JP3228616B2 - 整経方法とその実施のための整経機 - Google Patents

整経方法とその実施のための整経機

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は整経方法とその実施の
ための整経機に関するものであり、さらに詳しくは多品
種小ロット条件下での給糸体供給に対する整経方法の適
合性の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】整経方法としては、一般に通常整経方式
と部分整経方式とが、従来から工程条件に応じて適宜採
用されている。
【0003】通常整経方式においては、まずクリールに
仕掛けられた複数の給糸体から糸を引き出して整経ビー
ムに巻き取り、この操作を繰り返して複数の整経ビーム
を用意する。ついでこれらの複数の整経ビームから糸を
同時に引き出して1個の製織ビームを整経する。
【0004】部分整経方式においては、まずクリールに
仕掛けられた複数の給糸体から糸を引き出してテーパー
形状の巻き付け面を有した部分整経ドラムのテーパー側
の端部に1個のバンドを形成する。すなわちドラムの軸
に対して斜行する状態でドラムの軸方向の幅より小さい
幅を有した糸層を1個巻き取る。
【0005】1個目のバンドに隣接するように2つ目の
バンドを同様に形成する。整経ドラム上に必要な総糸本
数が巻かれるようになるまで、この操作を繰返して複数
のバンドを有した部分整経ドラムを用意する。ついでこ
の部分整経ドラムから糸を同時に引き出して1個の製織
ビームを用意する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが従来の通常整
経方式および部分整経方式は、それぞれ下記のような欠
点を有している。即ち、従来の通常整経方式について
は、給糸体メーカーからの給糸体の供給が多品種小ロッ
ト条件下で行なわれる場合には不都合が生じるのであ
る。例えばシステムの目標として総糸本数が9000本
で総糸量が675Kgの製織ビームを形成する必要があ
るが、1個あたり1.5Kgの給糸体の供給が1ロット
当り450個しか期待できないものとする。
【0007】従来の通常整経方式では、1本の整経ビー
ムに巻き取る糸の総糸本数がある限度を越えて少なくな
ると、糸のピッチが粗くなるため、糸を巻き取ったとき
に、整経ビームに巻き付けられている糸面に凹凸が生じ
る。すると整経ビームから糸を引き出して製織ビームに
整経する際に、凹部から引き出される糸と凸部から引き
出される糸とでは引き出し速度に差が生じるため、張力
にも差が生じる。この結果得られる製織ビームの糸面に
筋が発生して、製織ビームの品質上好ましくない。
【0008】このような製織ビームにおける筋の発生を
回避するには、1本の整経ビームについてある限度以上
の総糸本数を確保するために給糸体メーカーから供給さ
れた給糸体の個数を増やしてやる必要がある。換言すれ
ばリワインドしなければならない訳で、作業が煩雑にな
るという欠点がある。例えば450個の給糸体をリワイ
ンドにより900個として、これから総糸本数が900
本で総糸量が67.5Kgの整経ビームを用意し、この
ような整経ビーム10個から1個の製織ビームをを整経
することになる。
【0009】従来の部分整経方式による場合には、部分
整経ドラムに形成される1つのバンドについての総糸本
数、ひいてはクリール上に仕掛ける給糸体の個数が少な
くても(例えば100〜300個であっても)、製織ビ
ームの整経は可能であるという利点を有している。例え
ば450個の給糸体から総糸量が約33.25Kgのバ
ンドを20個部分整経ドラムに形成して総糸本数が90
00本で総糸量が675Kgとし、これを製織ビームに
巻き戻してやればよい。
【0010】しかし部分整経方式の場合には、総糸量の
大きな製織ビームを整経できないという欠点がある。す
なわち製織ビームに必要な総糸本数を1個の部分整経ド
ラムに巻き付けるが故に、部分整経ドラム上の各バンド
における糸ピッチは必然的に小さくなる。したがって総
糸量の大きな製織ビームを整経する場合には、部分整経
ドラムに形成される各バンドの巻径が必然的に大きくな
り、それだけ各バンド間における巻径のばらつき量が大
となる。この結果部分整経ドラムから製織ビームへと糸
を巻き戻す際に、各バンドの巻径のばらつき量に比例し
