JP3255997B2 - リン酸変性オルガノ(ポリ)シロキサン多価金属塩及びその製造方法 - Google Patents

リン酸変性オルガノ(ポリ)シロキサン多価金属塩及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はリン酸変性オルガノ(ポ
リ)シロキサン多価金属塩及びその製造法に関し、更に
詳しくは、平滑性、付着性等の性能に優れ、香粧品(香
料及び化粧品)の素材等として有用なリン酸変性オルガ
ノ(ポリ)シロキサン多価金属塩及びその製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】シリコーンは主鎖の結合エネルギーが高
いため耐熱性、耐酸性、耐候性等に優れることや、表面
張力が低いため離形性、潤滑性、撥水性等を有すること
が知られている。更に、分子間力が小さいため主鎖が柔
軟でありガス透過性が高く、また生理的に不活性なため
低毒性、低刺激性といった特徴をも有する。このような
ことから従来、シリコーンは電気、電子、自動車、機
械、医療、化粧品、繊維、紙、パルプ、建材などの広い
分野で使用されている。
【0003】特に、香粧品の分野においては、ベタツキ
感がなく安全性も高いジメチルポリシロキサンや環状シ
リコーンが頭髪の仕上げ剤や化粧品の油分として積極的
に利用されている。また最近では、シリコーンを香粧品
の分野に応用する研究が非常に活発であり、シリコーン
の用途も多岐にわたっている。そのため、従来のシリコ
ーンが有する特性に加えて、他の有機物との相溶性向
上、耐薬品性の向上、水溶性の向上、潤滑性の向上、シ
リコーンに化学反応基を持たせるなどといった新たな要
求特性が生まれている。
【0004】従って上記の要求特性を満足させるべく、
シリコーンに多種多様な官能基を導入した変性シリコー
ンが開発され、例えばアミノ変性シリコーン、エポキシ
変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、メルカプ
ト変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、フルオ
ロアルキル変性シリコーン、エステル変性シリコーン、
アルコキシ変性シリコーンなどの変性シリコーンが開発
されている。このような変性シリコーンはそれぞれの特
徴を生かして香粧品素材として利用されているが、未だ
満足のいくものは得られていない。
【0005】特に、化粧料粉体や液晶形成基剤等に有用
なシリコーンの例は少なく、従来より使用されている化
粧料粉体として、例えばタルク等の無機体質顔料、酸化
亜鉛等の無機着色料、有機タール系色素等の有機着色料
などの表面をシリコーンコーティング剤で処理したコー
ティング処理粉体等がある。しかし、これらでは化粧料
に必要な優れた平滑性、付着性等の性能の全てを満足さ
せるものではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、平滑性、付着
性等の性能に優れ、香粧品配合成分として好適な、シリ
コーンの開発が望まれていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】かかる実情において、本
発明者らは前記課題を解決すべく鋭意研究した結果、リ
ン酸変性オルガノ(ポリ)シロキサンと多価金属塩とを
反応させることにより、平滑性、付着性等の性能に優
れ、香粧品配合成分として有用な、リン酸変性オルガノ
(ポリ)シロキサン多価金属塩が得られることを見出
し、本発明を完成した。
【0008】すなわち、本発明は、下記一般式(1) (Q)zB (1) 〔式中、 Q:Si原子を介してBと結合する基であり、z個のQ
のうち、少なくとも1個は基-R2-(OR1)p-PO4M2/mを示
し、残余は基-R2-(OR1)p-OHを示す。ここでR1は炭素数
2〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、R2
炭素数1〜50のヒドロキシル基を含んでいてもよい直
鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、pは0〜200の
数を示し、Mはアルカリ土類金属原子又は2価以上の遷
移金属原子を示し、mはMの原子価を示す。 B:アルキル基とSi原子との結合を有する、オルガノ
