JP2774059B2 - 三階建ユニット建物 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、戸建住宅に適用して
好適な三階建ユニット建物に関する。

【０００２】

【従来の技術】建物の工業生産化率を高める一方式とし
て、ユニット建物の方式が知られている。ユニット建物
は、一棟の建物を、予めいくつかのユニットに分けて工
場生産し、これらを建築現場において施工・組立する方
式の建物である。ユニット建物を構成するユニットを工
法及び主要構造材料に着目して分類すれば、軸組工法が
適用されて組み立てられる鉄骨系のユニットと壁式工法
が適用されて組み立てられる木質系のユニットとが知ら
れている。すなわち、上記鉄骨系のユニットは、特開昭
５４−９３８０７号公報等に記載されているように、四
隅の鋼管柱の上下端間をそれぞれ形鋼梁で剛に結んで箱
形の鉄骨骨組とし、この鉄骨骨組に耐力を持たせたもの
であり、一方、木質系のユニットは、特開昭５５−１５
２２３６号公報等に記載されているように、木製の床枠
組及び壁枠組に構造用の面材を打ちつけて床パネル及び
壁パネルとし、これらの床パネル及び壁パネルを箱形構
造に組み上げて壁全体及び床全体に耐力性を持たせたも
のである。

【０００３】ところで、従来においては、二階建のユニ
ット建物には、鉄骨系のユニットからなるものと木質系
のユニットからなるものとの２種類が存在するが、三階
建のユニット建物としては、耐火性と耐力性とに優れる
鉄骨系のユニットからなるものしか実用上存在していな
かった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、鉄骨系
のユニットは、材料費が高く、また、溶接等の煩雑で精
密な接合作業を伴うため、木質系のユニットに較べて、
コスト高になる傾向がある。まして、三階建鉄骨系ユニ
ット建物ともなると、鉄骨系のユニット数が増加するた
め、相応の価格で販売できず、このことが、三階建戸建
住宅の普及を妨げる一因となっていた。また、三階建ユ
ニット建物を鉄骨系のみに限るのでは、素材の多様化の
要請に反し、ひいては、素材に対する開発意欲の減退を
招いてしまう。一方、三階建戸建住宅に対しては、公共
性・密集性が薄いため、共同住宅、病院、寄宿舎等を用
途とする三階建の建物に対するような厳格な耐火構造基
準が法上要求されているわけではない。この発明は、上
述の事情に鑑みてなされたもので、地震力や風荷重、積
雪荷重等に対する耐力性を確実に維持したまま、低コス
トで生産できる三階建ユニット建物を提供することを目
的としている。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、請求項１記載の三階建ユニット建物は、少なくとも
建物の三階部分を木質系の建物ユニットで構成する一
方、少なくとも上記三階部分を支える一階部分を鉄骨系
の建物ユニットで構成するようにしたことを特徴として
いる。

【０００６】また、請求項２記載の三階建ユニット建物
は、上記木質系の建物ユニットを木質の床枠組及び壁枠
組に構造用の面材が取着されてなる床パネル及び壁パネ
ルを箱形に組み上げた構成とする一方、前記鉄骨系の建
物ユニットを四隅の鋼柱の上下端間がそれぞれ形鋼から
なる天井大梁及び床大梁で剛に結ばれて組み立てられた
箱形の鉄骨骨組を有する構成としたことを特徴としてい
る。

【０００７】さらにまた、請求項３記載の三階建建物ユ
ニットは、上記木質系の建物ユニットには、上記鉄骨系
の建物ユニットの天井大梁の直上に配置された床パネル
の下面側縁に沿って継なぎ下枠が取着固定されていて、
該継なぎ下枠が直下の上記天井大梁に当接状態でボルト
接合されていることを特徴としている。

【０００８】

【作用】この発明の構成において、荷重負担の最も大き
な一階部分には、鉄骨系の建物ユニットが用いられてい
る。それ故、過度の積雪荷重や風荷重、地震力等を受け
ても、建物が倒壊する畏れはない。一方、荷重負担の軽
い三階建部分には、木質系の建物ユニットが用いられて
いる。それ故、三階建ユニット建物を、全体として、低
コストで施工・組立することができる。なお、建物の二
階部分を構成する建物ユニットには、木質系、鉄骨系の
いずれの建物ユニットを用いても良いが、木質系の建物
ユニットを用いれば、経済的に有利である。上記木質系
の建物ユニットの生産には、構造耐力上、壁式工法を適
用するのが好ましく、一方、鉄骨系の建物ユニットの生
産には、鋼材自体の耐力性を活用できるので、軸組工法
を適用するのが好適である。

