JP2001011688A - 耐食性に優れた複合亜鉛合金めっき金属板 - Google Patents

耐食性に優れた複合亜鉛合金めっき金属板

Info

Publication number
JP2001011688A
JP2001011688A JP11178486A JP17848699A JP2001011688A JP 2001011688 A JP2001011688 A JP 2001011688A JP 11178486 A JP11178486 A JP 11178486A JP 17848699 A JP17848699 A JP 17848699A JP 2001011688 A JP2001011688 A JP 2001011688A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
plating film
corrosion resistance
zinc
cavity
plating
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP11178486A
Other languages
English (en)
Inventor
Akira Taniyama
明 谷山
Masaya Kimoto
雅也 木本
Hikari Kawada
光 川田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP11178486A priority Critical patent/JP2001011688A/ja
Publication of JP2001011688A publication Critical patent/JP2001011688A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Electroplating And Plating Baths Therefor (AREA)
  • Electroplating Methods And Accessories (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 少ない付着量の単層めっき皮膜を備えた、無
塗装耐食性、塗装後耐食性、耐低温衝撃性、めっき皮膜
の加工性および抵抗スポット溶接性などに優れた亜鉛系
めっき金属板を提供する。 【解決手段】 重量%でCを0.010〜10%、F
e、Co、Niの内の1種または2種以上を合計量で
0.010〜10%含有し、残部が実質的に亜鉛からな
り、内部に金属元素を有しない平均長径が100nm以
下の板状の空洞を、めっき皮膜を構成する亜鉛結晶の
[00・1]軸に平行な面での面積率で2%以上有する
めっき被膜を備えた亜鉛系複合めっき金属板。空洞の面
積率が10〜30%であればなおよく、空洞内部にC析
出物が内蔵されていればさらによい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車、家電製
品、建材などの材料として好適な、耐食性、成形加工
性、抵抗スポット溶接性および低温耐衝撃性が良好な複
合亜鉛合金めっき金属板に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車、家電製品、建材など多様な分野
で各種の表面処理金属板、特に表面処理鋼板が利用され
ているが、最近、その防錆能力向上に対する要望が高ま
っている。例えば自動車用表面処理鋼板では、塗装後の
塗膜に傷がついた部分や塗装鋼板の端部の耐食性(塗装
後耐食性)に加えて、冬季に融雪用岩塩が散布される寒
冷地での10年間の耐穴あき腐食性や5年間の耐外面錆
性、さらにはそのような低温環境下で塗装面に石跳ねな
どによる衝撃負荷が加えられてもめっき皮膜の密着性が
損なわれないこと(耐低温衝撃性)なども必要とされて
いる。また、鋼板を加工する際にめっき皮膜が金型に焼
き付いたり粉化、脱離などが発生せずめっき皮膜の加工
性がよいことや、組立工程での溶接作業性がよいことな
ども必要とされている。
【0003】表面処理鋼板としては亜鉛めっき鋼板が一
般的であり、その耐食性を改善するために、めっき付着
量を多くすることが一般的におこなわれている。例えば
耐穴明き性を改善するにはにめっき皮膜自体の耐食性
(無塗装耐食性)の向上が必要であるが、上記のような
10年間の耐穴あき腐食性を確保するには、めっき皮膜
