JP3238873B2 - 二酸化炭素の選択的分離膜および選択的分離方法 - Google Patents

二酸化炭素の選択的分離膜および選択的分離方法

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  • Carbon And Carbon Compounds (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、二酸化炭素とメタ
ンを含む混合物から二酸化炭素を分離する膜と方法に関
するもので、詳しくは天然ガス精製工業や石油化学工業
等において発生する二酸化炭素とメタンを含む混合物か
ら二酸化炭素を分離、濃縮する方法などに使用する膜に
よる二酸化炭素の選択的分離膜および選択的分離方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】天然ガス精製工業や石油化学工業におい
て、膜を利用して二酸化炭素とメタンを含む混合物から
二酸化炭素を分離する方法は、科学的及び経済的観点か
ら永年研究されており、これまでにいくらかの検討例が
報告されている。例えば、特開昭51−121003号
公報は、サワーガス成分硫化水素および二酸化炭素を除
去してメタンをスイートニングする方法において、メタ
ンおよびサワーガス成分の供給混合物を2つのサワーガ
ス成分に対し選択的透過性を有する膜へ送り、この膜を
透過するサワーガス成分を同時に除去し、透過しないス
イートニングされたメタンを捕集することを特徴とする
メタンをスイートニングする方法を開示している。特開
平06−182167号公報は、フッ素原子を含むポリ
イミド樹脂からなる含フッ素ポリイミド系非対称膜の表
面を低温プラズマ処理することにより、架橋層を形成
し、二酸化炭素とメタンを含む混合気体から、特定の成
分を分離・濃縮するために用いられる、気体透過性、気
体選択性、耐熱性、耐薬品性、機械的強度等に優れた含
フッ素ポリイミド系気体分離膜、及びこれを用いた混合
気体の分離・濃縮方法を開示している。また、フッ素含
有ポリイミドの多くは、高いガラス転移温度と剛直でバ
ルキーな分子鎖構造を有するため、耐熱性、耐化学薬品
性、気体分離性等に優れた膜分離材料として知られてい
る。例えば、特開平5−7749号公報、米国特許第3
822202号明細書、米国特許第3899309号明
細書、米国特許第4532041号明細書、米国特許第
4645824号明細書、米国特許第4705540号
明細書、米国特許第4717393号明細書、米国特許
第4717394号明細書、米国特許第4838900
号明細書、米国特許第4897092号明細書、米国特
許第4932982号明細書、米国特許第492940
5号明細書、米国特許第4981497号明細書、米国
特許第5042992号明細書等には含フッ素系の芳香
族ポリイミドが開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来提
案されている膜による二酸化炭素の分離方法は、分離膜
の多くが二酸化炭素に対する分離性能が未だ十分ではな
く、さらに透過性も十分でないという問題があった。そ
のため、二酸化炭素とメタンを含む混合物からの二酸化
炭素の膜分離法は、性能面、コスト面の問題から広く工
業的規模で実用的に普及していないのが現状である。
【0004】本発明はこれらの問題点を解決するために
なされたものであって、二酸化炭素に対して高い分離性
と高い透過性を有し、性能面、コスト面共に実用的に満
足できる二酸化炭素とメタンを含む混合物からの二酸化
炭素の選択的分離膜および選択的分離方法を提供するこ
とを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明の二酸化炭素の選択的分離膜は、二酸化炭素
とメタンを含む混合物から二酸化炭素を選択的に透過さ
せ分離するために用いる分離膜であって、ドライディン
グ(DREIDING)2を分子力場とした分子力学法
により求めた最小繰り返し単位分子構造内の単位ファン
デルワールス体積あたりの主鎖の回転障壁エネルギーが
150cal/cm3以上であるフッ素含有ポリイミド
樹脂を用い、このフッ素含有ポリイミド樹脂が、前記式
(化1)で表される繰り返し単位を主成分とすることを
特徴とする。
【0006】前記分離膜においては、広角X線回析法に
より求めたフッ素含有ポリイミド樹脂のd−spaci
ngの値が0.53〜0.7nm(5.3〜7.0オン
グストローム)に存在することが好ましい。
【0007】また前記分離膜においては、フッ素含有ポ
リイミド樹脂を主成分とする膜が、緻密膜及び非対称膜
から選ばれる少なくとも一つの膜であることが好まし
い。ここで緻密膜とは、多孔質構造が存在せず、炭化水
素の透過性が膜への溶解性と膜中における拡散性により
支配される領域の膜をいう。また非対称膜とは、膜の一
