JP3275895B2 - GaInP系積層構造体の製造方法 - Google Patents
GaInP系積層構造体の製造方法Info
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造体に関し、さらに詳しくは、高移動度電界効果型トラ
ンジスタを構成するのに用いられる、インジウム組成比
が均一なIII−V族化合物半導体電子走行層、スペー
サ層、電子供給層を有するGaInP系積層構造体に関
する。
リ(milli)波帯で動作するショットキー(Sch
ottky)接合型電界効果トランジスタ(略称:ME
SFET)に、リン化ガリウム・インジウム混晶(Ga
XIn1-XP:0≦X≦1)を利用したGaInP系高電
子移動度トランジスタ(TEGFET、MODFETな
どと略称される)がある(IEEE Trans.El
ectron Devices,Vol.37、No.
10(1990)、2141〜2147頁参照)。Ga
InP系MODFETは、例えば、マイクロ波帯域での
信号増幅用途の低雑音(low−noise)MESF
ETとして(IEEE Trans.Electron
Devices、Vol.46、No.1(199
9)、48〜54頁参照)、また、発信用途の電力(p
ower)MESFETとして利用されている(IEE
E Trans.Electron Devices、
Vol.44、No.9(1997)、1341〜13
48頁参照)。
の、断面構造の模式図である。基板10には、{00
1}結晶面を主面とする半絶縁性の砒化ガリウム(化学
式:GaAs)が利用される。基板10の表面上には、
高抵抗のIII−V族化合物半導体層からなる緩衝層1
1が堆積される。緩衝層11上には、n形の砒化ガリウ
ム・インジウム混晶(GaZIn1-ZAs:0<Z≦1)
からなる電子走行層(チャネル層)12が堆積される。
チャネル(channel)層12上には、スペーサ
(spacer)層13が堆積される。スペーサ層13
上には、n形のリン化ガリウム・インジウム混晶(Ga
XIn1-XP:0<X≦1)からなる電子供給層14が堆
積される。電子供給層14のキャリア(電子)濃度は、
珪素(Si)などの拡散し難いn形不純物を故意に添加
(ドーピング)して調整される。電子供給層14上に
は、低接触抵抗のソース(source)電極16及び
ドレイン(drain)電極17の、各オーミック(O
hmic)電極の形成を期して、n形GaAsなどから
なるコンタクト(contact)層15が設けられる
のが一般的である。ソース及びドレイン電極16,17
の間には、コンタクト層15を除去し、リセス(rec
ess)構造部に露呈させたGaXIn1-XP(0<X≦
1)電子供給層14の表面に、ショットキー接合型ゲー
ト(gate)電極18が設けられてTEGFETが構
成されている。
での2次元電子がイオン化散乱に因り妨害されない様
に、チャネル層12と電子供給層14とを空間的に分離
するために設ける機能層である(日本物理学会編、「半
導体超格子の物理と応用」((株)培風館、昭和61年
9月30日発行、初版第4刷)、236〜240頁参
照)。GaInP系TEGFETにあって、スペーサ層
13は、アンドープのGa XIn1-XP(0<X≦1)か
ら一般に構成されている(上記のIEEE Tran
s.Electron Devices,Vol.44
(1997)参照)。GaInP系TEGFETの場合
に拘わらず、スペーサ層は総不純物量の少ない高純度の
アンドープ(undope)層から構成され、その層厚
は大凡、約2ナノメータ(単位:nm)から約10nm
の範囲とするのが一般的である(上記の「半導体超格子
の物理と応用」、18〜20頁参照)。
にあって、雑音指数(noise−figure:N
F)などの主要な特性は電子移動度に依存して変化し、
電子移動度が大である程、都合良く低いNFがもたらさ
れる。これ故に、n形電子供給層14から供給される電
子を、アンドープのGaXIn1-XP(0<X≦1)から
なるスペーサ層13との接合界面12a近傍のGaZI
n1-ZAs(0<Z≦1)電子走行層12の内部領域1
2bに、2次元電子(two−dimensional
electron:TEG)として蓄積させるため
に、電子走行層12とスペーサ層13と接合界面で組成
を急峻に変化させて、高い電子移動度を発現する必要が
ある。
化の容易さ、及びGaXIn1-XP等のリン(元素記号:
P)をIII−V族化合物半導体結晶層の成膜の容易さ
から、図1に例示したGaInP系MODFET用途の
積層構造体1Aを構成する各構成層11〜15は、従来
