JP3217419B2 - 結晶膜の形成方法 - Google Patents

結晶膜の形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、非晶質シリコン膜を固
相で結晶化させる結晶膜の形成方法に関する。更に詳し
くは、非晶質シリコン膜中に核形成領域を所望の位置に
形成することにより、結晶膜の粒界の位置および結晶粒
の大きさを制御できる結晶膜の形成方法に関する。本発
明の方法により形成される結晶膜は、例えば、半導体集
積回路等の電子素子、光素子等の材料として幅広い分野
で利用可能である。
【0002】
【従来の技術】従来より、結晶性を有さない基体上に非
晶質薄膜を形成し、この薄膜を融点以下の温度で熱処理
することによって1μmを越える大粒径の多結晶薄膜に
固相成長させる結晶形成技術が知られている。そして、
この様な結晶膜の形成に際し、結晶粒径の分布や結晶粒
界の位置を制御する目的で、非晶質薄膜の面内で人工的
に核形成位置を規定する方法が報告されている(H.Kumo
mi and T.Yonehara, Extended Abstract of the 8th In
ternational Conference on Solid State Devices and
Materials, 1159 (1990))。
【0003】図2を参照しつつ、この従来法の工程を概
説する。この従来法においては、まず、非晶質SiO2
表面を有する基体1上に、SiH4 ガスを用いたLPC
VD法によって膜厚100nmの非晶質シリコン薄膜2
を堆積する[図2(a)]。次いで、この非晶質シリコ
ン薄膜2の全面に70keVのエネルギーに加速された
Si+ イオン(注入イオン4)を4×1014cm-2の照
射量で注入する[図2(b)]。次いで、フォトレジス
ト等のマスク材8で被覆された核形成領域3を除いて、
今度は2×1015-2の照射量で同様のイオンを注入す
る[図2(c)]。この様に二段階に亙ってイオン注入
を施した非晶質シリコン薄膜2を、N2雰囲気中におい
て600℃で熱処理すると、核形成領域3に優先的に単
一の結晶核5が形成される[図2(d)]。次いでこの
膜に所定の熱処理を施せば結晶核5が固相成長し結晶粒
となり、結晶粒6aは隣接する結晶粒6bと接し、そこ
に結晶粒界7が形成される[図2(e)]。
【0004】この様な方法によれば、図2(c)に示し
た核形成領域3を複数所望の位置に配置、形成すること
により、結果的に図2(e)に示した粒界7の位置や結
晶粒6a、6bの粒径の分布が制御できることとなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述の従来法において
は、図2(b)、図2(c)に示した二度のイオン注入
工程が必要である。
【0006】図2(c)に示した第二回目のイオン注入
は、核形成領域3以外の部位の核形成潜伏時間を延長
し、核形成の選択性を付与し、その結果として所望の核
形成領域3の配置を決定する目的で行われる。
【0007】図2(b)に示した第一回目のイオン注入
は、非結晶シリコン薄膜2中の核形成頻度を、核形成領
域3の中で単一の結晶核が形成されるよう調整する目的
で行われる。この第一回目のイオン注入を行わないと、
たとえ現状の微細加工技術で可能な範囲で核形成領域3
を小さいサイズにしても、その核形成頻度が高過ぎるの
で単一の結晶核が形成され難い傾向にある。これを防止
すべく第一回目のイオン注入により、非結晶シリコン薄
膜2中の核形成頻度を低くするのである。
【0008】例えば、原料ガスとしてSiH4 ガスを用
い、LPCVD法により基体1上に非晶質シリコン薄膜
2を堆積するには、その基体1の温度条件は550℃近
傍の狭い範囲に限られる。ところが550℃という高温
では、非晶質シリコンの構造緩和速度が比較的速くなっ
てしまい、かつ薄膜の堆積レートが遅いので、核形成頻
度の高い非晶質薄膜2(特に堆積下地界面付近で高い)
しか得られない。したがって、この第1回目のイオン注
