JP3248762B2 - 水素吸蔵合金電極及びその製造方法 - Google Patents

水素吸蔵合金電極及びその製造方法

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JP3248762B2
JP3248762B2 JP24453092A JP24453092A JP3248762B2 JP 3248762 B2 JP3248762 B2 JP 3248762B2 JP 24453092 A JP24453092 A JP 24453092A JP 24453092 A JP24453092 A JP 24453092A JP 3248762 B2 JP3248762 B2 JP 3248762B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電気化学的な水素の吸
蔵・放出を可逆的に行える水素吸蔵合金電極及びその製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】各種の電源として広く使われている蓄電
池として鉛電池とアルカリ電池がある。このうちアルカ
リ蓄電池は高信頼性が期待でき、小形軽量化も可能など
の理由で小型電池は各種ポ−タブル機器用に、大型は産
業用として使われてきた。
【0003】このアルカリ蓄電池において、正極として
は一部空気極や酸化銀極なども取り上げられているが、
ほとんどの場合ニッケル極である。ポケット式から焼結
式に代わって特性が向上し、さらに密閉化が可能になる
とともに用途も広がった。
【0004】一方、負極としてはカドミウムの他に亜
鉛、鉄、水素などが対象となっているが、現在のところ
カドミウム極が主体である。ところが、一層の高エネル
ギ−密度を達成するために金属水素化物つまり水素吸蔵
合金極を使ったニッケル−水素蓄電池が注目され、製法
などに多くの提案がされている。
【0005】水素を可逆的に吸収・放出しうる水素吸蔵
合金を負極に使用するアルカリ蓄電池の水素吸蔵合金電
極は、理論容量密度がカドミウム極より大きく、亜鉛極
のような変形やデンドライトの形成などもないことか
ら、長寿命・無公害であり、しかも高エネルギー密度を
有するアルカリ蓄電池用負極として期待されている。
【0006】このような水素吸蔵合金電極に用いられる
合金は、通常アーク溶解法や高周波誘導加熱溶解法など
で作製され、一般的にはTi−Ni系およびLa(また
はMm)−Ni系の多元系合金がよく知られている。T
i−Ni系の多元系合金は、ABタイプ(A:La,Z
r,Tiなどの水素との親和性の大きい元素、B:N
i,Mn,Crなどの遷移元素)として分類できるが、
この特徴として充放電サイクルの初期には比較的大きな
放電容量を示すが、充放電を繰り返すと、その容量を長
く維持することが困難であるという問題がある。また、
AB5 タイプのLa(またはMm)−Ni系の多元系合
金は、近年電極材料として多くの開発が進められ、特に
Mm−Ni系の多元系合金はすでに実用化されている
が、この合金系も比較的放電容量が小さいこと、電池電
極としての寿命性能が不十分であること、材料コストが
高いなどの問題を有している。したがって、さらに放電
容量が大きく長寿命である新規水素吸蔵合金材料が望ま
れている。
【0007】これに対して、AB2 タイプのLaves
相合金は水素吸蔵能が比較的高く、高容量かつ長寿命の
電極として有望である。すでにこの合金系については、
例えばZrMoαNiβ系合金(特開昭64−4837
0号公報)やAxByNiz系合金(特開平1−102
855号公報)、ZrαMnβMoγCrδNiε(特
願平2−174741号)などを提案している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、AB2
タイプのLaves相合金を電極に用いた場合、Ti−
Ni系やLa(またはMm)−Ni系の多元系合金に比
べて放電容量が大きく、長寿命化が可能なものの、さら
に一層の性能の向上が望まれている。そして、合金系を
Zr−Mn−Mo−Cr−Ni系に限定し、組成を調整
