JP3276217B2 - 建築物の耐火構造 - Google Patents

建築物の耐火構造

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JP3276217B2 JP21948293A JP21948293A JP3276217B2 JP 3276217 B2 JP3276217 B2 JP 3276217B2 JP 21948293 A JP21948293 A JP 21948293A JP 21948293 A JP21948293 A JP 21948293A JP 3276217 B2 JP3276217 B2 JP 3276217B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、建築物の耐火構造に
関し、特に、共同住宅、病院、寄宿舎等、三階建以上
で、かつ、長大な耐火建築物に適用して好適である。
【0002】
【従来の技術】共同住宅、病院、寄宿舎等を用途とした
三階建以上の建築物は、建築基準法に基づき、所定の耐
火性能を有する耐火構造でなければならず、また、所定
の耐震性能も有しなければならないことから、柱と梁と
がラーメン構造に接合された鉄骨骨組を有して構築され
るものが多い(特開昭63−165629号公報)。と
ころで、従来の鋼材は、350℃で降伏点が常温時耐力
の2/3近くにまで低下するため、柱や梁等の鉄骨の周
りを厚い耐火被覆材で被覆する必要があった。
【0003】一方、近年、クロムやモリブデン等の元素
を微小量含めることで、高温時強度を従来鋼(以下、普
通鋼という)に較べて著しく高めた耐火鋼が開発されて
いる(”建築士”'93.6:P39-41参照)。この耐火鋼は、
600℃の高温下でも常温時耐力の2/3以上の耐力
(降伏点)を維持することから、耐火建築物の柱や梁等
として用いられるようになっている(”建築技術”'92.
4:P170-183参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記耐
火鋼を用いて長大な耐火建築物を構築した場合には、火
災時、高温時耐力は保証される反面、鉄骨温度が普通鋼
より大幅に高くなることから、架構に過大な熱変形が生
じ、ひいては架構が倒壊する畏れがある。すなわち、普
通鋼の鉄骨骨組からなる耐火建築物の場合には、鉄骨の
周りは、火災時、鉄骨温度を350℃以下に抑えるため
に、厚い耐火被覆材で被覆されるので、図12(a)に
示すように、梁1,1,…や柱2,2,…の火災時の熱
膨張は小さく、したがって架構の熱変形は通常ほとんど
問題とならない。これに対して、耐火鋼の鉄骨骨組から
なる耐火建築物の場合には、火災時、鉄骨温度が600
℃まで加熱されても構造安定上許容されるので、鉄骨の
周りは、薄い耐火被覆材で被覆されることになる。それ
故、火災時、鉄骨は600℃まで加熱されるので、熱膨
張が無視できなくなる。特に、長大な耐火建築物の場合
には、同図(b)に示すように、個々の梁3,3,…や
柱4,4,…に生じる熱膨張が加算集積され、ついに
は、耐火建築物の端部において、過大な熱変形が生じ、
架構が倒壊しかねない。
【0005】過大な熱変形や架構の倒壊を防止するに
は、建築物内の火災性状の激しい範囲を小さく抑えて、
火炎による熱影響を受ける柱や梁がなるべく少なくて済
むように、建築物内を耐火界壁によって区画することが
考えられる。しかし、耐火区画に頼り過ぎれば、間取り
等のプランに制約が加わり、室内を広く使うことができ
ない等の不都合が生じる。
【0006】この発明は上述の事情に鑑みてなされたも
ので、火災による建築物の過大な変形、ひいては建築物
の倒壊を防止することができると共に、間取り等の多様
なプランに対応できる建築物の耐火構造を提供すること
を目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、請求項1記載の建築物の耐火構造は、複数の梁と柱
とから骨組が構成されてなる鉄骨系の建築物において、
任意の対をなす柱間には、一方の柱に支持固定される第
1の部分梁と他方の柱に支持固定される第2の部分梁と
を連結部材によって連結継合してなる継合梁が架け渡さ
れ、前記第1及び第2の部分梁は、火災時両側から迫る
当該第1及び第2の部分梁の伸びを空間的に吸収し得る
隙間を隔てて同一直線上に並置された状態で、前記連結
部材によって構造上有効に連結継合され、かつ、前記連
結部材は、前記第1及び第2の部 分梁にボルトで接合さ
れると共に、このボルト接合は高温時にボルト軸の軸方
向の伸びにより接合緩みが生ずる機構とされていること
