JP3253813B2 - 金属結合カゼインを配合した栄養組成物 - Google Patents

金属結合カゼインを配合した栄養組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鉄結合カゼイン及び銅
結合カゼイン(以下、「金属結合カゼイン」と言う)を
配合した栄養組成物に関する。本発明は、特に、金属結
合カゼインを配合することにより、酸化に対して安定
で、品質の劣化が起こりにくい栄養組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、母乳に関する研究が進展し、母乳
に含まれる成分については、かなり細部にわたって解明
されてきている。これに伴い、育児用調製乳や育児用調
製粉乳等の栄養組成物の開発においても、母乳への近似
化が図られている。栄養組成物は、一般的に、蛋白質、
脂質、炭水化物、灰分及びその他の微量成分から構成さ
れているが、これらの各成分の改良や新たな成分の添加
が行われるようになってきている。しかしながら、栄養
組成物に配合される栄養学的あるいは生理学的に重要な
種々の成分は、必ずしも酸化に対して安定ではない。例
えば、脂肪源として配合される油脂の不飽和脂肪酸は非
常に酸化され易く、これが酸化されて生成するヒドロペ
ルオキシドは、更に強い酸化剤として作用するといった
問題がある。また、蛋白質が酸化され損傷を受けると、
固さや口ざわりに影響し、更に、保存中に褐変も起こ
る。
【0003】更には、栄養組成物中に配合されているア
スコルビン酸、トコフェロール、グルタチオン、尿酸等
の還元物質は、酸化分解され、また共役二重結合の多い
ビタミンAやカロチン等も酸化分解され易い。このよう
に栄養組成物中で酸化が生じると、成分の分解による品
質の低下のみならず、極端な場合には、中毒の発生原因
となる危険性さえあるといわれている(松下雪郎、「油
化学」、第36巻、3〜9頁、1987年)。物質の酸化は、二
重結合、共役二重結合等の物質固有の構造によってその
速度は異なり、また酸素、温度の上昇、光、放射線、有
機金属化合物、微量金属触媒(遷移金属)等によって促
進される。
【0004】栄養組成物中には、必須微量元素として、
銅、鉄、亜鉛等の金属が配合されているが、これらが他
の成分の酸化触媒として作用する場合があるという問題
がある。これらの金属は、従来、硫酸銅、硫酸第1鉄、
クエン酸第1鉄ナトリウム、ピロリン酸第2鉄、硫酸亜
鉛等の金属塩の形態で配合されているが、栄養組成物中
では酸化触媒能を保持したままである。即ち、栄養組成
物中での酸化反応は、これらの金属による触媒作用で反
応速度が速められ、その結果、短時間で栄養組成物の品
質を劣化させるという危険性がある。このため、従来よ
り、必須微量元素として配合した金属の酸化触媒能を抑
制することが、種々試みられている。例えば乳蛋白質、
大豆蛋白質、卵白等の蛋白質と鉄塩とを結合した後、酵
素により加水分解して、鉄結合ペプチドとし、鉄の酸化
触媒能を抑制することが開示されている(特開昭63−
290827号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】蛋白質の中には、その
電気的性質によって、2価金属イオンと結合する性質を
有するものがあることが知られているが、単に乳蛋白
質、大豆蛋白質、卵蛋白質等の蛋白質と鉄塩の水溶液を
反応させただけでは、極く微量の金属しか結合せず、金
属の酸化触媒能を保持したままの状態にある。このた
め、上記特開昭63−290827号公報に記載されて
いる方法により得られる鉄結合ペプチドを栄養組成物に
配合した場合には、金属塩の形態で配合する場合より
は、栄養組成物中の油脂に対する酸化触媒能がある程度
