JP3217879U - 多層建物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本来の有効な開口領域を確保した上で、容易に耐震性を向上可能な既存建物を補強した多層建物を提供する。【解決手段】基礎5上に設置される複数の既存柱3と梁4によって構成され、一部の前記既存柱3aと梁4aによって構成される開口10を有し、この開口10に扉や壁が設けられることによって各階の領域が区分けされた複数階の多層建物1において、上層階の開口10を構成する既存柱3a間に設置される鋼材により形成された間柱40と、間柱40に接合されるブレース架構50と、間柱40が設置された階の下層の階の、間柱40の鉛直方向同位置に設置される他の間柱40aと、を備え、軸力が基礎まで伝達される。【選択図】図1

Description

本願は、既存建物を補強した多層建物に関し、より具体的には、間柱の設置によって既存建物を補強した多層建物に関する。
建て替えをせずに耐震性の向上を目的として既存建物を補強する補強工法は、様々な工法が知られており、簡易に施工が可能な補強工法の一例として、鉄骨ブレースを組み込む工法が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に示す補強工法は、建物の柱や梁にブレースを組み込む工法であって、建物の壁に形成された開口部に干渉しないように、建物を構成する柱及び梁に沿って延在するフレームの各中間部にブレースを全体として略菱形形状になるように接合する工法である。
特開平11−200638号公報
一般的にブレースを建物に組み込む工法は、設置位置に廊下や扉、窓等の開口部がある場合には、その開口部を塞いでしまうため、通行に支障がでたり、通風や採光等が犠牲になってしまう。
また、特許文献1に示す補強工法は、開口部のすべてを塞がないため、窓への設置には有効であるものの、例えば、廊下や窓への設置では、ブレースの一部が開口部の隅部内側を通るため、本来の有効な開口領域を狭め、通行に支障がでるおそれがあり、廊下や扉には設置しにくい。また、ブレースは窓の内側又は外側に露出するため、外観上の見栄えが非常に悪くなってしまうなどの不都合が生じる。
そこで、このような課題の一例を解消するために、本願は、本来の有効な開口領域を確保した上で、容易に耐震性を向上可能な既存建物を補強した多層建物を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するため、本願請求項1に記載の多層建物(1)は、基礎(5)上に設置される複数の既存柱(3)と梁(4)によって構成され、一部の前記既存柱(3a)と梁(4a)によって構成される開口(10)を有し、この開口に扉や壁が設けられることによって各階の領域が区分けされた複数階の建物において、上層階の前記開口を構成する前記既存柱間に設置される鋼材により形成された間柱(40)と、前記間柱に接合されるブレース架構(50)と、前記間柱が設置された階の下層の階の、前記間柱の鉛直方向同位置に設置される他の間柱(40a)と、を備え、軸力が前記基礎まで伝達されることを特徴とする。
また、請求項2に記載の多層建物は、請求項1に記載の多層建物において、前記ブレース架構は、前記間柱と対向する前記既存柱と、前記間柱に接合されることを特徴とする。
また、請求項3に記載の多層建物は、請求項1又は請求項2に記載の多層建物において、前記間柱は、前記開口部の前記既存柱間に2本設けられ、前記ブレース架構は、一対の前記間柱に接合されることを特徴とする。
多層建物の構造の一例を示す側面図である。 図1のA部分の拡大図である。 間柱の施工例を示す図である。 ブレース架構の施工例を示す図である。 他の補強体の取付例を示す図であり、図5(a)はブレース架構の施工例を示す図、図5(b)は間柱の他の取付例を示す図である。
以下、本願の実施形態について添付図面に基づいて説明する。本実施形態の多層建物1は、例えば、RC造と称される鉄筋コンクリート構造の建物であって、多層の階層を有する。また、本実施形態では、3階構造の建物において、特に2階部分を補強する必要がある場合の一例について説明する。
図1に示すように、この多層建物1は、3階構造の建物であって、H型鋼を用いて形成されたラーメン構造の架構体2である。架構体2は、基礎5上に組み立てられて設置され、鉛直方向に延びる複数の既存柱3と、既存柱3間に架設された水平方向に延びる梁4とにより各階(層)が構成されている。
また、各階は、図1に示すように、一部の既存柱3aと梁4aで構成される開口10を有し、この開口10には、図示しないが扉や壁として機能する面材が取り付けられ、複数の領域(以下、「部屋」と称する。)に区分けされる。この面材は、例えば、合板が用いられるがその他の建築資材であっても構わない。また、開口10には、廊下や扉、又は窓等が配置される開口部10aが設けられている。
本実施形態の補強工法は、図1及び図2に示すように、開口部10aを除く開口10に補強体30を設けるものであって、補強体30は、鋼材により形成される間柱40と、この間柱40に接合されるブレース架構50と、を備えている。