よりもっぱら有機金属熱分解気相成長(MOCVD)法
により成長されている。MOCVD法に依る、GaIn
P系TEGFET用積層構造体の構成層に関する従来の
成膜技術を省みれば、ガリウム(元素記号:Ga)の原
料を変化させることなく気相成長を継続して構成するの
が一般的となっている。例えば、従来では、トリメチル
ガリウム(化学式:(CH3)3Ga)やトリメチルイン
ジウム(化学式:(CH3)3In)等のトリメチル(t
ri−methyl)化合物を第III族構成元素の原
料とする従来例が知れている(特表平10−50468
5号公報明細書参照)。
nP系TEGFETにあって、スペーサ層はインジウム
含有III−V族化合物半導体であるGaXIn1-XP
(0<X≦1)から構成され、しかも、スペーサ層は一
般的に上記の如くの薄膜から構成される。GaInP系
TEGFET用途の積層構造体の各構成層を第III族
構成元素の原料を同一として成膜する従来のMOCVD
技術にあっては、インジウム組成比(=1−X)を均一
とする薄膜状のスペーサ層が安定して得られないのが問
題となっている。
ではないGaXIn1-XP(0<X≦1)層をスペーサ層
として具備する従来のGaInP系高電子移動度電界効
果型トランジスタにあっては、スペーサ層内でのインジ
ウム組成比の「揺らぎ」により、チャネル層との間で均
一なバンドオフセット(band off−set)が
確保されず、故に均一な相互コンダクタンス(略称:g
m)並びにピンチオフ(pinch−off)電圧が帰
結されない不都合が生じている。
れるGaXIn1-XP(0<X≦1)スペーサ層をもたら
すTEGFET用途の積層構成を提示する。これより、
ピンチオフ電圧等の特性の均一性に優れるGaInP系
高電子移動度トランジスタを提供するものである。
を解決すべく鋭意努力検討した結果、本発明に到達し
た。即ち、本発明は、[1]半絶縁性のGaAs単結晶
基板上に、緩衝層、GaZIn1-ZAs(0<Z≦1)電
子走行層、それぞれGaXIn1-XP(0<X≦1)から
なるスペーサ層と電子供給層とを含むGaInP系積層
構造体に於いて、緩衝層が第III族元素のトリメチル
化合物を原料として気相成長されたAlYGa1-YAs
(0≦Y≦1)層からなり、緩衝層と電子走行層との間
にトリエチルガリウムをガリウム原料として気相成長さ
れたGaAs層を有し、電子走行層がn形の導電形を有
し、スペーサ層と電子供給層とがトリメチルガリウムを
ガリウム原料として気相成長されたn形層であり、各層
のインジウム組成比(1−X)の均一性が±2%以内で
あり、スペーサ層と電子供給層とが接していることを特
徴とするGaInP系積層構造体、[2]電子走行層の
成膜後の表面粗さ(ヘイズ:haze)が60ppm以
下であり、電子走行層がトリエチルガリウムをガリウム
原料として気相成長させたGaAs層に接していること
を特徴とする[1]に記載のGaInP系積層構造体、
[3]スペーサ層と電子走行層とが接し、スペーサ層の
成膜後の、表面のヘイズが100ppm以下であること
を特徴とする[1]または[2]に記載のGaInP系
積層構造体、[4]電子供給層の成膜後の、表面のヘイ
ズが200ppm以下であることを特徴とする[1]〜
[3]の何れか1項に記載のGaInP系積層構造体、
[5]電子走行層、スペーサ層、電子供給層を、結合価
を1価とするシクロペンタジエニルインジウムをインジ
ウムの原料として有機金属熱分解気相成長法により形成
することを特徴とする[1]〜[4]の何れか1項に記
載のGaInP系積層構造体、に関する。
の発明に係わる第1の実施形態を概念的に説明するため
の積層構造体2Aの断面模式図である。本形態の実施に
あたり、基板201として、{100}結晶面を主面と
する半絶縁性のGaAs単結晶が利用できる。{10
0}面より例えば[110]結晶方向に角度にして±1
0度程度に傾斜した表面を有する{100}面を主面と
する半絶縁性GaAs単結晶も基板201として利用で
きる。また、基板201には、室温の抵抗率(比抵抗)
を107オーム・センチメートル(単位:Ω・cm)以
上とするGaAs単結晶が好ましく利用できる。
リメチルガリウム((CH3)3Ga)等のトリアルキル
ガリウム化合物をガリウム(Ga)源としするMOCV
D法により気相成長させた、好ましくはアンドープのA
lXGa1-XAs(0≦X≦1)層からなる超格子周期構
造体から構成する。トリメチル(tri−methy
l)ガリウム化合物に付加しているメチル基は、AlY
Ga1-YAs(0≦Y≦1)層内へ混入する炭素不純物
の発生源となり、層内の残留ドナーを電気的に補償(c
ompensation)して、アンドープ状態で高抵