方の表面が緻密層となっており、内部構造と裏面は多孔
質構造になっている膜をいう。これらの概念は当業界で
は一般的によく知られているものである。
【0008】また本発明の二酸化炭素の選択的分離方法
は、二酸化炭素とメタンを含む混合物を、前記本発明の
選択的分離膜の一方の面に接触させ、この膜を通して、
二酸化炭素を選択的に透過させ分離するという構成を備
えたものである。
【0009】前記した本発明の構成によれば、二酸化炭
素とメタンを含む混合物をドライディング(DREID
ING)2を分子力場とした分子力学法により求めた最
小繰り返し単位分子構造内の単位ファンデルワールス体
積あたりの主鎖の回転障壁エネルギーが150cal/
cm3以上であり、前記式(化1)で表される繰り返し
単位を主成分とするフッ素含有ポリイミド樹脂を主成分
とする膜の一方の面に接触させ、この膜を通して、二酸
化炭素を選択的に透過させ分離することにより、二酸化
炭素に対して高い分離性と高い透過性を有し、性能面、
コスト面共に実用的に満足しうる二酸化炭素の選択的膜
分離方法を実現できる。また、取り扱う炭化水素の物性
や分離操作の圧力・分離操作によっては、浸透気化法に
よって該選択的分離方法を実現できる。
【0010】ガラス状高分子膜はしばしば、熱運動の乏
しいセグメント間のスペースを利用して、透過分子の大
きさや形状に由来する拡散性の違いにより特定の低分子
を選択的に透過させ分離するための材料として用いられ
る。したがってガラス状高分子を用いて高い分離性を有
する膜を得るためには、特定の低分子を選択的に透過し
うるセグメント間のスペースを高分子マトリックス中に
安定して保持できるような材料を膜材料として用いるこ
とが効果的と考えられる。そのようなセグメント間のス
ペースの存在確立はセグメントの熱運動性とパッキング
構造に依存する。本発明者はこの点に着眼し、鋭意検討
した結果、ドライディング(DREIDING)2を分
子力場とした分子力学法により求めた最小繰り返し単位
分子構造内の単位ファンデルワールス体積あたりの主鎖
の回転障壁エネルギーが150cal/cm3以上であ
るフッ素含有ポリイミド樹脂を主成分とする膜が二酸化
炭素をより選択的に拡散しうるパッキング構造を保持し
やすく、二酸化炭素に対して高い分離性と高い透過性を
有し、この膜の一方の面に二酸化炭素とメタンを含む混
合物を接触させることにより、二酸化炭素を選択的に透
過させ高度に分離できることを見出した。
【0011】前記において、ドライディング(DREI
DING)2を分子力場とした単位ファンデルワールス
体積あたりの回転障壁エネルギーが150cal/cm
3未満であるとセグメントのねじれ方向の熱運動性が増
大し、分離に寄与できるセグメント間のスペースが消滅
し、分離性が低下する恐れが生じるので好ましくない。
【0012】前記において、回転障壁エネルギーとは4
つの原子で構成される2面角を360°回転する際に越
えなければならないポテンシャルエネルギー障壁の最大
値を表し、具体的には、分子力学法により2面角を0〜
360゜の範囲で所定角度きざみで変化させた種々の構
造について構造最適化計算を行い、得られた種々の最適
化構造のポテンシャルエネルギーの最大値と最小値の差
として求めることができる。
【0013】前記において、分子力学法により求めた最
小繰り返し単位分子構造内の単位ファンデルワールス体
積あたりの主鎖の回転障壁エネルギーとは、高分子の最
小繰り返し分子構造において、主鎖を構成する全ての2
面角部分の回転障壁エネルギーの総和をファンデルワー
ルス体積で割ることにより求めた値である。
【0014】前記において、ドライディング(DREI
DING)2とは、原則として軌道混成様式に依存する
パラメータを用いて広範囲の化合物の立体的安定構造を
求めるためのシミュレーション用分子場のことである
(参考:ザ ジャーナル オブフィジカル ケミストリ
ー、94巻、26号、1990年8897-8909頁(The Jour
nal of Physical Chemistry, Vol.94, No.26, 1990. 88
97-8909)。
【0015】前記において分子力学法による構造最適化
計算は、分子モデルのポテンシャルエネルギーが最小値
となる構造を求めることができる方法であれば、特に限
定されない。例えば、対象とする分子モデルを複数個の
単位モデルに分け、それらのポテンシャルエネルギーが
最小値になる構造を見出した後、その構造を繋げていっ
て、再度、ポテンシャルエネルギーが最小値をとるよう
な安定構造を計算にて求めてもよい。
【0016】また前記において、フッ素含有ポリイミド
樹脂の広角X線回析法により求めたd−spacing
の値が0.53〜0.7nm(5.3〜7.0オングス
トローム)の範囲に存在することが高い透過性と高い選
択性を兼ね備えた分離膜を得るのに好ましい。
【0017】d−spacingの値が0.53nm
