JP3238955B2 - インジゴ類の製造方法 - Google Patents

インジゴ類の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インジゴ類の製造方法
に関するものである。更に詳しくは、2位および3位に
置換基を有しないインドール類と有機ヒドロ過酸化物を
触媒の存在下に液相で反応させることにより該インドー
ル類に対応するインジゴ類を製造する方法に関するもの
である。インジゴ類は染料として重要な化合物である。
【0002】
【従来の技術】現在、工業的なインジゴの製造方法とし
ては、アニリンとクロロ酢酸もしくはアニリン、青酸お
よびホルムアルデヒドを原料としてN−フェニルグリシ
ン塩を製造し、これを高温でアルカリ溶融してインドキ
シル化合物とした後、更にこれを空気酸化する方法が採
用されている。しかしながらこれらの方法は反応工程が
多段階で極めて複雑であるばかりでなく、大量の水酸化
カリウムと水酸化ナトリウムを使用しなければならない
ので、これらの回収再使用に際して多大のエネルギーを
消費し、またそのための特殊な装置が必要であるという
問題がある。そのため、より簡素なプロセスへの転換が
望まれている。
【0003】本発明者らは、2位および3位に置換基を
有しないインドール類を有機ヒドロ過酸化物と反応させ
て、簡便にインジゴ類を製造する方法を開示した(米国
特許第4992556 号、特開平1-215859、特開平2-269160お
よび特開平3-768 など)。しかしながら、これらの方法
でもインジゴ類の生成速度や収率はまだ充分なものでは
ない。
【0004】また、本発明の方法とは反応自体が異なっ
てはいるが、有機溶媒中で3-ホルミルインドール類を原
料として、これを過酸化物と反応させた後、更に酸化す
るという2段反応でインジゴ類を得た例がある(特開昭
54-124027)。しかしながらこの原料である3-ホルミル
インドール類は容易に入手できる化合物ではなく、イン
ドール類からいったん複雑な反応により合成する必要が
ある。しかも、インドール類の3位の炭素は酸素と結合
してインジゴ類を形成するので、この方法では3-ホル
ミル基の脱離が起こらなければならず、このことによる
副生成物の生成によって反応系が複雑になるなど、簡便
なインジゴ類の製造方法とはいえない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、簡便
なインジゴ類の製造方法を提供することである。本発明
のいま一つの課題は、インドール類を原料とし、前記し
た従来の技術より効率よくインジゴ類を製造する方法を
提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、工業的に
入手容易なインドール類と有機ヒドロ過酸化物との反応
により、効率よくインジゴ類を製造する反応系の開発を
目指し、鋭意検討を続けてきたところ、反応途中の反応
液にアルミニウム、鉄、銅および亜鉛金属化合物から選
ばれる金属の化合物を加え、かつ酸素供与性化合物を存
在させて反応を続けると、以後の生成速度が非常に高め
られ、なおかつ高収率で、原料のインドール類に対応す
るインジゴ類が得られることを見いだし、本発明を完成
させるに至った。
【0007】すなわち本発明は、2位および3位に置換
基を有しないインドール類と有機ヒドロ過酸化物を触媒
の存在下に液相で反応させて該インドール類に対応する
インジゴ類を製造するに際し、反応途中の反応液にアル
ミニウム、鉄、銅および亜鉛金属化合物から選ばれる少
なくとも一種以上の金属の化合物を加え、かつ酸素供与
性化合物を存在させることによって、以後のインジゴ類
の生成速度を高めることを特徴とするインジゴ類の製造
方法である。
【0008】本発明の方法では、インドール類はその2
位の炭素どうしが二重結合で二量化し、またその3位の
炭素は酸素と結合を作ってインジゴ類を生成するため、
2位および3位に置換基を有しているとインジゴ類の生
成が妨害される。従って本発明の方法における原料のイ
ンドール類は、2位および3位に置換基を有してはなら
ない。そのような2位および3位に置換基を有しないイ
ンドール類とは、例えば、インドールをはじめとし、1
−メチルインドール、4−エチルインドール、5−メチ
ルインドール、6−メチルインドール、6−イソプロピ
ルインドール、7−メチルインドール、4,5-ジメチルイ
ンドールなどの炭素数1〜10のアルキル基を1〜4個
有するアルキルインドール類であり、4−シクロヘキシ
ルインドール、5−シクロペンチルインドールなどの炭
素数3〜12のシクロアルキル基を1〜4個有するシク
ロアルキルインドール類であり、5−フェニルインドー
ル、6-β-ナフチルインドールなどの炭素数6〜30の
アリール基またはアルキル置換アリール基を1〜4個有
するアリールインドール類であり、
【0009】4−クロロインドール、5−クロロインド
ール、5,7-ジクロロインドール、5−ブロモインドー
ル、6−ブロモインドール、5,7-ジブロモインドール、
4−クロロ−5−ブロモインドールなどの1〜4個のハ
ロゲン原子を有するハロゲン化インドール類であり、4
−ヒドロキシインドール、5−ヒドロキシインドール、
4,5-ジヒドロキシインドールなどの1〜4個のヒドロキ
シ基を有するヒドロキシインドール類であり、4−メト
キシインドール、5−ベンジルオキシインドールなどの
炭素数1〜10のアルコキシ基を1〜4個有するアルコ
キシインドール類であり、5−フェノキシインドールな
どの炭素数6〜30のフェノキシ基を1〜4個有するフ
ェノキシインドール類であり、4−クロロ−5−エチル
インドール、6−クロロ−4−メチルインドール、4−