の付着量を過度に増す必要があり、コストが高くなるう
えに、厚目付化に伴ってめっき皮膜の加工性と抵抗スポ
ット溶接性が損なわれるという問題がある。
【0004】めっき皮膜の耐食性を改善する技術とし
て、Fe、Ni、Co、Mn、Cr、Alなどからなる
群の内の1種または2種以上の金属とZnからなる合金
をめっきした、いわゆる亜鉛合金めっき鋼板が知られて
いる。しかし合金成分の含有量を多くするとコストが高
くなるうえ、塗装性など耐食性以外の性能が損なわれる
など、総合的に満足できる性能が得られないという問題
があった。
【0005】特開昭60−215789号公報には、第
1層として付着量10〜300g/m2 の亜鉛めっきを
施し、第2層としてNiおよび/またはCoを15〜3
0重量%含有する亜鉛系合金を1〜20g/m2 めっき
した複層亜鉛めっき鋼板が開示されている。また、特公
昭58−15554号公報には、リン酸塩化成処理性や
電着塗装性を向上させる目的で、合金化溶融亜鉛めっき
鋼板の上にZnを40重量%以下含有するFe−Zn系
めっき皮膜を備えた複層めっき鋼板が開示されている。
【0006】しかしながらこれらの複層めっき鋼板であ
っても、高耐食性を発揮するには下層のZnめっき層の
付着量を多くする必要があり、成形加工性、塗装後耐食
性、抵抗スポット溶接性、耐低温衝撃性などで問題が生
じる。また、めっき鋼板製造時にはめっき工程を複数回
繰り返す必要があるために製造工程が煩雑になり、コス
トも高いという問題があった。
【0007】特開平7−70796号公報には、有機物
を含有するめっき浴を用いて電気めっきし、Fe、C
o、Niの内の1種以上とZnとからなる合金とCとを
共析させる方法が開示されている。この方法によれば、
めっき皮膜表層部にCが濃厚に析出すること、さらに、
合金量を制限して特定の配向性を有するη相(Zn相)
をめっき皮膜に残存させることなどにより、亜鉛合金め
っき鋼板の無塗装での耐食性を損なうことなく、めっき
皮膜の加工性、抵抗スポット溶接性、塗装後耐食性、お
よび耐低温衝撃性を改善することができ、自動車車体用
などの厳しい性能が要求される用途に適した表面処理鋼
板として期待されている。しかしながら、上記方法にお
いても自動車用鋼板での耐穴あき性改善要望には十分で
はなく、無塗装耐食性の改善にはめっき付着量を増すな
どの対応が必要であるという問題があった。
【0008】以上述べたように、過酷な使用環境に耐え
うる良好な耐食性を保持しながら、高水準の加工性と抵
抗スポット溶接性を備え、更に耐低温衝撃性、塗装密着
性、塗装後耐食性に優れ、経済性にも富む表面処理金属
板は未だ実現していない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、少な
い付着量の単層めっき皮膜を備えた、無塗装耐食性、塗
装後耐食性、耐低温衝撃性、めっき皮膜の加工性および
抵抗スポット溶接性などに優れた亜鉛系めっき金属板を
提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、Cを含有
する亜鉛系合金めっき鋼板の耐食性に及ぼすめっき皮膜
構造の影響について、高分解能透過型電子顕微鏡を用い
て詳細な研究を重ねた結果、Cを含有する亜鉛系合金め
っきでは、めっき皮膜内部に、極めて微細な空洞を有す
る場合があることを知った。このような空洞は従来は認
められていなかった。
【0011】さらに、内部にこのような極めて微細な空
洞を適量有するめっき皮膜の亜鉛相の結晶粒が微細であ
り、その耐食性、特に無塗装耐食性が極めて良好である
ことを確認した。この空洞の形状は扁平な円板状である
が、その大きさが扁平な面の長径の平均値(単に「平均
長径」とも記す)で100nm以下である場合に特に優
れた耐食性向上効果があった。
【0012】上記空洞は、その扁平な面に対する法線が
亜鉛結晶の[00・1]方向と平行になるように配向し
ている。微細な空洞がこのように亜鉛結晶と特定の方位
関係を保ちつつ発生することにより、電析される亜鉛結
晶の成長が抑制されて結晶粒が微細化するものと推測さ
れる。
【0013】Cを含有する亜鉛系合金めっきの場合、空
洞内部には有機物に起因するC析出物が認められること
が多いが、C析出物が認められなくても結晶粒の微細化
効果があり、結晶粒微細化の観点から言えばC析出物は
無くても構わない。
【0014】耐食性が改善されるのは、めっき皮膜の結
晶粒が微細になること、さらには空洞に内蔵されている