(ポリ)シロキサン残基を示す。 z:1以上の数を示す。〕で表わされるリン酸変性オル
ガノ(ポリ)シロキサン多価金属塩及びその製造方法を
提供するものである。
【0009】以下、本発明について説明するが、本発明
における「オルガノ(ポリ)シロキサン」とは、高分子
量のオルガノポリシロキサンから低分子量のオルガノシ
ロキサンまでを含む意味である。
【0010】本発明のリン酸変性オルガノ(ポリ)シロ
キサン多価金属塩(1)は、リン酸変性オルガノ(ポ
リ)シロキサンの多価金属塩であればいずれでもよい
が、特に好ましくは次の一般式(2)で表わされるもの
が好ましい。
【0011】
【化7】
【0012】〔式中、R3 〜R14:少なくとも1個は基
-R2-(OR1)p-PO4M2/mを示し、残余は基-R2-(OR1)p-OH
は炭素数1〜22のアルキル基を示す。ここでR1
2、p、M及びmは前記と同じ意味を示す。q,r,
s:それぞれ0〜1000の数を示す。但し、q、r及
びsのすべてが0となることはない。〕
【0013】更に、一般式(2)で表わされるものの中
で、好ましいものは、下記一般式(3)で表わされる片
末端型のリン酸変性オルガノ(ポリ)シロキサン多価金
属塩、一般式(4)で表わされる両末端型又は片末端型
のリン酸変性オルガノ(ポリ)シロキサン多価金属塩、
一般式(5)で表わされるT字構造型のリン酸変性オル
ガノ(ポリ)シロキサン多価金属塩が挙げられる。
【0014】
【化8】
【0015】[式中、R15〜R23、R25〜R35:それぞ
れ炭素数1〜22のアルキル基を示す。 R24:基-R2-(OR1)p-PO4M2/m又は基-R2-(OR1)p-OH を示
す。 t,u,w:それぞれ0〜1000の数を示す。 v、x:それぞれ0〜1000の数を示す。 R1 ,R2,M,m,p:前記と同じ意味を示す。]
【0016】これらの一般式(3)〜(5)中の基R15
〜R23及びR25〜R35はアルキル基であるが、これらの
中でも炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、特にメチ
ル基が好ましい。また、一般式(3)〜(5)中のt、
u、v、w、xも特に、t,u=1〜50、v+w+x
=1〜49とするのが香粧品配合成分として好ましい。
【0017】また、Mで示されるアルカリ土類金属原子
としては、Ca、Mg、Ba等が挙げられ、2価以上の
遷移金属原子としては、Al、Fe、Co、Mn等が挙
げられるが、これらのうち特Ca、Al、Feが好まし
い。
【0018】更に、本発明のリン酸変性オルガノ(ポ
リ)シロキサン多価金属塩として好ましいものの具体例
としては以下の式で表わされるアニオンのCa塩、Al
塩又はFe塩を挙げることができる。
【0019】
【化9】
【0020】〔式中、t、u、v、w、x及びpは前記
と同じ意味を示す。〕
【0021】本発明のリン酸変性オルガノ(ポリ)シロ
キサン多価金属塩(1)は、次の如くして製造される。
すなわち、一般式(7)で表わされるリン酸変性オルガ
ノ(ポリ)シロキサン又はその塩に、一般式(8)で表
わされる多価金属塩を反応させることにより製造するこ
とができる。
【0022】
【化10】
【0023】〔式中、 R:Si原子を介してBと結合する基であり、z個のR
のうち、少なくとも1個は基
【0024】
【化11】
【0025】を示し、残余は基-R2-(OR1)p-OH を示す。
ここでR1 、R2 及びpは前記と同じ意味を示し、M1
及びM2 はそれぞれ水素原子又は1価の陽イオンを示
す。 Y:有機又は無機の陰イオンを示す。 α,β:それぞれ、Y及びMの原子価に対応する整数を
示す。 Q,B,z:前記と同じ意味を有する。〕
【0026】本発明の製造方法において、原料となるリ
ン酸変性オルガノ(ポリ)シロキサン又はその塩(7)
は、例えば特願平4−240689号に記載の方法に従
って製造することができる。すなわち、分子鎖中のSi
原子に結合する基として1個以上の基-R2-(OR1)p-OH
(ここで、R1 、R2 及びpは前記と同じ意味を示す)
を有するアルコール変性オルガノポリシロキサンとオキ
シハロゲン化リンとを反応させ、次いでリンとハロゲン
の結合部を加水分解することにより、得ることができ
る。
【0027】以下、製造工程ごとに本反応を説明する。
