JP3246958B2 - 多価アルコ−ルの(メタ)アクリル酸モノエステルの製造方法 - Google Patents

多価アルコ−ルの(メタ)アクリル酸モノエステルの製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はネオペンチル骨格を持つ
多価アルコ−ル、例えばペンタエリスリト−ル、ジペン
タエリスリト−ル、トリメチロ−ルプロパンの(メタ)
アクリル酸モノエステル(以下、モノ(メタ)アクリレ
−トという)を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】モノ(メタ)アクリレ−トは、従来公知
のエステル合成のなかで最も一般的な方法、すなわち多
価アルコ−ルと(メタ)アクリル酸との反応では合成が
困難で、反応の進行とともに多価アルコ−ルの(メタ)
アクリル酸ジエステル(以下、ジ(メタ)アクリレ−ト
という)、多価アルコ−ルの(メタ)アクリル酸トリエ
ステル(以下、トリ(メタ)アクリレ−トという)等が
多量に生成する。また、モノ(メタ)アクリレ−ト合成
する方法としては、まず多価アルコ−ルの完全エステル
を合成し、しかる後これに多価アルコ−ルを加え、触媒
存在下で加アルコ−ル分解を行う方法が考えられる。し
かしこの方法は反応が二段となり、操作が複雑で工業的
ではない。加えて、加アルコ−ル分解時の熱により(メ
タ)アクリル酸の重合物が生成するため重合性のビニル
基を持った不飽和カルボン酸とのエステルには向かな
い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記のように、従来の
方法では反応の進行とともに、ジ(メタ)アクリレ−
ト、トリ(メタ)アクリレ−ト等が多量に生成し、目的
とするモノ(メタ)アクリレ−トが選択性よく合成でき
ない。又、反応速度を遅くしてモノ(メタ)アクリレ−
トを優先的に合成する方法が考えられるが、重合性のビ
ニル基を持っているため(メタ)アクリル酸の重合物が
生成し、加えて反応速度を落とすと全体の収率(転化
率)が著しく低下するため効率的でない。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意検討を
行った結果、多価アルコ−ルと(メタ)アクリル酸を反
応させる際に、水を共存させると、モノ(メタ)アクリ
レ−トを選択性よく合成できることを見出し、本発明を
完成した。
【0005】すなわち本発明は
【化4】 (式中、R1およびR2 はメチロ−ル基、又は炭素数1
〜6のアルキル基を示し、mは1〜5の整数である。)
で表される多価アルコ−ルと
【化5】 (式中、R3は水素又はメチル基を表す。)で表される
(メタ)アクリル酸を酸触媒の存在下に反応させ、
【化6】 (式中、R1、R2およびR3は前記に同じ。)で表され
る多価アルコ−ルの(メタ)アクリル酸モノエステルを
製造するにあたり、反応系に水を存在させることを特徴
とする多価アルコ−ルの(メタ)アクリル酸モノエステ
ルの製造法を提供するものである。
【0006】一般的に、本発明の反応のようなエステル
化反応では水が存在することが嫌われ、(特に(メタ)
アクリル酸エステルの場合、水の存在はビニル基どうし
の重合を促進する。)反応を円滑に行うために反応によ
って生成した水を反応系外へ除去する操作が採られる。
かかる当業者の常識からすれば、水の存在下において反
応することにより目的とするモノ(メタ)アクリレ−ト
がより高収率で得られるということは、驚くべきことで
あり、予想しえないことである。
【0007】本発明において、化4の多価アルコ−ルと
しては、ペンタエリスリト−ル、ジペンタエリスリト−
ル、トリペンタエリスリト−ル等のペンタエリスリト−
ル類の他、トリメチロ−ルプロパン、ジトリメチロ−ル
プロパン、ジメチロ−ルヘプタン、トリメチロ−ルエタ
ン、ネオペンチルグリコ−ル等があげられ、それらのひ
とつまたは2つ以上の混合物でも良い。
【0008】水は多価アルコ−ルに対して少なくとも8
0重量%以上の共存させることが好ましい。この範囲未
満では目的とするモノ(メタ)アクリレ−トの生成量が
低下するだけでなく全体の収率も低下する。
【0009】(メタ)アクリル酸の使用量は、多価アル
コ−ルの水酸基当量あたり1モル以下が好ましく、更に
好ましくは0.4モル以下が好ましい。この範囲を超え
ると目的とするモノ(メタ)アクリレ−トの生成量が低
下するだけでなく全体の収率も低下する。
【0010】本発明のエステル化に使用する酸触媒は、
一般的なものが使用でき、例えば硫酸、塩酸、リン酸等
