JP3225295B2 - 燃料噴射式エンジンの燃料供給装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、例えば自動二輪車に
搭載される燃料噴射式エンジンに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】例えば自動二輪車においては、燃料制御
の精度を向上させ、或いは排気ガスの清浄化、低燃費等
の観点から燃料供給として、従来の気化器に代えて燃料
噴射装置を備える燃料噴射式エンジンを搭載するものが
ある。このような燃料噴射式エンジンでは、エンジンに
よって機械的に駆動される機械式燃料ポンプにより燃料
噴射装置へ燃料を圧送するようになっている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】特に、自動二輪車に搭
載される燃料噴射式エンジンでは、低回転域から高回転
域まで回転域が広範囲であるため、エンジンによって機
械的に駆動される機械式燃料ポンプによる燃料の圧力の
設定は、通常高回転域に合せている。

【０００４】ところで、このように機械式燃料ポンプに
よる燃料の圧力の設定を高回転域に合せると、低回転域
では燃料の圧力が低下する傾向にあり、低回転域での安
定した燃料の供給が安定しないという問題が生じてく
る。

【０００５】この発明はかかる点に鑑みなされたもの
で、低回転域から高回転域まで広い範囲にわたって燃料
の圧力を安定させる燃料噴射式エンジンの燃料供給装置
を提供することを目的としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】前記課題を解決するた
め、この発明の燃料噴射式エンジンの燃料供給装置は、
エンジンによって機械的に駆動される機械式燃料ポンプ
により燃料噴射装置へ燃料を圧送する燃料噴射式エンジ
ンにおいて、前記機械式燃料ポンプと並列に接続された
電動式燃料ポンプと、この電動式燃料ポンプをエンジン
の低回転域で駆動する制御装置とを備え、この制御装置
でエンジンの低回転域で前記機械式燃料ポンプと電動式
燃料ポンプを併用して駆動して燃料を圧送するようにな
したことを特徴としている。

【０００７】

【作用】この発明では、エンジンによって機械的に駆動
される機械式燃料ポンプにより燃料噴射装置へ燃料を圧
送するが、エンジンの低回転域では制御装置で電動式燃
料ポンプを駆動して、機械式燃料ポンプと電動式燃料ポ
ンプを併用して燃料を圧送し、これにより低回転域から
高回転域まで広い範囲にわたって燃料の圧力が安定す
る。

【０００８】

【実施例】以下、この発明の実施例を添付図面に基づい
て詳細に説明する。図１は燃料噴射式エンジンを搭載し
た自動二輪車の側面図、図２は燃料噴射式エンジンの側
面図、図３は燃料噴射式エンジンの燃料供給装置の概略
構成図である。

【０００９】自動二輪車の車体１を構成するヘッドパイ
プ２にはフロントフォーク３が旋回可能に支持され、こ
のフロントフォーク３には前輪４が支持されている。ヘ
ッドパイプ２の後側にはメインフレーム５及びダウンチ
ューブ６が接続され、このメインフレーム５の後方には
左右一対のシートピラチューブ７が接続され、またダウ
ンチューブ６にも同様に左右一対の支持フレーム８が接
続され、この支持フレーム８及びシートピラチューブ７
の後端部は接続されている。メインフレーム５の後端か
ら後方へ左右一対のシートレール９が延びており、この
シートレール９はバックステー１０でシートピラチュー
ブ７に支持されている。シートピラチューブ７に設けた
ブラケット１１にはリヤアーム１２が軸支され、このリ
ヤアーム１２の後端部に後輪１３が支持されている。メ
インフレーム５には燃料タンク１４が跨ぐようにして載
置され、この燃料タンク１４の後方をシート１５が覆っ
ており、このシート１５はシートレール９に載置されて
いる。

【００１０】車体１のメインフレーム５、ダウンチュー
ブ６、シートピラチューブ７及び支持フレーム８で囲ま
れる部分には燃料噴射式エンジン１６が搭載され、この
燃料噴射式エンジン１６は単気筒の２サイクルエンジン
が用いられている。

【００１１】燃料噴射式エンジン１６のクランクケース
１７には気筒１８が車体前側へ傾斜して設けられ、この
気筒１８の前側に排気管１９が接続され、この排気管１
９は燃料噴射式エンジン１６の右側を通って後方へ延び
ている。気筒１８に設けられたピストン２０はクランク
ケース１７に軸支されたクランク軸２１にコンロッド２
２を介して連結されている。

