JP2944714B2 - インジゴ類の製造方法 - Google Patents

インジゴ類の製造方法

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JP2944714B2 JP18270390A JP18270390A JP2944714B2 JP 2944714 B2 JP2944714 B2 JP 2944714B2 JP 18270390 A JP18270390 A JP 18270390A JP 18270390 A JP18270390 A JP 18270390A JP 2944714 B2 JP2944714 B2 JP 2944714B2
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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、インジゴ類の製造方法に間するものであ
る。更に詳しくは、2位および3位に置換基を有しない
インドール類と有機ヒドロ過酸化物とを、特定の添加剤
の存在下に反応させることにより対応するインジゴ類を
製造する新規な方法に関するものである。インジゴ類は
染料として重要な化合物である。
(従来の技術) 現在、工業的なインジゴの製造方法としては、アニリ
ンとクロロ酢酸もしくはアニリン、青酸およびホルムア
ルデヒドを原料としてN−フェニルグリシン塩を製造
し、これを高温でアルカリ溶融してインドキシル化合物
とした後、更にこれを空気酸化する方法が採用されてい
る。しかしながらこれらの方法は反応工程が多段階で極
めて複雑であるばかりでなく、大量の水酸化カリウムと
水酸化ナトリウムを使用しなければならないので、これ
らの回収再使用に際して多大のエネルギーを消費し、ま
たそのための特殊な装置が必要であるという問題があ
る。そのため、より簡素なプロセスへの転換が望まれて
いる。
一方、インドールの有機合成化学的な酸化反応におい
て、微量のインジゴが生成したという報告がある。例え
ば小幡らは、過酸化水素と酢酸により反応系内で過カル
ボン酸である過酢酸を発生させ、これを酸化剤としてイ
ンドールと反応させると、インドール骨格の3量体であ
る2,2−ジインジル−ψ−インドキシルが主生成物とし
て得られ、その際副生物として少量のインジゴも生成し
たと報告している(Bull.Agr.Chem.Soc.Japan,20巻,80
−83頁,1956年)。又ベルナード・ヴィットコップら
は、過カルボン酸である過安息香酸を酸化剤として、こ
れとインドールとをクロロホルム溶液中冷蔵庫内で一晩
反応させると、オルトホルムアミノベンズアルデヒドの
他、数多くの成分が生成し、この際極少量のインジゴも
生成したと報告している(Justus Liebigs Annalen der
Chemie,558巻,91−98頁,1947年)。またシェインクマ
ンらは、無機の過酸化物である過酸化水素を酸化剤とし
て、これとインドールとをメタノール溶媒中で反応させ
ると、過酢酸との反応の場合と同様に3量体である2,2
−ジインジル−ψ−インドキシルが高収率で得られ、こ
の際インジゴがクロマトグラフィーで検出できたと報告
している(Khim.Geterotsikl.Soedin.,11巻,1490−1496
頁,1978年)。しかしながら、これらは何れもインドー
ルの反応性を検討した程度の報告であって、本発明者ら
が目的とするインジゴは極少量生成した副生物の一つに
すぎず、インジゴ類の製造方法として満足するべき方法
とはいえない。
また、有機溶媒中で3−ホルミルインドール類を原料
として、これを過酸化物と反応させた後、更に酸化する
という2段階反応でインジゴ類を得た例がある(特開昭
54−124027)。しかしながらこの原料である3−ホルミ
ルインドール類は容易に入手できる化合物ではなく、イ
ンドール類から一端複雑な反応により合成する必要があ
る。しかも、インドール類の3位の炭素は酸素と結合し
てインジゴ類を形成するため、この方法では3−ホルミ
ル基の脱離が起こり、これによる副生物の生成によって
反応系が複雑になるなど、簡便なインジゴ類の製造方法
とはいえない。
そこで、工業的に入手容易なインドール類を原料と
