JP3232197B2 - 耐食性に優れたCr含有耐食性鋼帯の製造方法 - Google Patents

耐食性に優れたCr含有耐食性鋼帯の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、Cr含有耐食性鋼帯の
製造方法に係わり、特にCrを1〜19wt%含有する
冷間圧延後の耐食性に優れたCr含有耐食性鋼帯の製造
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】冷間圧延後のCr含有鋼帯は、従来から
連続焼鈍・酸洗設備によって連続的な焼鈍酸洗処理が施
されている。図3に示されるように、冷間圧延後のCr
含有鋼帯10は、予熱帯12、加熱帯14、冷却帯16
を順次通過し、その後、水冷帯18で水冷され、酸洗槽
20で脱スケールと不働態化処理が施され、リンス槽2
2、ドライヤ24を通過して製造される。なお、酸洗槽
20の酸洗液は酸洗後、冷却装置26で冷却される。酸
洗処理は、中性塩電解、硝酸電解、硝酸及び硝弗酸など
を組み合わせて行われており、この酸洗処理によりCr
含有鋼帯に脱スケールと不働態化処理が施される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述した冷間圧延後の
Cr含有鋼帯の従来の連続焼鈍・酸洗処理では、酸によ
る化学反応を利用して、焼鈍後の鋼帯表面の脱スケール
と不働態化処理を行っているので、脱スケールが不完全
であればその後の不働態化が十分に行われず、満足する
製品の耐食性が得られない。また、脱スケールを促進さ
せるには、高濃度、高温に保持された酸液が必要であ
り、酸洗液中に鋼板の鉄分が溶解して酸洗能力が変わる
ので酸濃度管理が極めて厄介である。さらに酸液の化学
反応による液温の上昇を防止するために酸液の冷却装置
が必要であったり、高濃度の酸液に対応した配管等の設
備も必要である。一方、酸濃度を高くしない場合には酸
洗槽が長大化して設備費増につながり、またそのままで
は酸洗律速になる生産能力低下をきたす。
【0004】本発明の目的は、上記各問題を解決して従
来よりも耐食性に優れ、かつ酸洗コストを抑えたCr含
有耐食性鋼帯の製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、Cr含有耐食
性鋼帯の製造方法において、冷間圧延後のCr含有鋼帯
を露点−70〜−30℃の範囲の雰囲気中で焼鈍し、つ
いで焼鈍時に形成された表面の酸化膜を、研削量が1.0g
/m2 以上かつ酸洗減量が0.5g/m2 以上の範囲で、まず機
械的研削を施し、その後硝酸を含有する酸洗液にて仕上
げ酸洗ならびに不働態化処理を施すことを特徴とする耐
食性に優れたCr含有耐食性鋼帯の製造方法である。
【0006】
【作用】本発明によれば、露点を−70〜−30℃の範
囲に調整した雰囲気中で焼鈍するので、鋼帯表面に形成
される酸化膜厚さを1000Å以下にできる。露点が−
30℃超では、酸化皮膜厚さを1000Å以下にするの
は困難なので好ましくない。一方、露点を−70℃より
低くすることは操業コストのアップにつながるので好ま
しくない。
【0007】本発明では、その後この酸化膜をまず機械
的研削により除去した後、酸洗による不働態化処理を行
うようにしたから、従来に比べ脱スケール及び不働態化
処理に要する酸洗液を低濃度化できる。しかも酸洗槽内
での脱スケール反応による酸洗液の温度上昇を低減でき
るので酸洗液の冷却装置を縮小あるいは省略できる。ま
た、酸洗時間を短縮できるから、酸洗設備を縮小でき、
さらに、処理速度アップによる生産性能力向上を達成で
きる。
【0008】本発明者らは、Crを1〜19wt%含有
する冷間圧延鋼帯について、耐食性に及ぼす機械的研削
量及び酸洗減量との関係を種々調査した結果、図1に示
す研削量及び酸洗減量の範囲で、まず機械的研削を施
し、その後硝酸を含有する酸洗液にて仕上げ酸洗ならび
に不働態化処理を施すことにより耐食性に優れたCr含
有耐食性鋼帯が製造できることを見出した。
【0009】機械的研削手段としては、ブラシ研削やベ
ルト研削等を利用できる。また、酸洗液としては、不働
態化処理作用のある硝酸を含有する酸、硝酸単独、硝塩
酸、硝弗酸などの他に、ハロゲン化物、塩化物、硫酸ソ
ーダ等を添加した酸液も使用できる。
【0010】
