JP3261049B2 - スパッタリング成膜方法 - Google Patents

スパッタリング成膜方法

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JP3261049B2
JP3261049B2 JP31506896A JP31506896A JP3261049B2 JP 3261049 B2 JP3261049 B2 JP 3261049B2 JP 31506896 A JP31506896 A JP 31506896A JP 31506896 A JP31506896 A JP 31506896A JP 3261049 B2 JP3261049 B2 JP 3261049B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、成膜効率を格段に
向上させることができるスパッタリング成膜方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】光学薄膜や導電性薄膜などの各種の薄膜
を形成する際にスパッタリングが行われる。スパッタリ
ングでは、グロー放電で生成された陽イオンを電気的さ
らには磁気的に加速してターゲット材料に衝突させ、こ
れにより叩き出された原子を基板に被着させることによ
って成膜が行われる。グロー放電のために真空槽内には
アルゴンガスなどの不活性ガスが導入されるが、化学反
応性スパッタリングを行う際にはさらに酸素ガス,窒素
ガスなどの反応ガスの導入も行われる。スパッタリング
で形成した薄膜は、抵抗加熱方式や電子線加熱方式に代
表される真空蒸着法で形成した薄膜と比較して、成膜に
時間がかかるという難点はあるものの、膜構造が緻密で
物理,化学的に安定したものが得られ、また基板への付
着力の強い薄膜が得られるという利点がある。
【0003】化学反応性スパッタリングの成膜効率を向
上させるために、例えば特開平8−176813号公報
記載の手法では、放電ガスとして導入するアルゴンガス
と反応ガスとして導入する酸素ガスとの分布密度を基板
とターゲット材料との間で異ならせ、特にターゲット材
料近傍では酸素ガスの密度が低くなるように制御してい
る。これにより、ターゲット材料そのものの表面が酸化
反応してしまうことを防ぎつつも、ターゲット材料から
叩き出された原子については十分な酸化反応を行わせる
ことができるようになり、反応性スパッタリングの効率
を大きく高めることが可能となる。
【0004】さらに上記装置の場合、ターゲット材料そ
のものの酸化が抑制されていることから、ターゲット材
料の発熱もあまり問題にはならない。そして、逆にこの
ターゲット材料からの輻射熱を利用して基板の加熱を行
うこともまた特徴の1つになっており、強固な薄膜を形
成する上で有利となっている。
【0005】上記装置を含め、従来のスパッタリング装
置においては、基本的にターゲット材料と基板との間に
グロー放電を発生させるために、両者間には例えば1〜
10kW程度の高電力が供給される。入力電力をWI
放電開始後にターゲット材料と基板との間に生じる出力
電力をWO とすると、電極構造やターゲット材料の種
類、さらには放電ガスや反応ガスの導入量によって放電
条件が決まり、一般には図1(A)に示すように、出力
電力WO は入力電力WI の増加に伴って線形あるいは非
線形に単調増加する。
【0006】また、図1(B)に示すように、スパッタ
リング成膜時における放電ガスの導入量を増やしてゆく
と、電極構造やターゲット材料、入力電力などの初期条
件によって傾きに差はでるものの、入力電力を一定に保
った状態でも出力電力WO がほぼ直線的に増加してゆく
ことが知られている。これは、放電ガスの密度が高くな
ることによって放電抵抗が小さくなり、放電電流が増加
することに起因していると考えられ、従来ではこれらの
放電特性に基づいて入力電圧WI の設定を行っている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】前述のように、化学反
応性スパッタリングでは放電ガスの他に酸素ガスや窒素
ガスなどの反応ガスが導入されるが、放電条件はまた放
電ガスと反応ガスとの混合比によっても変動することが
知られており、一般には反応ガスの混合比を増やすと放
電させにくくなる(放電電流減少)傾向を示す。従来で
は放電ガスの導入量に対して反応ガスの導入量を数パー
セント程度に抑えているのが普通で、こうした条件のも
とで入力電力WI の設定及び放電ガス及び反応ガスのト
ータルの導入量を決め、図1(A),(B)に示す単調
増加の特性範囲内でスパッタリング成膜を行っているの
が実情である。
【0008】しかしながら、上記のような通常の放電特
性のもとでスパッタリングを行っても、その成膜効率と
しては、物理的膜厚で20〜30オングストローム/se
c が限度になっている。図1(A)に示すように、通常
の放電特性では入力電力WIの増加により出力電力WO
(放電電流)を増加させることはできるが、これは単に
熱エネルギーに変換されるだけで、必ずしも成膜効率の
向上にはつながらない。同様に、ガス導入量を増やして
高い出力電力WO を得ることもできるが、これのみでは
成膜効率を高めることはできない。
【0009】本発明は上記背景のもとでなされたもの
で、独特の放電条件のもとで成膜を行うことによって、
従来と比較して格段に効率的な成膜を行うことができる
スパッタリング成膜方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するにあたり、化学反応性スパッタリングの放電特性に
特異点があることを見出し、この特異点を経た後の高速
スパッタリング状態で成膜を行うことによって、きわめ
て高い効率での成膜を可能としたものである。高速スパ
ッタリング状態を得るために、本発明方法ではこれまで
のスパッタリング成膜方法と比較して大量の反応ガスを
導入した状態でスパッタリングを行うことが特徴であ
り、従来では放電ガスと反応ガスとの導入圧力比が高々
1:0.15程度であったのに対し、本発明では1:
0.8〜1:1.5程度、好ましくは1:1〜1:1.
