JP3257331B2 - トロイダル型無段変速機の変速制御装置 - Google Patents

トロイダル型無段変速機の変速制御装置

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JP3257331B2
JP3257331B2 JP7149495A JP7149495A JP3257331B2 JP 3257331 B2 JP3257331 B2 JP 3257331B2 JP 7149495 A JP7149495 A JP 7149495A JP 7149495 A JP7149495 A JP 7149495A JP 3257331 B2 JP3257331 B2 JP 3257331B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、トロイダル型無段変速
機に関し、特にその変速制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】トロイダル型無段変速機は通常、例えば
特開平3−89066号公報に記載の如くに構成する。
このトロイダル型無段変速機は図6に示すように、同軸
配置した入出力コーンディスク1,2と、これら入出力
コーンディスク間で摩擦係合により動力の受渡しを行う
パワーローラ3とよりなるトロイダル伝動ユニット、お
よび後述の如き変速制御装置を具える。
【0003】パワーローラ3は入出力コーンディスク
1,2間に挟圧され、パワーローラ3と、入出力コーン
ディスク1,2との間の油膜の剪断によって、パワーロ
ーラ3は入出力コーンディスク1,2間での動力伝達を
行う。つまり、入力コーンディスク1の回転は上記油膜
の剪断によってパワーローラ3に伝達され、次いでパワ
ーローラ3の回転が上記油膜の剪断によって出力コーン
ディスク2に伝達され、逆に出力コーンディスク2から
入力コーンディスク1への動力伝達もパワーローラ3を
介して同様になされる。
【0004】ここで変速制御装置を説明するに、これは
ステップモータ4を有し、該ステップモータは、目標変
速比に対応した変速指令値(ステップ数)を与えられて
対応位置に回転し、変速制御弁5の内外弁体5a,5b
のうち、外弁体5bを内弁体5aに対し相対的に中立位
置から変位させる。これにより、両パワーローラ3を流
体圧でピストン6を介して図中上下方向へ、但し相互逆
向きに変位させる。これにより両パワーローラ3は、回
転軸線O1 が入出力コーンディスク1,2の回転軸線O
2 と交差する図示位置から対応方向にオフセットされ、
該オフセットによりパワーローラ3は入出力コーンディ
スク1,2からの分力で、自己の回転軸線O1 と直交す
る首振り軸線O3 の周りに傾転され、入出力コーンディ
スク1,2に対するパワーローラ3の摩擦接触円弧径が
連続的に変化することで無段変速を行うことができる。
【0005】かかる無段変速により上記の変速指令値
(目標変速比)に対応したパワーローラ目標傾転角が達
成される時、パワーローラ3のオフセットおよび傾転を
プリセスカム7および変速リンク8を介してフィードバ
ックされる変速制御弁5の内弁体5aは、外弁体5bに
対し相対的に初期の中立位置に復帰し、同時に、両パワ
ーローラ3は、回転軸線O1 が入出力コーンディスク
1,2の回転軸線O2 と交差する図示位置に戻ること
で、上記変速指令値(目標変速比)に対応したパワーロ
ーラ目標傾転角の達成状態を維持することができる。
【0006】ここで、上記した変速機内の機械的な変速
制御系を模式図に表すと図7のごとくになり、この図に
は、上記の変速制御指令値を決定するコントローラの機
能ブロック線図を併記した。
【0007】コントローラは、予めメモリしておいた変
速マップ、および目標変速比計算部を有する。そしてコ
ントローラは先ず、上記の変速マップを基にスロットル
開度TVOおよび車速VSPから、目標とすべき変速機
入力回転数Ni * を求め、次いで上記の目標変速比計算
部において、変速機目標入力回転数Ni * と変速機出力
回転数No とから目標変速比を演算し、この目標変速比
に対応した変速指令値(フィードフォワードステップ
数)をステップモータ4に与える。
【0008】この時ステップモータ4は、変速制御指令
値(フィードフォワードステップ数)に応じた駆動によ
り、変速制御弁5の外弁体5bをXSpだけ内弁体5aに
対し相対的に中立位置から変位させる。これにより、変
速制御弁5およびピストン6で構成される油圧サ−ボは
前記したように、パワーローラ3をy(mm)だけオフ
セットさせ、このオフセットに伴いパワーローラ3はφ
(rad.)だけ傾転する。この傾転φは、変速機出力
回転数No との関係で決まる変速機入力回転数Ni を目
標入力回転数Ni * に近づくよう変化させる。
【0009】ところでプリセスカム7は前記したよう
に、パワーローラオフセット量yおよびパワーローラ傾
転角φを変速制御弁5の内弁体5aにフィードバックし
て、これをX(mm)だけ、外弁体5bの上記変位に追
従するよう移動させ、変速制御弁5の内外弁体間相対変
位をdx(mm)に減ずる。このdxは変速の進行につ
れて小さくなり、上記の変速指令値が達成される時、遂
には0になる。この時変速制御弁5の内弁体5aおよび
外弁体5bは相対的に初期の中立位置に復帰し、変速指
令値(目標変速比)に対応したパワーローラ目標傾転角
の達成状態の達成状態を維持することができる。
【0010】ここで、プリセスカム7からのフィードバ
ック量Xは、プリセスカム7のカム形状で決まる傾転角
フィードバックゲインをa、変速リンク8のレバー比で
決まるオフセット量フィードバックゲインをbとする
と、X=a・φ×b・yで表される。なお、パワーロー
ラ傾転角φを目標変速比に対応した値にすることが制御
の狙いであるから、基本的にプリセスカム7はパワーロ
ーラ傾転角φのみをフィードバックすればよいことにな
るが、ここでパワーローラオフセット量yをもフィード
バックする理由は、変速制御が振動的になるのを防止す
るダンピング効果を与えて、変速制御のハンチング現象
を回避するためである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかし上記したトロイ
ダル型無段変速機にあっては、パワーローラ3が前記の