C析出物が腐食の進行と共に溶出することなどにより、
腐食性の環境下でめっき皮膜表面に強固な腐食生成物が
形成され、めっき皮膜が腐食環境から保護され亜鉛の溶
出を遅らせるためと考えられた。
【0015】また、上記の空洞はめっき皮膜内に均一に
存在するため、めっき皮膜が加工される際にめっき皮膜
内に生じる加工歪みが均一化されるために優れた加工特
性を示すと共に、めっき皮膜の抵抗特性も局所的な変動
が少なくスポット溶接性も優れるものと考えられた。
【0016】本発明はこれらの知見を基にして完成され
たものであり、その要旨は下記(1)〜(3)に記載の
耐食性に優れた亜鉛系複合めっき金属板にある。
【0017】(1)化学組成が重量%でCを0.010
〜10%、Fe、CoおよびNiからなる群の内の1種
または2種以上を合計量で0.010〜10%含有し、
残部が実質的に亜鉛からなるめっき皮膜を備えた亜鉛系
複合めっき金属板であって、そのめっき皮膜は、内部に
金属元素を有しない平均長径が100nm以下の板状の
空洞を、めっき皮膜を構成する亜鉛結晶の[00・1]
軸に平行な面での面積率で2%以上有するものであるこ
とを特徴とする耐食性に優れた亜鉛系複合めっき金属
板。
【0018】(2)空洞の面積率が10〜30%である
ことを特徴とする上記(1)に記載の耐食性に優れた亜
鉛系複合めっき金属板。
【0019】(3)空洞内部にはC析出物が内蔵されて
いることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の
耐食性に優れた亜鉛系複合めっき金属板。
【0020】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を詳細
に説明する。なお、以下に述べる化学組成を表す%は重
量%を意味する。
【0021】母材:本発明のめっき金属板の母材は、自
動車、家電製品、建材などの材料として用いられる絞り
用軟鋼や各種の高張力鋼などから製造される各種の冷間
圧延鋼板が好適である。しかしながらこれに限定する必
要はなく、用途や目的に応じて各種の熱間圧延鋼板や、
アルミニウム板など鋼板以外の金属板を母材として用い
ても構わない。本発明のめっき金属板のめっきを施す部
位は、母材の両面でも片面でもいずれでも良い。
【0022】めっき皮膜の化学組成:本発明のめっき皮
膜には、Fe、CoおよびNiからなる群の内の1種ま
たは2種以上を合計量で(2種以上の場合はその合計量
であって、1種の場合も含めて合計量という)0.01
0%以上含有させる。これらの元素の含有量が合計量で
0.010%に満たない場合には、めっき皮膜中に微細
な空洞が形成されないか、形成されたとしてもその大き
さが過大になり平均長径が100nmを超え、めっき皮
膜の結晶粒を微細化することができず、めっき皮膜の性
能を改善する効果が少ないためである。好ましくは、こ
れらの元素の含有量は合計量で0.5%以上がよい。
【0023】合金元素含有量が空洞の形成に影響する理
由は定かではないが、めっきに際してCのめっき皮膜内
での分散状態に合金元素含有量が影響するためであろう
と推測される。
【0024】これらの合金元素の含有量が合計量で10
%を超えると、Zn相であり鋼に対して優れた犠牲防食
作用を発揮するη相がめっき皮膜から消失し、めっき皮
膜の犠牲防食性が低下して塗装後の端面耐食性や塗膜疵
付き部の耐食性が損なわれる。また、η相は展延性があ
り、鋼板あるいはアルミニウム合金板と結晶学的に整合
性を保っているため、母材との密着力に優れ、良好な耐
低温衝撃性も実現される。このため、これら合金元素の
含有量は合計量で10%以下とする。好ましくは5%以
下である。
【0025】本発明の複合めっきをおこなう場合、めっ
き皮膜は有機物に由来するCが含有されるが、かかる態
様において、めっき皮膜のC含有量が0.010%に満
たない場合には空洞の形成が不十分となり、所望の耐食
性改善効果が得られないることがある。このため、めっ
き被膜のC含有量は0.010%以上とするのがよく、
好ましくは0.5%以上がよい。
【0026】他方C含有量が10%を超えると亜鉛合金
の防食機能が低下し、めっき皮膜の耐食性が損なわれ
る。また、電気めっきに際してめっき浴の粘度が高くな
りすぎてめっき作業性が損なわれる。これらを避けるた
めにC含有量は10%以下とするのがよく、好ましくは
5%以下がよい。
【0027】本発明のめっき金属板のめっき皮膜の化学
組成は、上記以外は実質的に亜鉛からなる。実質的にと