2にして成膜を行う。
【0011】反応ガスの導入量を増やすことに伴って出
力電圧(放電電圧)が低下してゆく。そして、この出力
電圧がターゲット材料や電極構造あるいは反応ガスの種
類に応じた所定レベルまで降下した後、反応ガスの導入
量を減らしてゆくと、出力電圧が急激な増大傾向を示す
とともに出力電力が低下傾向を示すようになる。この放
電領域が高速スパッタリング状態を生じさせ、きわめて
高い効率のもとでスパッタリング成膜を行うことができ
るようになる。
【0012】高速スパッタリング状態になる放電領域
は、例えば図2に斜線を施した領域として表される。同
図(A)に示す入力電力WI −出力電力WO 特性におい
ては、入力電力WI の増加に対して出力電力WO の変化
が不定になる放電領域が存在する。通常の放電特性に従
う限りではこの放電領域への移行はできないが、上述の
ように通常の放電を開始してこれを維持しながら反応ガ
スの導入量を大幅に増量した後、再び反応ガスの導入量
を減らしてゆくことによって、この特殊な放電領域に移
行させることが可能となる。
【0013】通常の放電領域から上記の高速スパッタリ
ング領域への移行は多少のヒステリシスは認められるも
のの可逆的である。この高速スパッタリング領域内で
は、導入ガスを構成している放電ガスと反応ガスとの混
合比及びトータルの導入量に依存して出力電力WO が決
まる。また、同図(B)に示すガス導入量−出力電力W
O 特性においては、入力電力WI が一定のもとでもガス
導入量に依存して出力電力WO が変化する領域が存在す
る。
【0014】2極グロー放電を利用したスパッタリング
成膜において、上述のような特殊な放電領域についての
文献はこれまで見当たらないが、この放電領域では高効
率でスパッタリング成膜を行うことができる他に、スパ
ッタリングに伴う発熱を非常に低く押さえることができ
る。したがって、成膜工程の後には冷却期間をおかずに
即座に基板を大気中に取り出すことができるようにな
り、工程時間の短縮にも大きな利点を有する。
【0015】
【発明の実施の形態】図3に本発明方法を効果的に実施
することができるスパッタリング装置の外観を示す。真
空槽2は、円筒形状をしたベルジャー本体3と、その上
面及び底面をそれぞれ気密に覆う蓋4,ベースプレート
5からなり、この真空槽2の内部空間でスパッタリング
成膜が行われる。ベルジャー本体3及び蓋4は、適宜の
昇降旋回機構6によってベースプレート5に対して昇降
自在であり、また蓋4は垂直な軸の回りに旋回すること
ができるようになっている。これらは、真空槽2内のタ
ーゲット材料あるいは基板を交換する際、さらには点検
整備などの作業時に適宜に移動される。なお、これらの
作業のためにベルジャー本体3に開閉式のドアを設ける
ことも可能である。
【0016】真空槽2の横断面を概略的に示す図4にお
いて、べースプレート5のほぼ中央には排気孔5aが形
成されている。油拡散ポンプや分子ターボポンプ,スク
ロール型ドライ真空ポンプなどの適宜の真空排気装置7
により排気孔5aを通して排気が行われ、真空槽2の内
部を10-6Torr以下の高真空にすることができる。
【0017】図4に示すように、真空槽2の内部にはド
ラム状の基板ホルダ8が設けられている。基板ホルダ8
は、その底面側がベースプレート5によって回転自在に
支持されており、スパッタリングを行うときに適宜に回
転させることができる。基板ホルダ8は導電性を有し、
ベルジャー本体3及び蓋4、さらにベースプレート5に
対して電気的に絶縁されており、スパッタリングを行う
ときには陽電極として用いられる。この基板ホルダ8に
は平板状のホルダプレート9が軸着され、このホルダプ
レート9に薄膜の被着対象となるガラスレンズ,プラス
チックレンズあるいは平板ガラスなどの基板10が保持
される。なお、ホルダプレート9を交換することによっ
て、様々な形状,サイズの基板に対してもこのスパッタ
リング装置を用いることが可能となる。
【0018】基板ホルダ8には、ホルダプレート9の装