を特徴としている。
【0008】また、請求項2記載の建築物の耐火構造
は、複数の梁と柱とから骨組が構成されてなる鉄骨系の
建築物において、任意の対をなす柱間には、一方の柱に
支持固定される第1の部分梁と他方の柱に支持固定され
る第2の部分梁とを連結部材によって連結継合してなる
継合梁が架け渡され、前記第1及び第2の部分梁は、火
災時両側から迫る当該第1及び第2の部分梁の伸びを空
間的に吸収し得る隙間を隔てて同一直線上に並置された
状態で、前記連結部材によって構造上有効に連結継合さ
れ、かつ、前記連結部材は、前記第1及び第2の部分梁
にボルトで接合されると共に、このボルト接合は高温時
に座金の溶失により接合緩みが生ずる機構とされている
ことを特徴としている。
【0009】また、請求項3記載の発明は、複数の梁と
柱とから骨組が構成されてなる鉄骨系の建築物におい
て、任意の対をなす柱間には、一方の柱に支持固定され
る第1の部分梁と他方の柱に支持固定される第2の部分
梁とを連結部材によって連結継合してなる継合梁が架け
渡され、前記第1及び第2の部分梁は、火災時両側から
迫る当該第1及び第2の部分梁の伸びを空間的に吸収し
得る隙間を隔てて同一直線上に並置された状態で、前記
連結部材によって構造上有効に連結継合され、かつ、前
記連結部材と前記第1及び第2の部分梁が、低融点金属
や普通鋼からなる溶加材を用いて溶接接合されている
とを特徴としている。
【0010】また、請求項4記載の発明は、請求項1,
2もしくは3記載の建築物の耐火構造であって、前記建
築物が、複数の梁と柱とから箱形に骨組が構成されてな
る鉄骨系の建物ユニットを複数個水平方向及び垂直方向
に連結配置してなるユニット建物であることを特徴とし
いる。
【0011】
【作用】この発明の構成において、任意の対をなす柱間
の一方の柱に支持固定された第1の部分梁の先端部と、
他方の柱に支持固定された第2の部分梁の先端部との間
には、火災時両側から迫る第1及び第2の部分梁の熱的
伸びを見込んだ隙間が設けられている。しかしながら、
これら2つの部分梁は、上記隙間を確保した状態で連結
部材によって互いに構造上有効に接合されて継合されて
いる。それ故、この連結部材は、通常は、一方の部分梁
に作用する地震力や風圧力等の水平荷重を他方の部分梁
に伝達することができる。また、一方の部分梁に加えら
れる垂直荷重の一部を他方の梁に支持させることもでき
る。このため、この発明の継合梁は、通常の梁と同程度
の構造耐力性を有するので、架構の安定性・安全性を確
保することができる。
【0012】一方、一旦火災になれば、請求項1記載の
発明においては、この連結部材と、前記第1及び第2の
部分梁とのボルト接合が、高温時にボルト軸の軸方向の
伸びにより接合緩みが生ずる機構とされ、請求項2記載
の発明においては、このボルト接合が高温時に座金の溶
失により接合緩みが生ずる機構とされ、請求項3記載の
発明においては、前記連結部材と前記第1及び第2の部
分梁が、低融点金属や普通鋼からなる溶加材を用いて溶
接接合されているので、第1及び第2の部分梁の熱的伸
びを力学的にも空間的にも吸収し得る。このため、この
発明の構成によれば、例えば、建物ユニットが横方向に
多数連結されて構成された長大な建物に火災が発生した
場合でも、継合梁毎に(すなわち躯体区画又は建物ユニ
ット毎に)熱変形が完結されるので、梁から梁へ熱によ
る伸び又は変形が加算集積され易いという連続梁の欠点
を回避できる。それ故、火災による建築物の過大な変
形、ひいては建築物の倒壊を防止することができる。
【0013】
【実施例】以下、図面を参照してこの発明の実施例につ
いて説明する。なお、この実施例を述べるにあたり、三
階建のユニット建築物を例にとり、その耐火構造につい
て説明する。図1は、この例の建築物の耐火構造に適用
される建物ユニットの躯体構造を示す斜視図、図2は、
同躯体構造を分解して示す斜視図、図3は、同建物ユニ
ットの柱部を拡大して示す斜視図、図4は、同建物ユニ
ットの梁(桁側床大梁)を分解して示す斜視図、図5
は、同建物ユニットの床部断面を拡大して示す断面図、
図6は同部分斜視図、また、図7は、同建物ユニットの
天井部断面を拡大して示す断面図である。
【0014】まず、図1及び図2に示すように、建物ユ
ニット5は、ユニット四隅に立設される4本の角型鋼管
製の柱6,6,…と、ユニット長辺側にて相対向する2
本の柱6,6の下端部間・上端部間に架け渡される各2
本の溝形鋼製の桁側床大梁7,7及び桁側天井大梁8,
8と、ユニット短辺側にて相対向する2本の柱6,6の
下端部間・上端部間に架け渡される各2本の溝形鋼製の