することにより0.35Ah/g前後の放電容量を持つ
水素吸蔵合金電極が得られた(特願平2−174741
号)。しかし、その水素吸蔵合金電極は合金相の主成分
はC15型Laves相(MgCu2 型fcc構造)で
あるが、C15相以外の合金相の混入割合が多く、必ず
しも均質性が高いとは言えなかった。そこで、もっとM
n量を増やしCr量を制限すれば合金の均質性はさらに
向上するが、Mn量が0.5を越えるとアルカリ電解液
中では合金表面が腐食されやすく、充放電サイクルを繰
り返すと放電容量が大きく低下した。したがって、Mn
量を増加させることにより、合金の均質性を向上させて
放電容量をさらに増大させることが課題となっていた。
【0009】また、Zr−Mn−Mo−Cr−Ni系水
素吸蔵合金は水素吸蔵−放出過程のヒステリシスが大き
いため、それを電極に用いた場合放電容量が制限されて
いた。Crはヒステリシスを減少させる効果を有する
が、Cr量を増加するとC15相以外の合金相の混入割
合が大きくなり、合金の均質性が低下する。したがっ
て、別の方法でヒステリシスを小さくし、放電容量を増
大させることが課題となっていた。
【0010】本発明は、上記従来の課題を解決するもの
であり、Zr−Mn−Mo−Cr−Ni系水素吸蔵合金
のMn量を増加して合金の均質性を向上させることによ
り、さらに放電容量が大きく、かつ長寿命である水素吸
蔵合金電極及びその製造方法を提供することを第1の目
的とする。
【0011】また本発明は、Zr−Mn−Mo−Cr−
Ni系水素吸蔵合金のMoの一部をVに置換して水素吸
蔵−放出過程のヒステリシスを小さくすることにより、
放電容量が大きく、かつ長寿命である水素吸蔵合金電極
を提供することを第2の目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記第1の目的を達成す
るために、本発明の水素吸蔵合金電極は、一般式が、Z
rMnw Mox Cry Niz (ただし、0.5<w≦
0.8,0.1≦x≦0.3,0<y≦0.2,1.2
≦z≦1.5であり、かつ2.0≦w+x+y+z≦
2.4)で示され、合金相の主成分がC15(MgCu
2 )型Laves相であり、かつその結晶格子定数
(a)が、7.03オングストローム≦a≦7.10オ
ングストロームである水素吸蔵合金またはその水素化物
を用いたという構成を備えたものである。前記構成にお
いては、CrとMoの配合比率がy≦xであり、かつN
iとMoの配合比率がz−x≦1.2であることが好ま
しい。
【0013】次に上記第2の目的を達成するために、本
発明の水素吸蔵合金電極は、一般式が、ZrMnw b
Mox Cry Niz (ただし、0.5<w≦0.8,0
<b<0.3,0<x<0.3,0<y≦0.2,1.
2≦z≦1.5であり、かつ0.1≦b+x≦0.3,
2.0≦w+b+x+y+z≦2.4)で示され、合金
相の主成分がC15(MgCu2 )型Laves相であ
り、かつその結晶格子定数(a)が、7.03オングス
トローム≦a≦7.10オングストロームである水素吸
蔵合金またはその水素化物を用いたという構成を備えた
ものである。前記構成においては、Cr、VおよびMo
の配合比率がy≦b+xであり、かつNi、VおよびM
oの配合比率がz−b−x≦1.2であることが好まし
い。
【0014】次に本発明の第1番目の製造方法は、一般
式が、ZrMnw b Mox CryNiz (ただし、
0.5<w≦0.8,0≦b<0.3,0<x≦0.
3,0<y≦0.2,1.2≦z≦1.5であり、かつ
0.1≦b+x≦0.3,2.0≦w+b+x+y+z
≦2.4)で示され、合金相の主成分がC15(MgC
2 )型Laves相であり、かつその結晶格子定数
(a)が、7.03オングストローム≦a≦7.10オ
ングストロームである合金を作製後、1000〜130
0℃の真空中または不活性ガス雰囲気中で均質化熱処理
を行うことを特徴とする。
【0015】次に本発明の第2番目の製造方法は、一般
式が、ZrMnw b Mox CryNiz (ただし、
0.5<w≦0.8,0≦b<0.3,0<x≦0.