抑制されるが、金属の酸化触媒能を十分に抑制するとい
う効果を得ることができないという問題がある。更に、
鉄結合ペプチドの製造にあたって、酵素処理やペプチド
の回収等の煩雑で長時間を要する操作が必要であるとい
う問題もある。従って、本発明は、上記のような従来技
術の課題を解決し、より簡単な方法によって得られた金
属結合カゼインを栄養組成物に配合することにより、栄
養組成物中に配合されている油脂やビタミンA、カロチ
ン等の他の物質の酸化を抑制し、品質の劣化の起こりに
くい栄養組成物を提供することを目的とする。即ち、本
発明の目的は、栄養組成物を構成している成分の酸化反
応による分解を抑えることにより、品質劣化の抑制され
た栄養組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、栄養組成
物に配合される金属類のうち、特に鉄及び銅が、他の成
分の酸化反応の触媒として特に強く作用することを見出
し、更に、これらの金属がカゼインと結合した状態で配
合された場合に、酸化触媒能が著しく抑制されるとの知
見を得、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、
金属結合カゼインを配合した栄養組成物からなる。本発
明はまた、金属結合カゼインの配合量が、前記金属の重
量が栄養組成物の固形分当りそれぞれ0.01〜30mg
%となる量である前記栄養組成物からなる。
【0007】以下、本発明について詳しく説明する。本
発明でいう栄養組成物は、育児用調製乳、育児用調製粉
乳、フォローアップミルク等を包含するものである。本
発明の栄養組成物は、液状、粉体状、固形状のいずれの
形態のものであってもよい。本発明の栄養組成物は、一
般的には、蛋白質、脂質、炭水化物及び灰分等を主成分
とし、必須微量成分としての鉄、銅、亜鉛、マンガン等
の金属やビタミン類等を含有するものであるが、更に、
栄養組成物に配合されることが可能なその他の成分を含
有するものであってもよい。本発明においては、上記し
たように、前記金属類の中でも、特に、鉄及び銅の酸化
触媒能が高いことに着目し、鉄及び銅を、鉄結合カゼイ
ン及び銅結合カゼインの金属結合カゼインの形態で栄養
組成物中に配合し、他の成分に対する酸化触媒能を抑制
するものである。しかも、金属結合カゼインの形態で配
合される鉄及び銅は、塩等の形態で配合された場合と同
様に、微量元素としての機能も発揮することができる。
即ち、本発明の栄養組成物は、鉄及び銅を、金属結合カ
ゼインとして配合することにより、それらの必須微量元
素としての機能を有しながら、同時に、栄養組成物中に
特に脂肪源として配合される油脂(特に、油脂を構成す
る脂肪酸中不飽和脂肪酸が多い油脂)やビタミンA、カ
ロチン、アスコルビン酸等に対する酸化を有効に抑制す
ることができる。
【0008】本発明の栄養組成物中に配合される金属結
合カゼインは、いずれの方法により製造されたものであ
ってもよいが、例えば、特開平2−83400号公報に
記載の方法により好適に製造することができる。同公報
に記載の方法を、参考までに下記に示す。原料としての
牛乳又は加工乳を、アルカリによりpH6.0以上に保ち
ながら、電気透析装置又は限外濾過膜等により脱塩処理
をして、乳中のカゼインと結合しているカルシウムを9
0%以上除去する。この脱塩処理した乳に、レンネット
を添加して、カゼイン中のκ−カゼインを、パラ−κ−
カゼイン化して可溶性カゼインとする。鉄結合カゼイン
を調製する場合は、この可溶性カゼイン溶液のカゼイン
濃度を、5〜25%に調整して、これに、例えば濃度が
0.1〜25重量%、好ましくは、10重量%程度の硫
酸第1鉄等の2価鉄塩の水溶液を添加すると、凝固して