まず、分子鎖中のケイ素原子に結合する基として1以上
の基-R2-(OR1)p-OH を有するアルコール変性オルガノ
(ポリ)シロキサン(以下、「アルコール変性オルガノ
(ポリ)シロキサン」という)とオキシハロゲン化リン
とを無溶媒又は溶媒中で反応させる。
【0028】本反応で用いるアルコール変性オルガノ
(ポリ)シロキサンは、分子鎖中のいずれか1以上のケ
イ素原子に基-R2-(OR1)p-OH が結合しているものであれ
ばよく、その結合部位は制限されない。したがって、一
般に特定の置換基の結合部位により側鎖型、両末端型、
片末端型及びT構造型などと称されるいずれの構造のも
のも使用することができる。このようなアルコール変性
オルガノ(ポリ)シロキサンとしては、例えば、次式で
示される構造のものを挙げることができる。
【0029】
【化12】
【0030】〔式中、t、u、v、w、x及びpは前記
と同じ意味を示す。〕このようなアルコール変性オルガ
ノ(ポリ)シロキサンは公知の方法で製造したものを使
用することができるが、市販品をそのまま使用すること
もできる。この市販品としては、例えば、X−22−1
70、X−22−170A、X−22−170B、X−
22−170D、X−22−160AS、KF600
1、KF6002、KF6003、X−22−176
B、X−22−176D、X−22−4015(以上、
信越化学社製)、TSL−9105、TSF4705、
TSF4751、XF42−220、XF42−81
1、XF42−831(以上、東芝シリコーン社製)、
PS197、PX101(以上、チッソ社製)を挙げる
ことができる。
【0031】また、オキシハロゲン化リンとしては、例
えばオキシ塩化リン、オキシ臭化リン等が挙げられ、特
にオキシ塩化リンが好ましい。
【0032】アルコール変性オルガノ(ポリ)シロキサ
ンとオキシハロゲン化リンとの反応方法は特に制限され
ないが、例えば、それぞれを適当な溶媒に溶解させたも
のを混合し、反応させる方法を適用することができる。
【0033】アルコール変性オルガノ(ポリ)シロキサ
ンを溶解させるために用いる溶媒としては、テトラヒド
ロフラン、塩化メチレン、トルエン、ジエチルエーテル
などを挙げることができる。ここで用いる溶媒量は、ア
ルコール変性オルガノ(ポリ)シロキサン重量に対して
10倍量以下が好ましく、3倍量以下が更に好ましい。
また、オキシハロゲン化リンを溶解させるために用いる
溶媒としては、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、ト
ルエン、エーテルなどを挙げることができる。ここで用
いる溶媒量は、オキシハロゲン化リン重量に対して20
倍量以下が好ましく、10倍量以下が更に好ましい。
【0034】アルコール変性オルガノ(ポリ)シロキサ
ンとオキシハロゲン化リンとの混合比は特に制限されな
いが、アルコール変性オルガノ(ポリ)シロキサンが有
するヒドロキシル基1当量に対して、オキシハロゲン化
リンが約1〜2当量となるように混合することが好まし
い。
【0035】アルコール変性オルガノ(ポリ)シロキサ
ンとオキシハロゲン化リンの混合方法は特に制限されな
いが、例えば、必要に応じて攪拌しながら、オキシハロ
ゲン化リン溶液中にアルコール変性オルガノ(ポリ)シ
ロキサン溶液を滴下する方法を適用することができる。
【0036】この場合の滴下方法は特に制限されず、例
えば、全量を一括して若しくは適宜分割して滴下する方
法又は少量ずつ滴下する方法を適用することができる。
滴下時における反応系の温度は−50〜10℃が好まし
く、−30〜0℃が更に好ましい。反応終了後、必要に
応じて前記温度範囲内で1〜5時間熟成操作をすること
が好ましい。なお、反応系には副生する塩酸を中和する
ため、第3級アミン、例えば、トリエチルアミン、トリ
ブチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリンなどを
共存させることもできる。
【0037】次に、前工程により生じた反応生成物のリ
ンとハロゲンの結合部を加水分解するには、アルカリ溶
液を、例えば上記と同様の滴下方法を適用して反応させ
る。
【0038】ここで用いるアルカリ溶液としては、水酸
化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、アルキル
