JP3235558B2 - 車両用シートの回転装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は車両用シートの回転
装置に関し、特に、シートベルト荷重に対して十分な耐
久性を発揮する装置構造の改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】車両用シートの回転装置としては一般的
に、車両フロア側に設けられたロアプレート上に、摺動
部材やボール体を介してアッパプレートを回転自在に載
置し、アッパプレート上にシートを支持する構造とした
ものが多い。この場合、車両の急加減速時等にシートベ
ルトからアッパプレートへ大きな荷重が入力すると、ロ
アプレートから引き離されるような作用力をアッパプレ
ートが受ける。そこで、例えば特開平８−１１６００号
公報等には、アッパプレートとロアプレートの対向面に
フック部を形成したＵ字状の規制部材（上記公報の図３
参照）を設けて、シートベルト荷重が入力した際には規
制部材が係合してアッパプレートの過度な変位を防止す
るようにしている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところで、両規制部材
が係合した際にロアプレートに過大な力が作用してこれ
が変形するおそれがあり、ロアプレートの板厚を過度に
厚くする等の剛性向上対策が必要であった。

【０００４】そこで、本発明はこのような課題を解決す
るもので、装置構成部品の過度な剛性向上を必要とする
ことなく、シートベルト荷重に対して十分な耐久性を有
する車両用シートの回転装置を提供することを一つの目
的とする。

【０００５】また、本発明は、装置を構成する部品点数
を可及的に削減することを他の目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本第１発明では、車両フロア側に設けられたロアプ
レート（１）上に、シートを載置するアッパプレート
（２）を回転自在に設置してなる回転装置において、ロ
アプレート（１）とアッパプレート（２）の対向面にそ
れぞれ、互いに係合することによってロアプレート
（１）とアッパプレート（２）の離間変位を規制する規
制部材（４Ａ，４Ｂ，５）を設けるとともに、ロアプレ
ート（１）の規制部材（４Ｂ）を、車両フロア側に設け
た補強ブラケット（１０）に結合し、かつ補強ブラケッ
ト（１０）は両端がシートトラック（３Ａ，３Ｂ）に固
定されている。

【０００７】本第１発明においては、ロアプレートの規
制部材が補強ブラケットに結合され、かつ補強ブラケッ
トは両端がシートトラックに固定されている。したがっ
て、アッパプレートの規制部材と係合した際にロアプレ
ートの規制部材に大きなシートベルト荷重が印加して
も、このシートベルト荷重は速やかに補強ブラケットか
らシートトラックに伝達されてここで受けられ、ロアプ
レートには殆ど伝達されない。したがって、ロアプレー
トの板厚を過度に厚くすることなくシートベルト荷重に
対して十分な耐久性を発揮する。

【０００８】

【０００９】本第２発明では、アッパプレート（２）の
規制部材（２７１）と係合するロアプレート（１）側の
規制部（１０４）を、補強ブラケット（１０）の一部に
成形する。これによれば、ロアプレート側に別体の規制
部材を設ける必要がないから部品点数が削減される。

【００１０】なお、上記カッコ内の符号は、後述する実
施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであ
る。

【００１１】

【発明の実施の形態】（第１実施形態）図１には２人席
シートに使用する回転装置を前方から見た分解斜視図を
示す。回転装置は板材をプレス成形したロアプレート１
とアッパプレート２を有し、これらプレート１，２は外
形が略四角形で、中心に円形の開口１１，２１が形成さ
れている。ロアプレート１には外周部の前後４か所に通
孔１２が形成してあり、これら通孔１２に、左右のシー
トトラック３Ａ，３Ｂの各アッパレール３１上面の前後
端部に立設されたボルト３２がそれぞれ挿通されてい
る。ロアプレート１の前後辺上面には円弧状に湾曲した
規制部材４Ａ，４Ｂが設けられている。規制部材４Ａ，
４Ｂは各内周縁が上方へ立ち上がる立壁になるととも
に、立壁の上端は外周側へ逆Ｕ字状に折り曲げられてフ
ック部４１となっている。

