JPH07315995A - 低飽和磁界ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶、および、その用途 - Google Patents

低飽和磁界ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶、および、その用途

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JPH07315995A
JPH07315995A JP6108420A JP10842094A JPH07315995A JP H07315995 A JPH07315995 A JP H07315995A JP 6108420 A JP6108420 A JP 6108420A JP 10842094 A JP10842094 A JP 10842094A JP H07315995 A JPH07315995 A JP H07315995A
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一志 白井
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 雰囲気温度 -20℃〜60℃で使用できる磁気光
学式光スイッチ用ファラデー回転子に適したビスマス置
換希土類鉄ガーネット単結晶、および、当該単結晶で構
成したファラデー回転子、或いは、磁気光学式光スイッ
チを提供する。 【構成】 格子定数が 12.490 Å〜12.510Åの非磁性基
板上に液相エピタキシャル法で育成された一般式、 Gdx Ry Bi3-x-y Fe5-z-w Gaz Alw O12 〔但し、R は、Y 、Yb、Luの群から選ばれた少なくとも
1種類の元素であり、しかも、x、y、z、wは、0.50
≦y/x≦1.35、1.40≦x+y≦1.90、 0.0≦w/z≦
0.3 、 0.7≦z+w≦1.25 の範囲の数である〕で表さ
れるビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶。 【効果】 温度範囲 -20℃〜60℃において磁気光学式光
スイッチとして安定に動作し、しかも、飽和磁界が 160
(Oe)以下であるため、磁界反転に必要な磁界印可装置が
小型化された。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ファラデー回転子に用
いられるビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶に関す
る。更に詳しく云えば、本発明は、磁気光学効果を利用
した光スイッチ用ファラデー回転子に好適な飽和磁界が
低いビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶、および、
該ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶で構成したこ
とを特徴とする磁気光学式光スイッチに関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、光ファイバ通信システムや光計測
システムの発展は目ざましいものがある。こうした光を
用いた情報通信システムに不可欠な光デバイスのひとつ
に、光信号の伝達経路を切り換えるとか、光信号をオン
・オフするなどの機能を有する光スイッチがある。
【0003】現在、光スイッチとして実用に供されてい
るのは、例えば、特開昭63-301918に開示されているよ
うな機械式光スイッチである。その概要を図1に示す。
図1において、符号1 、符号2 、符号3 は、それぞれ光
ファイバである。今、光信号が、光ファイバ1 から光フ
ァイバ2 へと伝達されているものとする(図1-a)。次
に、光ファイバ1 を、光ファイバ3 と向き合う位置に機
械的に移動させる(図1-b)。そうすると、光ファイバ
1 から光ファイバ2 へと伝達されていた光信号は、今度
は、光ファイバ3 へと伝達されることになる。これが機
械式光スイッチの原理である。
【0004】機械式光スイッチの構成は、非常に簡単で
あり、また光ファイバ1 から光ファイバ2 への経路(経
路a)と光ファイバ1 から光ファイバ3 への経路(経路
b)とが、ほぼ完全に切り離されているため、経路aと
経路bとの間に光信号の漏れ(クロストーク)がほとん
ど無いという優れた特徴がある。しかしながら、機械式
光スイッチの可動部分は、長期繰り返し作動に伴うわず
かな位置ずれを起こす可能性があることは否定できない
事実である。そのため、例えば、光ファイバとして通常
一般に汎用されているコア径が10μm 前後のシングルモ
ード光ファイバを用いた場合には、わずかな位置ずれが
大きな信号伝達損失を招くことになる。即ち、機械式光
スイッチには、信頼性の面で大きな課題・欠点を抱えて
いると言える。
【0005】この機械式光スイッチの欠点・課題を解決
するために、機械式可動部分を全く必要としない光スイ
ッチが検討されている。光スイッチには、機械的な可動
部分が全く必要としないから、長期的信頼性に優れるも
のと期待されている。光スイッチの構成機構として、既
に、いくつかの方式が提案されているが、特に、ファラ
デー効果を利用した磁気光学式光スイッチが注目されて
いる。ファラデー効果は、磁気光学効果の一種である。
ファラデー効果とは、ファラデー効果を示す材料、即
ち、ファラデー素子、換言すれば、ファラデー回転子を
透過した光の偏波面が回転する現象を意味し、この偏波
面の回転角の大きさは、ファラデー素子の磁化の強度に
比例して大きくなる。この様子を図2に示す。
【0006】図2において、外部磁界〔強度〕を印加し
ない状態のファラデー回転子のファラデー回転角は、ゼ
〔0〕、即ち、原点oに位置する。外部磁界を徐々に
強めると、ファラデー回転角〔θF 、または、−θF
通常右回りをプラス、左回りをマイナスとする〕の絶対
値は、経路a、または、経路dを経て、次第に大きくな
って行く〔経路o→a→b、または、経路o→d→
e〕。外部磁界強度が或る強度〔Hs、または -Hs〕に達
すると、ファラデー回転角は、飽和した値〔飽和磁界:
b、または、e点〕となる。更に外部磁界強度が強まっ
ても、すでにファラデー回転角が飽和しているから、b
からc、または、eからfへと移行するのみで、ファラ
デー回転角は変化しない。次いで、外部磁界を徐々に弱
めていくと、逆の経路、即ち、c→b→a→o、或い
は、f→e→d→oを辿り、原点oに戻る。磁気光学式
光スイッチは、図2の飽和点bと飽和点e以上の磁界を
磁界発生装置によって発生させて、ファラデー回転子の
