JP3261951B2 - 亜鉛系電気めっき鋼板とその製造方法 - Google Patents

亜鉛系電気めっき鋼板とその製造方法

Info

Publication number
JP3261951B2
JP3261951B2 JP29441295A JP29441295A JP3261951B2 JP 3261951 B2 JP3261951 B2 JP 3261951B2 JP 29441295 A JP29441295 A JP 29441295A JP 29441295 A JP29441295 A JP 29441295A JP 3261951 B2 JP3261951 B2 JP 3261951B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
zinc
corrosion resistance
steel sheet
plating film
plating
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP29441295A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH08209382A (ja
Inventor
雅也 木本
真也 引野
清之 福井
靖 細田
究 吉田
淳 安井
和義 田村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP29441295A priority Critical patent/JP3261951B2/ja
Publication of JPH08209382A publication Critical patent/JPH08209382A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3261951B2 publication Critical patent/JP3261951B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Electroplating And Plating Baths Therefor (AREA)
  • Electroplating Methods And Accessories (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、裸耐食性 (耐穴あ
き性) と塗装後端面耐食性の両方が良好で、プレス成形
性、スポット溶接性 (特に連続打点溶接性) 、塗装性
(塗膜密着性)、耐低温衝撃剥離性にも優れた、自動車
車体等の材料として好適な亜鉛系電気めっき鋼板とそ
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車をはじめとして、家電製品、建材
等の多様な分野で、防錆用鋼板として各種の表面処理鋼
板、特にめっき鋼板が利用されている。特に苛酷な腐食
環境で使用される自動車車体に対しては、従来から、各
種表面処理鋼板の適用が積極的に推進されているが、近
年はその防錆能力向上の要求が強く、例えば、塩害地に
て10年の耐穴あき腐食性や5年の耐外面錆性を目標とす
る高耐食性が要求されている。
【0003】自動車車体用の表面処理鋼板には、上記の
高耐食性 (裸耐食性、即ち、未塗装での穴あきと錆発生
に耐える能力) に加えて、外面側は塗装が施されること
から、塗装性 (塗膜密着性) が要求される。また、プレ
ス成形による加工後は一般に連続スポット溶接により組
立てられることから、プレス成形性とスポット溶接性
(特に連続打点性) も必要であり、また塗装がつき回ら
ない端面から腐食が進行することが多いため、塗装後の
端面耐食性も要求される。さらに、塩害が道路に散布し
た食塩により起こる寒冷地では、−50〜0℃といった低
温になるため、上記の高耐食性と同時に、低温での石ハ
ネ等の衝撃による表面処理皮膜の剥離に耐える耐低温衝
撃剥離性も必要となる。
【0004】最も一般的な防錆用表面処理鋼板は、亜鉛
めっき皮膜またはZn−Fe、Zn−Ni等の亜鉛系合金めっき
皮膜を有する亜鉛系めっき鋼板 (電気めっき鋼板、溶融
めっき鋼板、および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を含む)
である。これらは既に自動車車体用などに実用化されて
いるが、要求される防錆能力の高度化につれて、めっき
付着量の増大を余儀なくされているのが現状である。