3,0<y≦0.2,1.2≦z≦1.5であり、かつ
0.1≦b+x≦0.3,2.0≦w+b+x+y+z
≦2.4)で示され、合金相の主成分がC15(MgC
2 )型Laves相であり、かつその結晶格子定数
(a)が、7.03オングストローム≦a≦7.10オ
ングストロームである合金を作製後、前記合金を粉砕
し、次いでアルカリ溶液中に浸漬することを特徴とす
る。
【0016】
【作用】本発明の水素吸蔵合金電極は、従来のZr−M
n−Mo−Cr−Ni系水素吸蔵合金のMn量を増加し
たものであり、従来合金に比べてC15型Laves相
以外の合金相の混入割合が非常に小さく合金の均質性が
大きく向上したため、水素吸蔵−放出量が大きくなる。
そして、合金粉砕後、アルカリ溶液中に浸漬して予め合
金表面のMnを溶出させることにより、合金表面のMn
の濃度が低下し合金表面が腐食されにくくなるので、電
気化学的な充放電特性においても効率よく多量の水素を
吸蔵−放出させることができ、充放電の繰り返しに対し
ても非常に安定な性能を長期間持続できる。
【0017】また、本発明はZr−Mn−Mo−Cr−
Ni系水素吸蔵合金のMoの一部をVに置換したもので
あり、従来のZr−Mn−Mo−Cr−Ni系合金に比
べて水素吸蔵−放出過程のヒステリシスが小さくなるの
で、水素吸蔵量に対する水素放出量の割合が増大する。
【0018】したがって、本発明の水素吸蔵合金電極を
用いて構成したアルカリ蓄電池、例えばニッケル−水素
蓄電池は、従来のこの種の電池に比べて長寿命特性を損
なわずに高容量を有することが可能になる。
【0019】また前記本発明の第1番目の製造方法によ
れば、1000〜1300℃の真空中もしくは不活性ガ
ス雰囲気中で均質化熱処理を行うことにより、水素吸蔵
量を増大させることができる。
【0020】また前記本発明の第2番目の製造方法によ
れば、アルカリ溶液処理により合金表面の耐腐食性を向
上でき、充放電サイクルを繰り返したときの高容量を安
定して持続できる。
【0021】
【実施例】
(実施例1)以下に本発明の一実施例について図面とと
もに説明する。
【0022】市販のZr,Mn,Mo,Cr,Ni金属
を原料として、アルゴン雰囲気中、アーク溶解炉で加熱
溶解することにより、(表1)に示したような組成の合
金を作製した。ただし、Mn量が0.8以上のものはア
ーク炉で作製すると多量のMnが蒸発し、目的合金を得
ることが困難であるため、誘導加熱炉で作製した。次い
で、真空中、1100℃で12時間熱処理し、合金試料
とした。
【0023】
【表1】
【0024】この合金試料の一部はX線回折などの合金
分析および水素ガス雰囲気における水素吸収−放出量測
定(通常のP(水素圧力)−C(組成)−T(温度)測
定)に使用し、残りは電極特性評価に用いた。
【0025】試料No.1〜4は本発明と構成元素また
は組成比が異なる比較例であり、試料No.5〜13は
本発明の水素吸蔵合金のいくつかの実施例である。ま
ず、各合金試料について、X線回折測定を行った。その
結果、いずれの合金試料についても合金相の主成分はC
15型Laves相(MgCu2 型fcc構造)である
ことを確認したが、試料No.2〜4についてはC15
相以外の合金相の混入割合が大きいことがわかった。ま
た、真空熱処理後のものは熱処理前と比べるとfccの
ピークがより大きく鋭くなったので、熱処理することに
よりC15型Laves相の割合が増大し、合金の均質
性および結晶性も向上したことがわかった。特にMn量
が0.8以上のものについても均一組成の目的合金が得
られたことを確認した。結晶格子定数については、試料
No.2は7.03オングストロームより小さかった
が、それを除くといずれも7.03〜7.10オングス
トロームであった。
【0026】次に、各合金試料について、70℃におい
てPCT測定を行った。本発明の実施例である試料N
o.5〜13と比べると、試料No.2は水素平衡圧力
が大きく、試料No.3および4はプラトー領域の平坦
性が悪かった。これらを除くといずれの合金試料につい
ても水素化特性はそれほど大きな違いはなく、水素吸蔵