入が必要となるのである。
【0009】本発明の目的は、上述のような二段のイオ
ン注入の一方を省略して工程を簡略化しても、所望の粒
界位置や結晶粒径が得られ良好な結晶膜が形成できる簡
便な方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、非
晶質シリコン膜を固相で結晶化させる結晶膜の形成方法
において、原料ガスとして2次以上の高次シランを用い
て非晶質シリコン膜を形成し、該非晶質シリコン膜の核
形成領域を除く部分に選択的にイオン注入を施し、
晶質シリコン膜を熱処理することにより該核形成領域に
おいて結晶核を生成し、該結晶核を成長させて該イオン
注入がなされた部分をも結晶化させる工程を有すること
を特徴とする結晶膜の形成方法により達成できる。
【0011】更に、非晶質シリコン膜を形成した後であ
ってイオン注入の前に、結晶化臨界温度以下の温度で該
非晶質シリコン膜を熱処理する本発明の態様によれば、
より正確に所望の粒界位置や結晶粒径が得られることと
なる。
【0012】
【作用】本発明の方法においては、非晶質シリコン膜の
形成のための原料ガスとして高次シランを用いる。この
高次シランは、先に述べた従来法で使用するSiH4
りも分解温度が低い。したがって、各種CVD法等によ
り非晶質シリコン薄膜形成する際、その温度を従来法よ
り低くすることができる。この低温下での膜形成により
核形成頻度が比較的低い非結晶シリコン膜を得ることが
でき、第一回目のイオン注入を省略しても、核形成領域
の中で良好に単一の結晶核が形成されることとなる。
【0013】また、非晶質シリコン膜形成後イオン注入
前に適温で膜を熱処理する態様によれば、加熱による膜
の構造緩和に伴う核形成頻度の増加作用を利用して核形
成頻度が調整できるので、より正確に所望の粒界位置や
結晶粒径が得られることとなる。
【0014】
【実施例】以下、本発明の方法の各工程の例を図1を参
照しつつ詳細に説明する。
【0015】まず、原料ガスとして2次以上の高次シラ
ンを用い、適当な基体1上に非晶質シリコン膜2を形成
する[図1(a)]。
【0016】ここで採用する堆積膜形成法としては、例
えば高次シランを原料ガスに用いたLPCVD法、プラ
ズマCVD法等の各種CVD法が挙げられる。
【0017】この非晶質シリコン膜2の形成工程におい
ては、原料ガスである高次シランの分解温度が低いの
で、先に述べた様に比較的低温での膜形成が可能であ
る。この基体1の温度は、後工程において核形成領域中
で所望の単一の結晶核が形成できる適度に低い核形成頻
度を有する非晶質シリコン膜2を形成できる様な温度で
あればよく、使用するガスの種類やその他各種条件に応
じて適切な温度を適宜選定すればよい。したがって、特
定の範囲に限定されるものではないが、例えばジシラン
(Si26 )の場合400〜550℃程度が望まし
く、450〜520℃程度が好ましい。またこの工程に
おいては、従来法に比べ基体の温度の設定範囲を広く
とることが可能という利点も有する。したがって、この
温度を調整することにより非結晶シリコン膜2の核形成
頻度を調整できることとなる。
【0018】ここで用いる高次シランとは、分子中にケ
イ素原子を複数有するシランを意味し、例えばSi2
6 、Si38 等が挙げられる。
【0019】具体的には、例えば原料ガスとしてSi2
6 ガスを用いると、基体1の温度を450℃付近に設
定することにより核形成頻度の著しく低い非結晶シリコ
ン膜2が形成でき、結晶粒径が最大で数μmの結晶膜が
最終的に得られる。なお、形成する非結晶シリコン膜2
の膜厚は、この種の公知成膜法における一般的な厚さで
よく特に限定されるものではない。
【0020】なお、この図1(a)に示す非結晶シリコ
ン膜2形成工程の後、図1(b)に示すイオン注入工程
の前に、結晶化臨界温度以下の温度で非晶質シリコン膜
2を熱処理することが望ましい。この熱処理の温度や時
間を調整することにより、後工程で形成する核形成領域
3の核形成頻度を低過ぎない値になるように非結晶シリ