アミン、アルカノールアミンなどの水溶液を挙げること
ができ、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ま
しい。また、アルカリ溶液の濃度は特に制限されず、ア
ルコール変性オルガノ(ポリ)シロキサン及びオキシハ
ロゲン化リンの濃度を考慮して適宜調節することができ
る。更に、反応系の温度は、上記と同じ温度範囲に設定
保持することが好ましい。
【0039】このようにして反応を終了させた後、生成
したリン酸エステル変性オルガノ(ポリ)シロキサンを
反応系から分別する。なお、得られたリン酸エステル変
性オルガノ(ポリ)シロキサンに対し、必要に応じて更
に精製操作を付加することもできる。この精製操作は特
に制限されず、例えば、1)反応液中に、水及び非親水
性溶媒、例えば、ブタノール、トルエンなど、更に必要
に応じてエタノール、2−プロパノールなどの解乳化剤
を加えて攪拌し、静置して分層させ、余剰のリン酸塩や
副生する無機及び有機塩を含む水層を除去する方法;
2)反応液から溶剤を留去し、得られた残渣を水で洗浄
することにより余剰のリン酸塩等を除去するか、又は前
記残渣をエタノール、プロパノール、ブタノール、トル
エン等の溶剤に溶解させることにより、析出した余剰の
リン酸塩等を濾別して除去する方法;3)生成したリン
酸エステル変性オルガノ(ポリ)シロキサンが有機溶剤
に不溶のものの場合には、分別した水層にエタノール、
アセトンなどの親水性溶媒を加えて目的物を沈殿させる
方法を挙げることができる。
【0040】本発明の製造方法は、前述の如くして得ら
れたリン酸変性オルガノ(ポリ)シロキサン又はその塩
(7)に一般式(8)で表わされる多価金属塩を反応さ
せることにより実施される。
【0041】(7)式の説明中のM1 及びM2 としては
水素原子、アルカリ金属が特に好ましい。
【0042】また、(8)式中のYは有機又は無機のア
ニオンを示し、例えばCl-、CH3COO-、NO3 -、ClO4 -、SO4
2-、CO3 2-、OH-等が挙げられるが、好ましくはCl-、CH3
COO- である。反応に用いられる多価金属塩(8)の例を
具体的に示せば、Ca(CH3COO)2、CaCl2、CaBr2、CaCO3
Al2(SO4)3、Al(CH3COO)3、AlCl3、Al(NO3)3、BaCo3、Fe
(ClO4)3、Fe(NO3)3、FeCl3、Mn(CH3COO)2等が挙げら
れ、これらのうち特に、Ca(CH3COO)2、CaCl2、Al(CH3CO
O)3、FeCl3が好ましい。
【0043】リン酸変性オルガノ(ポリ)シロキサン又
はその塩(7)と多価金属塩(8)との混合比は特に制
限されないがリン酸変性オルガノ(ポリ)シロキサン又
はその塩(7)が有するリン酸基1当量に対して、多価
金属塩(8)が1/m〜10当量、特に1/m〜1当量
となるように混合することが好ましい。
【0044】リン酸変性オルガノ(ポリ)シロキサン又
はその塩(7)と多価金属塩(8)の混合方法は特に制
限されないが、例えばリン酸変性オルガノ(ポリ)シロ
キサンに対し10〜30重量倍の極性溶媒を用い、当該
溶媒中にリン酸変性オルガノ(ポリ)シロキサン又はそ
の塩(7)と多価金属塩(8)の双方を一括して仕込み
混合する方法〔方法(イ)〕、当該溶媒の一部にリン酸
変性オルガノ(ポリ)シロキサン又はその塩(7)を溶
解し、この中に多価金属塩(8)を残部を溶媒に溶解し
たものを滴下する方法〔方法(ロ)〕、当該溶媒の一部
に多価金属塩(8)を溶解し、この中にリン酸変性オル
ガノ(ポリ)シロキサン又はその塩(7)を残部の溶媒
に溶解したものを滴下する方法〔方法(ハ)〕等が挙げ
られ、本発明製造方法では特に〔方法(ロ)〕が好まし
い。この場合の滴下方法も特に制限されず、例えば、全
量を一括して若しくは適宜分割して滴下する方法又は少
量ずつ滴下する方法を適用することができる。
【0045】本発明の製造方法において用いられる極性
溶媒としては、リン酸変性オルガノ(ポリ)シロキサン
又はその塩(7)及び多価金属塩(8)の双方を溶解す
るものであれば、いずれでも良いが、例えばテトラヒド
ロフラン、メチルアルコール、エチルアルコール、ブチ
ルアルコール、水及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0046】本発明の製造方法は上述の混合比のリン酸