抗のAlYGa1-YAs(0≦Y≦1)層をもたらす作用
を有する。従って、トリメチルガリウム化合物を原料と
すれば、簡便に高抵抗の緩衝層を構成することができ
る。3個の炭化水素基を付加してなるトリアルキルガリ
ウム化合物にあって、2個の付加基がメチル基であるガ
リウム化合物でも、類似の作用は得られるが、その効用
はトリメチルガリウム化合物に比較して弱小となる。例
えば、ジエチルメチル(di−ethyl methy
l)Ga化合物等のモノメチル化合物をガリウム源とす
る場合は、炭素不純物の電気的補償効果による高抵抗化
の効用は更に弱小となる。
Y)を相違するAlYGa1-YAs(0≦Y≦1)層を交
互に周期的に反復させて積層して構成する。例えば、ア
ルミニウム組成比を0.3とするAl0.3Ga0.7Asと
アルミニウム組成比が0に相当するGaAsとの周期的
積層構造から構成できる。また、例えば、Al0.1Ga
0.9Asと砒化アルミニウム(化学式:AlAs)との
周期的積層構造から構成する。アルミニウム組成比を相
違する2層の重層構成を一単位とする周期的積層構造に
あって、超格子構造体の各構成層202−1,202−
2の層厚は、約10ナノメータ(単位:nm)以上で約
100nm以下とするのが適切である。構成層202−
1、202−2は、のキャリア濃度が5×1014cm-3
未満の高抵抗層であるのが好ましい。積層周期数は、望
ましくは2以上で、好ましくは5以上とする。アルミニ
ウム組成比を相違するAlYGa1-YAs(0≦Y≦1)
層からなる重層単位を5周期以上積層して構成されたヘ
テロ(hetero)接合構成の超格子構造体からなる
高抵抗の緩衝層は、基板201からチャネル層204等
の上層への転位等の伝搬を抑制する作用を有し、結晶欠
陥密度が小さく高品質で、且つ表面の平坦性に優れるG
aZIn1-ZAsチャネル層204等をもたらすのに効果
を奏する。
層させる、トリエチルガリウム(化学式:(C2H5)3
Ga))を原料とするGaAs層203は、例えば、
(C2H 5)3Ga)/アルシン(AsH3)/水素
(H2)反応系を利用するMOCVD法により成長でき
る。エチル化合物の一種である(C2H5)3Gaをガリ
ウム源としたGaAs成長層203を利用すれば、イン
ジウム組成を均一とするインジウム含有III−V族化
合物半導体層を上層として堆積できる効果がある。これ
は、熱分解によりエチル化合物より脱離したエチル基が
再結合してエタン(分子式:C2H6)などの揮発性成分
となり、気相成長反応系外へ排出されるため、上層の被
堆積面となる成長層の表面が炭素含有残査で被覆される
確率が小さく、清浄な表面が露呈されることとなるのが
一因と思量される。
s層内への炭素不純物の混入量は減少し、トリメチルガ
リウムを原料としたGaAs層に比較してアンドープ状
態でのキャリア濃度は一般に高くなる。例えば、MOC
VD反応系に供給するAsH 3/(CH3)3Gaの供給
濃度比率(所謂、V/III比率)を10.0と同一に
設定した場合、トリメチルガリウムではアンドープでp
形のキャリア濃度を約5×1013cm-3以下とする緩衝
層202を構成するに好都合な高抵抗GaAs層が帰結
される。これに対し、トリエチルガリウムではキャリア
濃度が1桁以上高いn形の導電性のGaAs層となる。
この様な導電性を呈する極端に厚い層をGaZIn1-ZA
sチャネル層204の直下に配置すると、チャネル層2
04の漏洩電流を増すばかりである。従って、トリエチ
ルガリウムを原料とするGaAs層203は、数nmか
ら約100nm前後の層厚とするのが好適である。Ga
As層203の層厚は、キャリア濃度が高い程、薄くす
ると好結果が得られる。例えば、キャリア濃度を1×1
015cm-3とするn形GaAs層203にとって、好適
となる最大の層厚は約30nmである。
層203上には、GaZIn1-ZAsチャネル層204と
GaXIn1-XP電子供給層206を順次、積層する。ト
リエチルガリウムを原料としたGaAs層203は、上
層204〜206をなすインジウム含有III−V族化
合物半導体層のインジウム組成の均一性を±2%以内と
向上させる作用を発揮する。インジウム組成が±2%を
越えて悪化したインジウム含有III−V族化合物半導
体層では、ピンチオフ電圧や相互コンダクタンス
(gm)の均一なTEGFETを得るのに支障を来す。
また、トリエチルガリウムを原料とするAlCGa1-CA
s層(0<C≦1)であっても、上層をインジウム組成
の均一性に優れるインジウム含有III−V族化合物半
導体層となす作用を有するが、アルミニウム(Al)を
含む結晶層を配置すると、ドレイン電流の光応答(G.
