JP3276415B2 - セラミックス皮膜の形成方法及び成形装置 - Google Patents

セラミックス皮膜の形成方法及び成形装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ガラス、プラスチック
などの非導電性材料、及び金属等の導電性材などの上に
CVD法によりセラミック皮膜を形成する方法及びその
ための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】気相を用いた成膜技術のうち、物理的作
用により成膜するPVD(PhysicalVapor Deposition)
としては、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーテ
ィン等があげられ、化学的作用により成膜するCVD
(Chemical Vapor Deposition)としては、熱CVD、プ
ラズマCVD、光CVD等をあげることができる。この
うち、特にCVDでは、皮膜の組成調整が容易であるこ
と、析出速度が速いこと等の特徴がある反面、従来の熱
CVD法では基板を高温とするため、アルミニウム材や
プラスチック材等には皮膜を形成できなかった。しか
し、プラズマを反応気体の活性化に用いるプラズマCV
Dでは基板を低温化できるため、近年活発に研究されて
いる。特に、特開平2−205684号公報や特開平4
−110473号公報に開示されている、プラズマ発生
源に対向する陽極との間で、磁場手段によりシート化し
たプラズマを用いるCVDでは、大面積の基体に均一に
皮膜を形成できるため、特に注目を集める技術となって
いる。一方、同様なプラズマ発生源を水平に設置し、垂
直方向に陽極を直上させ、磁場手段により、90゜に曲
げたプラズマを用いるPVDが、“真空”第27巻、第
2号(1984)第64頁〜第71頁に開示されてい
る。しかし、前記のシート化したプラズマを用いるCV
Dでは、装置が大型化し、複雑化する問題点がある。一
方、前記“真空”第27巻に開示されている90゜に曲
げたプラズマを用いるPVD装置によりCVDを行なう
方法については知られていない。しかし、この形式の装
置によりCVD法により絶縁膜の基板への皮膜形成を試
みると、陽極と反応ガス導入部が近ずくため、陽極にも
絶縁膜が堆積し、陽極表面の抵抗が増大するため、プラ
ズマ源と陽極間における電圧が上昇し、成膜を安定に継
続できない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、プラズマC
VD法により、ガラスなどの各種基板上にセラミック皮
膜を効率よく成形する方法を提供することを目的とす
る。本発明は、又、プラズマCVD法によりセラミック
皮膜を効率よく成形できる成形装置を提供することを目
的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、減圧度を制御
できる機構を有する真空槽に、プラズマ発生源、陽極及
びプラズマ発生源と陽極間に生ずるプラズマ流を任意の
形状のプラズマに変形する磁場手段を有する真空装置に
よりCVDを行なうと、安定で連続した成膜が行なえな
いが、陽極上に標準電極電位がマイナスである金属(ケ
イ素などの半金属も含む)を置くか又は該金属で形成し
た陽極を用いると、その金属単体が常に良導体となるた
め、プラズマ発生源と陽極間の電圧が上昇せず、安定に
成膜を継続できるとの知見にもとずいてなされたもので
ある。ここで言う標準電極電位とは文献、A.J.de Bethu
ne, N.A.Swende man Loud, “Standard Aqueous Electr
ode Potentials and Temperature Coeffcient at 25
℃," Clifford A. Hampel, 111.(1964) によるものであ
る。すなわち、本発明は、真空下、プラズマ発生源と陽
極間に生ずるプラズマ流を磁場手段により任意の形状の
プラズマに変形し、該プラズマの一方の側から原料ガス
を含むガスを導入して、該プラズマを挟んだ他方の側に
配置された基体上に、該プラズマを通過した原料ガスを
析出させてセラミックス皮膜を形成するCVD法におい
て、陽極上に標準電極電位がマイナスである金属である
ケイ素又はアルミニウムを置くか又は該金属で形成した
陽極を用いることを特徴とするセラミックス皮膜の形成