【００１２】気筒１８には燃焼室２３内に空気と燃料と
を噴射する燃焼室燃料噴射装置２４及び点火プラグ２５
が備えられ、この燃焼室燃料噴射装置２４には燃焼室燃
料噴射インジェクタ２６が取付けられている。また、ク
ランクケース１７には吸気管２７が接続され、この吸気
管２７にはリードバルブ２８が設けられ、さらにこのリ
ードバルブ２８の上流側には吸気管２７に燃料を噴射す
る吸気管燃料噴射インジェクタ２９が設けられている。
吸気管２７にはエアクリーナ３０から空気が図示しない
スロットル弁の作動で供給される。エアクリーナ３０は
燃料噴射式エンジン１の後方位置で、車体１のシートピ
ラチューブ７、シートレール９及びバックステー１０に
囲まれる部分に配置されている。

【００１３】吸気管２７近傍のクランクケース１７の上
部位置には空気ポンプ３１及び機械式燃料ポンプ３２が
それぞれ近接して設けられ、それぞれクランク軸２１の
動力が動力伝達機構３３を介して伝達され、空気ポンプ
３１及び機械式燃料ポンプ３２はこの機械的動力伝達機
構３３により効果的に駆動される。

【００１４】吸気管２７の上部に吸気管燃料噴射インジ
ェクタ２９を配置することで、気筒１８の後方でクラン
クケース１７の上方位置にスペースが確保され、これに
より空気ポンプ３１及び機械式燃料ポンプ３２が気筒１
８の後方でエンジンのクランク軸方向の幅内に配置する
ことが可能になる。従って、ライダーの足当たりがな
く、車体中心に重量物を集中させることができ、空気ポ
ンプ３１及び機械式燃料ポンプ３２の振動をエンジン側
へ伝達することがない。

【００１５】この機械式燃料ポンプ３２の駆動によって
燃料タンク１４の燃料が燃料フィルタ８０を介して燃焼
室燃料噴射インジェクタ２６及び吸気管燃料噴射インジ
ェクタ２９へ圧送され、この燃焼室燃料噴射インジェク
タ２６と吸気管燃料噴射インジェクタ２９との間には差
圧レギュレータ８１が配置され、また吸気管燃料噴射イ
ンジェクタ２９と燃料タンク１４との間には吸気レギュ
レータ８２が設けられており、差圧レギュレータ８１は
燃料圧力を空気圧力との差圧で所定の圧力に制御する。

【００１６】また、燃焼室燃料噴射インジェクタ２６及
び吸気管燃料噴射インジェクタ２９と、燃料フィルタ８
０との間には燃料圧力検出センサ８３が設けられ、燃料
の圧力情報を制御装置８４へ送るようになっており、こ
の制御装置８４にはまたエンジン回転数検出センサ８５
からエンジン回転数情報が送られるようになっている。

【００１７】この機械式燃料ポンプ３２と並列に電動式
燃料ポンプ８６が接続され、この電動式燃料ポンプ８６
は制御装置８４によってエンジンの低回転域で駆動さ
れ、エンジンの低回転域では機械式燃料ポンプ３２と電
動式燃料ポンプ８６が併用して駆動され、これで燃料が
逆止弁３２ａ，８６ａを介して燃焼室燃料噴射インジェ
クタ２６及び吸気管燃料噴射インジェクタ２９へ圧送さ
れる。

【００１８】この電動式燃料ポンプ８６は制御装置８４
で低回転域でＯＮ、中高回転域でＯＦＦ制御が行なわ
れ、この回転域の判断はエンジン回転数検出センサ８５
からエンジン回転数情報または燃料圧力検出センサ８３
による燃料圧力情報によって行なわれる。

【００１９】図４は燃料噴射式エンジンの燃料供給装置
の作動を示すフローチャートである。このフローチャー
トは燃料圧力情報で電動式燃料ポンプ８６を制御する場
合を示しており、ステップａでイグニッションスイッチ
をＯＮすると、電動式燃料ポンプ８６が駆動されて（ス
テップｂ）、燃料を燃焼室燃料噴射インジェクタ２６及
び吸気管燃料噴射インジェクタ２９へ圧送する。この電
動式燃料ポンプ８６の駆動でエンジンの始動が可能にな
る。

【００２０】このとき、燃料圧力が所定値Ｔ１になるま
で電動式燃料ポンプ８６が駆動され、この所定値Ｔ１以
上の圧力になると（ステップｃ）、制御装置８４で電動
式燃料ポンプ８６の駆動が停止され（ステップｄ）、従
って機械式燃料ポンプ３２のみが駆動される。そして、
燃料圧力が所定値Ｔ１よりやや低い所定値Ｔ２以下にな
ると（ステップｅ）、ステップｂに移行し、電動式燃料
ポンプ８６をＯＮして燃料圧力が所定値Ｔ１以上になる
まで、電動式燃料ポンプ８６を駆動し、所定値Ｔ１以上
になると、電動式燃料ポンプ８６の駆動を停止する作動
を繰返す作動を行なう。