動力伝達を可能にするため、入出力コーンディスク1,
2間に変速機入力トルクに応じた大きなスラストで挟圧
されており、またこの挟圧力に抗してパワーローラ3を
所定位置に保持するために図6に示すごとく、両パワー
ローラ3の支持部材であるトラニオン41の上端同士を
球面継手42を介しアッパリンク43により相互に連結
して変速機ケース内に支持し、トラニオン41の下端同
士を球面継手44を介しロアリンク45により相互に連
結して変速機ケース内に支持することから、変速制御に
当たって以下の問題を生ずる。
【0012】つまり上記の挟圧力は、各トラニオン41
と球面継手42,44との間に大きな摩擦抵抗を生じさ
せ、トラニオン41のパワーローラ傾転運動に抵抗を作
用させる。この抵抗は、パワーローラ3の傾転による変
速に際し、傾転角変更(変速)指令から実際にパワーロ
ーラ3が当該指令に対応した目標傾転角に向け傾転し始
めるまでの間に、変速応答遅れ時間を発生させる。
【0013】ところで上記の摩擦抵抗は、パワーローラ
3が傾転角変化中でない静止状態から傾転を始める場
合、静摩擦抵抗であることから比較的大きくなり、これ
に対し、パワーローラ3が傾転角変化中に同方向へ更な
る傾転を行う場合、上記の摩擦抵抗は動摩擦抵抗である
ことからそれほど大きくならない。従って、上記の摩擦
抵抗が原因で生ずる前記変速応答遅れの問題は、パワー
ローラ3が傾転角変化中でない静止状態から傾転を始め
る場合、特に顕著となる。図5は、パワーローラ3が静
止状態から傾転を始める場合、目標傾転角φ* に対して
実傾転角がどのように変化するかを示したタイムチャー
トで、従来装置では実傾転角をφ0 で示すように制御
し、Δt0 のごとき大きな変速応答遅れを発生させてし
まう。
【0014】なお、車両をアクセルペダルの釈放により
惰性走行させている状態から、アクセルペダルのキック
ダウンにより加速する場合などに生ずる現象であるが、
パワーローラ3が傾転角を現在の変化方向から逆の方向
へ変化するような傾転を行う場合も、つまりパワーロー
ラ傾転角が増大から減少へ、または逆に減少から増大へ
変化するような傾転方向切り換え時も、当該切り換え瞬
時において一旦パワーローラ3が傾転角速度0の状態を
経て傾転角変化を行うことから、上記の摩擦抵抗が静摩
擦抵抗となって、前記変速応答遅れの問題が顕著にな
る。
【0015】なお従来、特開昭61−82064号公報
により、以下のごとき無段変速機の変速制御装置が提案
されている。つまり、変速動作量(変速指令値)に応動
するパルスモータ(ステップモータ)で変速制御弁を操
作して前記のような無段変速機の変速を生起させる装置
において、変速動作量が設定値より大きいか、小さいか
を判定し、変速動作量が設定値より小さい時は、パルス
モータの動作速度を遅くし、変速動作量が設定値より大
きい時は、パルスモータの動作速度を早くして応答性を
向上させようとするものである。
【0016】しかしこの変速制御装置は、パルスモータ
の動作速度を制御して変速指令に対するパルスモータの
動作応答を向上させようとするもので、パルスモータに
よって行う変速制御弁の操作に対するパワーローラ傾転
動作の応答遅れを解消することにはならない。従って、
前記したようにパワーローラ傾転角が傾転角速度0の状
態から変化したり、この状態を経由する変化を生ずるよ
うな傾転角変化態様で特に顕著となる変速応答遅れに関
する問題を、上記の従来の変速制御装置では解消し得な
い。
【0017】本発明は、当該変速応答遅れの問題が顕著
となるパワーローラ傾転角変化態様では、パワーローラ
のオフセット応答に関与する変速制御弁の開度を、パワ
ーローラのオフセット応答が速くなるよう大きくすべ
く、変速制御弁の開度を決定する変速指令値を補正する
ようにした変速制御装置を提案し、もって上述の問題を
解消することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】この目的のため第1発明
による変速制御装置は、同軸配置した入出力コーンディ
スクと、これら入出力コーンディスク間で摩擦係合によ
り動力の受渡しを行うパワーローラとよりなるトロイダ
ル伝動ユニットを具え、変速指令値に対応して変速制御
弁を中立位置から開くことで、該変速制御弁からの圧力
により前記パワーローラを、回転軸線が前記入出力コー
ンディスクの回転軸線と交差する位置からオフセットさ
せ、該オフセットにより入出力コーンディスクからの分
力でパワーローラを、自己の回転軸線と直交する首振り
軸線周りで目標傾転角に向けて傾転させることにより、
無段変速を行なわせると共に、該無段変速により前記変
速指令値に対応した目標傾転角が達成される時、前記変
速制御弁の中立位置への復帰によりパワーローラを、前
記オフセットがなくなる位置に戻すようにした変速制御
装置を有するトロイダル型無段変速機において、前記目
標傾転角が、傾転角速度0の状態から変化したのを、ま
たはこの状態を経由する変化を生じたの検知する目標傾
転角変化態様検知手段と、該手段により前記目標傾転角
の変化が検知される時、前記変速指令値を、前記変速制
御弁の開度が大きくなるよう補正する変速指令値変更手
段とを設けたことを特徴とするものである。
【0019】また、第2発明によるトロイダル型無段変
速機の変速制御装置は、上記傾転角速度0の状態におけ
るパワーローラ傾転角を検出する傾転角検出手段を付加
して具え、該手段により検出したパワーローラ傾転角に
応じ前記変速指令値変更手段は、このパワーローラの傾
転角が小さいほど前記変速指令値の補正量を大きくする
よう構成したことを特徴とするものである。
【0020】更に、第3発明によるトロイダル型無段変
速機の変速制御装置は、前記傾転角速度0の状態におけ
る変速機入力トルクを検出する入力トルク検出手段を付
加して具え、該手段により検出した変速機入力トルクに
応じ前記変速指令値変更手段は、この変速機入力トルク
が大きいほど前記変速指令値の補正量を大きくするよう
構成したことを特徴とするものである。
【0021】また、第4発明によるトロイダル型無段変
速機の変速制御装置は、前記目標傾転角の変化から実傾
転角の変化までに要した変速応答遅れ時間を計測する変
速応答遅れ計測手段を付加して具え、該変速応答遅れ時
間に応じ前記変速指令値変更手段は、この変速応答遅れ
時間が長いほど前記変速指令値の補正量を大きくするよ
