JP3218177B2 - ナトリウム−硫黄電池を用いたバッテリーシステムの運転方法 - Google Patents

ナトリウム−硫黄電池を用いたバッテリーシステムの運転方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、溶融ナトリウム
を陰極活物質とし、溶融硫黄を陽極活物質とするナトリ
ウム−硫黄電池から構成されるバッテリーシステムの運
転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】 ナトリウム−硫黄電池は、一方に陰極
活物質である溶融金属ナトリウム、他方には陽極活物質
である溶融硫黄を配し、両者をナトリウムイオンに対し
て選択的な透過性を有するβ−アルミナ固体電解質で隔
離し、300〜350℃で作動させる高温二次電池であ
る。
【0003】 ナトリウム−硫黄電池を用いたバッテリ
ーシステムは、上記のような構成を有する単電池を所定
数、直並列に接続して成るモジュール電池を断熱容器に
収容し、さらにこのモジュール電池を所定数直並列に接
続することにより構成される。
【0004】 このようなナトリウム−硫黄電池を用い
たバッテリーシステムの運転は、第一休止段階、放電段
階、第二休止段階、充電段階から成るサイクルを繰り返
して行われる。放電段階においては溶融ナトリウムが電
子を放出してナトリウムイオンとなり、これが固体電解
質管内を透過して陽極側に移動し、硫黄及び外部回路を
通ってきた電子と反応して多硫化ナトリウムを生成し、
2V程度の電圧を発生させる。一方、充電段階において
は、放電とは逆にナトリウム及び硫黄の生成反応が起こ
る。
【0005】 上記の多硫化ナトリウムの生成反応は発
熱反応であるため、放電段階における総発熱量は、通電
電流及び内部抵抗によって決まるジュール熱と上記生成
反応による化学発熱量を足した値となる。一方、多硫化
ナトリウムからナトリウムと硫黄が生成する反応は吸熱
反応であるため、充電段階は、内部抵抗によるジュール
熱量と上記反応による吸熱量により、発熱となるか吸熱
となるかが決まる。いずれにせよ、充電段階における発
熱量は、放電段階に比べ小さくなる。従って、放充電段
階を通じて、ナトリウム−硫黄電池の温度が最も上昇す
るのは、放電段階の終了時ということになる。
【0006】 ところで、ナトリウム−硫黄電池の構成
部材、特にβ−アルミナから成る固体電解質管、陽極活
物質である硫黄を収容するアルミニウム容器、固体電解
質管とアルミニウム容器を接合するに際して間に介在さ
せるα−アルミナ製の絶縁リング、これらの部材間をシ
ールするガラス接合部、TCB接合部、アルミニウム溶
接部等の耐熱性には限界があり、又、化学的活性度の高
いナトリウム、硫黄、多硫化ナトリウム等と高温で長期
間接触すると、腐食、劣化が起こる。従って、ナトリウ
ム−硫黄電池の温度が一定の値を越えることは好ましく
なく、具体的には、380℃以下に保たれることが好ま
しい。
【0007】 従来のモジュール電池では、放電段階に
おいて上昇した電池の温度が、休止段階及び充電段階に
おいて放電段階開始時の値まで下がるように断熱容器の
放熱量を設定したり、又は冷却機構を設けることによ
り、1サイクル毎に熱の収支を取ってきた。又、従来の
モジュール電池において、放電段階終了時の電池温度
は、例えば、ロードレベリングの8時間率運転(定格運
転)では、運転温度に対し10〜20°上昇するだけで
あり、定格運転を行う限り、電池の構成部材に悪影響を
及ぼすような温度上昇はなかった。
【0008】 一方、固体電解質管を構成するβ−アル
ミナに対するナトリウムイオンの伝導率、陽極活物質で
ある硫黄及びそれを含浸させるために用いるグラファイ
トフェルトの導電性は温度が高い程大きくなり、電池の
内部抵抗が小さくなる。従って、放充電効率の面から
は、ナトリウム−硫黄電池を高温で作動させることが好
ましい。又、陽極における活物質の拡散性及びナトリウ
ムと硫黄から多硫化ナトリウムが生成する反応の平衡か
ら見ても、低温では、充電回復性に不利となる。従っ
て、従来は、ナトリウム−硫黄電池の運転は300〜3
50℃の範囲で行われることが一般的であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、放電
段階において上昇した電池温度は、充電段階開始までの
休止段階の間に熱供給が無ければ、放熱によって降下す
