JPH0762745A - 建築物の耐火構造 - Google Patents

建築物の耐火構造

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JPH0762745A
JPH0762745A JP21598593A JP21598593A JPH0762745A JP H0762745 A JPH0762745 A JP H0762745A JP 21598593 A JP21598593 A JP 21598593A JP 21598593 A JP21598593 A JP 21598593A JP H0762745 A JPH0762745 A JP H0762745A
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JP
Japan
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building
beams
fire
partial
connecting member
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JP21598593A
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English (en)
Inventor
Yukari Murayama
ゆかり 村山
Katsunori Onishi
克則 大西
Naoto Tanaka
直人 田中
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Sekisui Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sekisui Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 火災による梁の伸びが梁から梁へ加算集積さ
れるのを回避して、建築物の過大変形、ひいては倒壊を
防止する。 【構成】 梁7,8と柱6とから箱形に構成されてなる
鉄骨系の建物ユニットの長辺側の柱6,6間には、一方
の柱6に固定される第1の部分梁71,81と他方の柱
6に固定される第2の部分梁71,81とを連結部材7
2,82によって連結継合してなる継合梁7,8が架け
渡されている。第1及び第2の部分梁71,81は、火
災時両側から迫る当該第1及び第2の部分梁71,81
の伸びを空間的に吸収し得る隙間を隔てて、連結部材7
2,82によって構造上有効に連結継合され、かつ、連
結部材72,82は、火災時両側から迫る第1及び第2
の部分梁71,81の伸びを力学的に吸収し得る材料に
よって形成されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、建築物の耐火構造に
関し、特に、共同住宅、病院、寄宿舎等、三階建以上
で、かつ、長大な耐火建築物に適用して好適である。
【0002】
【従来の技術】共同住宅、病院、寄宿舎等を用途とした
三階建以上の建築物は、建築基準法に基づき、所定の耐
火性能を有する耐火構造でなければならず、また、所定
の耐震性能も有しなければならないことから、柱と梁と
がラーメン構造に接合された鉄骨骨組を有して構築され
るものが多い(特開昭63−165629号公報)。と
ころで、従来の鋼材は、350℃で降伏点が常温時耐力
の2/3近くにまで低下するため、柱や梁等の鉄骨の周
りを厚い耐火被覆材で被覆する必要があった。
【0003】一方、近年、クロムやモリブデン等の元素
を微小量含めることで、高温時強度を従来鋼(以下、普
通鋼という)に較べて著しく高めた耐火鋼が開発されて
いる(”建築士”'93.6:P39-41参照)。この耐火鋼は、
600℃の高温下でも常温時耐力の2/3以上の耐力
(降伏点)を維持することから、耐火建築物の柱や梁等
として用いられるようになっている(”建築技術”'92.
4:P170-183参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記耐
火鋼を用いて長大な耐火建築物を構築した場合には、火
災時、高温時耐力は保証される反面、鉄骨温度が普通鋼
