0074】実施例1−2(DOP誘導体組成物の合
成) 実施例1−1で得られたDOP216部、イタコン酸1
30部およびエチレングリコール346部、窒素雰囲気
下水を留出させながら160℃で2時間反応させて、化
19中の(x)に相当する化合物を製造した。得られた
当該化合物に不溶物コンプレックスは認められなかっ
た。
【0075】実施例2〜6−2 実施例1−2において、実施例1−1で得られたDOP
の代わりに、実施例2〜6−1で得られたDOPを用い
た以外は実施例1−2と同様にして、化19中の(x)
に相当する化合物を製造した。得られた当該化合物に不
溶物コンプレックスは認められなかった。
【0076】比較例1−2 実施例1−2において、実施例1−1で得られたDOP
の代わりに、比較例1−1で得られたDOPを用いた以
外は実施例1−2と同様にして、化19中の(x)に相
当する化合物を製造した。得られた当該化合物に不溶物
コンプレックスが認められた。
【0077】比較応用例2−1 応用例1−1において、実施例1で得られたDOPの代
わりに、比較例2で得られたDOPを用いた以外は実施
例1と同様にして、化22中の(x)に相当する化合物
を製造した。得られた当該化合物に不溶物コンプレック
スが認められなかった。なお、比較例2−1で得られた
DOPはフレーク状物のため粉砕して用いた。
【0078】実施例1−3(ポリエステルの合成) 攪拌機,蒸留塔および圧力調整器を備えたステンレス製
オートクレーブに、テレフタル酸401部、応用例1−
1で得たDOP誘導体組成物67部(得られるポリエス
テルに対するリンの含有量6000ppm)およびエチ
レングリコール259部を仕込み、さらに14g/リッ
トルの三酸化アンチモンのエチレングリコール溶液16
部およびトリエチルアミンを加えた後、230℃、ゲー
ジ圧0.245MPaで生成する水を除去しながら2時
間エステル化を行った。続いて、1時間の系内の温度を
275℃まで昇温しながら、系の圧力を叙所に減じて1
3.3Paとし、この条件下で2時間共重合反応を行っ
た。得られたポリエステルの固有粘度は0.620であ
り、カラー値のL値は56.4、b値は3.5であっ
た。
【0079】固有粘度:フェノール/1,1,2,2−
テトラクロロエタン混合溶液(重量比(3/2)、30
℃で測定した。
【0080】カラー値:ポリエステルチップをハンター
色差計にて測定した。L値は大きくなるほど白味の強い
ことを示す。b値は高いほど黄味の強いことを示す。
【0081】実施例2〜6−3 実施例1−3において、実施例1−2で得られたDOP
誘導体組成物の代わりに、実施例2〜6−2で得られた
DOP誘導体組成物を用いた以外は実施例1−3と同様
にして、ポリエステルを合成を製造した。得られたポリ
エステルをの固有粘度、L値、b値を表1に示す。
【0082】比較例1〜2−3 実施例1−3において、実施例1−2で得られたDOP
誘導体組成物の代わりに、比較例1〜2−2で得られた
DOP誘導体組成物を用いた以外は実施例1−3と同様
にして、ポリエステルを合成を製造した。得られたポリ
エステルの固有粘度、L値、b値を表1に示す。
【0083】実施例7 実施例1−3において、実施例1−2で得られたDOP
誘導体組成物の代わりに、比較例2−2で得られたDO
P誘導体組成物を用い、さらにエステル化前に、20g
/リットルの酢酸亜鉛のエチレングリコール溶液0. 8
4部(10ppm/ポリエステル)を添加した以外は実
施例1−3と同様にして、ポリエステルを合成を製造し
た。得られたポリエステルの固有粘度、L値、b値を表
1に示す。
【0084】以上の実施例、比較例、応用例および比較
応用例の結果を表1にまとめた。
【0085】
【表1】 表1の結果から、二価金属含有量を所定範囲とすること
により、アンチモン系触媒を用いた場合にもポリエステ
ルの色調を白色に維持することが認められる。また二価
金属含有量が低いため、コンプレックスがなく、しかも
塩素(ハロゲン)原子含有量を低減することでジエチレ
ングリコールの形成の副生を抑えることができることが
認められる。さらには、有機不純物を低減させることで