変性オルガノ(ポリ)シロキサン又はその塩(7)と多
価金属塩(8)とを極性溶媒中で、上述した方法に従っ
て攪拌・混合して反応させることにより行われる。この
ときの反応系の温度は20〜80℃、特に20〜60℃
が好ましく、反応時間は1〜6時間が好ましい。
【0047】このようにして反応を終了させた後、目的
化合物であるリン酸変性オルガノ(ポリ)シロキサン多
価金属塩(1)が結晶として析出している場合は、当該
結晶を濾別すればよく、またリン酸変性オルガノ(ポ
リ)シロキサン多価金属塩が溶解している場合には、ヘ
キサン、メチルアルコール、エチルアルコール等の溶媒
を添加して抽出又は沈澱させればよい。かくして得られ
た本発明のリン酸変性オルガノ(ポリ)シロキサン多価
金属塩は、次いで必要に応じて再結晶等の通常の精製手
段に付すこともできる。
【0048】
【発明の効果】本発明のリン酸変性オルガノ(ポリ)シ
ロキサン多価金属塩は、撥水性等の従来のシリコーンの
特性を有すると共に、平滑性、付着性等の性能にも優
れ、香粧品の素材として有用なものである。
【0049】
【実施例】以下、参考例及び実施例により本発明を更に
詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定され
るものではない。
【0050】参考例1 オキシ塩化リン820mgをテトラヒドロフラン3gに溶
解させた溶液を、−30℃まで冷却した。次に、この溶
液に、次式;
【0051】
【化13】
【0052】で示される構造の片末端アルコール変性ジ
メチルポリシロキサン(商品名X−22−170A、ア
ルコール当量31;信越化学社製)10g及びトリエチ
ルアミン540mgをテトラヒドロフラン10gに溶解さ
せた溶液を、20分かけて滴下し、反応させた。その
後、反応系の温度を−20℃以下に保持し、4時間熟成
させた。次に、反応液中に、水酸化ナトリウム1.0g
をイオン交換水3gに溶解させた溶液を20分かけて滴
下した。その後0℃で12時間攪拌を継続し、反応を終
了させた。次に、反応液にイオン交換水50gを加えた
後、更にジエチルエーテルとエタノール混合溶媒を加
え、反応生成物を抽出した。その後、有機溶媒層をイオ
ン交換水で洗浄し、水層を除去した後、溶媒を減圧下で
留去して本発明のリン酸変性ジメチルポリシロキサン1
0gを得た。このリン酸変性ジメチルポリシロキサン
は、通常化粧品成分として使用されるシリコーンオイル
に対し、0〜50℃の範囲内において温度に関係なく安
定した乳化力を示した。また、水、低級アルコール等の
極性溶媒などとの相溶性も優れていた。このものについ
てNMRによる分析を行った。NMRの分析結果は次の
とおりである。31 P−NMR(CDCl3 ) δ(ppm) 8.2
【0053】
【化14】
【0054】1H−NMR(CDCl3 ); δ(ppm) 0.1(broad s,147H,Si−CH3 )、
0.5(m,2H,−O−Si−(CH32−C
2 −)、1.6(m,2H,−O−Si−CH22
2−O−)、3.4(m,2H,−C2 −O−(CH
22−O−P)、3.55(m,2H,−CH2−O−
2 −CH2−O−P)、3.72、3.91(m,2
H,−C2 −O−P)、このリン酸変性ジメチルポリ
シロキサンの構造は次式で示されるものであると認めら
れる。
【0055】
【化15】
【0056】参考例2 オキシ塩化リン15.2gをテトラヒドロフラン15g
に溶解させた溶液を、−30℃まで冷却した。次に、こ
の溶液に、次式;
【0057】
【化16】
【0058】で示される構造の両末端アルコール変性ジ
メチルポリシロキサン(商品名X−22−160AS、
アルコール当量112;信越化学社製)50g及びトリ
エチルアミン10gをテトラヒドロフラン40gに溶解
させた溶液を、40分かけて滴下し、反応させた。その
後、反応系の温度を−20℃以下に保持し、4時間熟成
させた。次に、反応液中に、水酸化ナトリウム20.7
gをイオン交換水40gに溶解させた溶液を40分かけ
て滴下した。その後0℃で12時間攪拌を継続し、反応
を終了させた。次に、溶媒を留去したのちイオン交換水
300gを加え、不溶分を濾別した。その後、濾液にエ
タノール100mlを加え、生じた固形物を濾別し、本
発明のリン酸変性ジメチルポリシロキサン52gを得