妻側床大梁9,9及び妻側天井大梁10,10と、複数
の床パネル11,11,…と、複数の溝形鋼製の天井小
梁12,12,…とから箱形の躯体が構成され、この躯
体に、図3,図5及び図7に示す壁パネル(外壁パネル
13、内壁パネル14、界壁パネル15や、天井面材1
6が、ボルトやタッピングビス等の固定具を用いて取着
されることにより構成されている。なお、建物ユニット
のどの側面にどの種の壁パネルが取着されるかは、建物
ユニットがユニット建築物のどの部分を構成するかによ
って決定され、壁パネルの取着個数及び配置状況によっ
て、コの字壁状の建物ユニット、L字壁状の建物ユニッ
ト等が存在する。
【0015】ここで、上記各柱6には、高温時耐力の保
証された耐火鋼(SS400材)から形成された125
mm角の軽量角形鋼管が用いられる。図8の曲線(イ)
は、柱6に適用される耐火鋼の鋼材温度−構造強度特性
曲線を表している。同図に示されるように、この例の耐
火鋼は、温度の上昇につれて耐力が劣化する点では普通
鋼と同様であるが、劣化の程度は比較的緩やかで、60
0℃の高温下でも、この鋼材が常温時に有する耐力の2
/3以上の耐力、すなわち、163N/mm2以上の耐
力を維持し得る品質を備えている。各柱6の上端部に
は、図3に示すように、互いに直交する2つのコ字状の
ジョイントピース17,17が溶接により水平方向に突
設されていて、これらジョイントピース17,17を介
して、各柱6と各天井大梁8,10が溶接により結合さ
れている。また、各柱6の下端部にも、2つのコ字状の
ジョイントピース18,18が溶接により水平方向に突
設されていて、これらジョイントピース18,18を介
して、各柱6と各床大梁7,9が溶接により結合されて
いる。なお、各ジョイントピース17,18も柱6と同
一組成の耐火鋼から形成されている。
【0016】また、柱6の上端面には、同耐火鋼からな
る上閉塞板19が溶接され、柱6の下端面には、同耐火
鋼板からなる下閉塞板20が溶接されている。上閉塞板
19には、中央部位に上下階接合ボルト21が植設さ
れ、また、その両側で互いに対角をなす2つのコーナ寄
りの部位には、位置決め用のガイドピン22,22がそ
れぞれ植設されている。なお、各ガイドピン22は、そ
の位置決め機能の性質から、上下階接合ボルト21より
も軸長に形成されている。一方、下閉塞板20には、中
央部位に(下階建物ユニット5の)上下階接合ボルト2
1を挿通させるボルト挿通孔23が穿設され、また、そ
の両側で互いに対角をなす2つのコーナ寄りの部位に
は、(下階建物ユニット5の)ガイドピン22,22を
それぞれ挿通させるピン挿通孔24,24が穿孔されて
いる。さらに、上下端部を除く柱6の側面のうち、建物
ユニット5の内部を臨む2つの側面には、予め工場にお
いて、厚さ12.5mmのセラミックファイバや珪酸カ
ルシウム板等の耐火被覆材25によって耐火被覆されて
いる。
【0017】上記各桁側床大梁7は、図2に示すよう
に、共に溝形鋼から形成された概略同一寸法(この例で
は2,751mm)の2本の部分梁71,71と、これ
ら部分梁71,71が互いに所定の距離(この例では6
0mm)を隔てる状態で長手方向に連結して継合する梁
間ジョイントプレート72とからなっていて、継合後の
梁全長が5,562mmになるように設定されている。
この梁間ジョイントプレート72は、図4に詳細に示す
ように、各部分梁71の凹部に緩い状態で嵌合可能な溝
形鋼から形成され、接合に際しては、梁間ジョイントプ
レート72の図中右端側の凸部を一方の部分梁71の図
中左端側の凹部に、また、梁間ジョイントプレート72
の図中左端側の凸部を他方の部分梁71の図中右端側の
凹部に、ウェブ同士が当接するまで嵌合した後、これら
ウェブ同士を高力ボルト731と高力ナット732と座
金733とで強固に締結することにより、2本の部分梁
71,71を構造上有効に継合連結するようにしてい
る。このように、2本の部分梁71,71を所定距離隔
てて並置したこと、部分梁71,71と梁間ジョイント
プレート72とを高力ボルト731で締結したこと、高
力ボルト731のない状態では梁間ジョイントプレート
72が部分梁71の長手方向にスライドし得るように緩
い嵌合関係にしたこと等により、この梁間ジョイントプ
レート72は、火災時の桁側床大梁の熱的伸びを吸収し
得る熱変形吸収機構として機能し得るようになってい
る。
【0018】また、上記各妻側床大梁9は、継合梁の桁
側床大梁7とは異なり、連続梁であり、長さ寸法が2,
163mmである1本の溝形鋼からなっている。なお、
部分梁71,71,妻側床大梁9及び梁間ジョイントプ