ブロモ−5−エチルインドール、5−ブロモ−4−メチ
ルインドールなどの1〜3個のハロゲン原子および炭素
数1〜10のアルキル基を1〜3個有するハロゲン化ア
ルキルインドール類であり、
【0010】4−ニトロインドール、5−ニトロインド
ール、7−ニトロインドールなどの1〜4個のニトロ基
を有するニトロインドール類であり、1−ベンゾイルイ
ンドール、4−アセチルインドールなどの炭素数2〜2
0のアシル基を1〜4個有するアシルインドール類であ
り、1−アセトキシインドール、4−ベンゾイルオキシ
インドールなどの炭素数2〜20のアシルオキシ基を1
〜4個有するアシルオキシインドール類であり、インド
ール−5−カルボン酸などのインドールカルボン酸類ま
たはそのエステル類であり、5−N,N−ジメチルアミ
ノインドールなどのアルキル部分が炭素数1〜10であ
るN,N−ジアルキルアミノ基を1〜4個有するN,N
−ジアルキルアミノインドール類であり、スルホン化イ
ンドール類などである。更に、上記した置換基を2種類
以上有しているインドール類も含まれる。この他 、2
位および3位以外の位置には反応を阻害しないものであ
れば置換基を有していてもよい。これらのインドール類
の中でも、インドール、アルキルインドール類およびハ
ロゲン化インドール類が好ましく、このうちインドール
がより好ましい。また本発明の方法における有機ヒドロ
過酸化物とは、ヒドロペルオキシ基、式(1)〔化1〕
【0011】
【化1】 を有する有機化合物のことである。例えば、デ・スワー
ン(D.Swern )著,オーガニック・ペルオキシド(Orga
nicPeroxides) Vol.II, ウィリー・インターサイエンス
(Wiley-Interscience ) 刊(1971年),107-127頁の表
中、または、エイ・ジー・デービス(A.G.Davies)著,
オーガニック・ペルオキシド(Organic Peroxides),ブ
ッターワース(Butterworths)刊 (1961年),9-33 頁の
表中に挙げられているようなものである。これらのう
ち、例えば、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド、
1−フェニルエチルヒドロペルオキシド(慣用名エチル
ベンゼンヒドロペルオキシド)、1−メチル−1−フェ
ニルエチルヒドロペルオキシド(慣用名クメンヒドロペ
ルオキシド)、ビス(1−メチルエチル)フェニルヒド
ロペルオキシド、1−メチル-1−(4−メチルシクロ
ヘキシル)エチルヒドロペルオキシド、2,5-ジメチルヘ
キサン-2,5- ジヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメ
チルブチルヒドロペルオキシドなどのような、アルキル
部分の炭素数が3〜30である2級または3級のアルキ
ルヒドロ過酸化物が好ましい。これらの有機ヒドロ過酸
化物は単独で用いても、2種以上を混合して同時に用い
ても、または2種以上を順次用いても構わない。 さら
には、これらの有機ヒドロ過酸化物としては、例えばイ
ソプロピルベンゼンと酸素含有ガスとの組み合わせな
ど、反応系内でこれらの有機ヒドロ過酸化物を発生させ
ることのできる成分の組合せであってもよい。これらの
有機ヒドロ過酸化物の使用量は特に限定されるものでは
ないが、通常当該インドール類1モルに対して0.01ない
し100モルの範囲であり、好ましくは0.1ないし20
モルの範囲であり、更に好ましくは0.2 ないし10モル
の範囲である。
【0012】本発明の方法における触媒とは、2位およ
び3位に置換基を有しないインドール類と有機ヒドロ過
酸化物からインジゴ類への反応を効率よく進行させれば
どのような触媒であってもよい。このような触媒のう
ち、好ましい触媒としては、周期律表の4族、5族およ
び6族からなる群から選ばれる金属の化合物が挙げら
れ、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バ
ナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデンまた
はタングステンの金属の化合物であり、より具体的に
は、例えば、これらの金属のハロゲン化物、オキシハロ
ゲン化物、酸化物、複合酸化物、硫化物、硼化物、りん
化物、水酸化物、オキシ水酸化物、シアノ錯塩や、硫
酸、硝酸またはりん酸などの無機酸の塩や、チタン酸、
モリブデン酸、タングステン酸、モリブデン酸アンモニ
ウムもしくはモリブデン酸ナトリウムなどの金属オキシ
酸またはそれらの塩、また、りんモリブデン酸、珪タン
グステン酸もしくはりんモリブデン酸ナトリウムなどの
ヘテロポリ酸またはそれらの塩、などのような無機化合
物であり、これらの金属の酢酸、蓚酸、安息香酸、ナフ
テン酸などの有機酸の塩、エチルアルコールやイソプロ
ピルアルコールなどのアルコキシド、フェノールやメタ
クロロフェノールなどのフェノキシドなどのような少な
くとも一部に有機基を有する化合物であり、またはこれ
らの金属のカルボニル錯体、アミン類の錯体、ピリジン
やビピリジルなどのピリジン錯体、オキソ錯体、システ
インやジチオカテコールなどのチオレート錯体、スルフ
ィド錯体、ジチオカルバメート錯体、チオシアネート錯
体、イソシアネート錯体、ニトロシル錯体、トリフェニ
ルホスフィンや1,2-ジフェニルホスフィノエタンなどの
ホスフィン錯体、ホスホリル錯体、フタロシアニン錯
体、ポルフィリン錯体、ニトリル錯体、エーテル錯体、
ケトン錯体、アセチルアセトンなどのβ−ケトカルボニ
ル錯体、アルキルまたはアレンの錯体、オレフィン錯
体、シクロペンタジエニル錯体などの錯体化合物であ