て、各バンドから引き出される糸の引き出し速度がばら
つくためにバンド間で大きな張力差が出てくる。具体的
には巻径大のバンドからの糸の張力は小、巻径小のバン
ドからの糸の張力は大となる。この結果製織ビームの糸
面にバンド縞が発生し、製織ビームの品質上好ましくな
い。すなわち総糸量の大きな製織ビームを整経すること
はできないのである。
【0011】かかる実情に鑑み、この発明の目的は多品
種小ロット条件下での給糸体供給システムに対する整経
工程の適合性を、作業上の複雑化と製織ビームの許容総
糸量と品質との低下を招くことなしに、向上させること
にある。
【0012】
【課題を解決するための手段】このためこの発明におい
ては、給糸体からの糸を複数のテーパービームに部分整
経し、これら複数のテーパービームから1個の製織ビー
ムを整経することを要旨とするものである。ここでテー
パービームとは、前記した従来の部分整経方式で用いら
れる部分整経ドラムと糸の巻き付け面の形状については
実質的に同じであるが、部分整経ドラムが整経機に固定
されているのに対して、テーパービームは整経機から取
り外しができるものである。
【0013】
【作用】供給された給糸体をクリールに仕掛け、給糸体
からテーパービームに部分整経する。これらの操作を繰
り返して、部分形成されたテーパービームを複数本作成
し、これらの複数のテーパービームから糸を一度に引き
出し製織ビームに巻き取る。
【0014】
【実施例】上記のような基本構成において「複数のテー
パービームから1個の製織ビームを整経する」とは種々
の態様を採ることができる。最も単純には複数のテーパ
ービームから糸を同時に引き出して直接製織ビームを整
経する場合である。これを図1に示して後に説明する。
【0015】他の態様としては、テーパービームに巻き
付けられた糸をテーパー状の巻き付け面を有しない従来
公知の整経ビームに一旦巻き直し、複数の整経ビームか
ら糸を同時に引き出して製織ビームを整経する場合であ
る。特に糊付けを行なうときにこの態様を用いる。これ
を図2に示して後に説明する。
【0016】この発明における整経方法は上記のような
基本構成を有するものであるが、これを実施するための
整経システムは従来の整経方式にも適用できる構成とな
っている。すなわちテーパー状の巻き付け面を有しない
公知の整経ビームを整経機に取り付け、クリールに仕掛
けられた多数の給糸体からの糸を、ジグザグ筬と、ガイ
ドローラなどのガイド部材とを介して整経ビームに全幅
に亙って巻き付ける通常の整経機に対し、部分整経を行
うための機構、即ち、幅出し筬と、ガイドローラまたは
フィードローラなどのガイド部材とを取り付ける。そし
て、給糸体メーカーからの給糸体供給が大ロット(例え
ば700〜1600個)で期待できる場合には、従来の
通常の整経方式を行うために、整経ビームを上記整経機
に取り付け、部分整経を行なう機構を不作動状態とし
て、給糸体からの糸を整経ビームの全幅にわたり巻き取
って、その後複数の整経ビームから同時に糸を引き出し
て製織ビームを整経するようにしてもよい。
【0017】かかる態様を実施できるようにするため
に、この発明の方法を実施するための整経システムにお
いて用いる整経機は整経ビームとテーパービームとの両
方を仕掛けることができるような構造となっている。
【0018】すなわち該整経機には部分整経方式のため
の機構(幅出し筬およびフィードローラー)と通常の整
経方式のための機構(全幅のジグザグ筬と全幅のガイド
ローラー)とが設けられている。この発明の整経方法を
実施するときにはテーパービームを整経機に仕掛けて、
部分整経機構により整経を行なう。通常の整経方式によ
るときには公知の整経ビームを整経機に仕掛けて、通常
の整経方式のための機構により整経を行なうのである。
【0019】図1に示すのはこの発明の第1の実施態様
であって、給糸体からの糸が複数のバンド状に巻き付け
られている複数のテーパービームから糸を同時に引き出
して直接製織ビームを整経するものである。クリール1
には複数の給糸体2を仕掛けるようになっている。テー
パービームは、一端に最大径を有し軸方向に沿って縮径
するテーパー状の巻き付け面と、この巻き付け面の最小
径が軸方向に連続するストレート状の巻き付け面とを形
成するバレル、即ち、片側が円錐状をなすバレルと、床
面上を移動可能なように、バレルの両端に取り付けられ