方法を提供する。このセラミックス皮膜の形成方法は、
又、減圧度を制御できる機構を有する真空槽に、プラズ
マ発生源、陽極及びプラズマ発生源と陽極間に生ずるプ
ラズマ流を任意の形状のプラズマに変形する磁場手段を
有するセラミックス皮膜形成用CVD装置であって、原
料ガスと反応ガスの導入口を、該プラズマの一方の側に
設け、セラミックス皮膜を形成する基体を該プラズマを
挟んだ他方の側に設け、かつ陽極上に標準電極電位がマ
イナスである金属であるケイ素又はアルミニウムを置く
か又は該金属で形成した陽極を用いることを特徴とする
セラミックス皮膜形成用CVD装置により、効率的に行
うことができる。
【0005】次に、図面を参照して本発明に説明する。
図1に本発明を行うのに好適なセラミックス皮膜形成用
CVD装置の概略を、又図2に複合陰極で構成される圧
力勾配型プラズマ発生装置の概略を示す。図1に示す装
置は、“真空”第27巻、第2号(1984)第64頁
〜第71頁に記載された装置と基本的に同様であるが、
原料ガス導入口9及び反応ガス導入口10が設置されて
いる。図1中、減圧度を制御できる機構を有する真空槽
6に、プラズマ発生源17、陽極7及びプラズマ発生源
と陽極間に生ずるプラズマ流をシートプラズマ13に変
形する磁場手段8、原料ガス導入口9、反応ガス導入口
10、陽極上に置かれた標準電極電位がプラスである金
属11、シャッター14、基体15、試料回転装置1
6、プラズマガス供給孔1、陰極2、永久磁石3、電磁
コイル4、14、出力電源5である。本発明では、図1
に示すように、減圧度を制御できる機構を有する真空槽
に水平に設置されたプラズマ発生源17とそれに垂直に
直上するように陽極7が設置され、さらに磁場手段によ
りプラズマを略90゜曲げるのが好ましく、原料ガス導
入口9と反応ガス導入口10を、プラズマ内を通過し基
体15にこれらガスが到達するようにプラズマ曲率部狭
角側に置き、基体15をプラズマ曲率部広角側の上方に
置くのが好ましい。通常のCVDでは原料ガスと反応ガ
スのみの反応によって基板に皮膜を形成させるが、本発
明では陽極内に標準電極電位がマイナスである金属を置
くか、又は、陽極そのものを該金属で製作し赤熱ないし
溶解状態として、電導性を維持させて、プラズマの発生
を安定に継続させるようにする。
【0006】使用するプラズマとしては、アーク放電プ
ラズマを使用するのがよい。アーク放電プラズマは、そ
の密度が高いので、原料ガスと反応ガスの励起化がより
促進されるためである。プラズマ発生源としては、アー
ク放電を陽極間で行なえる任意のもので良いが、図2に
示すように、特に、“真空”第25巻、第10号(19
82)第668頁の図11に記載の、複合陰極で構成さ
れる圧力勾配型プラズマ発生装置が好ましい。この圧力
勾配型プラズマ発生装置では、複合陰極部分でプラズマ
発生用ガスは数Torrに保たれる一方、真空槽6は0.5 ×
10-1から0.5×10-4に保たれ、真空槽中に導入する
原料ガスと反応ガスからの損傷を非常に軽減できる。一
方、複合陰極は初期放電で中心のTaパイプに放電力集
中、それにともなって主陰極であるLaB6電極も加熱さ
れ、最終的には主陰極のみによる放電が行なわれ、大電
流が取り出せるため、アーク放電を安定に継続できる陰
極である。陰極で発生したプラズマ流を陽極に引き出す
には、永久磁石や電磁石等によりプラズマ流を一担細く
しぼる。さらに、プラズマ流を90゜に曲げて整形する
には、電磁石からの出口付近に円形の大直径コイルを設
置し、陽極下部に永久磁石を置くのがよい。さらに、特
開平2−228469号公報に示されるように、円形大
直径コイル内側に長手方向がプラズマ流に垂直となるよ
うに長方形磁石をN極同士が対向するように設置し、さ
らに陽極とその下部磁石を同じく長手方向がプラズマ流
と垂直となるように設置し、シート状に形成したプラズ
マを用いる事もできる。又、プラズマ発生部と対向させ
て陽極を設置し、シート状、円柱状に磁場手段を用いて
整形したプラズマ流を用いても良い。プラズマ発生用ガ
スとしては、特に限定されないが、放電の安定性の点か
ら、Ar、 He、 H2等のガスを用いるのが好ましい。
【0007】通常、陽極は銅で形成されているが、本発
明では、陽極上に標準電極電位がマイナスである金属
あるケイ素又はアルミニウムを置くか又は該金属で形成
した陽極を用いることを特徴とする。特に、陽極上に標
準電極電位がマイナスである金属を置く場合の金属の形
