JP3217721B2 - ファラデー素子及びファラデー素子の製造方法 - Google Patents

ファラデー素子及びファラデー素子の製造方法

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博貴 河合
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液相エピタキシャ
ル法(以下、「LPE法」と略記する)により育成され
るビスマス置換型希土類鉄ガーネット単結晶からなるフ
ァラデー素子に関するものである。このファラデー素子
を用いたファラデー回転子は、例えば光通信などの分野
で使用する光アイソレータ、光サーキュレータ、光スイ
ッチ、光アッテネータなどに有用である。
【0002】
【従来の技術】光アイソレータ、光サーキュレータ、光
スイッチなどには、ファラデー素子とそれに磁界を印加
する磁石とを組み合わせたファラデー回転子が組み込ま
れている。周知のようにファラデー素子は、磁界によっ
て入射光の偏光面を一定角度回転させる磁気光学素子で
あり、ファラデー効果を有する磁性ガーネット単結晶が
用いられている。近年、この種の磁性ガーネット単結晶
としては、LPE法により非磁性ガーネット基板上に育
成したビスマス置換型希土類鉄ガーネット単結晶が主流
になってきている。これは希土類鉄ガーネット単結晶中
の希土類元素の一部をBiで置換したものであり、厚さ
百数十〜数百μmの厚膜である。LPE法を採用する理
由は、LPE法が量産性に優れており、且つ高品質の単
結晶膜を低価格で製造できるからである。
【0003】ビスマス置換型希土類鉄ガーネット単結晶
に関しては、従来から様々な研究開発が行われており、
古くはFeの一部をGaやInなどの非磁性イオンで置
き換えることにより、動作磁界を低下させうることが示
されている(特開昭50−14361号公報参照)。ま
たFeの一部をGaやAlなどの非磁性イオンで置き換
えることにより、飽和磁化4πMs を100ガウス以下
に小さくすることが示されている(特開昭62−186
220号公報参照)。その他、組成を変えることによっ
て飽和磁界の小さな材料を得ようと種々試みられてい
る。
【0004】これらのことから分かるように、ファラデ
ー素子の飽和磁化は小さいほど好ましい。その理由は、
組み合わせる永久磁石を小さくでき、あるいは電磁石の
駆動電力を小さくできるためである。
【0005】また近年、ファラデー素子を用いて機械的
な可動部分を無くした光アッテネータが提案されている
(特開平6−51255号公報参照)。この光アッテネ
ータは、ファラデー素子と、偏光子と、互いに異なる方
向の第1及び第2の磁界を合成磁界の強さが所定値を超
えるように前記ファラデー素子に対して印加する磁界印
加手段と、第1及び第2の磁界の強さの少なくとも一方
を変化させる磁界調整手段とを具備している。合成磁界
の強さを変えることで、ファラデー回転角が変化し、そ
れに応じて偏光子を通過する光の減衰量も変化する。従
って、磁界調整手段で第1及び第2の磁界の強さの少な
くとも一方を変化させることで、所望の減衰量を得るこ
とができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】光アイソレータ、光サ
ーキュレータ、光スイッチなどへの応用に際し、ファラ
デー素子材料である磁性ガーネット単結晶としては、飽
和磁化が小さいことのみならず、ファラデー回転係数が
大きく、且つファラデー回転係数の温度変化率が小さい
ことも要求される。ファラデー回転係数が小さいと、磁
性ガーネット単結晶の膜厚が厚くなければ所定のファラ
デー回転角が得られず、LPE法による単結晶の育成で
は、一般に膜厚が500μmを超えるほどまで厚くなる
と割れが発生するためである。またファラデー回転係数
の温度変化率が大きければ、ファラデー回転子としての