た。このリン酸変性ジメチルポリシロキサンは、通常化
粧品成分として使用されるシリコーンオイルに対し、0
〜50℃の範囲内において温度に関係なく安定した乳化
力を示した。また、水、低級アルコール等の極性溶媒な
どとの相溶性も優れていた。このものについてNMRに
よる分析を行った。NMRの分析結果は次のとおりであ
る。31 P−NMR(CDCl3 ) δ(ppm) 8.2
【0059】
【化17】
【0060】1H−NMR(D2O); δ(ppm) 0.1(broad s,66H,Si−CH3 )、
0.52(m,4H,−O−Si−C2 −CH2−)、
1.55(m,4H,−O−Si−CH22 CH2
O−)、3.6(m,8H,−C2 −O−C2 −)、
3.8(m,4H,−C2 −O−P−)、このリン酸
変性ジメチルポリシロキサンの構造は次式で示されるも
のであると認められる。
【0061】
【化18】
【0062】参考例3 オキシ塩化リン5.3gをテトラヒドロフラン10gに
溶解させた溶液を、−30℃まで冷却した。次に、この
溶液に、次式;
【0063】
【化19】
【0064】(式中、s:t=26:1である)で表わ
されるアルコール変性ジメチルポリシロキサン(商品名
X−22−4015;信越化学社製)70g及びトリエ
チルアミン3.5gをテトラヒドロフラン30gに溶解
させた溶液を、30分かけて滴下し、反応させた。その
後、反応系の温度を−20℃以下に保持し、4時間熟成
させた。次に、反応液中に、水酸化ナトリウム7.0g
をイオン交換水15gに溶解させた溶液を30分かけて
滴下した。その後0℃で12時間攪拌を継続し、反応を
終了させた。次に、溶媒を留去したのちイオン交換水で
洗浄した(300g×3)のち、水を留去して、リン酸
変性ジメチルポリシロキサン69gを得た(リン酸エス
テル転化率95%以上)。このリン酸変性ジメチルポリ
シロキサンは、通常化粧品成分として使用されるシリコ
ーンオイルに対し、0〜50℃の範囲内において温度に
関係なく安定した乳化力を示した。また、水、低級アル
コール等の極性溶媒などとの相溶性も優れていた。この
ものについてNMRによる分析を行った。NMRの分析
結果は次のとおりである。31 P−NMR(CD3OD+CDCl3); δ(ppm) 7.87
【0065】
【化20】
【0066】1H−NMR(CD3OD+CDCl3); δ(ppm) −0.10(broad s,155H,Si−C
3)、0.33(m,2H,O−Si−C2 −C
2)、1.46(m,2H,O−Si−CH22
2)3.27(m,2H,−C2 −O−CH2CH2
O−P)、3.35、3.44(m,2H,−CH2
2 CH2O−P)、3.53、3.73(m,2H,
−C2 O−P−)、このリン酸変性ジメチルポリシロ
キサンの構造は次式で示されるものであると認められ
る。
【0067】
【化21】
【0068】実施例1 参考例1で得られたリン酸変性ジメチルポリシロキサン
3gをエタノール30g、イオン交換水5gの混合溶媒
に溶解した。この溶液に塩化カルシウム4g、エタノー
ル10g、イオン交換水10gの溶液を20〜30℃、
20分で滴下した。前記の温度を保ったまま6時間熟成
させた。溶液にヘキサン100gを添加し、分層させ
た。ヘキサン層を分取した後イオン交換水(50g×
3)で洗浄し、ヘキサンを減圧留去し下記式で表わされ
るリン酸変性ジメチルポリシロキサンカルシウム塩3g
を得た。このものについて元素分析及びIR(KBr
法)による分析を行った。元素分析の結果は次のとおり
であり、図1にIRスペクトルを示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【化22】
【0071】実施例2 参考例2で得られたリン酸変性ジメチルポリシロキサン
40gをイオン交換水300gに溶解した。この溶液に
塩化カルシウム100gをイオン交換水300gに溶解
した溶液を20〜30℃、20分で滴下した。前記の温
度を保ったまま4時間熟成させた。生じた沈澱を濾過
し、イオン交換水で洗浄し下記式で表わされるリン酸変
性ジメチルポリシロキサンカルシウム塩32gを得た。
このものについて元素分析及びIR(KBr法)による
分析を行った。元素分析の結果は次のとおりであり、図
2にIRスペクトルを示す。
【0072】