う構成したことを特徴とするものである。
【0022】第5発明によるトロイダル型無段変速機の
変速制御装置においては、該装置が、前記目標傾転角と
実傾転角との偏差にフィードバックゲインを乗じて前記
変速指令値を決定するものである場合、前記変速指令値
変更手段は、該フィードバックゲインを大きくして前記
変速指令値の補正を行うよう構成したことを特徴とする
ものである。
【0023】
【作用】第1発明において、トロイダル伝動ユニットの
パワーローラは、同軸配置の入出力コーンディスク間で
摩擦係合により動力の受渡しを行う。ここで変速に際し
変速制御装置は、変速指令値に対応して変速制御弁を中
立位置から開くことで、該変速制御弁からの圧力により
上記パワーローラを、回転軸線が上記入出力コーンディ
スクの回転軸線と交差する位置からオフセットさせ、該
オフセットにより入出力コーンディスクからの分力でパ
ワーローラを、自己の回転軸線と直交する首振り軸線周
りに目標傾転角に向けて傾転させることにより、無段変
速を行なわせる。この無段変速により前記変速指令値に
対応したパワーローラの目標傾転角が達成される時、変
速制御装置は変速制御弁の中立位置への復帰によりパワ
ーローラを、上記オフセットがなくなる位置に戻して、
変速指令値の達成状態を維持する。
【0024】上記の変速に際し目標傾転角変化態様検知
手段は、上記目標傾転角が、傾転角速度0の状態から変
化したのを、またはこの状態を経由する変化を生じたの
を検知し、かかる目標傾転角の変化が検知される時、変
速指令値変更手段は前記変速指令値を、前記変速制御弁
の開度が大きくなるよう補正する。かかる変速指令値の
補正による変速制御弁の開度増大は、パワーローラのオ
フセット応答を速くし、それだけパワーローラの傾転、
つまり変速の応答性を向上させ得る。よって第1発明の
変速制御装置によれば、目標傾転角が傾転角速度0の状
態から変化したり、この状態を経由する変化を生じるよ
うな変速時において前記の通り特に顕著となっていた変
速応答に関する問題を解消することができる。
【0025】第2発明によるトロイダル型無段変速機の
変速制御装置においては、傾転角検出手段が、上記傾転
角速度0の状態におけるパワーローラ傾転角を検出し、
該手段により検出したパワーローラ傾転角に応じ上記変
速指令値変更手段は、このパワーローラの傾転角が小さ
いほど前記変速指令値の補正量を大きくする。ここで、
上記傾転角速度0の状態におけるパワーローラ傾転角が
小さいほど、幾何学的にパワーローラ挟圧力が大きくな
って、変速応答遅れ時間が長くなる傾向にあるが、第2
発明によれば変速指令値の補正がこの傾向にマッチし
て、上記傾転角速度0の状態におけるパワーローラ傾転
角の如何にかかわらず、上記第1発明の作用効果を確実
に達成することができる。
【0026】第3発明によるトロイダル型無段変速機の
変速制御装置においては、入力トルク検出手段が上記傾
転角速度0の状態における変速機入力トルクを検出し、
該手段により検出した変速機入力トルクに応じ前記変速
指令値変更手段は、この変速機入力トルクが大きいほど
前記変速指令値の補正量を大きくする。ここで、上記傾
転角速度0の状態における変速機入力トルクが大きいほ
ど、パワーローラ挟圧力が大きくなって、変速応答遅れ
時間が長くなる傾向にあるが、第3発明によれば変速指
令値の補正がこの傾向にマッチして、上記傾転角速度0
の状態における変速機入力トルクの如何にかかわらず、
上記第1発明の作用効果を確実に達成することができ
る。
【0027】第4発明によるトロイダル型無段変速機の
変速制御装置においては、変速応答遅れ計測手段が、前
記目標傾転角の変化から実傾転角の変化までに要した変
速応答遅れ時間を計測し、この変速応答遅れ時間に応じ
前記変速指令値変更手段は、この変速応答遅れ時間が長
いほど前記変速指令値の補正量を大きくする。よって、
経時変化や作動油温の違いによって変速応答遅れ時間が
様々に変化しても、変速指令値の補正量が、本発明によ
り短縮しようとする変速応答遅れ時間の実際値に応じた
適切なものとなり、如何なる条件のもとでも上記第1発
明の作用効果を確実に達成することができる。
【0028】第5発明によるトロイダル型無段変速機の
変速制御装置においては、この変速制御装置が、前記目
標傾転角と実傾転角との偏差にフィードバックゲインを
乗じて前記変速指令値を決定するものである場合、前記
変速指令値変更手段は、上記のフィードバックゲインを
大きくして前記変速指令値の補正を行う。この場合、変
速指令値の補正が総括的で、当該補正のための演算が簡
単になる。
【0029】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に
説明する。図1および図2は、本発明一実施の態様にな
る変速制御装置を具えたトロイダル型無段変速機を例示
し、図1は同トロイダル型無段変速機の縦断側面図、図
2は同じくその縦断正面図である。なお便宜上、これら
図中、図6におけると同様の部分は同一符号を付して示
した。
【0030】先ず、トロイダル伝動ユニットを説明する
に、これは図示せざるエンジンからの回転を伝達される
入力軸20を具え、この入力軸は図1に明示するよう
に、エンジンから遠い端部を変速機ケース21内に軸受
22を介して回転自在に支持し、中央部を変速機ケース
21の中間壁23内に軸受24および中空出力軸25を
介して回転自在に支持する。入力軸20上には入出力コ
ーンディスク1,2をそれぞれ回転自在に支持し、これ
らコーンディスクを、トロイド曲面1a,2aが相互に
対向するよう配置する。そして入出力コーンディスク
1,2の対向するトロイド曲面間には、入力軸20を挟
んでその両側に配置した一対のパワーローラ3を介在さ
せ、これらパワーローラを入出力コーンディスク1,2
間に挟圧するために、以下の構成を採用する。
【0031】即ち、入力軸20の軸受け端部にローディ
ングナット26を螺合し、該ローディングナットにより
抜け止めして入力軸20上に回転係合させたカムディス
ク27と、入力コーンディスク1のトロイド曲面1aか
ら遠い端面との間にローディングカム28を介在させ、
このローディングカムを介して入力軸20からカムディ
スク27への回転が入力コーンディスク1に伝達される
ようになす。ここで、入力コーンディスク1の回転はパ