温度特性が悪くなるからである。
【0007】前記の従来技術(特開昭50−14361
号公報)では、Feの一部をGaやInなどの非磁性イ
オンで置き換えることにより、動作磁界を低下させうる
とされている。しかし、ある程度以上それらの置換量を
増加していくと、逆に飽和磁化が大きくなるばかりでな
く、ファラデー回転係数が小さくなり、ファラデー回転
係数の温度変化率が大きくなった。
【0008】また前記光アッテネータの場合、ファラデ
ー素子を構成している磁性ガーネット単結晶の(11
1)面が光軸に対して垂直となるように設置するが、単
結晶の(111)面に対して垂直方向の飽和に要する磁
界が小さいことのみならず、同時に平行方向の飽和に要
する磁界が小さい特性も要求される。これは前記のよう
に互いに異なる方向の第1及び第2の磁界を印加する必
要があり、いずれの方向であっても、飽和に要する磁界
が大きいと磁界印加手段としての電磁石の駆動電力が大
きくなるためである。また光アッテネータの場合には、
偏光面を0〜90度の範囲で回転させる必要があるた
め、ファラデー回転係数が大きいことも重要である。L
PE法による磁性ガーネット単結晶の育成では、膜厚が
厚くなると割れが発生し易く歩留りが低下するので、必
要膜厚を極力薄くできることは非常に有利だからであ
る。
【0009】本発明の目的は、飽和磁化が小さいばかり
でなく、ファラデー回転係数が大きく、且つファラデー
回転係数の温度変化率が小さいビスマス置換型希土類鉄
ガーネット単結晶からなるファラデー素子を提供するこ
とである。また本発明の他の目的は、それによって、特
性が良好で、小型化でき、低電力動作が可能なファラデ
ー回転子を提供することである。
【0010】本発明の更に他の目的は、磁性ガーネット
単結晶の(111)面に対して垂直方向の飽和に要する
磁界が小さいことのみならず平行方向の飽和に要する磁
界も小さく、且つファラデー回転係数を大きくできるよ
うな、特に光アッテネータ用として好適なファラデー素
子の製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、液相エピタキ
シャル法により育成されるビスマス置換型希土類鉄ガー
ネット単結晶からなるファラデー素子である。磁性ガー
ネット単結晶は、組成式が、 R3-x-y Tbx Biy Fe5-u u 12 但し、RはY、La、Luから選ばれる1種以上 MはGa、Alから選ばれる1種以上で表され、u−x
組成分布マップ上で 曲線a:u=−0.042x2 −0.1x+0.90 曲線b:u=−0.042x2 −0.1x+1.24 で挾まれ(但し曲線上も含む)、且つ 0.3≦x≦2.2 0.8≦y≦1.7 x+y≦3 の領域である。従って、Rを含む場合と、Rを含まない
場合とがある。
【0012】Rを含まない場合、磁性ガーネット単結晶
は、組成式が、 Tbx Biy Fe5-u u 12 但し、MはGa、Alから選ばれる1種以上で表され、
u−x組成分布マップ上で 曲線a:u=−0.042x2 −0.1x+0.90 曲線b:u=−0.042x2 −0.1x+1.24 で挾まれ(但し曲線上も含む)、且つ 1.3≦x≦2.2 0.8≦y≦1.7 x+y=3 の領域である。この場合には、Bi量yの上限と下限と
から、Tb量xの上限と下限が決まることになる。
【0013】この組成条件を満たすビスマス置換型希土
類鉄ガーネット単結晶は、0〜60℃の最大飽和磁化4
πMs max が200ガウス以下まで小さくなる。またフ
ァラデー回転係数は−1000度/cm以上と十分大き
く、且つファラデー回転係数の温度変化率β(度/℃)
も十分小さくなる。
【0014】これらの磁性ガーネット単結晶において、
より好ましくは、u−x組成分布マップ上で 曲線c:u=−0.042x2 −0.1x+0.96 曲線d:u=−0.042x2 −0.1x+1.21 で挾まれ(但し曲線上も含む)、且つ 0.5≦x≦1.8 とすることである。この組成条件を満たすビスマス置換