磁気特性状態を切り換える、即ち、磁化方向を反転させ
ることが基本動作となっている。
【0007】ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶膜
などのファラデー回転子を利用した光スイッチの基本構
成は、図3に例示するようである。ここで、符号4 はル
チル等からなる偏光子、符号5 は希土類鉄ガーネット単
結晶膜等からなるファラデー回転子、符号6 はルチル等
からなる偏光分離素子である。符号7 はファラデー回転
子が磁気的に飽和するのに十分な磁界、すなわち、飽和
磁界以上の磁界を発生させるための電磁石などからなる
磁界発生装置である。図3において、偏光子4 を透過し
た光は、直線偏光となってファラデー回転子に入射す
る。ファラデー回転子に入射した光の偏波面は、ここで
回転する。この偏波面の回転方向が右回り(プラス)と
なるか、あるいは、左回り(マイナス)となるのかは、
図1で説明したように、ファラデー回転子に印加される
磁界の方向による。偏波面の回転方向が切り替わると、
偏光分離素子7 を透過した光の光路が切り替わる。即
ち、外部印加磁界の方向を切り換えることによって、光
路が切り替わる、換言すれば、光信号伝達経路のスイッ
チングが可能となる。
【0008】この構成において、ファラデー回転子の飽
和磁界が大きいと、ファラデー回転子の磁化を飽和させ
るのに十分な磁界を発生させるために、磁界発生装置が
大型化し、かつ、より多くの電流を流さなければならな
いために、コイルの発熱量が増加するなどの問題点が発
生する。よって、ファラデー効果を応用した光スイッチ
の実用化と汎用化を実現するためには、ファラデー回転
子の飽和磁界を可能な限り小さくして、磁界発生装置の
省電力化と小型化を図らなければならない。
【0009】比較的弱い磁界で磁気的に飽和し、かつ磁
気光学効果が大きい高性能ファラデー回転子用の素材と
して、既に、化学式 (TbBi)3(FeGaAl)5O12や(GdBi)3(Fe
GaAl)5O12 で表されるビスマス置換希土類鉄ガーネット
単結晶が提案〔特開昭61-20926〕されている。通常一般
に、ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の化学組成
は、(LBi)3(FeM)5O12 〔但し、Lは、イットリウムY や
希土類元素を意味し、Mは、Al、Ga、In、Si、Scなどの
元素を意味する〕で表される。このビスマス置換希土類
鉄ガーネット単結晶の飽和磁界が、その構成元素の種類
・組合せと濃度に依存することが、既に、知られてい
る。即ち、希土類元素として、テルビウムTbやガドリニ
ウムGdを選び、しかも、鉄の一部をアルミニウムAlやガ
リウムGaで置換すると飽和磁界が低減する〔特開昭61-2
0926〕。
【0010】本願発明者らは、ここに提案された化学式
(TbBi)3(FeGaAl)5O12や(GdBi)3(FeGaAl)5O12 で表され
るビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の磁気光学特
性に興味を覚え、ファラデー効果を応用した光スイッチ
を開発するために、先ず、詳細な基礎実験を実施した。
しかし、ここに得られた基礎実験結果は、本願発明者ら
の期待に反したものであり、飽和磁界の低い、換言すれ
ば、小さいビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶に
は、重大な二つの技術的困難・技術的課題が内包してい
ることが知られた。即ち、その一つは、飽和磁界の低い
ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の磁化方向の反
転に関する問題であり、もう一つは、飽和磁界の低いビ
スマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の温度特性に起因
する問題である。
【0011】一般に、通常のビスマス置換希土類鉄ガー
ネット単結晶の磁化方向を反転させるためには、飽和磁
界よりもわずかに大きい磁界を外部から印加すればよ
い。しかし、飽和磁界の低いビスマス置換希土類鉄ガー
ネット単結晶では、しばしば、飽和磁界程度の磁界強度
を加えても、磁化が反転しないという現象が現れる。
【0012】本願発明者らは、飽和磁界の低いビスマス
置換希土類鉄ガーネット単結晶の磁化が反転しない原因
を解明するために、鋭意、種々の実験を行った結果、当
該ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶膜の磁気ヒス
テリシスに起因するものであることを知った。以下、ビ
スマス置換希土類鉄ガーネット単結晶膜の磁気ヒステリ
シスについて説明する。
【0013】飽和磁界の比較的大きい通常の希土類鉄ガ
ーネット単結晶の外部磁界に対する磁化特性、即ち、外
部磁界強度とファラデー回転角との関係は、図2のよう
である。しかし、飽和磁界の低いビスマス置換希土類鉄
ガーネット単結晶の場合には、外部磁界強度とファラデ
ー回転角との関係は、図4のように、経路 o→a→b
→c→b→b' →a→oのようなヒステリシスループを
描く。即ち、外部磁界の強度を強めて行く〔経路 o→
a→b→c〕ときと、弱めて行く〔経路c→b→b' →
a→o〕ときとで、その経路が異なるのである。
【0014】図4において、b点、および、e点におけ
る磁界を飽和磁界Hsと、磁化特性のヒステリシスによっ
て生じたb' 点、および、e' 点における磁界を核形成
磁界Hnと称すると、飽和磁界Hsと核形成磁界Hnとの差(H
s-Hn) がヒステリシスの大きさとなる。今、説明を簡単
・容易にするために、b点における飽和磁界Hsを Hs1
b' 点における核形成磁界Hnを Hn1と表示し、また、e
点における飽和磁界Hsを Hs2、e' 点における核形成磁
界Hnを Hn2と表示・表記することにする。
【0015】今、該ビスマス置換希土類鉄ガーネット単
結晶のヒステリシスが大きくなり、核形成磁界Hnが原点
oに近づくと、磁気的に一旦飽和された状態が外部磁界
が殆どゼロになるまで保持されることになる。また、該
ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶膜のヒステリシ
スが、更に大きくなると、核形成磁界Hn1 が原点oを越
えてマイナス側に入り込むものや〔図5〕、核形成磁界
Hn1 が飽和磁界Hs2 よりも大きくなったり(絶対値での
比較で)、或いは、逆に核形成磁界Hn2 が飽和磁界Hs1
よりも大きくなって、四角形のヒステリシスカーブを描
く〔図6〕ようになる。即ち、一旦飽和された後は、こ