より大幅に高くなることから、架構に過大な熱変形が生
じ、ひいては架構が倒壊する畏れがある。すなわち、普
通鋼の鉄骨骨組からなる耐火建築物の場合には、鉄骨の
周りは、火災時、鉄骨温度を350℃以下に抑えるため
に、厚い耐火被覆材で被覆されるので、図10(a)に
示すように、梁1,1,…や柱2,2,…の火災時の熱
膨張は小さく、したがって架構の熱変形は通常ほとんど
問題とならない。これに対して、耐火鋼の鉄骨骨組から
なる耐火建築物の場合には、火災時、鉄骨温度が600
℃まで加熱されても構造安定上許容されるので、鉄骨の
周りは、薄い耐火被覆材で被覆されることになる。それ
故、火災時、鉄骨は600℃まで加熱されるので、熱膨
張が無視できなくなる。特に、長大な耐火建築物の場合
には、同図(b)に示すように、個々の梁3,3,…や
柱4,4,…に生じる熱膨張が加算集積され、ついに
は、耐火建築物の端部において、過大な熱変形が生じ、
架構が倒壊しかねない。
【0005】過大な熱変形や架構の倒壊を防止するに
は、建築物内の火災性状の激しい範囲を小さく抑えて、
火炎による熱影響を受ける柱や梁がなるべく少なくて済
むように、建築物内を耐火界壁によって区画することが
考えられる。しかし、耐火区画に頼り過ぎれば、間取り
等のプランに制約が加わり、室内を広く使うことができ
ない等の不都合が生じる。
【0006】この発明は上述の事情に鑑みてなされたも
ので、火災による建築物の過大な変形、ひいては建築物
の倒壊を防止することができると共に、間取り等の多様
なプランに対応できる建築物の耐火構造を提供すること
を目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、請求項1記載の建築物の耐火構造は、複数の梁と柱
とから骨組が構成されてなる鉄骨系の建築物において、
任意の対をなす柱間には、一方の柱に支持固定される第
1の部分梁と他方の柱に支持固定される第2の部分梁と
を連結部材によって連結継合してなる継合梁が架け渡さ
れ、上記第1及び第2の部分梁は、火災時両側から迫る
当該第1及び第2の部分梁の伸びを空間的に吸収し得る
隙間を隔てて同一直線上に並置された状態で、上記連結
部材によって構造上有効に連結継合され、かつ、上記連
結部材は、火災時両側から迫る上記第1及び第2の部分
梁の伸びを力学的に吸収し得る材料によって形成されて
いることを特徴としている。
【0008】また、請求項2記載の建築物の耐火構造
は、複数の梁と柱とから箱形に骨組が構成されてなる複
数の鉄骨系の建物ユニットを複数個水平方向及び垂直方
向に連結配置してなるユニット建築物において、少なく
とも一つの建物ユニットの骨組を構成する任意の柱間に
は、一方の柱に支持固定される第1の部分梁と他方の柱
に支持固定される第2の部分梁とを連結部材によって連
結継合してなる継合梁が架け渡され、上記第1及び第2
の部分梁は、火災時両側から迫る当該第1及び第2の部
分梁の伸びを空間的に吸収し得る隙間を隔てて同一直線
上に並置された状態で、上記連結部材によって構造上有
効に連結継合され、かつ、上記連結部材は、火災時両側
から迫る上記第1及び第2の部分梁の伸びを力学的に吸
収し得る材料によって形成されていることを特徴として
いる。
【0009】また、請求項3記載の発明は、請求項1又
は2記載の建築物の耐火構造であって、上記梁と柱と
を、高温時でも必要な耐力を維持し得る耐火鋼から形成
すると共に、上記連結部材を、常温では必要な耐力を有
するが、高温時には必要な耐力を消失する構造用材料か
ら形成するようにしたことを特徴としている。
【0010】さらにまた、請求項4記載の発明は、請求
項1又は2記載の建築物の耐火構造であって、上記連結
部材を、高温時には湾曲又は屈曲することにより両側か
ら迫る上記第1及び第2の部分梁を吸収することがで
き、一方、常温時には元の伸張状態に戻ることができる
形状記憶合金から形成するようにしたことを特徴として
いる。
【0011】
【作用】この発明の構成において、任意の対をなす柱間
の一方の柱に支持固定された第1の部分梁の先端部と、
他方の柱に支持固定された第2の部分梁の先端部との間
には、火災時両側から迫る第1及び第2の部分梁の熱的
伸びを見込んだ隙間が設けられている。しかしながら、
これら2つの部分梁は、上記隙間を確保した状態で常温