型希土類鉄ガーネット単結晶は、最大飽和磁化4πMs
max が150ガウス以下まで更に小さくなる。
【0015】これらのファラデー素子は、それに使用し
ているビスマス置換型希土類鉄ガーネット単結晶の飽和
磁化以上の磁界を該ファラデー素子に印加するための磁
石と組み合わせることでファラデー回転子となる。
【0016】
【発明の実施の形態】非磁性ガーネット基板を使用し、
一般的なLPE法によってRTbBi系の磁性ガーネッ
ト単結晶を育成する。Rとしては必要に応じてY、L
a、Luを使用する。これは、それら磁性ガーネット単
結晶を育成するための基板と格子定数を合わせるためで
ある。Feの一部はGa及び/又はAlで置換する。こ
れは飽和磁化を小さくするためである。
【0017】前記のように、従来技術として、Feの一
部をGaやInで置換することにより、動作磁界が小さ
くなることが分かっている。本発明者等は、Feの一部
をGaで置換して実験を行ったところ、初めは確かに飽
和磁界が小さくなった。しかし、Ga置換量を増大して
いくと、逆に飽和磁化が大きくなった。そこで種々の組
成の膜を育成し飽和磁化との関係を調べた結果、飽和磁
化を最小にする最適Ga置換量が存在することを見出し
た。更に、その最適値はTb量に依存することも判明し
た。またこのことは、Feの一部をAlで置換した時、
あるいはGaとAlの両方で同時に置換した時も同様で
あった。本発明は、かかる事実の知得に基づきなされた
ものである。
【0018】また本発明は、上記のような組成のビスマ
ス置換型希土類鉄ガーネット単結晶を、酸素濃度15容
積%以上の育成雰囲気中で液相エピタキシャル法により
育成し、育成後、大気中で800℃以上1100℃以下
で熱処理するファラデー素子の製造方法である。
【0019】上記のように磁性ガーネット単結晶の組成
を最適化することにより、単結晶の(111)面に対し
て垂直方向の飽和に要する磁界が小さく、ファラデー回
転係数が大きいものが得られる。そして、LPE法によ
る単結晶育成雰囲気を適切に設定し、育成後に適正な条
件で熱処理することにより、それらの良好な特性を維持
しつつ、単結晶の(111)面に対して平行方向の飽和
に要する磁界も小さくすることができる。その結果、互
いに異なる2方向から磁界を印加して用いる光アッテネ
ータ用のファラデー素子として、特に優れた性能を発揮
する。なお、一方向のみから磁界を印加する光アイソレ
ータ用のファラデー素子のような場合には、このような
熱処理を行う必要は無い。
【0020】
【実施例】PbO−Bi2 3 −B2 3 をフラックス
として用い、結晶成分と混合して磁性ガーネット単結晶
育成の原料を作製した。まず950℃で10時間溶融
し、次いで同じ950℃で3時間攪拌した。その後、原
料に応じた育成温度まで降温してLPE法で単結晶を育
成した。育成した磁性ガーネット単結晶の組成と最大飽
和磁化4πMs max (ガウス)とファラデー回転係数Θ
F (度/cm)の関係を表1に示す。また各磁性ガーネッ
ト単結晶について、Tb量x(atoms/f.u.)とM量u
(atoms/f.u.)の関係を図1のu−x組成分布マップ上
に示す。
【0021】
【表1】
【0022】ところで飽和磁化の適当な値を決める明確
な基準はない。そのため光スイッチに用いられるような
小型の電磁石(巻数:235ターン、抵抗値:6.7
Ω)を試作しギャップでの磁界を測定したところ、駆動
電圧4Vで200エルステッドが得られた。そこで磁性
ガーネット単結晶の反磁界係数を1と仮定し、0〜60
℃の最大飽和磁化4πMs max が200ガウスを目安と
し、それ以下を「良」と判定した。またファラデー回転
係数ΘF は膜厚を決定する要因であり大きい方が好まし
い。LPE法による単結晶の育成では、通常、膜厚が5