る。
【0013】さらには以上のような化合物の複数の種類
に渡って分類されるような化合物などが挙げられる。こ
れらの化合物は単独でもまたは2種以上を同時に使用す
ることもできる。また、反応系内でこれらの化合物を発
生させることのできる成分の組合せであってもよい。こ
れらの化合物は、反応混合液に溶解していることが好ま
しいが、一部または全部が不溶であっても差し支えな
い。またこれらの触媒は反応に用いる溶媒と同種または
異種の少量の溶媒にあらかじめ溶解または懸濁させた触
媒液として用いることもできる。これらの化合物のう
ち、モリブデンの化合物が好ましい。これらの化合物の
使用量は特に制限はないが、通常インドール類1モルに
対して0.5 モル以下であり、好ましくは0.000001ないし
0.1 モルの範囲であり、更に好ましくは0.00001 ないし
0.1 モルの範囲である。
【0014】本発明の方法においては、反応途中の反応
液にアルミニウム、鉄、銅および亜鉛金属化合物から選
ばれる少なくとも一種以上の金属の化合物を加え、かつ
酸素供与性化合物を存在させて反応を行う。
【0015】アルミニウム、鉄、銅および亜鉛金属化合
物とは、これらの金属の例えば無機化合物、有機基を有
する化合物、無機錯体化合物、有機金属錯体化合物など
であり、具体的には、例えば塩化第一鉄、塩化亜鉛、臭
化第二鉄、フッ化亜鉛、ヨウ化アルミニウムなどのハロ
ゲン化物であり、例えばオキシ塩化鉄、オキシ塩化銅な
どのオキシハロゲン化物であり、例えば水酸化アルミニ
ウム、水酸化第二鉄、水酸化第二銅、水酸化亜鉛などの
水酸化物であり、例えばオキシ水酸化アルミニウム、オ
キシ水酸化第二鉄などのオキシ水酸化物であり、例えば
硫酸第二鉄、硫酸銅などの硫酸塩であり、例えば硝酸ア
ルミニウム、硝酸亜鉛などの硝酸塩であり、例えばリン
酸アルミニウム、リン酸第二銅などのリン酸塩であり、
例えばホウ酸鉄、ホウ酸亜鉛などのホウ酸塩であり、例
えば炭酸鉄、炭酸銅、炭酸亜鉛などの炭酸塩であり、例
えばチタン酸鉄、モリブデン酸銅、タングステン酸亜鉛
などの金属オキシ酸の塩であり、さらにはこれらの金属
の酸化物、複合酸化物、硫化物、リン化物、ホウ化物な
ど、これらの金属の無機化合物であり、また、例えば酢
酸、蓚酸、安息香酸、ナフテン酸などのカルボン酸の塩
であり、例えばエチルアルコールやイソプロピルアルコ
ールなどのアルコキシドであり、例えばフェノールやメ
タクロロフェノールなどのフェノキシドなどの有機基を
有する化合物であり、また、例えばこれらの金属のシア
ノ錯体、イソシアネート錯体、チオイソシアネート錯
体、ニトロシル錯体などの無機錯体化合物であり、さら
にはこれらの金属の例えばカルボニル錯体、フタロシア
ニン錯体、ポルフィリン錯体、ニトリル錯体、エーテル
錯体、ケトン錯体、β-ケトカルボニル錯体、アルキル
またはアレン錯体、オレフィン錯体、シクロペンタジエ
ニル錯体などの有機金属錯体化合物などが挙げられる。
【0016】これらの反応途中の反応液に加えるアルミ
ニウム、鉄、銅および亜鉛金属化合物から選ばれる金属
の化合物は単独で用いても、また2種以上を混合して用
いてもかまわない。またこれらの金属の化合物は、例え
ば水やアルコールなどの溶剤にいったん溶解もしくは懸
濁させた後に用いてもよい。これらの金属の化合物のう
ち、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、水酸化亜鉛な
どのこれらの金属の水酸化物、炭酸鉄、炭酸銅、炭酸亜
鉛などのこれらの金属の炭酸塩および塩化亜鉛、臭化第
二鉄などのこれらの金属のハロゲン化物が好ましい。こ
れらの金属の化合物の使用量は特に限定されるものでは
ないが、通常該インドール1モルに対して50モル以下
であり、好ましくは0.0001ないし10モルの範囲であ
り、更に好ましくは0.001 ないし2モルの範囲である。
【0017】本発明の方法において、反応途中の反応液
に存在させるもう一方の化合物である酸素供与性化合物
とは、例えばターシャリーブチルヒドロペルオキシド、
1−フェニルエチルヒドロペルオキシド、1−メチル−
1−フェニルエチルヒドロペルオキシド、ビス(1−メ
チルエチル)フェニルヒドロペルオキシド、1−メチル
−1−(4−メチルシクロヘキシル)エチルヒドロペル
オキシド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5- ジヒドロペルオ
キシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシ
ドなどの有機ヒドロ過酸化物であり、過酸化水素であ
り、酸素、空気、オゾンおよびそれらを、例えば、二酸
化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性気体で
希釈した気体であり、また、例えば、過酢酸、過プロピ
オン酸、過安息香酸、メタクロロ過安息香酸、パラクロ
ロ過安息香酸などの過カルボン酸などが挙げられる。こ
れらの酸素供与性化合物のうち有機ヒドロ過酸化物、過
酸化水素および酸素含有気体が好ましい。
【0018】これらの酸素供与性化合物は単独で用いて
も、また2種以上を同時に用いてもかまわない。アルミ
ニウム、鉄、銅および亜鉛金属化合物から選ばれる金属
の化合物を加える時点において反応液中に反応開始時に
使用した有機ヒドロ過酸化物が残存している場合には、
この有機ヒドロ過酸化物をそのまま酸素供与性化合物と
して作用させてもよいが、場合によってはこの有機ヒド
ロ過酸化物をさらに供給してもよいし、また別の酸素供
与性化合物を新たに供給してもよい。またこれらの金属
の化合物を加える時点において反応液中に反応開始時に