時耐力性を有する連結部材によって相互に接合されてい
る。それ故、この連結部材は、通常は、一方の部分梁に
作用する水平力を他方の部分梁に伝達することができ
る。また、一方の部分梁に加えられる荷重の一部を他方
の梁に支持させることもできる。このため、通常の梁と
同様に、構造安定性を確保することができる。一方、一
旦火災になれば、この連結部材は、火災時両側から迫る
第1及び第2の部分梁の熱的伸びを力学的にも空間的に
も吸収し得る。このため、この発明の構成によれば、建
築物が長大な場合でも、継合梁毎に(すなわち躯体区画
又は建物ユニット毎に)熱変形が完結され、梁から梁へ
熱による伸び又は変形が加算集積される連続梁の欠点を
回避できる。それ故、火災による建築物の過大な変形、
ひいては建築物の倒壊を防止することができる。
【0012】
【実施例】以下、図面を参照してこの発明の実施例につ
いて説明する。なお、この実施例を述べるにあたり、三
階建のユニット建築物を例にとり、その耐火構造につい
て説明する。図1は、この例の建築物の耐火構造に適用
される建物ユニットの躯体構造を示す斜視図、図2は、
同躯体構造を分解して示す斜視図、図3は、同建物ユニ
ットの柱部を拡大して示す斜視図、図4は、同建物ユニ
ットの床部断面を拡大して示す断面図、図5は同部分斜
視図、また、図6は、同建物ユニットの天井部断面を拡
大して示す断面図である。
【0013】まず、図1及び図2に示すように、建物ユ
ニット5は、ユニット四隅に立設される4本の角型鋼管
製の柱6,6,…と、ユニット長辺側において相対向す
る2本の柱6,6の下端部間及び上端部間に架け渡され
る各2本の概略溝形鋼製の桁側床大梁7,7、桁側天井
大梁8,8と、ユニット短辺側において相対向する2本
の柱6,6の下端部間及び上端部間に架け渡される各2
本の全部溝形鋼製の妻側床大梁9,9、妻側天井大梁1
0,10と、複数の床パネル11,11,…と、複数の
溝形鋼製の天井小梁12,12,…とから箱形の躯体が
構成され、この躯体に、図3,図4及び図6に示す壁パ
ネル(外壁パネル13、内壁パネル14、界壁パネル1
5や、天井面材16が、ボルトやタッピングビス等の固
定具を用いて取着されることにより構成されている。な
お、建物ユニットのどの側面にどの種の壁パネルが取着
されるかは、建物ユニットがユニット建築物のどの部分
を構成するかによって決定され、壁パネルの取着個数及
び配置状況によって、コの字壁状の建物ユニット、L字
壁状の建物ユニット等が存在する。
【0014】ここで、上記各柱6には、高温時耐力の優
れる耐火鋼(SS400材)から形成された125mm
角の軽量角形鋼管が用いられている。図7の曲線(イ)
は、この例の柱6に適用される耐火鋼の鋼材温度−構造
強度特性曲線を表している。同図に示すように、一般
に、鋼材は温度の上昇に伴い耐力が劣化する傾向を示す
が、この例の耐火鋼は、同図から明らかなように、60
0℃の高温下でも、依然、この鋼材の常温時耐力の2/
3以上の耐力、すなわち、163N/mm2以上の耐力
が維持される。各柱6の上端部には、図3に示すよう
に、互いに直交する2つのコ字状のジョイントピース1
7,17が溶接により水平方向に突設されていて、これ
らジョイントピース17,17を介して、各柱6と各天
井大梁8,10が溶接により結合されている。また、各
柱6の下端部にも、2つのコ字状のジョイントピース1
8,18が溶接により水平方向に突設されていて、これ
らジョイントピース18,18を介して、各柱6と各床
大梁7,9が溶接により結合されている。なお、各ジョ
イントピース17,18も柱6と同一組成の耐火鋼から
形成されている。
【0015】また、柱6の上端面には、同耐火鋼からな
る上閉塞板19が溶接され、柱6の下端面には、同耐火
鋼板からなる下閉塞板20が溶接されている。上閉塞板
19には、中央部位に上下階接合ボルト21が植設さ
れ、また、その両側で互いに対角をなす2つのコーナ寄
りの部位には、位置決め用のガイドピン22,22がそ
れぞれ植設されている。なお、各ガイドピン22は、そ
の位置決め機能の性質から、上下階接合ボルト21より
も軸長に形成されている。一方、下閉塞板20には、中
央部位に(下階建物ユニット5の)上下階接合ボルト2
1が挿通されるボルト挿通孔23が穿設され、また、そ