【表2】
【0073】
【化23】
【0074】実施例3 参考例3で得られたリン酸変性ジメチルポリシロキサン
30gをテトラヒドロフラン300g、イオン交換水3
0gの溶液に溶解させた。この溶液に塩化カルシウム3
0g、イオン交換水50gに溶解した溶液を20分、2
0〜30℃で滴下した。前記の温度を保ったまま4時間
熟成させた。生じた沈澱を濾過し、イオン交換水、テト
ラヒドロフランで洗浄し下記式で表わされるリン酸変性
ジメチルポリシロキサンカルシウム塩28gを得た。こ
のものについて元素分析及びIR(KBr法)による分
析を行った。元素分析の結果は次のとおりであり、図3
にIRスペクトルを示す。
【0075】
【表3】
【0076】
【化24】
【0077】実施例4 参考例3で得られたリン酸変性ジメチルポリシロキサン
30gをテトラヒドロフラン300g、イオン交換水3
0gの溶液に溶解させた。この溶液に酢酸アルミニウム
30g、イオン交換水50gに溶解した溶液を20分、
20〜30℃で滴下した。前記の温度を保ったまま4時
間熟成させた。生じた沈澱を濾過し、イオン交換水、テ
トラヒドロフランで洗浄し下記式で表わされるリン酸変
性ジメチルポリシロキサンアルミニウム塩28gを得
た。このものについて元素分析及びIR(KBr法)に
よる分析を行った。元素分析の結果は次のとおりであ
り、図4にIRスペクトルを示す。
【0078】
【表4】
【0079】
【化25】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたリン酸変性ジメチルポリシ
ロキサンカルシウム塩のIRスペクトルである。
【図2】実施例2で得られたリン酸変性ジメチルポリシ
ロキサンカルシウム塩のIRスペクトルである。
【図3】実施例3で得られたリン酸変性ジメチルポリシ
ロキサンカルシウム塩のIRスペクトルである。
【図4】実施例4で得られたリン酸変性ジメチルポリシ
ロキサンアルミニウム塩のIRスペクトルである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−16684(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 77/30 C08G 77/395

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(1) (Q)zB (1) 〔式中、 Q:Si原子を介してBと結合する基であり、z個のQ
    のうち、少なくとも1個は基-R2-(OR1)p-PO4M2/mを示
    し、残余は基-R2-(OR1)p-OHを示す。ここでR1は炭素数
    2〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、R2
    炭素数1〜50のヒドロキシル基を含んでいてもよい直
    鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、pは0〜200の
    数を示し、Mはアルカリ土類金属原子又は2価以上の遷
    移金属原子を示し、mはMの原子価を示す。 B:アルキル基とSi原子との結合を有する、オルガノ
    (ポリ)シロキサン残基を示す。 z:1以上の数を示す。〕 で表わされるリン酸変性オルガノ(ポリ)シロキサン多
    価金属塩。
  2. 【請求項2】 下記一般式(2) 【化1】 〔式中、 R3 〜R14:少なくとも1個は基-R2-(OR1)p-PO4M2/m
    示し、残余は基-R2-(OR1)p-OH又は炭素数1〜22のア
    ルキル基を示す。ここでR1 は炭素数2〜4の直鎖又は
    分岐鎖のアルキレン基を示し、R2 は炭素数1〜50の
    ヒドロキシル基を含んでいてもよい直鎖又は分岐鎖のア
    ルキレン基を示し、pは0〜200の数を示し、Mはア
    ルカリ土類金属原子又は2価以上の遷移金属原子を示
    し、mはMの原子価を示す。q,r,s:それぞれ0〜
    1000の数を示す。但し、q、r及びsのすべてが0
    となることはない。〕 で表わされる請求項1記載のリン酸変性オルガノ(ポ
    リ)シロキサン多価金属塩。
  3. 【請求項3】 下記一般式(3) 【化2】 〔式中、 R1 :炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を