着位置に対応して開口窓8aが形成され、各々のホルダ
プレート9の軸着部にはゼネバ機構などの回転装置が組
み付けられており、ホルダプレート9の各々を垂直軸の
回りに回転させることができる。したがって、ホルダプ
レート単位で、基板10の表裏いずれの面でも、後述す
るターゲットブロック側に向けることができるようにな
る。
【0019】真空槽2の内部は放射状に配置した遮蔽板
12で6つのエリアに区画されており、各々のエリアご
とにターゲットブロック15が設置され、さらにターゲ
ットブロック15の各々を取り囲むように導電性を有す
る回転式のシャッタ16が設けられている。ターゲット
ブロック15は陰電極となって基板ホルダ8との間で放
電を発生させるが、シャッタ16がターゲットブロック
15と基板ホルダ8との間に移動しているときには成膜
は行われず、ターゲットブロック15と基板ホルダ8と
の間から退避して真空槽2の中心側に移動したときに成
膜が行われる。遮蔽板12は、ターゲットブロック15
が他からの飛散粒子で汚染されることを防ぐと同時にス
パッタリング時の成膜分布を補正する機能を有し、遮蔽
板12にはさらに必要に応じて補正板を取り付けること
ができる。
【0020】図3に示すように、蓋4にはガス供給パイ
プ17,18が接続され、その一方から放電ガスが、他
方から反応ガスが真空槽2の中に導入される。図4に示
すように、放電ガスの供給口17aはターゲットブロッ
ク15の近傍に、そして反応ガスの供給口18aは基板
ホルダ8の近傍に位置している。これにより、スパッタ
リング成膜中に、ターゲット材料近傍では放電ガスの分
布密度を高く、基板10の近傍では反応ガスの分布密度
を高くすることができる。
【0021】図5及び図6にターゲットブロック15の
概略を示す。ターゲットブロック15は、導電性を有す
るステンレス製パイプからなるターゲットホルダ20
と、基板ホルダ8と対面する側に切欠21aを有する絶
縁性のカバープレート21とを備えており、ターゲット
材料24は切欠21aに嵌め込まれる。ターゲット材料
24の固定は、切欠21aへの嵌合による固定の他、タ
ーゲットホルダ20にインジウムシールで固定してもよ
い。なお、カバープレート21を省略して円筒形状をし
たターゲット材料24をターゲットホルダ20の全周に
被せるように固定してもよい。また、図示の例ではター
ゲットホルダ20を円筒形状にしてあるがこれを多角形
の角筒形状にしてもよく、ターゲット材料24の表面を
平板状にしてもよい。
【0022】ターゲットホルダ20の上下面は密封され
ており、その内部には磁石ブロック25が設けられてい
る。磁石ブロック25は、鉄製の支持プレート26に円
柱形状をした小型の磁石27a,27bを配列して固着
したもので、中央に縦一列に並べられた磁石27aは外
側にN極を向け、その回りの四辺を取り囲むように並べ
られた磁石27bは外側にS極を向けている。これらの
磁石は図6に破線で示すような磁力線を発生させる。
【0023】磁石ブロック25は、支持プレート26に
固定されたロッド28を介してターゲットホルダ20内
で上下動させることができる。これにより、磁力線分布
が平均化される。さらに、ターゲットホルダ20の上下
面には送水用のパイプ29a,29bが接続されてお
り、ターゲットホルダ20内には冷却水が通される。こ
れにより、スパッタリング中におけるターゲットホルダ
20の発熱を抑えることができる。
【0024】図7は磁石ブロックの他の構成例を示す。
支持プレート26に複数の磁石ユニット30が配列さ
れ、それぞれの磁石ユニット30は、中央の板状磁石3
0aとこれを取り囲む角筒状磁石30bとからなる。板
状磁石30aは外側にN極を向け、角筒状磁石30bは
外側にS極を向けている。この磁石ブロックは、前述し
た磁石ブロック25よりも磁力線本数を増やすことがで
き、ロッド28によりターゲットホルダ20内で上下動
させて用いた場合、より効率的にターゲット材料24を
利用することができる。なお、図5に示す小型の磁石2