00μmを超えると割れが発生する。45度ファラデー
回転子として用いる磁性ガーネット単結晶では、その膜
厚を500μm以下にするには、ファラデー回転係数Θ
F が絶対値で1000度/cm以上であることが必要であ
る。
【0023】試料番号1〜12(各表で記号* もしくは
**を付す)の磁性ガーネット単結晶は、全て最大飽和磁
化4πMs max が200ガウス以下で、且つファラデー
回転係数ΘF が絶対値で1000度/cm以上となってい
る。これらは組成式が、 R3-x-y Tbx Biy Fe5-u u 12 但し、RはY、La、Luから選ばれる1種以上 MはGa、Alから選ばれる1種以上で表され、図1の
u−x組成分布マップ上で 曲線a:u=−0.042x2 −0.1x+0.90 曲線b:u=−0.042x2 −0.1x+1.24 で挾まれ(曲線上も含む)、且つ 0.3≦x≦2.2 0.8≦y≦1.7 x+y≦3 の領域(ハッチングで示す本発明領域)に分布してい
る。それに対して試料番号13〜15の磁性ガーネット
単結晶は、最大飽和磁化4πMs max が200ガウスを
超えるか、あるいはファラデー回転係数ΘF が絶対値で
1000度/cm未満となっている。これらは図1に示す
前記本発明の領域から外れている。
【0024】特に、u−x組成分布マップ上で 曲線c:u=−0.042x2 −0.1x+0.96 曲線d:u=−0.042x2 −0.1x+1.21 で挾まれ(曲線上も含む)、且つ 0.5≦x≦1.8 の領域(図1でクロスハッチングで示す領域)に分布し
ている試料番号4、6〜9、11、12(各表で符号**
を付す)の磁性ガーネット単結晶は、最大飽和磁化4π
Ms max が150ガウス以下というように極めて良好な
特性を呈する。
【0025】更に上記の各試料も含めて種々の磁性ガー
ネット単結晶を条件別にして表2〜4にまとめた。表2
は、Tb量がほぼ一定でFeサイトのMの置換量uが異
なるものを順に並べて、最大飽和磁化4πMs max との
関係を明らかにしたものである。これによりFeサイト
のMの置換量uには最適値があることが分かる。
【0026】
【表2】
【0027】表3は、Bi量yが異なるものを順に並べ
たものである。試料番号15の磁性ガーネット単結晶
は、Bi置換量が0.6atoms/f.u.と少ないためにファ
ラデー回転係数ΘF が小さく、45度膜厚(偏光面を4
5度回転させるための膜厚)が600μmを超える。前
述のように、LPE法では膜厚が500μmを超えると
割れが発生する。45度膜厚を500μm以下にするた
めには、ファラデー回転係数ΘF が絶対値で1000度
/cm以上である必要がある。このことから試料番号15
の磁性ガーネット単結晶は好ましくない。このことか
ら、Bi量yの下限は0.8となる。また、それと同時
にTb量xの上限は2.2となる。試料番号17ではB
i置換量yが1.9atoms/f.u.の膜を作製しようと試み
たが、割れが発生したため3mm角のチップが1個も採れ
なかった。一般的にBi多置換膜の育成は困難と言われ
ており、このことから、Bi量yの上限は1.7とな
る。
【0028】
【表3】
【0029】表4は、Tbに代えてGdを用いた磁性ガ
ーネット単結晶(試料番号16)との比較結果を示して
いる。比較した特性は、最大飽和磁化4πMs max 、フ
ァラデー回転係数ΘF 、ファラデー回転係数の温度変化
率βである。なおファラデー回転係数の温度変化率βと
は、 β=(25℃のΘF −50℃のΘF )/25 で定義される値ある。これにより、Tbを置換すること
によって、ファラデー回転係数の温度変化率βを小さく
できることが分かる。本発明でTbを使用するのは、こ
の理由による。
【0030】
【表4】
【0031】なお本発明では、Rを含まないビスマス置
換型希土類鉄ガーネット単結晶と、R(RはY、La、
Luから選ばれる1種以上)を含むビスマス置換型希土
