JP3247505B2 - ハロゲン化芳香族化合物を分解する方法 - Google Patents

ハロゲン化芳香族化合物を分解する方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野及び目的】過去において、ポリ塩化
ビフェニール(以下PCBと略す)等のハロゲン化芳香
族化合物を利用し、その処置に困難を極めていることは
衆知であるが、本発明は、化学反応処理によリハロゲン
化芳香族化合物を安全に分解する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ハロゲン化芳香族化合物の除去或
いは分解に関して、多くの努力が成された。その数例を
示すと、アルカリ上の反応に関しては、U.S.P.
2,951,804で、アルミナーアルカリ法が示され
ている。更にU.S.P.4,532,028では、ア
ルキル或いはアルキレンスルホオキシドとポリオールと
の混合物中で、アルカリと50,000ppm以下のP
CBとを200℃以下で反応させて数ppmとする方法
が示されている。そのほか、ナトリウムの溶融物を用い
るカナダ特許408,116や、ポリエチレングリコー
ル(以下PEGと略す)を吸着したアルカリ土類金属を
用いるイタリア特許22,215等があるが、未だに実
質的に安全な濃度に除去することが実現化されていな
い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】先にあげた従来の技術
はそれぞれ特徴があり、かなり効果のあることになって
いるが、実際には、溶剤がアルカリ物質或いはアルカリ
金属に対して、120℃以上の温度ではとても耐えるも
のでないことは明白であり、工業的に実施できる技術と
いうことはできない。本発明者等は、この点に関して特
に多くの実験を行い、問題を解決するに至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、特別の高
沸点かつ耐熱アルカリ性の極性溶剤を選び、ハロゲン化
芳香族化合物とアルカリ物質とを100℃以上300℃
以下で接触させる方法が、ハロゲン化芳香族化合物を分
解する方法として、非常に効果的であることを見出し
た。
【0005】ここに選ばれた極性溶剤は、工業的によく
用いられるもので、毒性、危険性の少ないものである
が、何よりもハロゲン化芳香族化合物をよく溶解する性
質があることが知られている。しかし、ハロゲン化芳香
族化合物が少量、極端には数ppmに減じた場合、アル
カリ物質との反応は、従来の技術では効果が限定される
ことは予測された。そこで、この効果を高め、かつハロ
ゲン化芳香族化合物を実質的に消失せしめる目的で、従
来試みられなかった種類の極性溶剤とハロゲン化合物と
の相互作用につき、数多くの実験を重ねたところ、特に
従来試みられなかった高温では期待以上の効果が見出さ
れたのである。
【0006】しかしながら、極性溶剤の中でも効果には
差があり、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン
(以下、DMIと略す。)が効果的である。しかし、ス
ルフォランについては、後述する比較例において実証さ
れるように効果の観点から、かつ、余りに高沸点にすぎ
ることと高温での悪臭が作業を阻害するので好ましくな
い。さらに、エチレングリコール、ジエチレングリコー
ル(以下、DEGと略す。)、トリエチレングリコー
ル、PEG、トリメチレングリコール、ブチレングリコ
ールとこれらの低級アルキルエーテル類等も目的によっ
ては効果があるが、より厳密に除去を期待するときに
は、DMIの使用を容易とするための補助の目的で併用
して使うのが好ましい。
【0007】前記したことから、本発明は極性溶剤とし
て1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)
を使用するものであるこれ以外の極性溶剤について
も、広く検討を加えたが、いずれも安定性と効果の両面
を充たすものは見出されなかった。処理温度が100℃
以上では多少の効果のあることは当然であるが、多くは
望めない。特に、特定の添加物を使わなければ、150
℃乃至250℃で行われるのが好ましい。あまり高温に
なると、安定な耐アルカリ性溶剤であっても、有機物で
ある以上除々に分解することは避けられないのである。
除去作業を効果的にならしめる、さらなる因子は、アル
カリ物質との接の方法で、通常の攪拌装置として、反
応釜とかきまぜ器、或るいは充填搭と循環装置等が用い
られる。充填搭に単なる充填物の他に、吸着層を設け
て、効果を高めることも出来る。
【0008】本発明の方法を実施する最後の工程は、処
理済の極性溶剤からの食塩、アルカリの分離である。極
性溶剤には、アルカリ物質と反応物とを含むため、分離
後、再循環して使用される。除去されたハロゲン化芳香
族化合物がどのような構造になるかは、最初の化合物に
よって異なるので、簡単に明らかにし難いが、通常の化
学的常識からして、塩素は水酸基と入れ代わるか、アル
キルエーテル結合するかと考えられ、いずれもその最初
の構造から塩素を外すことが何より肝要である。従っ
て、アルカリ物質は1.1倍以上の過剰を使用すること
が望ましい。
【0009】本発明によって分解されるハロゲン化芳香
族化合物は、前記した1,3−ジメチル−2−イミダゾ
リジノン(DMI)からなる溶剤またはこれとポリエチ
レングリコール(PEG)などとの混合溶剤により希釈
された状態のものである
【0010】
【実施例】ハロゲン化芳香族化合物を分解する方法は、
以上のようにして行われるが、本発明の方法を基本に多