J.Ree編著、“Semi−Insulating
III−V Materials”(Shiva Pu
b.Ltd.(Kent、UK)、1980)、349
〜352頁参照)が顕著となる不都合を招き易い。ま
た、ソース・ドレイン電流の“ヒステリシス(hyst
eresis)”(菊池 誠、垂井 康夫編著、「図解
半導体用語辞典」(日刊工業新聞社、昭和53年1月2
5日発行、7版)、238頁参照)や“キンク(kin
k)”が発生し易くなる不都合が発生する(特開平10
−247727号及び特開平10−335350号公報
明細書)。
施形態に記す表面粗さの小さいGaZIn1-ZAsからな
るチャネル層204は、特に、上記のGaAs層203
を下地層として、特に、トリメチル化合物をIII族構
成元素の原料としたMOCVD法に依り形成できる。ト
リメチル化合物をIII族構成元素の原料とするMOC
VD法とは、ガリウム或いはインジウムの少なくとも一
種のIII族原料にトリメチル化合物を利用する意味で
あって、例えば、トリメチルガリウム((CH3)3G
a))をガリウム源とし、トリメチルインジウム(化学
式:(CH3)3In)をインジウム源とする減圧或いは
常圧MOCVD法を指す。特に、インジウム源として、
結合価を一価とするシクロペンタジエニルインジウム
(化学式:C5H5In)が利用できる。(CH3)3Ga
/(CH3)3In/AsH3/H2反応系に依れば、トリ
エチルガリウムを原料としたGaAs層203上には、
インジウム組成比の均一性を1%以内とするGaZIn1
ー ZAs層204を成膜できる。インジウム組成の均一性
とは、インジウム組成の最大値と最小値の差異をインジ
ウム組成の平均値で除した値で与えられる。ガリウム源
をトリエチルガリウムとした(C2H5)3Ga/(C
H3)3In/AsH3/H2反応系では、GaZIn1 ー ZA
s層のインジウム組成の均一性は一般には、±6%程度
と劣るものとなる。
aAs層203上に、トリメチル化合物をIII族構成
元素の原料としたMOCVD法に依れば、インジウム組
成の均一性に優れると共に、インジウムの偏析等に起因
する表面の荒れが少ない平坦なGaZIn1 ー ZAs層が得
られる。表面の粗さをヘイズ(haze)で表すとすれ
ば(hazeについては、阿部 孝夫著、「シリコン
結晶成長とウェーハ加工」((株)培風館、1994年
5月20日発行、初版)、322〜326頁参照)、ト
リエチルガリウムを原料としたGaAs層203は上層
のインジウム含有III−V族化合物半導体層204〜
206のヘイズを低減する作用も有する。表面粗さの小
さい、即ち、ヘイズの小さいが故に層厚が均一となった
チャネル層204上には、接合面を平滑としてスペーサ
層205が接合できる。接合面が平滑であるならば、2
次元電子(two−dimensional elec
tron gas:略称TEG)をチャネル層204の
接合領域近傍の領域に局在させることができる利点があ
る。2次元電子を効率的に局在させるのに好都合なヘテ
ロ接合界面をもたらすのには、ヘイズにして望ましくは
60百万分率(ppm)以下である。ヘイズにして60
ppmを越える表面粗さを有するGaZIn1 ー ZAs層か
らなるチャネル層では、スペーサ層との接合界面は平坦
性を欠き乱雑となり、得られる電子移動度も不均一化さ
れ、結果として高い相互コンダクタンス(gm)を有す
るGaInP系TEGFETが得られない。
3の実施形態では、トリメチル化合物をIII族構成元
素の原料とするMOCVD法に依り成膜したGaXIn
1-XP(0≦X≦1)層からスペーサ層205を構成す
ることとする。上記の如く、トリエチルガリウムを原料
としたGaAs層203上には、インジウム組成比の均
一性に優れるGaZIn1-ZAs層からなるチャネル層2
04が構成できる。インジウム組成の均一性であるチャ
ネル層204上には、インジウム組成の均一性に優れる
GaXIn1 ー XP(0≦X≦1)スペーサ層205を積層
することができる。更に、少なくとも一種のIII族原
料にトリメチル化合物を利用する、例えば、(CH3)3
Ga/(CH3)3In/AsH3反応系に依る減圧或い