レート72には、柱6と同一組成の耐火鋼(熱膨張係数
α=1.45×10-5)から形成された溝形鋼が用いら
れる。また、高力ボルト731には、熱膨張係数の高い
高張力鋼から形成されたものが使用される。
【0019】上記各桁側天井大梁8は、桁側床大梁7の
構成各部と同一の構成各部により構成されている。すな
わち、各桁側天井大梁8は、図2に示すように、共に溝
形鋼から形成された概略同一寸法(この例では2,75
1mm)の2本の部分梁81,81と、これら部分梁8
1,81を互いに所定の距離(この例では60mm)隔
てた状態で長手方向に継合する梁間ジョイントプレート
82とからなっていて、継合後の梁全長が5,562m
mになるように設定されている。この梁間ジョイントプ
レート82は、各部分梁81の凹部に緩い状態で嵌合可
能な溝形鋼から形成され、接合に際しては、梁間ジョイ
ントプレート82の図中右端側の凸部を一方の部分梁8
1の図中左端側の凹部に、また、梁間ジョイントプレー
ト82の図中左端側の凸部を他方の部分梁81の図中右
端側の凹部に、ウェブ同士が当接するまで嵌合した後、
これらウェブ同士を高力ボルト831と高力ナット83
2と座金833(図10)とで強固に締結することによ
り、2本の部分梁81,81を構造上有効に継合連結す
るようにしている。このように、2本の部分梁81,8
1を所定距離隔てて並置したこと、部分梁81,81と
梁間ジョイントプレート82とを高力ボルト831で締
結したこと、高力ボルト831のない状態では梁間ジョ
イントプレート82が部分梁81の長手方向にスライド
し得るように緩い嵌合関係にしたこと等により、この梁
間ジョイントプレート82は、火災時の桁側天井大梁の
熱的伸びを吸収し得る熱変形吸収機構として機能し得る
ようになっている。
【0020】また、上記各妻側天井大梁10は、継合梁
の桁側天井大梁8とは異なり、連続梁であり、長さ寸法
が2,163mmである1本の溝形鋼からなっている。
なお、部分梁81,81,妻側天井大梁10及び梁間ジ
ョイントプレート82には、柱6と同一組成の耐火鋼
(熱膨張係数α=1.45×10-5)から形成された溝
形鋼が用いられる。また、高力ボルト831には、熱膨
張係数の高い高張力鋼から形成されたものが使用され
る。
【0021】また、建物ユニット5の床構造体におい
て、上記各床パネル11は、厚さ125mmのALC版
(Autoclaved Light Weight Concrete;気泡コンクリー
ト版)からなり、これにより、耐火時間2時間以上(JI
S A 1304 建築構造部分の耐火試験方法による)の耐火
性能が確保されている。床パネル11,11,…は、図
5及び図6に示すように、長方形の板状体で、桁側床大
梁7,7の長手方向に短辺を沿わせ、長辺同士を順次隣
接させた状態で、桁側床大梁7,7間に架け渡されてお
り、それぞれの短辺側両端部が、桁側床大梁7,7のウ
ェブ内側面にワンサイドリベット26,26,…で固定
された受け部材27,27と押さえ部材28,28とに
挟持され、これらを貫通するボルト29,29とナット
30,30とで強固に締結されて、各桁側床大梁7に固
定されている。
【0022】さらに、図6に示すように、隣接する各床
パネル11の相対向する側端面の上端には、一方に断面
矩形の凹部31a、他方に断面矩形の凸部31bが設け
られ、これらが互いに所定の常温時重合幅を確保した状
態で重ね合わせられている。ここで、一方の桁側床大梁
7の梁間ジョイントプレート72と、他方の桁側床大梁
7の梁間ジョイントプレート72とを結ぶ部位にも、床
パネル目地部が生じるように設定されていて、この部位
における床パネル目地部では、他の部位における床パネ
ル目地部に比して、隣接する床パネル11,11同士の
常温時重合幅が比較的小さ目に設定されている。また、
床大梁7,9には、上フランジ上面から(床パネル11
と交差する部分を除く)開口面にかけて、厚さ12.5
mmのセラミックファイバや珪酸カルシウム板等の耐火
被覆材32,32が被せられて耐火被覆されている。な
お、梁間ジョイントプレート72の部位には、両側の部
分梁71,71に跨った状態で耐火被覆材32が被せら
れている。床パネル11の上面にはパーティクルボード
等の根太受け33,…が配設され、根太受け33,…の
上面には床根太34,34,…が取着され、さらに、床
根太34,34,…の上面にはパーティクルボード等の
床面材35が貼着されている。
【0023】また、図7に示すように、建物ユニットの
天井構造体において、相対向する2本の桁側天井大梁
8,8間には、一対のガゼットプレート36,37を介