ワーローラ3の回転を介して出力コーンディスク2に伝
わり、この伝動中ローディングカム28は伝達トルクに
比例したスラストを発生して、パワーローラ3を入出力
コーンディスク1,2間に挟圧し、上記の動力伝達を可
能ならしめる。
【0032】出力コーンディスク2は出力軸25に楔着
し、この軸上に出力歯車29を一体回転するよう嵌着す
る。出力軸25は更に、ラジアル兼スラスト軸受30を
介して変速機ケース21の端蓋31内に回転自在に支持
し、この端蓋31内には別にラジアル兼スラスト軸受3
2を介して入力軸20を回転自在に支持する。ここで、
ラジアル兼スラスト軸受30,32はスペーサ33を介
して相互に接近し得ないよう突き合わせ、また相互に遠
去かる方向へも相対変位不能になるよう、対応する出力
歯車29および入力軸20に対し軸線方向に衝接させ
る。かくて、ローディングカム28によって入出力コー
ンディスク1,2間に作用するスラストは、スペーサ3
3を挟むような内力となり、変速機ケース21に作用す
ることがない。
【0033】各パワーローラ3は図2にも示すように、
トラニオン41に回転自在に支持し、該トラニオンは各
々、上端を球面継手42によりアッパリンク43の両端
に回転自在および揺動自在に、また下端を球面継手44
によりロアリンク45の両端に回転自在および揺動自在
に連結する。そして、アッパリンク43およびロアリン
ク45は中央を球面継手46,47により変速機ケース
21に上下方向揺動可能に支持し、両トラニオン41を
相互逆向きに同期して上下動させ得るようにする。
【0034】かように両トラニオン41を相互逆向きに
同期して上下動させることにより変速を行う変速制御装
置を、図2に基づき次に説明する。各トラニオン41に
は、これらを個々に上下方向へストロークさせるための
ピストン6を設け、両ピストン6の両側にそれぞれ上方
室51,52および下方室53,54を画成する。そし
て両ピストン6を相互逆向きにストローク制御するため
に、変速制御弁5を設置する。ここで、変速制御弁5は
スプール型の内弁体5aとスリーブ型の外弁体5bとを
相互に摺動自在に嵌合して具え、外弁体5bを弁外筐5
cに摺動自在に嵌合して構成する。
【0035】上記の変速制御弁5は、入力ポート5dを
圧力源55に接続し、一方の連絡ポート5eをピストン
室51,54に、また他方の連絡ポート5fをピストン
室52,53にそれぞれ接続する。そして内弁体5a
を、一方のトラニオン41の下端に固着したプリセスカ
ム7のカム面に、ベルクランク型の変速レバー8を介し
て共働させ、外弁体5bをステップモータ4にラックア
ンドピニオン型式で駆動係合させる。
【0036】変速制御弁5の操作指令は、変速指令値U
に応動するステップモータ4がラックアンドピニオンを
介し外弁体5bにストロークとして与えることとする。
この操作指令で変速制御弁5の外弁体5bが内弁体5a
に対し相対的に中立位置から例えば図2の位置に変位さ
れて変速制御弁5が開く時、圧力源55からの流体圧が
室52,53に供給される一方、他の室51,54がド
レンされ、また変速制御弁5の外弁体5bが内弁体5a
に対し相対的に中立位置から逆方向に変位されて変速制
御弁5が開く時、圧力源55からの流体圧が室51,5
4に供給される一方、他の室52,53がドレンされ、
両トラニオン41が流体圧でピストン6を介して図中、
対応した上下方向へ相互逆向きに変位されるものとす
る。これにより両パワーローラ3は、回転軸線O1 が入
出力コーンディスク1,2の回転軸線O2 と交差する図
示位置からオフセット(オフセット量y)されることに
なり、該オフセットによりパワーローラ3は入出力コー
ンディスク1,2からの首振り分力で、自己の回転軸線
1 と直交する首振り軸線O3 の周りに傾転(傾転角
φ)されて無段変速を行うことができる。
【0037】かかる変速中、一方のトラニオン41の下
端に結合したプリセスカム7は、変速リンク8を介し
て、トラニオン41およびパワーローラ3の上述した上
下動(オフセット量y)および傾転角φを変速制御弁5
の内弁体5aに機械的にフィードバックされる。そして
上記の無段変速によりステップモータ4への変速指令値
Uが達成される時、上記のプリセスカム7を介した機械
的フィードバックが変速制御弁5の内弁体5aをして、
外弁体5bに対し相対的に初期の中立位置に復帰させ、
同時に、両パワーローラ3は、回転軸線O1 が入出力コ
ーンディスク1,2の回転軸線O2 と交差する図示位置
に戻ることで、上記変速指令値の達成状態を維持するこ
とができる。
【0038】なお、パワーローラ傾転角φを目標変速比
に対応した値にすることが制御の狙いであるから、基本
的にプリセスカム7はパワーローラ傾転角φのみをフィ
ードバックすればよいことになるが、ここでパワーロー
ラオフセット量yをもフィードバックする理由は、変速
制御が振動的になるのを防止するダンピング効果を与え
て、変速制御のハンチング現象を回避するためである。
【0039】ステップモータ4への変速指令値Uは、コ
ントローラ61によりこれを決定し、これがためコント
ローラ61には、エンジンスロットル開度TVOを検出
するスロットル開度センサ62からの信号、車速VSP
を検出する車速センサ63からの信号、および変速機入
力回転数Ni (エンジン回転数Ne でもよい)を検出す
る入力回転センサ64からの信号をそれぞれ入力する。
コントローラ61は、これら入力情報をもとに以下の演
算によりステップモータ4への変速指令値Uを決定する
ものとする。
【0040】本例では特に、パワーローラ3を前記の通
り入出力コーンディスク1,2間に入力トルクに応じた
大きなスラストにより挟圧するが故に、パワーローラ3
を静止状態から、またはこの静止状態を経由して傾転さ
せる場合に特に顕著になる、変速応答遅れの問題を解消
するために、コントローラ61を図3に示すごとくに構
成する。なおこの図3には、上記変速機内におけるプリ
セスカム7を介した機械的フィードバック変速制御系を
も併記したが、この機械的フィードバック変速制御系
は、図7につき前述したと同じもので、同じ模式図によ
って表現し得るため、対応するもの同士同一符号により
示した。
【0041】コントローラ61は、予めメモリしておい
た変速マップ61aと、目標傾転角演算部61bと、P