鉄結合カゼインのカードが生成する。これをそのまま栄
養組成物の原材料として使用することができる。また、
必要に応じて、この鉄結合カゼインのカードを回収し
て、イオン交換水又は水道水で水洗後、遠心分離等の手
段によって脱水し、得られたカードを凍結乾燥や噴霧乾
燥等の乾燥処理をすることによって鉄結合カゼインを粉
末化することもできる。また、銅結合カゼインを調製す
る場合は、上記可溶性カゼインを、上記と同じ濃度に調
整した後、硫酸銅(5水和物)を、濃度が0.12〜2
0重量%、好ましくは2重量%の水溶液にして添加する
ことにより、凝固して銅結合カゼインのカードが生成す
るので、このカードをそのまま栄養組成物の原材料とし
て使用してもよく、またカードを回収して、上記鉄結合
カゼインと同様に処理後、粉末状で栄養組成物中へ配合
することもできる。
【0009】尚、金属類を結合させる可溶性カゼインと
しては、上記の方法によって得られた脱塩カゼインの他
に、酸カゼイン、ソーダカゼインまたはポタシウムカゼ
インを使用することもでき、これらのカゼインの一種ま
たは二種以上を混合して用いることができる。尚、金属
塩に可溶性カゼインを添加する場合に、口径の微細なノ
ズル等を用いて、金属塩を可溶性カゼイン溶液に注入す
ると、得られる金属結合カゼインの粒径が微細なものと
なり、また、粒径の調節も可能となるので、使用にあた
って好都合である。上記のように調製して得た金属結合
カゼインを全粉乳、脱脂粉乳、ホエー蛋白質濃縮物等の
乳原料、油脂原料、炭水化物、灰分及びその他の金属塩
類及びビタミン類等の微量成分と共に、液体状または粉
末状の形態で混合して栄養組成物を調製する。尚、得ら
れた栄養組成物を容器に充填し、包装する際、常法に従
って、空気を窒素ガス等の不活性ガスと置換すると、よ
り酸化に対して安定性が向上する。
【0010】本発明の栄養組成物における金属結合カゼ
インの配合量は、目的とする栄養組成物によって異なる
が、乳児を対象とする栄養組成物の場合には、前記金属
のみの重量を基準として、通常、最終製品の固形分当り
それぞれ0.01〜25mg%であり、特に、0.1〜10
mg%が好ましい。また、妊産婦を対象とする栄養組成物
の場合には、前記金属のみの重量を基準として、通常、
最終製品の固形分当りそれぞれ0.02〜30mg%であ
り、特に、0.15〜25mg%が好ましい。また、本発
明の栄養組成物における蛋白質の配合量は、最終製品の
固形分当り0〜30重量%、特に、7〜15重量%、脂
質の配合量は、最終製品の固形分当り0〜60重量%、
特に、20〜40重量%、炭水化物の配合量は、最終製
品の固形分当り0〜90重量%、特に、40〜60重量
%、灰分の配合量は、最終製品の固形分当り0〜10重
量%、特に、0.5〜4重量%、ビタミン類の配合量
は、最終製品の固形分当り0〜2重量%、特に、0.0
1〜0.5重量%とするのが好ましい。
【0011】以下、実施例及び比較例を示し、本発明を
具体的に説明する。
【実施例】
実施例1 (金属結合カゼインを配合した育児用調製乳の調製)ソ
ーダカゼイン1.0kgを、温湯4.0kgに溶解し、これ
に、攪拌下、固形率10重量%の硫酸第1鉄(無水物)
の水溶液22.6gを、口径0.5mmのノズルを通して注
入した。更に、2重量%の硫酸銅(5水和物)水溶液
6.45gを、同様に口径0.5mmのノズルを通して注入
し、鉄又は銅が結合したカゼインカードを生成させた。
このようにして得られた金属結合カゼイン溶液に、ホエ
ー粉(蛋白質量75%)8.8kg、全粉乳8.8kg、酸カ
ゼイン3.9kg、乳糖51.6kg、ビタミン及びミネラル
成分(鉄、銅を除く)1.5kg及び水695kgを加え、
溶解混合した後、植物油脂25.1kgを添加混合し、1