の両側で互いに対角をなす2つのコーナ寄りの部位に
は、(下階建物ユニット5の)ガイドピン22,22が
それぞれ挿通されるピン挿通孔24,24が穿孔されて
いる。さらに、柱6は、床大梁7,9及び天井大梁8,
10と接合している上下端部を除く部分のうち、建物ユ
ニット5内部を臨む2つの側面が、予め工場において、
厚さ12.5mmのセラミックファイバや珪酸カルシウ
ム板等の耐火被覆材25によって耐火被覆されている。
【0016】上記各桁側床大梁7は、図2に示すよう
に、共に溝形鋼から形成された概略同一寸法(この例で
は2,751mm)の2本の部分梁71,71と、これ
ら部分梁71,71を互いに所定の距離(この例では6
0mm)隔てた状態で長手方向に継合する梁間ジョイン
トプレート72とからなっていて、継合後の梁全長が
5,562mmになるように設定されている。すなわ
ち、この梁間ジョイントプレート72は、各部分梁71
の継合側先端部におけるウェブの外面に当てがわれ、溶
接されて固定されることにより、2本の部分梁71,7
1を構造上有効に継合している。
【0017】ここで、各部分梁71は、柱6と同一組成
の耐火鋼(熱膨張係数α=1.45×10-5)から形成
され、一方、梁間ジョイントプレート72は、高温時に
耐力性が消失する普通鋼(JIS−G3102 SS4
00材)から形成されている。図7の曲線(ロ)は、こ
の例の梁間ジョイントプレートに適用される普通鋼の鋼
材温度−構造強度特性曲線を表し、同図から明らかなよ
うに、この普通鋼は、常温では耐力性を有するものの、
600℃の高温下では耐力が163N/mm2以下に減
衰し、もはや構造耐力性部材としては機能し得ない。上
記各妻側床大梁9は、桁側床大梁7の部分梁71と同一
組成の溝形耐火鋼の単材(長さ寸法2,163mm)か
らなっている。
【0018】上記各桁側天井大梁8は、桁側床大梁7と
同様に、共に溝形鋼から形成された概略同一寸法(この
例では2,751mm)の2本の部分梁81,81と、
これら部分梁81,81を互いに所定の距離(この例で
は60mm)隔てた状態で長手方向に継合する梁間ジョ
イントプレート82とからなっていて、継合後の梁全長
が5,562mmになるように設定されている。すなわ
ち、この梁間ジョイントプレート82は、各部分梁81
の継合側先端部におけるウェブの外面に当てがわれ、溶
接されて固定されることにより、2本の部分梁81,8
1を構造上有効に継合している。各部分梁81も、桁側
床大梁7の部分梁71と同様に、柱6と同一組成の耐火
鋼(熱膨張係数α=1.45×10-5)から形成され、
一方、梁間ジョイントプレート82は、桁側床大梁7に
おける梁間ジョイントプレート72と同一組成の普通鋼
から形成されている。それ故、ジョイントプレート82
は、600℃の高温下では耐力が163N/mm2以下
に減衰し、もはや構造耐力性部材としては機能し得な
い。上記各妻側天井大梁10は、妻側床大梁9と同様
に、溝形耐火鋼の単材(長さ寸法2,163mm)から
なっている。
【0019】また、建物ユニット5の床構造体におい
て、上記各床パネル11は、厚さ125mmのALC版
(Autoclaved Light Weight Concrete;気泡コンクリー
ト版)からなり、これにより、耐火時間2時間以上(JI
S A 1304 建築構造部分の耐火試験方法による)の耐火
性能が確保されている。床パネル11,11,…は、図
4及び図5に示すように、長方形状のもので、桁側床大
梁7,7の長手方向に短辺を沿わせ、長辺同士を順次隣
接させた状態で、桁側床大梁7,7間に架け渡されてお
り、それぞれの短辺側両端部が、桁側床大梁7,7のウ
ェブ内側面にワンサイドリベット26,26,…で固定
された受け部材27,27と押さえ部材28,28とに
挟持され、これらを貫通するボルト29,29とナット
30,30とで締結されることにより、各桁側床大梁7
に固定されている。
【0020】さらに、図5に示すように、隣接する各床
パネル11の相対向する側端面の上端には、一方に断面
矩形の凹部31a、他方に断面矩形の凸部31bが設け
られ、これらが互いに所定の常温時重合幅を確保した状
態で重ね合わせられている。ここで、一方の桁側床大梁
7の梁間ジョイントプレート72と、他方の桁側床大梁