る。一方、充電段階の開始時においては、比較的融点の
高い多硫化ナトリウムが存在しているため、所定温度以
上の電池温度が必要である。従って、放熱量や休止段階
の長さによっては、充電段階の開始時において、電池温
度が所定温度より低くなり、充電段階の開始に支障が生
じるという問題があった。
【0010】 又、充電段階においては、充電時の抵抗
発熱量が充電反応による吸熱量と放熱量との和より小さ
い場合は、熱供給が無ければ、電池温度は降下する。一
方、充電段階が進むに従って、多硫化ナトリウムのうち
比較的融点の低いものの割合が大きくなるが、電池温度
は常に所定温度より高いことが必要である。しかし、充
電段階における熱収支のいかんによっては、電池温度が
所定温度より低くなる。この場合、充電段階終了時に未
反応の多硫化ナトリウムが存在することとなるため、電
池の残留容量が大きくなり、出力電力量が低下するとい
う問題があった。
【0011】 又、ナトリウム−硫黄電池の電気容量q
は硫黄とナトリウムの量によって決まり、q=I・T
(Iは電流、Tは放電時間を表す。)より、放電時の電
流と放電時間との積は一定である。従って、Kを定数と
すると、反応熱量はK・qで表される。ここで、ナトリ
ウム−硫黄電池の放電時における抵抗発熱量をQd、放
熱量をHdとすると、放電時における電池の温度上昇は
(K・q+Qd−Hd)/C(Cは熱容量を表す。)とな
る。
【0012】 ところで、ナトリウム−硫黄電池の使用
方法として、従来のロードレベリングの8時間率運転
(定格運転)から、ピークカットを目的とした、4時間
率運転(2倍出力運転)若しくは2.7時間率運転(3
倍出力運転)を想定すると、ナトリウム−硫黄電池の放
電時における抵抗発熱量QdはI2RT(Rは抵抗を表
す。)で表されるため、抵抗発熱量はそれぞれ2倍、3
倍となる。従って、定格運転に比べ、急激な温度上昇が
起こり、電気容量qは残存しているにも関わらず、電池
温度が限界を越えるため、これ以上の放電ができないと
いう事態が容易に生じ、実質的に高出力運転は困難であ
るという問題があった。
【0013】
【課題を解決するための手段】 本発明は、このような
状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするとこ
ろは、高い充電回復性を維持しながら、高出力運転が可
能なナトリウム−硫黄電池の運転方法を提供することに
ある。本発明の発明者らは、従来のナトリウム−硫黄電
池の常識では考えられなかった低温での充放電運転を検
討した結果、従来においては限界と考えられていた30
0℃以下の温度でも運転が可能であることを見い出し、
本発明に到達した。
【0014】 即ち、本発明によれば、放電段階と充電
段階を、各々の間に休止段階を挟みつつ繰り返すナトリ
ウム−硫黄電池を用いたバッテリーシステムの運転方法
であって、放電段階開始時のナトリウム−硫黄電池の温
度を240〜300℃(300℃を含まず)とし、充電
段階開始時のナトリウム−硫黄電池の温度を260〜3
80℃とするとともに、充電段階を通じてナトリウム−
硫黄電池の温度を260℃以上に保つことを特徴とする
ナトリウム−硫黄電池を用いたバッテリーシステムの運
転方法が提供される。上記の方法において、加熱手段、
及びその作動をナトリウム−硫黄電池の温度に応じて調
節する制御手段を用いることが好ましい。又、放電段階
終了時に設定温度を260〜380℃とし、充電段階終
了時、又は充電段階において充電電圧が所定の値に達し
た時点で、設定温度を240〜300℃にすることが好
ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】 本発明においては、放電段階開
始時のナトリウム−硫黄電池の温度が240〜300℃
(300℃を含まず)と、従来の300〜350℃に比
べて低いため、通常の2倍、3倍の電流でナトリウム−
硫黄電池を運転するような場合においても、電気容量q
は残存しているにもわらず、温度上昇により電池の運
転を継続できないという事態を回避することができ高出
力運転が可能となる。
【0016】 なお、多硫化ナトリウムNa2Xの融点
は一般に120〜285℃であるが、実際のナトリウム
−硫黄電池の放充電においては、260℃以上であれば
動作することを前述の低温運転試験により確認した。し
かも、放電開始初期に生じるX数の比較的多い多硫化ナ