して、各天井小梁12が架け渡されて固定されている。
各天井小梁12の下端部には、木質の天井根太38,…
が設置され、天井根太38,…の下端部には、天井根太
38,…の長手方向に直交する方向に天井野縁39,3
9,…が取着され、さらに、これら天井野縁39,3
9,…の下面に石膏ボード等の天井面材16が貼着され
ている。各天井大梁8,10には、同図に示すように、
下フランジ下面から開口面経由の上フランジ上面端部に
かけて、厚さ12.5mmのセラミックファイバや珪酸
カルシウム板等の耐火被覆材40が被せられて耐火被覆
されている。なお、梁間ジョイントプレート82の部位
には、両側の部分梁81,81に跨った状態で耐火被覆
材40が被せられている。
【0024】また、上記壁パネルのうち、外壁パネル1
3は、図3に示すように、例えば、厚さ100mmのA
LC版等の耐火時間2時間以上(JIS A 1304 建築構造
部分の耐火試験方法による)の耐火材料で形成され、ロ
ックウールを介して床大梁7,9及び天井大梁8,10
に締結されている。内壁パネル14は珪酸カルシウム板
と石膏ボードとの積層からなる厚さ68mmの耐火性の
積層版で形成され、外壁パネル13と内壁パネル14と
の間には、ガラスウールやロックウール等の断熱材・吸
音材が充填されている。また、上記界壁パネル15は、
各戸毎に空間を仕切るもので、珪酸カルシウム板とガラ
ス繊維入り石膏ボードとの積層からなる厚さ116mm
の積層版で形成され、これにより、耐火時間2時間以上
(JIS A1304 建築構造部分の耐火試験方法による)の耐
火区画が構成されている。
【0025】次に、図9を参照して、この例の建物ユニ
ット5,5,…から構成されるユニット建築物の組立手
順について説明する。上記構成の建物ユニット5は、建
物の工業生産化率を高めるために、予め工場において、
運搬可能な大きさの箱形のものとして生産された後、建
築現場に輸送されて、施工・組立される。組立は、例え
ば、図9(a)〜(d)に示す作業順序で行われる。す
なわち、まず、同図(a)に示すように、予め構築され
た基礎41の上に鉄板42を置き、同図(b)に示すよ
うに、この鉄板42の上にクレーン車43を配置させ
る。そして、クレーンによって、一階建物ユニット5,
5を順次吊り上げ、基礎41上の片側半分に据え付けて
行く。このとき、据え付けられた一階建物ユニット5,
5,…を基礎41に対してアンカーボルトで締結固定す
ると共に、隣接する一階建物ユニット5,5同士を柱間
で剛接合する。
【0026】次に、クレーンにより、各二階建物ユニッ
ト5を対応する一階建物ユニット5の上部に積み上げ
る。このとき、二階建物ユニット5における柱脚のピン
挿通孔24,24に一階建物ユニット5における柱頭の
ガイドピン22,22が挿通される状態で積み重ねる
と、自然と精度良い位置決めが行われ、一階建物ユニッ
ト5における柱頭の上下階接合ボルト21が二階建物ユ
ニット5における柱脚のボルト挿通孔23に挿通された
状態になるので、図示せぬ接合用ナットと上下階接合ボ
ルト21とで締結することにより、上下階を剛接合す
る。また、隣接する二階建物ユニット5,5同士を柱間
で剛接合する。次に、三階建物ユニット5,5,…を、
上記と同様の方法で二階建物ユニット5,5,…の上に
積み重ね、二階ユニット5,5,…に固定すると共に、
隣接する三階建物ユニット5,5同士を柱間で剛接合す
る。この後、三階建物ユニット5,5,…の上部に屋根
を設置する。次に、図9(c)に示すように、クレーン
車43を基礎41の外側に移動させて、その場所から、
基礎41上の残りの半分に、建物ユニット5,5,…
を、先と同様にして順に積み上げて行き、屋根を設置し
て、同図(d)に示すように、三階建ユニット建築物を
概略完成させる。
【0027】なお、上記三階建ユニット建築物におい
て、隣接する建物ユニットの柱間には、厚さ12.5m
mのセラミックファイバや珪酸カルシウム等の耐火被覆
材が現地にて被覆される。この結果、隣接して集合する
柱6,6,…は、予め工場で取着された耐火被覆材25
と合わせて、一括して耐火被覆材で耐火被覆され、これ
によって、少なくとも1時間継続する火災の下で、各柱
6の平均鋼材温度が350℃は越えても600℃は越え
ないようになされている(なお、柱6の平均鋼材温度が
600℃まで昇温することは構造安全上許容される)。
【0028】また、隣接する建物ユニット間において、
床大梁7(又は9)間のわたり部、及び天井大梁8(又
は10)間のわたり部には、厚さ12.5mmのセラミ
ックファイバや珪酸カルシウム板等の耐火被覆材が現地