I制御部61cと、フィードバック変速制御系モデル
(状態観測のためのオブザーバ)61dと、目標傾転角
変化態様検知手段に相当する目標傾転角変化態様判定部
61eと、変速指令値変更手段に相当するゲイン変更部
61fと、別のゲイン変更部61gとを有する。ここで
コントローラ61は先ず、上記の変速マップ61aを基
にスロットル開度TVOおよび車速VSPから、目標と
すべき変速機入力回転数Ni * を求め、次いで目標傾転
角演算部61bにおいて、変速機目標入力回転数Ni *
と、車速VSPをもとに求めた変速機出力回転数No
からパワーローラ目標傾転角φ* を演算する。
【0042】そしてコントローラ61は、当該パワーロ
ーラ目標傾転角φ* に対応したステップモータ4のフィ
ードフォワードステップ数SFFをフィードフォワード系
61hに出力する。またコントローラ61はPI制御部
61cにおいて、フィードバック系61iからの実際の
パワーローラ傾転角φと、上記パワーローラ目標傾転角
φ* との傾転角偏差をもとに、比例ゲインKp および積
分ゲインKI を用いて、当該傾転角偏差に応じたフィー
ドバックステップ数SFBを求める。
【0043】フィードバック変速制御系モデル61d
は、プリセスカム7を含むトロイダル型無段変速機内の
機械的フィードバック変速制御系を数式で表したモデル
とする。従って変速制御系モデル61dは、パワーロー
ラモデル3mと、油圧サーボモデル5m,6mと、プリ
セスカムモデル7mとよりなる図示のごとき模式図で表
すことができ、ゲインKSMに応じた変速指令値Uを与え
た時、油圧サーボモデル5m,6mはパワーローラモデ
ル3mをオフセットさせ、オフセット量推定値y m によ
りパワーローラモデル3mの傾転(φm )が生起され
る。パワーローラモデル3mのオフセット量推定値ym
および傾転角推定値φm はプリセスカムモデル7mを経
てフィードバックされ、オフセット量推定値ym のフィ
ードバックによるダンピング効果のもと、傾転角推定値
φm を変速指令値Uに対応したものにする。
【0044】ここで、上記の変速制御系モデル61dが
実際の機械的フィードバック変速制御系と完全に一致し
ており、モデル化誤差のないものであれば、傾転角推定
値φ m は実傾転角φと同じになる。従って、傾転角推定
値φm と実傾転角φとの間の偏差はモデル化誤差を表
し、このモデル化誤差に係数Kerr を乗じた値だけモデ
ル61dへの入力を補正して、常にモデル化誤差がない
状態にしておくこととする。
【0045】上記の変速制御系モデル61d内における
オフセット量推定値ym に制御ゲインKを乗じてダンピ
ングステップ数SDPを演算し、これを系61jにフィー
ドバックする。
【0046】コントローラ61は、フィードフォワード
ステップ数SFF、フィードバックステップ数SFB、およ
びダンピングステップ数SDpの総和を、変速指令値(ス
テップ数)Uとしてステップモータ4に与える。この時
ステップモータ4は、変速制御指令値Uに応じた段歩駆
動により、変速制御弁5の外弁体5bをXSpだけ内弁体
5aに対し相対的に中立位置から変位させる。これによ
り、変速制御弁5およびピストン6で構成される油圧サ
−ボは、パワーローラ3をyだけオフセットさせ、この
オフセットに伴いパワーローラ3はφだけ傾転する。こ
の傾転φは、変速機出力回転数No との関係で決まる変
速機入力回転数Ni を目標入力回転数N i * に近づくよ
う変化させ、所定の変速を行わせることができる。
【0047】この変速中プリセスカム7は前記したよう
に、パワーローラオフセット量yおよびパワーローラ傾
転角φを変速制御弁5の内弁体5aにフィードバックし
て、これをXだけ、外弁体5bの上記変位に追従するよ
う移動させ、変速制御弁5の内外弁体間相対変位をdx
に減ずる。このdxは変速の進行につれて小さくなり、
上記の変速指令値が達成される時、遂には0になる。こ
の時変速制御弁5の内弁体5aおよび外弁体5bは相対
的に初期の中立位置に復帰し、変速指令値Uの達成状態
(実傾転角φ=目標傾転角φ* )を維持することができ
る。
【0048】ところで、プリセスカム7および変速リン
ク8を含む機械的フィードバック系が、パワーローラ傾
転角φだけでなくパワーローラオフセット量yをもフィ
ードバックすることから、パワーローラ3およびプリセ
スカム7間のオフセット方向相対ずれ量に伴う変速誤差
(通常トルクシフトと呼ばれる)の問題を生じようとす
るが、変速指令値Uを決定するに当たって、パワーロー
ラ傾転角φを電子的に系61iを経てフィードバック
し、これと目標傾転角φ* との偏差に応じたPI制御に
より当該決定を行うことから、上記のずれ量がフィード
バックされることがなくなり、トルクシフトの問題を解
消することができる。
【0049】なお、この問題解決を十分な応答性をもっ
て実現するには、上記のずれ量が相当に大きいことか
ら、上記PI制御の比例ゲインKp を大きくするを要す
るが、この場合、変速過渡期において制御がハンチング
を生じて不安定になる。しかし本例においては、上記フ
ィードバック対象であるパワーローラ傾転角φの変化速
度を表すオフセット量推定値ym をモデル61dで求
め、これに応じたフィードバックをかけて、ダンピング
ステップ数SDp=K・ym だけ変速指令値Uを補正する
ことから、変速過渡期において制御がハンチングを生じ
るという問題をもなくすことができる。
【0050】以上の作用説明から明らかなように本例で
は、電子フィードバック系61iと、電子フィードバッ
ク系61jとで、トルクシフトを生ずることなく、そし
て十分な応答性および安定性をもって、パワーローラ傾
転角φを目標値φ* に一致させることが可能となり、プ
リセスカム7および変速リンク8を含む機械的なフィー
ドバック系が不要であるが、この機械的なフィードバッ
ク系は、電子フィードバック系が故障等で機能しなくな
った時のフェールセーフ用に残しておくこととする。但
し、この機械的なフィードバック系は、トルクシフトの
原因である前記のずれ量をフィードバックすることか
ら、先に既に説明したが、このずれ量に係わる係数bが
上記のフェールセーフ上要求される最小限の小さなもの
となるよう変速リンク8を構成すること勿論である。
【0051】ところで上記の変速制御系においては、パ
ワーローラ3を前記の通り入出力コーンディスク1,2