7の梁間ジョイントプレート72とを結ぶ部位にも、床
パネル目地部が生じるように設定されていて、この部位
における床パネル目地部では、他の部位における床パネ
ル目地部に比して、隣接する床パネル11,11同士の
常温時重合幅が比較的小さ目に設定されている。また、
床大梁7,9には、上フランジ上面から(床パネル11
と交差する部分を除く)開口面にかけて、厚さ12.5
mmのセラミックファイバや珪酸カルシウム板等の耐火
被覆材32,32が被せられている。なお、梁間ジョイ
ントプレート72の部位では、両側の部分梁71,71
に跨った状態で耐火被覆材32が被せられている。床パ
ネル11の上面にはパーティクルボード等の根太受け3
3,…が配設され、根太受け33,…の上面には床根太
34,34,…が取着され、さらに、床根太34,3
4,…の上面にはパーティクルボード等の床面材35が
貼着されている。
【0021】また、図6に示すように、建物ユニットの
天井構造体において、相対向する2本の桁側天井大梁
8,8間には、一対のガゼットプレート36,37を介
して、各天井小梁12が架け渡されて固定されている。
各天井小梁12の下端部には、木質の天井根太38,…
が設置され、天井根太38,…の下端部には、天井根太
38,…の長手方向に直交する方向に天井野縁39,3
9,…が取着され、さらに、これら天井野縁39,3
9,…の下面に石膏ボード等の天井面材16が貼着され
ている。各天井大梁8,10には、同図に示すように、
下フランジ下面から開口面経由の上フランジ上面端部に
かけて、厚さ12.5mmのセラミックファイバや珪酸
カルシウム板等の耐火被覆材40が被せられている。な
お、梁間ジョイントプレート82の部位では、両側の部
分梁81,81に跨った状態で耐火被覆材40が被せら
れている。
【0022】また、上記壁パネルのうち、外壁パネル1
3は、図3に示すように、例えば、厚さ100mmのA
LC版等の耐火時間(JIS A 1304 建築構造部分の耐火
試験方法による)の耐火材料で形成され、ロックウール
を介して床大梁7,9及び天井大梁8,10に締結され
ている。内壁パネル14は珪酸カルシウム板と石膏ボー
ドとの積層からなる厚さ68mmの耐火性の積層版で形
成され、外壁パネル13と内壁パネル14との間には、
ガラスウールやロックウール等の断熱材・吸音材が充填
されている。また、上記界壁パネル15は、各戸毎に空
間を仕切るもので、珪酸カルシウム板とガラス繊維入り
石膏ボードとの積層からなる厚さ116mmの積層版で
形成され、これにより、耐火時間1時間以上(JIS A 13
04 建築構造部分の耐火試験方法による)の耐火区画が
構成されている。
【0023】次に、図8を参照して、上記構成のユニッ
ト建物5,5,…を集積してなるこの例のユニット建築
物の組立手順について説明する。上記構成の建物ユニッ
ト5は、建物の工業生産化率を高めるために、予め工場
において、運搬可能な大きさの箱形のものとして生産さ
れた後、建築現場に輸送されて、施工・組立される。組
立は、例えば、図8(a)〜(d)に示す作業順序で行
われる。すなわち、まず、同図(a)に示すように、予
め構築された基礎41の上に鉄板42を置き、同図
(b)に示すように、この鉄板42の上にクレーン車4
3を配置させる。そして、クレーンによって、一階建物
ユニット5,5を順次吊り上げ、基礎41上の片側半分
に据え付けて行く。このとき、据え付けられた一階建物
ユニット5,5,…を基礎41に対してアンカーボルト
で締結固定すると共に、隣接する一階建物ユニット5,
5同士を柱間で剛接合する。
【0024】次に、クレーンにより、各二階建物ユニッ
ト5を対応する一階建物ユニット5の上部に積み上げ
る。このとき、二階建物ユニット5における柱脚のピン
挿通孔24,24に一階建物ユニット5における柱頭の
ガイドピン22,22が挿通される状態で積み重ねる
と、自然と精度良い位置決めが行われ、一階建物ユニッ
ト5における柱頭の上下階接合ボルト21が二階建物ユ
ニット5における柱脚のボルト挿通孔23に挿通された
状態になるので、図示せぬ接合用ナットと上下階接合ボ
ルト21とで締結することにより、上下階を剛接合す
る。また、隣接する二階建物ユニット5,5同士を柱間
で剛接合する。次に、三階建物ユニット5,5,…を、