状は、タブレット、粒状、削り状、粉状等任意で良い
が、タブレットが望ましい。標準電極電位がマイナスで
ある金属としては、沸点が低い方が好ましい。つまり、
CVDを行う時に、該金属ないしそのセラミックス化合
物が蒸発するものが好ましいためである。ここで、標準
電極電位がマイナスである金属が、原料ガス中の金属と
同種の金属の場合には、単一組成の高純度の皮膜が得ら
れるので好ましい。例えば、シラン、ジクロルシラン、
クロルシラン、テトラエトキシシランのような有機ケイ
素化合物等のケイ素金属を含む原料ガスとNH4 、 N2
O2、 H20 等の反応ガス成膜では、ケイ素金属単体を陽極
内に設置する。又、標準電極電位がマイナスである金属
が、原料ガス中の金属と異種の金属であると、それらの
反応物も含有する皮膜形成も可能である。例えば、上記
例と同様な原料ガス、反応ガスを用いても、Alを陽極内
に設置すれば、金属を2種以上含有するセラミックスの
膜、例えばムライト(3Al2O3・2SiO2)、サイアロン(Si
AlON) 等の膜を得ることができる。本発明に用いられる
原料ガスとしては、Si、 Al、 Ti、 W 、 Zr、 B 等の金属の
常圧、減圧下においてガス化や蒸気化が可能な水素化
物、塩化物、有機化合物等をあげることができる。反応
ガスとしては、酸素、窒素、水素、アンモニア、亜酸化
窒素、炭酸ガス等、非金属ガスをあげることができる。
【0008】原料ガスと反応ガス導入口は、プラズマ内
をこれらのガスが通過し、基板に到達するように、プラ
ズマ曲率部狭角側に設けるのがよい。これは、これらの
ガスがプラズマ内部でより活性化され、皮膜形成がより
促進されるためである。従って、基体はこの導入口に対
して、プラズマ面をはさんで対向する位置に設置するの
が望ましく、一般的にはプラズマ曲率部広角側上方に置
くのが好ましい。さらに、基体が大型で複雑な形状のも
のでは、基体上に均一に皮膜を形成させるため、回転機
構により、自転や公転させるのが望ましい。良質の皮膜
を得るには、基体は赤外線ランプや電熱ヒーター等によ
り加熱するのが好ましい。通常、加熱温度は100〜5
00°Cの範囲である。本発明において皮膜を形成する
基体の材質としては、ガラスやプラスチックなどの非導
電性材料、及び金属等の導電性材料があげられ、基体の
形状は、平板状、線状、直方体状、球状、箔状、テープ
状等任意とすることができる。原料ガスの流量は、3〜
100Sccmとするのがよく、反応ガスの流量は原料ガス
に対し化学量論的に理想的な反応モル比に対し1〜10
倍とするのがよい。形成時の真空槽内の真空度は5×1
-4〜5×10-2Torrとするのがよい。
【0009】
【発明の効果】本発明によれば、電圧を低くできるの
で、反応時におけるプラズマ電源の消費電力を低くする
ことができ、しかも高い成膜速度で安定に連続して絶縁
性セラミックス膜を様々な樹脂や金属やガラスに形成で
きる。このため、本発明の方法は、絶縁膜を必要とする
電線、プリント基板や半導体デバイスに応用できる。さ
らに、本発明により成形された膜は、化学的にも物理的
に安性であるため、真空槽内面の活性ガスからの保護膜
や耐磨耗性膜等にも応用できる。次に実施例により本発
明を説明する。
【0010】
【実施例】
実施例1 基板としてアルミニウム板(JIS A5052 )を用い、以下
のように窒化ケイ素の絶縁膜を形成した。図1に示した
CVD装置を用い、陽極上にケイ素ペレットを置いた。
尚、複合陰極の概要を図2に示す。先ず、真空槽6を1
×10-6Torrまで減圧し、その後、複合陰極にArガスを
30sccmの流量で導入し、プラズマ発生複合陰極と陽極
間に50Vで50A通電してプラズマを生起させた。そ
の後、皮膜形成用ガスとしてシランガスを、反応ガスと
して窒素を用い、シランガスは20sccm、窒素は200
sccmの流量でCVD装置に導入した。基体は上部の回転
機構により水平に回転させた。1時間連続して成膜した
が、電圧上昇やその他の問題も発生しなかった。得られ
た膜を赤外吸収スペクトルにより調べたところ、ケイ素
と窒素の結合に由来するピーク以外のシラン等のピーク
は認められず、窒化ケイ素のセラミックス膜が基体上に
形成されていることがわかった。又、形成速度は0.03
μm/min と高速であった。 実施例2 原料ガスとしてシランガスを、反応ガスとして酸素を用
い、シランガスを20sccm、酸素を200sccmの流量と