【0005】しかし、亜鉛系めっき鋼板では、このよう
に厚目付としても、需要家の要望する耐食性を十分に満
たすことができないばかりか、製造コストの増大、プレ
ス成形性の低下などの弊害も大きくなっている。また、
裸耐食性と塗装後端面耐食性とは両立しがたく、例え
ば、亜鉛めっき鋼板は塗装後端面耐食性に優れている
が、裸耐食性は不十分であり、逆に亜鉛合金めっき鋼板
は裸耐食性は向上するが、塗装後端面耐食性が低下する
ことが経験されてきた。
【0006】裸耐食性と塗装後端面耐食性とを両立させ
るために、組成の異なる2層以上のめっき皮膜 (例、下
層の亜鉛めっき皮膜と上層の亜鉛合金めっき皮膜、下層
の亜鉛系めっき皮膜と上層のFe系フラッシュめっき) を
配した各種の複層めっき鋼板がこれまでに提案された
(例、特公昭58−15554 号公報参照) 。しかし、このよ
にめっき皮膜を複層化しても、性能は各層のめっき皮膜
の性能を平均化したものになるだけであり、裸耐食性と
塗装後端面耐食性の両者を同時に従来以上に向上させる
ことは困難である。また、複層化することによって厚目
付きとなり、プレス成形性やスポット溶接性、耐低温衝
撃剥離性はかえって低下することもある。さらに、めっ
き処理を2回以上行うため、製造コストが増大する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従って、特に自動車車
体用材料として、1層のめっき皮膜のみで、過酷な腐食
環境に耐え得る優れた裸耐食性と塗装後端面耐食性を同
時に示し、さらにプレス成形性、スポット溶接性、塗装
性、耐低温衝撃剥離性も良好な、低コストで製造できる
めっき鋼板の出現が望まれている。本発明の目的は、自
動車車体用に要求される上記の各種特性を備えた亜鉛系
めっき鋼板とそれを低コストで製造するための方法を提
供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために、亜鉛系めっきについて検討を重ね
た。その結果、デキストリンとデキストランの一方また
は両方を添加しためっき浴から電気亜鉛めっきを行い、
その際に合金元素として少量のCo、Niおよび/またはCr
を亜鉛と共析させた亜鉛合金めっき皮膜とすることによ
って、亜鉛めっき皮膜に固有の優れた塗装後端面耐食性
を保持しながら、亜鉛めっき皮膜に比べて裸耐食性が著
しく向上し、さらには塗装性、プレス成形性、スポット
溶接性、耐低温衝撃剥離性も良好なめっき皮膜となるこ
とを見出し、本発明に到達した。
【0009】ここに、本発明の要旨は、デキストリンお
よび/またはデキストラン0.01〜10重量%と、めっき皮
膜中にCo、NiおよびCrから選ばれた1種または2種以上
の金属を総計で0.01〜10重量%(Cr:10重量%の単独添加
の場合は除く) 共析させるのに十分な量のこれら金属の
供給源とを含有する電気亜鉛めっき浴を使用して、鋼板
の少なくとも片面に付着量 5.0〜200 g/m2の亜鉛合金め
っき皮膜 (Zr−Cr−Feの組合せの場合は除く) を形成す
ることを特徴とする、自動車車体用亜鉛系電気めっき鋼
板の製造方法にある。
【0010】本発明の方法により製造された亜鉛系電気
めっき鋼板は、Co、NiおよびCrから選ばれた1種または
2種以上の共析金属を総計で0.01〜10重量%含有する亜
鉛合金めっき皮膜を有し、このめっき皮膜中に存在する
亜鉛η相は、 (00・2)面の配向性指数が0.8 以下、 (10
・1)面の配向性指数が0.2 以上という配向性を有してい
る。
【0011】本発明の方法により製造された亜鉛系電気
めっき鋼板において、裸耐食性と塗装後端面耐食性とが
両立し、さらに自動車車体用に要求された他の特性も良
好である理由については、完全には解明されていない
が、現時点では次のように推測される。
【0012】亜鉛系めっき皮膜の塗装後端面耐食性は、
基本的には亜鉛の犠牲防食能により確保されるので、め
っき皮膜中に、犠牲防食能を確保するのに十分な量で亜
鉛のη相が存在する必要がある。一方、裸耐食性はめっ
き皮膜中の亜鉛の合金化により改善される。従って、裸
耐食性を塗装後端面耐食性とを両立させるには、亜鉛め
っき皮膜のη相を残して塗装後端面耐食性を維持したま
ま、裸耐食性の改善が得られるのに十分なだけ亜鉛を合
金化しなければならない。しかし、従来は、裸耐食性を
改善するのに十分なだけ亜鉛を合金化すると、η相が不
足して塗装後端面耐食性が低下するため、これらの両立
が難しかった。