75kgf/cm2で均質処理した後、120℃、3秒間殺菌
して、約800kgの育児用調製乳を得た。この育児用調
製乳は、還元型アスコルビン酸0.2mg/mlを含有し、
また鉄及び銅の含量は、固形分当り鉄が6mg%、銅が
320μg%であった。
【0012】比較例1 (鉄結合ペプチドを配合した育児用調製乳の調製)水
9.0kgに、K2CO320g及びNa2CO320gを添加し、更
に酸カゼイン1.0kgを加えて、60℃に加熱して溶解
した後、50℃まで冷却して、保持した。これに、固形
率0.06重量%の硫酸第一鉄(無水物)の水溶液1.0
kgを混合し、4規定の苛性ソーダ水溶液100mlを添加
して、pH8.0〜9.0に調整し、50℃で保持した。こ
の溶液に、適当量の水に溶解又は懸濁したパンクレアチ
ン(天野製薬社製)7.0g及びバチルス・ズブチリス
(Bacillus subtilis)由来のプロテアーゼN(天野製薬
社製)15.0gを、別々に順次添加し、50℃で16
時間酵素反応を行った。反応後、85℃に15分間加熱
して、酵素を失活させ、不溶物を除去した後、濃縮、乾
燥して、鉄結合ペプチド粉末850gを得た。この鉄結
合ペプチド粉末の鉄含量は、100g当り約15mgであ
った。ソーダカゼイン1.0kgを、温湯4.0kgに溶解
し、ホエー粉(蛋白質量75%)8.8kg、全粉乳8.8
kg、酸カゼイン3.9kg、乳糖51.6kg、ビタミン及び
ミネラル成分1.5kg〔鉄結合ペプチド粉末40.0g及
び硫酸銅(5水和物)1.29gを含む〕及び水695k
gを加え、溶解混合した後、植物油脂25.1kgを添加混
合し、175kgf/cm2で均質処理した後、120℃、3
秒間殺菌して、約800kgの育児用調製乳を得た。この
育児用調製乳は、還元型アスコルビン酸0.2mg/mlを
含有し、また鉄及び銅の含量は、固形分当り鉄が6mg
%、銅が320μg%であった。
【0013】比較例2 (金属塩の形態で配合した育児用調製乳の調製)ソーダ
カゼイン1.0kgを、温湯4.0kgに溶解し、ホエー粉
(蛋白質量75%)8.8kg、全粉乳8.8kg、酸カゼイ
ン3.9kg、乳糖51.6kg、ビタミン及びミネラル成分
1.5kg〔硫酸第1鉄(無水物)2.26g、硫酸銅(5
水和物)1.29gを含む〕及び水695kgを加え、溶
解混合した後、植物油脂25.1kgを添加混合し、17
5kgf/cm2で均質処理した後、120℃、3秒間殺菌し
て、約800kgの育児用調製乳を得た。この育児用調製
乳は、還元型アスコルビン酸0.2mg/mlを含有し、ま
た鉄及び銅の含量は、固形分当り鉄が6mg%、銅が320
μg%であった。
【0014】対照例1 (鉄及び銅を配合しない育児用調製乳の調製)ソーダカ
ゼイン1.0kgを、温湯4.0kgに溶解し、ホエー粉(蛋
白質量75%)8.8kg、全粉乳8.8kg、酸カゼイン
3.9kg、乳糖51.6kg、ビタミン及びミネラル成分
(鉄及び銅を除く)1.5kg及び水695kgを加え、溶
解混合した後、植物油脂25.1kgを添加混合し、17
5kgf/cm2で均質処理した後、120℃、3秒間殺菌し
て、約800kgの育児用調製乳を得た。この育児用調製
乳は、還元型アスコルビン酸0.2mg/mlを含有してい
た。
【0015】試験例1 (実施例、比較例及び対照例により調製した粉乳の酸化
抑制比較)上記実施例1、比較例1、2及び対照例1に
おいて調製した各育児用調製乳(調製乳A〜D)の酸化
の進行を、それぞれに含まれている還元型アスコルビン
酸が酸化されて減少する過程を経時的に測定することに
よって比較した。尚、調製乳(A、B及びC)中の鉄及
び銅の含有量は、同一である。 実施例1で調製した金属結合カゼインを配合した育児