類鉄ガーネット単結晶との両方の形態がある。これは、
適切なRを適量含ませることによって、使用する非磁性
ガーネット基板との間で格子定数を合わせ、良好な磁性
ガーネット単結晶膜を育成するためである。
【0032】ところで光アッテネータ用のファラデー素
子を製造するには、磁性ガーネット単結晶の(111)
面に対して平行な方向の飽和に要する磁界も小さい特性
が要求されるため、組成を最適化しただけでは対応が困
難である。そこで次のような実験を行った。
【0033】前記実施例と同様、PbO−Bi2 3
2 3 をフラックスとして用い、結晶成分と混合して
磁性ガーネット単結晶育成の原料を作製した。まず95
0℃で10時間溶融し、次いで950℃で3時間攪拌し
た。その後、原料に応じた育成温度まで降温してLPE
法で基板の(111)面上に単結晶を育成した。一連の
作業を単結晶育成雰囲気中の酸素濃度を変えて複数回繰
り返し行った。実験に用いた磁性ガーネット単結晶の組
成は、前記試料番号9と同じものである。育成した磁性
ガーネット単結晶から、切断及び研磨をし2×2×0.
4mmの薄板状の試料を複数個作製した。なお薄板状の試
料の主表面が(111)面である。複数個作製した試料
のうち数個は温度と雰囲気を変えた種々の条件で熱処理
した。熱処理における保持時間は全て2時間である。そ
してVSM(振動試料型磁力計)により(111)面に
対し垂直及び平行方向の飽和に要する磁界を測定した。
ファラデー回転係数は、光源に1.3μmの半導体レー
ザを用いて測定した。膜の組成はEPMA(電子線プロ
ーブマイクロアナライザ)で測定した。なお、試料番号
が9の系列のものは、全て原料組成が同じである。
【0034】なお前記の実施例では4πMs を判断基準
に用いているが、ここでの光アッテネータ用の磁性ガー
ネット単結晶の評価では、垂直方向の飽和に要する磁界
Hsvを判断基準の一つにしている。両者は、反磁界係数
が1のときほぼ同じ値になるが、光アッテネータ用とし
て製作した上記のような試料形状では、反磁界係数が約
0.8であるため、飽和に要する磁界Hsvの方が4πM
s より小さくなる。
【0035】表5は磁性ガーネット単結晶の育成雰囲気
の効果を示している。表5から分かるように、単結晶の
育成雰囲気が酸素濃度15容積%未満の場合(試料番号
9−3,9−4)には、適切な熱処理(大気中で100
0℃)を行っても平行方向の飽和に要する磁界Hspはそ
れほど低下しない。それに対して酸素濃度が15容積%
以上で単結晶を育成した場合(試料番号9−1,9−
2)には、適切な熱処理を行うと平行方向の飽和に要す
る磁界Hspは60エルステッドまで低下する。垂直方向
の飽和に要する磁界Hsvは多少増加するが、十分200
エルステッド以下に収まる。これらのことから、磁性ガ
ーネット単結晶の育成雰囲気は酸素濃度を15容積%以
上とする必要がある。
【0036】
【表5】
【0037】表6は単結晶育成後の熱処理条件の効果を
示している。熱処理前の試料は、組成が試料番号9と同
じで酸素濃度21容積%で単結晶を育成したものであ
る。熱処理温度が700℃の場合(試料番号9−b)
は、熱処理の効果が乏しく、平行方向の飽和に要する磁
界Hspが十分に低下しない。逆に熱処理温度が1150
℃の場合(試料番号9−e)、及び熱処理を窒素雰囲気
中で行った場合(試料番号9−f)には、表面に荒れが
生じる。つまり膜の表面がざらざらになり、光沢がなく
なって光が透過し難くなる。それに対して大気中で80
0℃以上1100℃以下で熱処理した場合(試料番号9
−a,9−c,9−d)は、膜表面が荒れることも無
く、垂直方向の飽和に要する磁界Hsv及び平行方向の飽
和に要する磁界Hspともに200エルステッド以下とな
り、互いに異なる2方向から磁界を印加する形式の光ア
ッテネータ用などとして、極めて良好な特性を呈する。
【0038】
【表6】
【0039】