し、有機ヒドロ過酸化物を酸化剤として反応させ、一段
で簡便にインジゴ類を製造する方法が提案されている
(特開平1−215859)。しかしながら、この方法ではイ
ンジゴ類の収率はまだ充分なものではない。
(発明が解決しようとする課題) 本発明の課題は、改良された、簡便なインジゴ類の製
造方法を提供することである。本発明のいま一つの課題
は、インドール類を原料とし、前記した従来の技術より
効率よくインジゴ類を製造する方法を提供することであ
る。
(課題を解決するための手段) 本発明者らは、工業的に入手容易なインドール類を原
料とし、有機ヒドロ過酸化物を酸化剤として、効率よく
簡便にインジゴ類を製造する反応系の開発を目指し、鋭
意検討を続けてきたところ、これらをある特定の添加剤
の存在下に反応させると、一段で簡便に、しかも高い収
率および生成速度で対応するインジゴ類が得られること
を見いだし、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、2位および3位に置換基を有しな
いインドール類と有機ヒドロ過酸化物とを、添加剤とし
ての有機シラノール類の存在下に、反応させることを特
徴とする対応するインジゴ類の製造方法である。
本発明の方法における原料である2位および3位に置
換基を有しないインドール類とは、例えばインドールを
はじめ;1−メチルインドール、4−エチルインドール、
5−メチルインドール、6−メチルインドール、6−イ
ソプロピルインドール、7−メチルインドール、4,5−
ジメチルインドールなどの炭素数1〜10のアルキル基を
1〜4個有するアルキルインドール類;4−シクロヘキシ
ルインドール、5−シクロペンチルインドールなどの炭
素数3〜12のシクロアルキル基を1〜4個有するシクロ
アルキルインドール類;5−フェニルインドール、6−β
−ナフチルインドールなどの炭素数6〜30のアリール基
またはアルキル置換アリール基を1〜4個有するアニー
ルインドール類;4−クロロインドール、5−クロロイン
ドール、5,7−ジクロロインドール、5−ブロモインド
ール、6−ブロモインドール、5,7−ジブロモインドー
ル、4−クロロ−5−ブロモインドールなどの1〜4個
のハロゲン原子を有するハロゲン化インドール類;4−ヒ
ドロキシインドール、5−ヒドロキシインドール、4,5
−ジヒドロキシインドールなどの1〜4個のヒドロキシ
基を有するヒドロキシインドール類;4−メトキシインド
ール、5−ベンジルオキシインドールなどの炭素数1〜
10のアルコキシ基を1〜4個有するアルコキシインドー
ル類;5−フェノキシインドールなどの炭素数6〜30のフ
ェノキシ基を1〜4個有するフェノキシインドール類;4
−クロロ−5−エチルインドール、6−クロロ−4−メ
チルインドール、4−ブロモ−5−エチルインドール、
5−ブロモ−4−メチルインドールなどの1〜3個のハ
ロゲン原子および炭素数1〜10のアルキル基を1〜3個
有するハロゲン化アルキルインドール類;4−ニトロイン
ドール、5−ニトロインドール、7−ニトロインドール
などの1〜4個のニトロ基を有するニトロインドール
類;1−ベンゾイルインドール、4−アセチルインドール
などの炭素数2〜20のアシル基を1〜4固有するアシル
インドール類;1−アセトキシインドール、4−ベンゾイ
ルオキシインドールなどの炭素数2〜20のアシルオキシ
基を1〜4個有するアシルオキシインドール類;インド
ール−5−カルボン酸などのインドールカルボン酸類ま
たはそのエステル類;5−N,N−ジメチルアミノインドー
ルなどのアルキル部分が炭素数1〜10であるN,N−ジア
ルキルアミノ基を1〜4個有するN,N−ジアルキルアミ
ノインドール類;およびスルホン化インドール類などで
あり、それらの置換基を2位および3位に有しない化合
物である。更に、上記した少なくとも2種類以上の置換
基を有しているインドール類も、本発明において有用で
ある。この他、2位および3位以外の位置には反応を阻
害しないものであれば置換基を有していてもよい。これ
らのインドール類の中で特にインドールが好ましい。
本発明の方法におけるもう一方の原料である有機ヒド
ロ過酸化物とは、ヒドロペルオキシ基(−OOH)を有す
る有機化合物のことであり、例えば、デ・スワーン(D.