用調製乳(調製乳A) 比較例1で調製した金属結合ペプチドを配合した育児
用調製乳(調製乳B) 比較例2で調製した金属塩の形態で配合した育児用調
製乳(調製乳C) 対照例1で調製した金属塩を配合しない育児用調製乳
(調製乳D) 上記各調製乳A〜D500mlを、25℃で緩やかに攪拌
し、経時的に各々5mlを採取し、調製乳中の還元型アス
コルビン酸含量を測定した。尚、この時、各調製乳の温
度、攪拌条件は同一となるように設定した。また、還元
型アスコルビン酸の測定はインドフェノール・キシレン
法(日本農林規格協会、果実飲料、試験法)によって行
った。各調製乳中の還元型アスコルビン酸含量の経時変
化を図1に示す。図1から明らかなように、調製乳Dで
は、還元型アスコルビン酸がほとんど減少しないのに対
して、調製乳Cでは、著しく減少し、酸化の進行が早い
ことが判る。また、調製乳Bにおいても、還元型アスコ
ルビン酸が減少する速度は早く、酸化の進行が早い。こ
れに対し、調製乳Aでは、還元型アスコルビン酸が減少
する速度は遅く、調製乳B及びCに比べて、明らかに酸
化の進行が遅い。
【0016】実施例2 (粉末状金属結合カゼインを配合した育児用調製乳の調
製)ソーダカゼイン1.0kgを、温湯4.0kgに溶解し、
これに、攪拌下、固形率10重量%の硫酸第1鉄(乾
燥)水溶液500gを、口径0.5mmのノズルを通して
注入し、鉄結合カゼインのカードを生成させた。別に、
ソーダカゼイン1.0kgを、温湯4.0kgに溶解し、これ
に、攪拌下、2重量%の硫酸銅(5水和物)水溶液50
0gを、同様に口径0.5mmのノズルを通して注入し、
銅結合カゼインのカードを生成させた。各々の溶液を、
遠心分離して、生成したカードを回収し、水道水で充分
に水洗した後、再び遠心分離を行って、カードを回収、
脱水し、乾燥した後、粉砕し、鉄結合カゼイン粉末及び
銅結合カゼイン粉末を得た。鉄結合カゼイン粉末の鉄含
量は100g当たり1020mgであり、銅結合カゼイン
粉末の銅含量は100g当たり2600mgであった。得
られた鉄結合カゼイン粉末588gに、銅結合カゼイン
粉末12.3g、ホエー粉(蛋白質量75%)9.4kg、
ソーダカゼイン粉末6.5kg、乳糖55.0kg、ビタミン
及びミネラル成分(鉄及び銅を除く)2.0kg及び水7
00kgを加え、溶解混合した後、植物油脂27.4kgを
添加混合し、175kgf/cm2で均質処理した後、120
℃、3秒間殺菌して約800kgの育児用調製乳を得た。
この育児用調製乳は、還元型アスコルビン酸0.24mg
/mlを含有し、また鉄及び銅の含量は、固形分当り鉄が
6mg%、銅が320μg%であった。
【0017】実施例3 (金属結合カゼインを配合した育児用調製粉乳の調製)
ソーダカゼイン1.0kgを、温湯4.0kgに溶解し、これ
に、攪拌下、固形率10重量%の硫酸第1鉄(無水物)
水溶液22.6gを、口径0.5mmのノズルを通して注入
した。更に、2重量%の硫酸銅(5水和物)水溶液6.
45gを、同様に、口径0.5mmのノズルを通して注入
し、鉄又は銅が結合したカゼインカードを生成させた。
このようにして得られた金属結合カゼイン溶液に、ホエ
ー粉(蛋白質量75%)8.8kg、全粉乳8.8kg、酸カ
ゼイン3.9kg、乳糖51.6kg、ビタミン及びミネラル
成分(鉄及び銅を除く)1.5kg及び水695kgを加
え、溶解混合した後、植物油脂24.6kg、月見草油0.
1kg及び魚油0.4kgを添加混合し、175kgf/cm2
均質処理した後、120℃、3秒間殺菌して、約800
kgの育児用調製乳を得た。これを、常法により濃縮後、
噴霧乾燥して、育児用調製粉乳100kgを得た。この育
児用調製粉乳は、固形分当り還元型アスコルビン酸1.