【００１２】アッパプレート２はロアプレート１の上方
に同心に位置させられ、その外周部２３の後辺下面には
円弧状に湾曲した規制部材５が設けられている。規制部
材５は全体が円弧状に湾曲し、内周縁が下方へ立ち下が
る立壁になるとともに、立壁の下端は内周側へＵ字状に
折り曲げられてフック部５１となっている。規制部材５
は両端に立設されたボルト５２が、アッパプレート２の
外周部２３の後辺に形成された通孔２２内に挿入され、
さらにアッパプレート２の上方に位置するリインホース
メントパネル６を貫通している。リインホースメントパ
ネル６は左右方向へ延びる長尺体で、これに図略のシー
トクッションが載置される。リインホースメントパネル
６の中央部はアッパプレート２の上面に接して位置して
いる。

【００１３】図２には、シートトラック３Ａ，３Ｂおよ
びロアプレート１、アッパプレート２を後方より見た分
解斜視図を示す。ロアプレート１の外周部１３の後辺下
方には補強ブラケット１０が位置している。補強ブラケ
ット１０はＬ字断面をなす長尺板体で、その両端部に通
孔１０１を有するとともに、これら通孔１０１よりも中
央寄りに通孔１０２を有している。そして、補強ブラケ
ット１０はその通孔１０１に挿通されたボルト３３がア
ッパレール３１後端のウエルドナット３４内にねじ込ま
れて固定されている。また、各アッパレール３１の前後
端にそれぞれ立設された上記ボルト３２はロアプレート
１の通孔１２（図１）および規制部材４Ａ，４Ｂの端部
の通孔４２を貫通して、鍔付きナット４３（図１）によ
ってこれらが共締め結合されている。そして、規制部材
４Ｂの中央部両側に下方へ向けて突設されたボルト４４
がロアプレート１の通孔１６（図１）を経て補強ブラケ
ット１０の上記通孔１０２を貫通し、図３に示すよう
に、ナット４５によりこれらが共締め結合されている。

【００１４】図３において、ロアプレート１は外周部１
３から中間部１４、内周部１５へと段付きに高くなって
おり、中間部１４の板面には上方へ開放する断面円弧状
のガイド溝７１が全周に形成されている。一方、アッパ
プレート２は外周部２３から内周部２４へと段付きに低
くなり、内周部２４の外周側板面には上記ガイド溝７１
に対向する位置に、下方へ開放する断面円弧状のガイド
溝７２が全周に形成されるとともに、内周側板面には上
方へ開放する略三角断面のガイド溝７３が全周に形成さ
れている。ロアプレート１の内周部１５の板面には、図
１には示されていない円形リング状のセットプレート８
の内周部８１がカシメにより固定してあり、このセット
プレート８の外周部８２板面には上記ガイド溝７３に対
向する位置に、下方へ開放する略三角断面のガイド溝７
４が全周に形成されている。

【００１５】各ガイド溝７１，７２と７３，７４間には
金属ボール７５，７６が配設されており、アッパプレー
ト２は、これら金属ボール７５，７６を介して上下から
ロアプレート１とセットプレート８で挟持されて回転自
在となっている。また、シートが前方を向いた状態で、
図２に示すように、ロアプレート１とアッパプレート２
に設けた各規制部材４Ｂ，５はそのフック部４１，５１
が一定間隙で対向している。なお、シートが１８０°回
転して後方を向いた状態では、規制部材４Ａ，５（図
１）のフック部４１，５１が互いに対向する。

【００１６】リインホースメントパネル６はほぼ平板状
のアッパパネル６１と、上方へ開く浅い容器断面のロア
パネル６２とを前後（図３の左右）縁で接合して閉断面
空間構造としてあり、上下の各パネル６１，６２には規
制部材５のボルト５２が貫通する通孔６３，６４が形成
されるとともに、これら通孔６３，６４を結ぶ空間を囲
むようにパネル６１，６２間に筒状のスペーサ６５が配
設されている。各通孔２２，６３，６４に貫通させたウ
エルドボルト５２の上端部にはシートベルトアンカ９が
取付孔９１により装着され、ボルト５２の先端に結合さ
れた袋ナット５３によって、シートベルトアンカ９と上
記規制部材５がリインホースメントパネル６に共締め固
定されている。また、図１に示すように、アッパプレー
ト２の外周部２３の後辺には上記各通孔２２の外側位置
にボルト２５が立設してあり、これらボルト２５がリイ
ンホースメントパネル６を貫通して袋ナット（図示略）
によって結合されている。