使用した有機ヒドロ過酸化物が残存していない場合に
は、反応液に酸素供与性化合物を新たに供給する。反応
液に酸素供与性化合物を供給する際には、必要量を一度
に加えてもよいし、連続的または間欠的に供給してもよ
い。これらの酸素供与性化合物の使用量は特に限定され
るものではないが、通常当該インドール類1モルに対し
て0.01ないし50モルの範囲であり、好ましくは0.1な
いし10モルの範囲であり、更に好ましくは0.2 ないし
5モルの範囲である。
【0019】本発明の方法においては、反応途中の反応
液にアルミニウム、鉄、銅および亜鉛金属化合物から選
ばれる少なくとも一種以上の金属の化合物を加えかつ酸
素供与性化合物を存在させると、以後のインジゴ類の生
成速度がそうしない場合に比べ、数段高くなる。本発明
の方法においては、反応途中の反応液にこれらの金属の
化合物を加えることが重要であり、反応開始時に存在さ
せても効果は発現しないし、場合によっては反応が著し
く阻害されることもある。
【0020】本発明の方法にいう反応途中とは、反応開
始後ある時間を経過した時点であり、反応液にアルミニ
ウム、鉄、銅および亜鉛金属化合物から選ばれる少なく
とも一種以上の金属の化合物を加えかつ酸素供与性化合
物を存在させると、以後のインジゴ類の生成速度が高ま
る効果が発現する時点である。その時点は原料のインド
ール類、有機ヒドロ過酸化物、触媒、使用する場合の溶
媒および使用する場合のカルボン酸類などの種類や量お
よび反応温度などにより異なり一様ではない。しかしな
がら通常は反応開始後30時間以内であり、好ましくは
反応開始後0.01ないし15時間の範囲であり、より好ま
しくは反応開始後0.1 ないし6時間の範囲である。
【0021】反応液にアルミニウム、鉄、銅および亜鉛
金属化合物から選ばれる少なくとも一種以上の金属の化
合物を加えた以後の反応時間は、加えたこれらの金属の
化合物や存在させる酸素供与性化合物などの種類や量お
よび反応温度などにより異なり一様ではない。しかしな
がら通常は5時間以内であり、好ましくは0.01ないし2
時間の範囲である。 反応液にアルミニウム、鉄、銅お
よび亜鉛金属化合物から選ばれる少なくとも一種以上の
金属の化合物を加えるまでの反応温度は原料のインドー
ル類、有機ヒドロ過酸化物、触媒、使用する場合の溶媒
および使用する場合のカルボン酸類などの種類や量など
により異なり一様ではない。しかしながら通常は零下1
0ないし200℃の範囲であり、好ましくは10ないし
150℃の範囲であり、更に好ましくは40ないし11
0℃の範囲である。反応液にこれらの金属の化合物を加
えた後の反応温度もまた、加えたこれらの金属の化合物
や存在させる酸素供与性化合物の種類や量などにより異
なり一様ではない。しかしながら通常は零下20ないし
200℃の範囲であり、好ましくは零下10ないし15
0℃の範囲であり、更に好ましくは0ないし110℃の
範囲である。これらの金属の化合物を加える前後の反応
温度は同じ場合もあるし、異なる場合もある。
【0022】本発明の方法では反応は液相で行われる。
反応は無溶媒で実施しうる場合もあるが、通常は溶媒の
存在下で実施される。使用する場合の溶媒としては反応
を阻害しなければどのような溶媒でもかまわない。その
ような溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、n−ペン
タン、n−ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族また
は脂環族炭化水素類であり、ベンゼン、トルエン、キシ
レン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素類
であり、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼ
ン 、ジクロロベンゼンなどの脂肪族または芳香族ハロ
ゲン化合物であり、ジエチルエーテル、ジノルマルブチ
ルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラ
ン、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテ
ル類であり、メタノール、エタノール、ベンジルアルコ
ール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、
ターシャリーブタノール、ターシャリーアミルアルコー
ル、プロピレングリコールなどのアルコール類であり、
アセトン、エチルメチルケトン、アセトフェノンなどの
ケトン類であり、酢酸エチルやプロピオン酸エチルなど
のエステル類であり、ニトロベンゼンなどの芳香族ニト
ロ化合物類などが挙げられる。これらは単独でもまたは
2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの溶
媒の使用によって、反応混合液が均一相となっても不均
一な複数の相となっても構わない。これらの溶媒のう
ち、イソプロピルアルコール、2−ブチルアルコール
、4−メチル−2−ペンタノールおよびシクロヘキサ
ノールなどの2級アルコール、もしくはターシャリーブ
タノール、ターシャリーアミルアルコール、2−フェニ
ル−2−プロパノールおよび1−メチルシクロヘキサノ
ールなどの3級アルコールが好ましい。
【0023】本発明の方法においては、反応開始時から
カルボン酸類を存在させると反応成績を向上させるので
好ましい。このようなカルボン酸類としては、例えば、
蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ステアリン酸、フェニル酢