Swern)著“オーガニック・ペルオキシド(Organic Per
oxides)Vol.II",ウィリー・インターサイエンス(Wile
y−Interscience)刊(1971年);107−127頁の表中、ま
たは、エイ・ジー・デービス(A.G.Davies)著“オーガ
ニック・ペルオキシド(Organic Peroxides)",ブッタ
ーワース(Butterworths)刊(1961年);9−33頁の表中
に挙げられているようなものである。これらのうち、例
えば、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド、1−フ
ェニルエチルヒドロペルオキシド、1−メチル−1−フ
ェニルエチルヒドロペルオキシド(慣用名クメンヒドロ
ペルオキシド)、ビス(1−メチルエチル)フェニルヒ
ドロペルオキシド、1−メチル−1−(4−メチルシク
ロヘキシル)エチルヒドロペルオキシド、2,5−ジメチ
ルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テ
トラメチルブチルヒドロペルオキシドなどのように、ア
ルキル部分の炭素数が3〜30である2級または3級のア
ルキルヒドロ過酸化物が好ましい。これらの有機ヒドロ
過酸化物は単独で用いても、2種以上を混合して同時に
用いても、または2種以上を順次用いても構わない。さ
らには、これらの有機ヒドロ過酸化物としては、例えば
イソプロピルベンゼンと酸素含有ガスとの組み合わせな
ど、反応系内でこれらの有機ヒドロ過酸化物を発生させ
ることのできる成分の組合せであってもよい。これらの
有機ヒドロ過酸化物の使用量は特に限定されるものでは
ないが、通常当該インドール類1モルに対して0.01ない
し100モルの範囲であり、好ましくは0.1ないし20モルの
範囲であり、更に好ましくは0.2ないし10モルの範囲で
ある。
本発明の方法における有機シラノール類とは、シラノ
ール骨格(−Si−OH)を有する有機けい素化合物のこと
であり、例えば、“GMELINS HANDBUCH DER ANORGANISC
HEN CHEMIE, SILICIUM, TEIL C, SYSTEM−MUMMER 15"
(1958年);200−246頁の文章中及び表93−95中に挙げ
られているようなものである。これらのうち、例えば、
トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリノ
ルマルプロピルシラノール、トリイソプロピルシラノー
ル、トリノルマルブチルシラノール、トリターシャリー
ブチルシラノール、トリベンジルシラノールまたは1−
ヒドロキシ−1−メチルシラシクロプロパンなどのトリ
アルキルシラノール類、ジヒドロキシジメチルシラン、
ジエチルジヒドロキシシラン、ジベンジルジヒドロキシ
シランまたはジヒドロキシジターシャリ−ブチルシラン
などのジアルキルジヒドロキシシラン類、トリフェニル
シラノールなどのトリアリールシラノール類、もしくは
ジヒドロキシジフェニルシランなどのジヒドロキジアリ
ールシラン類などが好ましい。
これらの有機シラノール類はさらに、反応を阻害しな
ければいかなる置換基を有していてもよい。また、例え
ばジアセトキシジメチルシラン、ジアセトキシジフェニ
ルシランまたはエチルトリアセトキシシランなどのアシ
ルオキシ有機シラン類もしくはジシロキサン類など、こ
れらの有機シラノール類を反応系内で発生させることの
できる化合物または化合物の組合せでもよい。これらの
有機シラノール類は単独でも、また2種以上を同時また
は順次に使用することもできる。これらの使用量は、イ
ンドール類1モルに対して通常50モル以下であり、好ま