7a,27bを板状磁石30a,角筒状磁石30bの形
態に配列して用いてもよい。
【0025】図8(A),(B)は、スパッタリングを
行った後のターゲット材料24の横断面を表し、同図
(A)が図5の磁石ブロック25を用いた場合、同図
(B)が用いた場合を示す。同図(B)の方がターゲッ
ト材料24を効率的に使用できることが分かる。
【0026】上記のスパッタリング装置を用いて成膜を
行うにあたっては、まず昇降旋回機構6を作動させてベ
ルジャー本体3及び蓋4を開放し、各々のターゲットホ
ルダ20にターゲット材料24を装着する。また、基板
ホルダ8に取り付けられたホルダプレート9にレンズや
平板ガラスなどの基板10を保持させ、その一方の面を
ターゲットブロック15側に向ける。なお、6個のター
ゲットホルダ20には同種のターゲット材料24を装着
してもよいが、多層膜を成膜する際には、ターゲットホ
ルダ20ごとに異種のターゲット材料24を装着すれば
よい。
【0027】ベルジャー本体3及び蓋4を閉じ、真空排
気装置7を作動させて真空引きを開始する。真空槽2を
10-6Torrオーダーの高真空にした後、放電ガスと反応
ガスとを所定の混合比、例えば5:1程度の比率で導入
し、真空槽2内を1×10-3〜1.4×10-3Torrのガ
ス圧に保つ。ガス供給パイプ17,18には調整用のバ
ルブが組み込まれており、これらを制御することによっ
て、放電ガスと反応ガスとの混合比及び真空槽2内のガ
ス圧を適宜に調節することができる。
【0028】ターゲットホルダ20に冷却水を通し、シ
ャッタ16が全て閉じられていることを確認した後、基
板ホルダ8(陽極)とターゲットホルダ20(陰極)と
の間に例えば3kWの直流電力を供給する。これにより
導電性のシャッタ16を通して放電が開始され、基板ホ
ルダ8とターゲットブロック15との間には放電ガスの
プラズマが生成される。このとき、実際に基板ホルダ8
とターゲットブロック15との間に生じる放電電圧(出
力電圧)をVO 、放電電流(出力電流)をIOとする
と、出力電力WO は入力電力に対応した一定値となって
「WO =VO ×I O 」が成立する。そして通常は、この
条件下で磁石ブロック25を上下動させ、また基板ホル
ダ8を10R.P.M.程度で回転させてからシャッタ16を
開いてスパッタリング成膜が開始される。
【0029】しかし、本発明方法では未だスパッタリン
グを開始せず、供給パイプ18のバルブ調整を行って、
反応ガスの導入量を増やして放電ガスと反応ガスとの混
合比を変更する。これに伴い、真空槽2内のガス圧は少
しずつ増し、出力電圧VO は徐々に低下してゆく。放電
ガスと反応ガスの導入圧力比を1:0.8〜1:1.5
程度、好ましくは1:1〜1:1.2程度にし、真空槽
2内のガス圧が0.8×10-3〜2.3×10-3Torr程
度に達した後に反応ガスの導入量を徐々に減らしてゆ
く。
【0030】これにより、出力電圧VO は急激な増大傾
向を示し、また、出力電力WO は入力電力を一定に維持
しておいても低下傾向を示す。この出力電力の低下分を
Sで表すと、「WO =VO ×IO −WS 」となって通
常の放電特性とは異なった挙動を示し、同時に出力電流
O も低下する。このときの「VO ×IO 」が放電の実
効電力に相当しており、電力低下分WS は自己放電電力
とも言うべきもので、放電によってプラズマ化されてい
る放電ガスの活性化に寄与していると考えられる。
【0031】この特殊な放電状態に移行させた後、シャ
ッタ16を開放してスパッタリング成膜を開始する。も
ちろん、このときには基板ホルダ8を回転させる。ま
た、磁石ブロック25は静止状態にしておいてもよい
が、ターゲット材料24を効率的に使用するには上下動
させるのがよい。放電ガスは供給口17aからターゲッ
ト材料24の近傍に供給されるから、ターゲト材料24
の近傍にはプラズマ状態になった放電ガスが豊富に分布
している。ターゲットホルダ20は陰極となっているか