して導入した以外は実施例1と同様にして成膜を行なっ
た。1時間連続して成膜したが、電圧上昇やその他の問
題も発生しなかった。得られた膜は無色透明であり、赤
外吸収スペクトルにも、ケイ素と酸素による結合に由来
する吸収以外の吸収は認められず、酸化ケイ素のセラミ
ックス膜が基体上に形成されていることがわかった。
又、形成速度は0.03μm/min と高速であった。
【0011】比較例1 陽極上にケイ素金属を置かなかった以外は実施例1と同
様にして、皮膜形成を試みた。原料ガス(シランガス)
と反応ガス(窒素)を導入すると同時に電圧の上昇が開
始し、3分で100V以上に達し、さらに連続して上昇
するため、安定で連続的な形成は困難と判断し実験を打
ち切った。基体には膜が形成されず、赤外吸収スペクト
ルにも何ら吸収は認められなかった。 比較例2 原料ガス(シランガス)を導入せず、反応ガスのみを導
入した以外は実施例2と同様にして、1時間成膜実験を
行なった。基体にはほとんど膜が形成されず、赤外吸収
スペクトルにも何ら吸収は認められなかった。形成速度
は、0.001μm/min 以下であった。
【0012】
【0013】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を行うのに好適なセラミックス皮膜形
成用CVD装置の概略図を示す。
【図2】 図1の複合陰極で構成される圧力勾配型プラ
ズマ発生装置の概略図を示す。 図中、 1はプラズマガス供給孔、 2は陰極、 6は真空槽、 7は陽極、 8は磁場手段、 9は原料ガス導入口、 10は反応ガス導入口、 11は陽極上に置かれた標準電極電位がプラスである金
属、 13はプラズマ流、 15は基体、 17はプラズマ発生源、である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−110473(JP,A) 特開 平2−125864(JP,A) 特開 平5−214538(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 16/00 - 16/56 C23C 14/00 - 14/58 B01J 19/08

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空下、プラズマ発生源と陽極間に生ず
    るプラズマ流を磁場手段により任意の形状に変形したプ
    ラズマの一方の側から原料ガスを含むガスを導入して、
    該プラズマを挟んだ他方の側に配置された基体上に、該
    プラズマを通過した原料ガスを析出させてセラミックス
    皮膜を形成するCVD法において、陽極上に標準電極電
    位がマイナスである金属であるケイ素又はアルミニウム
    を置くか又は該金属で形成した陽極を用いることを特徴
    とするセラミックス皮膜の形成方法。
  2. 【請求項2】 陽極上に置く金属及び陽極を形成する金
    属が原料ガスに含まれる金属と同種の金属単体である請
    求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 陽極上に置く金属及び陽極を形成する金
    属が原料ガスに含まれる金属と異種の金属単体である請
    求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】 該プラズマが磁場手段により略90゜曲
    げられている請求項1記載の方法。
  5. 【請求項5】 該プラズマが磁場手段によりシート化さ
    れている請求項1記載の方法。
  6. 【請求項6】 減圧度を制御できる機構を有する真空槽
    に、プラズマ発生源、陽極及びプラズマ発生源と陽極間
    に生ずるプラズマ流を任意の形状のプラズマに変形する
    磁場手段を有するセラミックス皮膜形成用CVD装置で
    あって、原料ガスと反応ガスの導入口を、該プラズマの
    一方の側に設け、セラミックス皮膜を形成する基体を該
    プラズマを挟んだ他方の側に設け、かつ陽極上に標準電
    極電位がマイナスである金属であるケイ素又はアルミニ
    ウムを置くか又は該金属で形成した陽極を用いることを
    特徴とするセラミックス皮膜形成用CVD装置。
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