間に入力トルクに応じた大きなスラストにより挟圧する
ために、パワーローラ3を静止状態から、またはこの静
止状態を経由して傾転させる場合に、前記した理由から
変速応答遅れが顕著に大きくなるという問題を生ずる。
【0052】この問題解決のために特に設けた目標傾転
角変化態様判定部61e、およびゲイン変更部61f,
61gのうち、目標傾転角変化態様判定部61eは目標
傾転角φ* から、目標傾転角変化があるかどうかを、ま
た変化がある場合、パワーローラ3を静止状態(傾転角
速度0の状態)から、またはこの静止状態を経由して
(傾転方向の逆転を伴って)傾転させるような目標傾転
角の変化か否かを判定する。
【0053】目標傾転角変化態様判定部61eが、パワ
ーローラ3を静止状態(傾転角速度0の状態)から、ま
たはこの静止状態を経由して傾転させるような目標傾転
角の変化を検知する時、ゲイン変更部61fは判定部6
1eからの信号に応答してPI制御部61cのフィード
バックゲイン(比例ゲインKp および積分ゲインKI
を増大し、ゲイン変更部61jは判定部61eからの信
号に応答し、そして実傾転角φが目標傾転角φ* に所定
値以内に近づいた時から一定時間だけ、電子フィードバ
ック系61jのダンピングゲインKを大きくする。な
お、ゲイン変更部61fは、実傾転角φが変化し始めた
時に上記フィードバックゲインの増大を中止して元のゲ
インに戻したり、フィードバックゲインの増大から一定
時間が経過した時にフィードバックゲインを元のゲイン
に戻すものとする。
【0054】フィードバックゲインKp ,KI の増大
は、PI制御部61cにおいて演算するフィードバック
ステップ数SFBを増大させ、その分変速指令値Uが大き
くなる。従って、パワーローラ3を静止状態(傾転角速
度0の状態)から、またはこの静止状態を経由して傾転
させるような目標傾転角の変化がある時、変速指令値U
の増大により、同じ目標傾転角のもとでも変速時におけ
る変速制御弁5の開度が大きくなる。このことは、ピス
トン6の前後差圧を速やかに発生させることとなり、パ
ワーローラ3のオフセット応答を高めて速やかな変速を
実現する。これがため、パワーローラ3を静止状態(傾
転角速度0の状態)から、またはこの静止状態を経由し
て傾転させるような目標傾転角の変化がある時、前記し
たように変速応答遅れが顕著になるところながら、この
問題を図5にφ1 で示すように解消して、変速応答遅れ
をΔt1 のような短いものにすることができる。
【0055】なお、かかるフィードバックゲインKp
I の増大は変速制御を振動的にし、ハンチングを生ず
るが、本例においては当該フィードバックゲインKp
Iの増大があった場合、傾転角φが目標傾転角φ*
所定値以内に近づいた時から一定時間だけゲイン変更部
61gが、電子フィードバック系61jのダンピングゲ
インKを大きくすることから、変速制御が振動的になる
のを抑制するためのダンピングステップ数SDpが変速終
了間際において大きくされることになり、上記フィード
バックゲインKp ,KI の増大によってもハンチングの
問題を生ずることがないこと、図5の傾転角変化φ1
ら明らかである。
【0056】コントローラ61は、これをマイクロコン
ピュータで構成する場合、図4に示す制御プログラムを
実行して、前記したと同様の作用を果たし得る。但しこ
の図では、簡便のためゲイン変更部61gによるダンピ
ングゲインKの変更処理を省略した。先ず図4のステッ
プ100では、センサ64で検出した変速機入力回転数
i と、センサ63で検出した車速VSPから求められ
る変速機出力回転数との比、つまり変速比を基にパワー
ローラ実傾転角φを算出し、次いでステップ110にお
いて、変速マップ61a(図3参照)をもとに、センサ
62,63で検出したスロットル開度TVOおよび車速
VSPから、変速機の目標入力回転数を求め、これと、
上記変速機出力回転数との比で表される目標変速比を達
成するための目標傾転角φ* を算出する。
【0057】次にステップ120,130において、実
傾転角φの前回値に対する今回値の差から実傾転角φの
変化速度を求めると共に、当該実傾転角変化速度の前回
値に対する今回値の差から実傾転角変化加速度を算出す
る。さらに次のステップ140,150において、目標
傾転角φ* の前回値に対する今回値の差から目標傾転角
φ* の変化速度を求めると共に、当該目標傾転角変化速
度の前回値に対する今回値の差から目標傾転角変化加速
度を算出する。
【0058】目標傾転角変化態様検知手段に相当するス
テップ160においては、実傾転角変化速度が0のパワ
ーローラ静止状態で、目標傾転角変化速度が発生した
時、つまりパワーローラ3が静止状態から傾転するよう
な目標傾転角変化があったか否かを、つまり前記変速応
答遅れの問題が顕著になる状態か否かを判定する。な
お、この変速応答遅れの問題が顕著になる場合としては
その他に、前記したようにパワーローラ3が静止状態を
経由して(傾転方向の逆転を伴って)傾転するような目
標傾転角変化があった場合がこれに相当するが、その判
定は、実傾転角変化加速度の極性(実傾転角φの変化方
向)と、目標傾転角変化加速度の極性(目標傾転角φ*
の変化方向)とが逆であるか否かによって行う。
【0059】変速応答遅れの問題が顕著にならない場合
はステップ300,310を選択して、図3に示すゲイ
ン変更部61fによるゲイン変更が全くなされない状態
での演算により、変速指令値(ステップモータ動作量)
Uを求め、これをステップモータ4に出力する。
【0060】変速応答遅れの問題が顕著になる場合、変
速指令値変更手段に相当するステップ170において、
図3のPI制御部61cにおいて用いたと同様なフィー
ドバックゲイン(比例ゲインKp および積分ゲイン
I )を増大する。次いでステップ180において、こ
の増大した比例ゲインKp および積分ゲインKI を用い
た演算により、変速指令値(ステップモータ動作量)U
を求め、これを次のステップ190でステップモータ4
に出力する。
【0061】ステップ200では、実傾転角φが目標傾
転角φ* に向けて変化し始めたか否かを判定し、変化し
始めるまでステップ180,190を繰り返し実行し、
実傾転角φが目標傾転角φ* に向けて変化し始めた時、
ステップ210で、比例ゲインKp および積分ゲインK
I を元に戻す。
