JP3214239B2 - セラミック電子部品のメッキ方法 - Google Patents

セラミック電子部品のメッキ方法

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重之 堀江
正士 森本
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば積層コンデンサ
等のセラミック電子部品の電極上にメッキ膜を形成する
ための方法に関し、特に、メッキ浴中にて電気メッキに
よりメッキ膜を形成する方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のセラミック電子部品の一例とし
て、積層コンデンサを図1に示す。積層コンデンサ1
は、誘電体セラミックスよりなる焼結体2内に、複数の
内部電極3,3をセラミック層を介して積層した構造を
有する。焼結体2の両端面2a,2bには、所定の内部
電極3に電気的に接続されるように、一対の外部電極
4,5が形成されている。外部電極4,5は、例えばA
gもしくはAg−Pdの厚膜により形成されている。
【0003】また、積層コンデンサ1では、プリント基
板等への半田付けに際しての外部電極4,5の半田喰わ
れ現象を防止するために、図1に示されているように、
例えばNiよりなる第1のメッキ層6,7が形成されて
いる。さらに、Niよりなる第1のメッキ膜6,7の半
田付け性を補うために、その上に、半田付け性に優れた
例えばSnもしくはSn−Pbよりなる第2のメッキ膜
8,9が電気メッキにより形成されている。
【0004】ところで、上記SnもしくはSn−Pbよ
りなるメッキ膜を形成する場合、メッキ浴としては、錯
化剤として例えばカルボン酸系の有機酸を含む中性のメ
ッキ浴が用いられている。このメッキ浴中に含まれてい
る有機酸は、Sn2価イオンを錯化させ、Sn4価イオ
ンへの酸化反応を抑制するために、並びに陽極をスムー
ズに溶解させるために加えられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】錯化剤としての有機酸
は上記のような作用をもたらすものであるが、過剰の有
機酸を添加した場合には、Sn2価イオンとの錯体形成
に関与していないフリーの有機酸イオンが過剰に存在す
ることになる。その結果、フリーの有機酸イオンが、外
部電極中のガラスフリットを溶解し、積層コンデンサ等
のセラミック電子部品の耐熱性や耐機械衝撃性等を低下
させるという問題があった。
【0006】本発明の目的は、セラミック電子部品の電
極上に、セラミック電子部品の特性を低下させることな
く、メッキ膜を安定に形成することを可能とするセラミ
ック電子部品のメッキ方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、セラミック電
子部品のガラスフリット含有電極上にメッキ浴中にて電
気メッキによりメッキ膜を形成する方法において、メッ
キ浴中の錯化剤としての有機酸と、メッキされる金属イ
オンとの割合をモル比で0.6〜2.4の範囲としてメ
ッキを行うことを特徴とするセラミック電子部品のメッ
キ方法である。
【0008】本発明は、セラミック電子部品のメッキ方
法に関し、例えば積層コンデンサ、セラミック多層基板
等のセラミック積層電子部品の外部電極上にメッキ膜を
形成する場合、あるいはセラミック積層電子部品以外の
セラミック電子部品の任意の電極上にメッキ膜を形成す
る用途に用いることができる。
【0009】また、本発明のメッキ方法は、種々の金属
からなるメッキ膜を電極上に形成するのに用い得るが、
例えばSn2価イオンを含むメッキ浴を用い、Sn膜
や、Sn−Pb膜を形成する場合に好適に用いることが
できる。
【0010】なお、本発明で用いられる錯化剤としての
有機酸としては、例えばシュウ酸、クエン酸等を挙げる
ことができる。
【0011】
【作用】本発明では、メッキ浴中の錯化剤としての有機
酸と、メッキされる金属イオンの割合を、モル比で0.
6〜2.4の範囲とすることにより、フリーの有機酸イ
オンの量を抑制することが可能とされている。従って、
外部電極中に含まれているガラスフリット等が有機酸イ
オンにより溶解され難いので、特性の安定なセラミック
電子部品を得ることができる。
【0012】上記有機酸と金属イオンとの割合をモル比
で0.6〜2.4の範囲とすれば上記のように特性の安
定なセラミック電子部品の得られることは、本願発明者
により実験的に確かめられたものである。なお、有機酸
と金属イオンとの割合が0.6未満の場合には、有機酸
の量が少なくなりすぎ、金属イオンの酸化が進み易くな
り、好ましくない。他方、2.4を越えると、フリーの