は常圧MOCVD法に依れば、より均一性に優れるGa
XIn1 ー XP(0≦X≦1)層を得ることができる。イン
ジウム組成比の均一性を±1%未満とするGaXIn1 ー X
P層はスペーサ層として充分に実用に耐え得る。
常圧MOCVD法に依れば、インジウム組成比の均一性
に加え、より表面の平坦性に優れるスペーサ層205が
提供される。例えば、(CH3)3Ga/(CH3)3In
/AsH3/H2反応系に依れば、スペーサ層205を堆
積した時点で、スペーサ層205の表面でのヘイズを1
00ppm以下とする、電子供給層206と平坦な接合
界面をもって接合をなせるスペーサ層205が供給され
る。GaXIn1 ー XPスペーサ層205の表面のヘイズが
100ppmを越えるものとなると、表面の平滑性の欠
如に因る領域に依るスペーサ層205の層厚に差異が顕
著となる。このため、2次元電子を蓄積するチャネル層
204と電子供給層206との空間的に隔離する幅が領
域によって異なるものとなり、チャネル層204内の2
次元電子が被るイオン化散乱の程度が不均一となる。従
って、得られる2次元電子の移動度が領域毎に変化する
不都合を生ずる。
P(0≦X≦1)層のキャリア濃度は1×1016cm-3
未満であるのが好ましい。キャリア濃度は低い程、好適
であり、場合に依っては高抵抗であっても差し支えはな
い。スペーサ層205の伝導形は、n形であるのが好ま
しい。層厚としては一般に、約1nmから約15nmで
あるのが適する。スペーサ層205の層厚を厚くする
と、2次元電子により発現される電子移動度は増加する
が、逆にそのシートキャリア(sheet carri
er)濃度は減少する。キャリア濃度を約2×1018c
m-3とするGaXIn1-XP電子供給層については、約
1.5×1012cm-2前後のシートキャリア濃度を与え
る層厚が好適である。シートキャリア濃度は一般的なホ
ール(Hall)効果測定法より求められる。
4の実施形態では、表面のヘイズを200ppm以下と
するn形のGaXIn1-XP(0<X≦1)層から電子供
給層206を構成する。この様な表面粗さを有するGa
XIn1-XP層は、トリエチルガリウムを原料としたGa
As層203を下層として配置した上で、トリメチルガ
リウム((CH3)3Ga)やトリメチルインジウム
((CH3)3In)をIII族構成原料として形成でき
る。ガリウム源とインジウム源の双方をトリメチル化合
物とする反応系を利用すれば、尚一層のこと安定して表
面粗さの少ないGa XIn1-XP層がもたらされる。ヘイ
ズは入射レーザー光の散乱強度を測定する手段などをも
って測定できる。電子供給層206の層厚は、20〜4
0nmとするのが適する。
ピングされたGaXIn1-XP(0<X≦1)から好まし
く構成できる。インジウム組成比(=1−X)を0.4
9とするGa0.51In0.49P結晶層からは、特に好まし
く電子供給層206を構成できる。Ga0.51In0.49P
はGaAsと格子整合の関係にあるため、例えば、上層
として格子不整合性に起因する結晶欠陥の少ないGaA
sコンタクト層が構成できる。Ga0.51In0.49Pにド
ーピングするn形不純物としては、拡散係数の小さい珪
素(元素記号:Si)などが適する。Ga0.51In0.49
P電子供給層206のキャリア濃度は、2〜3×1018
cm-3とするのが好ましい。キャリア濃度は一般的な容
量−電圧(C−V)法により測定できる。表面粗さの小
さいインジウム組成の均一性に優れるGaXIn1-XP電
子供給層は、キャリア濃度の均一性にも優れるため、し
いては2次元電子に主に係わるシートキャリア濃度の均
一化を果たす作用を有する。
5の実施形態では、表面のヘイズにより優れるインジウ
ム含有III−V族化合物半導体層を有機金属熱分解気
相成長法に依り形成するのに際し、結合価を1価とする
シクロペンタジエニルインジウム(化学式:C5H5In
(I))をインジウム源として用いる(J.Elect
ron.Mater.,25(3)(1996)、40
7−409頁参照)。C5H5In(I)はルイス(Le
wis)塩基性的な性質を呈するため、代表的な第V族