【0013】本発明によれば、亜鉛との合金元素として
Co、Ni、Crの1種以上を選択し、同時に、めっき浴中に
デキストリンおよび/またはデキストラン (以下、デキ
ストリン等という) を少量添加しておくことで、裸耐食
性と塗装後端面耐食性とを両立させることが可能とな
る。亜鉛と一緒にこれらの合金元素を少量共析させると
亜鉛系めっき皮膜の裸耐食性は向上することは従来より
知られているが、これらの合金元素を共析させただけで
は、裸耐食性は改善できても、η相の不足により塗装後
端面耐食性が低下する。
【0014】しかし、上記合金元素の共析に加えて、め
っき浴中にデキストリン等を少量添加しておくと、後述
するように、めっき皮膜のη相の配向性が変化して、塗
装前処理として行われる化成処理時のめっき表面と化成
処理液との反応性が高まり、塗膜密着性が改善される。
そのため、塗装性が改善されるのみならず、合金元素と
の共析によってη相がやや少なくなっても、塗膜密着性
の改善により塗装後端面耐食性が良好に維持される。し
かも、この塗膜密着性の改善により、合金元素の共析に
より改善された裸耐食性もさらに一層向上する。その結
果、本発明によれば、亜鉛めっき皮膜の塗装後端面耐食
性を維持したまま、その裸耐食性を大きく改善すること
ができ、塗装後端面耐食性と裸耐食性の両者のいずれに
も優れた亜鉛系めっき皮膜を得ることができる。
【0015】また、上記合金元素の共析およびめっき浴
中のデキストリン等の存在によって、めっき皮膜が硬質
化し、摺動特性の向上によるプレス成形性の改善と、め
っき表面の硬質化に伴う接触抵抗の上昇によるスポット
溶接性の改善も得られる。さらに、めっき皮膜中に存在
するη相は延性に富み、衝撃により亀裂が生じてもその
伝播が阻止される。さらに、上記のようにη相の配向が
変化することによって、母材鋼板との結晶学的な整合性
が高まり、めっき皮膜自体の密着性が向上して、めっき
皮膜が剥離しにくくなる。そのため、めっき皮膜の耐低
温衝撃剥離性も著しく向上する。
【0016】以上の理由により、本発明の方法により製
造された亜鉛系電気めっき鋼板は、塗装性、プレス成形
性、スポット溶接性、耐低温衝撃剥離性、裸耐食性 (耐
穴あき性) 、さらには塗装後端面耐食性のいずれもが良
好で、単層のめっき皮膜によって、自動車車体内外面に
要求される各種特性を総合的に満たすことができるもの
と考えられる。ただし、本発明は以上の説明に拘束され
るものではない。
【0017】なお、電気亜鉛めっき浴および鉄−亜鉛合
金電気めっき浴にデキストリンを少量添加することは、
それぞれ特開昭60−187694号公報および特開昭59−1002
84号公報に開示されている。しかし、これらは、めっき
表面外観ムラあるいは表面摺動性の改善に留まってい
る。本発明で達成される上記の自動車車体用に要求され
る各種特性の総合的な向上は、デキストリン等のめっ
き浴への添加とCo、Ni、Crの1種以上の合金元素の共
析の両者を併用することによって初めて達成されるので
ある。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明の方法で用いるめっき母材
は鋼板であり、通常は冷延鋼板が使用されるが、これに
制限されるものではない。なお、本発明の方法は母材と
してアルミニウム板を使用した場合にも適用することが
できるものと考えられる。また、耐食性をさらに高める
ために、コストは増大するが、母材として既に他の方法
でめっきが施されためっき鋼板 (例、亜鉛めっき鋼板、
アルミニウムめっき鋼板など)を使用することも可能で
ある。
【0019】この母材めっき鋼板に亜鉛系電気めっきを
施す。めっきは、片面めっきおよび両面めっきの何れで
もよい。電気めっき浴は、酸性浴 (例、硫酸塩浴、塩化
物浴など) とアルカリ性浴 (例、シアン化物浴など) の
いずれでも可能であるが、酸性浴、特に硫酸塩浴の使用
が望ましい。
【0020】亜鉛系電気めっきは、めっき浴にデキスト
リン等とCo、Ni、Crから選ばれた1種または2種以上の
合金元素の供給源を添加して溶解させておく以外は、通
常の電気亜鉛めっきと同様の方法および条件で実施すれ
ばよい。なお、これら以外の合金元素をめっき皮膜中に
さらに共析させることはあまり好ましくはないが、所望
によっては、少量のFe、Sb、Mo、Mn等の合金元素をさら
に共析させてもよい。ただし、Co、Ni、Cr以外の合金元
素の共析量は合計で5.0 重量%以下、特に3.0重量%以
下に抑えることが好ましい。