にて被覆される。この結果、隣接して集結する2本の床
大梁7(又は9)及び2本の天井大梁8(又は10)
は、予め工場で取着された耐火被覆材32,40と合わ
せて、耐火被覆材及び床パネル11,11とによって一
括して耐火被覆され、これによって、少なくとも1時間
継続する火災の下で、床大梁7,9及び天井大梁8,1
0の平均鋼材温度が350℃は越えても600℃は越え
ないようになされている(なお、床大梁7,9及び天井
大梁8,10の平均鋼材温度が600℃まで昇温するこ
とは構造安全上許容される)。
【0029】さらに、床大梁7(又は9)−床大梁7
(又は9)間のわたり部には床面材35と同一素材の床
わたり材が、天井大梁8(又は10)−天井大梁8(又
は10)間のわたり部には天井面材16と同一素材の天
井わたり材が、それぞれ現地にて貼着される。これら床
わたり材及び天井わたり材は、耐力性のない部材であ
り、構造耐力を論ずる上では、ユニット間の接合には何
等寄与していないと考えることができる。
【0030】次に、この例の耐火構造の作用について説
明する。図10は、平穏時における桁側床大梁7の状態
を示す図であり、同図(a)は同図(b)のA−A線に
沿う断面図、また、図11は、火災時における桁側床大
梁7の状態を示す図であり、同図(a)は同図(b)の
B−B線に沿う断面図である。なお、図10(a)及び
図11(a)は、桁側天井大梁8の継合部をも示してい
る。梁間ジョイントプレート72(82)の介在によ
り、2本の部分梁71(又は81)は構造上有効に剛接
合している。すなわち、図10に示すように、高力ボル
ト731(831)と高力ナット732(832)との
強い締め付けで、梁間ジョイントプレート72(82)
と部分梁71(81)との接合面に強い非常に大きな摩
擦力が発生するので、一方の部分梁71(又は81)に
加えられる地震力や風圧等の水平力を他方の部分梁71
(又は81)に伝達することができる。また、一方の部
分梁71(又は81)に加えられる積載荷重等の垂直荷
重を他方の部分梁71(81)と分担して支持すること
もできる。それ故、従来の連続梁(非継合梁)と同様
に、架構の安定性・安全性を確保することができる。
【0031】これに対して、火災時には、この例の建物
ユニット5の主要構造部である柱6や床大梁7,9や天
井大梁8,10は、600℃まで加熱される。上記した
ように、これらの主要構造部は、いずれも耐火鋼からな
るものなので、600℃の加熱によっても耐力性を消失
することはないが、高温故、熱膨張の影響が顕著とな
る。特に、長さ寸法が2,751mmの部分梁71,8
1は、600℃の高温下では、2本合わせて、47.5
66mm程度熱膨張する。この結果、各部分梁71(8
1)は柱6と梁間ジョイントプレート72(82)とに
激しい熱的圧力を加える。一方、図11に示すように、
梁間ジョイントプレート72(82)と部分梁71(8
1)とを強固に締結する高力ボルト731(831)も
加熱されて、軸方向に伸びてしまい、この結果、高力ボ
ルト731(831)と高力ナット732(832)と
による締結が緩んでしまう。継合部の締結が緩むと、梁
間ジョイントプレート72(82)と部分梁71(8
1)との接合面に作用する摩擦力が急激に弱められ、こ
れに伴い、両側の分割梁71,71(81,81)から
梁間ジョイントプレート72(82)に加えられる熱応
力が高力ボルト731(831)の軸部に集中するよう
になる。
【0032】この応力集中の結果、高力ボルト731
(831)が折れてしまう。高力ボルト731(83
1)の折れる態様としては、梁間ジョイントプレート7
2(82)の両側の高力ボルト731(831)が略同
時に折れる場合と、いずれか一方側の高力ボルト731
(831)のみが折れる場合とがある。例えば、図中左
側の高力ボルト731(831)が折れると、2本の部
分梁71,71(81,81)同士の剛接合は解かれ、
それぞれの部分梁71,71(81,81)の剛接合が
解かれた側の先端部は長手方向に対しては自由端のよう
に振る舞うことが可能となる。それ故、図中右側の部分
梁71(81)から熱的に押される梁間ジョイントプレ
ート72(82)と熱膨張する図中左側の部分梁71
(81)とが互いにスライドして、この結果、部分梁7
1(81)の熱応力が吸収される。
【0033】ここで、互いに継合されている2本の部分
梁71,71(81,81)71,81間には予め60
mmの隙間が設けられているので、最大60mmスライ
ドすることが可能であり、空間的にも、2本合わせて4
7.566mmの部分梁71,71(81,81)の熱
膨張を吸収し得る。なお、図中右側の高力ボルト731