元素源であるルイス酸性のアルシン(化学式:As
H3)やフォスフィン(化学式:PH3)との気相成長環
境内に於ける複合体化(ポリマー化)反応が抑制できる
(J.Crystal Growth、107(199
1)、360〜354頁参照)。このため、例えば、有
機インジウム・リンポリマー(J.Chem.So
c.,[1951](1951)、2003〜2013
頁参照)の発生が抑制されるため、インジウム組成の均
一性に優れ、表面粗さの小さいインジウム含有III−
V族化合物半導体気相成長層を得るのに本質的に優位と
なる。
ジウム((CH3)3In)に比較して蒸気圧(昇華圧)
が低く、成膜速度が小さいが故に、GaZIn1-ZAsチ
ャネル層204、GaXIn1-XPスペーサ層205及び
電子供給層206等の薄膜層を形成するのに特に適して
いる。薄膜成長に適する昇華圧を発生させるには、C 5
H5In(I)を大凡、約40℃から約70℃の範囲内
に保持するのが好適である。昇華したC5H5In(I)
の蒸気を随伴する随伴ガスの例としては水素が挙げられ
る。
P系2次元電子電界効果型トランジスタを構成する場合
を例にして、本発明を詳細に説明する。図3は本実施例
に係わるTEGFET300の断面模式図である。
積層構造体3Aは、アンドープ半絶縁性の(100)2
°オフ(off)GaAs単結晶を基板301として構
成した。基板301としたGaAs単結晶の比抵抗は室
温で約3×107Ω・cmである。直径を約100mm
とする基板301の表面上には、緩衝層302を構成す
るAlCGa1-CAs/GaAs系超格子構造を堆積させ
た。超格子構造体はアルミニウム組成比(=C)を0.
30とするアンドープのAl0.30Ga0.70As層302
aと、アンドープでp形のGaAs層302bとから構
成した。Al0. 30Ga0.70As層302aのキャリア濃
度は1×1014cm-3とし、層厚は45nmとした。p
形GaAs層302bのキャリア濃度は7×1013cm
-3とし、層厚は50nmとした。Al0.30Ga0.70As
層302aとp形GaAs層302bとの積層周期数は
5周期とした。Al0.30Ga0.70As層302aとp形
GaAs層302bは、何れも(CH3)3Ga/(CH
3)3Al/AsH3/H2反応系に依る減圧MOCVD法
に依り、640℃で成膜した。成膜時の圧力は約1×1
04パスカル(Pa)とした。キャリア(輸送)ガスに
は水素を利用した。
チルガリウム((C2H5)3Ga)とした(C2H5)3G
a/AsH3/H2反応系減圧MOCVD法に依り成膜し
たGaAs層303を積層した。成膜温度は640℃と
し、成膜時の圧力は約1.3×104Paとした。アン
ドープでn形のGaAs層303のキャリア濃度は2×
1015cm-3とし、層厚は20nmとした。
/C5H5In/AsH3/H2反応系を利用した減圧MO
CVD法に依り、アンドープのn形Ga0.80In0.20A
s層をチャネル層304として積層した。チャネル層3
04を構成するGa0.80In 0.20As層のキャリア濃度
は1×1015cm-3とし、層厚は13nmとした。イン
ジウム組成の均一性は、通常のフォトルミネッセンス
(PL)発光波長の均一性から0.20±0.4%と求
められた。レーザー入射光の散乱強度から計測した同層
304の表面のヘイズ(haze)値は12ppmとな
った。
上には、(CH3)3Ga/C5H5In/PH3/H2反応
系を利用した減圧MOCVD法に依り、アンドープのn
形のGa0.51In0.49Pからなるスペーサ層305を積
層させた。スペーサ層305のキャリア濃度は1×10
15cm-3以下とし、層厚は3nmとした。スペーサ層3
05の表面のヘイズ値は約13ppmと計測された。
05の上には、Siドープのn形Ga0.51In0.49Pか
らなる電子供給層306を、(CH3)3Ga/C5H5I
n/PH3/H2反応系を利用した減圧MOCVD法に依
り積層させた。Siのドーピング源には、水素−ジシラ
ン(Si2H6)(濃度10体積ppm)混合ガスを使用
した。電子供給層306のキャリア濃度は2×1018c
m-3とし、層厚は25nmとした。電子供給層306を