【0021】デキストリンは、酸または酵素によるデン
プンの部分加水分解物であって、各種鎖長を持つグルコ
ース重合体の混合物である。一方、デキストランはスク
ロース培地上で特定の乳酸菌が産生するグルカン (グル
コース重合体) である。即ち、これらはいずれもグルコ
ースの重合体であるという共通点がある。本発明で用い
るデキストリンとデキストランの分子量は特に制限され
ないが、デキストランでは平均分子量が4万〜30万程度
のものが普通である。デキストリンは、非常に広範囲の
分子量を持つグルコース重合体の混合物であるため、平
均分子量を表示することは困難である。
【0022】デキストリンとデキストランは、その一方
または両方を、めっき浴中の含有量(両方を使用する場
合には合計量) が0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5
重量%、さらに好ましくは 0.1〜3重量%となる量で添
加する。デキストリン等の添加量が0.01重量%未満であ
るか、あるいはデキストリン等を添加しないと、望まし
いη相の配向性が得られず、塗膜密着性が低下して、塗
装後端面耐食性が低下し、プレス成形性や耐低温衝撃剥
離性も不十分となる。一方、10重量%を超えるデキスト
リン等を添加すると、有機物であるデキストリン等によ
りめっき浴の粘度が増大し、ガス抜け性が悪くなって、
めっき不良を起こす。
【0023】亜鉛に共析させる合金元素 (Co、Ni、Crの
1種もしくは2種以上) の供給源としては、めっき浴に
溶解し、かつめっき皮膜に著しい悪影響を及ぼすことの
ないこれら金属の任意の化合物が使用できる。このよう
な化合物としては、硫酸塩、炭酸塩、モリブデン酸塩、
次亜リン酸塩、酢酸塩等の有機酸塩、アルコキシレー
ト、有機錯体などが例示される。また、めっき浴に溶解
すれば、金属それ自体も使用できる。合金元素の供給源
のめっき浴への添加量は、めっき皮膜中にCo、Ni、Crを
総計で0.01〜10重量%共析させるのに十分な量とする。
【0024】めっき皮膜中のこれら合金元素の共析量が
0.01重量%未満では、裸耐食性が純亜鉛めっきと同低度
であって、共析による裸耐食性の改善が得られない。ま
た、めっき皮膜の硬質化が達成されないため、プレス成
形性やスポット溶接性も低下する。一方、これら合金元
素の共析量が10重量%を超えると、めっき皮膜中のη相
が消失するか、その量が著しく低減し、亜鉛の犠牲防食
能による塗装後端面耐食性を十分に確保することができ
ない上、耐低温衝撃剥離性も低下する。めっき皮膜中の
上記合金元素の共析量は、好ましくは0.05〜10重量%、
より好ましくは0.1〜5重量%である。
【0025】電気めっき中に通電する電流は、通常の直
流の連続通電でよいが、パルス電流あるいは交流を重畳
した直流もしくはパルス電流を通電することもできる。
Co、Ni、Crの1種もしくは2種以上が共析した亜鉛合金
めっき皮膜の付着量は5.0〜200 g/m2、好ましくは 5.0
〜100 g/m2の範囲内とする。亜鉛系めっき鋼板の耐食性
は基本的にはめっき付着量に依存するところが大きく、
めっき付着量が5g/m2以下では、防錆効果が不十分とな
り、裸耐食性と塗装後端面耐食性のいずれも大きく低下
する。一方、めっき付着量が200 g/m2を超えると、コス
トが高くなりすぎ、プレス成形性も低下する傾向があ
る。
【0026】本発明の方法で製造された亜鉛系電気めっ
きは、このCo、Niおよび/またはCrが共析した亜鉛合金
めっき皮膜単独で、十分な防錆能およびその他の自動車
車体用表面処理鋼板に要求される特性を有しているの
で、このめっき鋼板のままで自動車車体その他の用途に
使用できる。
【0027】本発明の方法により製造された亜鉛系電気
めっき鋼板の亜鉛合金めっき皮膜について結晶学的に検
討したところ、η相 (Zn相) が存在し、かつそのη相が
特定の配向性を有していることが判明した。具体的に
は、この亜鉛合金めっき皮膜は、η相の (00・2)面の配
向性指数が0.8 以下、 (10・1)面の配向性指数が0.2 以
上という特徴を有していることが判明した。
【0028】なお、η相は、c軸方向に伸びた最密六方
晶の結晶形態をとり、配向性を有している。η相の有無
は、簡易手段としてX線回折法によりη相に固有の回折
ピークを調べることで確認でき、また断面をEMPA
(X線マイクロアナライザー)等で分析することによって
も判定できる。
【0029】ここで、η相の各面 [例えば、 (00・2)