たフランジとから構成されている。なお、テーパー状の
巻き付け面の最大径部分がフランジと同様の機能を有す
れば、フランジは、バレルの両端に設ける必要はなく、
上記最大径と同じ径を有するフランジを、テーパー状の
巻き付け面が形成されていない側のバレル端部のみ取り
付ければよい。
【0020】整経機3にはテーパービームと整経ビーム
の両方がをそれぞれ仕掛けることが可能となっている。
整経機の正面のフレームには部分整経機構が取り付けら
れている。この部分整経機構は図3に示すように、テー
パービーム4の幅より小なる長さを有してかつテーパー
ビーム4の幅方向に位置変更可能なフィードローラー9
と、フィードローラー9とほぼ同様の長さを有し、テー
パービーム4の幅方向に位置変更可能な幅出し筬7とを
有している。さらに整経機の左右1対のフレーム間には
通常整経機構が取り付けられている。この通常整経機構
は図4に示すように、整経ビーム8の全幅以上の長さを
有するガイドローラー13と、整経ビームの全幅以上の
幅を有するジグザグ筬11とを有している。なおこれら
の部分整経機構と通常整経機構とは、図5に示すように
その高さが異なるように設けられている。
【0021】この整経システムによる部分整経はつぎの
ようにして行なわれる。(図1参照)なおシステムの目
標の一例としては前記の場合と同様に、総糸本数が90
00本で総糸量が675Kgの製織ビームを形成するも
のとする。まず1個の重量が1.5Kgある450個の
給糸体2をクリール1に仕掛けるとともに、整経機3に
はテーパービーム4を仕掛ける。450個の給糸体2か
らの450本の糸を幅出し筬7およびフィードローラ9
を介して引き出してテーパービーム4に33.75Kg
のバンドを形成する。この操作を4回繰返して、総糸本
数が1800本で総糸量が135Kgのテーパービーム
4を形成する。勿論バンドの幅はテーパービーム4の幅
の1/4になるように幅出しで規制し、部分整経機構の
位置をテーパービーム4の幅方向に変更することによっ
て、バンドの形成位置を順次変更している。なお、バン
ドの形成中、部分整経機構を、バンドの巻径の増加に応
じてテーパービーム4の軸方向に移動させることによっ
て、バンドの断面が軸方向に傾斜されるようにしてい
る。
【0022】このような操作を繰り返して同一仕様で糸
が巻き付けられたテーパービーム4を5本形成する。つ
いでこれらのテーパービーム4から同時に糸を引き出し
て総糸本数が9000本で総糸量が675Kgの製織ビ
ーム6を形成する。
【0023】またこの整経システムによる通常整経はつ
ぎのようにして行なわれる。なおシステムの目標として
は先と同様に、総糸本数が9000本で総糸量が675
Kgの製織ビームを形成するものとする。ただし、1個
の重量が1.5Kgの給糸体2が、700個以上供給さ
れている場合を想定する。まず糸との干渉を回避するた
めに、部分整経機構を待機位置に退避させる(図4参
照)。
【0024】なお前記のように部分整経機構と通常整経
機構とは高さを異ならせてあるので、このような退避動
作は必ずしも必要ではないが、退避を行なう方が望まし
いことは勿論である。供給された700個以上の給糸体
2をクリール1に仕掛けるとともに、整経ビームを整経
機3に仕掛け、通常整経機構(つまり全幅のジグザグ筬
と全幅のガイドローラー)を介して整経ビームに全幅に
わたって巻き取る。
【0025】このような操作を繰り返して同一仕様で糸
が巻き付けられた整経ビームを複数本形成する。ついで
これらの整経ビームをビームスタンドに載置して、全整
経ビームから同時に糸を引き出して総糸本数が9000
本で総糸量が675Kgの製織ビーム6を形成する。な
お、上記実施例では、部分整経機構を、幅出し筬とフィ
ードローラとで構成したが、糸をガイドする機能を有し
ていればフィードローラに限定されず、単にガイドロー
ラまたは、ガイド用の棒材などで構成してもよい。ま
た、幅出し筬は、筬羽が直線状に並設された筬でもよい
し、ジクザク状に並設されたジグザグ筬でもよい。
【0026】図2に示すのはこの発明の第2の実施態様
であって、複数のテーパービームを1本づつ従来公知の
整経ビームに一旦巻き直し、複数の整経ビームから糸を
同時に引き出して製織ビームを整経するものである。こ
こでは製織ビームを整経するまでの間に糊付工程が組み
入れられている。
【0027】すなわち1本のテーパービーム4から糸を