ら、放電ガスが電離して生じる陽イオンは勢いよくター
ゲット材料24の表面に衝突する。
【0032】これによりターゲット材料24の表面から
その原子が叩き出され、これが基板10の表面に被着し
て薄膜の形成が行われるようになる。ターゲットホルダ
20内の磁石ブロック25は電界と直交する向きに磁界
を生じさせているため、放電とともに基板ホルダ8から
飛び出してくる電子に螺旋運動を生じさせ、その平均自
由工程を大きくする。
【0033】これにより放電ガス分子との衝突の確率が
大きくなり、放電ガスの電離が促進される。また、磁石
ブロック25の上下動により、ターゲット材料表面には
放電ガスのプラズマが平均的に分布するようになり、そ
こで発生した陽イオンも平均的にターゲット材料24の
表面に衝突して効率的なスパッタリングを行うことがで
きる。
【0034】ターゲットホルダ20の全てに同種のター
ゲット材料24を装着しているときには、シャッタ16
の全てを開放し、基板ホルダ8を回転させながら全ての
ターゲットブロック15を利用して成膜が行われる。こ
のように、基板ホルダ8を回転させながら成膜を行う
と、基板10には様々な方向からスパッタリングが行わ
れ、ターゲットブロック15との相対位置は無関係にな
り、方向性のない均一な膜厚で成膜を行うことができ
る。
【0035】また、ターゲットホルダ20のいくつかに
は別の種類のターゲット材料24が装着されているとき
には、基板10に形成する薄膜の層構造に応じ、適宜の
シャッタ16を選択的に開放,閉止して成膜を行う。基
板10の片側への成膜を終えた後には、ホルダプレート
9を180°回転させ、他方の面をターゲットブロック
15側に向ける。これにより、真空槽2の排気を一回行
うだけで、基板10の両面に薄膜を被着させることが可
能となる。
【0036】成膜工程の後には、放電を停止させた後、
真空槽2内を徐々に大気圧に戻す。本発明の成膜方法で
は、スパッタリング中に基板10はほとんど加熱される
ことがなく、2〜3°C程度の温度上昇があるだけであ
る。したがって、成膜後には即座に基板10を取り出す
ことができるようになる。
【0037】従来のスパッタリングでは「WO =VO ×
O 」の関係が成立する範囲、すなわち入力電力W1
対応して決まる出力電力WO が、出力電圧VO と出力電
流I O との積で表される範囲内で成膜が行われるのに対
し、本発明によるスパッタリングでは上記関係式が成立
しない条件下で成膜を行うようにしたことが大きな特徴
となっている。以下、本発明の独特な放電条件のもとで
の成膜について、具体的な実施例をもとに説明する。
【0038】ターゲット材料24として金属タンタル
(Ta)を用い、放電ガスとしてアルゴンガス、反応ガ
スとして酸素ガスを使用して、ガラス製の基板10の表
面に酸化タンタル(Ta2 5 )の薄膜を成膜する。タ
ーゲットホルダ20は、その外径が50mm、内径が4
0mm、長さが280mmであり、ターゲットホルダ2
0の各々に円筒形状のターゲット材料24を固定し、カ
バープレート21は省略した。基板10には平板状のガ
ラスプレートを用い、直径が300mmの基板ホルダ8
を10R.P.Mで回転させながらスパッタリングを行
った。ターゲット材料24の表面と基板10の表面とが
正対したときの間隔は70mmである。
【0039】磁石ブロック25は、32mm×240m
mの支持プレート26の表面に、直径が6mm、長さ1
0mm、1個当たりの磁束密度が3500ガウスの磁石
27a,27bを並べて構成され、中央の磁石27aの
配列長は210mmである。ターゲット材料24の表面
での磁束分布を磁束ビュワーで測定したところ、横軸に
ターゲット材料24の水平方向寸法をとったとき、その
相対強度は図9に示すとおりで、中央の磁石27aの配
列方向に関して左右対称である。最も強磁界となる部分
の間隔は24mm、相対強度が30パーセントとなる部
分の幅は5mmで、その垂直方向の長さは225mmで
ある。
【0040】真空槽2を密閉して排気を行い、まず10