面] の「配向性指数」とは、ASTMに登録された亜鉛標準
物質の同じ面の配向度に対する相対的な配向度を示す指
標であり、X線回折測定における各面の回折ピーク強度
の測定値に基づいて、例えば、(00・2)面については次
式により算出される。
【0030】
【数1】
【0031】上記式中、IXX・X は供試材のη相の (XX・
X)面のX線回折ピーク強度、IRXX・X はASTMに登録さ
れた亜鉛標準物質の (XX・X)面のX線回折ピーク強度を
表す。ここで、η相の各面の回折角 (Co2θ) は、 (0
0.2) 面が42.4°、 (10.0)面が45.6°、 (10.1) 面が5
0.7°、 (10.2) 面が64.0°、 (10.3) 面が83.6°、(1
1.0) 面が84.4°である。
【0032】従って、ある面の配向性指数が1である時
には、その面の配向度が標準物質と同じであることを意
味し、配向性指数が小さいほどその面の配向度は小さ
い。本発明の亜鉛合金めっき皮膜では、η相の (00・2)
面の配向性指数が0.8 以下であるから、この面の配向度
が標準物質に比べて小さいという特徴を有する。また、
(10・1)面の配向性指数が0.2 以上必要である。好まし
くは (00・2)面の配向性指数は 0.7以下、 (10・1)面の
配向性指数は0.25以上である。
【0033】η相の (00・2)面と(10.1)面が上記の配向
性を有することにより、塗装前処理として行われる化成
処理 (例、りん酸塩処理) 時に処理液との反応性が高ま
り、化成処理皮膜がめっき皮膜の表面に堅固に付着する
結果、塗装性 (塗膜密着性)がよくなる。その結果、裸
耐食性と塗装後端面耐食性の両者を同時に改善すること
ができる。また、このように配向することによって母材
鋼板との結晶学的整合性が保たれ、めっき密着性も改善
されるため、著しく優れた耐低温耐衝撃剥離性とスポッ
ト溶接性が確保される。これに対して、 (00・2)面の配
向性指数が0.8を超えるか、 (10・1)面の配向性指数が
0.2 より小さくなると、裸耐食性と塗装後端面耐食性の
いずれも低下し、またスポット溶接性や、耐低温耐衝撃
剥離性も一般に低下する傾向がある。
【0034】
【実施例】
【0035】
【実施例1】脱脂した0.8 mm厚の冷延鋼板を母材とし
て、デキストリン等とCo化合物とを添加した硫酸塩浴を
用いて下記条件で電気亜鉛めっきを施すことより、表1
に示す皮膜構成のZn−Co合金めっき皮膜を鋼板の両面に
有する亜鉛系電気めっき鋼板を作製した。めっき浴に添
加したデキストリン等の種類および分子量(デキストラ
ンの場合)ならびにコバルト化合物の種類は、表1に示
す通りである。なお、実際に使用したコバルト化合物
は、 CoSO4・7H2O、 CoCl3、 Co2(SO4)3・18H2O 、CoCO
3 、 CoCl2・6H2O、またはCo(NO3)2・7H2Oであるが、表
1には結晶水を省略して表示した。また、Feを共析させ
た比較例では FeSO4・7H2OをFe供給源として使用した
が、これも表1には結晶水を省略して表示した。
【0036】めっき条件 〔めっき浴組成〕 ZnSO4・7H2O : 20〜40wt% Na2SO4 : 5〜10wt% 合金元素供給源: 10〜40wt% (Co化合物) デキストリン等: 0.001〜10wt% pH : 1〜4 〔めっき条件〕 浴温 : 40〜65℃ 電流密度 : 20〜150 A/dm 液流速 : 0.5〜4 m/sec 。
【0037】形成された亜鉛合金めっき皮膜の共析元素
の含有量は蛍光X線法により測定した。また、このめっ
き皮膜のη相の (00・2)面と (10・1)面の配向性指数
を、上述した方法によりX線回折測定値に基づいて算出
した。X線回折測定は、強力X線回折装置を用いてCoを
ターゲットとして行った。
【0038】得られた亜鉛系電気めっき鋼板の裸耐食性
(耐穴あき性) 、塗装後端面耐食性、耐低温衝撃剥離
性、プレス成形性、スポット溶接性は以下に記載した方
法で調べた。これらの試験結果も、皮膜の測定結果と一
緒に表1および表2にまとめて示す。
【0039】[試験法]裸耐食性 (耐穴あき性) めっき鋼板の試験片に対して、塩水噴霧(5% NaCl、35
℃、7時間) →乾燥 (50℃、2時間) →湿潤 (RH85%、
50℃、15時間) からなる複合腐食サイクルに300サイク
ル曝した後、腐食生成物を除去して、腐食深さを測定
し、最大腐食深さを次の3段階に区分して、裸耐食性を