の鉱酸の他、P−トルエンスルホン酸などの有機酸、そ
のほかイオン交換樹脂等も用いることができる。酸触媒
の添加量は多価アルコ−ルに対して1〜10重量%、好
ましくは1〜5重量%である。
【0011】本発明のエステル化の際の溶媒は通常の場
合、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、ト
ルエン、キシレン等の不活性有機溶媒が用いられるが、
本発明においては実質的に添加された水が溶媒となるた
め、特に上記有機溶媒は使用しても使用しなくても良
い。
【0012】本発明のエステル化反応条件における、反
応温度は一般的に80〜120℃、好ましくは90〜1
10℃であり、反応時間は1〜6時間、好ましくは3〜
4時間が適当である。反応時間がこれより短いと未反応
が多くなり、反応時間がこれより長いとジ(メタ)アク
リレ−ト、トリ(メタ)アクリレ−トの生成が増加す
る。
【0013】本発明のエステル化反応において、(メ
タ)アクリル酸および生成したモノ(メタ)アクリレ−
トの重合を防止するために、一般的な(メタ)アクリル
酸エステルの合成時に使用する重合防止剤を反応系に存
在させる方法又は微量の酸素または空気を反応液中にバ
ブリングする方法を用いることができ、さらにはこれら
の方法を併用することもできる。使用する重合防止剤と
しては、例えばハイドロキノンモノメチルエ−テル、ハ
イドロキノン、フェノチアジン、タ−シャリ−ブチルカ
テコ−ル等が挙げられる。
【0014】このようにして生成したモノ(メタ)アク
リレ−トは、必要ならば反応混合物を冷却し析出する未
反応の多価アルコ−ルをろ過、除去した後、撹拌下に未
反応の(メタ)アクリル酸等をアルカリ金属の水酸化物
で中和して該アルカリ金属塩となし、引き続き冷却、ろ
過して反応混合物から未反応の多価アルコ−ルとともに
該アルカリ金属塩を系外に除去し、次いで得られたろ液
を濃縮、冷却、ろ過すれば、反応混合物から分離され
る。ここで重要なことは、上記の操作のみでは目的とす
るモノ(メタ)アクリレ−トと未反応の多価アルコ−ル
および該アルカリ金属塩とが充分に分離できないことで
ある。
【0015】そこで、本発明者らは、中和、冷却、ろ過
後の反応混合物を通常の有機溶媒例えば、ベンゼン、ト
ルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの芳香族系溶媒
を使用して抽出を試みたが、未反応の多価アルコ−ルお
よび該アルカリ金属塩と目的物のモノ(メタ)アクリレ
−トが同じ水層に残り、有機層に抽出されず、その結果
得られるモノ(メタ)アクリレ−トの品質は満足の行く
ものではなかった。
【0016】さらに、本発明者らは鋭意検討した結果、
適当な溶媒を選択することにより、上記問題を解決し
た。すなわち、上記有機溶媒のひとつまたは2つ以上の
混合物と炭素数3〜8の脂肪族アルコ−ルとを好ましく
は25〜75重量%:75〜25重量%の割合で混合し
た溶媒で、中和、冷却、ろ過後の反応混合物を抽出する
と、目的物であるモノ(メタ)アクリレ−トと未反応の
多価アルコ−ルおよび該アルカリ金属塩とを効率的に分
離できることを見出した。この抽出方法にしたがって得
られる水層と有機層を完全に分離した後、有機層から減
圧下に有機溶媒を除去することにより、目的物を得るこ
とができる。なお、溶媒除去に際し、前述の重合防止剤
を添加することができる。
【0017】上記のごとき本発明方法で得られた(メ
タ)アクリル酸モノエステルは、ビニル共重合可能な化
合物であるので、光硬化性モノマ−として、インキ、塗
料、接着剤等の希釈剤に有用であり、更にはその親水性
を利用した水系塗料分野へ利用できる。
【0018】
【実施例】以下に実施例を示しさらに詳細に本発明を説
明するが本発明はそれらの実施例に限定されるものでは
ない。なお、実施例および比較例における部は重量部を
意味する。
【0019】実施例1 冷却管、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた
反応装置に、ペンタエリスリト−ル136部、水136
部、メタクリル酸34.4部、ハイドロキノンモノメチ
ルエ−テル0.27部および硫酸4.08部を仕込み、
100〜105℃の反応温度で、還流下に3時間反応せ
しめた。この反応液について液体クロマトグラフィ−に
よる分析を行ったところ、ペンタエリスリト−ルモノメ
タクリレ−トとペンタエリスリト−ルジメタクリレ−ト
との重量比は、7.9:1であった。ついで、反応液を
冷却し未反応ペンタエリスリト−ルを析出させ、ろ過に