-6Torrオーダーの高真空にした。その後、アルゴンガス
を5cc/min の割合で導入し、真空度が0.7×10-3
〜6×10-3Torrで安定した時点で入力電力WI を3k
W一定に維持して放電を開始した。このときの出力電力
O は2.9kWで、出力電圧VO は600V、出力電
流IO は約5Aであり、通常の放電条件で放電が行われ
ていることが分かる。このときの出力電力WO ,出力電
圧VO は、図10における点a,点dに対応している。
そして従来のスパッタリングでは、この状態からアルゴ
ンガス1に対して酸素ガスを0.15以内のガス圧の範
囲で導入し、トータルの真空度が1×10-2〜1×10
-3Torrオーダーになった時点で成膜が行われる。
【0041】しかしながら、本発明では上記のようにし
て放電を開始した後、アルゴンガスに対する酸素ガスの
混合比を大幅に増やし、アルゴンガス1に対し、酸素ガ
スを0.8〜1.5の範囲、好ましくは1.0〜1.2
の範囲に設定して導入する。この結果、出力電圧VO
図10に示すように点dから点eへと低下してゆく。こ
のとき、出力電流は増大傾向となるため出力電力WO
ほぼ一定のまま点bに達する。さらに酸素ガスを導入す
ると、それぞれ点b→点b’、点e→点e’へと移行す
る。
【0042】酸素ガスの導入により真空度が1×10-3
〜2.3×10-3Torrとなり、出力電圧VO が点e(5
00V)に達した時点で、酸素ガスの導入量を減らして
ゆく。すると、出力電圧VO が点eから点f(600
V),点g(800V)へと急激に増大する。この間、
出力電力WO は点b(2.9kW)から点c(1.5k
W)へと非線形に下降する。この出力電圧VO あるいは
出力電力WO の変化を確認した後、トータルの真空度を
2×10-3〜8×10-4Torr程度に保ってスパッタリン
グを行う。
【0043】このとき、入力電力WI が3kW一定であ
っても、出力電力WO は酸素ガスの導入量に応じて1.
5kWまで低下し、通常の放電条件と比較して1kW以
上の電力降下となる。この降下分の電力がサイクロトロ
ン現象としてアルゴンガスのプラズマ活性化に寄与して
いると考えられ、きわめて効率の高いスパッタリングを
行うことができることが確認された。そして、その成膜
の効率は、300〜600オングストローム/sec にも
及び、従来のスパッタリングと比べて格段に高い成膜効
率が得られた。
【0044】上記のように、きわめて高い効率でスパッ
タリング成膜を行うことができる高速スパッタリング領
域は、図10に斜線を施した領域Sに相当している。す
なわち、上述した実験条件のもとでは、アルゴンガスに
対する酸素ガスの導入圧力比が1:0.8〜1.5、ト
ータルの真空度が2×10-3〜8×10-4Torr程度、そ
して入力電力3kWに対して出力電圧VO が600〜7
20V、出力電力WOが2.9〜1.5kWの範囲であ
る。
【0045】さらに実験を行ったところ、多少のヒステ
リシス現象を示すものの、上記領域Sへは酸素ガスの導
入量制御により可逆的に移行させることができることが
確認された。なお、入力電力WI ,出力電圧VO ,出力
電力WO の値は、スパッタリング成膜に用いるターゲッ
ト材料の種類やサイズ,また電極構造に応じて調節され
ることになるが、これにより様々なスパッタリング装置
においても上記領域Sでの高速スパッタリングを実施す
ることができる。
【0046】以上のスパッタリング成膜による基板温度
の上昇は2〜3°C程度で、ほとんど加熱されることは
ない。したがって、基板10としてプラスチックが対象
となる場合でも、不都合なく成膜を行うことができ、成
膜後には特に冷却を行うことなく、即座に大気中に取り
出すことが可能となる。また、膜強度も通常のスパッタ
リングで得た薄膜と変わることがない。なお、ターゲッ
ト材料24に金属チタンを用い、同様にアルゴンガスと
酸素ガスとを導入して酸化チタン(TiO2 )の成膜も
行ったが、やはり従来と比較して10倍以上の効率で成