【００２１】次に、燃料噴射式エンジンの燃料供給装置
の作動を図５に基づいて説明する。このフローチャート
はエンジン回転数情報で電動式燃料ポンプ８６を制御す
る場合を示しており、ステップａでイグニッションスイ
ッチをＯＮすると、電動式燃料ポンプ８６が駆動されて
（ステップｂ）、燃料を燃焼室燃料噴射インジェクタ２
６及び吸気管燃料噴射インジェクタ２９へ圧送する。こ
の電動式燃料ポンプ８６の駆動でエンジンの始動が可能
になる。

【００２２】エンジンが駆動されると、エンジン回転数
が所定値Ｐ１以上になるまで電動式燃料ポンプ８６が駆
動され（ステップｃ）、エンジン回転数が所定値Ｐ１の
回転数以上になると制御装置８４で電動式燃料ポンプ８
６が停止され（ステップｄ）、機械式燃料ポンプ３２の
みが駆動される。そして、エンジン回転数が所定値Ｐ１
よりやや低い所定値Ｐ２以下になると（ステップｅ）、
ステップｂに移行し、電動式燃料ポンプ８６をＯＮし
て、エンジン回転数が所定値Ｐ１以上になるまで電動式
燃料ポンプ８６を駆動し、所定値Ｐ１以上になると、電
動式燃料ポンプ８６の駆動を停止する作動を繰返す。

【００２３】このようにして、エンジンによって機械的
に駆動される機械式燃料ポンプ３２により燃料噴射装置
へ燃料を圧送するが、エンジンの低回転域では制御装置
８４で電動式燃料ポンプ８６を駆動して、機械式燃料ポ
ンプ３２と電動式燃料ポンプ８６を併用して燃料を圧送
することで、低回転域から高回転域まで広い範囲にわた
って燃料の圧力が安定する。このため、クランク軸２１
で駆動される機械式燃料ポンプ３２を小型化することが
でき、また電動式燃料ポンプ８６も補助的に駆動される
ため、小型である。

【００２４】さらに、低回転域の燃料の圧力の応答性確
保のため、差圧レギュレータ８１のチェック弁径は大き
くできず、そのため従来のように、全回転域を機械式ポ
ンプでカバーしようとすると、高回転域はリターン速度
が上がりすぎてチェック弁がオーバーフローする場合が
あるが、機械式燃料ポンプ３２と電動式燃料ポンプ８６
を併用して燃料を圧送することで、このような不具合が
解消される。

【００２５】また、イグニッションスイッチのＯＮで電
動式燃料ポンプ８６が駆動され、エンジンが運転されな
くても燃料の圧力が得られるため、エンジン始動の必要
燃料圧力まで上昇する時間を短くすることができる。さ
らに、差圧レギュレータ８１の小型化、機械式燃料ポン
プ８６の小型化が可能で、燃料の流れのロスを低減する
ことができる。

【００２６】

【発明の効果】前記のように、この発明は、機械式燃料
ポンプと並列に接続された電動燃料ポンプと、この電動
式燃料ポンプをエンジンの低回転域で駆動する制御装置
とを備え、この制御装置でエンジンの低回転域で前記機
械式燃料ポンプと電動式燃料ポンプを併用して駆動して
燃料を圧送するようになしたから、低回転域から高回転
域まで広い範囲にわたって燃料の圧力を安定させること
ができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】燃料噴射式エンジンを搭載した自動二輪車の側
面図である。

【図２】燃料噴射式エンジンの側面図である。

【図３】燃料噴射式エンジンの燃料供給装置の概略構成
図である。

【図４】燃料噴射式エンジンの燃料供給装置の作動を示
すフローチャートである。

【図５】燃料噴射式エンジンの燃料供給装置の作動を示
すフローチャートである。

【符号の説明】

１４ 燃料タンク １６ 燃料噴射式エンジン ２４ 燃焼室燃料噴射装置 ２６ 燃焼室燃料噴射インジェクタ ２９ 吸気管燃料噴射インジェクタ ３２ 機械式燃料ポンプ ８３ 燃料圧力検出センサ ８４ 制御装置 ８５ エンジン回転数検出センサ ８６ 電動式燃料ポンプ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) F02M 37/08

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 エンジンによって機械的に駆動される機
   械式燃料ポンプにより燃料噴射装置へ燃料を圧送する燃
   料噴射式エンジンにおいて、前記機械式燃料ポンプと並
   列に接続された電動式燃料ポンプと、この電動式燃料ポ
   ンプをエンジンの低回転域で駆動する制御装置とを備
   え、この制御装置でエンジンの低回転域で前記機械式燃
   料ポンプと電動式燃料ポンプを併用して駆動して燃料を
   圧送するようになしたことを特徴とする燃料噴射式エン
   ジンの燃料供給装置。