上記と同様の方法で二階建物ユニット5,5,…の上に
積み重ね、二階ユニット5,5,…に固定すると共に、
隣接する三階建物ユニット5,5同士を柱間で剛接合す
る。この後、三階建物ユニット5,5,…の上部に屋根
を設置する。次に、図8(c)に示すように、クレーン
車43を基礎41の外側に移動させて、その場所から、
基礎41上の残りの半分に、建物ユニット5,5,…
を、先と同様にして順に積み上げて行き、屋根を設置し
て、同図(d)に示すように、三階建ユニット建築物の
躯体を完成させる。
【0025】なお、上記三階建ユニット建築物におい
て、隣接する建物ユニットの柱間には、厚さ12.5m
mのセラミックファイバや珪酸カルシウム等の耐火被覆
材が現地にて被覆される。この結果、隣接して集合する
柱6,6,…は、予め工場で取着された耐火被覆材25
と合わせて、一括して耐火被覆材で耐火被覆され、これ
によって、少なくとも1時間継続する火災の下で、各柱
6の平均鋼材温度が600℃を越えないようになされて
いる(なお、柱6の平均鋼材温度が600℃まで昇温す
ることは構造安全上許容される)。
【0026】また、隣接する建物ユニット間において、
床大梁7(又は9)間のわたり部、及び天井大梁8(又
は10)間のわたり部には、厚さ12.5mmのセラミ
ックファイバや珪酸カルシウム板等の耐火被覆材25が
現地にて被覆される。この結果、隣接して集結する2本
の床大梁7(又は9)及び2本の天井大梁8(又は1
0)は、予め工場で取着された耐火被覆材32,40と
合わせて、耐火被覆材及び床パネル11,11とによっ
て一括して耐火被覆され、これによって、少なくとも1
時間継続する火災の下で、床大梁7,9及び天井大梁
8,10の平均鋼材温度が600℃を越えないようにな
されている(なお、床大梁7,9及び天井大梁8,10
の平均鋼材温度が600℃まで昇温することは構造安全
上許容される)。
【0027】さらに、床大梁7(又は9)−床大梁7
(又は9)間のわたり部には床面材35と同一素材の床
わたり材が、天井大梁8(又は10)−天井大梁8(又
は10)間のわたり部には天井面材16と同一素材の天
井わたり材が、それぞれ現地にて貼着される。これら床
わたり材及び天井わたり材は、耐力性のない部材であ
り、構造耐力を論ずる上では、ユニット間の接合には何
等寄与していないと考えることができる。
【0028】次に、この例の耐火構造の作用について説
明する。梁間ジョイントプレート72,82は、常温時
には耐力性を発揮し得るので、一方の部分梁71(又は
81)に加えられた水平力を他方の部分梁71(又は8
1)に伝達することができる。それ故、この例の桁側床
大梁7及び桁側天井大梁8によっても、ユニット建築物
の構造安定性は損なわれることはない。しかしながら、
火災時には、梁間ジョイントプレート72,82は普通
鋼からなるものなので、鋼材温度が600℃近くになる
と、耐力性を消失してしまう(図6参照)。
【0029】一方、2,751mmの長さ寸法に設定さ
れた耐火鋼製の部分梁71,81は、600℃の高温時
でも耐力性を喪失しないが、上記した熱特性(熱膨張係
数α=1.45×10-5)から、600℃の高温下で
は、2本合わせて、47.566mm程度も熱膨張す
る。この結果、各部分梁71,81は柱6と梁間ジョイ
ントプレート72,82とに激しい圧力を加える。この
状態において、同じく耐火鋼から形成された柱6は高温
時でも耐力性を有するが、梁間ジョイントプレート7
2,82は高温時耐力がないために、今や、部分梁7
1,81は片持梁のように、梁間ジョイントプレート7
2,82側が自由端のように振る舞う状態なっている。
このため、両側の部分梁71,71(81,81)は梁
間ジョイントプレート72,82の方に伸びてきて、こ
れに伴い、梁間ジョイントプレート72,82は、図9
に示すように、湾曲ないしは屈曲するという態様で潰れ
てしまう。換言すれば、梁間ジョイントプレート72,
82は、潰れてしまうという態様により、桁側床大梁7
及び桁側天井大梁8の熱応力を吸収する。
【0030】なお、部分梁71,81と部分梁71,8
1との間には予め60mmの隙間が設けられているの
で、空間的にも、2本合わせて47.566mmの部分