の四角形のループを描くだけとなってしまう。
【0016】以上の説明から明かなように、該ビスマス
置換希土類鉄ガーネット単結晶膜の磁化を反転(ファラ
デー回転角の符号を反転)させるために必要な外部磁界
の強さは(以下、反転磁界と定義する)、飽和磁界が核
形成磁界よりも大きい場合には、飽和磁界で決まり、逆
に核形成磁界が飽和磁界よりも大きければ核形成磁界で
決まることになる。よって、ヒステリシスの大きなファ
ラデー回転子を磁気的に飽和させる場合には、反転磁界
は飽和磁界よりも、かなり大きな値に選ぶことになる。
そのため、磁界発生装置が大型化して、大きな電力が必
要となる。また、電流によるコイルの発熱などの問題が
発生する。
【0017】ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の
磁気ヒステリシスを小さくする方法・手段として、ビス
マス置換希土類鉄ガーネット単結晶の一部に永久磁石を
密着させる方法が提案されている(特許出願平05-24952
3 )。しかし、ここに提案されている方法によって、実
際に光スイッチを構成しようとすると、永久磁石を密着
させるために、必然的にサイズの大きいファラデー回転
子が必要となり、よって磁界印加装置も大きくなり、光
スイッチの小型化が困難になるという不都合が生じる。
このことを更に具体的に説明する。
【0018】永久磁石をビスマス置換希土類鉄ガーネッ
ト単結晶の一端に密着させて使用する場合、実際に光が
通過する部分と永久磁石が密着した部分とは、数ミリメ
ートル以上の間隔を置く必要がある。もし光が通過する
領域が永久磁石に近ければ、永久磁石の形成する磁界の
影響で、この領域の磁化方向の切り換えが不可能にな
る、すなわちスッチング機能が発揮できないことにな
る。このように磁気ヒステリシスを解消するため、永久
磁石をビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の一端に
密着させるという手段を光スイッチに適用すると、光ス
イッチの小型化が困難になるという不都合が生じる。従
って、磁気光学式光スイッチに用いられるビスマス置換
希土類鉄ガーネット単結晶の反転磁界は、ヒステリシス
が小さく、かつ飽和磁界ができるだけ低いことが望まし
い。具体的には、反転磁界として160(Oe)以下が望まし
い。
【0019】ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶
を、磁気光学式光スイッチ用ファラデー回転子に用いる
場合のもう一つの問題点は、磁気補償温度である。これ
はある特定の温度Tnにおいて、信号光の偏波面の回転の
方向〔右か、左か〕を区別するために付けられているフ
ァラデー回転角の符号が反転する現象である。この温度
Tnを磁気補償温度と称する。磁気補償温度を有するビス
マス置換希土類鉄ガーネット単結晶を磁気光学式光スイ
ッチ用ファラデー回転子に用いると、磁気補償温度付近
で光スイッチの動作が不安定となる。光スイッチの設置
される環境は、その利用形態によって異なるが、例え
ば、プラント計測システムなどの屋外設置を想定する
と、少なくとも -20℃から60℃までの温度範囲において
安定に動作・作動しなければならない。従って、磁気光
学式光スイッチに用いるビスマス置換希土類鉄ガーネッ
ト単結晶の磁気補償温度は-20℃以下であることが必須
条件となる。実際問題として、磁気光学式光スイッチの
信頼性を考えると、磁気補償温度近傍の温度条件下で時
として発生する磁気光学式光スイッチの動作が不安定に
なる現象を絶対的に回避しなければならないから、必然
的に、該ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の磁気
補償温度は、光スイッチの動作下限温度から、更に10℃
低い、少なくとも -30℃以下に設定しなければならな
い。
【0020】比較的弱い磁界で磁気的に飽和し、かつ磁
気光学効果が大きい高性能ファラデー回転子用の素材と
して提案〔特開昭61-20926〕されている化学式 (TbBi)3
(FeGaAl)5O12と(GdBi)3(FeGaAl)5O12 で表されるビスマ
ス置換希土類鉄ガーネット単結晶を、ここに明らかにな
った磁気光学式光スイッチ用ファラデー回転子に要求さ
れる必須条件、即ち、反転磁界が低いこと、磁気補
償温度が -30℃以下であること に照合してみると、以
下のようである。即ち、化学式(TbBi)3(FeGaAl)5O12
表されるビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶は、そ
の磁気補償温度は -50℃以下であり -30℃以下の条件を
満たしているが、ヒステリシスが大きく、そのため反転
磁界が 300(Oe)以上と非常に大きくて、磁気光学式光ス
イッチ用ファラデー回転子に求められている性能を満た
していない。また、その磁気補償温度が -30℃以下にな
るような組成の化学式(GdBi)3(FeGaAl)5O12 、例えば、
化学組成(Gd1.83 Bi1.17) (Fe4.31 Ga0.07 Al0.62) O12
で表されるビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の反
転磁界は、温度域 -20〜60℃において 180(Oe)であり、
磁気光学式光スイッチ用ファラデー回転子に求められて
いる性能 160(Oe)を満たさない。逆に、その反転磁界が
160(Oe)以下になるように化学組成を、例えば、(Gd2.0
3 Bi0.97) (Fe4.46 Ga0.11 Al0.43) O12に選ぶと、磁気
補償温度が -8 ℃となり、磁気光学式光スイッチ用ファ
ラデー回転子に求められている性能 -30℃以下の条件を
満たさない。従って、化学式(GdBi)3(FeGaAl)5O12 で表
されるビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶をファラ
デー回転子とする磁気光学式光スイッチでは 160(Oe)以
上の磁界強度を発生する磁界発生装置を用いなければな
らず、光スイッチの小型化という社会的要請に答えるこ
とができない。
【0021】磁気光学式光スイッチは、機械的可動部分
がないため信頼性に優れているが、磁界発生装置が大き
く、その小型化が重要な課題となっている。磁界発生装
置を、更に小さくするためには、磁気補償温度が -30℃
以下であるにもかかわらず、反転磁界が 160(Oe)よりも
より低いビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶の開発
が必須である。以上、詳細に述べたように、従来公知の