(831)が折れる場合や、両側の高力ボルト731
(831)が略同時に折れる場合にも同様のスライド現
象が発生して部分梁71(81)の熱応力が吸収され
る。また、相対向する2つの梁間ジョイントプレート7
2,72間を結ぶ部位における床パネル目地部では、上
記したように、他の部位における床パネル目地部に比し
て、隣接する床パネル11,11同士の常温時重合幅を
比較的小さ目に設定しているので、火災時に、両側の部
分梁71,71が接近してきても、床パネル11,11
同士が衝突するには充分ゆとりがある。加えて、ALC
版からなる床パネル11は圧縮力に対して強い。それ
故、床構造体が崩壊する虞はない。
【0034】このように、この例の構成によれば、桁側
床梁7や桁側天井大梁8の熱的変形は自己完結されるの
で、建物ユニット5から建物ユニットへ、梁の伸びや変
形が加算集積されるのを回避することができる。このた
め、建築物全体としての過大な変形が見られなくなり、
建築物の崩壊を防止することができる。また、梁の熱的
伸びが各建物ユニット5毎に完結されるので、耐火区画
をむやみに設ける必要がない。すなわち、従来のように
建築物内を耐火間仕切壁によって区画しなくて済むの
で、室内を広く使うことができ、間取り等の多様なプラ
ンに対応することができる。
【0035】以上、この発明の実施例を図面を参照して
詳述してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られる
ものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計
の変更等があってもこの発明に含まれる。例えば、上記
実施例では、建築物の耐火構造を三階建のユニット建築
物に適用した例を示したが、ユニット建築物に限らず、
在来工法による建築物に適用しても良いし、三階建に限
らず、二階建あるいは四階建以上の建物に適用しても良
い。また、隣接する全ての建物ユニット間又は躯体区画
間にこの発明の耐火構造が適用される必要はなく、必要
に応じて、部分的で構わない。また、上述の実施例にお
いては、建物ユニットがラーメン構造で構成される場合
について述べたが、架構の形式はラーメン構造に限定す
るものではなく、ピンブレス構造でも壁式構造でも良
い。なお、上述の実施例では、建物ユニット5,5間の
桁方向に2本の部分梁71,71(81,81)と梁間
ジョイントプレート72(82)とから構成される大梁
を用いる場合について述べたが、これに限らず、必要に
応じて、このような梁を妻方向にも適用しても良い。ま
た、上述の実施例では、2本の部分梁71,71(8
1,81)を同寸に設定するようにした場合について述
べたが、これに限らず、一方を長く他方を短く設定して
も良い。例えば、梁の曲げ応力が「0」となる部位で分
割することが考えられる。
【0036】また、上述の実施例においては、比較的熱
膨張係数の高い高力ボルト731(831)で梁間ジョ
イントプレート72(82)と部分梁71(81)とを
締結して固定する場合について述べたが、例えば、座金
733(833)を低融点合金等の高温時溶ける素材を
用いて形成するようにすれば、座金が733(833)
が溶けることにより、ボルトの接合が緩むのと同一結果
を生むので、熱膨張の低い高力ボルトを用いることがで
きる。また、高力ボルト731(831)に代えて、高
温で溶ける樹脂製の耐力ボルトを使用することもでき
る。また、高力ボルト731(831)を挿通させるた
めに、部分梁71(81)に穿孔されるボルト挿通孔
は、長手方向に長軸を有する長孔としても良い。
【0037】また、上述の実施例においては、梁間ジョ
イントプレート72(82)と部分梁71(81)とを
ボルト接合することにより、構造上有効に剛接合する場
合について述べたが、ボルト接合に代えて、低融点合金
や普通鋼からなる溶加材を用いて、溶接接合するように
しても良い。例えば、図7の曲線(ロ)に示すような、
高温(600℃)で耐力性が消失する普通鋼(JIS−
G3102 SS400材)を溶加材(溶着金属)とし
て用いるようにすれば、同図から明らかなように、常温
では耐力性を有するものの、600℃の高温下では耐力
が163N/mm2以下に減衰し、もはや構造耐力性部
材としては機能し得ず、上述したと同様のスライド現象
が発生する。それ故、このように構成された継合梁の熱
変形も、自己完結形となる。また、梁間ジョイントプレ
ート72(82)の断面形状は、コ字形に限らず、L字
形でも良い。
【0038】
【発明の効果】以上説明したように、この発明の建築物