評価した。 ○:最大腐食深さ< 0.2 mm △:最大腐食深さ≦ 0.6 mm ×:最大腐食深さ> 0.6 mm 。
【0040】塗装後端面耐食性 自動車車体の製造と同様に、試験片をプレス成形した後
に塗装を施して、塗装後端面耐食性を評価した。
【0041】めっき鋼板から70mm×150mm の大きさの試
験片を切出し、試験片の端面カエリが板厚の10%となる
ように金型のクリアランスを調整してプレス打抜きを行
った。打ち抜いた試験片を脱脂剤FC4336で脱脂し、PZT
で表面調整した後、PB−L3080(以上、日本パー
カライジング社製)を用いてリン酸塩化成処理を行い、
次いで、U−80(日本ペイント社製) で厚さ20±1μ
m のカチオン電着塗料を施し、175℃で25分間焼き付け
た。その後、自動車用アルキッド系塗料の中塗り (40μ
m)、焼付け、メラミン・ポリエステル系塗料の上塗り
(40μm)、焼付けを行って、塗装試験片を作製した。
【0042】塗装試験片を上記の複合腐食サイクル試験
に60サイクル曝した後、端面の赤錆発生面積率を測定
し、この赤錆発生面積率を次の5段階に区分することに
よって塗装後端面耐食性の評価とした。 ◎:赤錆発生なし ○:5%以下 △:10%以下 ×:30%以下 ××:30%超。
【0043】耐低温衝撃剥離性 未加工のめっき鋼板の試験片に対して、上記の塗装後端
面耐食性の試験と同様に塗装を施した。得られた塗装試
験片を供試台上にセットし、−40℃の低温条件下でダイ
ヤモンド粒 (直径約3mm) を時速120 km/hの速度で10箇
所衝突させた。この衝撃を受けさせた塗装試験片に対し
て、1か月に1回の頻度で3%NaCl水溶液への30分間の
浸漬を行いながら、工業地帯環境 (兵庫県尼崎市) に暴
露するという耐食性暴露試験を5年間行った。
【0044】評価は、5年間暴露した塗装試験片の衝突
点での塗膜ブリスターの最大径を測定し、下記の基準で
耐低温衝撃剥離性を評価した。 ×:ブリスター幅が5mm以上 △:ブリスター幅が3mm以上、5mm未満 ○:ブリスター幅が1mm以上、3mm未満 ◎:ブリスター幅が1mm未満。
【0045】プレス成形性 (加工性)めっき鋼板から直径90mmの円盤状ブランクを採
取し、直径50mm、深さ28mmの円筒状に深絞り成形した。
このプレス成形後の側壁面のめっき皮膜を透明粘着テー
プで剥離させる試験を行い、剥離片が付着しているテー
プ面積率を目視で評価して、次の基準で加工性を判定し
た。
【0046】5:全く剥離なし 4:剥離片の付着面積率10%未満 3:同じく10%以上、30%未満 2:同じく30%以上、50%未満 1:ほぼテープ全面に付着 (成形性)上記深絞り成形時の母材破断の有無 (有:○、
無:×) によって成形性を評価した。
【0047】スポット溶接性 単相交流スポット溶接機を用いて、未塗装の2枚の試験
片を重ねて下記条件下で連続打点スポット溶接を行っ
た。 電流: 27000 A 加圧力: 300 kgf 通電時間:6サイクル (60Hzで) 電極形状:ドーム形 溶接方法:「1点/2秒で20点連続打点溶接後、40秒以
上の休止」というサイクルを繰り返す。100 点毎にn=
3のせん断試験片を採取し、引張試験後にナゲット径を
測定し、ナゲット径が3.6 mm以下になまでの溶接点を連
続打点数として求め、下記基準で評価した。 判定基準:◎ 2000点以上 ○ 1500点以上 △ 1000点以上、1500点未満 × 1000点未満。
【0048】
【表1】
【0049】
【実施例2】実施例1と同様にして亜鉛系めっき鋼板を
作製したが、亜鉛に共析させる合金元素をCo単独から、
NiまたはCrの単独、あるいはCo、Ni、Crの2種以上に変
更した。これらの金属の供給源としてめっき浴に添加し
た化合物は、 CoSO4・7H2O、NiSO4・7H2O、およびCr2(S
O4)3 であった。その他のめっき条件は実施例1と同様
であった。形成されためっき皮膜の構成と亜鉛系めっき
鋼板の試験結果を実施例1と同様に調べた結果を、デキ
ストリン等の種類および添加量と一緒に、表2にまとめ
て示す。
【0050】
【表2】
【0051】表1および2に示したように、本発明方法
に従って、めっき浴にデキストリン等を0.01〜10重量%
添加し、めっき皮膜中に0.01〜10重量%のCo、Ni、Crの
1種もしくは2種以上を共析させた亜鉛合金めっき皮膜
は、η相が存在し、このη相の (00・2)面の配向性指数
が0.8 以下、 (10・1)面の配向性指数が0.2 以上という