の意味は、不純物としてAl、Si、Mn、P等の元素
を1%以下含有しても構わないことを意味する。
【0028】本発明のめっき金属板のめっき皮膜は、内
部に金属元素を有しない平均長径が100nm以下の偏
平な板状の空洞を有する。本発明でいう空洞とは、その
内部に金属元素を含有しないことを意味するものであ
り、その内部にC析出物が含有されている場合が一般的
である。しかしながら、結晶微細化の観点からはCが検
出されない空洞であっても構わない。
【0029】空洞は、その厚さと長径の比が1:20前
後の板状またはレンズ状の偏平な形状(本発明では、単
に「板状」とも記す)をしており、その平面形状は円
形、楕円形あるいは多角形などのように観察される。そ
の大きさは、長径で数百nm以下である。この偏平な空
洞は、電析しためっき金属の結晶方位に対して特定の方
向、つまり、板面の法線方向が亜鉛結晶の[00・1]
軸に平行になるように発生するものが多い。
【0030】亜鉛結晶の微細化には、空洞の平均長径が
100nm以下である場合に有効であるとするのがよ
い。空洞の平均長径が100nmを超える場合には、め
っき皮膜の亜鉛系合金の結晶粒微細化効果が十分ではな
い。
【0031】結晶粒微細化効果は、空洞の存在比率が、
めっき皮膜の亜鉛結晶の[00・1]軸に平行な面で測
定した場合の面積率で2%以上である場合に発揮され
る。10%以上ある場合には特に優れた微細化効果が得
られる。上記の「亜鉛結晶の[00・1]軸に平行な面
で測定した場合」とは、偏平な板状空洞を厚さ方向に切
断する平面で測定した、空洞の厚さ方向断面の面積率で
あることを意味する。本発明でいう空洞の面積率は、上
記の方法で測定した場合に観察される空洞の厚さ方向切
断面における空洞の面積比を意味する。
【0032】空洞の存在比率が上記面積率で30%を超
えると、無塗装耐食性改善効果が飽和するうえ、めっき
皮膜の強度が低下し、金属板加工時のめっき皮膜の加工
性や、耐低温衝撃性が損なわれることがある。このた
め、空洞の存在比率は面積率で30%以下とするのが望
ましい。
【0033】上記空洞には、通常めっき浴に溶解されて
いるCを主体とする有機物から析出したC析出物が内蔵
されている。めっき層の腐食に伴ってめっき皮膜表面に
達したC析出物は、腐食の進行過程において溶出してめ
っき皮膜面を覆い、亜鉛の溶出を遅らせる作用がある。
これによりめっき皮膜の耐食性がさらに改善される。
【0034】本発明のめっき金属板のめっき皮膜の付着
量は特に限定するものではないが、5〜200g/m2
の範囲とするのがよい。めっき付着量が5g/m2 に満
たない場合には、無塗装での耐穴あき性、塗装後の傷部
や端面での耐食性などが不十分な場合がある。200g
/m2 を超えると無塗装での耐食性が飽和する上、めっ
き皮膜の加工性が損なわれる場合があり、経済性にも劣
る。
【0035】空洞の長径や、面積率はめっき皮膜から得
た試験片を、透過型電子顕微鏡を用いて亜鉛結晶の[0
0・1]軸方向に対して垂直な方向を選定し、偏平な空
洞の厚さ方向断面を透過型電子顕微鏡を用いて5万倍以
上の倍率で観察し、その長径や断面積比率を画像処理技
術により測定することができる。本発明が規定する空洞
の平均長径は、観察像上の10個以上の空洞について測
定した値の平均値であり、その面積率の値は観察像上の
10個所以上の領域について測定した単位面積に対する
比の平均値を意味する。
【0036】空洞内のC析出状況は特性X線分析(ED
S)や、エネルギー損失分光分析(EELS)などで確
認できる。めっき皮膜中のη相および析出相の存在は高
分解能透過型電子顕微鏡観察により確認される。また、
めっき皮膜中のC含有量は、5%硫酸でめっき皮膜を溶
解し、溶液中の有機高分子をグルコースに分解した後フ
ェノール硫酸法によりグルコース量を定量して測定され
る。
【0037】本発明のめっき金属板の製造方法は特に限
定するものではないが、以下に述べる方法で製造するの
が好適である。
【0038】めっき母材は通常の方法に従って、脱脂、
酸洗などの前処理を施した後、縦型あるいは横型のめっ
きセルで電気めっきされる。電気めっき方法は、めっき
電流が連続的に供給される連続めっき法、めっき電流が
断続的に供給されるパルスめっき法などがあるが、いず
れの方法を用いても良い。
【0039】電気めっき浴は酸性浴(例えば、硫酸塩
浴、酸化物浴)、アルカリ性浴(例えば、シアン化物
浴)の何れでも可能である。しかしながら、アルカリ性