酸、オレイン酸もしくは桂皮酸などの脂肪族カルボン
酸、または安息香酸、パラメチル安息香酸、メタクロロ
安息香酸もしくはパラヒドロキシ安息香酸などの芳香族
カルボン酸などであり、これらのうち、酢酸、プロピオ
ン酸または安息香酸が好ましい。
【0024】本発明の方法における反応の実施方式は特
に限定されるものではなく、インドール類、有機ヒドロ
過酸化物、触媒、使用する場合の溶媒および使用する場
合のカルボン酸類などが効果的に混合され、かつアルミ
ニウム、鉄、銅および亜鉛金属化合物から選ばれる少な
くとも一種以上の金属の化合物を加えた後は、反応液と
これらの金属の化合物、酸素供与性化合物などが効果的
に混合され接触される方法であれば如何なる方法でもよ
く、回分式、半回分式または連続流通式のいずれでも構
わない。反応は場合によって減圧、常圧または加圧の何
れでも実施できる。本発明の方法において、反応終了後
の反応生成物を常用の方法に従って処理することにより
インジゴ類が得られる。通常、反応終了後生成したイン
ジゴ類はその多くが析出しており、濾過、遠心分離また
はデカンテーションなどの通常の固液分離の操作により
容易に固体として取り出すことができる。インジゴ類の
析出量が不十分な場合には、より多く析出させるため反
応液を濃縮した後取り出すこともできる。本発明の方法
により得られるインジゴ類は、原料のインドール類と対
応しており、インジゴ類の芳香環上および窒素原子上に
は原料のインドール類と同一の置換基を同一の位置に有
するものである。
【0025】
【実施例】次に実施例により本発明を更に詳しく説明す
るが、これらは限定的ではなく単に説明のためと解され
るべきである。 実施例1 撹拌機、温度計および冷却管を装着した内容積300 ミリ
リットルの3ッ口フラスコにインドール10.0 グラム(8
5.4 ミリモル)、七モリブデン酸六アンモニウムのエチ
レングリコール溶液(モリブデン金属として5.55重量%
含有)73.8ミリグラム(モリブデン金属換算で0.043 ミ
リグラム原子) 、ターシャリーブチルアルコール150 グ
ラム、82重量%の1−メチル−1−フェニルエチルヒド
ロペルオキシド(慣用名クメンヒドロペルオキシド)の
クメン溶液(以降、単にCHP溶液と略称する)34.86
グラム(クメンヒドロペルオキシド換算で187.8ミリモ
ル)および酢酸0.51グラム(8.5 ミリモル) を一括して
仕込んだ。この液をオイルバスにより加熱し、反応を開
始させた。反応液は穏やかに還流させ、撹拌しながら反
応を続けた。反応初期の液温は86.5℃であった。反応開
始時は反応系は均一であったが反応の進行とともに藍色
の固体が徐々に析出してきた。反応開始後3時間を経過
した時点において、塩化亜鉛1.16グラム(8.5 ミリモ
ル)を反応液に加え、更に15分間反応させた。尚、塩化
亜鉛を加える直前に少量の反応液をぬきとり、高速液体
クロマトグラフィーによりクメンヒドロペルオキシドの
残存量を分析したところ、反応液中には31.2ミリモルの
クメンヒドロペルオキシドが存在していた。液温は塩化
亜鉛を加える直前は85.2℃であったが、加えた後は84.0
℃となった。反応は塩化亜鉛を加える前までが3時間、
加えた後が15分間であり、反応時間は合計3時間15分で
ある。反応終了後、反応液を濾過し固体を少量のターシ
ャリーブチルアルコールで洗浄後、10重量%の塩酸水溶
液100 ミリリットルで固体を洗浄し、更に少量の水およ
びメタノールで洗浄後、50℃で減圧乾燥させて藍色の固
体を9.04グラム得た。この固体は、元素分析およびIR
分析の結果インジゴであった。仕込んだインドールに対
する単離したインジゴのモル収率(以降、単にインジゴ
収率と略称する)は80.7%であった。この結果を後述す
る比較例1〜6の結果と合わせて表1に示した。
【0026】
【表1】 以下、表1により反応途中の反応液にアルミニウム、
鉄、銅および亜鉛金属化合物から選ばれる少なくとも一
種以上の金属の化合物(以降、単に途中添加金属化合物
と略称する)を加えかつ酸素供与性化合物を存在させる
と、以後のインジゴの生成速度が高まる事を説明する。
【0027】後述の比較例1の結果から、反応途中の反
応液に途中添加金属化合物を加えず反応開始後3時間で
反応を終えると、インジゴが収率65.7%で得られる。本
実施例においてはこの反応開始後3時間の反応液に塩化
亜鉛を加えると、15分後にはインジゴが収率80.7%で得
られているのに対し、途中添加金属化合物を加えないで
更に同じく15分間反応を続けると、後述の比較例2に示
されるようにインジゴは収率67.4%でしか得られない。
すなわち、反応開始後3時間の反応液に塩化亜鉛を加え
るとその後15分間でインジゴ収率が15.0%増加したのに
対し、3時間後の反応液に途中添加金属化合物を加えな
いで反応を続けるとその後15分間ではインジゴ収率はわ
ずか1.7 %しか増加しない。従って、インジゴの生成速
度の目安となる単位時間当たりのインジゴ収率の増加
(以降、平均インジゴ生成速度と称する)は、反応開始
後3時間以降の15分間については、反応液に塩化亜鉛を
加えた場合は毎分1.00%、途中添加金属化合物を加えな
いで反応を続けた場合は毎分0.113 %となり、反応途中
の反応液に塩化亜鉛を加えると、加えない場合に比べ、
この15分間ではインジゴの生成速度が8.8 倍も高くなっ
た。 また、反応途中の反応液に途中添加金属化合物を
加えないで本実施例と同程度の収率でインジゴを得るに
は、比較例5に示されるように反応開始後7時間を要す
る。このときの反応開始後3時間以降の4時間のインジ
ゴ収率の増加は15.1%、平均インジゴ生成速度は毎分0.