くの変法を検討したが、その各々について説明をするこ
とは、本発明の趣旨を明らかにするためには、必ずしも
適当でないので、以下に基本的な実施例を参考例と共に
表1、表2及び表3に示す。
【0011】
【表1】
【0012】
【表2】
【0013】
【表3】
【0014】実施例1 PCB凡そ1%を含むDMI 65g,PEG200
35gとの混合液に、2.6gの苛性カリ粉末を加え、
300mlのフラスコ中でよくかきまぜつつ、200℃
にて2時間保つた。ついで、室温に冷却して下層の固形
物を取り除き、液中のPCBを底質調査方法に準じ、G
C−ECDで分析したところ、0.5mg/l以下に減
少していた。
【0015】実施例2 表1に示す条件で実施例1と同様の処理を行ったとこ
ろ、残存PCBは0.5mg/l以下に減少していた。
【0016】実施例3 表1に示す条件で実施例1と同様の処理を行ったとこ
ろ、残存PCBは0.5mg/l以下に減少していた。
【0017】実施例4 表1に示す条件で実施例1と同様の処理を行ったとこ
ろ、残存PCBは0.5mg/l以下に減少していた。
【0018】実施例5 表1に示す条件で実施例1と同様の処理を行ったとこ
ろ、残存PCBは0.5mg/l以下に減少していた。
【0019】実施例6 表1に示す条件で実施例1と同様の処理を行ったとこ
ろ、残存PCBは0.5mg/l以下に減少していた。
【0020】実施例7 表2に示す条件で実施例1と同様の処理を行ってGC−
MS,SIM法によって分析したところ、残存PCBは
0.6mg/l以下に減少していた。
【0021】実施例8 表2に示す条件で実施例7と同様の処理を行ったとこ
ろ、残存PCBは0.1mg/l以下と良好な結果を得
た。
【0022】実施例9 表2に示す条件で実施例7と同様の処理を行ったとこ
ろ、残存PCBは0.1mg/l以下と良好な結果を得
た。
【0023】実施例10 表2に示す条件で実施例7と同様の処理を行ったとこ
ろ、残存PCBは0.1mg/l以下と良好な結果を得
た。
【0024】比較例1 PCB凡そ1%を含むDMI 35g,PEG200
65gとの混合液に、1.91gの苛性ソーダ粉末を加
え、300mlのフラスコ中で200℃にて2時間強く
かきまぜた。ついで、実施例1と同様に処理して、分析
したところ、表3の結果を得た。
【0025】比較例2 比較例1と同様にして、スルフォランを溶剤に用い、ア
ルカリにナトリウムエトキシドを用いて166℃にて2
時間かきまぜた結果を表3に示す。
【0026】比較例3 比較例1と同様にして、スルフォラン50g、DEG5
0gを溶剤に用い、アルカリに苛性ソーダ粉末を用い
て、205℃にて2時間かきまぜた結果を表3に示す。
【0027】
【発明の効果】本発明によって、小量であっても環境保
護上問題とされ、或いは人体に直接害を齎すと考えられ
ているハロゲン化芳香族化合物(主としてPCB)を、
実質的に害がないとされるまで、分解除去することが可
能となった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 矢野 恒夫 埼玉県飯能市川寺413−14 (56)参考文献 特開 昭49−126651(JP,A) 特表 昭58−500200(JP,A) 米国特許4910353(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07B 63/02 A62D 3/00 ZAB

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ハロゲン化芳香族化合物を15重量%以
    下含む1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンからな
    る溶剤を、アルカリ物質と100℃以上〜300℃以下
    で接触させたのち、沈殿物を前記溶剤から除去すること
    を特徴とするハロゲン化芳香族化合物を分解する方法。
  2. 【請求項2】 1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノ
    ンと、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ト
    リエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリ
    メチレングリコール、ブチレングリコール、これらの低
    級アルキルエーテルから選ばれた少なくとも1種、との
    混合溶剤であって、ハロゲン化芳香族化合物を15重量
    %以下含む前記混合溶剤を、アルカリ物質と100℃以
    上〜300℃以下で接触させたのち、沈殿物を前記混合
    溶剤から除去することを特徴とするハロゲン化芳香族化
    合物を分解する方法。
  3. 【請求項3】 ハロゲン化芳香族化合物が、ポリ塩化ビ
    フェニールとその類縁化合物である、請求項1または2
    に記載のハロゲン化芳香族化合物を分解する方法。
  4. 【請求項4】 アルカリ物質が、苛性ソーダ、苛性カ
    リ、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、
    水酸化カルシウムなる群から選ばれた、少なくとも一つ
    あるいは二つ以上の混合物であり、その使用割合が、含
    有ハロゲンの計算値の1.1倍以上であること、を特徴
    とする請求項1または2に記載のハロゲン化芳香族化合
    物を分解する方法。
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