    示す。 R2 :炭素数1〜50のヒドロキシル基を含んでいても
    よい直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す。 R15〜R19:それぞれ炭素数1〜22のアルキル基を
    す。 M:アルカリ土類金属原子又は2価以上の遷移金属原子
    を示す。 m:Mの原子価を示す。 p:0〜200の数を示す。 t:1〜1000の数を示す。〕 で表わされる請求項1記載のリン酸変性オルガノ(ポ
    リ)シロキサン多価金属塩。
  4. 【請求項4】 下記一般式(4) 【化3】 〔式中、 R1 :炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を
    示す。 R2 :炭素数1〜50のヒドロキシル基を含んでいても
    よい直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す。 R20〜R23:それぞれ炭素数1〜22のアルキル基を
    す。 M:アルカリ土類金属原子又は2価以上の遷移金属原子
    を示す。 m:Mの原子価を示す。 p:0〜200の数を示す。 R24:基-R2-(OR1)p-PO4M2/m又は基-R2-(OR1)p-OH を示
    す。ここでR1 、R2、M、m及びpは前記と同じ意味
    を示す。 u:1〜1000の数を示す。〕 で表わされる請求項1記載のリン酸変性オルガノ(ポ
    リ)シロキサン多価金属塩。
  5. 【請求項5】 下記一般式(5) 【化4】 〔式中、 R1 :炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を
    示す。 R2 :炭素数1〜50のヒドロキシル基を含んでいても
    よい直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す。 R25〜R35:それぞれ炭素数1〜22のアルキル基を
    す。 M:アルカリ土類金属原子又は2価以上の遷移金属原子
    を示す。 m:Mの原子価を示す。 p:0〜200の数を示す。 v,x:それぞれ0〜1000の数を示す。 w:1〜1000の数を示す。〕 で表わされる請求項1記載のリン酸変性オルガノ(ポ
    リ)シロキサン多価金属塩。
  6. 【請求項6】 下記一般式(7) (R)zB (7) 〔式中、 R:Si原子を介してBと結合する基であり、z個のR
    のうち、少なくとも1個は基 【化5】 を示し、残余は基-R2-(OR1)p-OHを示す。ここでR1
    炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、
    2 は炭素数1〜50のヒドロキシル基を含んでいても
    よい直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、pは0〜2
    00の数を示し、M1 及びM2 は、それぞれ水素原子又
    は1価の陽イオンを示す。 B:アルキル基とSi原子との結合を有する、オルガノ
    (ポリ)シロキサン残基を示す。 z:1以上の数を示す。〕 で表わされるリン酸変性オルガノ(ポリ)シロキサン又
    はその塩に、下記一般式(8) 【化6】 〔式中、 M:アルカリ土類金属原子又は2価以上の遷移金属原子
    を示す。 Y:有機又は無機の陰イオンを示す。 α,β:それぞれ、Y及びMの原子価に対応する整数を
    示す。〕 で表わされる多価金属塩を反応させることを特徴とす
    る、下記一般式(1) (Q)zB (1) 〔式中、 Q:Si原子を介してBと結合する基であり、z個のQ
    のうち、少なくとも1個は基-R2-(OR1)p-PO4M2/mを示
    し、残余は基-R2-(OR1)p-OHを示す。ここでR1、R2
    p及びMは前記と同じ意味を示し、mはMの原子価を示
    す。 B:前記と同じ意味を示す。 z:前記と同じ意味を示す。〕 で表わされるリン酸変性オルガノ(ポリ)シロキサン多
    価金属塩の製造方法。
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