063 %である。よって、本実施例および比較例5のいず
れの場合も同程度の高収率でインジゴを得ているが、反
応開始後3時間以降のインジゴ生成速度を比べると、反
応開始後3時間の反応液に塩化亜鉛を加えた本実施例の
場合、途中添加金属化合物を加えない比較例5の場合の
15.9倍もの速さになっている。
【0028】比較例1〜6 実施例1において反応途中の反応液に塩化亜鉛を加えず
に、反応時間を表1に示した時間に変えた以外は、すべ
て実施例1と同様に反応および後処理を行った。結果は
実施例1の結果とともに表1に示した。
【0029】比較例7 実施例1と同量の塩化亜鉛を、反応開始3時間後ではな
く、反応開始時に加えた以外は実施例1とまったく同様
に反応させた。反応開始後3時間15分を経過した時点に
おいて、反応を止め実施例1と同様に後処理を行った。
インジゴ収率は52.6%であり途中添加金属化合物を加え
ずに3時間15分反応した比較例2のインジゴ収率よりも
14.8%低かった。
【0030】実施例2〜6 実施例1における、塩化亜鉛の代わりに、表2に示す途
中添加金属化合物の種類とその量を用いた以外はすべて
実施例1と同様にした。結果を実施例1の結果とともに
表2に示した。
【0031】
【表2】 何れの実施例においても、途中添加金属化合物添加後15
分間の平均インジゴ生成速度は実施例1と同様に高く、
またインジゴの収率も実施例1と同程度であった。
【0032】実施例7 撹拌機、温度計および冷却管を装着した内容積400 ミリ
リットルの3ッ口フラスコにインドール10.0 グラム(8
5.4 ミリモル)、七モリブデン酸六アンモニウム四水和
物30.1 ミリグラム(モリブデン金属換算で0.17 ミリグ
ラム原子) 、ターシャリーアミルアルコール200 グラ
ム、73重量%1-フェニチルヒドロペルオキシド(慣用名
エチルベンゼンヒドロペルオキシド)のエチルベンゼン
溶液45.24グラム(エチルベンゼンヒドロペルオキシド
換算で239.04ミリモル)およびプロピオン酸1.26グラム
(17.0ミリモル)を一括して仕込んだ。この液をオイル
バスにより加熱し、反応を開始させた。反応温度は90℃
に保ち、撹拌しながら反応を続けた。反応開始後2時間
を経過した時点において、反応液をただちに水浴により
40℃に冷却した。この反応液に、4.6 グラムの水に塩基
性炭酸亜鉛2.04 グラム(亜鉛金属換算で17.0ミリグラ
ム原子)を懸濁させたものを加え、更に15分間40℃で反
応させた。反応時間は合計で2時間15分である。尚、塩
基性炭酸亜鉛を加える直前に少量の反応液をぬきとり、
高速液体クロマトグラフィーによりエチルベンゼンヒド
ロペルオキシドの残存量を分析したところ、反応液中に
は120.17ミリモルのエチルベンゼンヒドロペルオキシド
が存在していた。反応終了後、反応液を濾過し固体を少
量のターシャリーアミルアルコールで洗浄後、10重量%
塩酸水溶液100 ミリリットルで固体を洗浄し、更に少量
の水とメタノールで洗浄後、50℃で減圧乾燥させてイン
ジゴを8.69グラム得た。インジゴ収率は77.6%であっ
た。後の比較例8および比較例9で述べるように、本実
施例と同様であるが反応途中の反応液に途中添加金属化
合物を加えず、反応開始後2時間および2時間15分(本
実施例と同様に最後の15分は40℃)で反応を終えると、
インジゴ収率はそれぞれ68.0%、68.9%となる。よっ
て、反応開始後2時間以降の15分間のインジゴ収率の増
加は本実施例の場合が9.6%、比較例9の場合が0.9%と
なるので、この間の平均インジゴ生成速度は、塩基性炭
酸亜鉛を加えた本実施例の場合が毎分0.64%、加えなか
った比較例9の場合が毎分0.06%となり、塩基性炭酸亜
鉛を加えた以降の15分間の生成速度は、加えなかった場
合に比べ、10.7倍も高い。
【0033】比較例8 実施例7とまったく同様の条件で、反応開始2時間後に
反応液に塩基性炭酸亜鉛を加えることなくそのまま反応
を終えた。実施例7と同様に後処理を行ったところイン
ジゴを7.61グラム得た。インジゴ収率は68.0%であっ
た。
【0034】比較例9 実施例7とまったく同様の条件で、反応開始2時間後の
反応液に塩基性炭酸亜鉛を加えることなく、更に40℃で
15分間反応を続けた。実施例7と同様に後処理を行った
ところインジゴを7.71グラム得た。インジゴ収率は68.9
%であった。
【0035】実施例8 撹拌機、温度計および冷却管を装着した内容積200 ミリ
リットルの3 ッ口フラスコにインドール10.0グラム(8
5.4ミリモル)、正モリブデン酸ナトリウム二水和物68.
15ミリグラム(モリブデン金属換算で0.28ミリグラム原
子) 2-ブチルアルコ−ル100 グラムおよびCHP溶液3
9.61 グラム(クメンヒドロペルオキシド換算で213.4
ミリモル)を一括して仕込んだ。この液をオイルバスに
より加熱し、反応を開始させた。反応温度は100 ℃に保
ち、撹拌しながら反応を続けた。反応開始後3時間を経
過した時点において、反応液をただちに水浴により60℃
に冷却した。この反応液に、水4.6 グラムに水酸化アル
ミニウム0.66グラム(8.5 ミリモル)を懸濁させたもの
を加え、さらに15分間60℃で反応させた。尚、水酸化ア
ルミニウムを加える直前に少量の反応液をぬきとり、高
速液体クロマトグラフィーによりクメンヒドロペルオキ
シドの残存量を分析したところ、反応液中には97.17 ミ
リモルのクメンヒドロペルオキシドが存在していた。反
応終了後、反応液を濾過し固体を少量の2-ブチルアルコ
ールで洗浄後、10重量%の塩酸水溶液100 ミリリットル
で固体を洗浄し、更に少量の水およびメタノールで洗浄
後、50℃で減圧乾燥させてインジゴを7.73グラムを得
た。インジゴ収率は69.0%であった。後の比較例10お
よび比較例11で述べるように、本実施例と同様である
が反応途中の反応液に途中添加金属化合物を加えず、反
応開始後3時間および3時間15分(本実施例と同様に最
後の15分間は60℃)で反応を終えると、インジゴ収率は
それぞれ58.1%、59.2%となる。したがって、反応開始