の耐火構造は、火災時に発生する熱変形を自己完結でき
る継合梁を用いているので、梁から梁へ熱による伸び又
は変形が加算集積されるのを防止できる。それ故、建築
物の過大な変形、ひいては建築物の倒壊を防止すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例である建築物の耐火構造に
適用される建物ユニットの躯体構造を示す斜視図であ
る。
【図2】同躯体構造を分解して示す斜視図である。
【図3】同建物ユニットの柱部を拡大して示す斜視図で
ある。
【図4】同建物ユニットの梁(桁側床大梁)を分解して
示す斜視図である。
【図5】同建物ユニットの床部断面を拡大して示す部分
斜視図である。
【図6】同建物ユニットの床部を拡大して示す部分斜視
図である。
【図7】同建物ユニットの天井部断面を拡大して示す断
面図である。
【図8】同実施例の説明に供される鋼材温度−構造強度
特性を表すグラフである。
【図9】同実施例のユニット建築物の組立手順の一例を
示す斜視図である。
【図10】同実施例の平穏時における作用の説明に供さ
れる説明図である。
【図11】同実施例の火災時時における作用の説明に供
される説明図である。
【図12】従来技術の説明に供される説明図である。
【符号の説明】
5 建物ユニット 6 柱 7 桁側床大梁(継合梁) 8 桁側天井大梁(継合梁) 71,81 部分梁(第1及び第2の部分梁) 72,82 梁間ジョイントプレート(連結部材) 731,831 高力ボルト(ボルト)
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) E04B 1/94 E04B 1/348

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の梁と柱とから骨組が構成されてな
    る鉄骨系の建築物において、任意の対をなす柱間には、
    一方の柱に支持固定される第1の部分梁と他方の柱に支
    持固定される第2の部分梁とを連結部材によって連結継
    合してなる継合梁が架け渡され、前記第1及び第2の部
    分梁は、火災時両側から迫る当該第1及び第2の部分梁
    の伸びを空間的に吸収し得る隙間を隔てて同一直線上に
    並置された状態で、前記連結部材によって構造上有効に
    連結継合され、かつ、前記連結部材は、前記第1及び第
    2の部分梁にボルトで接合されると共に、このボルト接
    合は高温時にボルト軸の軸方向の伸びにより接合緩みが
    生ずる機構とされていることを特徴とする建築物の耐火
    構造。
  2. 【請求項2】 複数の梁と柱とから骨組が構成されてな
    る鉄骨系の建築物において、任意の対をなす柱間には、
    一方の柱に支持固定される第1の部分梁と他方の柱に支
    持固定される第2の部分梁とを連結部材によって連結継
    合してなる継合梁が架け渡され、前記第1及び第2の部
    分梁は、火災時両側から迫る当該第1及び第2の部分梁
    の伸びを空間的に吸収し得る隙間を隔てて同一直線上に
    並置された状態で、前記連結部材によって構造上有効に
    連結継合され、かつ、前記連結部材は、前記第1及び第
    2の部分梁にボルトで接合されると共に、このボルト接
    合は高温時に座金の溶失により接合緩みが生ずる機構と
    されていることを特徴とする建築物の耐火構造。
  3. 【請求項3】 複数の梁と柱とから骨組が構成されてな
    る鉄骨系の建築物において、任意の対をなす柱間には、
    一方の柱に支持固定される第1の部分梁と他方の柱に支
    持固定される第2の部分梁とを連結部材によって連結継
    合してなる継合梁が架け渡され、前記第1及び第2の部
    分梁は、火災時両側から迫る当該第1及び第2の部分梁
    の伸びを空間的に吸収し得る隙間を隔てて同一直線上に
    並置された状態で、前記連結部材によって構造上有効に
    連結継合され、かつ、前記連結部材と前記第1及び第2
    の部分梁が、低融点金属や普通鋼からなる溶加材を用い
    て溶接接合されていることを特徴とする建築物の耐火構
    造。
  4. 【請求項4】 前記建築物が、複数の梁と柱とから箱形
    に骨組が構成されてなる鉄骨系の建物ユニットを複数個
    水平方向及び垂直方向に連結配置してなるユニット建物
    であることを特徴とする請求項1,2もしくは3記載の
    建築物の耐火構造。
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