飽和磁界の低いビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶
は、磁気補償温度と反転磁界の点で重大な技術的課題が
残されており、光スイッチ用ファラデー回転子として
は、必ずしも適当な素材であるとは言えない。磁気光学
式光スイッチの小型化という社会的要請に答えるために
は、光スイッチ用ファラデー回転子に適した新しいビス
マス置換希土類鉄ガーネット単結晶を開発しなければな
らない。
【0022】
【課題を解決するための手段】本願発明者らは、磁気光
学式光スイッチの小型化という社会的要請に答えるため
に、磁気光学式光スイッチ用の、新しいビスマス置換希
土類鉄ガーネット単結晶の開発の可能性を探索するため
に、種々の基礎実験、および、探索実験を行なった。そ
の結果、液相エピタキシャル(LPE) 法で育成・製造され
る一般式 (GdRBi)3(FeGaAl)5O12 で表されるビスマス置
換希土類鉄ガーネット単結晶に、その可能性を見出し
た。本願発明者らは、ここに得られた基礎的な知見を基
にして、より高性能の磁気光学式光スイッチ用ビスマス
置換希土類鉄ガーネット単結晶を開発するために、鋭
意、基礎実験と改良研究実験を行い、格子定数が 12.49
0 Å〜12.510Åの非磁性基板上に液相エピタキシャル法
で育成された一般式、 Gdx Ry Bi3-x-y Fe5-z-w Gaz Alw O12 〔但し、R は、イットリウムY 、イッテルビウムYb、ル
テチウムLuの群から選ばれた少なくとも1種類の元素で
あり、しかも、x、y、z、wは、0.50≦y/x≦1.3
5、1.40≦x+y≦1.90、 0.0≦w/z≦0.3 、 0.7≦
z+w≦1.25 の範囲の数である〕で表されるビスマス
置換希土類鉄ガーネット単結晶が、磁気光学式光スイッ
チ用ファラデー回転子として好適な材料であるとの知見
を得て、更に、試作実験を行ない、本願発明を完成させ
た。
【0023】本発明の目的とする一般式 (GdRBi)3(FeGa
Al)5O12 で表されるビスマス置換希土類鉄ガーネット単
結晶は、操作が容易で、しかも量産性に優れた公知の液
相エピタキシャル(LPE) 法によって、例えば、格子定数
が12.383Åの Gd3Ga5O12基板[GGG基板] 、格子定数が1
2.405Åの Sm3Ga5O12基板[SGG基板] 、格子定数が12.50
9Åの Nd3Ga5O12基板[NGG基板] 、或いは、格子定数が1
2.490Å〜12.510Åの (CaGd)3(ZrMgGa)5O12基板[SGGG
基板] などの非磁性ガーネット基板の上に育成すること
ができる。
【0024】しかし、非磁性ガーネット基板として、格
子定数が12.383Åの Gd3Ga5O12基板[GGG基板] 、或い
は、格子定数が12.405Åの Sm3Ga5O12基板[SGG基板] を
選ぶと、格子定数が小さいために、格子定数の大きなビ
スマスの置換量に制限・限界が生じる。ビスマス置換量
が少ないと、ここに育成された一般式 (GdRBi)3(FeGaA
l)5O12 で表されるビスマス置換希土類鉄ガーネット単
結晶のファラデー回転係数が小さくなり、その結果、フ
ァラデー回転子として必要な膜厚が厚くなるので、磁気
光学式光スイッチの小型化という本発明の目的に適した
一般式、 Gdx Ry Bi3-x-y Fe5-z-w Gaz Alw O12 〔但し、R は、イットリウムY 、イッテルビウムYb、ル
テチウムLuの群から選ばれた少なくとも1種類の元素で
あり、しかも、x、y、z、wは、0.50≦y/x≦1.3
5、1.40≦x+y≦1.90、 0.0≦w/z≦0.3 、 0.7≦
z+w≦1.25 の範囲の数である〕で表されるビスマス
置換希土類鉄ガーネット単結晶〔以下簡単のため GdRBi
FeGaAlガーネットと略称する〕を得ることができない。
よって、本発明を実施するとき、格子整合の観点から、
非磁性ガーネット基板として12.490Å〜12.510Åの (Ca
Gd)3(ZrMgGa)5O12基板[SGGG 基板] 、或いは、格子定数
が12.509Åの Nd3Ga5O12基板[NGG基板] を選ばなければ
ならない。
【0025】本発明を実施するとき、エピタキシャル温
度には、特に制限はなく、通常一般にビスマス置換希土
類鉄ガーネット単結晶の育成で実施されている 730℃〜
850℃の範囲内で、融液組成に応じて適宜選択すれば良
い。本発明を実施するとき、GdRBiFeGaAl ガーネット薄
膜形成用の非磁性ガーネット基板は、特に除去する必要
はない。むしろ、GdRBiFeGaAl ガーネット単結晶膜の膜
厚さが数十μm と非常に薄い場合には、強度の観点で支
持体として基板を残しておくのが好ましい。一方、GdRB
iFeGaAl ガーネットの膜厚さが数百μm と非常に厚い場
合には、強度の観点では支持体を必要としないので、小
型化するという観点から、研磨法によって除去するのが
好ましい。
【0026】本発明を実施するとき、希土類元素として
は、ガドリニウムGdとR〔Rは、イットリウムY 、イッ
テルビウムYb、ルテチウムLuの群から選ばれた少なくと
も1種類の元素を意味する〕との組合せが好ましい。ガ
ドリニウムGdと組み合わせる希土類元素種としてイット
リウムY 、イッテルビウムYb、ルテチウムLu以外の種を
選ぶと、-20 ℃〜60℃の温度範囲における反転磁界の最
大値が、目的・目標とする 160(Oe)を越えるので好まし
くない。
【0027】本発明を実施するとき、本発明の目的とす
る GdRBiFeGaAlガーネット単結晶の化学組成、即ち、一
般式 Gdx Ry Bi3-x-y Fe5-z-w Gaz Alw O12 〔但し、Rは、イットリウムY 、イッテルビウムYb、ル
テチウムLuの群から選ばれた少なくとも1種類の元素を
意味する〕における y/xの値は、0.50〜1.35の範囲内
に、更に好ましくは、0.85〜1.15の範囲内に選ぶのが好
ましい。y/x の値を0.50以下に選ぶと、磁気補償温度が
-30℃よりも高くなるので好ましくない。また、y/x の
値が1.35以上になると、-20 ℃〜60℃の温度範囲におけ
る反転磁界の最大値が 160(Oe)を越えるので好ましくな
い。
【0028】x+y の値は、1.40〜1.90の範囲内に、更に
好ましくは、1.50〜1.80の範囲内に選ぶのが好ましい。
x+y の値を1.40以下、換言すれば、ビスマス置換量3-x-
y を1.60以上に選ぶと、単結晶の育成中に融液中に微結
晶が析出して単結晶の育成・成長が困難となる。また、
x+y の値を1.90以下、換言すれば、ビスマス置換量3-x-