量はH/M=1.0〜1.2であり、試料No.2〜4
に比べて10〜30%大きいことがわかった。また、い
ずれも真空熱処理することにより熱処理前と比べてプラ
トー領域の平坦性が良くなっており、水素吸蔵量も増大
した。
【0027】以上のような合金試料について、電気化学
的な充放電反応によるアルカリ蓄電池用負極としての電
極特性を評価するために単電池試験を行った。試料N
o.1〜13の合金を400メッシュ以下の粒径になる
ように粉砕し、30重量%の水酸化カリウム水溶液に8
0℃で1時間浸漬した後、水洗乾燥した。この合金粉末
1gと導電剤としてのカーボニルニッケル粉末3gおよ
び結着剤としてのポリエチレン微粉末0.12gを十分
混合撹伴し、プレス加工により24.5Φ×2.5mm
Hの円板状に成形した。これを真空中、130℃で1時
間加熱し、結着剤を溶融させて水素吸蔵合金電極とし
た。
【0028】この水素吸蔵合金電極にニッケル線のリー
ドを取り付けて負極とし、正極として過剰の容量を有す
る焼結式ニッケル極を、セパレータとしてポリアミド不
織布を用い、比重1.30の水酸化カリウム水溶液を電
解液として、25℃において、一定電流で充電と放電を
繰り返し、各サイクルでの放電容量を測定した。なお、
充電電気量は水素吸蔵合金1gあたり100mA×5時
間であり、放電は同様に1gあたり50mAで行い、
0.8Vでカットした。その結果を図1に示す。
【0029】図1はいずれも横軸に充放電サイクル数
を、縦軸に合金1gあたりの放電容量を示したものであ
り、図中の番号は(表1)の試料No.と一致してい
る。図1から試料No.1〜4は放電容量が0.2〜
0.28Ah/gと小さいことがわかる。これは、試料
No.1ではMn量が非常に多いので、アルカリ溶液に
浸漬するとMnの溶出量が非常に多く合金組成が大きく
ずれたため放電容量が小さくなったものと考える。ま
た、試料No.2〜4は水素吸蔵−放出量自体が小さい
ため放電容量も小さくなった。それに対して、本発明の
水素吸蔵合金を用いると、合金の均質性が非常に大きい
ので、いずれも放電容量が大きく0.37〜0.4Ah
/gであり、アルカリ溶液処理により合金表面が腐食さ
れにくくなったので、充放電サイクルを繰り返してもそ
の高容量を安定して持続できることがわかった。
【0030】さらに、これらの水素吸蔵合金電極を用い
て以下に示したような方法で密閉型ニッケル−水素蓄電
池を作製した。(表1)に示した本発明の合金の中から
試料No.5,8,11,13の4種類の合金を選び、
それぞれ400メッシュ以下の粉末にした後、上記と同
様の方法でアルカリ溶液処理し水洗乾燥した。そのよう
な各合金粉末をカルボキシメチルセルローズ(CMC)
の希水溶液と混合撹拌してペースト状にし、電極支持体
として平均ポアサイズ150ミクロン、多孔度95%、
厚さ1.0mmの発泡状ニッケルシートに充填した。こ
れを120℃で乾燥してローラープレスで加圧し、さら
にその表面にフッ素樹脂粉末をコーティングして水素吸
蔵合金電極を得た。
【0031】この電極をそれぞれ幅3.3cm、長さ2
1cm、厚さ0.40mmに調整し、リード板を所定の
2カ所に取り付けた。そして、正極およびセパレータと
組み合わせて円筒状に3層を渦巻き状にしてSCサイズ
の電槽に収納した。このときの正極は公知の発泡式ニッ
ケル極を選び、幅3.3cm、長さ18cmとして用い
た。この場合もリード板を2カ所に取り付けた。また、
セパレータは親水性を付与したポリプロピレン不織布を
使用し、電解液としては、比重1.20の水酸化カリウ
ム水溶液に水酸化リチウムを30g/l溶解したものを
用いた。これを封口して密閉形電池とした。この電池は
正極容量規制であり理論容量は3.0Ahにした。
【0032】このようにして作製した電池を通常の充放
電サイクル試験によって評価した。すなわち、充電は
0.5C(2時間率)で150%まで、放電は0.2C
(5時間率)で終止電圧1.0Vとし、20℃において
充放電サイクルを繰り返した。その結果、いずれの電池
もサイクルの初期は理論容量より実際の放電容量が低か
ったが、10〜15サイクルの充放電で理論容量の3.