85mg%を含有し、また鉄及び銅の含量は、鉄が6mg
%、銅が320μg%であった。
【0018】比較例4 (金属塩の形態で配合した育児用調製粉乳の調製)ソー
ダカゼイン1.0kgを、温湯4.0kgに溶解し、ホエー粉
(蛋白質量75%)8.8kg、全粉乳8.8kg、酸カゼイ
ン3.9kg、乳糖51.6kg、ビタミン及びミネラル成分
1.5kg〔硫酸第1鉄(無水物)2.26g、硫酸銅(5
水和物)1.29gを含む〕及び水695kgを加え、溶
解混合した後、植物油脂24.6kg、月見草油0.1kg及
び魚油0.4kgを添加混合し、175kgf/cm2で均質処
理した後、120℃、3秒間殺菌して、約800kgの育
児用調製乳を得た。これを、常法により濃縮した後、噴
霧乾燥して、育児用調製粉乳100kgを得た。この育児
用調製粉乳は、固形分当り還元型アスコルビン酸1.8
5mg%を含有し、また鉄及び銅の含量は、鉄が6mg%、
銅が320μg%であった。
【0019】対照例2 (鉄及び銅を配合しない育児用調製粉乳の調製)ソーダ
カゼイン1.0kgを、温湯4.0kgに溶解し、ホエー粉
(蛋白質量75%)8.8kg、全粉乳8.8kg、酸カゼイ
ン3.9kg、乳糖51.9kg、ビタミン及びミネラル成分
(鉄及び銅を除く)1.5kg及び水695kgを加え、溶
解混合した後、植物油脂24.6kg、月見草油0.1kg及
び魚油0.4kgを添加混合し、175kgf/cm2で均質処
理した後、120℃、3秒間殺菌して、約800kgの育
児用調製乳を得た。これを、常法により濃縮した後、噴
霧乾燥して、育児用調製粉乳100kgを得た。この育児
用調製粉乳は、固形分当り還元型アスコルビン酸1.85mg
%を含有していた。
【0020】(官能評価)酸化触媒能を評価するため
に、上記実施例3、比較例4及び対照例2において得ら
れた育児用調製粉乳について、油脂が酸化し、劣化した
際に生じる特有の戻り臭を官能評価した。実施例3、比
較例4及び対照例2において得られた各調製粉乳350
gを缶充填し、缶内の空気を窒素ガスにより置換し、そ
のまま密閉した。37℃で60日間保存した後、開缶し
て、魚油が酸化により劣化した際に生じる特有の魚臭
を、20人の専門パネラーにより官能評価した。結果を
下記表1に示す。
【0021】
【表1】 官能評価結果 例 魚臭を感じたパネラーの人数 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 実施例3 4人 比較例4 16人 対照例2 1人 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− (20人中)
【0022】表1に示される結果から明らかなように、
比較例4の粉乳は、対照例2の粉乳と比較して、魚臭を
感じた人が圧倒的に多く、粉乳に含まれる魚油の酸化、
劣化が進行していることが判る。一方、実施例3の粉乳
は、対照例2の粉乳と比較すると魚臭を感じた人はやや
多いものの、比較例4の粉乳と比較すると、はるかに魚
臭を感じた人は少なく、魚油の酸化、劣化が抑制されて
いた。これは、実施例3において、油脂の酸化が抑制さ
れたこと、即ち、金属結合カゼインの使用により酸化の
進行が抑制されたことを示している。
【0023】
【発明の効果】以上、詳しく説明したように、本発明の
栄養組成物は、必須の配合成分である鉄や銅の金属を、
カゼインと結合させて配合しているので、栄養組成物に
対する金属の酸化触媒能が著しく低減されており、油
脂、ビタミンA、還元型アスコルビン酸、トコフェロー
ル、グルタチオン、尿酸又はカロチン等のような酸化分
解され易い栄養素の酸化反応を抑制することができ、し
かも、前記鉄や銅は、塩等の形態で配合した場合と同様
に、微量金属元素としての生理効果も発揮することがで
きる。更に、このように酸化反応を抑制することによっ
て、有効栄養素の分解、異臭味の生成、褐変、固化等の
ような品質劣化も防止することができ、安定した品質を
有する優れた栄養組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】調製乳中の還元型アスコルビン酸含量の経時変
化を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松永 政也 埼玉県狭山市新狭山3―1―2 レジデ ンス新狭山205号 (72)発明者 江藤 正之 埼玉県川越市大字今福243番地―1 フ ァーストマリッチA301 (72)発明者 井戸田 正 埼玉県川越市大字古谷上6083―7 川越 グリーンパークL1―207 (56)参考文献 特開 平2−83333(JP,A) 特開 平6−40936(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23C 9/13 - 9/156 A23L 1/304 - 1/305 A61K 37/16 JICSTファイル(JOIS) JAFICファイル(JOIS)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄結合カゼイン及び銅結合カゼインを配
    合したことを特徴とする栄養組成物。
  2. 【請求項2】 鉄結合カゼイン及び銅結合カゼインの配
    合量が、前記鉄及び銅の重量が栄養組成物の固形分当り
    それぞれ0.01〜30mg%となる量である請求項1記
    載の栄養組成物。
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