構成するGa0.51In0.49Pのインジウム組成の均一性
は、通常のフォトルミネッセンス(PL)発光波長の均
一性から0.49±0.5%と求められた。同層306
を積層させた後に測定されたヘイズ値は18ppmとな
った。
層306の表面上には、(CH3)3Ga/AsH3/H2
反応系により,Siドープn形GaAsからなるコンタ
クト(contact)層307を積層させた。Siの
ドーピング源は上記の水素−ジシラン(disilan
e)混合ガスを使用した。コンタクト層307のキャリ
ア濃度は2×1018cm-3とし、層厚は約100nmと
した。コンタクト層307の表面のヘイズは23ppm
と計測された。以上をもって、積層構造体3Aをなす構
成層302〜307のエピタキシャル成長を終了した
後、アルシン(AsH3)を含む雰囲気内で約500℃
迄降温し、その後、水素雰囲気内で室温迄冷却した。
sコンタクト層307の表面にインジウム・錫(In・
Sn)合金からなるオーミック電極を形成した。次に、
通常のホール(Hall)効果測定法に依り、2次元電
子走行層(チャネル層)304を走行する2次元電子
(Two−dimensional Electron
Gas:TEG)に関する電子移動度を測定した。室温
(約300ケルビン(K))でのシート(sheet)
キャリア濃度(ns)は約1.6×1012cm-2であ
り、平均的な電子移動度(μRT)は約5800±2%
(cm2/V・s)であった。また、液体窒素温度(7
7K)でのnsは約1.5×1012cm-2で、また、μ
は約22,000cm2/V・sであり、高い電子移動
度が発現された。
駆使したパターニング法を利用して、積層構造体3Aの
最表層をなすn形GaAsコンタクト層307の表面を
リセス(recess)状に加工した。メサ(mes
a)状に残置させたn形GaAsコンタクト層307上
にはソース電極308及びドレイン電極309を形成し
た。ソース及びドレイン各オーミック電極308、30
9は、金・ゲルマニウム(Au93重量%・Ge7重量
%)・ニッケル(Ni)・金(Au)重層構造から構成
した。ソース電極308とドレイン電極309との間隔
は10μmとした。
子供給層306の表面に、下層をチタン(Ti)とし、
上層をアルミニウム(Al)とする重層構造のショット
キー(Schottky)接合型ゲート電極310を形
成した。ゲート電極310の所謂、ゲート長は約1μm
とした。
(DC)特性を評価した。ソース/ドレイン間電圧を3
ボルト(V)とした際の飽和ドレイン電流(Idss)は
約70ミリアンペア(mA)となった。ドレイン電圧を
0Vから5Vの間で掃引した際に、ドレイン電流上にル
ープ(ヒステリシス)は殆ど観測されなかった。ソース
/ドレイン間電圧を3.0Vとして計測された室温の相
互コンダクタンス(gm)は160±5ミリジーメンス
(mS)/mmと高く、且つ均一となった。また、緩衝
層302の表面を露呈して形成した、間隔を100μm
とするAu・Geオーミック電極間に流通する漏洩電流
は40Vで1μA未満の高耐圧性を示した。このため、
緩衝層302の漏洩電流をドレイン電流のピンチ・オフ
電圧は約2.38V±0.03Vとなり、閾値電圧が均
一であるGaInP系TEGFETが提供された。
ば、トリエチルガリウムを原料として気相成長されたG
aAs薄膜層を下地層として、インジウム含有III−
V族化合物半導体層を設ける構成としたので、インジウ
ム組成の均一性に優れ、且つ表面粗さに優れるGaZI
n1-ZAsチャネル層、及びGaXIn1-XPスペーサ層
並びに電子供給層とが形成でき、従って、相互コンダク
タンスとピンチオフ電圧との均一性に優れるGaInP
系積層構造体が提供できる。
チャネル層を、表面粗さを規定したn形のGaZIn1-Z
Asから構成したので、従って、相互コンダクタンスと
ピンチオフ電圧との均一性に優れるGaInP系積層構
造体が提供できる。
スペーサ層を、表面粗さを規定したのn形のGaXIn
1-XPから構成したので、従って、相互コンダクタンス
とピンチオフ電圧との均一性に優れるGaInP系積層
構造体が提供できる。