【０００９】壁式工法が適用された木質系の建物ユニッ
トを軸組工法が適用された鉄骨系の建物ユニットの上に
載置するにあたっては、木質系の建物ユニットにおいて
床パネルの下面側縁に取着固定された継なぎ下枠が、鉄
骨系の建物ユニットの天井大梁の上面に当接状態でボル
ト接合されるようにする。このようにすれば、上階の壁
パネル全体に分散して作用する荷重及び外部応力が、確
実に、下階の軸組に伝達されるので構造耐力上安全であ
る。

【００１０】

【実施例】以下、図面を参照してこの発明の実施例につ
いて説明する。図１は、この発明の一実施例である三階
建ユニット建物の一階部屋部分を構成する建物ユニット
（以下、一階建物ユニットいう）の躯体構造を示す斜視
図、また、図２は、同躯体構造を分解して示す斜視図で
ある。一階建物ユニット１は、軸組（ラーメン）工法を
適用して形成される鉄骨系の居室ユニットであって、図
１及び図２に示すように、角型鋼管からなる４本の柱
２，２，…と、溝形鋼からなる各４本の床大梁３，３，
…、天井大梁４，４，…と、複数の床パネル５，５，…
と、小溝形鋼からなる複数の天井小梁６，６，…とから
箱形の躯体が構成され、この躯体に、図示せぬ壁パネル
（内壁パネル及び外壁パネル）や天井面材が、ボルトや
タッピングビス等の固定具で固定されてなっている。

【００１１】各柱２の上端部には、２つのコ字状のジョ
イントピース７，７が互いに直交する側面から水平方向
に突設されていて、また、各柱２の下端部にも、２つの
コ字状のジョイントピース８，８がジョイントピース
７，７に対応する側面から水平方向に突設されている。
各ジョイントピース７，８には対応する天井大梁４，床
大梁３の先端部がそれぞれ嵌合溶接されていて、このよ
うにして、四隅の柱２，２，…の上下端部間が天井大梁
４，４，…及び床大梁３，３，…で結ばれており、全体
として、箱形の鉄骨骨組が構成されている。

【００１２】上記各床パネル５は、ＡＬＣ版（Autoclav
ed Light Weight Concrete；気泡コンクリート版）から
なる長方形の板状床構造体で、桁側の床大梁３，３の長
手方向に短辺を沿わせ、長辺同士を順次隣接させた状態
で、桁側の床大梁３，３間に架け渡されており、それぞ
れの短辺側両端部が、桁側の床大梁３，３のウェブ内側
面にワンサイドリベットで固定されている。なお、床パ
ネル５，５，…の上面には、図示せぬ床根太が設けら
れ、さらに、床根太の上面にはパーティクルボード等の
図示せぬ床面材が貼着されている。

【００１３】各天井大梁４には、上下フランジとウェブ
とから構成される溝部内にロックウール等の吸音性断熱
材が充填されていて、図２に示すように、上フランジ面
には複数個の上下階接合ボルト９，９，…が、互いに所
定の距離を隔て、かつ、雄ねじ部を上方に向けて突出さ
せた状態で植設されている。一方、各天井大梁４のウェ
ブ面には、隣接する一階建物ユニット１同士を相互に接
合するための図示せぬ水平ボルト挿通孔が穿設されてい
る。

【００１４】また、上記天井小梁６，６，…は、相対向
して配置される２本の桁側の天井大梁４，４間に、互い
に所定の距離を隔てる状態で、架け渡されている。各天
井小梁６の下面には、図示せぬ天井野縁が設けられ、さ
らに、天井野縁の下面には石膏ボード等の天井面材がタ
ッピングビス等で貼着されている。また、上記構成の躯
体に取着される（図示せぬ）壁パネルのうち、外壁パネ
ルには、木片セメント板等の硬質の面材が、また、内壁
パネルには石膏ボード等の不燃性の面材が用いられてい
る。さらに、これら外壁パネルと内壁パネルとの間に
は、ガラスウールやロックウール等の吸音断熱材が充填
されている。なお、壁パネルは、一階建物ユニット１
が、建物のどの箇所を構成するかに応じて取着される。

【００１５】図３は、この例の三階建ユニット建物の二
階・三階部屋部分を構成する建物ユニット（以下、二階
三階建物ユニット、又は二階（三階）建物ユニット等と
いう）を示す斜視図である。二階三階建物ユニット１０
は、壁式工法を適用して形成される木質系の居室ユニッ
トであって、同図に示すように、床パネル１１の３つの
側縁に沿って壁パネル１２，１２，…が立設されて構成
されている。