【００１７】このような構造の回転装置において、車両
走行中の急ブレーキ等により、シートベルトアンカ９を
介して大きな引き上げ方向の荷重が入力すると、このシ
ートベルト荷重はボルト５２により規制部材５へ伝達さ
れるが、そのフック部５１がこれに対向する規制部材４
Ｂのフック部４１に係合してアッパプレート２とロアプ
レート１の過大な離間変位が防止される。この時、規制
部材４Ｂに入力したシートベルト荷重はボルト４４によ
りこれと結合された補強ブラケット１０に入力し、これ
を経て左右のアッパレール３１へ伝達される。このよう
に、本実施形態ではシートベルト荷重がアッパプレート
２を介することなく直接規制部材５へ伝達されるととも
に、規制部材４Ｂに入力したシートベルト荷重はロアプ
レート１を介することなく直接補強ブラケット１０から
アッパレール３１へ伝達される。したがって、アッパプ
レート２およびロアプレート１の板厚を過度に厚くしな
くても、規制部材４Ｂ，５による規制作用発揮の際にア
ッパプレート２やロアプレート１の一部が変形する等の
問題は生じない。加えて、リインホースメントパネル６
は閉断面空間構造となっているから、十分な強度を有す
る。

【００１８】（第２実施形態）図４は本発明の他の構造
を示す分解斜視図、図５はその断面図で、それぞれ第１
実施形態の図２、図３に対応するものである。規制部材
４Ｂは立壁上端にＵ字断面のフック部４１を有し、この
フック部４１は本実施形態では内周側へ屈曲している。
規制部材４Ｂの立壁は下方へ延出させられて延出部４９
となり、その左右位置に通孔４８が形成されている。そ
して、これら通孔４８に挿通されたボルト４６が、補強
ブラケット１０の垂直壁の左右位置に形成された通孔１
０３を貫通してナット４７により結合固定されている。
規制部材５は上記規制部材４Ｂに対応して、下方へ立ち
下がる立壁が外周縁に形成されるとともに、その先端の
Ｕ字断面のフック部５１は外周側へ屈曲している。な
お、規制部材４Ａはロアプレート１の外周部１３の前辺
上に溶接で固定され、そのフック部４１は内周側へ屈曲
している。他の構造は上記第１実施形態と同様である。

【００１９】このような構造の回転装置において、シー
トベルトアンカ９から入力した荷重はボルト５２により
規制部材５へ伝達され、そのフック部５１がこれに対向
する規制部材４Ｂのフック部４１に係合してアッパプレ
ート２とロアプレート１の過大な離間変位が防止され
る。この時、規制部材４Ｂに入力したシートベルト荷重
は、ボルト４６によってこれと結合された補強ブラケッ
ト１０に直接入力し、補強ブラケット１０を経て左右の
アッパレール３１へ伝達される。本実施形態ではシート
ベルト荷重は規制部材４Ｂから最短経路で補強ブラケッ
ト１０へ入力し、アッパレール３１へと伝達される。し
たがって、上記第１実施形態の作用効果に加えて、ロア
プレート１の変形をさらに確実に防止することができ
る。

【００２０】（第３実施形態）図６は本発明のさらに他
の構造を示す分解斜視図、図７はその断面図で、それぞ
れ第１実施形態の図２、図３に対応するものである。本
実施形態では、アッパプレート２の一部に規制部２７を
成形してある。すなわち、アッパプレート２の外周部２
３の後縁は下方へ屈曲させられるとともに、その下端が
Ｕ字形に外周側へ折り返されて、フック部２７１を有す
る上記規制部２７となっている。また、アッパプレート
２の外周部２３の後辺にはリインホースメントパネル６
への取付用ボルト２６が立設されている。一方、ロアプ
レート１の外周部１３の後辺中央には、なだらかな斜面
を有する山型の樹脂ピース１７がカシメにより固定され
ている。他の構造は上記第２実施形態と同様である。