浴では金属塩が沈殿しやすく経済的にも不利であるの
で、酸性浴、特に硫酸塩浴を用いるのが好ましい。Zn
およびFe、Ni、Coなどの合金元素は、硫酸塩、酢
酸塩、炭酸塩、モリブデン酸塩、次亜リン酸塩、有機金
属塩などの金属イオンとして目標のめっき皮膜組成とす
るのに必要な量をめっき浴に添加すればよい。
【0040】めっき浴には、目標とするめっき皮膜中の
C含有量に応じた量のC源を含有させる。C源として
は、デキストリンなどの高分子化合物が好適であるが、
単糖類、二糖類または多糖類などの炭水化物や、アルキ
ン類、アルキノール類、アミン類、チオ化合物、複素環
化合物、芳香族カルボン酸なども適用できる。これらか
ら選んだ少なくとも1種の有機化合物を添加した浴中で
亜鉛合金めっきを施す。
【0041】所望の空洞を得るには、めっき皮膜中のC
含有量が0.010〜10%、Fe、CoおよびNiか
らなる群の内の1種または2種以上の合計量が0.01
0〜10%となるようにC源と金属源を含有させためっ
き浴を用いればよい。電気めっきの後処理は必須ではな
いが、めっき皮膜の上にさらに公知のクロメート処理皮
膜や有機樹脂皮膜などを備えさせれば、さらに耐食性を
改善できるので施しても構わない。
【0042】
【実施例】JIS−G3141に規定されている厚さが
0.8mmの低炭素冷間圧延鋼板を母材として用い、脱
脂した後、硫酸塩浴を用いて電気めっきを施した。めっ
き浴にはC源として分子量が103 〜107 のデキスト
リンを添加した。めっき浴組成、電流密度などを下記に
示す範囲で種々に変えて母材鋼板に電気めっきし、種々
の構成の亜鉛合金めっき皮膜を有するめっき鋼板を作製
した。
【0043】めっき条件は次の通りである。 ZnSO4 ・7H2 O:1〜40重量%、CoSO4
7H2 O:0〜40重量%、NiSO4 ・6H2 O:0
〜40重量%、FeSO4 ・7H2 O:0〜40重量
%、Na2 SO4 :0〜40重量%、デキストリン:0
〜10重量%、pH:1.8、 浴温:50±2℃、 液流速:1m/秒、 電流密度:20〜150A/dm2 、 皮膜全体の狙い付着量:3.6〜360g/m2
【0044】得られためっき鋼板の性能を以下の方法で
評価した。 空洞の発生状況:めっき皮膜から直径3mm、厚さ5μ
mの電顕用試料を採取し、透過型電子顕微鏡を用いて倍
率10万倍で観察し、観察像上の空洞を20個側定して
平均値を求めた。同時に、空洞のめっき皮膜の亜鉛結晶
の[00・1]軸に平行な面における面積率を10個の
領域について求め、平均値を計算した。
【0045】無塗装耐食性(耐穴あき性):電気めっき
したままの試験片から大きさが100mm×100mm
の試験片を採取した。これに塩水噴霧(5%−NaC
l、35℃、7時間)→乾燥(50℃、2時間)→湿潤
(RH85%、50℃、15時間)を1サイクルとする
腐食サイクル試験を300サイクル実施後、腐食生成物
を除去して腐食深さを測定し、その中の最大腐食深さを
下記基準で評価し、最大腐食深さが0.1mm未満であ
った場合を良好と判断した。
【0046】 ◎:0mm、 ○:0.1mm未満、 △:0.1mm以上、0.3mm以下、 ×:0.3mm超。
【0047】塗装後の端面耐食性:試験片端面のかえり
の大きさが板厚の10%になるようにして周囲を切断し
た、寸法が70mm×150mmの試験片を準備した。
これらの試験片を脱脂し、表面調整し、化成処理した
後、厚さ20±1μmのカチオン電着塗装を施し、17
5℃で25分焼き付けた。その後、自動車用アルキッド
系塗料の中塗り(40μm)、焼き付け、メラミン・ポ
リエステル系塗料の上塗り(40μm)、焼き付けをお
こなった。このようにして得た試験片に上記無塗装耐食
性評価と同じ腐食サイクル試験を60サイクル実施した
後、端面の赤錆発生面積率を下記基準で評価し、赤錆発
生面積率が5%以下であった場合を良好と判断した。
【0048】 ◎:赤錆発生無し、 ○:5%以下、 △:10%以下、 ×:30%以下、 ××:30%超。
【0049】塗装後の塗膜傷付き部耐食性:塗装後の端
面耐食性評価法と同様の条件で塗装した試験片に、カッ
ターナイフで母材素地に達するカット傷を付与し、上記
無塗装耐食性評価と同じ腐食サイクル試験を300サイ
クル実施した。電着塗装と腐食生成物を除去して腐食深
さを測定して下記基準で評価し、腐食深さが0.2mm
未満であった場合を良好と判断した。