【実施例】図2は、本発明のCr含有耐食性鋼帯の製造
方法に用いる装置の一例を示す概略構成図である。冷間
圧延後のCr含有鋼帯10は、予熱帯12、加熱帯1
4、冷却帯16を順次通過し、その後、水冷帯18で水
冷され、研削ブラシ34により酸化膜を除去され、酸洗
槽20で仕上げ酸洗及び不働態化処理が施され、リンス
槽22、ドライヤ24を通過して製造される。なお、酸
洗槽20の酸洗液は酸洗後、冷却装置26で冷却され
る。酸洗条件として、酸洗液には、硝酸5wt%、10
wt%、15wt%を含む水溶液を用い、電解電流密度
を7A/dm2 、電解時間を5 秒とした。
【0011】図2の装置を用いて、Crを11wt%含
有する鋼帯を、露点−40℃の雰囲気で、温度880℃
で焼鈍し、研削ブラシ34により種々の研削量で研削
し、引き続いて酸洗槽20で種々の酸洗減量になるよう
に仕上げ酸洗及び不働態化処理を施した。なお、耐食性
試験は、JIS Z2371−1955に規定された方
法に従い、温度35℃、時間4時間で行った。結果を図
1に記入した。
【0012】この場合、露点が−40℃なので、Cr含
有鋼帯の表面に形成される酸化膜の厚みは500Å程度
であった。図1の右上方の領域、例えば研削量1.0g
/m 2 以上(両面合計)、酸洗減量0.5g/m2 以上
(両面合計)の領域で良好な耐食性が得られているのが
分かる。また、研削したまま(酸洗減量が0)の鋼帯は
表面に欠陥(ミクロスケール、研削疵、段差等)が多数
導入されたままであるために、すきま腐食を起こしやす
いという理由で耐食性が悪い。
【0013】また、酸洗減量の増加は、酸洗液の劣化を
促進させるため酸コストの増大につながる。一方、研削
量の増加は、研削ブラシの寿命を縮め、研削コストの増
大につながる。よって、焼鈍時の露点は−30℃以下に
保ち、露点により研削量を変え、酸洗減量0.5〜1.
0g/m2 の範囲で製造することが有利である。
【0014】
【発明の効果】本発明によれば、冷間圧延後のCr含有
鋼帯を露点を制御した雰囲気中で焼鈍するので、形成さ
れる酸化膜が薄く、それに図1に示す研削量及び酸洗減
量の範囲で、まず機械的研削を施し、その後硝酸を含有
する酸洗液にて仕上げ酸洗ならびに不働態化処理を施す
ので、従来よりも耐食性に優れ、かつ酸洗コストを抑え
たCr含有耐食性鋼帯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】研削量及び酸洗減量が耐食性に及ぼす影響を示
すグラフ。
【図2】本発明のCr含有耐食性鋼帯の製造方法に用い
る装置の一例を示す概略構成図。
【図3】従来のCr含有耐食性鋼帯の製造方法に用いる
装置の一例を示す概略構成図。
【符号の説明】
10 Cr含有鋼帯 12 予熱帯 14 加熱帯 16 冷却帯 18 水冷帯 20 酸洗槽 22 リンス槽 24 ドライヤ 26 酸洗液の冷却装置 34 研削ブラシ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高崎 順介 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社 千葉製鉄所内 (72)発明者 今村 元己 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社 千葉製鉄所内 (56)参考文献 特開 平1−319700(JP,A) 特開 昭62−109928(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C25F 1/08

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Cr含有耐食性鋼帯の製造方法におい
    て、冷間圧延後のCr含有鋼帯を露点−70〜−30℃
    の範囲の雰囲気中で焼鈍し、ついで焼鈍時に形成された
    表面の酸化膜を、研削量が1.0g/m2 以上かつ酸洗減量が
    0.5g/m2 以上の範囲で、まず機械的研削を施し、その後
    硝酸を含有する酸洗液にて仕上げ酸洗ならびに不働態化
    処理を施すことを特徴とする耐食性に優れたCr含有耐
    食性鋼帯の製造方法。
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