【0062】フィードバックゲインKp ,KI の上記増
大は、ステップ180で求める変速指令値Uを大きく
し、従って、パワーローラ3を静止状態(傾転角速度0
の状態)から、またはこの静止状態を経由して傾転させ
るような目標傾転角の変化がある時、変速指令値Uの増
大により、同じ目標傾転角のもとでも変速時における変
速制御弁5の開度を大きくする。このことは、ピストン
6の前後差圧を速やかに発生させることとなり、パワー
ローラ3のオフセット応答を高めて速やかな変速を実現
する。これがため、パワーローラ3を静止状態(傾転角
速度0の状態)から、またはこの静止状態を経由して傾
転させるような目標傾転角の変化がある時、前記したよ
うに変速応答遅れが顕著になるところながら、この問題
を図5にφ 1 で示すように解消して、変速応答遅れをΔ
1 のような短いものにすることができる。
【0063】ところで、変速応答遅れの原因となるパワ
ーローラ傾転動作に係わる摩擦抵抗は、入出力コーンデ
ィスク1,2による大きなパワーローラ挟圧力に起因し
て、各トラニオン41と球面継手42,43との間に発
生する。ここで、パワーローラ挟圧力が変速機入力トル
クTi およびパワーローラ傾転角φの関数であること、
また摩擦抵抗が垂直抗力に比例することから、パワーロ
ーラ傾転動作に係わる摩擦抵抗は変速機入力トルクTi
およびパワーローラ傾転角φの関数であると考えられ
る。しかして垂直抗力Fは、F=K1 ・Ti /sin φ
(但し、K1 はローディングカム28のカムリード、パ
ワーローラ3の個数、入出力コーンディスク1,2の形
状、パワーローラ3の形状等で決まる係数)で与えられ
ることから、結局パワーローラ傾転動作に係わる摩擦抵
抗(変速応答遅れ時間)は、変速機入力トルクTi に比
例して増大し、傾転角φの低下につれて増大する。
【0064】従って、変速応答遅れの問題を解消するた
めにフィードバックゲインKp ,K I を上記したごとく
増大するに当たっては図示しなかったが、パワーローラ
傾転角速度が0の時のパワーローラ傾転角を検出する傾
転角検出手段を設け、この手段により検出したパワーロ
ーラ傾転角が小さいほどフィードバックゲインKp ,K
I の補正量(増大量)を大きくしたり、傾転角速度が0
の時の変速機入力トルクを検出する入力トルク検出手段
を設け、この手段により検出した変速機入力トルクが大
きいほどフィードバックゲインKp ,KI の補正量(増
大量)を大きくするのが良い。
【0065】これらによれば、上記の摩擦抵抗が増大し
て変速応答遅れ時間が長くなるほど、フィードバックゲ
インKp ,KI の補正量(増大量)が大きくなって、パ
ワーローラのオフセット応答(変速応答)を高めること
ができ、パワーローラ傾転角速度が0の時のパワーロー
ラ傾転角や変速機入力トルクの如何にかかわらず、常時
確実に変速応答遅れに関する問題を解消することができ
る。
【0066】また、変速応答遅れの原因となるパワーロ
ーラ傾転動作に係わる摩擦抵抗は、経時変化や作動油温
の違いによって様々に異なることから、当該摩擦抵抗の
変化を、目標傾転角変化から実傾転角変化までの変速応
答遅れ時間によりモニタし、モニタ結果に応じてフィー
ドバックゲインKp ,KI の補正量(増大量)を変える
ようにするのも大いに有効である。この場合、図示しな
かったが目標傾転角変化から実傾転角変化までの変速応
答遅れ時間を計測する変速応答遅れ計測手段を設け、こ
の変速応答遅れ時間が長いほどフィードバックゲインK
p ,KI の補正量(増大量)を大きくする構成にする。
【0067】この場合、経時変化や作動油温の違いによ
ってパワーローラ傾転動作に係わる摩擦抵抗が様々に変
化しても、フィードバックゲインKp ,KI の補正量
(増大量)が実際の変速応答遅れ時間にマッチした適切
なものとなって、常時確実に変速応答遅れに関する問題
を解消することができる。
【0068】
【発明の効果】かくして第1発明によるトロイダル型無
段変速機の変速制御装置は、請求項1に記載のごとく、
トロイダル型無段変速機の変速に際し、目標傾転角が、
傾転角速度0の状態から変化したのを、またはこの状態
を経由する変化を生じたのを検知する時、変速指令値
を、変速制御弁の開度が大きくなるよう補正する構成に
したから、かかる変速指令値の補正による変速制御弁の
開度増大で、パワーローラのオフセット応答を速くし、
それだけパワーローラの傾転、つまり変速の応答性を向
上させ得ることとなり、目標傾転角が傾転角速度0の状
態から変化したり、この状態を経由する変化を生じるよ
うな変速時において前記の通り特に顕著となっていた変
速応答に関する問題を解消することができる。
【0069】第2発明によるトロイダル型無段変速機の
変速制御装置は、請求項2に記載のごとく、上記傾転角
速度0の状態におけるパワーローラ傾転角を検出し、こ
の検出したパワーローラ傾転角が小さいほど前記変速指
令値の補正量を大きくする構成にしたから、上記傾転角
速度0の状態におけるパワーローラ傾転角が小さいほ
ど、幾何学的にパワーローラ挟圧力が大きくなって、変
速応答遅れ時間が長くなる傾向に変速指令値の補正量が
マッチして、上記傾転角速度0の状態におけるパワーロ
ーラ傾転角の如何にかかわらず、上記第1発明の作用効
果を確実に達成することができる。
【0070】第3発明によるトロイダル型無段変速機の
変速制御装置は、請求項3に記載のごとく、上記傾転角
速度0の状態における変速機入力トルクを検出し、この
検出した変速機入力トルクが大きいほど前記変速指令値
の補正量を大きくする構成にしたから、上記傾転角速度
0の状態における変速機入力トルクが大きいほど、パワ
ーローラ挟圧力が大きくなって、変速応答遅れ時間が長
くなる傾向に変速指令値の補正量がマッチして、上記傾
転角速度0の状態における変速機入力トルクの如何にか
かわらず、上記第1発明の作用効果を確実に達成するこ
とができる。
【0071】第4発明によるトロイダル型無段変速機の
変速制御装置は、請求項4に記載のごとく、目標傾転角
の変化から実傾転角の変化までに要した変速応答遅れ時
間を計測し、この変速応答遅れ時間が長いほど前記変速
指令値の補正量を大きくする構成にしたから、経時変化
や作動油温の違いによって変速応答遅れ時間が様々に変
化しても、変速指令値の補正量が、本発明により短縮し