間柱40は、開口10を構成する一対の既存の柱3a、3a(以下、「既存柱3a」と称する。)間の任意の位置に上下の梁4a、4a間をつなぐように鉛直方向に延びて設けられる。また、間柱40は、最下層階に設置される場合を除き、間柱40を設置した階の下層階の鉛直方向同位置にも同様に間柱40aが設置され、軸力が基礎(基礎梁)まで伝達される。具体的には、図1に示すように、2階の所定位置に間柱40を設置した場合には、その間柱40の鉛直下方向の1階の同位置にも他の間柱40aが設置される。また、3階の所定位置に間柱40を設置した場合には、その間柱40の鉛直下方向の2階と1階の同位置に他の間柱40aが設置される。
なお、間柱40と、下層階に設置された他の間柱40aとの位置関係においては、鉛直方向に一直線となることが好ましいが、計算上において安全とされる多少のズレは許容される。
間柱40は、図3に示すように、直線状に延在する基体10aとこの基体10aの両側にフランジ面10bを有する側体10cとにより構成されるH型鋼が好適に用いられる。このH型鋼は、強軸方向に作用するように配置され、具体的には、図1に示すように、多層建物1の柱3方向にフランジ面10bが対向するようにして配置される。
また、間柱40は、図3に示すように、その上下に配置される梁4a、4aを覆うモルタル4b、4bにグラウト8を介してケミカルアンカー9によって固定される。
なお、間柱40と梁4aとの連結は、間柱40と梁4aとが一体的に作用し、軸力を伝達できるように取り付けられれば良く、この形態に限られるものではない。
また、図1及び図2に示すように、ブレース架構50は、鉄骨ブレース51、52、53及び骨組(第1のブレース56、第2のブレース57)によって構成され、間柱40と既存柱3a、及び上下の梁4a、4aによって構成される枠の内側に設けられる。本実施形態のブレース架構50は、マンサード型と称されるブレース構造が用いられるが、Xの字型又はVの字型に鉄骨ブレースを組み込んだ筋交い方式のブレース構造の他、K型、ダイヤモンド型、Y型等のブレース構造、又はこれら鉄骨ブレースの外周部に枠組みを設けたブレース構造を用いても構わない。
本実施形態のブレース架構50は、枠組みを備えたマンサード型のブレース構造であって、間柱40又は既存柱3aに沿って一対の鉛直フレーム51を立設し、上部の梁4aに沿って配置される上部水平フレーム52をこの鉛直フレーム51に架設するとともに、下部の梁4aに沿って、各鉛直フレームの下端部からそれぞれが対向するように配置される下部水平フレーム53、53で構成される略門型構造の枠組み体と、上部水平フレーム52の中央部から各鉛直フレーム51、51の下端隅部に向かって延びる第1のブレース56と、この第1のブレース56の略中央部から門型構造体の上部隅部に向かって延びる第2のブレース57と、を備えている。
このブレース架構50は、図2及び図4に示すように、上下の梁4a、4a、間柱40、及び既存柱3aの内側に間隙21を有して配置される。図4に示すように、鉛直フレーム51、51、水平フレーム52、53、53には、その周囲にスタッド61、61・・・61が所定の間隔を有して接合され、このスタッド61と対向するようにして、上下の梁4a、4aと、既存柱3aを覆うモルタル4b、3bには所定の間隔を有してケミカルアンカー66、66・・・66が打設される。また、間隙21には、このスタッド61とケミカルアンカー55を覆うようにして補強筋としてのスパイラル筋68が配置された上で、モルタル70が打設され間隙21が埋められ、ブレース架構50が間柱と既存柱3aとの間に設置される。
このように、このブレース架構50は、上下各梁4a、4a、間柱40、及び既存柱3aにケミカルアンカーボルトやモルタル等によって剛接合された上で、その表裏面に面材が取り付けられて開口部10aを残して、開口10の一部が塞がれる。
なお、人が通過するための開口が必要な場合には、図5(a)に示すように、ブレース架構50の中央部を残して他の領域に面材13を取り付けて、開口部58を形成しても構わない。
本実施形態の補強工法によれば、補強体30を設ける前の扉や廊下等の開口部10aの位置や領域を移動又は狭めることなく、既存の建物の補強を容易且つ有効に図り、建物の体力を増強させることが可能となる。
また、この補強工法は、間取りの変更等の設計変更を必要とせずに、従来から存在する廊下や扉などの開口に取り付けられるもののであって、施工コストの高騰を防止するとともに、通行に支障がでるなどの問題の発生を回避できる。
次に、間柱の他の設置形態について説明する。
本実施形態は、上記実施形態が、既存柱3a、3a間の任意の位置に1本の間柱40を設けて、間柱40と一方の既存柱3aの間にブレース架構50を設けるものであるのに対して、既存柱3a、3a間の任意の位置に2本の間柱40A、40Bを設けて、間柱40b、40c間にブレース架構50Aを設ける点で異なる。
具体的に本実施形態の補強工法は、図5(b)に示すように、上述した実施形態と同様に開口部10aを除く開口10に補強体30を設けるものであって、開口10を構成する左右一対の既存柱3a、3a間の任意の位置に設けられる2本の間柱40A、40Bと、この間柱40A、40B間に接合して設けられるブレース架構50Aと、を備えている。ブレース架構50Aはマンサード型のブレース構造が用いられているが、この形態に限られるものではなく、どのような構造であっても構わない。