巻き戻して糊付機5に送り込み、糊付けされた糸を1本
の整経ビーム8に巻き取る。複数のテーパービームにつ
いてこの操作を繰返して複数の整経ビーム8を準備し、
これら複数の整経ビーム8から同時に糸を引き出して製
織ビーム6を整経する。
【0028】なお、上記第2の実施態様では、1本のテ
ーパービーム4に巻き付けられた糸を1本の整経ビーム
に巻き直していたが、これに限定されず、1本のテーパ
ービーム4に巻き付けられた糸を複数本の整経ビームに
分けて巻き直すようにしてもよい。詳説すると、例え
ば、1個の重量が1.5Kgの給糸体450個から総糸
本数が9000本で総糸重量が675Kgの製織ビーム
を形成する際に、1本のテーパービーム4に巻き付けら
れた糸を、2本の整経ビームに分けて巻き直す場合を考
える。まず、450個の給糸体から450本の糸を引き
出してテーパービーム4に67.5Kgのバンドを形成
する。この操作を2回繰り返して、総糸本数が900本
で総糸量が135Kgのテーパービーム4を形成する。
このような操作を繰り返して同様のテーパービームを5
本形成する。ついで1本のテーパービーム4の糸を糊付
機を介して2本の整経ビームに巻き直すことによって、
総糸本数が900本で総糸量が67.5Kgの整経ビー
ムを10本形成する。その後、これら10本の整経ビー
ムから一度に糸を引き出して1本の製織ビームを形成す
るものである。このような実施態様によれば、第2の実
施態様と比べて、テーパービーム4から整経ビームに巻
戻される糸の密度を半分にできるので、糊付け時に糸同
士が接触しにくく、糊付けがそれだけ容易になるという
利点を有する。
【0029】なお以上記載した実施態様においては、整
経機にこの発明の整経方式と従来の通常の整経方式とを
兼用できるようにした。しかしこれに代えて、部分整経
機構とテーパービームのみを設けて、この発明の整経方
式のみを行なうように構成してもよい。
【0030】
【発明の効果】供給される給糸体の個数が小さくてもリ
ワインドすることなしに、簡単な作業で所望の総糸量の
製織ビームを整経することができる。またバンドの巻径
を不必要に大きくする必要もないので、バンド縞なども
できず、品質の高い製織ビームを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施態様を示す平面図であ
る。
【図2】この発明の第2の実施態様を示す平面図であ
る。
【図3】この発明の第1の実施態様に用いる部分整経機
構を具えた整経機の平面図である。
【図4】この発明の第2の実施態様に用いる通常整経機
構を具えた整経機の平面図である。
【図5】同一整経機上の部分整経機構と通常整経機構と
の配置関係を示す側面図である。
【符号の説明】
1 クリール 2 給糸体 3 整経機 4 テーパービーム 5 糊付機 6 製織ビーム 7 幅出し筬 8 整経ビーム 9 フィードローラー 11 ジグザグ筬 13 ガイドローラー
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D02H 7/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】複数の給糸体からの糸をテーパービームに
    部分整経し、数のテーパービームから1個の製織ビー
    ムを整経することを特徴とする整経方法。
  2. 【請求項2】前記の複数のテーパービームから1個の製
    織ビームを整経するに際して、複数のテーパービームか
    ら糸を同時に引き出して直接製織ビームを整経すること
    を特徴とする請求の範囲第1項記載の整経方法。
  3. 【請求項3】前記の複数のテーパービームから1個の製
    織ビームを整経するに際して、複数のテーパービームを
    1本づつ整経ビームに一旦巻き直し、複数の整経ビーム
    から糸を同時に引き出して製織ビームを整経することを
    特徴とする請求の範囲第1項記載の整経方法。
  4. 【請求項4】幅出し筬と糸のガイド部材とを具えた部分
    整経機構と、全幅筬と全幅の糸のガイド部材を具えた通
    常整経機構とを有しかつ整経ビームとテーパービームと
    のいずれをも仕掛けることが可能なことを特徴とする整
    経機。
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