配向性を有している。この配向性と適量のCo、Niおよび
/またはCrの共析によって、塗装後端面耐食性が著しく
改善され、しかも裸耐食性も高水準にある。さらに、プ
レス成形性、スポット溶接性も良好で、耐低温衝撃剥離
性も著しく向上している。
【0052】これに対し、比較例ではいずれも、上記の
各特性をすべて同時に高水準に保つことはできなかっ
た。表1に示した比較例から、Zn−Fe合金めっきの場合
には、デキストリン等をめっき浴に添加しても、裸耐食
性、塗装後端面耐食性、プレス成形性、スポット溶接
性、耐低温衝撃剥離性のいずれも向上効果がないことが
わかる。
【0053】
【発明の効果】本発明の方法で製造された亜鉛系電気め
っき鋼板は、単層のめっき層だけで、従来のめっき鋼板
には見られない著しく高い塗装後端面耐食性を示し、同
時に裸耐食性 (耐穴あき性) も良好に保持している。さ
らに需要家での使い勝手を左右するプレス成形性、スポ
ット溶接性 (特に連続打点溶接性) も良好で、耐低温衝
撃剥離性にも優れている。従って、腐食性環境の寒冷地
で使用されることもある自動車車体用防錆鋼板として最
適であるが、比較的安価に製造できることから、家電製
品、建材などの他の用途にも有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 細田 靖 大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友 金属工業株式会社内 (72)発明者 吉田 究 大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友 金属工業株式会社内 (72)発明者 安井 淳 茨城県鹿嶋市大字光3番地 住友金属工 業株式会社鹿島製鉄所内 (72)発明者 田村 和義 茨城県鹿嶋市大字光3番地 住友金属工 業株式会社鹿島製鉄所内 (56)参考文献 特開 昭61−170593(JP,A) 特開 昭59−162292(JP,A) 特開 昭55−58386(JP,A) 特開 平4−333576(JP,A) 特開 平1−215998(JP,A) 特公 昭63−62595(JP,B2) 特公 昭62−42039(JP,B2) 特公 昭61−40315(JP,B2) 特公 平6−37711(JP,B2) 特公 平3−52557(JP,B2) 特公 平2−5839(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C25D 5/26 C25D 3/56

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 デキストリンおよび/またはデキストラ
    ン0.01〜10重量%と、めっき皮膜中にCo、NiおよびCrか
    ら選ばれた1種または2種以上の金属を総計で0.01〜10
    重量%(Cr:10重量%の単独添加の場合は除く) 共析させ
    るのに十分な量のこれら金属の供給源とを含有する電気
    亜鉛めっき浴を使用して、鋼板の少なくとも片面に付着
    量 5.0〜200 g/m2の亜鉛合金めっき皮膜 (Zr−Cr−Feの
    組合せの場合は除く) を形成することを特徴とする、自
    動車車体用亜鉛系電気めっき鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 デキストリンおよび/またはデキストラ
    ン0.01〜10重量%と、Co、Ni、およびCrから選ばれた1
    種または2種以上とを含むめっき浴を使って電気めっき
    により得られた亜鉛系電気めっき鋼板であって、亜鉛合
    金めっき皮膜が、Co、NiおよびCrから選ばれた1種また
    は2種以上の金属が総計で0.01〜10重量%含有してお
    り、鋼板の少なくとも片面に付着量 5.0〜200 g/m2で設
    けられ、該亜鉛合金めっき皮膜のη相の (00・2)面の配
    向性指数が0.8 以下、 (10・1)面の配向性指数が0.2 以
    上である、自動車車体用亜鉛系電気めっき鋼板。
JP29441295A 1994-11-30 1995-11-13 亜鉛系電気めっき鋼板とその製造方法 Expired - Fee Related JP3261951B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP29441295A JP3261951B2 (ja) 1994-11-30 1995-11-13 亜鉛系電気めっき鋼板とその製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP29671294 1994-11-30