しくは0.001ないし20モルの範囲であり、更に好ましく
は0.01ないし10モルの範囲である。
また、本発明の方法において、インドール類の3位の
炭素を酸化する金属化合物触媒を用いるとインジゴ類の
収率または反応速度が向上する。従ってこれらを用いる
ことは極めて好ましい。インドール類の3位の炭素を酸
化する金属化合物触媒とは、インドール類と有機ヒドロ
過酸化物とを反応させるにおいて、インドール類の3位
の炭素を酸素原子で酸化する金属の化合物であり、例え
ば、周期律表の4族、5族および6族からなる群から選
ばれる少なくとも一種以上の金属の化合物である。具体
的には例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バ
ナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデンおよ
びタングステンの金属の化合物であり、より具体的には
例えば、これらの金属の、ハロゲン化物、オキシハロゲ
ン化物、酸化物、複合酸化物、硫化物、硼化物、りん化
物、水酸化物、オキシ水酸化物、シアノ錯塩、例えば硫
酸、硝酸やりん酸などの無機酸の塩、例えばチタン酸、
モリブデン酸やタングステン酸などの金属オキシ酸また
はそれらの塩、または例えばりんモリブデン酸や珪タン
グステン酸などのヘテロポリ酸またはそれらの塩、など
のような無機化合物;これらの金属の、酢酸、蓚酸、安
息香酸、ナフテン酸などの有機酸の塩、エチルアルコー
ルやイソプロピルアルコールなどのアルコキシド、フェ
ノールやメタクロロフェノールなどのフェノキシド、ア
ルコキシまたはフェノキシ基を持ったハロゲン化物、な
どのような少なくとも一部に有機基を有する化合物;も
しくはこれらの金属の、カルボニル錯体、アミン類の錯
体、ピリジンやビピリジルなどのピリジン錯体、オキソ
錯体、システインやジチオカテコールなどのチオレート
錯体、スルフィド錯体、ジチオカルバメート錯体、チオ
シアネート錯体、イソシアネート錯体、ニトロシル錯
体、トリフェニルホスフィンや1,2−ジフェニルホスフ
ィノエタンなどのホスフィリン錯体、ホスホリル錯体、
フタロシアニン錯体、ポリフィン錯体、ニトリル錯体、
エーテル錯体、ケトン錯体、アセチルアセトンなどのβ
−ケトカルボニル錯体、アルキルまたはアレンの錯体、
オレフィン錯体、シクロペンタジエニル錯体、などの錯
体化合物;さらには以上のような化合物の複数の種類に
渡って分類されるような化合物などが挙げられる。これ
らの化合物は単独でもまたは2種以上を同時に使用する
こともできる。また、反応系内でこれらの化合物を発生
させることのできる成分の組合せであっても良い。これ
らの化合物は、反応混合液に溶解していることが好まし
いが一部または全部が不溶であっても差し支えない。こ
れらの化合物の使用量は、通常インドール類1モルに対
して0.5モル以下であり、好ましくは0.00001ないし0.1
モルの範囲であり、更に好ましくは0.0001ないし0.1モ
ルの範囲である。
また、本発明の方法において、インジゴ類の収率また
は生成速度を更に向上させるなどのために、更に他の添
加剤を用いてもよい。例えば、添加剤として有機カルボ
ン酸を併用すると、インジゴ類の収率または生成速度が
一層向上する。従って、これらを用いることは好まし
い。
本発明の方法における反応の実施方式は特に限定され
るものではなく、インドール類、有機ヒドロ過酸化物、
添加剤および使用する場合の金属化合物触媒などが効果
的に混合され接触される方法であれば如何なる方法でも
よく、回分式、半回分式または連続流通式のいずれでも
構わない。
反応の際の温度および時間は原料のインドール類、有
機ヒドロ過酸化物、添加剤および使用する場合の金属化