また、本実施形態のように、2本の間柱40A、40Bを設置する場合、下層階には、基礎まで軸力が伝達されるように、他の間柱40aが各間柱40A、40Bの鉛直方向同位置に設けられる。
この補強工法によれば、上記実施形態の補強工法よりも、建物の補強をより高めることが可能であり、建物の体力をより増強させることが可能となる。また、扉等の開口部10bが別途必要な場合に有効である。
次に、既存建物における補強工法の一例について図1〜図4を参照して説明する。
まず、施工者によって、既存建物である多層建物1に関し、開口10(開口部10aを含む)の施工状態等を考慮して、間柱40の設置階及び設置位置が決定される。また、間柱40は、H型鋼を用い、強軸方向に作用するようにして配置される。
また、間柱40の設置位置は、下層階の同位置にも他の間柱40aを設置可能な場所が適宜決定される。なお、本実施形態では、2階部分に間柱40を含む補強体30を設けることによって、建物全体としての強度が十分であるものとする。したがって、間柱40、40aは、2階とその下層階である1階に設置され、2階に設置される間柱40にはブレース架構50が接合される。
次に、図3に示すように、間柱40が上下の梁4aを覆うモルタル4bにグラウト8を介してケミカルアンカー9によって固定される。
次に、図2に示すように、間柱40と既存柱3aの間に、ブレース架構50が設置される。ブレース架構50は、上述したように、間柱40、既存柱3a、上下の梁4a、4aと剛接合された上で、図示しないが、その表裏面が面材等により覆われ、開口部10aを残して開口10の一部が面材13による塞がれる壁面処理が施された上で、補強体30の設置処理を終了する。
以上に説明したように、本実施形態の多層建物1における補強工法は、基礎5上に複数の既存柱3と梁4によって構成され、一部の前記既存柱3aと梁4aによって構成される開口10を有し、この開口10に扉や壁が設けられることによって各階の領域が区分けされた多層建物1において、上層階の前記開口10を構成する前記既存柱3a、3a間に鋼材により形成された間柱40が設置されるとともに、この間柱にブレース架構50が接合され、前記間柱40が設置された階の下層階であって、前記間柱40の鉛直方向同位置に他の間柱40aが設置され、軸力が前記基礎5まで伝達されるものである。
このように構成された補強工法によれば、簡易な構成ながら、一部に開口部10a等を残しつつ既存建物の補強を容易に行えるとともに、地震に対する多層建物の安全性を容易に高めることが可能となる。
なお、本実施形態は一形態であって、この形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態の多層建物1で用いられる鉄骨部材は一般的にH鋼と称される鉄骨を用いているが、他の形態を代用しても構わない。
また、本実施形態の工法を適用できる建物は、鉄筋コンクリート(RC)構造に限られるものではなく、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造や鉄骨(S)造でもかまわない。例えば、鉄筋コンクリート造の場合、SRC構造と同じ工法により、ケミカルアンカーボルトやモルタル等によって、間柱、ブレース架構が間接的に接合されるが、鉄骨造の場合には、ブレース架構や間柱を、ボルトなどによって、柱や梁に直接、接合することができる。
また、ブレース架構の外枠材は、SRC構造、及び鉄筋コンクリート造では必須であるが、鉄骨造は省略しても構わない。
また、間柱40は、鉛直方向に延びる1本柱としたが、持ち運びや施工容易性を考慮して複数に分割(例えば、2分割)して繋ぎ合わせる形態としても構わない。この場合、軸力負担可能な継手方法(剛接合)で取り付けられる。
また、間柱40の材料は、H型鋼が好適に用いられるが、軸力を負担できる鋼材であればよく、その他角パイプなどの鋼材であっても構わない。
1 多層建物
3、3a 既存柱
4、4a 梁
5 基礎
10 開口
40、40a 間柱
50 ブレース架構

Claims (3)

  1. 基礎上に設置される複数の既存柱と梁によって構成され、一部の前記既存柱と梁によって構成される開口を有し、この開口に扉や壁が設けられることによって各階の領域が区分けされた複数階の多層建物において、
    上層階の前記開口を構成する前記既存柱間に設置される鋼材により形成された間柱と、
    前記間柱に接合されるブレース架構と、
    前記間柱が設置された階の下層の階の、前記間柱の鉛直方向同位置に設置される他の間柱と、
    を備え、軸力が前記基礎まで伝達されることを特徴とする多層建物。
  2. 前記ブレース架構は、前記間柱と対向する前記既存柱と、前記間柱に接合されることを特徴とする請求項1に記載の多層建物。
  3. 前記間柱は、前記開口部の前記既存柱間に2本設けられ、
    前記ブレース架構は、一対の前記間柱に接合されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多層建物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2020066847A (ja) * 2018-10-22 2020-04-30 東急建設株式会社 建物の補強構造

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