有機酸が過剰に存在し、前述した問題点が生じる。
【0013】
【実施例の説明】以下、実施例を説明することにより、
本発明を明らかにする。以下の実施例は、チップ型積層
コンデンサの外部電極上に、Snメッキ膜を形成する方
法に適用したものである。
【0014】有機酸としてカルボン酸系のものを用いて
表1に示すA浴〜G浴の7種類のメッキ浴を用意し、図
1に示した積層コンデンサ1の外部電極4,5上にSn
メッキ膜を電気メッキにより形成した。
【0015】
【表1】
【0016】上記A〜Gのメッキ浴を用いてメッキされ
た積層コンデンサにつき、下記の要領ではんだ熱衝撃試
験を実施した。 はんだ熱衝撃試験…温度T=200,250,300,
350,400℃の溶融はんだに、3秒浸漬した。
【0017】上記はんだ熱衝撃試験の結果を図2に示
す。図2から明らかなように、有機酸と、Sn2価イオ
ンのモル比が、0.6〜2.4の場合、すなわちB浴〜
E浴では、従来のメッキ浴であるA浴を用いた場合に比
べ、製品の耐熱衝撃性が高められていることがわかる。
【0018】次に、上記A浴〜G浴を用いてメッキ膜を
形成した各積層コンデンサの外部電極上にCuよりなる
リード線を外部電極に直交する方向にはんだ付けにより
接合し、該リード線を外部電極と直交する方向外側に引
っ張り、引っ張り試験を行った。結果を図3に示す。
【0019】図3から明らかなように、上記耐熱衝撃性
の結果と同様に、有機酸のSn2価イオンに対する割合
が小さいほど、上記引っ張り強度が高められることがわ
かる。
【0020】上記はんだ熱衝撃試験及びリード線引っ張
り試験の結果から、メッキ浴中の有機酸とSn2価イオ
ンのモル比が小さくなると、Sn2価イオンと錯体を形
成していないフリーの有機酸イオンが減少し、それによ
って上記のような結果が生じているものと考えられる。
すなわち、フリーの有機酸イオンにより、外部電極中の
ガラスフリットが飛び出す現象が抑制され、セラミック
焼結体内へのメッキ液の侵入が抑制され、それによって
耐熱衝撃性及び耐機械衝撃性の低下が抑制されているも
のと考えられる。
【0021】なお、G浴を用いた場合の結果から明らか
なように、有機酸の濃度を低下させた場合には、Sn2
価イオンの濃度を高めてメッキ浴を調製したとしても、
B浴〜E浴と同様の結果が得られることが確認されてい
る。
【0022】本実施例では、有機酸としてカルボン酸系
を用い、金属イオンとしてSn2価イオンを用いた場合
を例に取り説明したが、本発明のメッキ方法は、例えば
アミン系等の他の有機酸を用いたメッキ浴を用い、Sn
以外の他の金属をメッキする方法にも適用することがで
きる。
【0023】
【発明の効果】本発明によれば、メッキ浴中の錯化剤と
しての有機酸とメッキされる金属イオンとの割合が、上
記特定の範囲内とされているため、メッキ液のセラミッ
ク電子部品内への侵入が抑制され、セラミック電子部品
の耐熱性及び耐機械的衝撃性が高められる。よって、信
頼性に優れたセラミック電子部品を安定に供給すること
が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】セラミック電子部品の一例としての積層コンデ
ンサを示す断面図。
【図2】熱衝撃試験結果を示す。
【図3】外部電極引っ張り試験結果を示す図。
【符号の説明】
1…積層コンデンサ(セラミック電子部品) 2…焼結体 3…内部電極 4,5…外部電極 6,7,8,9…メッキ膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−301589(JP,A) 特開 平2−301588(JP,A) 特開 平2−254194(JP,A) 特開 昭61−194194(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C25D 3/30 C25D 5/54 C25D 7/00 H01G 4/12

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セラミック電子部品のガラスフリット含
    電極上にメッキ浴中にて電気メッキによりメッキ膜を
    形成する方法において、 メッキ液浴中の錯化剤としての有機酸と、メッキされる
    金属イオンとの割合をモル比で0.6〜2.4の範囲と
    してメッキを行うことを特徴とする、セラミック電子部
    品のメッキ方法。
  2. 【請求項2】 前記メッキされる金属イオンがSnイオ
    ンである、請求項1に記載のセラミック電子部品のメッ
    キ方法。
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