合物触媒などの種類や量により異なり一様ではない。し
かしながら通常反応温度は零下10ないし200℃の範囲で
あり、好ましくは10ないし150℃の範囲である。反応時
間は通常50時間以内であり、好ましくは0.01ないし20時
間の範囲である。反応は場合によって減圧、常圧または
加圧の何れでも実施できる。
本発明の方法においては、反応は不活性ガス雰囲気下
でも、空気など分子状酸素の存在下でも行なうことがで
きる。
本発明の方法は、溶媒を用いずに反応を行ないうる場
合もあるが、通常は溶媒の存在下で実施される。使用す
る場合の溶媒としては反応を阻害しなければどのような
溶媒でも構わない。そのような溶媒としては、例えば、
水;n−ヘキサン、n−ペンタン、n−ヘプタン、シクロ
ヘキサンなどの脂肪酸または脂環族の炭化水素類;ベン
ゼン、トルエン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族
炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベ
ンゼン、ジクロロベンゼンなどの脂肪族または芳香族ハ
ロゲン化合物;ジエチルエーテル、ジフェニルエーテ
ル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチル
エーテルなどのエーテル類;メタノール、エタノール、
ターシャリーブタノール、シクロヘキサノール、ベンジ
ルアルコール、プロピレングリコールなどのアルコール
類;アセトン、エチルメチルケトン、アセトフェノンな
どのケトン類;酢酸エチルやブロピオン酸エチルなどの
エステル類;炭酸ジメチルなどのカーボネート類;およ
びニトロベンゼンなどの芳香族ニトロ化合物類などが挙
げられる。これらは単独でもまたは2種以上を混合して
使用してもよい。また、これらの溶媒の使用によって、
反応混合液が均一相となっても不均一な複数の相となっ
ても構わない。
本発明の方法において、反応終了後の反応生成物を常
用の方法に従って処理することによりインジゴ類が得ら
れる。通常、反応終了後生成したインジゴ類はその多く
が析出しており、濾過、遠心分離またはデカンテーショ
ンなどの通常の固液分離の操作により容易に固体として
取り出すことができる。インジゴ類の析出量が不十分な
場合には、より多く析出させるため反応液を濃縮した後
取り出すこともできる。
本発明の方法により得られるインジゴ類は、原料のイ
ンドール類と対応しており、インジゴ類の芳香環上およ
び窒素原子上には原料のインドール類と同一の置換基を
同一の位置に有すものである。
(実施例) 次に実施例により本発明を更に詳しく説明するが、こ
れらは限定的ではなく単に説明のためと解されるべきで
ある。
実施例1 撹拌機、温度計および冷却管を装着した、内容積500
ミリリットルの3ッ口フラスコに、インドール10.0グラ
ム(85.4ミリモル)、添加剤としてトリフェニルシラノ
ール2.36グラム(8.54ミリモル)、触媒としてモリブデ
ンヘキサカルボニル225ミリグラム(0.85ミリモル)、
溶媒としてクメン300グラムおよび有機ヒドロ過酸化物
として83重量%の1−メチル−1−フェニルエチルヒド
ロペルオキシド(慣用名クメンヒドロペルオキシド)の
クメン溶液(以降、単にCHP溶液と略称する)47.0グラ
ム(クメンヒドロペルオキシド換算で256.3ミリモル)
を一括して仕込んだ。この液をオイルバスにより80℃に
加熱し、空気雰囲気下で撹拌しながら5時間反応させ
た。反応開始時は液は均一であったが、反応の進行とと
もに藍色の固体が徐々に析出してきた。反応終了後、こ
の反応混合液を濾過し、固体を少量のクメンおよびメタ
ノールで洗浄後、50℃で減圧乾燥させて藍色の固体を7.