梁71,71(81,81)の熱膨張を吸収し得る。ま
た、相対向する2つの梁間ジョイントプレート72,7
2間を結ぶ部位における床パネル目地部では、上記した
ように、他の部位における床パネル目地部に比して、隣
接する床パネル11,11同士の常温時重合幅を比較的
小さ目に設定しているので、火災時に、両側の部分梁7
1,71が接近してきても、床パネル11,11同士が
衝突するには充分ゆとりがある。加えて、ALC版から
なる床パネル11は圧縮力に強い。それ故、床構造体が
崩壊する虞はない。
【0031】このように、この例の構成によれば、梁の
熱的変形は、各建物ユニット5毎に完結され、建物ユニ
ット5の梁から隣の建物ユニットの梁へ、梁の伸びない
しは変形が加算集積されていくことを回避することがで
きる。このため、建築物全体としての過大な変形が見ら
れなくなり、建築物の崩壊を防止することができる。ま
た、梁の熱的伸びが各建物ユニット5毎に完結されるの
で、耐火区画をむやみに設ける必要がない。すなわち、
従来のように建築物内を耐火間仕切壁によって区画しな
くて済むので、室内を広く使うことができ、間取り等の
多様なプランに対応することができる。
【0032】以上、この発明の実施例を図面を参照して
詳述してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られる
ものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計
の変更等があってもこの発明に含まれる。例えば、上記
実施例では、建築物の耐火構造を三階建のユニット建築
物に適用した例を示したが、ユニット建築物に限らず、
在来工法による建築物に適用しても良いし、三階建に限
らず、二階建あるいは四階建以上の建物に適用しても良
い。また、隣接する全ての建物ユニット間又は躯体区画
間にこの発明の耐火構造が適用される必要はなく、必要
に応じて、部分的で構わない。また、上述の実施例にお
いては、建物ユニットがラーメン構造で構成される場合
について述べたが、架構の形式はラーメン構造に限定す
るものではなく、ピンブレス構造でも壁式構造でも良
い。なお、上述の実施例では、建物ユニット5,5間の
桁方向に2本の部分梁71,71(81,81)と梁間
ジョイントプレート72(82)とから構成される大梁
を用いる場合について述べたが、これに限らず、このよ
うな梁を妻方向にも適用しても良い。また、上述の実施
例では、2本の部分梁71,71(81,81)を同寸
に設定するようにした場合について述べたが、これに限
らず、一方を長く他方を短く設定しても良い。例えば、
梁の曲げ応力が「0」となる部位で分割することが考え
られる。また、上述の梁間ジョイントプレート72,8
2は、長方形の鋼板を用いるようにしたが、熱応力の吸
収性を良くするために、すなわち潰れ易い形状とするた
めに、長手方向中央部がくびれる形状にしても良く、あ
るいは、長手方向中央部に孔部を穿設しても良い。
【0033】また、上述の実施例においては、部分梁や
柱に耐火鋼を適用し、梁間ジョイントプレートには普通
鋼を適用するようにした場合について述べたが、梁間ジ
ョイントプレートの素材としては、普通鋼に限定するも
のではなく、要は、常温で耐力性を有する一方、高温で
耐力性を消失する素材である限り、他の金属材料あるい
は硬質樹脂から形成するようにしても良い。例えば、常
温で耐力性を有する一方、高温で溶けてしまうような樹
脂や低融点合金で連結部材を形成しても良い。また、加
熱時に湾曲ないしは屈曲する形状の記憶に加えて、冷却
の際に伸張する形状(マルテンサイト状態)をも記憶で
きる、いわゆる2方向の形状記憶が可能な形状記憶合金
で連結部材を形成しても良い。また、耐火鋼は、図6の
曲線(イ)で表されるような鋼材温度−構造強度特性の
ものに限らず、これよりも耐火性のの優れるもの、ある
いは、やや劣るものであっても良い。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、この発明の建築物
の耐火構造は、火災時の伸びや変形を自身で完結でき、
他へ影響を及ぼさない継合梁を用いているので、梁から
梁へ熱による伸び又は変形が加算集積される連続梁の欠
点を回避できる。すなわち、火災による熱応力が加算集