ようとする変速応答遅れ時間の実際値に応じた適切なも
のとなり、如何なる条件のもとでも上記第1発明の作用
効果を確実に達成することができる。
【0072】第5発明によるトロイダル型無段変速機の
変速制御装置は、請求項5に記載のごとく、この変速制
御装置が、前記目標傾転角と実傾転角との偏差にフィー
ドバックゲインを乗じて前記変速指令値を決定するもの
である場合、当該フィードバックゲインを大きくして前
記変速指令値の補正を行うよう構成したから、変速指令
値の補正が総括的で、当該補正のための演算が簡単にな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置により変速制御すべきトロイダル型
無段変速機を例示する縦断側面図である。
【図2】同トロイダル型無段変速機を、その変速制御シ
ステムと共に示す縦断正面図である。
【図3】同トロイダル型無段変速機用に構成した本発明
変速制御装置の一実施例を示す変速制御系の模式図であ
る。
【図4】同変速制御系をマイクロコンピュータを用いて
構成した場合において、このマイクロコンピュータが実
行すべき変速指令値決定プログラムを示すフローチャー
トである。
【図5】本発明変速制御装置による制御結果であるパワ
ーローラ実傾転角を、目標傾転角および従来装置による
制御結果であるパワーローラ実傾転角と共に示すシミュ
レーション図である。
【図6】従来のトロイダル型無段変速機を示す縦断正面
図である。
【図7】同トロイダル型無段変速機の変速制御系を示す
模式図である。
【符号の説明】
1 入力コーンディスク 2 出力コーンディスク 3 パワーローラ 4 ステップモータ 5 変速制御弁 6 ピストン 7 プリセスカム 8 変速リンク 20 入力軸 28 ローディングカム 41 トラニオン 43 アッパリンク 45 ロアリンク 61 コントローラ 61a 変速マップ 61b 目標傾転角演算部 61C PI制御部 61d フィードバック変速制御系モデル(オブザーバ) 61e 目標傾転角変化態様判定部(目標傾転角変化態様検
知手段) 61f ゲイン変更部(変速指令値変更手段) 61g ゲイン変更部 62 スロットル開度センサ 63 車速センサ 64 入力回転センサ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−82064(JP,A) 特開 平7−305752(JP,A) 特開 平6−58397(JP,A) 特開 平7−4508(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16H 61/00 - 61/24

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 同軸配置した入出力コーンディスクと、
    これら入出力コーンディスク間で摩擦係合により動力の
    受渡しを行うパワーローラとよりなるトロイダル伝動ユ
    ニットを具え、 変速指令値に対応して変速制御弁を中立位置から開くこ
    とで、該変速制御弁からの圧力により前記パワーローラ
    を、回転軸線が前記入出力コーンディスクの回転軸線と
    交差する位置からオフセットさせ、該オフセットにより
    入出力コーンディスクからの分力でパワーローラを、自
    己の回転軸線と直交する首振り軸線周りで目標傾転角に
    向けて傾転させることにより、無段変速を行なわせると
    共に、該無段変速により前記変速指令値に対応した目標
    傾転角が達成される時、前記変速制御弁の中立位置への
    復帰によりパワーローラを、前記オフセットがなくなる
    位置に戻すようにした変速制御装置を有するトロイダル
    型無段変速機において、 前記目標傾転角が、傾転角速度0の状態から変化したの
    を、またはこの状態を経由する変化を生じたの検知する
    目標傾転角変化態様検知手段と、 該手段により前記目標傾転角の変化が検知される時、前
    記変速指令値を、前記変速制御弁の開度が大きくなるよ
    う補正する変速指令値変更手段とを設けたことを特徴と
    するトロイダル型無段変速機の変速制御装置。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記傾転角速度0の
    状態におけるパワーローラ傾転角を検出する傾転角検出
    手段を付加し、 該手段により検出したパワーローラ傾転角に応じ前記変
    速指令値変更手段は、このパワーローラの傾転角が小さ
    いほど前記変速指令値の補正量を大きくするよう構成し
    たことを特徴とするトロイダル型無段変速機の変速制御
    装置。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、前記傾転角
    速度0の状態における変速機入力トルクを検出する入力
    トルク検出手段を付加し、 該手段により検出した変速機入力トルクに応じ前記変速
    指令値変更手段は、この変速機入力トルクが大きいほど
    前記変速指令値の補正量を大きくするよう構成したこと
    を特徴とするトロイダル型無段変速機の変速制御装置。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか1項におい
    て、前記目標傾転角の変化から実傾転角の変化までに要
    した変速応答遅れ時間を計測する変速応答遅れ計測手段
    を付加し、 該変速応答遅れ時間に応じ前記変速指令値変更手段は、
    この変速応答遅れ時間が長いほど前記変速指令値の補正
    量を大きくするよう構成したことを特徴とするトロイダ
    ル型無段変速機の変速制御装置。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか1項におい
    て、前記目標傾転角と実傾転角との偏差にフィードバッ
    クゲインを乗じて前記変速指令値を決定する場合、 前記変速指令値変更手段は、該フィードバックゲインを
    大きくして前記変速指令値の補正を行うよう構成したこ
    とを特徴とするトロイダル型無段変速機の変速制御装
    置。
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