20グラム得た。これは、元素分析およびIR分析の結果イ
ンジゴであった。仕込んだインドールに対する単離した
インジゴのモル収率(以降、単にインジゴ収率と略称す
る)は64.3%であり、生成速度の目安とする1時間当り
のインジゴ収率は12,9%であった。
比較例1 実施例1において、トリフェニルシラノールを使用し
なかった以外はすべて実施例1と同様に反応および後処
理を行ったところ、インジゴが5.91グラム得られた。イ
ンジゴ収率は52.8%、1時間当りのインジゴ収率は10.6
%であった。有機シラノール類を使用しない場合には収
率も低く、また生成速度も遅かった。
実施例2−10 実施例1において、トリフェニルシラノールの代わり
に第1表に示す有機シラノール類の種類とその量を用い
た以外は、すべて実施例1と同様に反応および後処理を
行った。結果を実施例1および比較例1の結果とともに
第1表に示した。何れの実施例においても有機シラノー
ル類を添加しなかった比較例1の結果に比べ、収率およ
び生成速度が向上した。
実施例11−18 インドールおよびCHP溶液の量、有機シラノール類、
触媒および溶液の種類と量、反応温度そして反応時間を
第2表に示すように変えた以外は、すべて実施例1と同
様に反応および後処理を行った。結果を第2表に示し
た。
比較例2−9 実施例11−18において、それぞれの実施例で用いた有
機シラノール類を使用しなかった以外は、それぞれ対応
する実施例11−18とすべて同様に反応および後処理を行
った。結果を実施例11−18の結果とともに第2表に示し
た。何れにおいても、有機シラノール類を添加しないと
収率も低く、また生成速度も遅かった。
実施例19 撹拌機、温度計、滴下ロールおよび冷却管を装着した
内容積500ミリリットルの4ッ口フラスコに、インドー
ル10.0グラム(85.4ミリモル)、添加剤としてトリフェ
ニルシラノール2.36グラム(8.54ミリモル)、触媒とし
てモリブデンヘキサカルボニル22.5ミリグラム(0.085
ミリモル)、および溶媒としてクメン75グラムを仕込ん
だ。この液をオイルバスにより90℃に加熱し、窒素雰囲
気下撹拌しながら滴下ロールより有機ヒドロ過酸化物と
してCHP溶液34.5グラム(クメンヒドロペルオキシド換
算で188.1ミリモル)を2時間かけて滴下した後、その
まま3時間反応させた。得られた反応混合液を実施例1
と同様に後処理を行ったところ、インジゴが5.74グラム
得られた。インジゴ収率は51.3%、1時間当りのインジ
ゴ収率は17.1%であった。
比較例10 実施例19において、トリフェニルシラノールを使用し
なかった以外はすべて実施例19と同様に反応および後処
理を行ったところ、インジゴが4.80グラム得られた。イ
ンジゴ収率は42.9%、1時間当りのインジゴ収率は14.3
%であった。他の比較例と同様に有機シラノール類を使
用しないと収率も低く、また生成速度も遅かった。
実施例20 実施例1において用いた3ッ口フラスコに、インドー
ル10.0グラム(85.4ミリモル)、添加剤としてトリフェ
ニルシラノール2.36グラム(8.54ミリモル)、触媒とし
てモリブデンヘキサカルボニル22.5ミリグラム(0.085
ミリモル)、溶媒としてエチルベンゼン34.9グラムおよ
び有機ヒドロ過酸化物として11.2重量%の1−フェニル
エチルヒドロペルオキシドのエチルベンゼン溶液320.5
グラム(1−フェニルエチルヒドロペルオキシド換算で
259.8ミリモル)を一括して仕込んだ。この液をオイル
バスにより80℃に加熱し、空気雰囲気下で撹拌しながら
5時間反応させた。反応終了後、得られた反応混合物を
濾過し、固体を少量のエチルベンゼンおよびメタノール
で洗浄後50℃で減圧乾燥させたところ、インジゴが6.29
グラム得られた。インジゴ収率は56.2%、1時間当りの
インジゴ収率は11.2%であった。
比較例11 実施例20において、トリフェニルシラノールを使用し
なかった以外はすべて実施例20と同様に反応および後処
理を行ったところ、インジゴ収率は49.4%、1時間当り
のインジゴ収率は9.9%であった。他の比較例と同様に
有機シラノール類を使用しないと収率も低く、また生成
速度も遅かった。
実施例21 実施例20において、有機ヒドロ過酸化物として用いた
11.2重量%の1−フェニルエチルヒドロペルオキシドの
エチルベンゼン溶液の代わりに、22.4重量%のターシャ
リーブチルヒドロペルオキシドのトルエン溶液を103.0
グラム(ターシャリーブチルヒドロペルオキシド換算で