0Ahに到達し、500サイクルまでの充放電試験にお
いて安定した電池性能を持続した。
【0033】ここで、本発明の合金組成について説明す
る。特願平2−174741号では、Mn量wを0<w
≦0.5、Cr量yを0<y≦0.4と規定した。これ
は、Mn量が0.5を越えるとアルカリ電解液中で合金
表面が腐食されやすく放電容量が低下するためである
が、その腐食を防ぐことができればMn量を0.5より
多くして合金の均質性を非常に大きくすることができ
る。そこで、アルカリ溶液に浸漬して予め合金表面のM
nを溶出させ、合金表面のMn濃度を低下させることに
より電解液中での合金表面の腐食を防ぐことができた。
しかし、Mn量が0.8を越えるとアルカリ溶液処理に
より多量のMnが溶出し合金組成が大きくずれてしまう
ので放電容量が小さくなる。したがって、Mn量wは
0.5<w≦0.8が適当である。さらに、合金の均質
性を非常に大きくするためにはMn量を増やすと同時に
Cr量を減少させなければならない。Crが含まれると
C14型Laves相(MgZn2 型ヘキサゴナル構
造)が混入しやすいからである。このCr量yを0<y
≦0.2にすればC14相の混入割合を非常に小さくす
ることができる。
【0034】MoおよびNiの作用については特願平2
−174741号で述べたことと同じであるが、本発明
ではMn量を増加させたために合金の均質性が非常に大
きいので、MoとNiの配合比率(z−x)はz−x≦
1.2であれば放電容量は大きくなる。
【0035】以上のことから、高容量かつ長寿命の水素
吸蔵合金電極を得るためには、本発明の合金組成の条
件、すなわち、ZrMnw Mox Cry Niz (ただ
し、0.5<w≦0.8,0.1≦x≦0.3,0<y
≦0.2,1.2≦z≦1.5であり、かつ2.0≦w
+x+y+z≦2.4)という一般式で示され、合金相
の主成分がC15(MgCu2 )型Laves相であ
り、かつその結晶格子定数(a)が、7.03オングス
トローム≦a≦7.10オングストロームであることが
重要であることがわかる。
【0036】(実施例2)市販のZr,Mn,V,M
o,Cr,Ni金属を原料として、アルゴン雰囲気中、
アーク溶解炉で加熱溶解することにより、(表2)に示
したような組成の合金を作製した。ただし、Mn量が
0.8以上のものはアーク炉で作製すると多量のMnが
蒸発し、目的合金を得ることが困難であるため、誘導加
熱炉で作製した。次いで、真空中、1100℃で12時
間熱処理し、合金試料とした。
【0037】
【表2】
【0038】この合金試料の一部はX線回折などの合金
分析および水素ガス雰囲気における水素吸収−放出量測
定(通常のP(水素圧力)−C(組成)−T(温度)測
定)に使用し、残りは電極特性評価に用いた。
【0039】試料No.1〜4は本発明と構成元素また
は組成比が異なる比較例であり、試料No.14〜23
は本発明の水素吸蔵合金のいくつかの実施例である。ま
ず、各合金試料について、X線回折測定を行った。その
結果、いずれの合金試料についても合金相の主成分はC
15型Laves相(MgCu2 型fcc構造)である
ことを確認したが、比較例である試料No.2〜4につ
いてはC15相以外の合金相の混入割合が大きいことが
わかった。特に、Cr量が0.3である試料No.3は
C15相以外の合金相の混入割合が非常に多かった。ま
た、真空熱処理後のものは熱処理前と比べるとfccの
ピークがより大きく鋭くなったので、熱処理することに
よりC15型Laves相の割合が増大し、合金の均質
性および結晶性も向上したことがわかった。特にMn量
が0.8以上のものについても均一組成の目的合金が得
られたことを確認した。結晶格子定数については、試料
No.2は7.03オングストロームより小さかった
が、それを除くといずれも7.03〜7.10オングス
トロームであった。
【0040】次に、各合金試料について、70℃におい
てPCT測定を行った。比較例である試料No.1,
2,4と比べると、本発明の実施例である試料No.1
4〜23は水素吸蔵−放出過程のヒステリシスが小さ
く、試料No.1,2,4の場合の1/5〜1/8であ
ることがわかった。また、試料No.14〜23の水素
吸蔵量はH/M=1.0〜1.2であり、試料No.2
〜4に比べて10〜30%大きいことがわかった。ま
た、いずれも真空熱処理することにより熱処理前と比べ