y を1.10以下に選ぶと、単結晶育成葉基板、即ち、非磁
性ガーネット基板との格子整合がとれなくなり、結晶の
成長・育成が困難になる。
【0029】本発明を実施するとき、鉄元素の一部を置
換する元素としては、アルミニウムAlとガリウムGaが好
適である。アルミニウムAlとガリウムGaは、鉄元素に置
き代えることによって飽和磁界を低減させる効果・働き
をする。何方かと言えば、アルミニウムAlよりは、ガリ
ウムGaの方が、より飽和磁界の低減に有効である。従っ
て、本発明を実施するとき、ガリウムGa単独、若しく
は、アルミニウムAlを併用して、アルミニウムAlに対す
るガリウムGaの比率w/z を 0〜0.30の範囲内、より好ま
しくは、0〜0.20の範囲内に選ぶのが好ましい。アルミ
ニウムAlに対するガリウムGaの比率w/z を0.30以上に選
ぶと、-20 ℃〜60℃の温度範囲における反転磁界の最大
値が 160(Oe)を越えるので好ましくない。アルミニウム
AlとガリウムGaの替わりに他の元素、例えば、インジウ
ムInなどを選ぶと、単結晶育成葉基板、即ち、非磁性ガ
ーネット基板との格子整合がとれなくなり、結晶の成長
・育成が困難になる。
【0030】本発明を実施するとき、鉄元素の置換量、
換言すれば、アルミニウムAlとガリウムGaの和z+w は、
0.70〜1.25の範囲内、より好ましくは、0.85〜1.1 の範
囲内に選ぶのが好ましい。z+w の値を 0.7以下に選ぶ
と、-20 ℃〜60℃の温度範囲における飽和磁界が 160(O
e)以上、換言すると、反転磁界の最大値が 160(Oe)以上
となるので好ましくない。
【0031】以下、本発明を実施例によって、その実施
態様と効果を具体的に、かつ詳細に説明するが、以下の
例は、具体的に説明するためのものであって、本発明の
実施態様や発明の範囲を限定するものとしては意図され
ていない。
【0032】
【実施例】
実施例1 容量 1000ml の白金製ルツボに、酸化鉛〔PbO 、4N〕16
60g 、酸化ビスマス〔Bi2O3 、4N〕1160g 、酸化第2鉄
〔Fe2O3 、4N〕175g、酸化ほう素〔B2O3、5N〕74.0g 、
酸化ガドリニウム〔Gd2O3 、3N〕10.3g 、酸化イットリ
ウム〔Y2O3、3N〕6.4g、酸化ガリウム〔Ga2O3 、3N〕3
9.0g を仕込んだ。これを精密縦型管状電気炉の所定の
位置に設置し、1000℃に加熱溶融して十分に攪拌して均
一に混合したのち、融液温度 767℃にまで冷却してビス
マス置換希土類鉄ガーネット単結晶育成用融液とした。
ここに得られた融液の表面に、常法に従って、厚さが 4
80μm で、格子定数が12.497 ± 0.002Åの(111)ガー
ネット単結晶[(GdCa)3(GaMgZr)5O12 ]基板の片面を接
触させて、融液温度を 767℃に維持しながら3時間のエ
ピタキシャル成長を行い、厚さ72μm で、Gd0.81Y0.81B
i1.38Fe4.00Ga1.00O12の組成を有するビスマス置換希土
類鉄ガーネット単結晶膜を作製した。次いで、このビス
マス置換希土類鉄ガーネット単結晶膜の飽和磁界と核形
成磁界の温度依存性を測定した。測定方法の概略を図7
に示す。図7において、符号8 は日本科学エンジニアリ
ング社製の半導体レーザ(波長 0.786μm )、符号9は
グラントムソンプリズムからなる偏光子、符号10は日本
科学エンジニアリング社製の磁界印加用のヘルムホルツ
コイル、符号11は駿河精機社製の試料加熱冷却装置、符
号12はグラントムソンプリズムからなる検光子、符号13
はアンリツ社製のパワーメータである。なお、試料加熱
冷却装置で達成される最低温度は -40℃である。まず、
ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶を加熱冷却装置
11に挿入し、これをヘルムホルツコイル10にセットし
た。そして 0.786μm の半導体レーザ光を偏光子9 を介
してビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶に照射し
た。ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶を透過した
0.786μm のレーザ光は検光子12を介して、パワーメー
タ13で検知する。この測定系において、検光子12を回転
させるとパワーメータ13で検知する光強度が変化する。
この光強度と検光子12の回転角の関係から、ビスマス置
換希土類鉄ガーネット単結晶を透過した 0.786μm のレ
ーザ光の偏波面回転角、即ちファラデー回転角が得られ
る。ヘルムホルツ10の形成する磁界強度とファラデー回
転角の関係は、図2、図3、図4、あるいは、図5のよ
うになる。従って、ビスマス置換希土類鉄ガーネット単
結晶の飽和磁界と核形成磁界が測定される。本実施例で
得られた Gd0.81Y0.81Bi1.38Fe4.00Ga1.00O12 単結晶の
-20℃〜60℃における飽和磁界の最大値は 134(Oe)、核
形成磁界の最大値は 108(Oe)、即ち-20℃〜60℃におけ
る反転磁界の最大値は 134(Oe)であった。また磁気補償
温度は -40℃以下であった。なお参考のため、飽和磁界
の温度依存性を図9に示す。組成分析は、以下の手順に
従って行った。即ち、得られたビスマス置換希土類鉄ガ
ーネット単結晶膜の基板を研磨により除去したのち、こ
れを塩酸に溶解させた。次いで、ここに得られた塩酸溶
液をICP発光分光分析に供した。
【0033】実施例2 容量 1000ml の白金製ルツボに、酸化鉛〔PbO 、4N〕16
60g 、酸化ビスマス〔Bi2O3 、4N〕1160g 、酸化第2鉄
〔Fe2O3 、4N〕175g、酸化ほう素〔B2O3、5N〕74.0g 、
酸化ガドリニウム〔Gd2O3 、3N〕10.3g 、酸化イットリ
ウム〔Y2O3、3N〕8.3g、酸化ガリウム〔Ga2O3 、3N〕4
5.0g を仕込んだ。これを精密縦型管状電気炉の所定の
位置に設置し、1000℃に加熱溶融して十分に攪拌して均
一に混合したのち、融液温度 789℃にまで冷却してビス
マス置換希土類鉄ガーネット単結晶育成用融液とした。
ここに得られた融液の表面に、常法に従って、厚さが 4
80μm で、格子定数が12.497 ± 0.002Åの(111)ガー
ネット単結晶[(GdCa)3(GaMgZr)5O12 ]基板の片面を接
触させて、融液温度を 789℃に維持しながら3時間のエ
ピタキシャル成長を行い、厚さ 82 μm で、Gd0.65Y
0.85Bi1.50Fe3.85Ga1.15O12の組成を有するビスマス置
換希土類鉄ガーネット単結晶膜を作製した。次に、ファ