積されることに起因する建築物の過大な変形、ひいては
建築物の倒壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例である建築物の耐火構造に
適用される建物ユニットの躯体構造を示す斜視図であ
る。
【図2】同躯体構造を分解して示す斜視図である。
【図3】同建物ユニットの柱部を拡大して示す斜視図で
ある。
【図4】同建物ユニットの床部断面を拡大して示す断面
図である。
【図5】同建物ユニットの床部断面を拡大して示す部分
斜視図である。
【図6】同建物ユニットの天井部断面を拡大して示す断
面図である。
【図7】同実施例の説明に供される鋼材温度−構造強度
特性を表すグラフである。
【図8】同実施例のユニット建築物の組立手順の一例を
示す斜視図である。
【図9】同実施例の作用の説明に供される説明図であ
る。
【図10】従来技術の説明に供される説明図である。
【符号の説明】
5 建物ユニット 6 柱 7 桁側床大梁(継合梁) 8 桁側天井大梁(継合梁) 71,81 部分梁(第1及び第2の部分梁) 72,82 梁間ジョイントプレート(連結部材)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の梁と柱とから骨組が構成されてな
    る鉄骨系の建築物において、任意の対をなす柱間には、
    一方の柱に支持固定される第1の部分梁と他方の柱に支
    持固定される第2の部分梁とを連結部材によって連結継
    合してなる継合梁が架け渡され、前記第1及び第2の部
    分梁は、火災時両側から迫る当該第1及び第2の部分梁
    の伸びを空間的に吸収し得る隙間を隔てて同一直線上に
    並置された状態で、前記連結部材によって構造上有効に
    連結継合され、かつ、前記連結部材は、火災時には両側
    から迫る前記第1及び第2の部分梁の伸びを力学的に吸
    収し得る材料によって形成されていることを特徴とする
    建築物の耐火構造。
  2. 【請求項2】 複数の梁と柱とから箱形に骨組が構成さ
    れてなる鉄骨系の建物ユニットを複数個水平方向及び垂
    直方向に連結配置してなるユニット建築物において、少
    なくとも一つの建物ユニットの骨組を構成する任意の柱
    間には、一方の柱に支持固定される第1の部分梁と他方
    の柱に支持固定される第2の部分梁とを連結部材によっ
    て連結継合してなる継合梁が架け渡され、前記第1及び
    第2の部分梁は、火災時両側から迫る当該第1及び第2
    の部分梁の伸びを空間的に吸収し得る隙間を隔てて同一
    直線上に並置された状態で、前記連結部材によって構造
    上有効に連結継合され、かつ、前記連結部材は、火災時
    両側から迫る前記第1及び第2の部分梁の伸びを力学的
    に吸収し得る材料によって形成されていることを特徴と
    する建築物の耐火構造。
  3. 【請求項3】 前記梁と柱とは、高温時でも必要な耐力
    を維持し得る耐火鋼から形成される一方、前記連結部材
    は、常温では必要な耐力を有するが、高温時には必要な
    耐力を消失する構造用材料から形成されていることを特
    徴とする請求項1又は2記載の建築物の耐火構造。
  4. 【請求項4】 前記連結部材は、高温時には湾曲又は屈
    曲することにより両側から迫る前記第1及び第2の部分
    梁を吸収することができ、一方、常温時には元の伸張状
    態に戻ることができる形状記憶合金から形成されている
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の建築物の耐火構
    造。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010035816A1 (ja) * 2008-09-29 2010-04-01 積水化学工業株式会社 仮設補強部材付き建物ユニット、ユニット建物、及びユニット建物の構築工法
KR20220130327A (ko) * 2021-03-18 2022-09-27 정영환 조립형 모듈러 주택

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