てプラトー領域の平坦性が良くなっており、水素吸蔵量
も増大したが、ヒステリシスには変化がなかった。
【0041】以上のような合金試料について、電気化学
的な充放電反応によるアルカリ蓄電池用負極としての電
極特性を評価するために単電池試験を行った。試料作製
方法および実験方法は実施例1と同じである。その結果
を図2に示す。図2はいずれも横軸に充放電サイクル数
を、縦軸に合金1gあたりの放電容量を示したものであ
り、図中の番号は(表2)の試料No.と一致してい
る。図2から試料No.1〜4は放電容量が0.2〜
0.28Ah/gと小さいことがわかる。これは、試料
No.1ではMn量が非常に多いので、アルカリ溶液に
浸漬するとMnの溶出量が非常に多く合金組成が大きく
ずれたため放電容量が小さくなったものと考える。ま
た、試料No.2〜4は水素吸蔵−放出量自体が小さい
ため放電容量も小さくなった。特に、試料No.3はC
r量が0.3と多いため、水素吸蔵−放出過程のヒステ
リシスは小さくなったが、C15相以外の合金相の混入
割合が増加したので水素吸蔵−放出量は小さくなった。
それに対して、本発明の水素吸蔵合金を用いると、ヒス
テリシスが非常に小さいので、いずれも放電容量が大き
く0.38〜0.41Ah/gであり、アルカリ溶液処
理により合金表面が腐食されにくくなったので、充放電
サイクルを繰り返してもその高容量を安定して持続でき
ることがわかった。
【0042】さらに、(表2)に示した本発明の合金の
中から試料No.14,17,20,23の4種類の合
金を選び、密閉電池試験を行った。この場合も電池作製
方法および実験方法は実施例1と同じである。その結
果、いずれの電池もサイクルの初期は理論容量より実際
の放電容量が低かったが、10〜15サイクルの充放電
で理論容量の3.0Ahに到達し、500サイクルまで
の充放電試験において安定した電池性能を持続した。
【0043】ここで、本発明の合金組成について説明す
る。MnおよびCrの作用については実施例1で述べた
ことと同じである。Vは原子半径が大きいので合金の結
晶格子定数を大きくし水素吸蔵−放出量を増大させる効
果があり、これはMoと同様であるが、さらに水素吸蔵
−放出過程のヒステリシスを小さくする効果も有してい
る。したがって、Moの一部をVで置換すれば、合金の
結晶格子定数を減少させることなくヒステリシスを小さ
くすることができ、その組成範囲はMo単独の場合と同
様に0<b<0.3,0<x<0.3,0.1≦b+x
≦0.3である。また、V,Mo,Crの配合比率がy
≦b+xであり、V,Mo,Niの配合比率がz−b−
x≦1.2であればC15相以外の合金相の割合を非常
に小さくし、合金の結晶格子定数を大きくすることがで
きるので、放電容量が非常に大きくなる。
【0044】以上のことから、高容量かつ長寿命の水素
吸蔵合金電極を得るためには、本発明の合金組成の条
件、すなわち、ZrMnwbMoxCryNiz(ただ
し、0.5<w≦0.8,0<b<0.3,0<x<
0.3,0<y≦0.2,1.2≦z≦1.5であり、
かつ0.1≦b+x≦0.3,2.0≦w+b+x+y
+z≦2.4)で示され、合金相の主成分がC15(M
gCu2 )型Laves相であり、かつその結晶格子定
数(a)が、7.03オングストローム≦a≦7.10
オングストロームであることが重要であることがわか
る。
【0045】上記実施例から明らかなように、本発明の
水素吸蔵合金電極は従来の水素吸蔵合金電極の合金組成
のMn量を増加しCr量を制限することにより合金の均
質性が大きく向上しているので、水素吸蔵−放出量が大
きくなる。そして、合金粉砕後アルカリ溶液に浸漬して
予め合金表面のMnを溶出させ、合金表面のMn濃度を
低下させることにより電解液中での合金表面の腐食を防
ぐことができるので、電気化学的にも多量の水素を吸蔵
−放出させることができる。また、本発明の水素吸蔵合
金電極はZr−Mn−Mo−Cr−Ni系合金のMoの
一部をVに置換することにより水素吸蔵−放出過程のヒ
ステリシスが小さくなるので、水素吸蔵量に対する水素
放出量の割合が増大する。したがって、これを負極とす
るアルカリ蓄電池は従来のこの種の電池に比べて長寿命
特性を損なわずに高容量化を図ることができる。
【0046】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、Z