【0050】 ◎:0mm、 ○:0.2mm未満、 △:0.2mm超、0.6mm以下、 ×:0.6mm超。
【0051】耐低温衝撃性:上述の塗装後の端面耐食性
評価と同様の塗装を施した試験片を−40℃の環境下に
おき、その表面にダイヤモンド粒(長径約3mm)を1
20km/時の速度で10箇所衝突させ、その後この試
験片を暴露試験に供した。暴露試験は工業地帯で5年間
実施し、途中、1ヶ月に1回の頻度で30分間3%Na
Cl水溶液に浸漬した。5年後に衝突点での塗装ブリス
ターの最大幅を測定した。自動車用途などであって耐低
温衝撃性に対する要求が厳しい場合には、塗装ブリスタ
ーの最大幅が3mm未満である場合が良好と判断した。
【0052】 ◎:1mm未満、 ○:1mm以上、3mm未満、 △:3mm以上、5mm未満、 ×:5mm以上。
【0053】めっき皮膜の加工性:めっき鋼板から直径
が90mmの円形ブランクを採取し、これを直径50m
m、深さ28mmの円筒状に深絞り成形し、その側壁面
のめっき皮膜を粘着テープで剥離させ、剥離片が付着し
ているテープの面積率を目視で判定して下記基準で評価
し、剥離片が付着しているテープの面積率が10%未満
であった場合を良好と判断した。
【0054】 ◎:全く剥離無し、 ○:10%未満、 △:30%未満、 ×:30%以上。
【0055】抵抗スポット溶接性:電極形状がドーム
型、溶接電流を27000A、加圧力を300kgf、
通電時間を6/60サイクルとする溶接条件で、2秒毎
に1打点の割合で20打点連続スポット溶接した後40
秒以上休止、を繰り返し、100打点毎に繰り返し数3
のせん断試験を行った。せん断試験後のナゲット径が
3.6mm以上である溶接打点数の限界を求めて以下の
基準で評価し、打点数が1500回以上であった場合を
良好と判断した。
【0056】 ◎:2000回以上、 ○:1500回以上、2000回未満、 △:1000回以上、1500回未満、 ×:1000回未満。 これらの試験結果を表1に示した。
【0057】
【表1】
【0058】表1からわかるように、本発明が規定する
条件を満たすものは、各種の耐食性評価において優れた
耐食性を示した。また、めっき皮膜の加工性、溶接性も
良好であった。合金元素の含有量が5%以下で他の条件
もよい場合には耐低温衝撃性も良好であった。空洞の面
積率が30%を超えた試験番号21は耐低温衝撃性がや
や劣ったが他の性能は良好であった。これに対し、C含
有量が0.010%に満たなかった試験番号14、15
は空洞が発生なかったか、発生してもその存在比率が小
さすぎたために耐食性が良くなかった。Fe、Coおよ
びNiの合計量が0.010%に満たなかった試験番号
16、18および22は粗大な空洞が発生し、結晶粒微
細化効果が得られなかったために耐食性が良くなかっ
た。合金元素含有量が10%を超えた試験番号17はη
相が消失し犠牲防食性能が低下して塗装後耐食性が劣っ
たうえ、耐低温衝撃性も良くなかった。空洞の寸法が大
きすぎた試験番号18では結晶粒の微細化が不十分で耐
食性が好ましくなかった。
【0059】
【発明の効果】本発明の複合亜鉛合金めっき金属板は、
単層でかつ付着量が比較的少ないめっき金属板でありな
がら、従来の表面処理金属にない優れた無塗装での耐食
性を有しており、塗装後の耐食性や溶接性、めっき皮膜
の加工性も優れている。このため、自動車、家電製品、
建材などの用途、特に自動車外板用に有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川田 光 大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金 属工業株式会社内 Fターム(参考) 4K023 AB04 AB29 BA06 CB08 CB11 CB28 CB42 4K024 AA15 AA18 AA19 AA20 AB01 AB19 BA03 BC01 CA02 GA04

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化学組成が重量%でCを0.010〜1
    0%、Fe、CoおよびNiからなる群の内の1種また
    は2種以上を合計量で0.010〜10%含有し、残部
    が実質的に亜鉛からなるめっき皮膜を備えた亜鉛系複合
    めっき金属板であって、そのめっき皮膜は、内部に金属
    元素を有しない平均長径が100nm以下の板状の空洞
    を、めっき皮膜を構成する亜鉛結晶の[00・1]軸に