256.0ミリモル)用い、溶媒として用いたエチルベンゼ
ンの代わりにトルエンを230グラム用い、そして反応温
度を100℃に変えた以外は、すべて実施例20と同様に反
応を行った。反応終了後、得られた反応混合液を濾過
し、固体を少量のトルエンおよびメタノールで洗浄後50
℃で減圧乾燥させたところ、インジゴが5.50グラム得ら
れた。インジゴ収率は49.1%、1時間当りのインジゴ収
率は9.8%であった。
比較例12 実施例21において、トリフェニルシラノールを使用し
なかった以外はすべて実施例21と同様に反応および後処
理を行ったところ、インジゴ収率は38.7%、1時間当り
のインジゴ収率は7.7%であった。他の比較例と同様に
有機シラノール類を使用しないと収率も低く、また生成
速度も遅かった。
実施例22 撹拌機、温度計および冷却管を装着した、内容積100
ミリリットルの3ッ口フラスコに、5−クロロインドー
ル3.0グラム(19.8ミリモル)、添加剤としてトリメチ
ルシラノール357ミリグラム(3.96ミルモル)、触媒と
してモリブデンヘキサカルボニル22.5ミリグラム(0.08
5ミリモル)、溶媒としてトルエン30グラムおよび有機
ヒドロ過酸化物としてCHP溶液18.0グラム(クメンヒド
ロペルオキシド換算98.2ミリモル)を一括して仕込ん
だ。この液をオイルバスにより80℃に加熱し、空気雰囲
気中で撹拌しながら5時間反応させた。反応終了後この
反応混合液を濾過し、固体を少量のメタノールで洗浄
後、50℃で減圧乾燥させたところ、5,5′−ジクロロイ
ンジゴが1.72グラム得られた。仕込んだ5−クロロイン
ドールに対する単離した5,5′−ジクロロインジゴのモ
ル収率は52.5%であり、1時間当りの5,5′−ジクロロ
インジゴの収率は10.5%であった。
実施例23,24 実施例22において5−クロロインドールの代わりに、
第3表に示すインドール類の種類とその量を用い、有機
ヒドロ過酸化物として用いたCHP溶液の量、および有機
シラノール類として用いたトリメチルシラノールの量を
第3表に示ように変えた以外は、すべて実施例22と同様
に反応を行い、得られた反応混合液を実施例22と同様に
後処理を行なって対応するインジゴ類を得た。単離した
インジゴ類、仕込んだインドール類に対するインジゴ類
のモル収率(インジゴ類収率と略称する)および1時間
当りのインジゴ類収率を、実施例22の結果とともに第3
表に示した。何れにおいても、有機シラノール類を使用
しなかった場合の結果に比べ、収率および生成速度が向
上した。
実施例25 実施例1において、トリフェニルシラノールの使用量
を7.08グラム(25.6ミリモル)に変え、更に安息香酸1.
04(8.5ミリモル)を用いた以外は、すべて実施例1と
同様に反応及び後処理を行ったところ、インジゴ収率は
75.6%、1時間当りのインジゴ収率は15.1%であった。
実施例26 実施例1において、トリフェニルシラノールの使用量
を7.08グラム(25.6ミリモル)に変え、更に酢酸0.51グ
ラム(8.5ミリモル)を用いた以外は、すべて実施例1
と同様に反応および後処理を行ったところ、インジゴ収
率は72.3%、1時間当りのインジゴ収率は14.5%であっ
た。
(発明の効果) 本発明の方法によれば、2位および3位に置換基を有
しないインドール類と有機ヒドロ過酸化物とを、添加剤
としての有機シラノール類の存在下に、反応させるとい
う簡便な方法によって、一段でしかも他の酸化剤を使用
する従来技術よりも、また有機シラノール類を添加しな
い場合よりも、高い収率と反応速度で対応するインジゴ
類を製造することができるという、極めて効果的なイン
ジゴ類の製造方法となる。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】2位および3位に置換基を有しないインド
    ール類と有機ヒドロ過酸化物とを、添加剤としての有機
    シラノール類の存在下に、反応させることを特徴とする
    対応するインジゴ類の製造方法。
  2. 【請求項2】インドール類の3位の炭素を酸化する金属
    化合物触媒の存在下に反応させる請求項1に記載の方
    法。
  3. 【請求項3】金属化合物触媒が、周期律表の4族、5族
    および6族からなる群から選ばれる金属の化合物である
    請求項2に記載の方法。
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