よりこれを除去した。なお回収されたペンタエリスリト
−ルは原料として再使用できる。反応ろ液を、10重量
%の苛性ソ−ダでpH7〜8まで中和し、さらに5℃ま
で冷却し触媒の硫酸と未反応のメタクリル酸をそれぞれ
塩として析出させてろ過、除去した。このようにして得
られたろ液を、n−ブタノ−ルとベンゼンとの1:1
(重量比)の混合溶媒を用いて抽出し、有機層を10To
rr、50〜60℃で減圧濃縮して、ペンタエリスリト−
ルモノメタクリレ−ト42.4部を得た。これはメタク
リル酸よりの収率52%に相当する。このものについ
て、ガスクロマトグラフィ−分析を行ったところ、ペン
タエリスリト−ルモノメタクリレ−トが91%含まれて
いた。
【0020】実施例2 ジペンタエリスリト−ル254部、水204部、メタク
リル酸206.4部、ハイドロキノンモノメチルエ−テ
ル0.5部および硫酸7.6部を使用したほかは実施例
1と同じ方法にて反応させた。その結果を表1に示し
た。
【0021】実施例3 トリメチロ−ルプロパン134部、水110部、アクリ
ル酸43.2部、ハイドロキノンモノメチルエ−テル
0.3部および硫酸4部を使用したほかは実施例1と同
じ方法にて反応させた。その結果を表1に示した。
【0022】実施例4 ペンタエリスリト−ル136部、水136部、メタクリ
ル酸172部、ハイドロキノンモノメチルエ−テル0.
27部および硫酸4.08部を使用したほかは実施例1
と同じ方法にて反応させた。その結果を表1に示した。
【0023】実施例5 ペンタエリスリト−ル136部、水136部、メタクリ
ル酸378.4部、ハイドロキノンモノメチルエ−テル
0.27部および硫酸4.08部を使用したほかは実施
例1と同じ方法にて反応させた。その結果を表1に示し
た。
【0024】比較例1 ペンタエリスリト−ル136部、メタクリル酸378.
4部、シクロヘキサン136部、ハイドロキノンモノメ
チルエ−テル0.3部および硫酸4部を使用したほかは
実施例1と同じ方法にて反応させた。その結果を表2に
示した。
【0025】比較例2 ペンタエリスリト−ル136部、メタクリル酸378.
4部、シクロヘキサン136部、ハイドロキノンモノメ
チルエ−テル0.3部および硫酸4部を使用し、反応に
より生成してくる水を系外に除去して通常のエステル化
反応を行った以外は実施例1と同じ方法にて反応させ
た。その結果を表2に示した。
【0026】比較例3 ジペンタエリスリト−ル254部、メタクリル酸20
6.4部、ベンゼン254部、ハイドロキノンモノメチ
ルエ−テル0.5部および硫酸7.6部を使用したほか
は実施例1と同じ方法にて反応させた。その結果を表2
に示した。
【0027】以下の表1および表2における、PE、D
PE、TMP、MAAおよびAAはそれぞれ次の化合物
を示す。 PE:ペンタエリスリトール DPE:ジペンタエリスリトール TMP:トリメチロールプロパン MAA:メタクリル酸 AA:アクリル酸
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【発明の効果】本発明によれば、複雑な反応条件を選ば
ずに容易に、ネオペンチル型多価アルコ−ルの(メタ)
アクリル酸モノエステルを選択性よく製造することがで
きる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 69/54 C07C 67/08

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 【化1】 (式中、R1およびR2 はメチロ−ル基、又は炭素数1
    〜6のアルキル基を示し、mは1〜5の整数である。)
    で表される多価アルコ−ルと 【化2】 (式中、R3は水素又はメチル基を表す。)で表される
    (メタ)アクリル酸を酸触媒の存在下に反応させ、 【化3】 (式中、R1、R2およびR3は前記に同じ。)で表され
    る多価アルコ−ルの(メタ)アクリル酸モノエステルを
    製造するにあたり、反応系に水を存在させることを特徴
    とする多価アルコ−ルの(メタ)アクリル酸モノエステ
    ルの製造法。
  2. 【請求項2】存在させる水の量が、使用する多価アルコ
    −ルに対して少なくとも80重量%以上である請求項1
    記載の製造法。
  3. 【請求項3】使用する多価アルコ−ルの水酸基当量に対
    する(メタ)アクリル酸の使用量が、1.0モル以下で
    ある請求項1記載の製造法。
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