ラデー回転角の外部磁界強度依存性を実施例1と同様に
行った結果、本実施例で得られたGd0.65Y0.85Bi1.50Fe
3.85Ga1.15O12単結晶の -20℃〜60℃における反転磁界
の最大値は 127(Oe)、磁気補償温度は -32℃であった。
【0034】実施例3 容量 1000ml の白金製ルツボに、酸化鉛〔PbO 、4N〕24
53g 、酸化ビスマス〔Bi2O3 、4N〕1778g 、酸化第2鉄
〔Fe2O3 、4N〕268g、酸化ほう素〔B2O3、5N〕113g、酸
化ガドリニウム〔Gd2O3 、3N〕18.7g 、酸化イットリウ
ム〔Y2O3、3N〕6.4g、酸化ガリウム〔Ga2O3 、3N〕42.0
g を仕込んだ。これを精密縦型管状電気炉の所定の位置
に設置し、1000℃に加熱溶融して十分に攪拌して均一に
混合したのち、融液温度 780℃にまで冷却してビスマス
置換希土類鉄ガーネット単結晶育成用融液とした。ここ
に得られた融液の表面に、常法に従って、厚さが 400μ
m で、格子定数が12.509 Åの(111)ガーネット単結晶
[Nd3Ga5O12 ]基板の片面を接触させて、融液温度を 7
80℃に維持しながら3時間のエピタキシャル成長を行
い、厚さ 69μm で、Gd1.17Y0.67Bi1.16Fe4.24Ga0.76O
12の組成を有するビスマス置換希土類鉄ガーネット単結
晶膜を作製した。次にファラデー回転角の外部磁界強度
依存性を実施例1と同様に行った結果、本実施例で得ら
れたGd1.17Y0.67Bi1.16Fe4.24Ga0.76O12単結晶の -20℃
〜60℃における反転磁界の最大値は 146(Oe)、磁気補償
温度は -40℃以下であった。
【0035】実施例4 容量 1000ml の白金製ルツボに、酸化鉛〔PbO 、4N〕16
60g 、酸化ビスマス〔Bi2O3 、4N〕1160g 、酸化第2鉄
〔Fe2O3 、4N〕175g、酸化ほう素〔B2O3、5N〕74.0g、
酸化ガドリニウム〔Gd2O3 、3N〕10.3g 、酸化イットリ
ウム〔Y2O3、3N〕6.4g、酸化ガリウム〔Ga2O3 、3N〕3
5.0g 、酸化アルミニウム〔Al2O3 、3N〕4.0g、を仕込
んだ。これを精密縦型管状電気炉の所定の位置に設置
し、1000℃に加熱溶融して十分に攪拌して均一に混合し
たのち、融液温度 773℃にまで冷却してビスマス置換希
土類鉄ガーネット単結晶育成用融液とした。ここに得ら
れた融液の表面に、常法に従って、厚さが 480μm で、
格子定数が12.497 ± 0.002Åの(111)ガーネット単結
晶[(GdCa)3(GaMgZr)5O12 ]基板の片面を接触させて、
融液温度を 773℃に維持しながら3時間のエピタキシャ
ル成長を行い、厚さ61μm で、Gd0.85Y0.86Bi1.29Fe
4.00Ga0.76Al0.24O12の組成を有するビスマス置換希土
類鉄ガーネット単結晶膜を作製した。次にファラデー回
転角の外部磁界強度依存性を実施例1と同様に行った結
果、本実施例で得られたGd0.85Y0.86Bi1.29Fe4.00Ga
0.76Al0.24O12単結晶の -20℃〜60℃における反転磁界
の最大値は 135(Oe)、磁気補償温度は -36℃であった。
【0036】実施例5 容量 1000ml の白金製ルツボに、酸化鉛〔PbO 、4N〕16
60g 、酸化ビスマス〔Bi2O3 、4N〕1160g 、酸化第2鉄
〔Fe2O3 、4N〕175g、酸化ほう素〔B2O3、5N〕74.0g 、
酸化ガドリニウム〔Gd2O3 、3N〕10.3g 、酸化イッテル
ビウム〔Yb2O3、3N〕10.9g 、酸化ガリウム〔Ga2O3 、3
N〕28.0g を仕込んだ。これを精密縦型管状電気炉の所
定の位置に設置し、1000℃に加熱溶融して十分に攪拌し
て均一に混合したのち、融液温度 755℃にまで冷却して
ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶育成用融液とし
た。ここに得られた融液の表面に、常法に従って、厚さ
が 480μm で、格子定数が12.492 ± 0.002Åの(111)
ガーネット単結晶[(GdCa)3(GaMgZr)5O12 ]基板の片面
を接触させて、融液温度を 755℃に維持しながら3時間
のエピタキシャル成長を行い、厚さ73μm で、Gd0.76Yb
0.71Bi1.53Fe4.20Ga0.80O12 の組成を有するビスマス置
換希土類鉄ガーネット単結晶膜を作製した。次にファラ
デー回転角の外部磁界強度依存性を実施例1と同様に行
った結果、本実施例で得られた Gd0.76Yb0.71Bi1.53Fe
4.20Ga0.80O12単結晶の -20℃〜60℃における反転磁界
の最大値は 142(Oe)、磁気補償温度は -40℃以下であっ
た。
【0037】実施例6 容量 1000ml の白金製ルツボに、酸化鉛〔PbO 、4N〕16
60g 、酸化ビスマス〔Bi2O3 、4N〕1160g 、酸化第2鉄
〔Fe2O3 、4N〕175g、酸化ほう素〔B2O3、5N〕74.0g 、
酸化ガドリニウム〔Gd2O3 、3N〕10.3g 、酸化ルテチウ
ム〔Lu2O3 、3N〕11.1g 、酸化ガリウム〔Ga2O3 、3N〕
28.0g を仕込んだ。これを精密縦型管状電気炉の所定の
位置に設置し、1000℃に加熱溶融して十分に攪拌して均
一に混合したのち、融液温度 750℃にまで冷却してビス
マス置換希土類鉄ガーネット単結晶育成用融液とした。
ここに得られた融液の表面に、常法に従って、厚さが 4
80μm で、格子定数が12.492 ± 0.002Åの(111)ガー
ネット単結晶[(GdCa)3(GaMgZr)5O12 ]基板の片面を接
触させて、融液温度を 750℃に維持しながら3時間のエ
ピタキシャル成長を行い、厚さ69μm で、Gd0.74Lu0.71
Bi1.55Fe4.22Ga0.78O12 の組成を有するビスマス置換希
土類鉄ガーネット単結晶膜を作製した。次にファラデー
回転角の外部磁界強度依存性を実施例1と同様に行った
結果、本実施例で得られた Gd0.74Lu0.71Bi1.55Fe4.22G
a0.78O12単結晶の -20℃〜60℃における反転磁界の最大
値は 153(Oe)、磁気補償温度は -40℃以下であった。
【0038】実施例7 容量 1000ml の白金製ルツボに、酸化鉛〔PbO 、4N〕16
60g 、酸化ビスマス〔Bi2O3 、4N〕1160g 、酸化第2鉄
〔Fe2O3 、4N〕175g、酸化ほう素〔B2O3、5N〕74g 、酸
化ガドリニウム〔Gd2O3 、3N〕10.3g 、酸化イットリウ
ム〔Y2O3、3N〕3.2g、酸化イッテルビウム〔Yb2O3 、3