コン膜2の核形成頻度を自在に調整できる。この際の加
熱温度は、550〜650℃程度が望ましい。
【0021】次に、この非晶質シリコン膜2の核形成領
域3とすべき部分を除きそれ以外の部分にイオン注入を
施す。すなわち、膜面内で局所的に注入する。このイオ
ン注入は、適当に加速した注入イオン4を選択的に照射
等することにより行える。これによりイオン注入部分の
核形成潜伏時間は延長され、非注入部分が核形成領域3
となる[図1(b)]。
【0022】注入イオン4としては、例えばSi+ イオ
ンが用いられる。また、核形成領域3のサイズは任意で
ある。ただし、このサイズを十分小さくすることによ
り、次工程で形成する結晶核5の位置の制御を適切に行
うことが望ましい。具体的には核形成領域3の面積は4
μm2 以下が好ましい。
【0023】次に、イオン注入により所望の核形成領域
3を形成した非晶質シリコン膜2を、結晶化臨界温度以
上の適度な温度で熱処理することによって、核形成領域
3に優先的に単一の結晶核5を生成させる[図1
(c)]。
【0024】この結晶核5生成のための熱処理は、核形
成領域3にのみ選択的に結晶核5が発生する温度で行え
ばよく、特に限定されないが、550〜650℃程度が
望ましい。
【0025】更に非結晶シリコン膜2の熱処理を続ける
ことによって、結晶核5を成長させ結晶粒を形成する。
この熱処理により、一つの結晶粒6aは横方向成長して
隣接する核形成領域から成長してきた結晶粒6bと成長
端面を接し、ここに粒界7を成すに至る[図1
(d)]。
【0026】この様に図1(a)〜(d)の工程を経る
ことによって、結晶粒の位置および粒界位置が制御され
た結晶粒群から成る結晶薄膜が、一回だけのイオン注入
工程で形成できることとなる。
【0027】以下、本発明を具体的なデータによる実施
例1〜4により、更に詳細に説明する。
【0028】[実施例1]まず、4インチ径の溶融石英
基体(基体1)を510℃に保ち、Si26 を原料ガ
スとして用いたLPCVD法によって、非晶質シリコン
膜2を100nmの膜厚で堆積した。この非晶質シリコ
ン膜2の上にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラ
フィー工程によって、1μm角の領域が5μm間隔の正
方格子点状に残るようパターニングした。この1μm角
パターンのレジストをマスクとし、70keVのエネル
ギーに加速されたSi+ イオンを1×1015cm-2の照
射量で注入した。イオン注入後、レジストを剥離した。
これをN2 雰囲気中600℃で5時間ほど熱処理したと
ころ、レジストにより被覆されていた領域(核形成領域
3)に単一の結晶核5が形成されていた。
【0029】この熱処理時間を50時間まで延長したと
ころ、非晶質シリコン膜2は全域にわたって結晶化し、
粒径5μmの結晶粒6が規則正しく配列した結晶薄膜が
得られた。
【0030】[実施例2]まず、表面を熱酸化処理した
4インチ径のシリコン基体(基体1)を300℃に保
ち、Si38 を原料ガスとして用いたプラズマCVD
法によって、非晶質シリコン膜2を150nmの膜厚で
堆積した。この非晶質シリコン膜2の上にフォトレジス
トを塗布し、フォトリソグラフィー工程によって、1μ
m角の領域が5μm間隔の正方格子点状に残るようパタ
ーニングした。この1μm角パターンのレジストをマス
クとし、100keVのエネルギーに加速されたSi+
イオンを2×1015cm-2の照射量で注入した。イオン
注入後、レジストを剥離した。これをN2 雰囲気中60
0℃で5時間ほど熱処理したところ、レジストにより被
覆されていた領域(核形成領域3)に単一の結晶核5が
形成されていた。
【0031】この熱処理時間を50時間まで延長したと
ころ、非晶質シリコン膜2は全域にわたって結晶化し、
粒径5μmの結晶粒6が規則正しく配列した結晶薄膜が
得られた。
【0032】[実施例3]まず、4インチ径の溶融石英
基体(基体1)を450℃に保ち、Si26 を原料ガ
スとして用いたLPCVD法によって、非晶質シリコン