トリウムは融点が低いため、放電を開始してからしばら
くは電池の温度が260℃以下でも問題はない。又、放
電段階は発熱反応であるため、放電を開始してから時間
が経ち、X数の少ない多硫化ナトリウムが生成し始める
頃には、電池の温度は260℃を越えているため、多硫
化ナトリウムの固化により放電が停止することはない。
【0017】 一方、充電段階においてはX数の少ない
多硫化ナトリウムが充電段階初期に存在するため、電池
の温度は充電開始時において260℃以上とする必要が
あり、又、充電段階において常に電池の温度を260℃
以上に保つ必要がある。このような目的を達成するに
は、加熱手段が必要であり、例えば熱風循環、ヒータ等
を用いることができる。又、加熱手段の作動をナトリウ
ム−硫黄電池の温度に応じて調節する制御手段を用いる
とともに、放電段階終了時に設定温度を260〜380
℃にし、充電段階終了時、又は充電段階において充電電
圧が所定の値に達した時点で、設定温度を再び260〜
300℃にすることが好ましい。このような温度設定を
行うことにより、放電段階と充電段階の間の休止段階が
長い場合においても放電段階及び充電段階の開始時にお
いて、電池の温度を所定の値に保つことができるからで
ある。
【0018】 なお、運転温度の低下による放充電効率
の低下は、体積抵抗率が低く、かつ肉薄でも強度が高い
β−アルミナから成る固体電解質管を採用するととも
に、陽極設計を低温においても低抵抗を示すように改良
することにより防止することができる。又、低温におけ
る充電回復性の低下は、陽極の改良と、充電電流を2〜
3段階に低下させて行う補充電を採用することにより防
止することができる。
【0019】 加熱手段としてヒータを、又、電池温度
の制御手段としてバッテリー制御システムを用いて、上
記の方法により運転されるバッテリーシステムの一例を
図1に示す。図1において、ナトリウム−硫黄電池2を
用いたバッテリーシステム1は、バッテリー制御システ
ム3、ヒータ4、及び交直変換器5を備える。ヒータ4
はナトリウム−硫黄電池2の温度を充電、及び放電に適
した温度に保つ働きをする。交直変換器5は、放電及び
充電に際して、ナトリウム−硫黄電池2と外部機器(図
示せず。)の間の整流を行う。又、バッテリー制御シス
テム3は、ナトリウム−硫黄電池2の温度及び電圧に対
応して、ヒータ4の作動、及び設定温度、並びにナトリ
ウム−硫黄電池2及び交直変換器5の作動を制御する。
【0020】
【実施例】 以下、本発明を実施例を用いてさらに詳し
く説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるもの
ではない。
【0021】
【0022】(実施例) 上記のバッテリーシステム
を本発明の方法を用いて4時間率運転(2倍出力運転)
した場合の、ナトリウム−硫黄電池の電力、電圧及び温
度の変化を図(a)、(b)及び(c)に示す。放電
段階11の開始時において、ヒータの設定温度は260
℃であり、ナトリウム−硫黄電池の温度は260℃に保
たれている。放電開始後は電池の温度は発熱により急
に上昇し350℃まで達する。所定の放電時間の後、放
電は停止し、第二休止段階12に入る。又、放電段階1
1が終了すると同時にヒータの設定温度は280℃とな
る。従って、充電段階13の開始時においては、電池の
温度は280℃に保たれており、又、充電段階13の熱
収支は吸熱的であるが、充電段階13を通じて電池の温
度はヒータの働きにより280℃以上に保たれる。さら
に、低温における充電回復性の低下を防止するため、補
充電14が行われる。ヒータの設定温度は充電段階13
が終了した時点で260℃に変更され、次の放電段階に
備える。ヒータの設定温度は電池の電圧が所定の値、例
えば、(2.075V×総直列数+バッテリー内部抵抗
×充電電流)に達した時点で、260℃に変更してもよ
い。
【0023】(実施例) 上記のバッテリーシステム
を本発明の方法を用いて2.67時間率運転(3倍出力
運転)した場合の、ナトリウム−硫黄電池の電力、電圧
及び温度の変化を図(a)、(b)及び(c)に示
す。放電段階11の開始時において、ヒータの設定温度
は240℃であり、ナトリウム−硫黄電池の温度は24
0℃に保たれている。放電開始後は電池の温度は発熱に
より実施例1に比べ急激に上昇し380℃まで達する。
所定の放電時間の後、放電は停止し、第二休止段階12
に入る。又、放電段階11が終了すると同時にヒータの