N〕5.4g、酸化ガリウム〔Ga2O3 、3N〕39.0g を仕込ん
だ。これを精密縦型管状電気炉の所定の位置に設置し、
1000℃に加熱溶融して十分に攪拌して均一に混合したの
ち、融液温度 766℃にまで冷却してビスマス置換希土類
鉄ガーネット単結晶育成用融液とした。ここに得られた
融液の表面に、常法に従って、厚さが 480μm で、格子
定数が12.497 ± 0.002Åの(111)ガーネット単結晶
[(GdCa)3(GaMgZr)5O12 ]基板の片面を接触させて、融
液温度を 766℃に維持しながら3時間のエピタキシャル
成長を行い、厚さ72μm で、Gd0.72Y0.44Yb0.39Bi1.45F
e3.98Ga1.02O12の組成を有するビスマス置換希土類鉄ガ
ーネット単結晶膜を作製した。次にファラデー回転角の
外部磁界強度依存性を実施例1と同様に行った結果、本
実施例で得られたGd0.72Y0.44Yb0.39Bi1.45Fe3.98Ga
1.02O12単結晶の -20℃〜60℃における反転磁界の最大
値は 131(Oe)、磁気補償温度は -40℃であった。
【0039】比較例1 容量 1000ml の白金製ルツボに、酸化鉛〔PbO 、4N〕16
60g 、酸化ビスマス〔Bi2O3 、4N〕1160g 、酸化第2鉄
〔Fe2O3 、4N〕175g、酸化ほう素〔B2O3、5N〕74.0g 、
酸化ガドリニウム〔Gd2O3 、3N〕15.0g 、酸化イットリ
ウム〔Y2O3、3N〕4.3g、酸化ガリウム〔Ga2O3 、3N〕3
9.0g を仕込んだ。これを精密縦型管状電気炉の所定の
位置に設置し、1000℃に加熱溶融して十分に攪拌して均
一に混合したのち、融液温度 770℃にまで冷却してビス
マス置換希土類鉄ガーネット単結晶育成用融液とした。
ここに得られた融液の表面に、常法に従って、厚さが 4
80μm で、格子定数が12.497 ± 0.002Åの(111)ガー
ネット単結晶[(GdCa)3(GaMgZr)5O12 ]基板の片面を接
触させて、融液温度を 770℃に維持しながら3時間のエ
ピタキシャル成長を行い、厚さ72μm で、Gd1.22Y0.58B
i1.20Fe3.99Ga1.01O12の組成を有するビスマス置換希土
類鉄ガーネット単結晶膜を作製した。本実施例で得られ
たGd1.22Y0.58Bi1.20Fe3.99Ga1.01O12単結晶の磁気補償
温度は -24℃であった。
【0040】比較例2 容量 1000ml の白金製ルツボに、酸化鉛〔PbO 、4N〕16
60g 、酸化ビスマス〔Bi2O3 、4N〕1160g 、酸化第2鉄
〔Fe2O3 、4N〕175g、酸化ほう素〔B2O3、5N〕74.0g 、
酸化ガドリニウム〔Gd2O3 、3N〕10.3g 、酸化イットリ
ウム〔Y2O3、3N〕8.3g、酸化ガリウム〔Ga2O3 、3N〕3
9.0g を仕込んだ。これを精密縦型管状電気炉の所定の
位置に設置し、1000℃に加熱溶融して十分に攪拌して均
一に混合したのち、融液温度 768℃にまで冷却してビス
マス置換希土類鉄ガーネット単結晶育成用融液とした。
ここに得られた融液の表面に、常法に従って、厚さが 4
80μm で、格子定数が12.495 ± 0.002Åの(111)ガー
ネット単結晶[(GdCa)3(GaMgZr)5O12 ]基板の片面を接
触させて、融液温度を 768℃に維持しながら3時間のエ
ピタキシャル成長を行い、厚さ73μm で、Gd0.64Y0.93B
i1.43Fe3.95Ga1.05O12の組成を有するビスマス置換希土
類鉄ガーネット単結晶膜を作製した。本比較例で得られ
たGd0.64Y0.93Bi1.43Fe3.95Ga1.05O12単結晶の -20℃〜
60℃における反転磁界の最大値は 172(Oe)であった。
【0041】比較例3 容量 1000ml の白金製ルツボに、酸化鉛〔PbO 、4N〕16
60g 、酸化ビスマス〔Bi2O3 、4N〕1160g 、酸化第2鉄
〔Fe2O3 、4N〕175g、酸化ほう素〔B2O3、5N〕74g 、酸
化ガドリニウム〔Gd2O3 、3N〕10.3g 、酸化イットリウ
ム〔Y2O3、3N〕6.4g、酸化ガリウム〔Ga2O3 、3N〕23.0
g を仕込んだ。これを精密縦型管状電気炉の所定の位置
に設置し、1000℃に加熱溶融して十分に攪拌して均一に
混合したのち、融液温度 773℃にまで冷却してビスマス
置換希土類鉄ガーネット単結晶育成用融液とした。ここ
に得られた融液表面に、常法に従って、厚さが 480μm
で、格子定数が 12.497 ± 0.002Åの(111)ガーネット
単結晶[(GdCa)3(GaMgZr)5O12 ]基板の片面を接触さ
せ、融液温度を 773℃に維持しながら3時間のエピタキ
シャル成長を行い、厚さ70μm で、Gd0.85Y0.89Bi1.26F
e4.34Ga0.66O12の組成を有するビスマス置換希土類鉄ガ
ーネット単結晶膜を作製した。本比較例で得られたGd
0.85Y0.89Bi1.26Fe4.34Ga0.66O12単結晶の -20℃〜60℃
における反転磁界の最大値は 179(Oe)であった。
【0042】比較例4 容量 1000ml の白金製ルツボに、酸化鉛〔PbO 、4N〕16
60g 、酸化ビスマス〔Bi2O3 、4N〕1160g 、酸化第2鉄
〔Fe2O3 、4N〕175g、酸化ほう素〔B2O3、5N〕74.0g 、
酸化ガドリニウム〔Gd2O3 、3N〕10.3g 、酸化イットリ
ウム〔Y2O3、3N〕6.4g、酸化ガリウム〔Ga2O3 、3N〕5
0.0g を仕込んだ。これを精密縦型管状電気炉の所定の
位置に設置し、1000℃に加熱溶融して十分に攪拌して均
一に混合したのち、融液温度を 759℃にまで冷却してビ
スマス置換希土類鉄ガーネット単結晶育成用融液とし
た。ここに得られた融液の表面に、常法に従って、厚さ
が 480μm で、格子定数が12.497 ± 0.002Åの(111)
ガーネット単結晶[(GdCa)3(GaMgZr)5O12 ]基板の片面
を接触させて、融液温度を 759℃に維持しながら3時間
のエピタキシャル成長を行い、厚さ65μm で、Gd0.79Y
0.78Bi1.43Fe3.71Ga1.29O12の組成を有するビスマス置
換希土類鉄ガーネット単結晶膜を作製した。本比較例で
得られたGd0.79Y0.78Bi1.43Fe3.71Ga1.29O12単結晶の -
20℃〜60℃における反転磁界の最大値は 185(Oe)であっ
た。
【0043】比較例5 容量 1000ml の白金製ルツボに、酸化鉛〔PbO 、4N〕16
60g 、酸化ビスマス〔Bi2O3 、4N〕1160g 、酸化第2鉄
〔Fe2O3 、4N〕175g、酸化ほう素〔B2O3、5N〕74g 、酸