膜2を100nmの膜厚で堆積した。そして、これをN
2 雰囲気中500℃に保ち、2時間ほど熱処理した。こ
の熱処理後の非晶質シリコン膜2の上にフォトレジスト
を塗布し、フォトリソグラフィー工程によって、1μm
角の領域が5μm間隔の正方格子点状に残るようパター
ニングした。この1μm角パターンのレジストをマスク
とし、70keVのエネルギーに加速されたSi+ イオ
ンを1×1015cm-2の照射量で注入した。イオン注入
後、レジストを剥離した。これをN2 雰囲気中600℃
で5時間ほど熱処理したところ、レジストにより被覆さ
れていた領域(核形成領域3)に単一の結晶核5が形成
されていた。
【0033】この熱処理時間を50時間まで延長したと
ころ、非晶質シリコン膜2は全域にわたって結晶化し、
粒径5μmの結晶粒6が規則正しく配列した結晶薄膜が
得られた。
【0034】[実施例4]まず、表面を熱酸化処理した
4インチ径のシリコン基体(基体1)を250℃に保
ち、Si38 を原料ガスとして用いたプラズマCVD
法によって、非晶質シリコン膜2を150nmの膜厚で
堆積した。次に、これをN2 雰囲気中400℃に保ち、
5時間ほど熱処理した。なお、この熱処理によっては膜
の結晶化は起こらず、非晶質シリコン膜の構造緩和が進
んだのみであった。この非晶質シリコン膜2の上にフォ
トレジストを塗布し、フォトリソグラフィー工程によっ
て、1μm角の領域が5μm間隔の正方格子点状に残る
ようパターニングした。この1μm角パターンのレジス
トをマスクとし、100keVのエネルギーに加速され
たSi+ イオンを2×1015cm-2の照射量で注入し
た。イオン注入後、レジストを剥離した。これをN2
囲気中600℃で5時間ほど熱処理したところ、レジス
トにより被覆されていた領域(核形成領域3)に単一の
結晶核5が形成されていた。
【0035】この熱処理時間を50時間まで延長したと
ころ、非晶質シリコン膜2は全域にわたって結晶化し、
粒径5μmの結晶粒6が規則正しく配列した結晶薄膜が
得られた。
【0036】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明の結晶膜の形
成方法は、二度のイオン注入の一方を省略して工程を簡
略化でき、膜の製造コスト低減を図れる方法であり、且
つこれを省略しても所望の粒界位置や結晶粒径(比較的
大粒径)の結晶膜を大面積に渡って良好に得られる簡便
な方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による結晶膜の形成方法の工程を示す模
式的部分断面図である。
【図2】従来技術による結晶膜の形成方法の工程を示す
模式的部分断面図である。
【符号の説明】
1 基体 2 非晶質シリコン膜 3 核形成領域 4 注入イオン 5 結晶核 6 結晶粒 7 粒界 8 マスク材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H01L 21/20 H01L 21/20

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非晶質シリコン膜を固相で結晶化させる
    結晶膜の形成方法において、原料ガスとして2次以上の
    高次シランを用いて非晶質シリコン膜を形成し、該非晶
    質シリコン膜の核形成領域を除く部分に選択的にイオン
    注入を施し、非晶質シリコン膜を熱処理することによ
    り該核形成領域において結晶核を生成し、該結晶核を成
    長させて該イオン注入がなされた部分をも結晶化させる
    工程を有することを特徴とする結晶膜の形成方法。
  2. 【請求項2】 非晶質シリコン膜を形成した後であって
    イオン注入の前に、結晶化臨界温度以下の温度で該非晶
    質シリコン膜を熱処理する請求項1記載の結晶膜の形成
    方法。
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