電子供給層層を、表面粗さを規定した、n形の不純物を
ドーピングしたGaXIn1-XPから構成したので、相互
コンダクタンスとピンチオフ電圧との均一性に優れるG
aInP系積層構造体が提供できる。
n形のGaZIn1-ZAsチャネル層、及びn形GaXI
n1-XPスペーサ層並びに電子供給層を、シクロペンタ
ジエニルインジウムをインジウム原料として有機金属熱
分解気相成長法により形成することとしたので、インジ
ウム組成の均一性に優れ、表面粗さの少ないチャネル
層、スペーサ層及び電子供給層がもたらされ、しいて
は、相互コンダクタンスとピンチオフ電圧との均一性に
優れるGaInP系積層構造体が提供できる。
構造体の断面模式図である。
系TEGFETの断面模式図である。
面模式図である。
体 10 半絶縁性GaAs単結晶基板 11 緩衝層 12 チャネル層 12a スペーサ層との接合界面 12b チャネル層内部領(2次元電子走行領域) 13 スペーサ層 14 電子供給層 15 コンタクト層 16 ソース電極 17 ドレイン電極 18 ゲート電極 2A 本発明に係わるGaInP系TEGFET用途
積層構造体 201 半絶縁性GaAs単結晶基板 202 AlGaAs/GaAs超格子構造緩衝層 202−1 超格子構造緩衝層の一構成層 202−2 超格子構造緩衝層の一構成層 203 ガリウム源をトリエチルガリウムとしたGa
As層 204 GaInAsチャネル層 205 GaInPスペーサ層層 206 GaInP電子供給層 3A GaInP系TEGFET用積層構造体 300 GaInP TEGFET 301 半絶縁性GaAs基板 302 緩衝層 302−1 第1の緩衝層構成部位 302−2 第2の緩衝層構成部位 302a Al0.30Ga0.70As超格子構造構成層 302b GaAs超格子構造構成層 303 ガリウム源をトリエチルガリウムとしたGa
As層 304 Ga0.80In0.20Asチャネル層 305 Ga0.51In0.49Pスペーサ層 306 Ga0.51In0.49P電子供給層 307 n形GaAsコンタクト層 308 ソース電極 309 ドレイン電極 310 ゲート電極
Claims (5)
- 【請求項1】有機金属熱分解気相成長(MOCVD)法
により、半絶縁性のGaAs単結晶基板上に、緩衝層、
GaZIn1-ZAs(0<Z≦1)からなる電子走行層、
それぞれGaXIn1-XP(0<X≦1)からなるスペー
サ層と電子供給層を順次成長するGaInP系積層構造
体の製造方法に於いて、AlYGa1-YAs(0≦Y≦
1)層からなる緩衝層を第III族元素のトリメチル化
合物を原料として気相成長し、緩衝層と電子走行層との
間にGaAs層をトリエチルガリウムをガリウム原料と
して気相成長し、電子走行層とスペーサ層と電子供給層
とがn形の導電形を有し、スペーサ層と電子供給層とを
トリメチルガリウムをガリウム原料として気相成長し、
スペーサ層と電子供給層とが接していることを特徴とす
るGaInP系積層構造体の製造方法。 - 【請求項2】電子走行層の成膜後の表面粗さ(ヘイズ:
haze)が60ppm以下であり、電子走行層がトリ
エチルガリウムをガリウム原料として気相成長させたG
aAs層に接していることを特徴とする請求項1に記載
のGaInP系積層構造体の製造方法。 - 【請求項3】スペーサ層と電子走行層とが接し、スペー
サ層の成膜後の、表面のヘイズが100ppm以下であ
ることを特徴とする請求項1または2に記載のGaIn
P系積層構造体の製造方法。 - 【請求項4】電子供給層の成膜後の、表面のヘイズが2
00ppm以下であることを特徴とする請求項1〜3の
何れか1項に記載のGaInP系積層構造体の製造方
法。 - 【請求項5】電子走行層、スペーサ層、電子供給層を、
結合価を1価とするシクロペンタジエニルインジウムを
インジウムの原料として有機金属熱分解気相成長法によ
り形成することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項
に記載のGaInP系積層構造体の製造方法。
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