化ガドリニウム〔Gd2O3 、3N〕10.3g 、酸化イットリウ
ム〔Y2O3、3N〕8.3g、酸化ガリウム〔Ga2O3 、3N〕32g
、酸化アルミニウム〔Al2O3 、3N〕6.0gを仕込んだ。
これを精密縦型管状電気炉の所定の位置に設置し、1000
℃に加熱溶融して十分に攪拌して均一に混合したのち、
融液温度 766℃にまで冷却してビスマス置換希土類鉄ガ
ーネット単結晶育成用融液とした。ここに得られた融液
の表面に、常法に従って、厚さが 480μm で、格子定数
が12.497 ± 0.002Åの(111)ガーネット単結晶[(GdC
a)3(GaMgZr)5O12 ]基板の片面を接触させて、融液温度
を 766℃に維持しながら3時間のエピタキシャル成長を
行い、厚さ60μm で、Gd0.85Y0.88Bi1.27Fe4.11Ga0.64A
l0.24O12の組成を有するビスマス置換希土類鉄ガーネッ
ト単結晶膜を作製した。本比較例で得られたGd0.85Y
0.88Bi1.27Fe4.11Ga0.64Al0.24O12単結晶の -20℃〜60
℃における反転磁界の最大値は 177(Oe)であった。
【0044】比較例6 容量 1000ml の白金製ルツボに、酸化鉛〔PbO 、4N〕16
60g 、酸化ビスマス〔Bi2O3 、4N〕1160g 、酸化第2鉄
〔Fe2O3 、4N〕175g、酸化ほう素〔B2O3、5N〕74g 、酸
化ガドリニウム〔Gd2O3 、3N〕10.3g 、酸化イットリウ
ム〔Y2O3、3N〕10.3g 、酸化ホルミウム〔Ho2O3 、3N〕
8.4g、酸化ガリウム〔Ga2O3 、3N〕39gを仕込んだ。こ
れを精密縦型管状電気炉の所定の位置に設置し、1000℃
に加熱溶融して十分に攪拌して均一に混合したのち、融
液温度 756℃にまで冷却してビスマス置換希土類鉄ガー
ネット単結晶育成用融液とした。ここに得られた融液の
表面に、常法に従って、厚さが 480μm で、格子定数が
12.497 ± 0.002Åの(111)ガーネット単結晶[(GdCa)3
(GaMgZr)5O12 ]基板の片面を接触させて、融液温度を
756℃に維持しながら3時間のエピタキシャル成長を行
い、厚さ75μm で、Gd0.97Ho0.75Bi1.28Fe3.98Ga1.02O
12 の組成を有するビスマス置換希土類鉄ガーネット単
結晶膜を作製した。本比較例で得られた Gd0.97Ho0.75B
i1.28Fe3.98Ga1.02O12単結晶の -20℃〜60℃における反
転磁界の最大値は 183(Oe)であった。
【0045】
【発明の効果】本発明によれば、小型軽量で、かつ−2
0℃〜60℃の温度範囲での作動が可能な磁気光学式光
スイッチを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】機械式光スイッチの一例を示す模式図である。
【図2】ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶のファ
ラデー回転角の印加磁界依存性、即ち、磁気特性の一例
を示した図である。
【図3】磁気光学光スイッチの原理を示す模式図であ
る。
【図4】磁気ヒステリシスを示すビスマス置換希土類鉄
ガーネット単結晶の磁気特性の一例を示した図である。
【図5】磁気ヒステリシスが大きいビスマス置換希土類
鉄ガーネット単結晶の磁気特性の一例を示した図であ
る。
【図6】磁気ヒステリシスが非常に大きいビスマス置換
希土類鉄ガーネット単結晶の磁気特性の一例を示した図
である。
【図7】磁気特性の温度変化を測定する装置の模式図で
ある。
【図8】飽和磁界の温度依存性を測定した結果の一例で
ある。
【符号の説明】
1 ・・・入射側の光ファイバ 2 ・・・出射側の光ファイバ 3 ・・・出射側の光ファイバ 4 ・・・偏光子 5 ・・・ファラデー回転子 6 ・・・偏光分離素子 7 ・・・磁界発生装置 8 ・・・半導体レーザ 9 ・・・偏光子 10 ・・・ヘルムホルツコイル 11 ・・・試料加熱冷却装置 12 ・・・検光子 13 ・・・パワーメータ

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】格子定数が 12.490 Å〜12.510Åの非磁性
    基板上に液相エピタキシャル法で育成された一般式、 Gdx Ry Bi3-x-y Fe5-z-w Gaz Alw O12 〔但し、R は、イットリウムY 、イッテルビウムYb、ル
    テチウムLuの群から選ばれた少なくとも1種類の元素で
    あり、しかも、x、y、z、wは、0.50≦y/x≦1.3
    5、1.40≦x+y≦1.90、 0.0≦w/z≦0.3 、 0.7≦
    z+w≦1.25 の範囲の数である〕で表されるビスマス
    置換希土類鉄ガーネット単結晶。
  2. 【請求項2】格子定数が 12.490 Å〜12.510Åの非磁性
    基板上に液相エピタキシャル法で育成された一般式、 Gdx Yy Bi3-x-y Fe5-z-w Gaz Alw O12 〔但し、x、y、z、wは、0.50≦y/x≦1.35、1.40
    ≦x+y≦1.90、 0.0≦w/z≦0.3 、 0.7≦z+w≦
    1.25 の範囲の数である〕で表されるビスマス置換希土
    類鉄ガーネット単結晶。
  3. 【請求項3】格子定数が 12.490 Å〜12.510Åの非磁性
    基板上に液相エピタキシャル法で育成された一般式、 Gdx Yby Bi3-x-y Fe5-z-w Gaz Alw O12 〔但し、x、y、z、wは、0.50≦y/x≦1.35、1.40
    ≦x+y≦1.90、 0.0≦w/z≦0.3 、 0.7≦z+w≦
    1.25 の範囲の数である〕で表されるビスマス置換希土
    類鉄ガーネット単結晶。
  4. 【請求項4】格子定数が 12.490 Å〜12.510Åの非磁性
    基板上に液相エピタキシャル法で育成された一般式、 Gdx Luy Bi3-x-y Fe5-z-w Gaz Alw O12 〔但し、x、y、z、wは、0.50≦y/x≦1.35、1.40
    ≦x+y≦1.90、 0.0≦w/z≦0.3 、 0.7≦z+w≦
    1.25 の範囲の数である〕で表されるビスマス置換希土
    類鉄ガーネット単結晶。
  5. 【請求項5】請求項1〜4の何れか1項記載のビスマス
    置換希土類鉄ガーネット単結晶で構成したことを特徴と
    するファラデー回転子、および、または、磁気光学式光
    スイッチ。
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