(5.3オングストローム)未満であると透過性が過小
となり実用性が低下する傾向にあり、また0.7nm
(7.0オングストローム)を越えると分離性が過小と
なる恐れがある。
【0018】前記においてd−spacingとは、広
角X線回析法に従いBraggの式から求めた面間隔を
表す。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明に用いられるフッ素含有ポ
リイミド樹脂は単独で用いてもよいが、2種類以上の混
合物としても用いることができる。さらには、50モル
%以下であればフッ素含有ポリイミド樹脂以外のポリス
ルホン、ポリエーテルスルホンなどのポリマーとの共重
合体、もしくは混合物であってもよい。
【0020】本発明で用いられるフッ素含有ポリイミド
樹脂は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物
(ただし、前記酸成分またはアミン成分中の少なくとも
一方の成分はフッ素含有基を含む)を用いて、例えば、
米国特許第3959350号明細書に記載されているよ
うな公知の重合方法で得られる。例えば、テトラカルボ
ン酸二無水物とジアミン化合物(ただし、前記酸成分ま
たはアミン成分中の少なくとも一方の成分はフッ素含有
基を含む)をほぼ等モル量を用い、極性溶媒中、約80
℃以下の温度、好ましくは、0〜60℃で撹拌し、ポリ
アミック酸を重合する。ここで用いられる極性溶媒は特
に限定されないが、N−メチルピロリドン、ピリジン、
ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチ
ルスルホキシド、テトラメチル尿素、フェノール、クレ
ゾール、テトラハイドロフランなどが好適に用いられ
る。
【0021】得られたポリアミック酸の極性溶媒溶液に
トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の第
3級アミン化合物、無水酢酸、塩化チオニル、カルボジ
イミドなどのイミド化促進剤を添加し、5〜150℃の
温度で撹拌し、イミド化する。イミド化反応を行う際、
イミド化促進剤を添加することなく、上記ポリアミック
酸溶液を100〜400℃、好ましくは、120〜30
0℃で加熱してイミド化してもよい。
【0022】イミド化反応後、重合時の極性溶媒やイミ
ド化促進剤を除去するために、多量のアセトン、アルコ
ールまたは水等の溶液に滴下し精製することにより、膜
材料として好適なポリイミド樹脂が得られる。
【0023】また、イミド化促進剤を添加することな
く、イミド化反応を行う場合は、ポリアミック酸溶液を
多量のアセトン、またはアルコール等の溶液に滴下して
得られたポリアミック酸粉末やポリアミック酸溶液から
溶媒を蒸発させて得られたポリアミック酸の固体(蒸発
の際、沈殿剤等を加えてポリアミック酸粉末を形成さ
せ、濾別してもよい)を100〜400℃に加熱してイ
ミド化することにより、膜材料として好適なポリイミド
樹脂が得られる。
【0024】本発明で用いられる緻密膜の製膜法は、特
に限定されないが、例えば、上述のフッ素含有ポリイミ
ド樹脂を適当な溶媒に溶解して製膜液を調製し、製膜液
をガラス、金属、プラスチック等の平滑な表面を有する
平板や管に一定の厚さで流延し、次いで、加熱処理によ
り溶媒を除去する方法が好適に用いられる。
【0025】本発明で用いられる非対称膜の製造法は、
特に限定されないが、生産性、コスト面から湿式相転換
製膜法が好ましく用いられる。例えば、上記のフッ素含
有ポリイミド樹脂を所定の有機溶媒に溶解して製膜液を
調製し、製膜液をガラス、金属、プラスチック等の平板
や管、あるいは、織布、不織布等の多孔質支持体上に一
定の厚さで流延し、凝固液(製膜液中のフッ素含有ポリ
イミド樹脂は溶解しないが、製膜液中の有機溶媒と相溶
性のある溶媒)に浸漬するか、または、製膜液を同心円
状の2重構造のノズルから押し出し、上記凝固液に浸漬
して非対称膜を調製し、その後、膜を乾燥する方法をと
ることができる。
【0026】フッ素含有ポリイミド樹脂の溶媒として
は、特に限定されないが、N−メチル−2−ピロリド
ン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジ
メチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエ
ーテル、1,2−ジメトキシメタン等が挙げられる。
【0027】これらの有機溶媒は単独で用いる以外に、
2種以上の混合溶媒としても用いられる。上記有機溶媒
は極性が小さく、凝固液として用いる溶媒との親和性の
弱い溶媒が好ましく、例えば、ジエチレングリコールジ
メチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン等が挙げら