    平行な面での面積率で2%以上有するものであることを
    特徴とする耐食性に優れた亜鉛系複合めっき金属板。
  2. 【請求項2】 空洞の面積率が10〜30%であること
    を特徴とする請求項1に記載の耐食性に優れた亜鉛系複
    合めっき金属板。
  3. 【請求項3】 空洞内部にはC析出物が内蔵されている
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の耐食性に優
    れた亜鉛系複合めっき金属板。
JP11178486A 1999-06-24 1999-06-24 耐食性に優れた複合亜鉛合金めっき金属板 Withdrawn JP2001011688A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP11178486A JP2001011688A (ja) 1999-06-24 1999-06-24 耐食性に優れた複合亜鉛合金めっき金属板

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP11178486A JP2001011688A (ja) 1999-06-24 1999-06-24 耐食性に優れた複合亜鉛合金めっき金属板

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2001011688A true JP2001011688A (ja) 2001-01-16

Family

ID=16049311

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP11178486A Withdrawn JP2001011688A (ja) 1999-06-24 1999-06-24 耐食性に優れた複合亜鉛合金めっき金属板

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2001011688A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR0167050B1 (ko) 복합아연 또는 아연합금 전기도금 금속판
JPS63143293A (ja) 複層電気めつき鋼板
JPS5815554B2 (ja) カチオン電着塗装用のメッキ鋼材
JP3895900B2 (ja) 高耐食性複合電気めっき鋼板およびその製造方法
JPS6327438B2 (ja)
JP2001011688A (ja) 耐食性に優れた複合亜鉛合金めっき金属板
JPH0525679A (ja) 耐衝撃密着性に優れた高耐食性表面処理鋼板
JP3261951B2 (ja) 亜鉛系電気めっき鋼板とその製造方法
KR950000909B1 (ko) 복수의 도금층을 가진 가공성, 내식성 및 내수도료 밀착성이 우수한 전기 도금 강판
JPH0768634B2 (ja) 耐食性,塗装性能及び加工性に優れた亜鉛系メツキ鋼板
JP3358468B2 (ja) 亜鉛系複合めっき金属板およびその製造方法
JPS6213590A (ja) 塗装性、塗装後のめっき密着性および耐食性に優れた表面処理鋼板およびその製造方法
JPH11350198A (ja) 複合亜鉛系合金めっき金属板およびその製造方法
JPH11310895A (ja) 亜鉛系電気めっき鋼板の製造方法
JP2795071B2 (ja) 密着性に優れた電気めっきアルミニウム板とその製造方法
JP2712924B2 (ja) 耐食性、めっき密着性、化成処理性および塗膜密着性に優れた亜鉛−ニッケル−クロム系合金電気めっき鋼板
JP3858706B2 (ja) プレス成形性に優れた亜鉛めっき鋼板
JPS61257494A (ja) 高耐食性表面処理鋼板
JPH11158688A (ja) 複合亜鉛合金めっき金属板の製造方法
JPH1088393A (ja) 複合亜鉛合金めっき金属板およびその製造方法
JP2001073163A (ja) 耐穴あき性に優れた亜鉛めっき鋼板
JP2002285378A (ja) 電気亜鉛合金めっき金属板
JP3211413B2 (ja) AlまたはAl合金材の表面処理法
JPH059750A (ja) 複層めつき鋼板
JP3358479B2 (ja) 複合亜鉛系電気めっき金属板の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20060905