得られるDOPの形状を粉末にすることができる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平10−1490(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07F 9/6571 C07F 9/6574 C08G 63/00 - 63/91

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(1): 【化1】 (式中、R1 及びR2 は有機基又はハロゲン原子を示
    し、m及びnは0〜4の整数を示し、mまたはnが2〜
    4の整数の場合にR1 及びR2 はそれぞれ同一又は異な
    っていてもよい。)で表される有機リン系化合物を主成
    分として含有してなる有機リン系組成物であって、当該
    有機リン系化合物以外の化合物として、当該有機リン系
    化合物に対し、二価金属量として、30ppm<二価金
    属量≦2300ppmの範囲の二価金属化合物を含有し
    てなる有機リン系組成物。
  2. 【請求項2】 二価金属が亜鉛である請求項1記載の有
    機リン系組成物。
  3. 【請求項3】 ハロゲン化合物の含有量が、前記有機リ
    ン系化合物に対し、ハロゲン原子量として、250pp
    m以下である請求項1または2記載の有機リン系組成
    物。
  4. 【請求項4】 前記有機リン系化合物以外に実質的に有
    機化合物を含有しない請求項1、2または3記載の有機
    リン系組成物。
  5. 【請求項5】 粉末状を呈する請求項1〜4のいずれか
    に記載の有機リン系組成物。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の有機リ
    ン系組成物中の有機リン系化合物を、一般式(2): 【化2】 (式中、R1 及びR2 は有機基又はハロゲン原子を示
    し、m及びnは0〜4の整数を示し、mまたはnが2〜
    4の整数の場合にR1 及びR2 はそれぞれ同一又は異な
    っていてもよい。また、AはR1 及びR2 と同一又は異
    なる有機基を示す。)で表される有機リン系化合物に誘
    導してなる有機リン系組成物。
  7. 【請求項7】 一般式(2)中の有機基(A)が、エス
    テル形成性官能基(B)を含有する有機基である請求項
    6記載の有機リン系組成物。
  8. 【請求項8】 ジカルボン酸成分およびジオール成分を
    含むエステル形成成分から得られるポリエステルを主成
    分とするポリエステル組成物であって、当該ポリエステ
    ルが、エステル形成成分として、一般式(3): 【化3】 (式中、R1 及びR2 は有機基又はハロゲン原子を示
    し、m及びnは0〜4の整数を示し、mまたはnが2〜
    4の整数の場合にR1 及びR2 はそれぞれ同一又は異な
    っていてもよい。また、Bはエステル形成性官能基を示
    す。)で表される有機リン系化合物を含み、かつ当該ポ
    リエステルに対して、二価金属化合物を、二価金属量と
    して1〜150ppm含有してなるポリエステル組成
    物。
  9. 【請求項9】 ポリエステルに対して、二価金属化合物
    を、二価金属量として1〜50ppm含有してなる請求
    項8記載のポリエステル組成物。
  10. 【請求項10】 二価金属が亜鉛である請求項8または
    9記載のポリエステル組成物。
  11. 【請求項11】 ポリエステルのエステル形成成分であ
    る一般式(3)で表される有機リン系化合物を、リン原
    子含有量として500〜50000ppm含む請求項8
    〜10のいずれかに記載のポリエステル組成物。
  12. 【請求項12】 ジカルボン酸成分およびジオール成分
    を含むエステル形成成分からポリエステルを製造する方
    法にあたり、前記ジカルボン酸成分および/またはジオ
    ール成分として、請求項7記載の有機リン系組成物を用
    いる、請求項8〜11のいずれかに記載のポリエステル
    組成物の製造方法。
  13. 【請求項13】 ポリエステルの縮合触媒として、アン
    チモン系化合物を用いる請求項12記載のポリエステル
    組成物の製造方法。
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