r−Mn−Mo−Cr−Ni系水素吸蔵合金のMn量を
増加して合金の均質性を向上させることにより、さらに
放電容量が大きく、かつ長寿命である水素吸蔵合金電極
とすることができる。
【0047】また、Zr−Mn−Mo−Cr−Ni系水
素吸蔵合金のMoの一部をVに置換して水素吸蔵−放出
過程のヒステリシスを小さくすることにより、放電容量
が大きく、かつ長寿命である水素吸蔵合金電極とするこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例および従来例の単電池試験結
果を示す充放電サイクル特性図である。
【図2】本発明の一実施例および従来例の単電池試験結
果を示す充放電サイクル特性図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岩城 勉 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−63240(JP,A) 特開 昭64−60961(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 4/38 H01M 4/24 H01M 4/26

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式が、ZrMnw Mox Cry Ni
    z (ただし、0.5<w≦0.8,0.1≦x≦0.
    3,0<y≦0.2,1.2≦z≦1.5であり、かつ
    2.0≦w+x+y+z≦2.4)で示され、合金相の
    主成分がC15(MgCu2 )型Laves相であり、
    かつその結晶格子定数(a)が、7.03オングストロ
    ーム≦a≦7.10オングストロームである水素吸蔵合
    金またはその水素化物を用いた水素吸蔵合金電極。
  2. 【請求項2】 CrとMoの配合比率がy≦xであり、
    かつNiとMoの配合比率がz−x≦1.2である請求
    項1に記載の水素吸蔵合金電極。
  3. 【請求項3】 一般式が、ZrMnw b Mox Cry
    Niz (ただし、0.5<w≦0.8,0<b<0.
    3,0<x<0.3,0<y≦0.2,1.2≦z≦
    1.5であり、かつ0.1≦b+x≦0.3,2.0≦
    w+b+x+y+z≦2.4)で示され、合金相の主成
    分がC15(MgCu2 )型Laves相であり、かつ
    その結晶格子定数(a)が、7.03オングストローム
    ≦a≦7.10オングストロームである水素吸蔵合金ま
    たはその水素化物を用いた水素吸蔵合金電極。
  4. 【請求項4】 Cr、VおよびMoの配合比率がy≦b
    +xであり、かつNi、VおよびMoの配合比率がz−
    b−x≦1.2である請求項3に記載の水素吸蔵合金電
    極。
  5. 【請求項5】 一般式が、ZrMnw b Mox Cry
    Niz (ただし、0.5<w≦0.8,0≦b<0.
    3,0<x≦0.3,0<y≦0.2,1.2≦z≦
    1.5であり、かつ0.1≦b+x≦0.3,2.0≦
    w+b+x+y+z≦2.4)で示され、合金相の主成
    分がC15(MgCu2 )型Laves相であり、かつ
    その結晶格子定数(a)が、7.03オングストローム
    ≦a≦7.10オングストロームである合金を作製後、
    1000〜1300℃の真空中または不活性ガス雰囲気
    中で均質化熱処理を行うことを特徴とする水素吸蔵合金
    電極の製造方法。
  6. 【請求項6】 一般式が、ZrMnw b Mox Cry
    Niz (ただし、0.5<w≦0.8,0≦b<0.
    3,0<x≦0.3,0<y≦0.2,1.2≦z≦
    1.5であり、かつ0.1≦b+x≦0.3,2.0≦
    w+b+x+y+z≦2.4)で示され、合金相の主成
    分がC15(MgCu2 )型Laves相であり、かつ
    その結晶格子定数(a)が、7.03オングストローム
    ≦a≦7.10オングストロームである合金を作製後、
    前記合金を粉砕し、次いでアルカリ溶液中に浸漬するこ
    とを特徴とする水素吸蔵合金電極の製造方法。
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