【００１６】上記床パネル１１は、床根太１３，１３，
…と最外縁の側根太１４，１４に直交してこれらの木口
と突き付けの状態で端根太１５，１５が釘打ちされて方
形の枠組とされ、さらに床根太１３，１３，…及び側根
太１４，１４の相互間に受け材１６，１６，…も取り付
けられて床枠組が形成され、この床枠組の上面に構造用
合板やパーティクルボード等の面材１７が、また、床枠
組の下面に頭つなぎ１８，１８，…がそれぞれ取り付け
られて構成されている。上記頭つなぎ１８，１８，…
は、床パネル１１の裏側において、対応する一階建物ユ
ニット１の天井大梁４の直上に配置されることになる側
根太１４や端根太１５の下面に、かつ、これらの根太１
４，１５の長て方向に沿って当接されて固定されてお
り、一方の側縁部がこれらの根太１４，１５の内面より
も床パネル１１の内側へ突き出されている。各頭つなぎ
１８は、ユニット建物の組立・施工時、対応する一階建
物ユニット１の天井大梁４の上フランジ面に当接されて
ボルトで接合される。

【００１７】上記各壁パネル１２は、縦枠１９，１９，
…の上端と下端とのそれぞれにおいてこれらの木口と突
き付けの状態で上枠２０と下枠２１とがそれぞれ釘打ち
されて壁枠組とされ、この壁枠組の内外面両側に石膏ボ
ードや木片セメント板等の面材２２，２２が取り付けら
れ、さらに、内部に断熱材が装填されて構成されてい
る。また、これらの壁パネル１２には必要に応じ出入口
や窓等の開口部が形成されている。なお、木質系の二階
建ユニット建物用の構造材として従来から汎用されてい
るＪＡＳ寸法形式でいう２０４材（厚さ３８ｍｍ、幅８
９ｍｍ）が、この例の縦枠１９，１９，…にもそのまま
用いられている。

【００１８】図４は、二階三階建物ユニット１０の接合
部の構造を示す断面図である。壁パネル１２は、同図に
示すように、床パネル１１に対し、下枠２１において釘
打ちされることにより立設されている。なお、図３にお
いては、壁パネル１２が床パネル１１の三方の側縁に立
設されてコの字壁をなす二階三階建物ユニット１０が示
されているが、二階三階建物ユニット１０が建物のどの
箇所を構成するかに応じて、例えばＬ字壁をなす二階三
階建物ユニット、二の字壁をなす二階三階建物ユニット
も形成される。

【００１９】上枠２０には、複数個の上下階接合ボルト
２３が、互いに所定の距離を隔て、かつ、雄ねじ部を上
方に向けて突出させた状態で植設されている。上下階接
合ボルト２３は、二階建物ユニット１０にあっては、そ
の直上に載置される三階建物ユニット１０を固定するた
めに用いられ、一方、三階建物ユニット１０にあって
は、対応する屋根ユニットを固定するために用いられ
る。一方、各頭つなぎ１８には、上下階接合ボルト９，
２３を挿通させるためのボルト挿通孔２４が、長手方向
に沿って、かつ、上下階接合ボルト９，２３に対応する
複数箇所に穿設されている。このようにして、二階建物
ユニット１０の各頭つなぎ１８に穿設されたボルト挿通
孔２４には、一階建物ユニット１の天井大梁４に植設さ
れた各上下階接合ボルト９が挿通されるようになってお
り、一方、三階建物ユニット１０の各頭つなぎ１８に穿
設されたボルト挿通孔２４には、二階建物ユニット１０
の上枠２０に植設された各上下階接合ボルト２３が挿通
されるようになっている。

【００２０】上記構成の一階建物ユニット１及び二階三
階建物ユニット１０は、建物の工業生産化率を高めるた
めに、予め工場において、運搬可能な大きさの箱形のも
のとして生産され、建築現場に輸送されて、クレーンで
吊り上げられて施工・組立される。図５は、このように
して完成された三階建ユニット建物２５を概略的に示
し、図６は同三階建ユニット建物２５を階毎に一部分解
して示す。図６に示すように、一階部分は、鉄骨系の一
階建物ユニット１，１，…によって構成され、二階及び
三階部分は木質系の二階三階建物ユニット１０，１０，
…によって構成されている。一階建物ユニット１，１，
…は、基礎２６の上にアンカーボルトで締結固定されて
いて、隣接する１階建物ユニット１，１間同士は、図示
せぬジョイントプレートを介して梁−梁間で相互に剛接
合されている。一階建物ユニット１と二階建物ユニット
１０との接合は、図７に示すように、二階建物ユニット
１０を一階建物ユニットの上部に載置した際に、ボルト
挿通孔２４を経由して各頭つなぎ１８の上面から突出す
る天井大梁４の各上下階接合ボルト９にナット２７を螺
着することによりなされている。一方、二階建物ユニッ
ト１０，１０同士は、図示せぬジョイントプレートを介
して上枠−上枠間で相互に接合されている。同様に、二
階建物ユニット１０と三階建物ユニット１０との接合
は、同図に示すように、三階建物ユニット１０を二階建
物ユニット１０の上部に載置した際に、ボルト挿通孔２
４を経由して各頭つなぎ１８の上面から突出する上枠２
０の各上下階接合ボルト２３にナット２８を螺着するこ
とによりなされている。