膜が可能であることが確認された。
【0047】以上、図示したスパッタリング装置を用い
た本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は
反応ガスの導入量を調整できる機能を有していれば、他
の構造のスパッタリング装置でも同様に実施することが
できる。すなわち本発明は、特に反応ガスの導入量を大
幅に増量することによって、従来のスパッタリング条件
から外れた特異な高速スパッタリング領域を利用して高
効率で成膜を行うものである。したがって、例えばター
ゲットブロックを1個にし、これに対向して基板10を
固定配置させた単純な形態のスパッタリング装置でも本
発明を適用することができる。また、図示したスパッタ
リング装置の場合、ターゲットブロック15に磁石ブロ
ック25を組み込み、さらには磁石ブロック25を移動
させてターゲット材料を損失なく使用するようにしてあ
るが、本発明は磁石ブロックを固定したまま実施した
り、また磁石ブロックを省略しても実施が可能である。
【0048】以上に述べてきたように、本発明は化学反
応性スパッタリングを行うに際し、反応ガスの導入量を
大幅に増量することによって、入力電力に対して出力電
力を大きく降下させ、この降下分によって放電ガスのプ
ラズマを活性化させた状態で成膜を行うようにしたもの
で、これにより従来のスパッタリング成膜と比較して格
段に高い効率のもとで成膜を行うことが可能となる。し
たがって、成膜時間を大幅に短縮することが可能とな
り、しかも本発明のスパッタリングでは基板温度の上昇
もきわめてわずかなものであるため、成膜後には特に冷
却工程を行うことなく取り出すことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的なスパッタリングにおける放電特性を示
すグラフである。
【図2】本発明の高速スパッタリング領域を概念的に示
すグラフである。
【図3】スパッタリング装置の外観図である。
【図4】スパッタリング装置の要部を示す概略断面図で
ある。
【図5】ターゲットブロックの概略を示す部分破断外観
図である。
【図6】ターゲットブロックの要部を示す概略断面図で
ある。
【図7】ターゲットブロックに用いる磁石ブロックの他
の例を示す斜視図である。
【図8】ターゲット材料の使用後における断面図であ
る。
【図9】磁石ブロックによる磁束分布を示すグラフであ
る。
【図10】本発明によるスパッタリング工程の推移を示
すグラフである。
【符号の説明】
2 真空槽 3 ベルジャー本体 8 基板ホルダ 9 ホルダプレート 10 基板 12 遮蔽板 15 ターゲットブロック 16 シャッタ 20 ターゲットホルダ 24 ターゲット材料 25 磁石ブロック
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 14/00 - 14/58 JICSTファイル(JOIS)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空槽内に放電ガスと反応ガスとを導入
    してターゲット材料と基板との間で放電を行い、この放
    電によりターゲット材料から飛散した原子を反応ガスと
    化合させて基板に被着するスパッタリング成膜方法にお
    いて、 入力電圧をほぼ一定に維持して放電を行い、この放電を
    継続させながら反応ガスの導入量を増やしてゆき、放電
    ガスと反応ガスとの導入圧力比を1:Xとしたとき、
    0.8≦X≦1.5の範囲まで反応ガスの導入量を増や
    して出力電圧を一定レベルまで降下させた後、反応ガス
    の導入量を減らしていったときに、出力電圧が急激に増
    大し、かつ出力電力が降下することによって発生する高
    速スパッタリング領域で成膜を行うことを特徴とするス
    パッタリング成膜方法。
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