【発明の効果】本発明は上記のように構成した特定組成
のビスマス置換型希土類鉄ガーネット単結晶からなるフ
ァラデー素子であるから、飽和磁化を小さくでき、ファ
ラデー回転係数を大きく、またファラデー回転係数の温
度変化率を小さくできる。このファラデー素子とそれに
磁界を印加する磁石とを組み合わせてファラデー回転子
を構成すると、上記の素子特性によって光アイソレータ
や光サーキュレータにおいては小型化を図ることがで
き、また光スイッチにおいては低電力化が可能となる。
【0040】本発明は上記のように磁性ガーネット単結
晶の組成の最適化によって、該単結晶の(111)面に
対して垂直方向の飽和に要する磁界が小さく、ファラデ
ー回転係数が大きいものが得られる。そして、適切な雰
囲気で単結晶を育成し、その後に適切な条件で熱処理を
行うことで、単結晶の(111)面に対して平行方向の
飽和に要する磁界も小さくできる。これによって、互い
に異なる2方向から磁界を印加するように使用する光ア
イソレータ用のファラデー素子などとして、優れた特性
が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁性ガーネット単結晶のTb量x(atoms/f.
u.)とM量u(atoms/f.u.)の関係を示すu−x組成分
布マップ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C30B 1/00 - 35/00 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液相エピタキシャル法により育成される
    磁性ガーネット単結晶であって、組成式が、 R3-x-y Tbx Biy Fe5-u u 12 但し、RはY、La、Luから選ばれる1種以上 MはGa、Alから選ばれる1種以上 で表され、u−x組成分布マップ上で 曲線:u=−0.042x2 −0.1x+0.9 曲線:u=−0.042x2 −0.1x+1.2 で挾まれ(但し曲線上も含む)、且つ 0.≦x≦1.8 0.8≦y≦1.7 x+y≦3 であるビスマス置換型希土類鉄ガーネット単結晶からな
    るファラデー素子。
  2. 【請求項2】 液相エピタキシャル法により育成される
    磁性ガーネット単結晶であって、組成式が、 Y0.9 Tb0.6 Bi1.5 Fe4.0 Ga1.0 12 であるビスマス置換型希土類鉄ガーネット単結晶からな
    るファラデー素子。
  3. 【請求項3】 液相エピタキシャル法により育成される
    磁性ガーネット単結晶であって、組成式が、 Tb1.3 Bi1.7 Fe4.1 Ga0.4 Al0.5 12 であるビスマス置換型希土類鉄ガーネット単結晶からな
    るファラデー素子。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至に記載のファラデー素子
    と、それに用いられているビスマス置換型希土類鉄ガー
    ネット単結晶の飽和磁化以上の磁界を該ファラデー素子
    に印加するための磁石とを組み合わせたファラデー回転
    子。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至に記載されている組成の
    ビスマス置換型希土類鉄ガーネット単結晶を、酸素濃度
    15容積%以上の育成雰囲気中で液相エピタキシャル法
    により育成し、育成後、大気中で800℃以上1100
    ℃以下で熱処理することを特徴とするファラデー素子の
    製造方法。
JP02973797A 1996-04-18 1997-01-29 ファラデー素子及びファラデー素子の製造方法 Expired - Lifetime JP3217721B2 (ja)

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