後3時間以降の15分間のインジゴ収率の増加は本実施例
の場合が10.9%、比較例11の場合が1.1 %となるの
で、この間の平均インジゴ生成速度は、反応開始後3時
間の反応液に水酸化アルミニウムを加えた本実施例の場
合が毎分0.73%、加えなかった比較例11の場合が毎分
0.073 %となり、水酸化アルミニウムを加えた以降の15
分間のインジゴ生成速度は、加えなっかった場合に比
べ、10.0倍も高い。
【0036】比較例10 実施例8とまったく同様の条件で、反応開始3時間後に
反応液に水酸化アルミニウムを加えることなくそのまま
反応を終え、実施例8と同様に後処理を行いインジゴを
6.51グラム得た。インジゴ収率は58.1%であった。
【0037】比較例11 実施例8とまったく同様の条件で、反応開始3時間後に
反応液に水酸化アルミニウムを加えることなく、更に60
℃で15分間反応を続けた後、実施例8と同様に後処理を
行いインジゴを6.63グラム得た。インジゴ収率は59.2%
であった。
【0038】実施例9 撹拌機、温度計および冷却管を装着した内容積500 ミリ
リットルの3ッ口フラスコにインドール10.0グラム(8
5.4ミリモル)、ナフテン酸モリブデンのトルエン溶液
(モリブデン金属として6 重量%含有)1.23グラム(モ
リブデン金属換算で0.77ミリグラム原子)、エチルベン
ゼン300 グラム、CHP溶液50.67 グラム(クメンヒド
ロペルオキシド換算で273.0 ミリモル)および安息香酸
1.04グラム(8.5 ミリモル)を一括して仕込んだ。この
液をオイルバスにより加熱し、反応を開始させた。反応
温度は80℃に保ち、撹拌しながら反応を続けた。反応開
始後4時間を経過した時点において、反応液に、水4.6
グラムに水酸化第二鉄0.91 グラム(8.5 ミリモル)を
懸濁させたものを加え、更に10分間80℃で反応させた。
また、水酸化第二鉄を加える直前に少量の反応液をぬき
とり、高速液体クロマトグラフィーによりクメンヒドロ
ペロオキシドの残存量を分析したところ、反応液中には
149.91ミリモルのクメンヒドロペロオキシドが存在して
いた。反応終了後、反応液を濾過し固体を少量のエチル
ベンゼンで洗浄後、10重量%の塩酸水溶液100 ミリリッ
トルで固体を洗浄し、更に少量の水およびメタノールで
洗浄後、50℃で減圧乾燥させてインジゴを7.56グラム得
た。インジゴ収率は67.5%であった。後の比較例12お
よび比較例13で述べるように、本実施例と同様である
が反応途中の反応液に途中添加金属化合物を加えず、反
応開始後4時間および4時間10分で反応を終えると、イ
ンジゴ収率はそれぞれ60.1%、61.1%となる。したがっ
て、反応開始後4時間以降の10分間のインジゴ収率の増
加は本実施例の場合が7.4 %、比較例13の場合が1.0
%となる。よって、この間の平均インジゴ生成速度は、
反応開始後4時間の反応液に水酸化第二鉄を加えた本実
施例の場合が毎分0.74%、加えなかった比較例13の場
合が毎分0.10%となり、本実施例での水酸化第二鉄を加
えた以降の10分間インジゴの生成速度は、加えなかった
場合に比べ、7.4 倍も高い。
【0039】比較例12 実施例9とまったく同様の条件で、反応開始4時間後に
反応液に水酸化第二鉄を加えることなくそのまま反応を
終え、実施例9と同様に後処理を行いインジゴを6.73グ
ラム得た。インジゴ収率は60.1%であった。
【0040】比較例13 実施例9とまったく同様の条件で、反応開始4時間後に
反応液に水酸化第二鉄を加えることなく、更に10分間反
応を続けた後、実施例9と同様に後処理を行いインジゴ
を6.84グラム得た。インジゴ収率は61.1%であった。
【0041】実施例10 攪拌器、温度計および冷却管を装着した内容積300 ミリ
リットルの3ッ口フラスコにインドール10.0グラム(8
5.4ミリモル)、七モリブデン酸六アンモニウムのエチ
レングリコール溶液(モリブデン金属として5.55重量%
含有)88.2ミリグラム(モリブデン金属換算で0.051 ミ
リグラム原子)、ターシャリーブチルアルコール150 グ
ラム,CHP溶液28.50 グラム(クメンヒドロペルオキ
シド換算で153.5 ミリモル)および酢酸0.51グラム(8.
5 ミリモル)を一括して仕込んだ。この液をオイルバス
により加熱し、反応を開始させた。反応液は穏やかに還
流させ、攪拌しながら反応を続けた。反応初期の液温は
86.0℃であった。反応開始後3時間を経過した時点にお
いて、反応液に塩化亜鉛1.16グラム(8.5 ミリモル)を
加え、次いでCHP溶液6.34グラム(クメンヒドロペル
オキシド換算で34.2ミリモル)を加えて、更に15分間反
応させた。尚、塩化亜鉛を加える直前に少量の反応液を
ぬきとり、高速液体クロマトグラフィーによりクメンヒ
ドロペルオキシドの残存量を分析したところ、反応液中
にはクメンヒドロペルオキシドはまったく存在せず、す
べて消費されていたので、上記CHP溶液を酸素供与性
化合物として加えたものである。液温は塩化亜鉛を加え
る直前は84.9℃であったが、加えた後は84.0℃となっ
た。反応終了後、反応液を濾過し固体を少量のターシャ
リーブチルアルコールで洗浄後、10重量%の塩酸水溶液
100 ミリリットルで洗浄し、更に少量の水およびメタノ
ールで洗浄後、50℃で減圧乾燥させてインジゴを8.49グ
ラム得た。インジゴ収率は75.8%であった。後述する比
較例14に示されるように、反応開始後3時間で反応液
に何も加えずその時点で反応を終えると、インジゴ収率
は64.3%となる。また後述の比較例15に示されるよう
に、反応開始後3時間の反応液にCHP溶液だけを加え
その後15分間反応させると、インジゴ収率は65.0%とな
る。よって、反応開始後3時間以降の15分間のインジゴ
収率の増加は本実施例の場合が11.5%、比較例15の場
合が0.7 %である。したがって、この間の平均インジゴ
生成速度は、本実施例のように塩化亜鉛と酸素供与性化
合物であるCHP溶液の両方を反応液に加えた場合は毎