れる。凝固液として用いる溶媒との親和性の弱い溶媒を
製膜液に用いた場合、湿式相転換製膜時にスキン状薄層
の形成よりも製膜液中の溶媒が凝固液として用いる溶媒
中へ進出する速度が十分小さくなる。その結果、広範囲
にわたって、分離性能を大きく低下させるピンホールが
存在しないスキン状薄層と多孔質構造層を有する非対称
膜を得ることができる。
【0028】上記有機溶媒を浸漬し除去する際に用いら
れる凝固液は用いるフッ素含有ポリイミド樹脂を溶解し
ないが、製膜液中の溶媒と相溶性を有する溶媒であれ
ば、特に限定されないが、水やエタノール、メタノー
ル、イソプロピルアルコール等のアルコール類およびこ
れらの混合液が用いられ、特に水が好適に用いられる。
製膜液中の有機溶媒を浸漬除去する際の凝固液の温度は
特に限定されないが、好ましくは0〜50℃の温度で行
われる。
【0029】製膜液のポリイミド溶液濃度は3〜40重
量%、好ましくは10〜30重量%である。また、製膜
液を調整する場合に必要に応じて、膨潤剤、分散剤、増
粘剤等を加えてもよい。製膜液を流延する手段として
は、例えば、ドクターナイフ、ドクタープレート、アプ
リケーター等を利用することができる。また、本発明に
おける膜の形状は特に限定されないが、チューブ状(中
空糸状を含む)、平膜状のものが好適に用いられる。
【0030】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に
説明する。本発明はこの実施例に何ら限定されるもので
はない。
【0031】(実施例) 前記式(化1)で表される繰り返し単位とするフッ素含
有ポリイミドを以下の方法で合成した。5,5´−2,
2´−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチ
リデン−ビス−1,3−イソベンゾフランジオン(6F
DA)0.0761molと、3,3´−ジメトキシ−
4,4´−ジアミノビフェニルジハイドロクロライド
(DSH)0.0761molおよび溶媒としてN−メ
チル−2−ピロリドン(NMP)(200ml)とo−
ジクロロベンゼン(50ml)を加え、アルゴン雰囲気
下、撹拌しながらフラスコを室温から170℃まで昇温
させ、170℃で生成する水を共沸脱水させながらイミ
ド化反応を行った。反応終了後、室温まで冷却し、重合
液を過剰量の水中に高速撹拌下、滴下し沈殿精製させ
た。さらにメタノールで精製し、前記式(化1)で表さ
れる最小繰り返し単位を構造単位とするフッ素含有ポリ
イミド樹脂を得た。次に、前記式(化1)で表される最
小繰り返し単位を構造単位とするフッ素含有ポリイミド
9重量部を希釈し、有機溶媒としてNMPを91重量部
を加え、100℃で6時間撹拌し溶解した。その後、濾
過し、静置して十分に脱泡し、製膜液を調整した。製膜
液をアプリケータを用いガラス板上に、幅20cm、厚
さ300μmで流延し、110℃で1時間、150℃で
1時間、200℃で3時間、さらに真空下にて200℃
で72時間加熱処理を施し、厚さ20〜30μmのフッ
素含有ポリイミドより成る緻密膜を得た。この膜を構成
するフッ素含有ポリイミド樹脂について、Biosym
/Molecular simulations社のソ
フトウエアCerius2を用い、DREIDING2
を分子力場に採用した分子力学法により最小繰り返し単
位分子構造内の単位ファンデルワールス体積あたりの主
鎖の回転障壁エネルギーを計算したところ、218ca
l/cm3となった。ここで、ファンデルワールス体積
はBondiの値を用い、原子団寄与法に従い求めた。
また、広角X線回析法により膜を構成するフッ素含有ポ
リイミド樹脂のd−spacingを測定したところ
0.649nm(6.49オングストローム)に存在し
ていた。したがって、この膜は本発明における分離膜の
条件を満足するものであった。次に、この膜について、
温度25℃、供給圧力4atmにて、二酸化炭素とメタ
ンの透過性能を評価した結果を後にまとめて表1に示
す。
【0032】(比較例) フッ素含有ポリイミド樹脂のかわりにポリスルホン樹脂
を用い、ポリスルホン樹脂18重量部に有機溶媒として
NMPを82重量部を加え、100℃で12時間撹拌し
溶解した。その後、濾過し、静置して十分に脱泡し、製
膜液を調整した。得られた製膜液をアプリケータを用い
ガラス板上に、幅20cm、厚さ300μmで流延し、
110℃で1時間、150℃で3時間さらに真空下にて
150℃で72時間加熱処理を施し、厚さ20〜30μ
mのポリスルホンより成る緻密膜を得た。この膜を構成
しているポリスルホン樹脂について、実施例と同様にし
て最小繰り返し単位分子構造内の単位ファンデルワール
ス体積あたりの主鎖の回転障壁エネルギーを計算したと
ころ、132cal/cm3となった。また、広角X線
回析法によりこの膜を構成するポリスルホン樹脂のd−
spacingを測定したところ0.510nm(5.