【００２１】このような構造によれば上記第２実施形態
の作用効果に加えて以下の作用効果を得ることができ
る。すなわち、アッパプレート２に規制部２７を一体形
成したから、アッパプレート２側の規制部材５を別体で
準備する第１および第２実施形態に比して、部品点数を
削減することができる。また、樹脂ピース１７を設けた
ことにより、シートが前方を向く際に図８に示すように
規制部２７のフック部２７１が樹脂ピース１７に向けて
移動し、フック部２７１が樹脂ピース１７の頂部に乗り
上げる（図７）。これにより、シートが前方を向いた状
態でのガタの発生が防止されるとともに、回転操作時の
節度感が得られる。

【００２２】（第４実施形態）図９には補強ブラケット
の他の例を示す。図において、補強ブラケット１０の本
体部はＬ字形断面に屈曲成形され、その上面前縁には強
化フランジ１０６が形成されるとともに、前縁中央部は
平面視で円弧状に立ち上がって規制部１０４となってい
る。この規制部１０４の上端はＵ字状に折り返されてフ
ック部１０５となっている。この補強ブラケット１０は
上面両端部に形成された通孔１０１にボルト３２（図６
参照）が挿通されてアッパレール３１に結合される。シ
ートが前方を向いた状態で、規制部１０４のフック部１
０５とアッパプレート２に形成された規制部２７（図６
参照）のフック部２７１が対向する。

【００２３】このような構造によれば、シートベルト荷
重が入力した際には、規制部２７のフック部２７１が規
制部１０４のフック部１０５と係合してアッパプレート
２とロアプレート１の過大な離間変位が防止される。規
制部１０４に入力したシートベルト荷重は補強ブラケッ
ト１０の本体部を経てアッパレール３１に伝達される。
本実施形態では、補強ブラケット１０がロアプレート１
と結合されないから、ロアプレート１の変形をより確実
に防止することができる。また、補強ブラケット１０の
一部に規制部１０４を形成したから、第１ないし第３実
施形態のようにロアプレート１側に別体の規制部材４Ｂ
を準備する必要がなく、部品点数が削減できる。

【００２４】

【発明の効果】以上のように、本発明の車両用シートの
回転装置によれば、装置構成部品の過度な剛性向上を必
要とすることなく、シートベルト荷重に対して十分な耐
久性を有するとともに、装置構成部品の点数を削減する
ことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施形態における、回転装置を前
方から見た分解斜視図である。

【図２】回転装置を後方から見た要部分解斜視図であ
る。

【図３】図１のIII −III 線に沿った断面図である。

【図４】本発明の第２実施形態における、回転装置を後
方から見た要部分解斜視図である。

【図５】回転装置の断面図である。

【図６】本発明の第３実施形態における、回転装置を後
方から見た要部分解斜視図である。

【図７】回転装置の断面図である。

【図８】回転装置の要部斜視図である。

【図９】本発明の第４実施形態における、補強ブラケッ
トの斜視図である。

【符号の説明】

１…ロアプレート、２…アッパプレート、２７１…規制
部、３Ａ，３Ｂ…シートレール、３１…アッパレール、
４Ａ，４Ｂ，５…規制部材、１０…補強ブラケット、１
０４…規制部。

フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B60N 2/14

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 車両フロア側に設けられたロアプレート
   上に、シートを載置するアッパプレートを回転自在に設
   置してなる回転装置において、前記ロアプレートと前記
   アッパプレートの対向面にそれぞれ、互いに係合するこ
   とによってこれらロアプレートとアッパプレートの離間
   変位を規制する規制部材を設けるとともに、前記ロアプ
   レートの規制部材を、車両フロア側に設けた補強ブラケ
   ットに結合し、かつ前記補強ブラケットは両端がシート
   トラックに固定されていることを特徴とする車両用シー
   トの回転装置。
2. 【請求項２】 前記アッパプレートの規制部材と係合す
   るロアプレート側の規制部を、前記補強ブラケットの一
   部に成形した請求項１に記載の車両用シートの回転装
   置。