【００２１】このように上記構成によれば、荷重負担の
最も大きな一階部分には、鉄骨系の建物ユニットが用い
られている上、二階建物ユニット１０の各頭つなぎ１８
が、一階建物ユニット１の天井大梁４の上面に当接状態
でボルト接合されているので、上階の壁パネル全体に分
散して作用する荷重及び外部応力が、確実に、下階の軸
組に伝達される。それ故、過度の積雪荷重や風荷重、地
震力等を受けても、建物が倒壊する畏れはない。一方、
荷重負担の軽い三階建部分には、木質系の建物ユニット
が用いられているので、三階建ユニット建物を、全体と
して、低コストで施工・組立することができる。

【００２２】以上、この発明の実施例を図面により詳述
してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られるもの
ではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変
更等があってもこの発明に含まれる。例えば、鉄骨系の
一階建物ユニットと木質系の二階建物ユニットとの接合
部は天井大梁−頭つなぎ間に設ける場合に限らず、柱−
頭つなぎ間に設けても良い。同様に、鉄骨系の一階建物
ユニット相互の接合は、梁−梁間に限らず、柱−柱間で
行うようにしても良い。また、上述の実施例において
は、二階建物ユニットを木質系で構成する場合について
述べたが、適宜、鉄骨系で構成するようにしても良い。
このようにしても、全てを鉄骨系で構成する場合に較べ
て、経済的に有利である。

【００２３】

【発明の効果】以上説明したように、この発明の三階建
ユニット建物は、荷重負担の軽い建物の三階部分を木質
系の建物ユニットで構成することにしたので、低コスト
で施工・組立できる。一方、荷重負担の重い一階部分を
鉄骨系の建物ユニットで構成することにしたので、過度
の積雪荷重や風荷重、地震力等を受けても、建物が倒壊
する畏れはない。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施例である三階建ユニット建物
の一階部屋部分を構成する一階建物ユニットの躯体構造
を示す斜視図である。

【図２】同躯体構造を分解して示す斜視図である。

【図３】同三階建ユニット建物の二階・三階部屋部分を
構成する二階三階建物ユニットを示す斜視図である。

【図４】同二階三階建物ユニットの接合部の構造を示す
断面図である。

【図５】同三階建ユニット建物を概略的に示す図であ
る。

【図６】同三階建ユニット建物を階毎に一部分解して示
す分解図である。

【図７】同三階建ユニット建物の接合部の構造を示す断
面図である。

【符号の説明】

１ 一階建物ユニット（鉄骨系の建物ユニット） ２ 柱（鋼柱） ３ 床大梁 ４ 天井大梁 １０ 二階三階建物ユニット（木質系の建物ユニッ
ト） １１ 床パネル １２ 壁パネル １７ 面材 １８ 頭つなぎ（継なぎ下枠） ２５ 三階建ユニット建物

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 少なくとも建物の三階部分を木質系の建
   物ユニットで構成する一方、少なくとも前記三階部分を
   支える一階部分を鉄骨系の建物ユニットで構成したこと
   を特徴とする三階建ユニット建物。
2. 【請求項２】 前記木質系の建物ユニットを、木質の床
   枠組及び壁枠組に構造用の面材が取着されてなる床パネ
   ル及び壁パネルを箱形に組み上げた構成とする一方、前
   記鉄骨系の建物ユニットを、四隅の鋼柱の上下端間がそ
   れぞれ形鋼からなる天井大梁及び床大梁で剛に結ばれて
   組み立てられた箱形の鉄骨骨組を有する構成としたこと
   を特徴とする請求項１記載の三階建ユニット建物。
3. 【請求項３】 前記木質系の建物ユニットには、前記鉄
   骨系の建物ユニットの天井大梁の直上に配置された床パ
   ネルの下面側縁に沿って継なぎ下枠が取着固定されてい
   て、該継なぎ下枠が直下の前記天井大梁に当接状態でボ
   ルト接合されていることを特徴とする請求項２記載の三
   階建ユニット建物。