設定温度は260℃となる。従って、充電段階13の開
始時においては、電池の温度は260℃に保たれてお
り、又、充電段階13の熱収支は吸熱的であるが、充電
段階13を通じて電池の温度はヒータの働きにより26
0℃以上に保たれる。さらに、低温における充電回復性
の低下を防止するため、補充電14が行われる。ヒータ
の設定温度は充電段階13が終了した時点で240℃に
変更され、次の放電段階に備える。ヒータの設定温度は
電池の電圧が所定の値に達した時点で、240℃に変更
してもよい。
【0024】
【発明の効果】 本発明のナトリウム−硫黄電池を用い
たバッテリーシステムの運転方法においては、放電段階
開始時の電池の温度が240〜300℃(300℃を含
まず)と低いため長時間の高出力運転が可能となる。
又、放電後の停止時間を自由にとっても、充電段階開始
時において電池の温度が260〜380℃に維持される
とともに、充電段階を通じて電池の温度が260℃以上
に維持されるため、高い充電回復性が得られる。さら
に、運転温度が380℃以下に保たれるため、電池構成
部材の腐食、劣化を防ぐことができ、長期運転が可能と
なる。
【0025】
【図面の簡単な説明】
【図1】 バッテリーシステムの一例を示す説明図であ
る。
【図2】 バッテリーシステムを本発明の方法を用いて
4時間率運転(2倍出力運転)した場合の、ナトリウム
−硫黄電池の(a)電力を示すグラフ、(b)電圧を示
すグラフ、及び(c)温度を示すグラフである。
【図3】 バッテリーシステムを本発明の方法を用いて
2.67時間率運転(3倍出力運転)した場合の、ナト
リウム−硫黄電池の(a)電力を示すグラフ、(b)電
圧を示すグラフ、及び(c)温度を示すグラフである。
【符号の説明】
1・・・バッテリーシステム、2・・・ナトリウム−硫黄電
池、3・・・バッテリー制御システム、4・・・ヒータ、5・・
・交直変換器、10・・・第一休止段階、11・・・放電段
階、12・・・第二休止段階、13・・・充電段階、14・・・
補充電。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 奥野 晃康 神奈川県横浜市鶴見区江ケ崎町4番1号 東京電力株式会社 エネルギー・環境 研究所内 (72)発明者 堀川 豊 神奈川県横浜市鶴見区江ケ崎町4番1号 東京電力株式会社 エネルギー・環境 研究所内 (72)発明者 久野 俊明 愛知県名古屋市瑞穂区須田町2番56号 日本碍子株式会社内 (72)発明者 森 啓一 愛知県名古屋市瑞穂区須田町2番56号 日本碍子株式会社内 (56)参考文献 特開 昭55−59670(JP,A) 特開 平8−33240(JP,A) 特開 平7−296855(JP,A) 堀川豊 他、「ナトリウム−硫黄電池 の起電力−温度特性」、第36回電池討論 会講演要旨集、平成7年9月12日、第 379−380頁 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 10/39 H01M 10/50

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 放電段階と充電段階を、各々の間に休止
    段階を挟みつつ繰り返すナトリウム−硫黄電池を用いた
    バッテリーシステムの運転方法であって、 放電段階開始時のナトリウム−硫黄電池の温度を240
    〜300℃(300℃を含まず)とし、 充電段階開始時のナトリウム−硫黄電池の温度を260
    〜380℃とするとともに、 充電段階を通じてナトリウム−硫黄電池の温度を260
    ℃以上に保つことを特徴とするナトリウム−硫黄電池を
    用いたバッテリーシステムの運転方法。
  2. 【請求項2】 加熱手段、及び該加熱手段の作動をナト
    リウム−硫黄電池の温度に応じて調節する制御手段を用
    いた請求項1に記載のナトリウム−硫黄電池を用いたバ
    ッテリーシステムの運転方法。
  3. 【請求項3】 放電段階終了時に設定温度を260〜3
    80℃とし、 充電段階終了時、又は充電段階において充電電圧が所定
    の値に達した時点で、設定温度を240〜300℃にす
    る請求項2に記載のナトリウム−硫黄電池を用いたバッ
    テリーシステムの運転方法。
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