10オングストローム)に存在していた。したがって、
この膜は本発明における分離膜の条件を満足するもので
はなかった。次に、この膜について、実施例と同様にし
てガスの透過性能を評価した結果を後にまとめて表1に
示す。
【0033】(表1) 膜素材略称 ΔEt d PCO 2 PCO 2 /PCH 4 実施例 6FDA-DSH 218 6.49 4.10×10-12 75.0 比較例 PSF 132 5.10 6.10×10-10 25.1 (備考) ΔEt:ドライディング(DREIDING)2を分子
力場とした分子力学法により求めた高分子の最小繰り返
し単位分子構造における単位ファンデルワールス体積あ
たりの主鎖の回転障壁エネルギー[cal/cm3] d:広角X線解析法より求めたd−spacing[オ
ングストローム] PCO2:4atm、25℃にて供給した場合の二酸化
炭素の透過係数[cm3(STP)cm/cm2scmH
g] PCO2/PCH4:4atm、25℃にて供給した場合
の二酸化炭素とメタンの分離係数(透過係数比)[−]
【0034】表1から明らかな通り、本発明の実施例品
は二酸化炭素に対して高い分離性と高い透過性を有する
ことが確認できた。
【0035】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、ド
ライディング(DREIDING)2を分子力場とした
分子力学法により求めた最小繰り返し単位分子構造内の
単位ファンデルワールス体積あたりの主鎖の回転障壁エ
ネルギーが所定値以上となり、前記式(化1)で表され
る繰り返し単位を主成分とするフッ素含有ポリイミド樹
脂を膜の主成分に用いることにより、二酸化炭素に対し
て高い分離性と高い透過性を兼ね備えた膜が得られ、こ
の膜を用いて、性能面、コスト面においても実用的に満
足しうる二酸化炭素とメタンを含む混合物からの二酸化
炭素の分離方法を提供することができた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 池田 健一 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日 東電工株式会社内 (56)参考文献 特開 平8−318140(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01D 53/22 B01D 61/00 - 71/82 510

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 二酸化炭素とメタンを含む混合物から二
    酸化炭素を選択的に透過させ分離するために用いる分離
    膜であって、ドライディング(DREIDING)2を
    分子力場とした分子力学法により求めた最小繰り返し単
    位分子構造内の単位ファンデルワールス体積あたりの主
    鎖の回転障壁エネルギーが150cal/cm3以上で
    あるフッ素含有ポリイミド樹脂を用い、このフッ素含有
    ポリイミド樹脂が、下記式(化1)で表される繰り返し
    単位を主成分とする二酸化炭素の選択的分離膜。 【化1】
  2. 【請求項2】 広角X線回析法により求めたフッ素含有
    ポリイミド樹脂のd−spacingの値が0.53〜
    0.7nm(5.3〜7.0オングストローム)に存在
    する請求項1記載の二酸化炭素の選択的分離膜。
  3. 【請求項3】 フッ素含有ポリイミド樹脂を主成分とす
    る膜が、緻密膜及び非対称膜から選ばれる少なくとも一
    つの膜である請求項1または2に記載の二酸化炭素の選
    択的分離膜。
  4. 【請求項4】 二酸化炭素とメタンを含む混合物を、請
    求項1から3のいずれか一項に記載の選択的分離膜の一
    方の面に接触させ、この膜を通して、二酸化炭素を選択
    的に透過させ分離する二酸化炭素の選択的分離方法。
JP34887696A 1996-12-26 1996-12-26 二酸化炭素の選択的分離膜および選択的分離方法 Expired - Fee Related JP3238873B2 (ja)

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