分0.77%となり、比較例15のようにCHP溶液だけを
加えた場合の毎分0.047 %と比べると、反応開始後3時
間以降の15分間のインジゴ生成速度は16.4倍と非常に高
い。
【0042】実施例11 実施例10において反応途中の反応液に酸素供与性化合
物としてCHP溶液を加える代わりに、30重量%過酸化
水素水溶液3.87グラム(過酸化水素換算で34.1ミリモ
ル)を加えた以外は、すべて実施例10と同様に反応お
よび後処理を行ったところ、インジゴを8.52グラム得
た。インジゴ収率は76.1%であった。後述する比較例1
4に示されるように、反応開始後3時間の反応液に何も
加えずその時点で反応を終えるとインジゴ収率は64.3と
なるので、本実施例においては反応開始後3時間以降の
15分間におけるインジゴ収率の増加は11.8%、その間の
平均インジゴ生成速度は毎分0.79%となる。この値は後
述する比較例15における反応開始後3時間の反応液に
酸素供与性化合物であるCHP溶液だけを加えた場合の
反応開始後3時間以降の15分間の平均インジゴ生成速度
である毎分0.047 %と比べると16.8倍と非常に高い。
【0043】実施例12 実施例10と同様であるが、反応途中の反応液にCHP
溶液を加える代わりに、ガス導入管より空気を15分間連
続的に流速500 ミリリットル/分(標準状態)で反応液
中に供給した(15分間の合計の酸素の供給量は67.0ミリ
モル)以外は、すべて実施例10と同様に反応および後
処理を行ったところ、インジゴを8.72グラム得た。イン
ジゴ収率は77.9%であった。後述する比較例14に示さ
れるように、反応開始後3時間の反応液に何も加えずそ
の時点で反応を終えるとインジゴ収率は64.3%となるの
で、本実施例においては反応開始後3時間以降の15分間
のインジゴ収率の増加は13.6%、平均インジゴ生成速度
は毎分0.91%となる。この値は後述の比較例15におけ
る反応開始後3時間の反応液に酸素供与性化合物である
CHP溶液だけを加えた場合の反応開始後3時間以降の
15分間の平均インジゴ生成速度の毎分0.047 %と比べる
と19.4倍と極めて高い。
【0044】比較例14 実施例10において、反応開始後3時間の反応液に何も
加えることなくそのまま反応を終えた以外は、すべて実
施例10と同様に反応および後処理を行いインジゴを7.
20グラム得た。インジゴ収率は64.3%であった。
【0045】比較例15 実施例10において、反応開始後3時間の反応液に塩化
亜鉛を加えず、CHP溶液6.34グラムだけを加えた以外
は、すべて実施例10と同様に反応および後処理を行い
インジゴを7.28グラム得た。インジゴ収率は65.0%であ
った。
【0046】
【発明の効果】本発明の方法によれば、2位および3位
に置換基を有しないインドール類と有機ヒドロ過酸化物
とを反応させることにより該インドール類に対応するイ
ンジゴ類を製造するに際し、反応途中の反応液にアルミ
ニウム、鉄、銅および亜鉛金属化合物から選ばれる少な
くとも一種以上の金属の化合物を加え、かつ酸素供与性
化合物を存在させて反応させると、そうしない場合に比
べ、以後のインジゴ類の生成速度が数段高くなり、なお
かつ高収率で、原料のインドール類に対応するインジゴ
類を製造することができるという極めて効果的なインジ
ゴ類の製造方法となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 原 烈 神奈川県横浜市栄区笠間町1190番地 三 井東圧化学株式会社内 (72)発明者 柿ケ野 武明 神奈川県横浜市栄区笠間町1190番地 三 井東圧化学株式会社内 審査官 星野 紹英 (56)参考文献 特開 平6−65512(JP,A) 特開 平5−43807(JP,A) 特開 平3−131660(JP,A) 特開 平3−74470(JP,A) 特開 平3−768(JP,A)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2位および3位に置換基を有しないイン
    ドール類と有機ヒドロ過酸化物を触媒の存在下に液相で
    反応させて該インドール類に対応するインジゴ類を製造
    するに際し、反応途中の反応液にアルミニウム、鉄、銅
    および亜鉛金属化合物から選ばれる少なくとも一種以上
    の金属の化合物を加え、かつ酸素供与性化合物を存在さ
    せることによって、以後のインジゴ類の生成速度を高め
    ることを特徴とするインジゴ類の製造方法。
  2. 【請求項2】 酸素供与性化合物が有機ヒドロ過酸化
    物、過酸化水素、または酸素、空気およびそれらを希釈
    した気体である請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 アルミニウム、鉄、銅および亜鉛金属化
    合物から選ばれる少なくとも一種以上の金属の化合物が
    アルミニウム、鉄、銅および亜鉛金属の水酸化物、炭酸
    塩またはハロゲン化物である請求項1または2記載の方
    法。
  4. 【請求項4】 触媒が周期律表の4族、5族および6族
    からなる群から選ばれる金属の化合物である請求項1、
    2または3記載の方法。
  5. 【請求項5】 触媒がモリブデンの化合物である請求項
    4記載の方法。
  6. 【請求項6】 反応を、脂肪族または脂環族炭化水素
    類、芳香族炭化水素類、脂肪族または芳香族ハロゲン化
    合物、エーテル類、アルコール類、ケトン類、エステル
    類および芳香族ニトロ化合物類からなる群から選ばれる
    溶媒の少なくとも一種以上の存在下で行なう請求項1、
    2、3、4または5記載の方法。
  7. 【請求項7】 溶媒が2級または3級アルコールである
    請求項6記載の方法。
  8. 【請求項8】 反応を、カルボン酸類の存在下で行なう
    請求項1、2、3、4、5、6または7記載の方法。
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