JP6-296712 1994-11-30
JP29441295A JP3261951B2 (ja) 1994-11-30 1995-11-13 亜鉛系電気めっき鋼板とその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH08209382A JPH08209382A (ja) 1996-08-13
JP3261951B2 true JP3261951B2 (ja) 2002-03-04

Family

ID=26559817

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP29441295A Expired - Fee Related JP3261951B2 (ja) 1994-11-30 1995-11-13 亜鉛系電気めっき鋼板とその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3261951B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09137290A (ja) * 1995-11-13 1997-05-27 Sumitomo Metal Ind Ltd 黒色亜鉛系電気めっき鋼板
JP6135261B2 (ja) * 2013-04-05 2017-05-31 新日鐵住金株式会社 ホットスタンプ成形品の溶融金属脆化割れの発生を判定する方法及びホットスタンプ成形品

Also Published As

Publication number Publication date
JPH08209382A (ja) 1996-08-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR0167050B1 (ko) 복합아연 또는 아연합금 전기도금 금속판
JP3261951B2 (ja) 亜鉛系電気めっき鋼板とその製造方法
KR890001109B1 (ko) 내식성등에 뛰어난 Zn-Fe-P 계 합금전기도금강판
JP2001131762A (ja) 自動車車体用亜鉛系メッキ鋼板
JPH08218193A (ja) 有機複合被覆鋼板
JPH0494928A (ja) 高耐食性制振鋼板
JPH0525679A (ja) 耐衝撃密着性に優れた高耐食性表面処理鋼板
JPH0768634B2 (ja) 耐食性,塗装性能及び加工性に優れた亜鉛系メツキ鋼板
JPH072997B2 (ja) 耐食性と塗装性にすぐれた亜鉛系メツキ鋼板
JP3358468B2 (ja) 亜鉛系複合めっき金属板およびその製造方法
JP3358297B2 (ja) 複合亜鉛合金めっき金属板
JPS616295A (ja) 積層メツキ鋼板
JP2001254195A (ja) 高耐食性複合電気めっき鋼板およびその製造方法
JPH11158688A (ja) 複合亜鉛合金めっき金属板の製造方法
JPS61194195A (ja) 高耐食性二層メツキ鋼板
JP2001303263A (ja) 表面被覆金属板およびその製造方法
JPH059750A (ja) 複層めつき鋼板
JPH11350198A (ja) 複合亜鉛系合金めっき金属板およびその製造方法
JPH11310895A (ja) 亜鉛系電気めっき鋼板の製造方法
JP2002285378A (ja) 電気亜鉛合金めっき金属板
JP2001011688A (ja) 耐食性に優れた複合亜鉛合金めっき金属板
JPH06280097A (ja) 複層めっき金属板
JP2847846B2 (ja) 多層めっき鋼材
JPH0551790A (ja) 加工後耐蝕性、塗装耐蝕性、耐穴明性及び端面防錆性に優れたZn−Cr−Ni−P系有機複合めつき鋼板
JPH0770795A (ja) 複合亜鉛めっき金属板とその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20010612

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20011120

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees